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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】洪水耐性窓
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/62 20060101AFI20230426BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20230426BHJP
   E06B 1/58 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
E06B1/62 Z
E06B5/00 Z
E06B1/58
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021035337
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135497
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】302051544
【氏名又は名称】ミツヤジーホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安江 高治
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218798(JP,A)
【文献】特開2015-113698(JP,A)
【文献】特開2020-026702(JP,A)
【文献】特開2006-070606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00 - 7/36
E06B 5/00 - 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子と、前記障子の外周縁を保持する枠体と、を有する窓が鉄筋コンクリート造建物の壁に形成された窓用貫通孔に取り付けられた洪水耐性窓であって、
前記壁の室外側面には、前記窓用貫通孔の開口縁に沿った所要幅範囲にわたって補強枠が取り付けられており、
前記補強枠の内周縁位置は、前記窓用貫通孔の内周縁位置よりも内側に位置し、
前記枠体の室内側面が前記補強枠に密着していることを特徴とする洪水耐性窓。
【請求項2】
障子と、前記障子の外周縁を保持する枠体と、を有する窓が鉄筋コンクリート造建物の壁に形成された窓用貫通孔に取り付けられた洪水耐性窓であって、
前記壁の室外側面には、前記窓用貫通孔の開口縁に沿った所要幅範囲にわたって補強枠が取り付けられており、
前記枠体の室内側面が前記補強枠に密着し、
前記補強枠の外周縁に沿って断熱材料により形成された断熱枠が前記壁の室外側面に水密にシールされた状態で取り付けられていることを特徴とする洪水耐性窓。
【請求項3】
前記補強枠と前記壁の室外側面との間にはモルタルが充填されていることを特徴とする請求項1または2記載の洪水耐性窓。
【請求項4】
前記断熱枠は、前記枠体の外周縁の一部に当接するように前記補強枠よりも室外側に突出していることを特徴とする請求項記載の洪水耐性窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洪水耐性窓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲリラ豪雨等により洪水が発生する頻度が高まっている。洪水に対する建物の構造上の対策としては、建物を構築する際における敷地への盛土の他、基礎を高く構築する方法やピロティ構造等による高床化が提案されている。しかしながらこれらの構造は建物の構築コストが高騰してしまうため、現実的には採用が困難である。そこで、特許文献1(実用新案登録第3139936号公報)に開示されているような、建物の壁に配設された窓やドアからの浸水を防止するための構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3139936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている建物の壁に配設された窓やドアになされた止水構造は、洪水発生時等において高い水圧が作用することについては考慮されておらず、窓やドアに高い水圧が作用して窓やドアが変形してしまうおそれがある。すなわち、特許文献1に開示されている止水構造では洪水発生時の水圧に対する止水性の担保は不確実であるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明においては、洪水発生時等における高い水圧が作用した場合であっても窓の変形を抑え、窓と開口部との隙間の発生を防ぎ、通常時に構築した窓の止水構造を維持することが可能な洪水耐性窓の提供を目的としている。
【0006】
以上の課題を解決すべく、発明者が実験を行った結果、洪水等によって窓に作用する水圧が高くなると、窓が撓むことにより開口部と窓との間に隙間が生じ、通常時に構築された窓の止水構造が崩れてしまっていることを明らかにした。そこで発明者は、窓に高い水圧が作用しても窓の撓みを抑え、通常時に構築した窓の止水構造を維持させればよいことに着目し、本発明の構成に想到した。
【0007】
すなわち本発明は、障子と、前記障子の外周縁を保持する枠体と、を有する窓が鉄筋コンクリート造建物の壁に形成された窓用貫通孔に取り付けられた洪水耐性窓であって、前記壁の室外側面には、前記窓用貫通孔の開口縁に沿った所要幅範囲にわたって補強枠が取り付けられており、前記補強枠の内周縁位置は、前記窓用貫通孔の内周縁位置よりも内側に位置し、前記枠体の室内側面が前記補強枠に密着していることを特徴とする洪水耐性窓である。
【0008】
これにより、洪水発生時等において高い水圧が作用した場合であっても、通常時に構築した止水構造が維持され、水圧による窓の撓みを抑制し、洪水時等においても窓から建物内部への水の侵入を防止することができる。
【0009】
また、障子と、前記障子の外周縁を保持する枠体と、を有する窓が鉄筋コンクリート造建物の壁に形成された窓用貫通孔に取り付けられた洪水耐性窓であって、前記壁の室外側面には、前記窓用貫通孔の開口縁に沿った所要幅範囲にわたって補強枠が取り付けられており、前記枠体の室内側面が前記補強枠に密着し、前記補強枠の外周縁に沿って断熱材料により形成された断熱枠が前記壁の室外側面に水密にシールされた状態で取り付けられていることを特徴とする洪水耐性窓とすることもできる
【0010】
これにより、洪水発生時等において高い水圧が作用した場合であっても、通常時に構築した止水構造が維持され、水圧による窓の撓みを抑制し、洪水時等においても窓から建物内部への水の侵入を防止することができる。また、壁の室外側表面における補強枠の取り付け位置を位置決めすることができると共に、窓の外周縁部分における断熱性能を壁に配設した断熱材部分と同等にすることができる。
【0011】
また、前記補強枠と前記壁の室外側面との間にはモルタルが充填されていることが好ましい。
【0012】
これにより、壁の室外側面に対する窓の収容位置を適宜調整することができると共に、防水性をさらに高めることができる。
【0015】
さらに、前記断熱枠は、前記枠体の外周縁の一部に当接するように前記補強枠よりも室外側に突出していることが好ましい。
【0016】
これにより、枠体を正確に位置合わせした状態で取り付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明における洪水耐性窓の構成によれば、窓に対して洪水時におけるような高い水圧が作用しても窓の撓みを抑制することができる。これにより、通常時に構築した窓と開口部とのシール構造を維持することができ、洪水時等においても窓から建物内部への水の侵入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における洪水耐性窓を室外側(建物の外側)から臨んだ状態を示す正面図である。
図2図1中のII―II線における断面図である。
図3】洪水耐性窓の施工状況を示す説明図である。
図4図3に続く洪水耐性窓の施工状況を示す説明図である。
図5図4に続く洪水耐性窓の施工状況を示す説明図である。
図6図5に続く洪水耐性窓の施工状況を示す説明図である。
図7図6に続く洪水耐性窓の施工状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように本実施形態における洪水耐性窓100は、鉄筋コンクリート造建物10の壁12を壁厚方向に貫通する窓用貫通孔14に窓20を水密にした状態で取り付けたものである。窓20は、障子としての板ガラス21と、上框22、下框24、左縦框26および右縦框28により板ガラス21の外周縁を保持する枠体29とを有している。本実施形態における板ガラス21は、いわゆる強化ガラスにより形成されたものが用いられている。このような窓20の構成は公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。なお、本実施形態においては、室外側から窓20を臨んだ際における左側の縦框のことを左縦框26と称し、室外側から窓20を臨んだ際における右側の縦框のことを右縦框28と称している。
【0020】
図2に示すように本実施形態における窓用貫通孔14は壁12を壁厚方向に同一内径寸法で貫通している。本実施形態における窓用貫通孔14の開口部幅寸法Wは、枠体29の内周縁における幅寸法W1以上であって、枠体29の外周縁における幅寸法W2よりも小さく形成されている。なお、図示はしないが、窓用貫通孔14の開口部高さ寸法は、枠体29の内周縁における高さ寸法以上であって、枠体29の外周縁における高さ寸法よりも小さく形成されている。
【0021】
次に鉄筋コンクリート造建物10への洪水耐性窓100の施工手順について説明する。図3に示すように壁12のコンクリート打設時に函抜き等の公知の手法により窓用貫通孔14が形成される。次に窓用貫通孔14の室外側開口部14Aに沿って壁12の室外側面に取り付けられている断熱材16を所要幅範囲で取り除いた壁露出部12Aが形成される。ここでは、壁12に取り付けられた断熱材16を取り除いているが、窓用貫通孔14の室外側開口部14Aに沿った壁12の所要幅範囲部分への断熱材16の取り付けを予め省略することにより壁露出部12Aを形成することもできる。
【0022】
また、図4に示すように、断熱材16の壁12からの起立面には、非腐食性の断熱材料によって断熱材16と同じ高さ寸法に形成された断熱枠18が、窓用貫通孔14の室外側開口部14Aの側に所定範囲で壁露出部12Aを残した状態で取り付けられている。なお、図示はしないが、断熱枠18と壁12は水密にシールされた状態で取り付けられている。同じく図4に示すように、断熱材16と断熱枠18の室外側面には化粧板19が公知の手法によって取り付けられている。ここでは、断熱枠18として樹脂木材による枠を用い、化粧板19としてサイディングを用いている。
【0023】
続いて図5に示すように、断熱枠18を取り付けた後における壁露出部12Aの部分には、窓用貫通孔14の内周縁に沿った所要幅範囲にモルタル30が充填され、モルタル30による枠状体が形成される。本実施形態におけるモルタル30は、止水性を有するものが用いられている。モルタル30による枠状体の厚さ寸法は断熱枠18の厚さ寸法よりも小さく形成されている。モルタル30が硬化した後、図6に示すようにモルタル30による枠状体の室外側面に補強枠40が窓用貫通孔14の内周縁に沿った所要幅範囲に周設される。モルタル30による枠状体への補強枠40の取り付けは、ねじ留め等の公知の手法により行うことができる。
【0024】
本実施形態における補強枠40はスチール製の平板からなる枠形状に形成されている。補強枠40の外周縁幅寸法は断熱枠18の内周縁幅寸法と同寸法に形成されており、補強枠40の内周縁幅寸法は窓用貫通孔14における幅寸法よりも小さく形成されている。すなわち、補強枠40の内周縁位置は、窓用貫通孔14の内周縁位置よりも内側に位置している。また、図示はしないが、補強枠40の外周縁高さ寸法は断熱枠18の内周縁高さ寸法と同寸法に形成されており、補強枠40の内周縁高さ寸法は窓用貫通孔14における高さ寸法よりも小さく形成されている。
【0025】
本実施形態における補強枠40は、外周縁における幅寸法および高さ寸法が枠体29の外周縁における幅寸法および高さ寸法と等しく形成され、かつ、内周縁における幅寸法および高さ寸法が枠体29の内周縁における幅寸法および高さ寸法と等しく形成されている。すなわち、図7に示すように、補強枠40の室外側面と窓20の枠体29の室内側面が同一形状に形成されていて、互いに密着可能になっている。
【0026】
また、同じく図7に示すように、補強枠40の外周縁に沿って配設された断熱枠18は、枠体29の外周縁(側周縁)の一部と当接するように補強枠40よりも室外側に突出している。これにより、枠体29(窓20)を位置合わせした状態で配設することができると共に、枠体29に外力が作用した場合であっても、枠体29の外周縁に当接している断熱枠18によって枠体29の配設位置を維持させることができる点において好都合である。
【0027】
また、枠体29と補強枠40はもちろんのこと、補強枠40とモルタル30およびモルタル30と壁12は通常時においてそれぞれがシール部材等(図示はせず)を介して水密な状態で密着している。これにより、洪水発生時等において地表面から3メートル程度の水圧が洪水耐性窓100に作用しても、枠体29(窓20)が補強枠40により常にバックアップされた状態になると共に、鉄筋コンクリート造建物10に水圧を円滑に伝達させることができる。すなわち、洪水時における水圧に対しても枠体29(窓20)が撓んでしまうことがなく、通常時に構築された水密状態を維持することができ、洪水時等においても窓用貫通孔14から鉄筋コンクリート造建物10の内部への浸水を確実に防止することが可能になる。
【0028】
以上に本発明にかかる洪水耐性窓100を実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、外断熱型の鉄筋コンクリート造建物10について説明しているが、在来工法により構築された外断熱型および内断熱型の建物に本発明を適用することも可能である。
【0029】
また、以上の実施形態においては、窓用貫通孔14の室側開口縁に沿って断熱枠18やモルタル30による枠状体をそれぞれ構築しているが、断熱枠18およびモルタル30による枠状体の構築は少なくとも一方の配設を省略することもできる。この場合窓用貫通孔14の室外側開口縁における壁12に補強枠40を直接取り付けることになるが、補強枠40と壁12との水密を確実に行うことができれば以上の実施形態と同程度の作用効果を得ることは十分可能である。
【0030】
また、以上の実施形態においては、窓20の枠体29における室内側面と補強枠40の室外側面とを同一形状に形成した形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。補強枠40は、補強枠40の外側端縁と内側端縁との幅寸法を窓20の枠体29における外側端縁と内側端縁との幅寸法よりも幅広に形成し、補強枠40の室外側面に窓20の枠体29の全面が密着していることが好ましい。このとき補強枠40の内周縁位置は窓用貫通孔14の開口部における内周縁位置よりも内側に位置していることが好ましい。これとは反対に、補強枠40の外側端縁と内側端縁との幅寸法が窓20の枠体29における外側端縁と内側端縁との幅寸法よりも幅狭に形成されていても、枠体29および板ガラス21(窓20)の機械的強度が十分であれば、通常時の止水状態を維持させることも可能である。
【0031】
また、以上の実施形態においては、断熱枠18が枠体29の外周縁(側周縁)の一部に当接するように、断熱枠18を補強枠40の室外側面よりも外側に突出させた形態について説明しているが、断熱枠18の室外側面と補強枠40の室外側面とを面一にした形態を採用することもできる。
【0032】
また、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
10 鉄筋コンクリート造建物
12 壁
12A 壁露出部
14 窓用貫通孔
14A 室外側開口部
16 断熱材
18 断熱枠
19 化粧板
20 窓
21 板ガラス(障子)
22 上框
24 下框
26 左縦框
28 右縦框
29 枠体
30 モルタル
40 補強枠
100 洪水耐性窓
W 開口部幅寸法
W1 枠体の内周縁における幅寸法
W2 枠体の外周縁における幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7