(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ポテンショメータ付きダイアル及び回転型ダイアル
(51)【国際特許分類】
G05G 1/08 20060101AFI20230426BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G05G1/08 E
G05G25/00 C
G05G25/00 D
(21)【出願番号】P 2021157564
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000120489
【氏名又は名称】栄通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】桐生 諭
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-332157(JP,A)
【文献】特開2013-61101(JP,A)
【文献】実開平2-24656(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/08
G05G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーによって回転操作されるツマミと、
ユーザーによって表示内容が読み取られる目盛部と、前記回転操作による前記ツマミの回転力を前記目盛部に伝達することにより前記目盛部の表示内容を変化させる伝達機構と、を有する回転型ダイアルと、
前記ツマミと一体に回転するシャフトを有し、前記シャフトの回転角度に応じた電気信号を出力
するとともに、前記電気信号の出力値である電気的出力の値が前記シャフトの回転角度に応じて変化するポテンショメータと、
前記ポテンショメータの電気的出力
の値が予め設定された所定の条件を満たしたことをユーザーに報知する報知部と、
を備えるポテンショメータ付きダイアル。
【請求項2】
前記回転型ダイアルは、前記目盛部又はその近傍に照明光を照射する照明部をさらに有し、
前記報知部は、前記ポテンショメータの電気的出力
の値が前記所定の条件を満たした場合に、前記照明光の照射状態を変化させる
請求項1に記載のポテンショメータ付きダイアル。
【請求項3】
前記照明部は、前記照明光の色を変更可能に構成され、
前記報知部は、前記照明光の照射状態として前記照明光の色を変化させる
請求項2に記載のポテンショメータ付きダイアル。
【請求項4】
音を発生するブザーをさらに備え、
前記報知部は、前記ポテンショメータの電気的出力
の値が前記所定の条件を満たした場合に、前記ブザーの発音状態を変化させる
請求項1~3のいずれか一項に記載のポテンショメータ付きダイアル。
【請求項5】
前記目盛部は、前記ツマミと別体に設けられている
請求項1~3のいずれか一項に記載のポテンショメータ付きダイアル。
【請求項6】
前記目盛部は、前記表示内容を読み取
るためのマスクプレートと、前記マスクプレートの上に重ねて配置される透明板と、を有し、
前記照明部は、前記透明板と隣り合うように
前記マスクプレートの上に重ねて配置される照明用基板と、前記照明用基板に実装された発光素子と、を有し、
前記発光素子は、前記照明用基板の厚さ方向と直交する方向に前記照明光に照射する
請求項2に記載のポテンショメータ付きダイアル。
【請求項7】
前記透明板は凸面部を有し、
前記照明部は、前記照明光を前記凸面部に照射する
請求項6に記載のポテンショメータ付きダイアル。
【請求項8】
ユーザーによって回転操作
されるツマミと、
ユーザーによって表示内容が読み取られる目盛部と、
前記回転操作による前記ツマミの回転力を前記目盛部に伝達することにより前記目盛部の表示内容を変化させる伝達機構と、を備え、
前記ツマミと一体に回転するように前記ツマミに連結されるシャフトを有し、前記シャフトの回転角度に応じた電気信号を出力
するとともに、前記電気信号の出力値である電気的出力の値が前記シャフトの回転角度に応じて変化するポテンショメータを取付可能に構成された回転型ダイアルであって、
前記ポテンショメータの電気的出力
の値が予め設定された所定の条件を満たしたことをユーザーに報知する報知部を備える
回転型ダイアル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポテンショメータ付きダイアル及び回転型ダイアルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業分野において、たとえば、アンプや電源機器などのボリューム調整のため、あるいは制御盤への組み込み等のために、回転型ダイアルが使用されている。特許文献1には、複数の異なる数字が付されたスカート部を有するツマミと、スカート部の一部を照明するLEDと、を備える「ダイアル照明機能付きLEDインジケータ」に関する技術が記載されている。
【0003】
一般に、回転型ダイアルは、回転型のポテンショメータと組み合わせて使用される。また、回転型ダイアルは、ユーザーによって回転操作されるツマミと、ツマミの回転角度に応じて表示内容が変化する目盛部と、を備えている。ポテンショメータは、回転可能なシャフトを備え、このシャフトが上記ツマミと一体に回転するように回転型ダイアルに取り付けられる。回転型ダイアルに取り付けられたポテンショメータは、ツマミ及びシャフトの回転角度に応じた電気信号を出力する。
【0004】
回転型ダイアルのツマミをユーザーが回転操作すると、目盛部の表示内容とポテンショメータの電気的出力は、いずれもツマミの回転角度に応じて変化する。このため、ユーザーは、ポテンショメータのシャフト回転角度や電気的出力を確認及び調整するにあたって、目盛部に表示される内容(たとえば数桁の数字)を読み取り、その表示内容が目標とする内容に一致するように、ツマミを回転操作する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転型ダイアルの目盛部に表示される内容は、ユーザーがツマミを回している最中は常に変化する。このため、ユーザーがツマミを回している間、ユーザーの目には目盛部の表示がぶれて見える。また、ユーザーがツマミを速く回すと、その分だけ目盛部の表示が素早く切り替わるため、ユーザーの目で目盛部の表示内容を読み取ることが難しくなる。このため、ポテンショメータの電気的出力が所定の値または所定の範囲になったことをユーザーが認識するには、ツマミの回転を時々止めて、その都度、目盛部の表示内容を読み取る必要があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、ポテンショメータの電気的出力が所定の値または所定の範囲になったことを、目盛部の表示内容を読み取らなくてもユーザーに認識させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るポテンショメータ付きダイアルは、ユーザーによって回転操作されるツマミと、ユーザーによって表示内容が読み取られる目盛部と、回転操作によるツマミの回転力を目盛部に伝達することにより目盛部の表示内容を変化させる伝達機構と、を有する回転型ダイアルと、ツマミと一体に回転するシャフトを有し、シャフトの回転角度に応じた電気信号を出力するとともに、電気信号の出力値である電気的出力の値がシャフトの回転角度に応じて変化するポテンショメータと、ポテンショメータの電気的出力の値が予め設定された所定の条件を満たしたことをユーザーに報知する報知部と、を備える。
また、本発明に係る回転型ダイアルは、上記ポテンショメータ付きダイアルに用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポテンショメータの電気的出力が所定の値または所定の範囲になったことを、目盛部の表示内容を読み取らなくてもユーザーに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの構成を示す平面図である。
【
図3】
図2に示すポテンショメータ付きダイアルをA1方向から見た図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る回転型ダイアルの分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る回転型ダイアルを
図5とは異なる方向から見た分解斜視図である。
【
図7】ツマミの回転操作と目盛部の表示内容との関係を説明するための図である。
【
図8】回転型ダイアルの組み立て手順を説明するための図(その1)である。
【
図9】回転型ダイアルの組み立て手順を説明するための図(その2)である。
【
図10】回転型ダイアルの組み立て手順を説明するための図(その3)である。
【
図11】組み立てが完了した回転型ダイアルの側面図である。
【
図14】
図2に示すポテンショメータ付きダイアルをA2方向から見た図である。
【
図17】本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの制御構成を概略的に示すブロック図である。
【
図18】回転型ダイアルのツマミ回転角度と多回転型ポテンショメータの出力電圧比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(ポテンショメータ付きダイアルの構成)
図1は、本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの構成を示す斜視図である。また、
図2は、本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの構成を示す平面図であり、
図3は、
図2に示すポテンショメータ付きダイアルをA1方向から見た図である。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、ポテンショメータ付きダイアルを
図3に示す向きで配置した場合を基準に上下方向及び左右方向を規定するものとする。ただし、ポテンショメータ付きダイアルを実際にユーザーが使用する場合の向きは、
図3に示す向きに限らず、たとえば
図3の状態から反時計回りに90°回転した向きであってもよいし、これ以外の向きであってもよい。
【0013】
図1~
図3に示すように、ポテンショメータ付きダイアル10は、回転型ダイアル11と多回転型ポテンショメータ12とを一体に備えている。回転型ダイアル11は、ツマミ21と、カバー22と、目盛部23と、ロック用レバー24と、を備えている。目盛部23は、
図2に示すように回転型ダイアル11を上方(正面)から見たときにツマミ21と目盛部23の位置が重ならないよう、ツマミ21と別体に設けられている。
【0014】
多回転型ポテンショメータ12は、電気的回転角度が360°を超える回転型ポテンショメータである。本実施形態では、一例として、多回転型ポテンショメータ12の電気的回転角度が3600°であるものとする。多回転型ポテンショメータ12は、取付パネル13を介して回転型ダイアル11に取り付けられている。
【0015】
図4は、本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの分解斜視図である。
図4に示すように、多回転型ポテンショメータ12は、ハウジングケース31と、シャフト32と、インロー部33と、取付ネジ部34と、回り止めピン35と、3つの端子36a,36b,36cと、を備えている。端子36a,36cは、図示しない電源装置の端子(以下、「電源端子」という。)にリード線によって接続される。電源装置は、回転型ダイアル11や多回転型ポテンショメータ12とは別にユーザーが用意する必要がある。端子36bは、多回転型ポテンショメータ12の電気信号を出力するための端子である。多回転型ポテンショメータ12の電気的出力は、シャフト32の回転角度に応じて変化するものであれば、どのような出力であってもよい。一例を挙げると、多回転型ポテンショメータ12は、シャフト32の回転角度に応じた電圧値を示す電気信号を端子36bから出力する。このため、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力は、電圧値によって表される。この電圧値は、上記電源装置から多回転型ポテンショメータ12に供給される電源電圧が、たとえば5Vであるとすると、シャフト32の回転角度に応じて0Vから5Vまでの範囲で変化する。
【0016】
一方、取付パネル13は、ポテンショメータ取付用孔37と、第1の回り止め孔38と、第2の回り止め孔39と、リード線引き出し孔40と、を備えている。取付パネル13は、金属製のパネルであり、平面視四角形(図例では正方形)の平板状に形成されている。取付パネル13の平面視形状や外形寸法は、必要に応じて変更可能である。
【0017】
取付金具41及びナット42は、取付パネル13を介して多回転型ポテンショメータ12を回転型ダイアル11に取り付けるための部材である。取付金具41は、円環状に形成されている。取付金具41には、3つのダイアル固定爪43と、1つの回り止め爪44とが一体に形成されている。ダイアル固定爪43は上向きに曲げられ、回り止め爪44は下向きに曲げられている。
【0018】
(回転型ダイアルの構成)
図5は、本発明の実施形態に係る回転型ダイアルの分解斜視図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る回転型ダイアルを
図5とは異なる方向から見た分解斜視図である。
図5及び
図6に示すように、回転型ダイアル11は、上述したツマミ21、カバー22、ロック用レバー24の他に、ケース45と、回転機構部46と、照明部30と、ブザー用基板48と、透明板49と、を備えている。さらに、回転型ダイアル11は、回転ドラムユニット51と、マスクプレート52と、レンズカバー53と、ピニオン54(
図5参照)と、を備えている。回転ドラムユニット51、マスクプレート52及びレンズカバー53は、上述した目盛部23(
図1及び
図2参照)を構成する部材である。
【0019】
ツマミ21は、ユーザーによって回転操作される樹脂製の部材である。ツマミ21は、天板部21aと、側板部21bとを一体に有する中空の部材である。天板部21aは平面視円形に形成され、側板部21bは円筒形に形成されている。側板部21bは、裾広がりに形成されている。また、側板部21bの下端部には切り欠き部21c(
図6参照)が形成され、側板部21bの外面には、ユーザーが指でつまんで操作しやすいように凹凸が形成されている。ツマミ21は、下向きに開口している。
【0020】
カバー22は、ケース45を覆う金属製の部材である。カバー22は、平面視長方形に形成されている。カバー22は、角孔56と、丸孔57と、4つのレンズカバー取付用孔58と、逃げ部59と、を有している。カバー22の上面部は、高低差をつけた段付きになっている。角孔56は、カバー22の高位側の上面部に形成され、丸孔57は、カバー22の低位側の上面部に形成されている。また、角孔56と丸孔57は、カバー22の長手方向に隣り合わせに並べて配置されている。4つのレンズカバー取付用孔58は、角孔56の周囲に配置されている。逃げ部59は、カバー22の短手側の側面部に設けられている。逃げ部59は、ロック用レバー24との干渉を避けるために凹状に切り欠かれている。
【0021】
ロック用レバー24は、ツマミ21の回転をロックしたり、そのロックを解除したりするためのレバーである。ロック用レバー24は、
図6に示すように、回転機構部46の中心軸を中心にC方向に往復移動可能に設けられている。そして、ロック用レバー24をC方向の一方に移動させるとツマミ21の回転がロックされた状態となり、ロック用レバー24をC方向の他方に移動させるとツマミ21の回転ロックが解除された状態、すなわちアンロック状態となる。
【0022】
ケース45は、金属によって構成されている。ケース45は、回転機構部46、回転ドラムユニット51及びピニオン54をそれぞれ回転可能に支持している。ケース45の上面部には、4つのマスクプレート取付用凸部55aと、2つのスペーサー用凸部55bが設けられている。スペーサー用凸部55bは、カバー22をケース45に取り付ける場合に、カバー22がG型リング66に干渉しないよう、カバー22とケース45との間に隙間を確保するための凸部である。また、ケース45の底面側には、
図13に示すように、複数の爪溝83と、1つの開口部84が形成されている。爪溝83は、
図4に示す取付金具41のダイアル固定爪43を嵌め込むための溝である。開口部84は、ブザー用基板48に接続される電源供給用のリード線及び電気信号入力用のリード線を、取付パネル13に設けられたリード線引き出し孔40(
図4参照)を通して外部に引き出すために形成されている。
【0023】
回転機構部46は、金属製の回転軸61と、金属製の軸受部材62(
図12参照)と、を備えている。回転軸61には周溝61aが形成されている。回転軸61は、G型リング66によってケース45に回転自在に取り付けられている。軸受部材62は、円環状に形成されている。軸受部材62は、回転軸61と一体に回転するように、回転軸61の内周側に取り付けられている。また、回転機構部46には、押しネジ67が取り付けられている。押しネジ67は、六角孔付き止めネジによって構成されている。押しネジ67は、軸受部材62に設けられるネジ孔に噛み合わせられる。押しネジ67は、軸受部材62に挿入される多回転型ポテンショメータ12のシャフト32に押し付けられる。このように押しネジ67をシャフト32に押し付けた状態では、ユーザーがツマミ21を回転操作した場合に、ツマミ21と一体になって回転軸61、軸受部材62及びシャフト32が回転する。
【0024】
照明部30は、照明用基板47と、発光素子68と、固定抵抗65(
図16参照)とを備えている。照明用基板47は、プリント配線基板によって構成されている。照明用基板47には、照明光源となる2つの発光素子68と、各々の発光素子68に流れる電流を制限する固定抵抗65とが実装されている。発光素子68は、側面発光タイプのフルカラーLED(light emitting diode)又は多色LEDによって構成される。本実施形態においては、一例として、発光素子68がフルカラーLEDによって構成されているものとする。発光素子68は、図示はしないが、赤色発光LEDチップと、青色発光LEDチップと、緑色発光LEDチップとを備え、それぞれのLEDチップに流れる電流の大きさ(割合)を変えることにより、発光素子68の発光色を変えられる構成になっている。発光素子68の発光色は、照明光源が発する照明光の色に相当する。各々の発光素子68の発光面は、同じ方向を向いて配置されている。また、照明用基板47には、2つの固定用孔69が設けられている。固定用孔69は、ネジ70を用いて照明用基板47をマスクプレート52に固定するための孔である。
【0025】
ブザー用基板48は、プリント配線基板によって構成されている。ブザー用基板48には、ブザー71と、半導体デバイス72(
図5参照)とが実装されている。ブザー71は、たとえば圧電ブザーからなるチップ状の発音部品である。半導体デバイス72は、マイクロコントローラとして機能する表面実装型の半導体装置である。また、ブザー用基板48には、2つの固定用孔73が設けられている。固定用孔73は、ネジ74を用いてブザー用基板48をケース45に固定するための孔である。
【0026】
透明板49は、レンズカバー53に取り付けられる部材である。透明板49は、この透明板49を通して目盛部23の表示内容を読み取ることができる程度の透明性を有する樹脂によって構成されている。透明板49を構成する樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂を挙げることができる。透明板49は、平面視略長方形に形成されている。透明板49には、ラウンド形状に盛り上がった凸面部76が一体に形成されている。凸面部76は、透明板49の長手方向から見て山形(かまぼこ型)に形成されている。
【0027】
回転ドラムユニット51は、図示しない共通のドラム支持軸に回転自在に支持された3つの回転ドラムによって構成されている。3つの回転ドラムは、1桁目から3桁目までの数字を表示する。各々の回転ドラムの外周面には、0から9までの数字(不図示)が付されている。また、図示はしないが、各々の回転ドラムの間には周溝が形成され、この周溝の部分に間欠歯車が取り付けられている。
【0028】
マスクプレート52は、金属によって構成された平板状の部材である。マスクプレート52には、3つの読取用孔77と、4つの貫通孔78と、2つのネジ孔79とが設けられている。読取用孔77は、上述した3つの回転ドラムによって表示される3桁の数字をユーザーが読み取るための孔である。貫通孔78は、マスクプレート52をケース45に取り付けるための孔である。ネジ孔79は、上述した2つのネジ70を用いて照明用基板47をマスクプレート52に取り付けるための孔である。
【0029】
レンズカバー53は、樹脂によって構成された板状の部材である。レンズカバー53は、照明用基板47を遮蔽するようにカバー22に取り付けられる。レンズカバー53には、窓部81が形成されている。窓部81は、上述した3つの読取用孔77がレンズカバー53によって遮蔽されないように長方形に開口している。また、窓部81は、レンズカバー53を貫通する状態で形成されている。レンズカバー53の下面には4つの凸部82(
図8参照)が設けられている。
【0030】
ピニオン54は、
図5に示すように、駆動軸85に2つ並んで取り付けられている。駆動軸85は、接着剤等によってケース45に固定され、各々の回転ドラムを支持するドラム支持軸も接着剤等によってケース45に固定されている。また、ケース45には、歯車伝達機構(図示せず)が組み込まれている。歯車伝達機構は、ユーザーがツマミ21を回転操作した場合に、ツマミ21の回転力を1桁目の回転ドラムに伝達する機構である。1桁目の回転ドラムの回転力は、一方のピニオン54とこれに噛み合う間欠歯車を介して、2桁目の回転ドラムに伝達される。また、2桁目の回転ドラムの回転力は、他方のピニオン54とこれに噛み合う間欠歯車を介して、3桁目の回転ドラムに伝達される。これにより、1桁目から3桁目までの計3つの回転ドラムは、それぞれ独立して回転し、各々の回転ドラムの回転により、目盛部23に表示される3桁の数字が[000]から[999]まで変化する構成になっている。また、回転型ダイアル11は、
図7に示すように、ツマミ21を時計回り(CW方向)に回転させると、その回転角度に応じた3桁の数字を目盛部23に表示する仕組みになっている。また、ツマミ21を時計回りに1回転させると、目盛部23に表示される3桁の数字が「100」ずつ繰り上がり、ツマミ21を反時計回りに1回転させると、目盛部23に表示される3桁の数字が「100」ずつ繰り下がる仕組みになっている。
【0031】
(回転型ダイアルの組み立て手順)
続いて、本発明の実施形態に係る回転型ダイアルの組み立て手順について説明する。なお、以下に述べる組み立て手順はあくまで一例であり、異なる手順で回転型ダイアル11を組み立てもよい。
【0032】
まず、ケース45に回転機構部46と回転ドラムユニット51を取り付けると共に、上述した間欠歯車にピニオン54が噛み合うようにケース45に駆動軸85を取り付ける。
【0033】
次に、ケース45にマスクプレート52を取り付ける。具体的には、ケース45に設けられた4つのマスクプレート取付用凸部55aとマスクプレート52に設けられた4つの貫通孔78とを嵌め合わせた後、マスクプレート52から突き出した各々のマスクプレート取付用凸部55aを加締めることにより、ケース45にマスクプレート52を固定する。
【0034】
次に、2つのネジ70を用いて照明用基板47をマスクプレート52に取り付ける。次に、2つのネジ74を用いてブザー用基板48をケース45に取り付ける。照明用基板47とブザー用基板48は、どちらを先に取り付けてもよい。また、マスクプレート52については、照明用基板47をマスクプレート52に取り付けた後で、ケース45に取り付けてもよい。また、図示はしないが、照明用基板47とブザー用基板48は、リード線によって電気的に接続され、ブザー用基板48には、電源供給用のリード線と電気信号入力用のリード線とが電気的に接続される。電源供給用のリード線と電気信号入力用のリード線は、ケース45の底面側に設けられた開口部84(
図13参照)から外部に引き出される。電源供給用のリード線は、図示しない電源装置の電源端子に接続される。これにより、ブザー用基板48上のブザー71や半導体デバイス72を、電源装置から供給される電力によって駆動することができる。電気信号入力用のリード線は、多回転型ポテンショメータ12の端子36bに接続される。これにより、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力をブザー用基板48上の半導体デバイス72に取り込むことができる。
【0035】
次に、
図8に示すように、カバー22にレンズカバー53を取り付ける。具体的には、レンズカバー53の下面に設けられた4つの凸部82とカバー22に設けられた4つのレンズカバー取付用孔58とを嵌め合わせた後、カバー22の内側に突き出した各々の凸部82を加締めることにより、カバー22にレンズカバー53を固定する。このとき、レンズカバー53の窓部81は、カバー22の角孔56(
図5参照)の部分に位置合わせされる。
【0036】
次に、カバー22に透明板49を取り付ける。具体的には、カバー22の内側から透明板49の凸面部76を角孔56の部分に嵌め合わせ、その状態でカバー22と透明板49との接触面を接着剤によって固定する。これにより、
図9及び
図10に示すように、カバー22にレンズカバー53と透明板49とが取り付けられる。また、透明板49の凸面部76は、レンズカバー53の窓部81に臨むように配置される。
【0037】
その後、ケース45にカバー22を取り付ける。具体的には、ケース45に取り付けられた回転機構部46の回転軸61をカバー22の丸孔57に通して、ケース45とカバー22を嵌め合わせ、その状態でケース45とカバー22との接触面を接着剤によって固定する。
【0038】
次に、回転機構部46の回転軸61にツマミ21を取り付ける。具体的には、回転軸61の周溝61aに適量の接着剤を塗布した後、押しネジ67(
図6参照)の位置と切り欠き部21cの位置を合わせて回転軸61にツマミ21を被せることにより、上記接着剤によって回転軸61にツマミ21を固定する。
【0039】
以上で回転型ダイアル11の組み立てが完了する。
図11は、組み立てが完了した回転型ダイアルの側面図である。また、
図12は、
図11のB-B断面図であり、
図13は、
図11に示す回転型ダイアルの底面図である。
【0040】
続いて、回転型ダイアル11に多回転型ポテンショメータ12を取り付ける場合の手順について説明する。
まず、多回転型ポテンショメータ12に取付パネル13を取り付ける。取付パネル13の取り付けは次の手順で行う。まず、取付パネル13のポテンショメータ取付用孔37に多回転型ポテンショメータ12のシャフト32を挿入する。次に、第1の回り止め孔38に回り止めピン35を嵌合させると共に、ポテンショメータ取付用孔37にインロー部33を嵌合させる。これにより、取付パネル13に対して多回転型ポテンショメータ12の回り止めがなされると共に、ポテンショメータ取付用孔37の中心軸とシャフト32の中心軸とが位置合わせされる。また、シャフト32は、取付パネル13から突出した状態に配置される。
【0041】
次に、シャフト32に取付金具41を通す。このとき、第2の回り止め孔39に回り止め爪44を嵌合させる。これにより、取付パネル13に対して取付金具41の回り止めがなされる。次に、シャフト32にナット42を通す。次に、ナット42を取付ネジ部34に噛み合わせ、その状態でナット42を締め付けることにより、取付パネル13の下面をハウジングケース31の端面に密着させる。
以上の手順により、多回転型ポテンショメータ12に取付パネル13を取り付けることができる。
【0042】
その後、ケース45が有する爪溝83と取付金具41が有するダイアル固定爪43とを位置合わせしながら、多回転型ポテンショメータ12のシャフト32を回転機構部46の軸受部材62に挿入する。また、3つのダイアル固定爪43をそれぞれに対応する爪溝83に嵌め合わせる。また、取付パネル13の上面がケース45の底面に密着するように、ケース45に取付パネル13を押し付ける。そして、その押し付け状態を維持しながら、六角棒スパナなどの工具を使って押しネジ67を回転させることにより、シャフト32を軸受部材62に固定する。これにより、ツマミ21とシャフト32が回転機構部46を介して連結される。このため、シャフト32がツマミ21と一体に回転するようになる。したがって、ポテンショメータ付きダイアル10において、ツマミ21の回転角度とシャフト32の回転角度は、同じ角度になる。
【0043】
また、上述のようにシャフト32を軸受部材62に挿入する場合は、回転型ダイアル11のブザー用基板48に接続されている電源供給用のリード線と電気信号入力用のリード線を、それぞれ取付パネル13のリード線引き出し孔40に通すことにより、各々のリード線を多回転型ポテンショメータ12のハウジングケース31側に引き出す。そして、上述のように押しネジ67によってシャフト32を軸受部材62に固定した後で、電気信号入力用のリード線を多回転型ポテンショメータ12の端子36bに接続する。
【0044】
このように回転型ダイアル11に多回転型ポテンショメータ12を取り付けることにより、
図14及び
図15に示すポテンショメータ付きダイアル10が得られる。
図14は、
図2に示すポテンショメータ付きダイアルをA2方向から見た図であり、
図15は、
図14のD-D断面図である。また、
図16は、
図15のE部を拡大した図である。
図14~
図16に示すように、回転ドラムユニット51のドラム外周面の上側周面は、マスクプレート52の読取用孔77(
図16参照)を介して透明板49の凸面部76と近接かつ対向する状態に配置される。このため、ユーザーは、回転ドラムユニット51のドラム外周面に付された数字を、透明板49の凸面部76を通して読み取ることになる。
【0045】
その際、凸面部76のレンズ効果により、ユーザーの目には数字が大きく見える。つまり、ドラム外周面に付された数字が凸面部76により拡大して表示される。したがって、目盛部23に表示される数字が読み取りやすくなる。
【0046】
また、透明板49の近傍には、2つの発光素子68が配置されている。各々の発光素子68は、目盛部23の一構成要素である透明板49の凸面部76に向けて照明光63を照射する。これにより、凸面部76とこれに対向するドラム外周面の上側周面が明るく照らし出される。このため、ユーザーは、ポテンショメータ付きダイアル10を薄暗い環境で使用する場合でも、目盛部23に表示される数字を読み取ることができる。
【0047】
また、透明板49は、マスクプレート52の上に重ねて配置され、照明用基板47は、透明板49と隣り合うようにマスクプレート52の上に重ねて配置されている。そして、発光素子68は、照明用基板47の厚さ方向と直交する方向(
図16の左右方向)に照明光63を照射する。これにより、照明部30を構成する電子部品である照明用基板47、固定抵抗65及び発光素子68を省スペースにて組み込むことができる。また、発光素子68が発した照明光63を照明用基板47の厚さ方向と直交する方向から凸面部76に照射することで、透明板49を含む目盛部23全体をより明るく照らし出すことができる。
【0048】
さらに、発光素子68から発せられた照明光63が照射される部分に肉厚の凸面部76を配置することにより、照明光63を凸面部76で十分に受けて、照明光63の色を凸面部76の色に反映させることができる。このため、目盛部23を覗くユーザーが照明光63の色を感知しやすくなる。
【0049】
多回転型ポテンショメータ12への電力供給は、先述したとおり多回転型ポテンショメータ12の端子36a,36cと電源装置の電源端子とをリード線(不図示)によって接続することによりなされる。また、回転型ダイアル11の電子部品への電力供給は、照明用基板47とブザー用基板48とをリード線(不図示)によって接続し、かつ、ブザー用基板48と電源装置とをリード線(不図示)によって接続されることによりなされる。その場合は、照明用基板47上の発光素子68にはブザー用基板48を経由して電力が供給される。また、発光素子68が備える赤色発光LEDチップ、青色発光LEDチップ及び緑色発光LEDチップに流れる電流は、半導体デバイス72のマイクロコントローラによって制御される。
【0050】
図17は、本発明の実施形態に係るポテンショメータ付きダイアルの制御構成を概略的に示すブロック図である。
図17において、制御部50は、ブザー用基板48に実装された半導体デバイス72のマイクロコントローラによって実現される機能部である。また、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が予め設定された所定の条件を満たしたことをユーザーに報知する報知部として機能する。制御部50を報知部として機能させるために、制御部50には、多回転型ポテンショメータ12と、2つの発光素子68と、ブザー71が、それぞれ電気的に接続されている。これにより、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力は、制御部50に取り込まれる構成になっている。また、各々の発光素子68の駆動と、ブザー71の駆動は、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力に基づいて制御部50により制御される構成になっている。
【0051】
以下に、制御部50の具体的な構成例と制御の方法について説明する。
まず、制御部50は、コンピュータのハードウェア資源として、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備えている。ROMは、制御用のプログラムを格納している。CPUは、ROMに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、発光素子68及びブザー71を制御する。また、ROMに格納されるプログラムには、発光素子68が備える赤色発光LEDチップ、青色発光LEDチップ及び緑色発光LEDチップに流れる電流の大きさ、言い換えると発光素子68の発光色を決定するためのパラメータ(以下、「発光素子用パラメータ」という。)や、ブザー71のオンオフ状態を切り替えるためのパラメータ(以下、「ブザー用パラメータ」という。)が設定されている。発光素子用パラメータ及びブザー用パラメータは、いずれも、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力に基づいて発光素子68及びブザー71を制御するためのパラメータである。
【0052】
本実施形態においては、一例として、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力を、出力電圧比として認識することとする。また、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力は、ツマミ21及びシャフト32の回転角度に比例して直線的に変化するものとする。また、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力は、シャフト32を時計回りに回転させると増加し、シャフト32を反時計回りに回転させると減少するものとする。
【0053】
このため、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が、たとえば0Vから5Vまでの範囲で変化する場合、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が0Vであれば出力電圧比を0%と認識し、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が2.5Vであれば出力電圧比を50%と認識し、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が5Vであれば出力電圧比を100%と認識することになる。
【0054】
これに対し、発光素子用パラメータは、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力に基づく出力電圧比(以下、単に「出力電圧比」ともいう。)が0%及び100%のときに発光素子68の発光色が赤色となり、上記出力電圧比が0%超10%以下及び90%超100%未満のときに発光素子68の発光色が黄色となり、上記出力電圧比が10%超90%以下のときに発光素子68の発光色が白色となる条件で設定されている。この場合は、発光素子用パラメータとして4つのパラメータ(0%、10%、90%、100%)を設定しておけばよい。
【0055】
また、ブザー用パラメータは、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%及び100%のときにブザー71がオン状態となり、上記出力電圧比が0%超100%未満のときにブザー71がオフ状態となる条件で設定されている。ブザー71のオン状態とは、ブザー71の音が鳴る状態であり、ブザー71のオフ状態とは、ブザー71の音が鳴らない状態である。この場合は、ブザー用パラメータとして2つのパラメータ(0%、100%)を設定しておけばよい。
【0056】
一方、目盛部23に表示される3桁の数字は、ツマミ21の回転角度に応じて、[000]から[999]まで変化する構成になっている。つまり、目盛部23の表示内容は、ツマミ21の回転角度に応じて変化する。
【0057】
また、ポテンショメータ付きダイアル10において、目盛部23に表示される3桁の数字と、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比とは、下記の関係を満たすように調整されている。なお、ここでは回転型ダイアル11のツマミ21が10回転タイプであり、多回転型ポテンショメータ12の回転角度が3600°である場合を例に挙げて説明する。
【0058】
まず、出力電圧比が0%のときは、目盛部23に表示される数字が[000]になる。
また、出力電圧比が0%超10%以下のときは、目盛部23に表示される数字が[000超、100以下]になる。
また、出力電圧比が10%超、90%以下のときは、目盛部23に表示される数字が[100超、900以下]になる。
また、出力電圧比が90%超、100%未満のときは、目盛部23に表示される数字が[900超、999以下]になる。
そして、出力電圧比が100%のときは、目盛部23に表示される数字が[000]に戻る。つまり、目盛部23に[000]が表示されている状態からツマミ21を時計回りに10回転させると、目盛部23の表示内容が元の状態、すなわち[000]に戻る。
【0059】
図18は、回転型ダイアルのツマミ回転角度と多回転型ポテンショメータの出力電圧比との関係を示す図である。
図18に示すように、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比は、回転型ダイアル11のツマミ21を反時計回り(CCW方向)の終端から時計回り(CW方向)に回転させると、0%から100%まで変化する。多回転型ポテンショメータ12の電気的回転角度は、3600°に設定されている。また、回転型ダイアル11の機械的回転角度は、3600°+αに設定されている。つまり、機械的回転角度は、電気的回転角度よりも僅かに大きく設定されている。そして、機械的回転角度と電気的回転角度との差分の半分相当の微小区間が、時計回りの端末Ecwと、反時計回りの端末Eccwに設定されている。機械的回転角度は、回転型ダイアル11のツマミ21が機械的に回転する角度である。電気的回転角度は、多回転型ポテンショメータ12から出力される電気信号(電気的出力)の電圧値が変化する範囲である。
【0060】
また、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比は、多回転型ポテンショメータ12の端子36a,36cに印加される電源電圧に対して、多回転型ポテンショメータ12の端子36bから出力される電気信号(電気的出力)の電圧の比率をパーセントで表したものである。このため、たとえば多回転型ポテンショメータ12の端子36a,36cに供給される電源電圧が5Vであり、多回転型ポテンショメータ12の端子36bから取り出された電気的出力の電圧値が2.5Vであると、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比は50%になる。つまり、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力とこれに基づく出力電圧比とは、数値を取り扱う単位が異なるだけで実質的に等価である。
【0061】
制御部50は、上述したツマミ回転角度と出力電圧比との関係において、発光素子68及びブザー71を次のように制御する。
制御部50は、図示しない電源装置からリード線を通してブザー用基板48に電力が供給され、かつ、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力がリード線を通して制御部50に取り込まれると、その電気的出力に基づく出力電圧比を、発光素子用パラメータ及びブザー用パラメータと比較する。そして、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%及び100%のときは発光素子68を赤色に点灯させ、上記出力電圧比が0%超10%以下及び90%超100%未満のときは発光素子68を黄色に点灯させ、上記出力電圧比が10%超90%以下のときには発光素子68を白色に点灯させる。つまり、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が所定の条件を満たした場合に、照明光63の色を変化させる。具体例を挙げると、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%から1%に変化した場合に、照明光63の色を赤色から黄色に変化させる。また、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が90%から91%に変化した場合に、照明光63の色を白色から黄色に変化させる。
【0062】
また、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%及び100%のときはブザー71をオン状態とし、上記出力電圧比が0%超100%未満のときはブザー71をオフとする。つまり、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が所定の条件を満たした場合に、ブザー71の発音状態を変化させる。具体例を挙げると、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%から1%に変化した場合に、ブザー71をオン状態からオフ状態に変化させる。また、制御部50は、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が99%から100%に変化した場合に、ブザー71をオフ状態からオン状態に変化させる。
【0063】
これにより、回転型ダイアル11のツマミ21をユーザーが回転操作する場合、目盛部23に表示される数字が[000]となる区間、すなわち端末Ecw及び端末Eccwの区間では、発光素子68が赤色に点灯すると共に、ブザー71がオン状態になる。また、目盛部23に表示される数字が[000超、100以下]及び[900超、999以下]となる区間では、発光素子68が黄色に点灯すると共に、ブザー71がオフ状態になる。また、目盛部23に表示される数字が[100超、900以下]となる区間では、発光素子68が白色に点灯すると共に、ブザー71がオフ状態となる。
【0064】
したがって、ツマミ21を回転操作するユーザーは、目盛部23に照射される発光素子68の照明光63が赤色となり、かつ、ブザー71の音が鳴った場合に、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力に基づく出力電圧比が、0%又は100%になったことを認識することができる。また、ユーザーは、目盛部23に照射される発光素子68の照明光63が黄色になった場合に、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力に基づく出力電圧比が、0%超10%以下又は90%超100%未満になったことを認識することができる。また、ユーザーは、目盛部23に照射される発光素子68の照明光63が白色になった場合に、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力に基づく出力電圧比が、10%超90%以下の範囲にあることを認識することができる。
【0065】
このように、本実施形態に係る回転型ダイアル11を備えるポテンショメータ付きダイアル10によれば、ユーザーがツマミ21を回している最中でも、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が所定の値または所定の範囲になったことを、目盛部23の表示内容を読み取らなくてもユーザーに認識させることができる。これにより、たとえばユーザーがツマミ21を回して調整すべき調整範囲が、出力電圧比=10%超90%以下の範囲である場合に、ユーザーは、目盛部23に照射される照明光63の色が白色から黄色に切り替わったタイミングで、上記調整範囲から外れてしまったことを認識することができる。また、ユーザーは、照明光63の色が黄色になっている状況でツマミ21の回転操作を開始する場合に、目盛部23に照射される照明光63の色が黄色から白色に切り替わることでツマミ21の回転方向が正しいことを認識する一方、照明光63の色が黄色から赤色に切り替わることでツマミ21の回転方向が誤っていることを認識することができる。このため、ユーザーの誤操作によって無駄な時間が発生することを抑制し、ツマミ21の回転操作を効率良く行うことができる。
【0066】
なお、上記
図18に示す例では、CW方向の端末EcwとCCW方向の端末ECcwで、いずれも照明光63の点灯色を赤色にしているが、端末Ecwと端末ECcwで照明光63の点灯色を変えてもよい。これにより、ツマミ21を回転操作するユーザーは、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が、0%であるのか100%であるのかを判別することが可能となる。同様に、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が、0%超10%以下のときと90%超100%未満のときで照明光63の点灯色を変えることにより、ユーザーは、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が、0%超10%以下の範囲にあるのか、90%超100%未満の範囲にあるのかを判別することが可能となる。また、ブザー71の音に関しても、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%のときと100%のときで音の種類を変えることにより、ユーザーは、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が、0%であるのか100%であるのかを判別することが可能となる。
【0067】
また、上記
図18に示す例では、ツマミ21を回転操作する際に終端となる端末(Ecw、Eccw)及び端末付近で照明光63の色を変えたりブザー71の発音状態を変えるように、発光素子用パラメータ及びブザー用パラメータを設定しているが、これらのパラメータは、上記プログラムの変更によって任意に設定可能である。したがって、ツマミ21の回転操作によって最終的に合わせるべき目盛部23の表示内容(3桁の数字)に対応する出力電圧比が、たとえば45%である場合は、43%以上47%未満の区間を白色点灯区間とし、40%以上43%未満及び47%超50%以下の区間を黄色点灯区間とするように、発光素子用パラメータを設定してもよい。このように、最終的に合わせるべき目盛部23の表示内容に対応する多回転型ポテンショメータ12の電気的出力及びその付近で照明光63の色が変化するように、発光素子用パラメータを設定することにより、ツマミ21の回転角度が目標とする回転角度に近づいたことを、目盛部23の表示内容を読み取らなくてもユーザーに認識させることができる。このため、ツマミ21の回転操作をより一層効率良く行うことができる。以上の点は、発光素子用パラメータだけでなく、ブザー用パラメータについても同様である。
【0068】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0069】
たとえば、上記実施形態においては、目盛部23に表示される数字の桁数が3桁になっているが、目盛部23の桁数は3桁より多くしても少なくてもよい。また、目盛部23に表示される文字は、数字に限らず、英字、記号又は複数種の文字の組み合わせでもよい。また、目盛の表示方式は、デジタル方式でもアナログ形式でもよい。また、目盛部23は、ツマミ21の回転角度に応じて表示内容が変化するものであればよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、ツマミ21と別体に目盛部23が設けられているが、これに限らず、ツマミと一体に目盛部が設けられていてもよい。上記実施形態のようにツマミ21と別体に目盛部23を設けた場合は、ツマミ21を回転操作するユーザーの手指が目盛部23を隠すことがないため、目盛部23に照射される照明光63の色をユーザーが感知しやすいという利点がある。
【0071】
また、上記実施形態においては、照明部30の発光素子68が発する照明光63を目盛部23に照射する構成になっているが、これに限らず、照明光63を照射する部分は、目盛部23の近傍であってもよい。具体的には、たとえば目盛部23の近傍に照明光63の照射によって色が変わる窓部(不図示)を設け、この窓部に照明光63を照射する構成であってもよい。つまり、照明光63を照射する部分は、ツマミ21を回転操作するユーザーの視野内に存在する部分であればよい。
【0072】
また、上記実施形態においては、回転型ダイアルと回転型ポテンショメータとを組み合わせてポテンショメータ付きダイアルを構成しているが、本発明の効果が得られる範囲において、回転型ダイアルの種類と回転型ポテンショメータの種類は限定されない。
【0073】
また、上記実施形態においては、ポテンショメータの電気的出力がツマミの回転角度に応じて直線的に変化しているが、ポテンショメータの電気的出力は直線変化に限らず、たとえばスイッチ出力、関数出力、方形波出力などでもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、照明光63の色を3色(黄色、白色、赤色)としたが、照明光63の色の種類と数は、任意に変更可能である。たとえば、ツマミ21の回転角度が端末Ecw又は端末Eccwに近づくにつれて、照明光63の色を2段階、3段階又はそれ以上の段階で変化させてもよい。これにより、ユーザーは、ツマミ21の回転角度が端末Ecw又は端末Eccwにどの程度近づいていることを、照明光63の色の変化によって認識することができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、ブザー71の発音状態を変化させる具体的な態様として、ブザー71の音が鳴っている状態と鳴っていない状態のいずれかに切り替えるようにしたが、これに限らず、ブザー71が発する音の種類を変えてもよい。音の種類は、たとえば、連続音、間欠音、間欠音のピッチ、音量、音質、音程などで分けることができる。また、ツマミ21の回転角度が端末Ecw又は端末Eccwに近づくにつれてブザー71の音量を変化させてもよい。これにより、ユーザーは、ツマミ21の回転角度が端末Ecw又は端末Eccwにどの程度近づいていることを、ブザー71の音量の変化によって認識することができる。
【0076】
また、上記実施形態においては、照明光63の照射状態を変化させる具体的な態様として、照明光63の色を変化させているが、これに限らず、所定の条件を満たす場合に照明光63を照射(発光素子68を発光)し、それ以外の場合に照明光63を照射しない構成としてもよい。たとえば、多回転型ポテンショメータ12の出力電圧比が0%及び100%のときは発光素子68を点灯させ、それ以外は発光素子68を消灯させてもよい。また、多回転型ポテンショメータ12の電気的出力が目標とする値に近づいたときは発光素子68を点灯させ、それ以外は発光素子68を消灯させてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、照明部30とブザー71の両方を備える構成を採用しているが、照明部30及びブザー71のうちいずれか一方のみを備える構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…ポテンショメータ付きダイアル、11…回転型ダイアル、12…多回転型ポテンショメータ、21…ツマミ、23…目盛部、30…照明部、47…照明用基板、49…透明板、50…制御部(報知部)、52…マスクプレート、63…照明光、68…発光素子、71…ブザー、76…凸面部