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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】実装装置及び実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022541399
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020029959
(87)【国際公開番号】W WO2022029916
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャンギーロブ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/003107(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/013300(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181403(WO,A1)
【文献】特開2010-192615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着材料を介して半導体チップを被実装体に実装する実装装置であって、
前記半導体チップを保持するとともに、前記被実装体に対して接離方向に移動して、前記半導体チップを前記被実装体に押圧する熱圧着ツールと前記熱圧着ツールの加熱と冷却を行うツール加熱冷却機構とが取付けられた実装ヘッドと、
カバーフィルムを移動させて前記被実装体に押圧される前記半導体チップと前記熱圧着ツールとの間に前記カバーフィルムを配置するフィルム配置機構と、
前記実装ヘッドと前記フィルム配置機構の移動を制御すると共に、前記ツール加熱冷却機構により前記熱圧着ツールの温度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カバーフィルムが前記半導体チップと前記熱圧着ツールとの間に介在した状態で前記半導体チップを前記被実装体に押圧するとともに、前記熱圧着ツールを加熱後に冷却して前記半導体チップを前記被実装体に実装する実装手段と、
前記半導体チップの実装後に、前記熱圧着ツールを加熱してから前記実装ヘッドを上昇させて前記カバーフィルムから剥離する剥離手段と、
を備えることを特徴とする実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の実装装置であって、
前記剥離手段は、
前記半導体チップを前記被実装体に実装した後、前記実装ヘッドを僅かに上昇させた状態で前記ツール加熱冷却機構によって前記熱圧着ツールを所定温度まで昇温させた後、前記実装ヘッドを上昇させること、
を特徴とする実装装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の実装装置であって、
前記熱圧着ツールは、前記半導体チップを吸着保持し、
前記実装手段は、
前記熱圧着ツールに前記半導体チップを吸着保持させて前記実装ヘッドを下降させて前記接着材料を介して前記被実装体の上に前記半導体チップを仮圧着し、
前記半導体チップと前記熱圧着ツールとの間に前記カバーフィルムを介在させ、仮圧着された前記半導体チップを押圧して前記半導体チップを前記被実装体に実装すること、
を特徴とする実装装置。
【請求項4】
接着材料を介して半導体チップを被実装体に実装する実装方法であって、
前記半導体チップを保持するとともに、前記被実装体に対して接離方向に移動して、前記半導体チップを前記被実装体に押圧する熱圧着ツールが先端に取付けられた実装ヘッドと、前記実装ヘッドに取付けられて前記熱圧着ツールの加熱と冷却を行うツール加熱冷却機構と、前記半導体チップと前記熱圧着ツールとの間にカバーフィルムを配置するフィルム配置機構と、を備える実装装置を準備する準備工程と、
前記半導体チップを前記被実装体に実装する際に、前記フィルム配置機構によって前記半導体チップと前記熱圧着ツールとの間に前記カバーフィルムを介在させるフィルム配置工程と、
前記カバーフィルムが前記半導体チップと前記熱圧着ツールとの間に介在した状態で、前記半導体チップを前記被実装体に押圧するとともに、前記熱圧着ツールを加熱後に冷却して前記半導体チップを前記被実装体に実装する実装工程と、
前記実装工程の後に、前記熱圧着ツールを加熱してから前記実装ヘッドを上昇させて前記カバーフィルムから剥離する剥離工程と、
を含むことを特徴とする実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着材料を介して半導体チップを基板または他の半導体チップである被実装体に実装する実装装置の構造及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体チップを、ワイヤを介することなく、基板または他の半導体チップである被実装体に実装するフリップチップボンダ技術が広く知られている。フリップチップボンダでは、予め、被実装体に熱硬化性樹脂からなる接着材料を塗布しておき、熱圧着ツールによって半導体チップを昇温及び押圧して電極上のはんだを溶融させると共に被実装体の上の接着材料を硬化させた後、熱圧着ツールを冷却してはんだを固化させて基板に半導体チップを接合する。この場合、熱圧着ツールで半導体チップを昇温および加圧する際に、半導体チップで押し出された接着材料が、上方に這い上がり、実装ヘッドに付着することがあった。
【0003】
こうした接着材料の熱圧着ツールへの付着を防止するために、熱圧着ツールの底面を、フィルム部材(カバーフィルム)で覆った実装装置が開示されている。例えば、特許文献1には、ボンディングヘッドに、熱圧着ツールと、フィルム部材を順次フィードするフィルム部材搬送機構と、を設け、フィルム部材により熱圧着ツールへの接着材料の付着を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-35493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された実装装置では、半導体チップを被実装体に実装する際に熱圧着ツールで半導体チップを昇温および加圧すると、熱圧着ツールと半導体チップとの間に介在させているカバーフィルムが熱膨張し、その後熱圧着ツールを冷却するとカバーフィルムが冷却により収縮して、熱圧着ツールの側面または底面に張り付く場合がある。このように、熱圧着ツールの側面または底面にカバーフィルムが張り付くと、カバーフィルムが熱圧着ツールから外れなくなる場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱圧着ツールと半導体チップとの間にカバーフィルムを介在させて接着材料を介して被実装体に半導体チップを実装する実装装置において、実装後に熱圧着ツールをカバーフィルムから容易に剥離させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実装装置は、接着材料を介して半導体チップを被実装体に実装する実装装置であって、半導体チップを保持するとともに、被実装体に対して接離方向に移動して、半導体チップを被実装体に押圧する熱圧着ツールと熱圧着ツールの加熱と冷却を行うツール加熱冷却機構とが取付けられた実装ヘッドと、カバーフィルムを移動させて被実装体に押圧される半導体チップと熱圧着ツールとの間にカバーフィルムを配置するフィルム配置機構と、実装ヘッドとフィルム配置機構の移動を制御すると共に、ツール加熱冷却機構により熱圧着ツールの温度を制御する制御部と、を備え、制御部は、カバーフィルムが半導体チップと熱圧着ツールとの間に介在した状態で半導体チップを被実装体に押圧するとともに、熱圧着ツールを加熱後に冷却して半導体チップを被実装体に実装する実装手段と、半導体チップの実装後に、熱圧着ツールを加熱してから実装ヘッドを上昇させてカバーフィルムから剥離する剥離手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように、半導体チップの実装後に熱圧着ツールを所定温度まで昇温し、半導体チップを実装する際に熱圧着ツールの側面または底面に張り付いたカバーフィルムを熱膨張させて熱圧着ツールの側面または底面への張り付き力を低減させた後に実装ヘッドを上昇させるので、実装ヘッドを上昇させる際に熱圧着ツールをカバーフィルムから容易に剥離させることができる。
【0009】
本発明の実装装置において、剥離手段は、半導体チップを被実装体に実装した後、実装ヘッドを僅かに上昇させた状態でツール加熱冷却機構によって熱圧着ツールを所定温度まで昇温させた後、実装ヘッドを上昇させてもよい。
【0010】
これにより、熱圧着ツールとカバーフィルムとの間にわずかな隙間ができ、熱圧着ツールを昇温させた際に実装した半導体チップや硬化した接着材料の温度上昇を低減でき、実装した半導体チップや接着材料の劣化や損傷を抑制することができる。
【0011】
本発明の実装装置において、熱圧着ツールは、半導体チップを吸着保持し、実装手段は、熱圧着ツールに半導体チップを吸着保持させて実装ヘッドを下降させて接着材料を介して被実装体の上に半導体チップを仮圧着し、半導体チップと熱圧着ツールとの間にカバーフィルムを介在させ、仮圧着された半導体チップを押圧して半導体チップを被実装体に実装してもよい。
【0012】
これにより、特許文献1に記載されたように、カバーフィルムに通気孔を設けることなく半導体チップを実装することができ、タクトタイムを短くすることができる。
【0013】
本発明の実装方法は、接着材料を介して半導体チップを被実装体に実装する実装方法であって、半導体チップを保持するとともに、被実装体に対して接離方向に移動して、半導体チップを被実装体に押圧する熱圧着ツールが先端に取付けられた実装ヘッドと、実装ヘッドに取付けられて熱圧着ツールの加熱と冷却を行うツール加熱冷却機構と、半導体チップと熱圧着ツールとの間にカバーフィルムを配置するフィルム配置機構と、を備える実装装置を準備する準備工程と、半導体チップを被実装体に実装する際に、フィルム配置機構によって半導体チップと熱圧着ツールとの間にカバーフィルムを介在させるフィルム配置工程と、 カバーフィルムが半導体チップと熱圧着ツールとの間に介在した状態で、半導体チップを被実装体に押圧するとともに、熱圧着ツールを加熱後に冷却して半導体チップを被実装体に実装する実装工程と、実装工程の後に、熱圧着ツールを加熱してから実装ヘッドを上昇させてカバーフィルムから剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、熱圧着ツールと半導体チップとの間にカバーフィルムを介在させて接着材料を介して被実装体に半導体チップを実装する実装装置において、実装後に熱圧着ツールをカバーフィルムから容易に剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の実装装置の構成を示す系統図である。
図2】実施形態の実装装置の概略平面図である。
図3】半導体チップの仮圧着の動作を示す側面図である。
図4】仮圧着した半導体チップと熱圧着ツールの間にカバーフィルムを介在させた状態を示す側面図である。
図5】半導体チップの実装の際の昇温動作を示す側面図である。
図6図5のA部の詳細を示す側面図である。
図7】半導体チップの実装の際の冷却動作を示す側面図である。
図8図7のB部の詳細を示す側面図である。
図9】実装の後の昇温動作を示す側面図である。
図10図9に示すC部の詳細を示す側面図である。
図11】昇温動作後に実装ヘッドを上昇させた状態を示す側面図である。
図12】熱圧着ツールの温度変化を示すグラフである。
図13】カバーフィルムの熱圧着ツールへの張り付き力の変化を示すグラフである。
図14】熱圧着ツールの高さの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら実施形態の実装装置10について説明する。図1に示す様に、実装装置10は、被実装体である基板104の上に複数の半導体チップ100を実装することで半導体装置を製造する装置である。半導体チップ100は、フリップチップボンダ技術で、基板104に実装される。具体的には、各半導体チップ100の底面にバンプ102と呼ばれる導電性材料からなる突起を形成した後、半導体チップ100を反転させ、バンプ102を、基板104の表面に形成された電極105に接合することで、半導体チップ100と基板104とが電気的に接続される。
【0017】
図2に示す様に、基板104には、半導体チップ100を実装する実装区画106が二次元アレイ状に規定されている。図示例では、一つの基板104に15個の実装区画106が3行5列で規定されている。各実装区画106の表面には、半導体チップ100のバンプ102と電気的に接続される電極105が複数形成されている。また、各実装区画106には、あらかじめ、非導電性ペースト(NCP)または非導電性フィルム(NCF)と呼ばれる接着材料108が塗布されている。接着材料108は、絶縁性を有するとともに熱硬化性を有する熱硬化性樹脂からなる。この接着材料108の上に半導体チップ100を載置して基板104に押し付けるとともに半導体チップ100を加熱することで、接着材料108が硬化し、半導体チップ100が、基板104に機械的に接着、固定される。なお、このように基板104に、予め接着材料108を塗布しておく方式は、一般に、「先塗布方式」と呼ばれる。
【0018】
実装装置10は、各半導体チップ100を、仮圧着した後に、基板104に実装する。仮圧着は、半導体チップ100を、基板104のうち、対応する実装区画106(接着材料108)に仮置きすることである。また、実装は、仮圧着された半導体チップ100を、加熱するとともに加圧することで、半導体チップ100を基板104に機械的・電気的に接続することである。実装の際、半導体チップ100は、接着材料108の硬化温度以上、かつ、バンプ102の溶融温度以上の温度で加熱される。本例では、複数の実装区画106において半導体チップ100の仮圧着を連続して実行した後、この仮圧着された複数の半導体チップ100の実装を連続して実行する。
【0019】
実装装置10は、上述した手順で、半導体チップ100を基板104に実装するための装置である。この実装装置10は、ボンディングステージ20、実装ヘッド17、基台21、フィルム配置機構22、および、これら各部の移動を制御する制御部50等を有している。
【0020】
ボンディングステージ20は、基板104が載置されるステージである。このボンディングステージ20には、例えば、基板104を吸引保持する吸引孔(図示せず)や、基板104を加熱するためのヒータ(図示せず)などが設けられている。このボンディングステージ20は、基台21によって支えられている。
【0021】
実装ヘッド17は、ボンディングステージ20と対向して設けられており、本体11と、本体11の下側に取付けられた断熱ブロック12と、断熱ブロック12の下側に取付けらたれヒータ14と、ヒータ14の下側に取付けらたれ熱圧着ツール16とで構成されている。
【0022】
本体11は、内部に設けられた駆動機構によりボンディングステージ20の上に吸着された基板104に対して接離するように上下方向に移動可能であると共に、基板104に対して水平方向にも移動可能となっている。
【0023】
断熱ブロック12は、本体11とヒータ14との間に挟まれて、ヒータ14の熱が本体11に伝わるのを防止するセラミックス製の板状部材である。ヒータ14は、窒化アルミ等のセラミックスの内部に白金或いはタングステン等で構成された発熱抵抗体を埋め込んだものである。
【0024】
ヒータ14の上面には、図1の紙面に垂直方向に延びる2つの冷却溝15が設けられている。また、断熱ブロック12には、側面からL字型に延びて側面とヒータ14に設けられた冷却溝15とを連通する空気流路13が設けられている。ヒータ14は、制御部50から電力が入力されると発熱抵抗体が発熱して温度が上昇し、ヒータ14の下側に取付けられている熱圧着ツール16を加熱する。また、ファン19からの空気を断熱ブロック12の空気流路13に流すとヒータ14が冷却され、これにより、熱圧着ツール16が冷却される。従って、断熱ブロック12とヒータ14とファン19とは、熱圧着ツール16を加熱及び冷却するツール加熱冷却機構を構成する。
【0025】
熱圧着ツール16は、上面の大きさがヒータ14と略同一の大きさで、下側に半導体チップ100の吸着及び押圧を行う突部16aが設けられている。突部16aの大きさは半導体チップ100の大きさと略同一である。熱圧着ツール16はセラミックス製である。
熱圧着ツール16には、半導体チップ100を吸引保持するための吸引孔18が形成されている。この吸引孔18は、ヒータ14、断熱ブロック12を貫通して本体11から図示しない吸引ポンプに連通されており、当該吸引ポンプによって発生する負圧により、半導体チップ100が、熱圧着ツール16の突部16aの下面に吸引保持される。
【0026】
実装装置10の基台21には、半導体チップ100を実装する際に、仮圧着された半導体チップ100と熱圧着ツール16との間にカバーフィルム110を介在させるフィルム配置機構22が設置されている。本例では、一方向に長尺な帯状のカバーフィルム110を用いている。このカバーフィルム110の素材としては、耐熱性に優れ、接着材料108の剥離性が高い素材が適している。したがって、カバーフィルム110の素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂を用いることができる。
【0027】
フィルム配置機構22は、帯状のカバーフィルム110を順次、基板104の上方に送出するフィルム送出機構24を有している。フィルム送出機構24は、ボンディングステージ20を挟んで両側に設けられた送出ローラ28aおよび巻取ローラ28b(以下、送出ローラ28a/巻取ローラ28bを区別しない場合は、単に「フィードローラ28」と呼ぶ)を有している。カバーフィルム110は、この一対のフィードローラ28の間に掛け渡されている。送出ローラ28aが、所定の送出方向(図1における矢印29方向)に回転することで、新たなカバーフィルム110が、順次、送出される。また、送出ローラ28aと連動して巻取ローラ28bが、送出ローラ28aと同方向に回転することで、使用済みのカバーフィルム110が、巻取ローラ28bに巻き取られて回収される。つまり、一対のフィードローラ28が同方向に回転することで、カバーフィルム110がフィードされる。
【0028】
フィルム配置機構22は、さらに、このフィルム送出機構24ごとカバーフィルム110を水平方向に移動させるフィルム移動機構30を備えている。フィルム移動機構30は、第一方向(図示例では、長方形の基板104の長尺方向)に延びる一対のレール32と、当該レール32に沿ってスライド移動する移動ブロック34と、を有している。また、フィルム配置機構22は、フィルム送出機構24ごとカバーフィルム110を昇降させるフィルム昇降機構(図示せず)を備えている。フィルム昇降機構は、フィードローラ28の高さを可変できる機構であれば特に限定されない。
【0029】
制御部50は、実装ヘッド17の本体11と、ヒータ14と、ファン19と、フィルム配置機構22、と、ボンディングステージ20とに接続されて、実装ヘッド17とフィルム配置機構22の移動を制御すると共に、ヒータ14とファン19によって熱圧着ツール16の温度を制御する。制御部50は、例えば、各種演算を行うCPUと、各種データおよびプログラムを記憶するメモリと、を備えている。制御部50には、各種センサでの検知結果が入力されており、制御部50は、この検知結果に応じて、各部の駆動制御及び温度制御を行う。例えば、制御部50は、実装ヘッド17の移動制御や、熱圧着ツール16およびボンディングステージ20の温度制御、吸引機構の駆動制御などを行う。また、制御部50は、カバーフィルム110を適切な位置に配置するべく、フィルム配置機構22の移動制御も行う。
【0030】
以下、図3から図14を参照しながら実施形態の実装装置10の動作について説明する。半導体チップ100を実装する際には、ボンディングステージ20に基板104が載置される。図2に示す様に、基板104の実装区画106には、予め、または、ボンディングステージ20に載置した後に、接着材料108が塗布される。
【0031】
制御部50は、基板104の各実装区画106に半導体チップ100を仮圧着させる。具体的には、制御部50は、実装ヘッド17を図示しないチップ供給源に移動し、先端に取り付けられた熱圧着ツール16の突部16aに、半導体チップ100を吸引保持させる。そして、制御部50は、実装ヘッド17の本体11を駆動して実装ヘッド17を対応する実装区画106の真上に移動させる。
【0032】
その後、制御部50は、図3に示す様に、実装ヘッド17を基板104に向かって矢印90のように下降させ、先端の熱圧着ツール16の突部16aに吸引保持した半導体チップ100を対応する実装区画106(ひいては接着材料108)の上に押し当てる。これにより、半導体チップ100を基板104と接着材料108の上に仮圧着する。一つの半導体チップ100が仮圧着できれば、実装ヘッド17は、当該半導体チップ100の吸引を解除した上で上昇する。その後、実装ヘッド17は、同様の手順で、全ての半導体チップ100の仮圧着を順次、行っていく。
【0033】
仮圧着処理の際、制御部50は、フィルム移動機構30を駆動して、カバーフィルム110を退避位置に移動させる。退避位置とは、半導体チップ100が仮圧着される実装区画106から水平方向に離間した位置である。
【0034】
制御部50は、仮圧着処理が終了したら、フィルム配置工程を実行する。制御部50は、図4に示す様に、フィルム移動機構30を駆動して、カバーフィルム110を水平方向に移動させ、仮圧着した半導体チップ100の真上であって、当該半導体チップ100と熱圧着ツール16との間の位置に移動させる。そして、制御部50は、フィルム昇降機構でカバーフィルム110を下降させカバーフィルム110が半導体チップ100の上面とほぼ同じ高さ位置になるようにする。
【0035】
制御部50は、図14の時刻t0に実装工程を開始する。制御部50は、図14の時刻t0に実装ヘッド17の本体11を下降させて図5に示す様に熱圧着ツール16の突部16aでカバーフィルム110の上から仮圧着された半導体チップ100の押圧を開始する。押圧により、接着材料108は、半導体チップ100の周囲にはみ出し、一部の接着材料108は半導体チップ100の側面を這い上がり、カバーフィルム110の下面に達する。また、押圧により、半導体チップ100に形成されたバンプ102が基板104の電極105に接する。
【0036】
制御部50は、図12に示す時刻t1にヒータ14への電力の供給を開始してヒータ14により熱圧着ツール16を昇温させる。熱圧着ツール16の温度が上昇すると、熱により半導体チップ100が加熱され、接着材料108が軟化する。更に温度を上昇させてバンプ102の溶融温度以上となると半導体チップ100のバンプ102が溶融する。この際、制御部50は、図14に示すように、半導体チップ100の基板104からの高さが実装後の高さで一定となるように実装ヘッド17の高さを制御する。また、温度が接着材料108の硬化温度まで上昇すると接着材料108が熱硬化を開始する。このように、制御部50は、接着材料108の硬化温度以上、かつ、バンプ102の溶融温度以上の温度T1まで熱圧着ツール16を加熱する。温度T1は、例えば、300℃程度でもよい。
【0037】
カバーフィルム110は、昇温過程の間、熱圧着ツール16による加熱のために図5図6に示す矢印91に示す様に熱圧着ツール16から外側に向かって熱膨張していく。また、カバーフィルム110は押圧により、僅かに下向きに凹むように変形する。このため、図6に示す様に、カバーフィルム110は熱圧着ツール16の突部16aの底面の角から斜め上方向に延びるように変形する。
【0038】
制御部50は、図12の時刻t2にファン19を始動して図7の矢印92に示す様に、断熱ブロック12の空気流路13に冷却空気を流し始める。冷却空気は空気流路13からヒータ14の冷却溝15を流れて冷却溝15から図7の紙面垂直方向に流出する。これによってヒータ14が冷却されて温度が低下し、それに伴って熱圧着ツール16の温度も低下し、溶融していたバンプ102が硬化し、時刻t3に基板104の電極105との接合が完了する。また、熱硬化した接着材料108の温度も低下する。これにより、制御部50は実装工程を終了する。
【0039】
実装工程中の熱圧着ツール16の冷却により熱圧着ツール16の温度が低下してくるとカバーフィルム110の温度も低下してくる。すると、図6で熱圧着ツール16の突部16aの底面の角部から斜め上方向に向かって延びていた部分が冷却により、図7図8の矢印93に示す様に熱圧着ツール16の突部16aの側面に向かって収縮してくる。そして、冷却が進むと、熱圧着ツール16の突部16aの側面または底面に張り付く。張り付き力fは、図13の時刻t2からt3にかけ次第に大きくなり、時刻t3には、張り付き力fはf3に達する。このように、熱圧着ツール16の突部16aの側面または底面にカバーフィルム110が張り付くと、実装ヘッド17を上昇させた際にカバーフィルム110が熱圧着ツール16から外れなくなる場合がある。
【0040】
制御部50は、ファン19からの冷却空気を空気流路13に流してヒータ14を冷却し、これによって熱圧着ツール16を冷却する。そして。図12に示す時刻t3に温度T3まで熱圧着ツール16の温度が低下したらファン19を停止して空気流路13への冷却空気の流入を停止する。これにより、半導体チップ100の実装が終了する。温度T3は、例えば、接着材料108が軟化を開始する温度以下としてもよい。これにより、熱圧着ツール16の突部16aに半導体チップ100を吸着保持して接着材料108の上に仮圧着した際に接着材料108が軟化して、仮圧着した半導体チップ100の位置がずれることを抑制できる。
【0041】
制御部50は、図14に示す様に、実装開始の時刻t0から半導体チップ100の実装終了の時刻t3までの間は、熱圧着ツール16の高さが一定となるように実装ヘッド17の高さを制御している。制御部50は、実装工程が終了する図14の時刻t3になると、剥離工程を開始する。制御部50は、時刻t3に実装ヘッド17の本体11を駆動して熱圧着ツール16の高さを高さΔhだけ僅かに上昇させ、その高さを保持する。
【0042】
図9に示す様に、熱圧着ツール16の高さがΔhだけ高くなると、熱圧着ツール16の突部16aの側面または底面に張り付いているカバーフィルム110は、熱圧着ツール16の突部16aの側面または底面に張り付いたまま、熱圧着ツール16と共に僅かに上昇する。すると、カバーフィルム110と実装が終了した半導体チップ100の上面との間に僅かな隙間ができる。
【0043】
制御部50は、熱圧着ツール16の高さを保持したまま、図12の時刻t3にヒータ14に電力を供給してヒータ14により熱圧着ツール16を所定温度T2まで昇温させる。これにより、図8に示す様に熱圧着ツール16の突部16aの側面または底面に張り付いていたカバーフィルム110は、図9図10に示す矢印94のように熱膨張して突部16aの側面または底面から離れる。そして、図12図13の時刻t3からt4のように、熱圧着ツール16の温度が上昇するに従って、カバーフィルム110の熱圧着ツール16への張り付き力fは低下してくる。そして、熱圧着ツール16の温度が時刻t4に所定温度T2まで上昇すると、カバーフィルム110の張り付き力fはf2まで低下する。
【0044】
制御部50は、熱圧着ツール16の温度が所定温度T2となると、時刻t4にヒータ14への電力の供給を停止して実装ヘッド17の本体11を駆動して図11に示す矢印95のように実装ヘッド17を上昇させる。この際、一対のフィードローラ28の間に掛け渡されているカバーフィルム110はそのままの位置で上昇せず、熱圧着ツール16への張り付き力fはf2まで低下しているので、熱圧着ツール16はカバーフィルム110から剥離して本体11と共に上昇する。これにより、剥離工程が終了する。
【0045】
制御部50は、実装ヘッド17を上昇させたら、再びファン19を始動してヒータ14と熱圧着ツール16を温度T3まで冷却する。
【0046】
ここで、所定温度T2は、実装ヘッド17を上昇させた際にカバーフィルム110が熱圧着ツール16から離れる程度までカバーフィルム110の張り付き力fを低減できる温度であれば自由に設定することが出来る。例えば、温度T1の50%程度の温度としてもよいし、150℃~200℃程度に設定してもよい。
【0047】
以上、説明したように、実施形態の実装装置10は、半導体チップ100の実装後に熱圧着ツール16を所定温度T2まで昇温し、半導体チップ100を実装する際に熱圧着ツール16の側面または底面に張り付いたカバーフィルム110を熱膨張させて熱圧着ツール16の側面または底面への張り付き力fを低減させた後に実装ヘッド17を上昇させるので、実装ヘッド17を上昇させる際に熱圧着ツール16をカバーフィルム110から容易に剥離させることができる。
【0048】
また、実施形態の実装装置10は、半導体チップ100の実装後、実装ヘッド17をわずかに上昇させて熱圧着ツール16とカバーフィルム110との間にわずかな隙間ができた状態で熱圧着ツール16を昇温させるので、熱圧着ツール16を昇温させた際に実装した半導体チップ100や硬化した接着材料108の温度上昇を低減でき、実装した半導体チップ100や接着材料108の劣化や損傷を抑制することができる。更に、ヒータ14の熱が半導体チップ100や接着材料108に伝わらないので、熱圧着ツール16とカバーフィルム110の温度を短時間に所定温度T2まで上昇させることができる。このため、タクトタイムが長くならないようにしつつ、熱圧着ツール16をカバーフィルム110から容易に剥離させることができる。
【0049】
また、実施形態の実装装置10は、熱圧着ツール16に半導体チップ100を吸着保持させて半導体チップ100を基板104の上の接着材料108の上に仮圧着し、その後、仮圧着した半導体チップ100と熱圧着ツール16との間にカバーフィルム110を介材させて半導体チップ100を加熱、押圧して半導体チップ100を基板104に実装するので、特許文献1に記載された従来技術の実装装置のように、カバーフィルム110に通気孔をあける必要がなく、従来技術の実装装置よりもタクトタイムを短くすることができる。
【0050】
なお、実装装置10において、半導体チップ100の実装後に実装ヘッド17を上昇させずに熱圧着ツール16を昇温させてもよい。この場合も先に説明したと同様、カバーフィルム110の熱膨張により張り付き力fを低減して熱圧着ツール16をカバーフィルム110から容易に剥離させることができる。ただし、この場合、実装した半導体チップ100や硬化した接着材料108の熱劣化等を抑制できるように所定温度T2は先の例よりも少し低めの、例えば、100℃~150℃程度にしてもよい。
【0051】
以上の説明では、実装装置10は、基板104の上に半導体チップ100を実装するとして説明したが、これに限らず、他の半導体チップ100の上に半導体チップ100を実装することもできる。この場合、他の半導体チップ100は、基板104と同様、被実装体を構成する。
【符号の説明】
【0052】
10 実装装置、11 本体、12 断熱ブロック、13 空気流路、14 ヒータ、15 冷却溝、16 熱圧着ツール、16a 突部、17 実装ヘッド、18 吸引孔、19 ファン、20 ボンディングステージ、21 基台、22 フィルム配置機構、24 フィルム送出機構、28 フィードローラ、28a 送出ローラ、28b 巻取ローラ、30 フィルム移動機構、32 レール、34 移動ブロック、50 制御部、100 半導体チップ、102 バンプ、104 基板、105 電極、106 実装区画、108 接着材料、110 カバーフィルム。
図1
図2
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図10
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図14