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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】プラズマ噴射装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/34 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
H05H1/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023015184
(22)【出願日】2023-02-03
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 智
(72)【発明者】
【氏名】會澤 賢二
(72)【発明者】
【氏名】杉村 智
(72)【発明者】
【氏名】松浦 慶
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081842(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0049322(KR,A)
【文献】特開平10-296446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
B01J 19/08
B23K 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ噴出口と、
このプラズマ噴出口の開口内で対向する一対の放電電極と、
上記一対の放電電極間にガスを供給するガス通路と、
上記放電電極に電圧を印加する電圧印加手段と
を本体に備え、
上記ガス通路は、
上記本体内で、直線状の第1通路と、
上記第1通路の先端付近の側面に開口した流通口と、
上記流通口から上記第1通路に交差する方向に伸びて、上記プラズマ噴出口まで達する第2通路とからなり、
上記第2通路内には、
上記流通口から流出するガス流を、上記プラズマ噴出口の中心点で開口面に直交する軸線に沿った流れに方向修正しながら上記プラズマ噴出口に導くガスガイド手段を備えたプラズマ噴射装置。
【請求項2】
上記ガスガイド手段は、
上記流通口に連続して設けられ、内部が上記第1通路と連通するとともに、上記プラズマ噴出口に向く先端が閉鎖された筒部材と、
上記筒部材の側面に形成され、上記筒部材の内部と外部とを連通させる複数の連通小孔とを備え、
上記連通小孔は、
上記筒部材の側面を、上記軸線を通る平面で、上記第1通路の上流側と対向する側の面と対向しない側の面とに二分したとき、上記対向する側の面が上記対向しない側の面より、開口面積が大きくなるように配置された請求項1に記載のプラズマ噴射装置。
【請求項3】
上記筒部材の外側に、上記第2通路の内壁に沿った筒状のケース部材を設け、
上記筒部材の外壁と上記ケース部材の内壁との間に、上記連通小孔から流出したガス流を導く構成にするとともに、
上記筒部材とケース部材とを異種素材で形成した請求項2に記載のプラズマ噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面改質などに利用されるプラズマ噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装置本体内で生成されたプラズマを照射して、処理対象物の濡れ性など、表面特性を改質する表面改質装置が知られている。
例えば、特許文献1の装置は、筒状の装置本体に設けた一対の電極間で放電を発生させ、この放電によって生成されたプラズマを、ガス流によって、本体の先端の噴出口から処理対象物に向かって噴出させ、上記噴出口と処理対象物の表面とを相対移動させて必要個所を処理する装置である。
【0003】
また、処理対象面が筒体などの環状物体の内側面の場合に、処理対象物の中に本体を挿入して、本体の側面に形成された噴出口からプラズマを噴射させる装置も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-277953号公報
【文献】特開平10-296446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、環状物体の内側にプラズマを照射する装置では、例えば図5に示すように、処理対象物w内に挿入した本体1を矢印y方向に沿って移動させながら、噴出口2からプラズマを噴射させる。プラズマを噴出させるガスは、その流れ方向が本体1内でy方向からx方向に変更されてから噴出口2に達する。
また、上記本体1は、狭い場所に挿入できるようにするため、y方向に沿ったガス通路3に対してx方向に沿ったガス通路4の長さを短く設定しなければならない。
【0006】
このように、本体1に供給されたガスは、相対的に長いガス通路3から短いガス通路4に流れ込んで方向転換するので、噴出口2から噴出するまでy方向の流れの勢いが残ったままになる傾向がある。
そのため、噴出口2から噴出されて一対の放電電極5,6に向かうガス流は全体として図6に示すように太線の矢印のようになり、プラズマpの広がりは偏ったものとなる。すなわち、プラズマpの流れの中心が処理対象面に斜めに当たって、処理対象面に照射されるプラズマ濃度に大きな偏りができてしまう。その結果、プラズマ処理の効果が不均一となってしまうという問題があった。なお、図6において、符号7は電源を示している。
【0007】
この発明の目的は、環状物体の内側など、狭いところの処理対象面を均一にプラズマ処理できる、プラズマ噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、プラズマ噴出口と、このプラズマ噴出口の開口内で対向する一対の放電電極と、上記一対の放電電極間にガスを供給するガス通路と、上記放電電極に電圧を印加する電圧印加手段とを本体に備え、上記ガス通路は、上記本体内で、直線状の第1通路と、上記第1通路の先端付近の側面に開口した流通口と、上記流通口から上記第1通路に交差する方向に伸びて、上記プラズマ噴出口まで達する第2通路とからなり、上記第2通路内には、上記流通口から流出するガス流を、上記プラズマ噴出口の中心点で開口面に直交する軸線に沿った流れに方向修正しながら上記プラズマ噴出口に導くガスガイド手段を備えている。
【0009】
第2の発明は、上記ガスガイド手段が、上記流通口に連続して設けられ、内部が上記第1通路と連通するとともに、上記プラズマ噴出口に向く先端が閉鎖された筒部材と、上記筒部材の側面に形成され、上記筒部材の内部と外部とを連通させる複数の連通小孔とを備え、上記連通小孔は、上記筒部材の側面を、上記軸線を通る平面で、上記第1通路の上流側と対向する側の面と対向しない側の面とに二分したとき、上記対向する側の面が上記対向しない側の面より、開口面積が大きくなるように配置されている。
【0010】
第3の発明は、上記筒部材の外側に、上記第2通路の内壁に沿った筒状のケース部材を設け、上記筒部材の外壁と上記ケース部材の内壁との間に、上記連通小孔から流出したガス流を導く構成にするとともに、上記筒部材とケース部材とを異種素材で形成している。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、第2通路に比べて第1通路を長くして、第1通路の流通口から第2通路に流出したガス流に第1通路に沿った方向の癖がついていたとしても、それを修正することができる。第2通路中でガス流の方向が修正されて、プラズマが噴出口の開口の中心点を中心とした分布を形成することで、均一な処理を実現できる。
また、第2通路に比べて第1通路を十分に長くし、狭い箇所に本体をより挿入しやすくできる。
【0012】
第2の発明によれば、筒部材の連通小孔の配置によって、第1通路に沿った勢いを修正して、ガス流の方向をプラズマ噴出口の中心点で開口面に直交する軸線に沿った流れに修正できる。
【0013】
第3の発明によれば、素材を変えることで、ガスガイド手段を構成する筒部材の固有振動数とケース部材の固有振動数とを異ならせ、ガス流による両部材の共振を起こりにくくできる。そのため、ガス流によって発生する騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の本体の断面図である。
図2図2は、実施形態のプラズマ噴出口の正面図である。
図3図3は、実施形態のガスガイド手段の断面図である。
図4図4は、実施形態のプラズマ噴出口から噴射されるプラズマの広がりのイメージ図である。
図5図5は、従来のプラズマ噴射装置のガスの流れを説明する概略図である。
図6図6は、従来のプラズマ装置から噴射されるプラズマの広がりのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
以下にこの発明の一実施形態を説明する。図1は、実施形態におけるプラズマ噴射装置の本体の断面図である。図2は、実施形態のプラズマ噴出口の正面図、図3は、ガスガイド手段の拡大断面図、図4は実施形態のプラズマ噴出口から噴射されるプラズマの広がりのイメージ図である。
【0016】
この実施形態のプラズマ噴射装置は、内部に第1通路11を備えた第1筒部材13と、その先端に結合され、上記第1通路11の方向を変更して第2通路12に連通させる継手部材14と、この継手部材14に結合された第2筒部材15と、その先端に結合された電極ホルダー16と、電極ホルダー16の先端面を覆うカバー17とを備えている。
上記部材によって、この実施形態のプラズマ噴射装置の本体10が構成される。そして、各部材の材質は、樹脂や金属などを用いることができ、特に限定されない。また、複数の部材を一体的に形成してもよい。
【0017】
上記第1筒部材13は、内部に直線状の第1通路11を備え、y方向に十分な長さを備えている。
なお、ここでは、上記第1通路11の長さ方向をy方向、第2通路12の長さ方向をx方向、xy平面と直交する方向をz方向とする。
【0018】
上記継手部材14は上記第1筒部材13の先端側に連続した筒状部分の側壁、すなわち第1通路11の先端付近の側面に流通口14aを開口させた形状で、上記第1通路11と第2筒部材15内の第2通路12とを連通させるための部材である。
第2通路12は、ガスの流れにおいて流通口14aより下流側の部分で、第2筒部材15及び電極ホルダー16内を通り、上記第1通路11と直交するガス通路である。
【0019】
第2筒部材15は、その基端が、上記継手部材14の流通口14a側に結合され、先端側に電極ホルダー16が結合される部材である。この第2筒部材15は、第2通路12の内壁に沿って設けられた筒状のケース部材であり、後で説明するガイド筒19と相まってガスガイド手段を構成する。
【0020】
また、電極ホルダー16は、中心に第2通路12が形成された筒状の部材で、先端側の側壁には第2通路12を挟んでy方向で対向する一対の板状の放電電極5,6が取り付けられている。放電電極5,6は、電極ホルダー16の側壁に形成された凹部内に挿し込まれるとともに、図示しない固定手段によって電極ホルダー16に固定されている。そして、放電電極5,6は、電極ホルダー16の側壁を介して図示していない連結手段によって、電圧印加手段である電源7(図4参照)に電気的に接続されている。
【0021】
電極ホルダー16の先端面を覆うカバー17には、プラズマ噴出口18が形成されている。このプラズマ噴出口18は、図2に示すように上記y方向に長さを有するスリット状の開口であり、その長さ方向両端側では、放電電極5,6の厚みに開口幅を合わせて放電電極5,6を挟持するようにしている。
【0022】
また、このプラズマ噴出口18の中心点である開口中心Oで、当該プラズマ噴出口18の開口面に直交する軸線Lは、第2通路12の中心軸線と一致している。
なお、この実施形態では、プラズマ噴出口18をy方向に伸びるスリット状にしているが、開口形状はこれに限らない。例えば、z方向に長さを有するスリット状でも良いし、スリット状でなく円形などでもかまわない。
【0023】
上記第2筒部材15内には、ガスガイド手段を構成する筒部材であるガイド筒19が設けられている。このガイド筒19は、筒部19aとフランジ部19bとからなり、フランジ部19bが、第2筒部材15の端部で上記流通口14aの周囲に固定されている。このガイド筒19は合成樹脂などで形成されているが、第2筒部材15とは異種素材にしている。
【0024】
上記筒部19aは、フランジ部19bとは反対側で上記プラズマ噴出口18に向く先端が閉鎖され、側面には複数の連通小孔19cが形成されている。ガイド筒19は、上記筒部19aの外周面と上記第2筒部材15の内周面との間に隙間ができるように当該第2筒部材15内に設けられている。
したがって、流通口14aから流出して筒部19a内に流入したガスは、上記連通小孔19cから流出し、筒部19aと第2筒部材15との間へ導かれる。この実施形態では、ガイド筒19と第2筒部材15とでガスガイド手段を構成している。
【0025】
上記連通小孔19cは、筒部19aの軸方向に複数、円周方向にも複数、設けられているが、図3に示すように、筒部19aの側面を、上記軸線Lを通る平面Sで第1通路11の上流側と対向するA側の面と対向しないB側の面とに二分割したとき、上記対向するA側の側面の方が、B側の側面より、当該連通小孔19cの開口面積が大きくなるように配置されている。この実施形態では、個々の連通小孔19cの開口面積を等しくし、図3において平面Sより上であるA側の側面に、円周方向に45°ずつ位相をずらして3列に連通小孔19cを形成し、平面Sより下であるB側の側面には、互いに90°位相をずらした2列の連通小孔19cを形成している。このようにA側の側面に形成する連通小孔19cの数を、B側の側面に形成する連通小孔19cより多くしている。なお、上記平面Sは、上記y方向の軸と直交するxz平面である。
【0026】
[作用・効果等]
この実施形態のプラズマ噴射装置では、第1通路11にガスを供給しながら、放電電極5,6に電圧を印加してプラズマを生成させる。プラズマは、第1通路11及び第2通路12を通過したガスによってプラズマ噴出口18から噴出するが、このガスの流れは、次のように制御されている。
【0027】
プラズマを噴出させるガスは、上記第1筒部材13の一端側である第1通路11の上流側から供給され、第1通路11内でy方向に流れる。このガス流は、継手部材14の流通口14aからガイド筒19内に流れ込み、x方向に方向転換する。しかし、ガス流は、第1通路11のy方向の流れの癖がついているため(y方向への慣性があるため)、流通口14aから流出した直後には、第2通路12の中心を通る軸線Lに沿った流れとはならず、y方向の成分が多く残っている。すなわち、ガス流は、ガイド筒19の筒部19a内で、第1通路11の上流側と対向するA側の面よりも、B側の面に向かう傾向が強い流れになっている。このような流れが、ガイド筒19の筒部19aの連通小孔19cからその外側へ流れ出る。
【0028】
上記したように、筒部19aの側面において、第1通路11の上流側と対向するA側の面には、B側の面と比べて多くの連通小孔19cが形成されている。そのため、全ての連通小孔19cから流出して筒部19aと第2筒部材15との間を通過するガス流は、全体として第1通路11に沿った矢印y方向の成分が上記A側に向かうように修正されることになり、結果として第2通路12の軸線Lに沿った流れとなる。
【0029】
このように、第2通路の軸線Lに沿ったガス流はプラズマ噴出口18の開口中心Oを中心とする流れとなるため、このガスによって噴射されるプラズマは、例えば図4に示すプラズマpのようにプラズマ噴出口18の中心から外方に向かってy方向で均等に広がる。
そのため、このようなプラズマによる処理は、図6のように偏ったプラズマを照射する場合と比べて、均一な処理効果を得ることができる。
【0030】
また、第2通路12内に上記ガイド筒19を設けているので、ガイド筒19の筒部19aと第2筒部材15との間の流路が狭くなり、高速のガス流によって周囲の部材が振動して騒音を発生することがある。しかし、ガイド筒19と第2筒部材15とを適宜選択した異素材で形成することによって共振を抑制でき、騒音を低減できる。
【0031】
なお、上記ガイド筒19の筒部19aの側面において、A側の側面に形成される連通小孔19cの開口面積を、B側の側面に形成される連通小孔19cの開口面積より大きくするためには、上記のように連通小孔19cの数を調整するほか、個々の連通小孔19cの大きさに差を設けてもよい。
また、第2通路12内で、ガス流の方向が軸線Lに沿うように方向修正することができれば、ガイド筒19の形状も上記実施形態に限定されない。
ただし、ガス流の方向が自然に整うほど、第2通路12の長さを十分に長く設定できないことが前提である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のプラズマ噴射装置は、狭所のプラズマ処理に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
5,6 放電電極
7 (電圧印加手段)電源
10 本体
11 第1通路
12 第2通路
13 第1筒部材
14 継手部材
14a 流通口
15 (ケース部材)第2筒部材
16 電極ホルダー
17 カバー
18 プラズマ噴出口
19 (ガスガイド手段)ガイド筒
19c 連通小孔
A 第1通路の上流側と対向する側
B 第1通路の上流側と対向しない側
O (プラズマ噴出口の)開口中心
L 軸線
S 軸線を通る平面
【要約】
【課題】 狭いところの処理対象面を、均一にプラズマ処理できるプラズマ噴射装置を提供する。
【解決手段】 プラズマ噴出口18と、プラズマ噴出口18の開口内で対向する一対の放電電極5,6と、放電電極間5,6にガスを供給するガス通路11,12と、放電電極5,6に電圧を印加する電圧印加手段7とを本体10に備え、上記ガス通路は、直線状の第1通路と、上記第1通路の先端付近の側面に開口した流通口14aと、上記流通口14aから第1通路11に交差する方向に伸びて、プラズマ噴出口18まで達する第2通路12とからなり、上記第2通路内には、流通口14aから流出するガス流を、上記プラズマ噴出口の中心点Oで開口面に直交する軸線Lに沿った流れに方向修正しながらプラズマ噴出口18に導くガスガイド手段19,15を備えた。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6