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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】光線治療器および電極棒
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
A61N5/06 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022552657
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010071
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】522346523
【氏名又は名称】株式会社DR-COCOS
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】新石 康人
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3110522(JP,U)
【文献】特開昭59-160950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06 ― 5/08
H05B 31/00 ― 31/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
請求項1に記載の光線治療器の一対の電極に使用される、炭素、窒化チタンおよび、カリウムまたはカリウム化合物を含む電極棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間にアーク放電を生じさせ、アーク放電により発生した光線をウイルス感染症等の疾病の予防や治療に利用する光線治療器および光線治療器に使用される電極棒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アーク放電を利用した光線治療器に使用する電極棒において、炭素のみでは発光強度は微弱であるため、発光強度を増強するために金属を混合させた電極棒が知られている。特許文献1では、発光強度を増強するために、炭素に加えてセリウム、ランタン等のランタノイド系希土類やアルカリ金属等を混合させることが開示されている。
【0003】
電極棒に金属を混合させることにより、アーク放電により生じる光線の発光スペクトルが変化する。金属はその元素に応じた固有の波長域の発光スペクトルを有するためである。スペクトルの幅は単一元素では、種類によらず、ほぼ一様であり狭い。また、添加した金属元素が1つであれば発光ピーク数は、基本的に1つである。従来の電極棒では、添加する金属の種類は限られており、発光ピークの数やピークをもつ波長域の幅は、添加した金属元素の種類以上には増やしたり、拡張したりすることはできなかった。そして従来の光線治療器の用途は、温熱療法による身体の痛みの軽減や循環の改善、サーカディアンリズムの調整等、限られたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭53-083360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光線治療器では、アーク放電により生じる光線の発光スペクトルを調整するという思想はなく、アーク放電を利用した光線治療器が特定の用途以外に有効に活用されていなかった。本発明は、光線の波長域を最適に増強、調整するとともに光線治療器の利便性を高めることで、アーク放電により発生する光線をウイルス感染症等の疾病の予防や治療に有効に幅広く利用することを目的とする。
【0006】
アーク放電の高温下での安全性や人体への有害な影響を考慮すると、電極棒に実際に使用できる金属元素の種類はかなり限られる。例えば、非金属の炭素についてもさらに高温加工したカーボンナノチューブのヒュームは吸引すると肺線維症の恐れがあり、純粋なカーボンまたは黒鉛が望ましい。赤外線を発するケイ素化合物についてもじん肺や発がん性の恐れがある等、アーク放電において使用できる元素ではない。ガラスによる密封環境で使用されている蛍光灯に使用されるハロリン酸カルシウムのような多くの有害元素を複合的に含んだ化合物は、光線治療器においては使用できない。以上のように、電極棒に加える金属には、人体への悪影響にも配慮が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光線治療器は、炭素、窒化チタンおよび、カリウムまたはカリウム化合物を含む一対の電極と、前記一対の電極が所定の距離を隔てて配置されるように前記一対の電極を支持する支持部と、前記一対の電極間にアーク放電を生じさせる電圧を前記一対の電極に印加する電気回路とを有する。上記のように構成された光線治療器では、電極に窒化チタンを加えることにより、光の吸収散乱効果やプラズモン効果を利用し、発光ピークをいくつも増やした発光を実現することができる。紫外線領域をカバーしながらも、波長域の幅を拡張したパターンをもつ光線を照射することで、ウイルスおよび細菌感染症に対する効果を発揮することができる。なお、窒化チタンは人工関節等に使われるなど生体親和性が高く、人体への悪影響は少ないと考えられる。
【0008】
前記構成において、前記一対の電極は、さらに銀またはカルシウムを含んでもよい。上記のように構成された光線治療器では、電極に銀またはカルシウムを加えることにより、近赤外線領域の発光強度を増強し、生体に対する治療効果が増加することができる。また、UVBおよびUVCの有害な紫外線波長を減少させることができる。
【0009】
前記構成において、アーク放電により発生した二酸化炭素を吸着する吸着材をさらに備え、前記吸着材は、粘土粉末、木灰、炭およびゼオライトを含むように構成してもよい。上記のように構成された光線治療器では、燃焼により発生した二酸化炭素や金属の酸化物が吸収材に吸着されることにより、発生した物質を使用者が直接吸い込んだり、外気へそのまま排出されたりすることを抑制している。
【0010】
前記構成において、前記一対の電極の近傍に設置され、前記二酸化炭素を前記吸着材に導くファンをさらに備えるように構成してもよい。上記のように構成された光線治療器では、二酸化炭素や金属の酸化物を吸収材に吸着させることを促進することができる。
【0011】
前記構成において、前記電気回路は、MOSFETまたはIGBTを含むように構成してもよい。上記のように構成された光線治療器では、従来の大型のトランスを使用する場合と比較して、小型、軽量化が可能となる。これにより、光線治療器を容易に持ち運び可能となる。
【0012】
前記構成において、アーク放電により生じる光線を反射させる金属製の反射板をさらに備え、前記反射板には溝が形成されているように構成してもよい。上記のように構成された光線治療器では、光線の強度を増強することができ、最小限の電力で光線を発生させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アーク放電により生じる光線を利用してウイルス感染症等の疾病の予防や治療に有効に幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る光線治療器の斜視図である。
図2】光線治療器に使用する電極棒の斜視図である。
図3】電極棒が配置された照射部の内部構造を示す図である。
図4】吸着材の構造を模式的に示す図である。
図5】反射板に形成された光エネルギー増強機構を模式的に示す図である。
図6】本発明に使用される電気回路の概略を示すブロック図である。
図7】MOSFETを使用した電気回路の回路図である。
図8】IGBTを使用した電気回路の回路図である。
図9】光線治療器の別の実施形態を示す斜視図である。
図10】光線治療器の別の実施形態を示す斜視図である。
図11】光線治療器の別の実施形態を示す斜視図である。
図12】支持部の別の実施形態を示す平面図である。
図13】従来の電極棒を使用した場合の光線のスペクトルである。
図14】窒化チタンを追加した場合の光線のスペクトルである。
図15】窒化チタンとカルシウムを追加した場合の光線のスペクトルである。
図16】窒化チタンと銀を追加した場合の光線のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一例として示す図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光線治療器1の斜視図である。光線治療器1は、小型・軽量で容易に持ち運びが可能な携帯型の治療器である。図1に示すように、光線治療器1は、一対の電極棒10、使用者が手で持って移動可能に構成された照射部20、内部に電気回路等を内蔵した本体部30等により構成される。照射部20の先端付近に一対の電極棒10が所定の距離を隔てて配置されており、電極棒10の周囲をフード21が一部覆う構造を有する。本体部30は、照射部20と本体部30を電気的に接続する接続ケーブル31、本体部30を電源と接続する電源ケーブル32、電源のON/OFFを切り替えるための電源スイッチ33、照射部20を起立状態で本体部30の近傍に収容するための収容部34等を含む。本体部30に内蔵された電気回路により一対の電極棒10に電圧を印加することで一対の電極棒10間にアーク放電を生じさせ、アーク放電により光線を発生させる。発生した光線をフード21の開口部から使用者の身体等に照射することで、光線の発光エネルギーをウイルス感染症等の疾病の予防や治療に利用する。
【0016】
図2は、光線治療器1に使用する電極棒10の斜視図である。図2に示すように、電極棒10は、アーク放電を生じさせるための円柱状の芯材部11と芯材部11の周囲を覆って保護する骨材部12とにより構成される。骨材部12は、石油コークス、黒鉛粉末等の炭素骨材およびタールや熱硬化性樹脂等の結合材を混合し、1000℃で燃成・固化することで製造する。燃焼性を上げるために、20~30%の硫黄を混合してもよい。骨材部12は、直径が5~10mm程度の円柱棒状に設計する。骨材部12の中心部を2mm程度くり抜き、空洞部に芯材部11の材料を混合したものを注入し、再度燃成して固化する。芯材部11は、石油ピッチやタールなどの結合材と一緒に、炭酸カリウム、鉄、窒化チタン、炭酸カルシウム、酸化セリウム、酸化ランタン、銀等の微粉末を混合する。芯材部11を構成する材料の混合割合の一例を表1に示す。窒化チタンは粒径が1~1.5μmの微粒子を用いる。炭酸カリウムの代わりにカリウムや他のカリウム化合物を使用することも可能である。炭酸カルシウムの代わりにカルシウムや他のカルシウム化合物を使用することも可能である。
【表1】
【0017】
図3は、一対の電極棒10が配置された照射部20の内部構造を示す図である。照射部20の外部を破線で示し、内部に配置される構造を実線で示す。照射部20は、フード21、支持部22、ファン23、熱電クーラー(ThermoElectric Cooler)24、吸着部25を有する。支持部22は、円盤状のプレートの上面に傾斜面が設けられた形状を有する。一対の電極棒10を支持部22の下方から上方に向けて挿通し、プレートの上部から一対の電極棒10を突出させた状態で一対の電極棒10を支持する。傾斜面の角度を最適に設定することにより、一対の電極棒10を斜め上方に向けて配置する。各電極棒10の支持部22からの突出長は同一であり、各電極棒10は、所定の距離を隔てて配置された状態で支持部22に固定される。支持部22のプレートには連通穴22Hが設けられている。アーク放電により発生した二酸化炭素や金属等が、連通穴22Hを通過してファン23や吸着部25の側へ導入される。
【0018】
熱電クーラー24は、ペルチェ素子を利用して熱を電気に変換する装置である。熱電クーラー24を電極棒10の下部に配置することによりアーク放電により発生した熱を冷却するとともに、熱電クーラー24により発生した電気を使用してファン23を駆動する。熱電クーラー24の吸熱側を電極棒10の側(上方)に向け、熱電クーラー24の放熱側をファン23の放熱器を密着させるように配置する。ファン23に組み込まれたモーターによりファン23を駆動して風を発生させることで、電極棒10の周辺を冷却する。また、アーク放電により発生した気体(二酸化炭素や金属の酸化物等を含む)を吸着部25へ導くとともに、吸着部25を通過した気体を照射部20の側面に設けられた排気穴20Hから外部へ排出することを促進する。なお、熱電クーラーを使用せずにファン23を電源と接続して駆動してもよい。
【0019】
吸着部25は、ファン24の下方に配置される。吸着部25は、燃焼(アーク放電)により発生する二酸化炭素等の気体や金属酸化物を吸着する部分である。図4は、吸着部25の構造を模式的に示す図である。図4に示すように、吸着部25は、ケース部25A、25Bと吸着材25Cにより構成される。吸着材25Cは、ケース部25Aの下部およびケース部25Bの内部に敷き詰められる。ケース部25Bは、円柱状の外筒と漏斗状(三角推状)の内筒とを組み合わせた構造を有する。内筒と外筒の間に吸着材25Cが配置される。漏斗状の内筒は上方から下方に向かって徐々に径が小さくなり、ケース部25Bの下端では円形状に開口している。つまり、ケース部25Bは、上下方向に貫通する開口部を内側に有している。ケース部25Aに吸着材25Cを配置した状態で、ケース部25Bをケース部25Aの上方の内側に配置する。ケース部25Bの上方から侵入した気体等がケース部25Bに敷き詰めた吸着材25Cを通過するとともに、下方に送り出された気体はケース部25Aに敷き詰めた吸着材25Cを通過する。このとき、気体に含まれる二酸化炭素や金属の酸化物等が吸着材25Cに吸着される。これにより、排気穴20Hから外部へ排出する気体から有害物質を取り除くことができる。ケース部25Aの上部の外周部に複数の穴25Hを形成することで、吸着材25Cを通過した気体が排気穴20Hから排出されることを促進している。なお、ケース部25Aとケース部25Bは、必ずしも両者を組み合わせて使用する必要はなく、いずれか一方のみを使用することも可能である。
【0020】
吸着材の条件としては、所定の使用回数を超えた場合に交換しやすいこと、有害物質を素早く吸収できること、簡単に製造できるものであること、高温にも対応したものであること、臭いのないものであること、安全性のある材料であること、吸収した気体等を簡単に放出しないことが必要である。また、使用後の吸着材を一般家庭でも廃棄できるように、吸着材がリチウム等、土や河川等の環境汚染につながる金属を含まないように配慮が必要である。上記のような観点に基づき開発した吸着材25Cの材料および製造方法について説明する。吸着材25Cの材料は、炭(木炭)およびゼオライトを体積比で2~1:1に砕き粉砕し粉状にしたものに、灰および長石の粉末を体積比0.5~1:2で混合し、少量の水とアルカリ電解水を混合し水分を適度に含んだところで、シリカゲルを体積比1~2.5程度混合する。灰は木灰等でカリウムやマグネシウム、カルシウムを含む。長石とは、陶器を作る際に用いられる白色の粘土粉末であり、成分にシリカを70~80%、酸化アルミニウムを18~25%、酸化カリウムを5~12%、酸化ナトリウムを3~10%、酸化鉄を0.1%、酸化カルシウムを0.1~0.2%、酸化マグネシウムを0.01~0.05%等を含んでいる。長石はインドや日本、世界の各地で採掘され、産出場所で多少成分組成が変わる。長石は酸化カルシウム含有量が他の成分に比べ少ないため、さらに酸化カルシウムを添加しても吸収効率は上昇する。また、長石でなくても、陶器や焼き物に使用するいくつかの粘土粉末を混合し、主に酸化カリウムや酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の含有量を増やした組み合わせも考えられる。二酸化炭素との反応は、下記に示すように、酸化カリウムが炭酸カリウムに変化し、酸化ナトリウムは炭酸ナトリウム、酸化カルシウムは炭酸カルシウムに変化する。
O+HO→2KOH
2KOH+CO→KCO+H
NaO+HO→2NaOH
2NaOH+CO→NaCO+H
CaO+HO→Ca(OH)
Ca(OH)+CO2→CaCO+H
アルカリ電解水は、水または食塩水を電気分解し、マイナス側に作られるものである。表2は、吸着材25Cの構成の一例を質量で表したものである。
【表2】
【0021】
図5は、反射板に形成された光エネルギー増強機構を模式的に示す図である。図5では、フード21の内側に光エネルギー増強機構として金属(ステンレス)製の反射板21Mを配置するとともに、反射板21Mの表面に溝21Gを形成している。反射板21Mを配置することにより、アーク放電により生じる光線を反射させて使用者の側へ放射する光線の量を増加させることによりエネルギーを増強する。また、反射板21Mの表面に溝21Gを形成することで、光の屈折反射作用や輻射作用により光線の強さを増強することができる。溝21Gは、100μm程度の幅で平行に並んだ溝を縦横に直交するように形成している。複数の溝の幅は上記に限られず、必ずしも平行でなくてもよい。また、必ずしも格子状に形成する必要はなく、縦溝または横溝のみを形成してもよい。ハニカム形状等に溝を形成することもできる。溝の本数や長さや深さ、形状や配置、組み合わせを変えることで光エネルギーの強さを調整することができ、光線治療器1をより効果的に利用することが可能となる。なお、溝21Gを形成するとは、反射板21Mの表面に凹線あるいは凸部を形成することを意味する。反射板21Mの表面をアルミや銀で薄くコーティングすることでもエネルギーを増強する効果を得ることができる。また、反射板21Mや溝21Gを形成する部分はフード21に限られない。電極棒10を支持する支持部22やその他光源に近い部分に反射板21Mや溝21Gを形成することも可能である。
【0022】
次に光線治療器1の本体部30に内蔵される電気回路について説明する。図6は、電気回路の概略を示すブロック図である。図6に示すように、本発明の電気回路は、基本構造としてコンバータ、インバータ、トランス、平滑整流回路からなり、これに制御回路(コントロール回路)と電圧回路が組み込まれる。コンバータ部分には、なるべくシンプルな回路として、大容量キャパシタとダイオードを利用したダイオード&キャパシタ回路または4ダイオード&キャパシタ整流回路を用いるのが望ましい。インバータ部分には、図7に示すMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を利用した回路、図8に示すIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を利用した回路を使用することができる。IGBT回路では、IGBTが2つずつペアになり、高速でスイッチングを行うことで交流成分を作り出す。高周波トランスで交流変換された後、ダイオードおよびチョークコイルで整流平滑し、脈動を抑えた安定したアーク光を得ることができる。MOSFETやIGBTを使用した高周波・整流回路を使用することで、光線治療器を小型化、軽量化することができる。アーク放電により生じる光線の安定化のために、電圧の脈動を抑え、電流の整流作用を高める必要があるが、高速スイッチングが可能なMOSFETやIGBTを利用することでこれが可能となる。
【0023】
図9は、光線治療器の別の実施形態を示す斜視図である。図9に示す光線治療器100は、据え置き型の装置である。図9に示すように、光線治療器100は、一対の電極棒110、上下方向に移動可能に構成された照射部120、内部に電気回路等を内蔵した本体部130等により構成される。電極棒110、本体部130は、それぞれ電極棒10、本体部30と同様の構成であるため説明は省略する。照射部120は、電極棒110の周囲を一部覆うフード121、電極棒110を支持する支持部122、支持部122を上下方向に移動可能に支える支柱123、使用者の位置を検知するためのセンサー124、使用者を撮像するカメラ125等により構成される。支持部122(フード121等含む)は、支柱123に対して上下方向に移動可能に配置される。例えば、支柱123にラックを設け、支持部122にピニオンを設けたラック&ピニオン方式により上下方向の相対移動を可能とする。支持部122にモーターを内蔵することで、ピニオンを電気で駆動して回転させることができる。
【0024】
センサー124は、例えば超音波感知センサーである。センサー124は、照射部120のフード121に取り付けられる。センサー124は、光線治療器100から一定距離内に人体があるかどうかを検知する。センサー124が一定時間以上継続して人体があると判断すると、支持部122に内蔵したモーターを駆動することで支持部122を支柱123に対して上下移動する。このとき、センサー124と人体との距離を検知しながら支持部122が移動する。例えば、人体の幅が急に狭くなったところを人体の頸部と認識する等の判定を行う。これにより、使用者の身長等が変化する場合であっても、電極棒110の支持部122を最適な位置に自動的に移動させることができる。
【0025】
センサー124に、赤外線センサーを組み合わせることも可能である。人体の温度を感知することで、人間以外の他の物体で誤作動しないようにすることが可能である。また、サーモグラフィーを利用し、熱源の熱映像画像をそのまま読み取り、頭部の丸い形の下部に電極棒110の支持部122を移動させることも可能である。カメラ125を使用して、人体の頭部を撮影し、画像認識ソフトで解析することで、最適な位置に電極棒110の支持部122を移動させることも可能である。なお、図示していないが、光線治療器1と同様に、光線治療器100の照射部120も内部に吸着部やファンを内蔵している。
【0026】
図10は、光線治療器の別の実施形態を示す斜視図である。図10に示すように、光線治療器200は、一対の電極棒210、上下方向に移動可能に構成された照射部220、内部に電気回路等を内蔵した本体部230等により構成される。照射部220は、電極棒210の周囲を一部覆うフード221、電極棒210を支持する支持部222、支持部222を上下方向に移動可能に支える支柱223、複数の支柱を保持する円環上の保持部224等により構成される。電極棒210、本体部230、フード221、支持部222は、それぞれ電極棒110、本体部130、フード121、支持部122と同様の構成であるため説明は省略する。光線治療器200は、照射部220を複数有することで、複数人が同時に使用できるように構成されている。保持部224の複数の位置に支柱223を配置することで、所定距離を隔てて複数の照射部220を配置することができる。なお、図示していないが、光線治療器100同様に、光線治療器200はセンサーやカメラを備えていてもよい。センサーやカメラを使用することで、複数の使用者の身長等に合わせて照射部220の位置を調整することが可能である。なお、図示していないが、光線治療器1と同様に、光線治療器200の照射部220も内部に吸着部やファンを内蔵している。
【0027】
図11は、光線治療器の別の実施形態を示す斜視図である。図11に示すように、光線治療器300は、一対の電極棒310、上下方向に移動可能に構成された照射部320、内部に電気回路等を内蔵した本体部330等により構成される。照射部320は、電極棒310の周囲を一部覆うフード321、電極棒310を支持する支持部322、支持部322を上下方向に移動可能に支える支柱323等により構成される。電極棒310、本体部330は、それぞれ電極棒110、本体部130と同様の構成であるため説明は省略する。光線治療器300は、照射部320のフード321が略矩形状に開口するとともに、開口部の面積が大きく形成されている。これにより、使用者の全身を広範囲にわたり一度に照射することを可能にするとともに、1つの照射部220を複数人が共有できるように構成されている。図11では、支持部322(フード321)の数が2つの例を示しているが、支持部322(フード321)を3つ以上配置することも可能である。なお、図示していないが、光線治療器100同様に、光線治療器300はセンサーやカメラを備えていてもよい。センサーやカメラを使用することで、使用者の身長等に合わせて照射部320の位置を調整することが可能である。なお、図示していないが、光線治療器1と同様に、光線治療器300も内部に吸着部やファンを内蔵している。
【0028】
図12は、支持部の別の実施形態を示す平面図である。図12に示すように、支持部422は、一対の電極棒410をそれぞれ独立して支持する一対の支持部422A、422Bにより構成されている。支持部422Aは位置が固定されているのに対して、支持部422Bは支持部422Aに対して近接する方向および離間する方向に移動可能に構成されている。これにより一対の電極棒410間の距離(光源距離)を最適に調整できる構造としている。支持部422A、422Bは、電極棒410の先端側に向けて互いに近づくように角度を付けた状態で配置されている。支持部422Bに連結されたシャフト423には、螺子溝が形成されている。固定部424に形成された螺子穴にシャフト423が挿入されている。シャフト423の先端に固定された調整ノブ425を回転させることでシャフト423を固定部424に対して回転させる。これにより、支持部422Bを支持部422Aに対して相対的に移動させる。光源距離を変化させることで光線の強度を調整したり、電極棒410の消費が進んだ際などに一対の電極棒420間の距離の距離を近づけたりすることができる。モーター等を組み込むことで電気的に支持部422Bを移動する自動調整機構を構成することも可能である。左右の支持部の双方を移動させる構造とすると、左右の支持部が接続された状態で双方に高電圧が印加されることで、支持部同士の短絡が発生する可能性がある。一方の支持部のみを移動させる構造とすることで支持部同士の短絡を防止することができる。
【0029】
次に電極棒の成分と光線治療器から照射される光線の波長との関係について説明する。図13は、カリウムと鉄を主成分とした従来の電極棒を使用した場合の光線治療器から照射される光線のスペクトルを示す。HOPOOCOLOR社製の光波長測定器(OHSP350Cおよび350UV)を使用して、アーク放電にて発光する光線の波長を230nmから850nmまでの領域で計測した結果である。横軸は波長(nm)であり、縦軸は各波長における発光の強度を示す。図13に示すように、従来の電極棒を使用した場合、カリウムに起因して385nm近辺に発光ピークが現れ、鉄に起因して650nm近辺に発光ピークが現れている。ともに可視光領域(380nm~780nm)内である。また、紫外線領域(380nm未満)においては、低い波長が現れている。
【0030】
図14は、従来の電極棒に窒化チタン(TiN)を追加した場合の光線治療器から照射される光線のスペクトルを示す。窒化チタンを追加することで、紫外線領域をカバーしながらも、紫外線の光強度を抑えることが可能となった。また、発光ピークの数やピークをもつ波長域の幅を拡張したパターンをもつ光線を照射できるようになった。これは、チタン化合物の中でも窒化チタンは硬い性質を持ち、可視光および紫外線領域の光を吸収する性質をもつ物質であることで、光の吸収、散乱効果が起こるためである。そのため、図14に示すようにカリウム固有の発光スペクトル385nm付近の短波長側にも長波長側にも発光ピークが新たにできる。とりわけ500nm以下の可視領域に発光ピーク数が増加し、ピークの波長域も拡張した。散乱効果は窒化チタンの添加量の増加に従い全波長域に及ぶことも分かった。添加する窒化チタンが少量の場合、電極棒の芯材部分でいくつかの金属元素の集合体としてアーク放電すると金属粒子表面の自由電子が光との相互作用により集団振動し混合した他の元素との間に表面プラズモン共鳴および光回折により蛍光共鳴エネルギーの移動、いくつかのエネルギー準位からの発光が起こり長波長側に発光増強され発光ピークが増えることが分かった。
【0031】
図15は、従来の電極棒に窒化チタン(TiN)とカルシウム(Ca)を追加した場合の光線治療器から照射される光線のスペクトルを示す。カルシウムを追加することで、近赤外領域(600nm付近)の光強度を高めることが分かった。添加する窒化チタンの量を増やすほど、吸収された光の量だけ全体的な光度の強さは弱くなるため、カルシウム化合物を少量添加することで、全体的な光度を増強させることができた。発光強度は可視光領域に発光スペクトルをもつカルシウム化合物の添加量に応じて増強し、5倍前後まで増強することができた。
【0032】
図16は、従来の電極棒に窒化チタン(TiN)と銀(Ag)を追加した場合の光線治療器から照射される光線のスペクトルを示す。銀を追加することで、500nm以上の可視光から赤外線域に幅広く発光強度の増強作用が見られた。また窒化チタンを追加しただけでは、少なからず見られる紫外線領域(UVAおよびUVB)を激減させる効果があることが分かった。表3は、電極棒がカリウムを含有する場合で、銀およびカルシウムを添加することにより、生体に有害なUVBおよびUVCが極めてゼロに近いレベルまで低下することを示している。
【表3】
【0033】
次に本発明の吸着材の効果を確認するための実験の結果を示す。電極棒をアーク放電により1分30秒燃焼させたときに生じる気体を160ccのシリンジに吸引し、30ccの吸収材を含む別のシリンジと連結し、ポンプの吸引、押し出しを10回行った。5種類の各吸収材について、二酸化炭素検知管を用いて含まれる二酸化炭素量を測定した結果を表4に示す。
【表4】
【0034】
表4に示すように、燃焼により採取した気体中の二酸化炭素濃度は3000ppmであった。炭、ゼオライト、シリカゲル、水のみでは1800ppmへと改善したが、灰を追加した吸収材では1500ppmに改善し、さらに長石を追加した吸収材では500~600ppmへと大幅に改善した。そして、さらにアルカリ電解水を加えた吸収材では300ppmと1/10まで改善させることができた。この安全で大幅な効果がある二酸化炭素吸収材を用いれば、電極棒の燃焼による環境の負担を大幅に低減し利用可能であるとともに、光線治療器の分野に限らず、二酸化炭素の低減目的や二酸化炭素吸収材としての利用が可能である。吸着材の材料としては、炭およびゼオライトを砕き粉砕状にしたものに、灰および長石の粉末を混合し、少量の水とアルカリ電解水にシリカゲルを加え攪拌し粘性および保水性をつけたものが、一番吸収率がよかった。長石の種類としては、カリ長石、ソーダ長石、インド長石、陶石などが挙げられる。長石の成分の例としては、SiO:60~66%、Al:18~24%、CaO:0.1~0.3%、MgO:0.01~0.04%、KO:5~12%、NaO:3~5%を含むものが挙げられる。電解水とは、水を電気分解したときにマイナス側に発生するものを指す。
【0035】
次に本発明の光エネルギー増強機構の効果を確認するための実験の結果を示す。表5は、光エネルギー増強機構による光線強度を比較した実験の結果を示す。100mm×100mm×1mmの平板に、ステンレス(SUS304)製の板を配置したもの、ステンレス製の板に縦溝を形成したもの、ステンレス製の板に縦横溝を形成したものを、それぞれステンレス板を配置していないものと比較した。縦溝のみの金属板は、中央付近の縦100mm、横35mmの範囲に、幅0.1mm、深さ0.5mmの溝を計55本形成した。縦横溝の金属板は、中央付近の縦100mm、横35mmの範囲に、縦溝を幅0.1mm、深さ0.5mmで計55本形成し、縦溝のある縦40mmの範囲に同じ溝幅と深さで計20本の横溝を直交するように作成した。照射部の近くに平板を配置し光線を照射したときの反射光の光線強度を測定した。数値の単位はルクス(lx)で示す。
【表5】
【0036】
表5に示すように、ステンレス製の板を配置することで光線強度が増強されることが確認された。また、ステンレス製の板に縦溝や縦横溝を形成することで、光線強度がさらに増強されることが確認された。縦横溝を形成した場合では、ステンレス板を配置しない場合と比較して3倍~10倍程度光線強度が増強された。
【0037】
次に、本発明の光線治療器を用いて、感染症の人を対象に治療効果の実験を行った。評価は、急性に呼吸器症状(鼻水、咳、痰、くしゃみ、咽頭痛等)が出現した群で、さらに発熱しているか否かでグループ分けを行った。また採血検査で白血球分画に注目した。細菌感染の場合、白血球やCRP(炎症反応)が重症度に合わせて上昇するが、ウイルス感染の場合は一般に上昇しないことも多いため、白血球分画の左方偏移に注目した。ウイルス感染の場合、白血球分画でリンパ球数の上昇(好中球数の低下)、細菌感染で好中球数の上昇(リンパ球数の低下)がみられることに着目した。また、喀痰検査の培養結果で細菌・ウイルスが同定されるものについては、その経過についても評価を行った。表6は、好中球数およびリンパ球数の正常範囲を示す。
【表6】
【0038】
実験1として、年齢層30~80代で、急性の呼吸器感染症の症状(鼻水、咳、痰、くしゃみ、咽頭痛、悪寒等)を示した計40人の患者のうち、37.5度以上の熱発者20人と熱発なしの20人を対象に1日2~3回、3~10分間ずつ、首から前胸部および肝臓のある右上腹部に本発明の光線治療器を用いて光線を照射した。熱発のない20人は、採血で白血球分画も正常内で、細菌またはウイルス感染症のごく早期の感染時期と思われ、光線治療器で2日間照射行ったあと、20人すべてが症状の消失を認めた。37.5度以上の熱発者20人のうち、白血球分画で好中球の上昇を認めた10人は細菌感染症の早期の段階と考えられCRPも0.4~7まで上昇が見られた。リンパ球上昇を認めた6人はウイルス感染症の早期の段階と考えられた。白血球分画が正常範囲内の4人は感染症のごく早期の段階と考えられた。これらの患者を対象に本発明の光線治療器を2~5日使用した。2~3日目で20人のうち、14人が平熱まで解熱した。4~5日目で残りの6人が平熱まで解熱した。呼吸器症状(鼻水、咳、痰、くしゃみ、咽頭痛、悪寒等)は、2日目で20人のうち8人が消失、3日目で6人が消失、4~5日目で残りの6人が消失した。また、1週間から10日後の採血データの正常化を認めた。好中球数が増加した群は細菌感染症、リンパ球数が増加した群はウイルス感染症であることが示唆され、呼吸器症状が出現したごく早期または熱発のない軽症者に関しては、改善効果が大きく1日目には症状が消失した例も多く、2日目には全員が症状の改善を認めた。また熱発しても光線治療器を連日使用していくことで改善効果が上がっていくことが分かった。早期であればあるほど効果が早く認められた。
【0039】
実験2として、咽頭からの細菌培養検査結果にて、MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)陽性6か月連続陽性者(1+~2+)2人と、MRSA陽性3か月連続陽性者(1+)1人の合計3人の患者に対して、首から前胸部照射および右上腹部背部に1日2回(朝、夕)、5~10分、計5日間、本発明の光線治療器を用いて光線を照射した。照射開始から7日目の咽頭ぬぐい液の検体で3人ともMRSA陰性(-)が確認された。
【0040】
実験3として、SARS-CoV-2唾液検査でPCR陽性者4人のうち、37.5度以上の熱発ある2人および熱発のない2人の患者に対して、首から前胸部および右上腹部に、1日2~3回、1回につき5~10分、5日間連続で、本発明の光線治療器を用いて光線を照射した。照射後5日目に行った鼻咽頭ぬぐい検体によるPCR検査で4人ともに陰性と判定された。
【0041】
実験1~3における検査データについては、医療機関提携の検査センターでの分析結果である。実験1から、好中球数が増加した群は細菌感染症、発熱の割に白血球分画の移動がない場合やリンパ球数が増加した群はウイルス感染症であることが示唆され、呼吸器症状が出現したごく早期または軽症の発熱がない対象者に関しては、改善効果が大きく数時間後には症状が消失した例も多く、早期であればあるほど効果が早く確実であることが分かる。発熱した対象者に関しても、症状の改善を認めた例が多く、また改善は早期であることが分かる。実験2、3からMRSAおよびSARS-CoV-2に対しても有効であることが分かる。
【0042】
以上説明したように、電極棒に窒化チタンを追加することで、従来の発光ピークパターンを変化させることができる。可視光領域に発光ピークをもつカリウム本来の発光スペクトルの短波長側にも発光ピークを出現させUVA領域をカバーし、さらに窒化チタンによる光の吸収散乱効果やプラズモン効果を利用し、発光ピークをいくつも増やしたパターンとすることができる。このように幅広く他の元素の発光ピークに干渉し影響をもつ性質は、他の元素や金属化合物には見られない。窒化チタンを追加することにより、紫外線領域に発光スペクトルをもつ他の有害な金属元素を添加することなく、紫外線領域をカバーしながらも、波長域の幅を拡張したパターンをもつ光線を照射できる。さらに、銀もしくはカルシウムを追加することで、近赤外線領域の発光強度を増強し、生体に対する治療効果が増加することが分かった。これは、生体には光を吸収しやすい600nmから900nm付近の近赤外線領域を利用することが生体に対し効果を示すと考えられる。ウイルスや細菌等への効果は、カリウム本来の発光スペクトル波長より短波長側から拡張し、数も増えた発光ピークや近赤外線領域の利用、赤外線効果など効果的な発光増強によるものだと考えられる。これにより、ウイルスおよび細菌感染症に対する効果を示すことができる。また、銀もしくはカルシウムを追加することで、UVBおよびUVCの有害な紫外線波長を減少させることができる。
【0043】
紫外線がウイルスや細菌等を殺菌する効果は知られているが、人体に対して、そのまま強力な紫外線を浴びることは皮膚や細胞等へのダメージが大きすぎるため使用できない。本発明により、身体に吸収されやすい近赤外領域の光エネルギーを合わせて利用することで、極力必要な紫外線域の光を少なくした形で人体に効果を発揮することを発見した。そして炭素の燃焼による赤外線による温熱効果が身体の反応を促進し効果的に作用する。また身体に取り込まれた病原体に効果を示すには、アーク放電による強い光エネルギーが必要となってくる。紫外線域の光を得るために、紫外線域に発光ピークをもつ元素を使用すると、紫外線強度が大きくなりすぎ人体への悪影響も大きくなってしまうことや、アーク放電での燃焼物がさらに人体に悪影響をもたらすことを考慮すると、紫外線域に従来、発光ピークをもたない可視光域に発光ピークをもつ元素を利用し、紫外線域にまで発光ピークを拡張し利用することで必要な紫外線光を最小化し確保することで、必要な効果を得ることができる。
【0044】
本発明の光線治療器は、効果的に強化した幅広い有効波長の光エネルギーの作用により、赤外線効果による温熱作用や臓器の活性化作用を有するのみでなく、ウイルスや細菌の感染症等を予防することができる。細菌やウイルスを体内に吸入した後でも、光線治療器を使用することで、症状発現までの体内での増殖を防ぐことで、早期であれば発病を阻止することができる。病原体が体内で大量に増殖した後では、病原体数を減らし、発病後の改善を早める効果が得られる。予防目的または発病前の段階であれば、外出し帰宅時に1日1回から2回程度、数十秒から数分程度、頸部から前胸部の使用で効果が得られる。発病後であれば、1日2~4回程度、前胸部や肝臓のある右上腹部を中心になるべく全身に照射し、数分~15分程度の使用が望ましい。
【0045】
電極棒の組成の大半を占める炭素(黒炭等)は燃焼時に二酸化炭素が発生する。この二酸化炭素をそのまま排出することは環境汚染の観点では好ましくない。また、燃焼により発生した金属の酸化物は、臭いを発生するとともに使用者が吸引することで人体に悪影響を及ぼす懸念もある。粘土粉末、木灰、炭およびゼオライトを含む吸収材を使用することで、このような問題を低減することを実現した。燃焼により発生した二酸化炭素や金属の酸化物は吸収材に吸着されることにより、発生した物質を使用者が直接吸い込むことを抑制している。さらに、熱電クーラーを使用してファンを駆動することで、二酸化炭素や金属の酸化物が吸収材に吸着されることを促進することができる。
【0046】
光線治療器の電気回路には、MOSFETまたはIGBTを使用している。従来の光線治療器では大型で重量の重いトランスを使用していたため、MOSFETまたはIGBTを使用することで小型、軽量化が可能となる。これにより、光線治療器を持ち運びすることが可能となる。また従来の大型トランスは、コイルの発熱や温度や湿度等、使用環境の影響を受けやすく、長時間にわたり頻回に使用可能な公共利用型の機器には不向きであった。さらに、使用環境によって過電圧の恐れがある等の安全性の問題や鉄損や銅損によるトランスの二次側電力の損失が大きなことも欠点となっていた。本発明では、MOSFETまたはIGBTを使用することでこれらの問題も解消している。
【0047】
光源に近い部分に金属製の反射板を配置し、反射板には溝を形成することで光線の強度を増強することができる。このような構造を採用することにより最小限の電力で光線を発生させることができる。また、照射部位から対象が離れていている場合にも光線治療器を使用することを可能にする。例えば、遠くにいる家畜や動物に光線を照射する場合、皮膚が厚い大型動物等に光線を照射する場合にも有効である。また、撃退するのに強い光エネルギーを必要とするウイルス等が出現した場合にも有効となる可能性がある。
【0048】
本発明の光線治療器は個人的な利用や病院等での利用に限られない。空港や鉄道等の交通機関、ビル、商業施設、コンサート、スポーツ観戦会場等の多数の人が集まる場所に光線治療器を設置して公共的に使用することも可能である。例えば、飛行機の搭乗口等において搭乗者全員が光線の照射を受けることにより、機内での感染症の拡大や外国からの病原体の進入を抑制することができる。つまり、人の移動による感染症の感染拡大を防ぎ、地域的あるいはパンデミックに広がった感染症も抑え込むことに効果があると考えられる。また、薬やワクチンと違い、細菌やウイルスの種類は問わず、さらに変異種に対しても同様の効果が期待でき、耐性菌も出現しにくい。さらに人だけでなく、家畜や動物の伝染病にも効果が期待できる。
【0049】
本発明は、光線治療器としての実施様態に限られない。光線治療器の一対の電極に使用される窒化チタンを含む電極棒としても実施可能である。
【0050】
前記実施例において示した電極棒の芯材部の材質の混合割合はあくまで一例であり、本発明の構成はこの割合に限定されない。また、電極棒の吸着材はあくまで一例であり、本発明の構成はこの割合に限定されない。粘性と保水性が保てることを目安に吸着材の混合割合を調整する。なお、本発明において、鉄やカルシウムといった物質名は、鉄化合物やカルシウム化合物を含んだ概念である。
【0051】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0052】
1、100、200、300…光線治療器、10、110、210、310、410…電極棒、11…芯材部、12…骨材部、20、120、220.320…照射部、21、121、221、321…フード、22、122,222,322、422…支持部、23…ファン、24…熱電クーラー、25…吸着部、30、130、230、330…本体部。
【要約】
アーク放電により発生する光線をウイルス感染症等の疾病の予防や治療に利用する光線治療器(1)。光線治療器(1)は、炭素、窒化チタンおよび、カリウムまたはカリウム化合物を含む一対の電極(10)と、前記一対の電極(10)が所定の距離を隔てて配置されるように前記一対の電極(10)を支持する支持部と、前記一対の電極(10)に電圧を印加することで前記一対の電極(10)間にアーク放電を生じさせる電気回路とを備える。
図1
図2
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図10
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図16