IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ▲広▼▲東▼美的白色家▲電▼技▲術▼▲創▼新中心有限公司の特許一覧 ▶ 美的集団股▲フン▼有限公司の特許一覧

特許7268941モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体
<>
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図1a
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図1b
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図2
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図3
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図4
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図5
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図6
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図7
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図8
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図9
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図10
  • 特許-モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】モータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20230426BHJP
【FI】
H02P6/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022513978
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2019118185
(87)【国際公開番号】W WO2021092812
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】521007481
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼美的白色家▲電▼技▲術▼▲創▼新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG MIDEA WHITE HOME APPLIANCE TECHNOLOGY INNOVATION CENTER CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building #4,Midea Global Innovation Center,Industry Boulevard,Beijiao,Shunde Foshan,Guangdong 528311,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲魯▼
(72)【発明者】
【氏名】▲諸▼ 自▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲賓▼ 宏
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02P 6/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの位相変換誤差補償方法であって、
モータにおける校正されていないロータが設定方向で回動する場合、前記ロータの位置信号、及び三相電流信号を収集するステップであって、前記ロータの位置信号は、ロータの回動角度を特徴付けるステップと、
前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得ると共に、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するステップと、
前記位置誤差補償信号、及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップと、
前記ロータの理想的なの位相区間に基づいて前記モータのロータに対する調整方式を決定すると共に、前記調整方式に基づいて前記モータのロータを位相変換するステップと、を含むことを特徴とする
モータの位相変換誤差補償方法。
【請求項2】
前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得るステップは、
モータの校正されていないロータの角速度を取得するステップと、
前記角速度に基づいて、余弦基準信号と正弦基準信号を決定するステップと、
前記余弦基準信号及び前記正弦基準信号に基づいて初期電流出力信号を決定するステップと、
前記三相電流信号と前記初期電流出力信号との差に基づいて重み信号を生成するステップと、
前記重み信号、前記余弦基準信号及び前記正弦基準信号に基づいて、三相電流信号の基本波成分を得るステップと、を含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するステップは、
静止座標系における前記三相電流信号の基本波成分を回転座標系における二相電流信号に変換するステップであって、前記回転座標系の回動角度は、モータのロータの回動角度と同様であり、前記二相電流信号は、前記回転座標系における一軸に対応するd軸電流を含むステップと、
前記d軸電流とロータの位置信号との対応関係に基づいて前記d軸電流を調整してロータの位置誤差補償信号を決定するステップと、を含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記位置誤差補償信号、及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップは、
前記位置誤差補償信号を前記校正されていないロータの位置信号に補償して、理想的なロータの位置信号を取得するステップと、
予め設定された位相区間とロータの位置信号との対応関係に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップと、を含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ロータの理想的な位相区間に基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定するステップは、
前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップと、
前記制御電圧と前記ロータの理想的な位相区間に基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定するステップと、を含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップは、
前記モータの校正されていないロータの現在の角速度および事前所定の角速度を取得するステップであって、前記事前所定の角速度は、所望の角速度であるステップと、
調整器で前記現在の角速度と前記事前所定の角速度との差を処理して、前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップと、を含むことを特徴とする
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
モータの位相変換誤差補償装置であって、
モータにおける校正されていないロータが設定方向で回動する場合、ロータの回動角度を特徴付ける前記ロータの位置信号、及び三相電流信号を収集するように構成される収集ユニットと、
前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得ると共に、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するように構成されるフィルタユニットと、
前記位置誤差補償信号、及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するように構成される決定ユニットと、
前記ロータの理想的な位相区間に基づいて前記モータのロータに対する調整方式を決定すると共に、前記調整方式に基づいて前記モータのロータを位相変換するように構成される位相変換ユニットとを備えることを特徴とする
モータの位相変換誤差補償装置。
【請求項8】
モータの位相変換誤差補償装置であって、
プロセッサと、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを記憶するように構成されたメモリとを備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する場合、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の方法におけるステップを実行するように構成されることを特徴とする
モータの位相変換誤差補償装置。
【請求項9】
記憶媒体であって、
プロセッサにより実行される場合、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の方法におけるステップを実現させるコンピュータプログラムが記憶されていることを特徴とする
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御技術分野に関し、特にモータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で小型化が可能なブラシレスDCモータ(BLDC:Brushless Direct Current)は、現在では、ますます多くの分野、特に、手持ち式真空掃除機のような小型電動工具などの分野に広く適用される。従来のBLDCのドライバ方式は、巻線のリアクタンス等の要因により、位相変換誤差があり、最適な位相変換点での高速BLDCの位相変換を保証できず、その結果、相電流が対応する逆起電力より遅延して、モータ性能に多くの悪影響を及ぼす。
【0003】
関連技術では、一般的に鎖交磁束オブザーバと電流積分器により、位相変換の誤差を判断し、誤差補償信号を生成させる。しかしながら、このような位相変換誤差補償案は、モータの鎖交磁束オブザーバの抵抗インダクタンス情報が精確で、電流積分器にオフセット誤差が存在しないことを前提として確立されたものである。しかしながら、実際のプロセスでは、製造時に発生したばらつきや電流信号のオフセットにより、位相変換誤差を精確に検出することができず、最適な位相変換点で高速のBLDCを位相変換させることができず、BLDCのドライバ性能に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点に鑑みて、本発明の実施例は、理想的な位相変換誤差補償信号を生成させ、最適な位相変換点でのBLDCの位相変換を保証することができるモータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施例は、
モータにおける校正されていないロータが設定方向で回動する場合、前記ロータの位置信号、及び三相電流信号を収集するステップであって、前記ロータの位置信号は、ロータの回動角度を特徴付けるステップと、
前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得ると共に、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するステップと、
前記位置誤差補償信号、及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップと、
前記ロータの理想的なの位相区間に基づいて前記モータのロータに対する調整方式を決定すると共に、前記調整方式に基づいて前記モータのロータを位相変換するステップと、を含むモータの位相変換誤差補償方法を提供する。
【0006】
上記態様において、前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得るステップは、
モータの校正されていないロータの角速度を取得するステップと、
前記角速度に基づいて、余弦基準信号と正弦基準信号を決定するステップと、
前記余弦基準信号及び前記正弦基準信号に基づいて初期電流出力信号を決定するステップと、
前記三相電流信号と前記初期電流出力信号との差に基づいて重み信号を生成するステップと、
前記重み信号、前記余弦基準信号及び前記正弦基準信号に基づいて、三相電流信号の基本波成分を得るステップと、を含む。
【0007】
上記態様において、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するステップは、
静止座標系における前記三相電流信号の基本波成分を回転座標系における二相電流信号に変換するステップであって、前記回転座標系の回動角度は、モータのロータの回動角度と同様であり、前記二相電流信号は、前記回転座標系における一軸に対応するd軸電流を含むステップと、
前記d軸電流とロータの位置信号との対応関係に基づいて前記d軸電流を調整してロータの位置誤差補償信号を決定するステップと、を含む。
【0008】
上記態様において、前記位置誤差補償信号及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップは、
前記位置誤差補償信号を前記校正されていないロータの位置信号に補償して、理想的なロータの位置信号を取得するステップと、
予め設定された位相区間とロータの位置信号との対応関係に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップと、を含む。
【0009】
上記態様において、前記ロータの理想的な位相区間に基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定するステップは、
前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップと、
前記制御電圧と前記ロータの理想的な位相区間に基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定するステップと、を含む。
【0010】
上記態様において、前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップは、
前記モータの校正されていないロータの現在の角速度および事前所定の角速度を取得するステップであって、前記事前所定の角速度は、所望の角速度であるステップと、
調整器で前記現在の角速度と前記事前所定の角速度との差を処理して、前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップと、を含む。
【0011】
本開示の実施例は、
モータにおける校正されていないロータが設定方向で回動する場合、ロータの回動角度を特徴付ける前記ロータの位置信号、及び三相電流信号を収集するように構成される収集ユニットと、
前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得ると共に、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するように構成されるフィルタユニットと、
前記位置誤差補償信号、及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するように構成される決定ユニットと、
前記ロータの理想的な位相区間に基づいて前記モータのロータに対する調整方式を決定すると共に、前記調整方式に基づいて前記モータのロータを位相変換するように構成される位相変換ユニットとを備えるモータの位相変換誤差補償装置をさらに提供する。
【0012】
本開示の実施例は、プロセッサと、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを記憶するように構成されたメモリとを備えるモータの位相変換誤差補償装置をさらに提供し、
前記プロセッサは、コンピュータプログラムを実行する場合、上記いずれか1つの前記方法のステップを実行するように構成される。
【0013】
本開示の実施例は、コンピュータプログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行される場合、上記いずれか1つの前記方法のステップを実現する記憶媒体をさらに提供する。
【0014】
本開示の実施例によるモータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体は、収集された三相電流信号に対してフィルタ処理を行うことで、三相電流信号における各相電流信号に対応する基本波成分を抽出し、得られた基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定し、フィルタ処理により電流信号の高調波が除去されるため、得られた基本波成分には信号のオフセットが存在しない。これに基づき、位置誤差補償信号と実際に収集した位置信号とを組み合わせてロータの理想的な位相変換の位相を決定し、ひいては対応する調整方式でモータのロータの位相変換を実現する。これにより、信号オフセットを導入することなく、最適な位相変換点でのBLDCの位相変換を実現し、BLDCのドライバ性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】従来技術における位相変換誤差を判断する方法の実現の模式図である。
図1b】従来技術における位相変換誤差を判断する方法で逆起電力信号eと電流信号iとの関係、及び鎖交磁束信号Ψと電流積分信号fidtとの関係の模式図である。
図2】本開示の実施例に提供されるモータの位相変換誤差補償方法ある。
図3】本開示の実施例に提供されるニューラルネットワークフィルタの原理模式図である。
図4】静止二軸座標系α、βにおける電圧ベクトルを回転する二軸座標系d軸、q軸に投影した模式図である。
図5】予め設定されたセクタとロータ位置信号、ドライバ方式との対応関係の模式図である。
図6】制御電圧と三相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの制御関係の模式図である。
図7】本開示の実施例に提供されるBLDCを電子機器におけるハードウェアシステムに適用する構成模式図である。
図8】BLDCライン逆起電力波形、セクタ及びドライバ信号の対応関係の模式図である。
図9】本開示の実施例に提供されるモータの位相変換誤差補償方法の実現の模式図である。
図10】本開示の実施例に提供されるモータの位相変換誤差補償装置の構成模式図である。
図11】本開示の実施例に提供されるモータの位相変換誤差補償装置のハードウェア構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の目的、技術的手段、および利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の具体的な技術的手段についてさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本開示を説明するために用いられるが、本開示の範囲を限定するために用いられるものではない。
【0017】
従来技術において位相変換誤差を判断する方法が提案され、図1aは従来技術における位相変換誤差を判断する方法の実現の模式図であり、図1aに示すように、センサによってモータの電流および電圧信号を収集し、さらに鎖交磁束オブザーバによって得られた鎖交磁束信号Ψと電流積分モジュールによって得られた電流積分信号fidtとの間の位相差によって、変換誤差補償信号を得る。ここで、この位相変換誤差を判断する方法では、鎖交磁束信号Ψと電流積分信号fidtとの位相差に基づいて、モータにおける逆起電力信号と電流信号との位相差を代替することができると提案されている。
【0018】
図1bは、従来技術における位相変換誤差を判断する方法で逆起電力信号eと電流信号iとの関係、鎖交磁束信号Ψと電流積分信号fidtとの関係の模式図であり、図1bに示すように、鎖交磁束信号Ψは逆起電力信号eより90°遅延し、電流積分信号fidtは電流信号iより90°遅延し、このように、鎖交磁束信号Ψと電流積分信号fidtとの位相差をモータの逆起電力信号と電流信号との位相差の代わりに用い、位相差検出モジュールによって鎖交磁束信号Ψと電流積分信号fidtとの位相差αを決定し、さらに位相差が0になるように調整して位相変換誤差補償信号を取得することができる。
【0019】
しかしながら、このような位相変換誤差補償案は、モータの鎖交磁束オブザーバの抵抗インダクタンス情報が精確で、電流積分器にオフセット誤差が存在しないことを前提として確立されたものである。しかしながら、実際のプロセスにおいて、高速モータの抵抗インダクタンスパラメータは小さく、実際の製造プロセスにおいて、モジュール化の製造、巻き数が非対称であること、線路接触抵抗が異なることなどの原因により、実際の抵抗インダクタンスパラメータが理論値と異なる現象が発生しやすく、そのため、鎖交磁束オブザーバモデルの抵抗インダクタンスが不正確になる。そのほか、電流信号は、積分モジュールによって処理された後、直流オフセット成分が発生し、このオフセットにより電流積分信号のゼロクロス点に誤差が存在し、位相差検出に影響を与える。
【0020】
これに基づき、位相変換誤差を補償するために、本発明の実施例は、図2に示すように、モータの位相変換誤差補償方法を提供し、当該方法は以下のステップを含む。
【0021】
ステップ101では、モータにおける校正されていないロータが設定方向で回動する場合、前記ロータの位置信号、及び三相電流信号を収集し、前記ロータの位置信号はロータの回動角度を特徴付ける。
【0022】
本開示の実施例において、モータはBLDCであり、前記設定方向は、時計回り方向、反時計回り方向であってもよい。前記BLDCの位相変換とは、BLDCにおけるロータの位相変換を意味する。前記ロータの位置信号とは、ロータが回動する角度を意味し、例えば、ロータが60°回動した場合、ロータの位置信号は60°となる。
【0023】
実際の適用において、BLDCのロータの位置信号は、0~360°の間にあり、60°ごとに1つのセクタ、合計6つのセクタに分割されており、第30°~90°は第Iセクタであり、第90°~150°は第IIセクタであり、第150~210°は第IIIセクタであり、第210°~270°は第IVセクタであり、第270°~330°は第Vセクタであり、第330°~30°は第VIセクタである。BLDCのロータが第Iセクタから第IIセクタに回動し、または第IIIセクタから第IVセクタに回動することは、一回の位相変換が発生することを意味する。
【0024】
実際の適用において、上記ステップ101におけるBLDCのロータの位置信号は、センサレス技術により取得されてもよいし、BLDCのロータ位置センサ(ホールセンサ、光電エンコーダー等)により直接読み取られてもよい。
【0025】
なお、センサレス技術によりBLDCのロータの位置信号を取得する方式は、ロータ位置センサによって読み取る方式に比べて、別途センサを配置する必要がないため、ハードウェアコストが低減される。しかしながら、ロータ位置センサを用いて実現されるロータの位置信号の収集方式は、実現が簡単で、操作が容易であり、本開示の実施例は、ロータの位置信号の収集方式を限定するものではなく、実際の必要に応じて対応する方式を選択することができる。
【0026】
上記ステップ101における三相電流信号は、サンプリング抵抗によって取得されることができ、サンプリング抵抗は、電流、電圧に対するサンプリングを実現することができる。サンプリング電流は抵抗値が小さい1つの抵抗を直列に接続して実現することができ、電圧の収集は抵抗値が大きい1つの抵抗を並列に接続する必要がある。このように、対応する抵抗を設定することによって、三相電流と三相電圧に対する収集を実現することができる。
【0027】
ステップ102では、前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得て、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定する。
【0028】
BLDCのドライバ方式については、前記三相電流信号は正弦波ではなく、高調波を多く含む矩形波である。これに基づき、前記三相電流信号における高調波を除去する必要がある。本開示の実施例では、ニューラルネットワークフィルタを構成することによって、三相電流信号における高調波に対するフィルタリングを実現し、信号オフセットを生成しない上で、三相電流信号に対応する基本波成分を取得する。
【0029】
ここで、前記三相電流信号をフィルタ処理して三相電流信号の基本波成分を得るステップは、
モータの校正されていないロータの角速度を取得するステップと、
前記角速度に基づいて、余弦基準信号と正弦基準信号を決定するステップと、
前記余弦基準信号及び前記正弦基準信号に基づいて初期電流出力信号を決定するステップと、
前記三相電流信号と前記初期電流出力信号との差に基づいて重み信号を生成するステップと、
前記重み信号、前記余弦基準信号及び前記正弦基準信号に基づいて、三相電流信号の基本波成分を得るステップとを含む。
【0030】
なお、本開示の実施例は、ニューラルネットワークフィルタにより前記三相電流信号をフィルタ処理し、三相電流信号の基本波成分を得る。基本波関数は、振幅、角速度、初期
位相によって決定されことができ、即ち、
【数1】
であり、当該式はi点における基本波信号の値を示している。このように、先に余弦基準信号と正弦基準信号により基本波関数を構成し、さらに自己適応型重み係数により三相電流信号に対応する基本波成分を得ることができる。
【0031】
ここで、図3を参照しながら前記三相電流信号のフィルタリング処理について説明する:
図3は本開示の実施例に提供されるニューラルネットワークフィルタの原理模式図であり、図3に示すように、前記ニューラルネットワークフィルタは、基準信号入力モジュール501、フィルタ出力モジュール502、重み生成モジュール503を備える。前記基準信号入力モジュール501は、第1基準信号入力サブモジュール5011と第2基準信号入力サブモジュール5012とを備え、前記フィルタリング出力モジュール502は、第1基準信号処理サブモジュール5021と第2基準信号処理サブモジュール5022とを備える。
【0032】
前記第1基準信号入力サブモジュール5011及び第2基準信号入力サブモジュール5012の入力信号はいずれも、BLDCの回転速度と関連している。ここで、前記第1基準信号入力サブモジュール5011は、以下のように表すことができ、即ち、
【数2】
である。前記第2基準信号入力サブモジュール5012は、以下のように表すことができ、即ち、
【数3】
である。ここで、Wはモータの回転の角速度であり、Tはサンプリングステップ長さであり、nはサンプリング回数、rは余弦基準信号であり、rは正弦基準信号である。
【0033】
前記第1基準信号処理サブモジュール5021の入力信号は、余弦基準信号rと重み信号Wであり、出力信号は、yであり、ここで、
【数4】
である。
【0034】
前記第2基準信号処理サブモジュール5022の入力信号は、正弦波基準信号rと重み信号Wであり、出力信号は、yであり、ここで、
【数5】
である。
【0035】
余弦基準信号r、正弦波基準信号r及び対応する重み信号W、Wをフィルタ出力モジュール502の入力信号としてフィルタ出力モジュール502に入力し、初期電流出力信号yを出力する、即ち、
【数6】
である。
【0036】
図3に示すように、重み信号W、Wは、重み生成モジュール503によって生成され、前記重み生成モジュール503は、入力信号Iabcとフィルタ出力モジュール502の出力信号yとの差εに応じて、自己適応的に重み信号W、Wを生成する。前記調整プロセスは、以下のように表すことができる。
【0037】
即ち、
【数7】
である。
【0038】
ここで、ηはニューラルネットワークフィルタの自己適応型学習因子であり、Wn-1はサンプリング回数がn-1である場合の重み信号であり、Wはサンプリング回数がnである場合の重み信号であり、eはサンプリング回数がnである場合、入力信号Iabcとフィルタ出力モジュール502の出力信号yとの差であり、上記eは以下のように表すことができる。
【0039】
即ち、
【数8】
である。
【0040】
実際の応用において、入力信号Iabcは、前記ニューラルネットワークフィルタによってフィルタ処理される場合、その処理がそれぞれ行われ、三相電流の間には互いに影響を与えない。即ち、A相電流Iが前記ニューラルネットワークフィルタによってフィルタ処理され、対応する基本波電流信号Ia_1を取得し、B相電流Iが前記ニューラルネットワークフィルタによってフィルタ処理され、対応する基本波電流信号Ib_1を取得し、C相電流Iが前記ニューラルネットワークフィルタによってフィルタ処理され、対応する基本波電流信号Ic_1を取得する。
【0041】
電流信号の基本波振幅はニューラルネットワークフィルタによって抽出されたものであるため、抽出された電流信号の基本波位相が誤差を有しないように信号オフセットによる影響を大幅に軽減させ、後続の補償信号の正確な決定に基礎を提供するすることができる。
【0042】
本開示の実施例では、三相電流信号の基本波成分Ia_1、Ib_1とIc_1を得た後、BLDCの三相電流信号の基本波成分Ia_1、Ib_1及びIc_1をベクトル分解して励磁電流成分I(d軸電流成分I)及びトルク電流成分I(q軸電流成分I)に変化させる。ここで、励磁電流Iは主に励磁を生成させてBLDCの磁界の強度を制御するために用いられ、q軸電流IはBLDCのトルクを制御するために用いられる。そして、励磁電流Iが0である場合、BLDCは、d軸の電機子反応がないため、すなわちd軸がトルクを貢献しないため、BLDCの全ての電流が全て電磁トルクを生成するために用いられ、従って、理想的な状態では、モータd軸電流は0となる。一方、高速のBLDCは、巻線のリアクタンス等の要因の存在により実際の運転中にd軸電流Iが0にならないことで、d軸電流を0に調整すれば位置誤差補償信号が決定されることができ、この位置誤差補償信号はθadvで表す。
【0043】
このように、ステップ102における前記三相電流信号の基本波成分に基づいて、モータの位置誤差補償信号を決定するステップは、
静止座標系における前記三相電流信号の基本波成分を回転座標系における二相電流信号に変換するステップであって、前記回転座標系の回動角度は、モータのロータの回動角度と同様であり、前記二相電流信号は、前記回転座標系における一軸に対応するd軸電流を含むステップb1と、
前記d軸電流とロータの位置信号との対応関係に基づいて前記d軸電流を調整してロータの位置誤差補償信号を決定するステップb2と、を含む。
【0044】
ここで、ステップb1において、静止座標系における前記三相電流信号の基本波成分を回転座標系における二相電流信号に変換することは、先にClark変換を行い、次にPark変換を行うことにより実現できる。前記Clark変換は、静止座標系における三相電流信号を静止座標系における二相電流信号に変換するものであり、つまり、三相固定子座標系(3つの軸I、I、Iが互いに120°をなす)を二相固定子直交座標系(2つの軸Iα、Iβが互いに90°をなす)に変換するものである。前記Park変換は、静止座標系における二相電流信号を回転座標系の二相電流信号に変換するものであり、つまり、二相固定子直交座標系(2つの軸Iα、Iβが互いに90°をなす)から二相ロータ直交座標系(2つの軸I、Iが互いに90°をなす)に変換するものである。
【0045】
前記回転座標系における二相電流信号は、回転座標系における一方の軸に対応するd軸電流と、回転座標系における他方の軸に対応するq軸電流とを含む。
【0046】
なお、静止三軸座標系a、b、cにおける電流ベクトルを静止二軸座標系α、β軸に投影することは、次式により行われることができる。
【0047】
即ち、
【数9】
である。
【0048】
式中、Iαは静止二軸座標系α、βにおけるα軸の電流であり、Iβは静止二軸座標系α、βにおけるβ軸の電流であり、Iは静止三軸座標系a、b、cにおけるa軸の電流であり、Iは静止三軸座標系a、b、cにおけるb軸の電流であり、Iは静止三軸座標系a、b、cにおけるc軸の電流であり、kは三相巻線における各相の有効巻き数と二相巻線における各相の有効巻き数との比であり、変換前後で総電力が変化しない場合に、
【数10】
である。
【0049】
一方、静止二軸座標系α、βにおける電圧ベクトルを、回転する二軸座標系d軸、q軸に投影することは、次式により行われることができる。
【0050】
即ち、
【数11】
である。
【0051】
ここで、φはd軸とα軸とのなす角度、具体的にロータが回転する角度であり、Iはd軸の電流であり、Iはq軸の電流である。このようにして、ステップ101で収集したロータの位置信号とIα、Iβにより、I、Iを決定することができる。
【0052】
図4は、静止二軸座標系α、βにおける電圧ベクトルを、回転する二軸座標系d軸、q軸に投影した模式図であり、図4に示すように、
【数12】
はI、Iの合成電流ベクトルである。φはd軸とα軸とのなす角であり、静止二軸座標系α、βにおける電圧ベクトルを回転二軸座標系d軸、q軸に投影した回転角度を意味する。
【0053】
励磁電流成分Iとトルク電流成分Iが得られた後、調整器によってd軸電流とロータの位置信号との対応関係を調整して、ロータの位置誤差補償信号を決定することができる。
【0054】
三相電流信号に対してClark変換を行い、引き続きPark変換を行ったことにより、回転座標系における2つの電流成分I、Iを得る一方、理想的な状態では、I=0であり、このように調整器でIを0に調整し、対応する位置誤差補償信号を出力する必要がある。ここで、前記調整器は比例調整器であり、設定された比例係数により、実際値Iと事前所定値0との差を比例調整器に入力し、対応する誤差補償信号を出力してもよい。ここで、前記比例係数は、電流に対する角度の比である。このようにして、位置誤差補償信号θadvを得ることができる。
【0055】
ステップ103では、前記位置誤差補償信号と、ロータの位置信号とに基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定する。
【0056】
ここで、前記理想的な位相区間とは、理想的な対応セクタを意味する。前記ロータの位置信号は、上記ステップ101で収集した実際のロータの位置信号、または校正されていない位置信号であり、θで表される。
【0057】
上述のように、BLDCのロータの一周回動に対応する角度を6つのセクタに分割し、第30°~90°は第Iセクタであり、第90°~150°は第IIセクタであり、第150~210°は第IIIセクタであり、第210°~270°は第IVセクタであり、第270°~330°は第Vセクタであり、第330°~30°は第VIセクタである。そして、ロータの位置信号θを補償した後、理想的なロータ位置信号θを得ることができ、理想的なロータ位置信号θは、セクタと対応関係が存在し、それにより、前記ロータの理想的な対応セクタを決定することができ、例えば、ロータ位置信号が120°であると仮定する場合に第IIセクタに対応する。
【0058】
ここで、前記位置誤差補償信号θadv、ロータの位置信号θに基づいて前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップは、前記位置誤差補償信号θadvを前記校正されていないロータの位置信号θに補償して理想的なロータの位置信号θを得るステップと、予め設定された位相区間とロータの位置信号との対応関係に基づいて前記ロータの理想的な位相区間を決定するステップと、を含む。
【0059】
なお、位置誤差補償信号θadvが得られた後は、前記位置誤差補償信号θadvを前記ロータの位置信号θに加算すれば、理想的なの位置信号θが決定される。
【0060】
前記予め設定されたセクタとロータの位置信号との対応関係とは、理想的な場合におけるセクタとロータの位置信号との対応関係である。実際の応用に際しては、ロータの位置信号を決定した後、予めプログラムに設けられたマッピングテーブルを検索することにより対応するセクタを得ても良いし、他の方式により得ても良く、ここでは限定しない。
【0061】
図5は、予め設定されたセクタとロータの位置信号との対応関係の模式図であり、図5に示すように、本開示の応用実施例において、BLDCのロータ位置は0°から360°であり、60°ごとに1つのセクタを分割し、各セクタドライバには、対応するドライバ方式を出力する必要がある。ここで、図5におけるドライバ方式において、A、B、CはそれぞれBLDCのA相、B相、C相を示し、+、-はそれぞれ各相の上スイッチングデバイスと下スイッチングデバイスを示す。
【0062】
ステップ104では、前記ロータの理想的な位相区間に基づいて前記モータのロータに対する調整方式を決定し、前記調整方式に基づいて前記モータのロータを位相変換する。
【0063】
なお、前記ロータの理想的な対応セクタに基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定ステップは、前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップと、前記制御電圧と前記ロータの理想的な位相区間に基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定するステップと、を含む。
【0064】
ここで、前記制御電圧は、三相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスを制御し、各スイッチングデバイスの動作状態を決定するために用いられ、各スイッチングデバイスの動作状態の制御によって前記BLDCの理想的な位置換相を実現する。前記三相フルブリッジ回路には、6個のスイッチングデバイスS1~S6を含む。実際の応用において、三相フルブリッジ回路における6個のスイッチングデバイスS1~S6は、それぞれ異なるPWMドライバ信号、すなわち三相六状態PWMドライバ信号に対応する。各スイッチングデバイスのPWMドライバ信号は、対応するスイッチングデバイスの動作状態を制御することができる。このようにして、ドライバ信号によって対応するスイッチングデバイスを制御することにより、ロータに対する位相変換を実現することができる。
【0065】
制御電圧と三相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスとの制御関係については、図6に示すように、図6における各スイッチングデバイスの状態は、PWM状態、フルオン状態、ターンオフ状態の3種類があり、この3種類の状態は、各スイッチングデバイスに作用する動作電圧を直接反映している。例えば、BLDCのロータの位置が40°であると仮定し、図5からBLDCのロータの位置が40°であることに対応するドライバ方式A+B-を検索すると、図6においてA相上スイッチングデバイスS1とB相下スイッチングデバイスS4を導通させており、他の4個のトランジスタS2、S3、S5、S6を導通させないことにより、上記三相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの動作電圧を得る必要がある。
【0066】
なお、制御電圧を得れば、PWMドライバ信号のデューティ比を決定することができ、PWMドライバ信号のデューティ比は、PWMドライバ信号の振幅を直接反映するため、三相フルブリッジ回路におけるスイッチングデバイスの動作モードを制御するために使用されることができる。そして、制御電圧によって決定されたPWMドライバ信号のデューティ比と、前記ロータの理想的な対応セクタとに基づいて、前記モータのロータに対する調整方式を決定することができる。
【0067】
なお、前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップは、
前記モータの校正されていないロータの現在の角速度および事前所定の角速度を取得するステップであって、前記事前所定の角速度は、所望の角速度でステップと、
調整器で前記現在の角速度と前記事前所定の角速度との差を処理して、前記ロータの調整に必要な制御電圧を決定するステップとを含む。
【0068】
ここで、ロータの角速度と位置信号との関係は、θ=ωtとなるため、位置信号θを微分することによりロータの角速度ωを得ることができる。このように、収集した現在の位置信号θを微分することにより、現在の角速度ωを得ることができ、前記事前所定の角速度は、所望の角速度である。前記現在の角速度ωとは、収集した位置信号θを微分することにより得られた実際の角速度ωを指す。
【0069】
前記現在の角速度と前記事前所定の角速度との差を処理するための前記調整器は、回転速度調整器であってもよく、前記回転数調整器は、回転数を調整する調整器である。具体的な実現時に、収集した角速度と事前所定の角速度との差を入力値として前記回転速度調整器に入力することにより、制御電圧を得る。
【0070】
制御電圧が決定されると、制御電圧に応じてPWMのデューティ比を制御することにより対応する制御信号を生成することができるため、前記制御信号によって三相フルブリッジにおけるスイッチングデバイスの動作状態を制御してBLDCをドライバすることができる。
【0071】
以下、具体的な応用実施例を参照して本開示を詳細に説明する。
【0072】
応用実施例では、BLDCは、6つのセクタを有し、且つ図7に示すハードウェアシステムで実現される。図7に示すように、前記ハードウェアシステムは、BLDC701、三相端電流サンプリング抵抗702、三相フルブリッジ703、電池704、コンデンサ705、マイクロコントローラユニット(Micro Controller Unit:MCU)706、位置センサ707を備え、S1-S6は制御スイッチである。MCU706は、ドライバ信号により三相フルブリッジ703を制御することで、BLDC701の制御を実現する。MCU706は、位置センサ707により位置信号を収集する。MCU706は、三相端電流サンプリング抵抗702により電流信号を収集する。BLDC701の三相には、3組の電流サンプリング抵抗、すなわち三相端電流サンプリング抵抗702がそれぞれ接続されている。
【0073】
図8はBLDCライン逆起電力波形、セクタ及びドライバ信号の対応関係を示す模式図であり、図8には、波形401、波形402、波形403のそれぞれはBLDCのラインAB、ラインBC、ラインCAの逆起電力の波形であり、3つのライン逆起電力同士の位相差が120°であり、1つのBLDC本体の電磁周期は、6つのセクタを含み、当該6つのセクタは、番号をセクタI、セクタII、セクタIII、セクタIV、セクタV、セクタVIとし、セクタ境界をBLDCの位相が反転する角度位置とし、理想的な状態で各セクタ同士の角度間隔を60°とする。
【0074】
本開示の実施例は、BLDC位相変換を実現するために、提供される位相変換誤差補償方法によって位置誤差補償信号θadvを取得し、取得された位置信号θに基づいて位置補償信号θadvを加算することにり理想的な位置信号θを取得する。
【0075】
図9は、本開示の実施例に提供されるモータの位相変換誤差補償方法の実現の模式図であり、図9に示すように、サンプリング抵抗207によりBLDC205の三相電流信号を収集してIabc(I、I、I)を取得し、更に、ニューラルネットワークフィルタ208により三相電流信号Iabcをフィルタ処理して対応する基本波成分Ia_1、Ib_1及びIc_1を得、座標変換209によりBLDCの三相電流信号の基本波成分Ia_1、Ib_1及びIc_1をベクトル分解して励磁電流成分I(d軸電流成分I)に変化させる。理想的な状態でモータd軸電流Iが0であることを考慮して、このように、調整器210によりIを0に調整して位置誤差補償信号θadvを得る。位置誤差補償信号θadvと収集した位置信号θとを加算して理想的なの位置信号θを得るようにした。
【0076】
一方、センサ206及び位置検出ユニット211によりBLDCの位置信号θを収集し、微分ブロック212により前記位置信号θを処理して現在の角速度を取得し、事前所定の角速度ωが取得されると、現在の角速度ωと事前所定の角速度ωとの差を回転速度調整器201に入力して調整を行って、制御電圧を取得する。このように、制御電圧と理想的な位置信号θとにより、位相変換のドライバ信号と位相、セクタとの対応関係を示す位相変換の論理テーブル202を特定し、最後に、PWMモジュール203によって、三相フルブリッジ回路204におけるスイッチの動作状態が制御されてBLDCの位相変換がドライバされる。
【0077】
本開示の実施例によるモータの位相変換誤差補償方法、装置及び記憶媒体は、収集された三相電流信号に対してフィルタ処理を行うことで、三相電流信号における各相電流信号に対応する基本波成分を抽出し、得られた基本波成分に基づいて、モータの位置誤差補償信号を決定し、ニューラルネットワークフィルタにより抽出された電流信号の基本波振幅により、信号オフセットの影響を大幅に軽減することができる。これに基づき、位置誤差補償信号と実際に収集した位置信号とを組み合わせてロータの理想的な位相変換の位相を決定し、ひいては対応する調整方式でモータのロータの位相変換を実現する。これにより、信号オフセットを導入することなく、理想的な位相変換点でのBLDCの位相変換が実現され、BLDCのドライバ性能が保証される。
【0078】
また、本発明の実施例の態様は、ハードウェアの改良を必要とせず、ソフトウェア方式だけでBLDCMのタイムリーな位相変換を実現し、ハードウェアコストを増加させず、実現が簡単で便利である。
【0079】
本発明の実施例に係る方法を実現するために、本発明の実施例は、モータの位相変換誤差補償装置をさらに提供し、図10は本発明の実施例に係るモータの位相変換誤差補償装置の構成模式図であり、図10に示すように、前記モータの位相変換誤差補償装置1000は、収集ユニット1001、フィルタリングユニット1002、決定ユニット1003及び位相変換ユニット1004を含む。
【0080】
前記収集ユニット1001は、モータにおける校正されていないロータが設定方向で回動する場合、ロータの回動角度を特徴付ける前記ロータの位置信号、及び三相電流信号を収集するように構成される。
【0081】
前記フィルタリングユニット1002は、前記三相電流信号をフィルタリング処理して三相電流信号の基本波成分を取得し、前記三相電流信号の基本波成分に基づいてモータの位置誤差補償信号を決定するように構成される。
【0082】
前記決定ユニット1003は、前記位置誤差補償信号及び前記ロータの位置信号に基づいて、前記ロータの理想的な位相区間を決定するように構成される。
【0083】
前記位相変換ユニット1004は、前記ロータの理想的な位相区間に基づいて前記モータのロータに対する調整方式を決定し、前記調整方式に基づいて前記モータのロータを位相変換するように構成される。
【0084】
実際の応用において、収集ユニット1001、フィルタリングユニット1002、決定ユニット1003、及び位相変換ユニット1004は、BLDCの位相変換誤差補償装置におけるプロセッサによって実現されてもよい。
【0085】
なお、上記実施例で提供したBLDCの位相変換誤差補償装置は、BLDC位相変換を制御するとき、上記各プログラムモジュールの分割として例示しただけであり、実際の応用においては、必要に応じて上記処理の割り当てを異なるプログラムモジュールで行うことができ、すなわち、上記説明した全部又は一部の処理を完了するために、装置の内部構成を異なるプログラムモジュールに分割する。また、上記実施例により提供するモータの移相誤差補償装置とモータの移相誤差補償方法実施例は同一の構想に属し、その具体的な実現プロセスは方法実施例を詳しく参照すればよく、ここでは説明を省略する。
【0086】
本開示の実施例を実現するために、上記プログラムモジュールのハードウェアの実現に基づき、本開示実施例は、モータの移相誤差補償装置をさらに提供する。図11に示すように、前記装置1100は、プロセッサ1101と、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを記憶するように構成されるメモリ1102と、を備える。
【0087】
プロセッサ1101は、前記コンピュータプログラムを実行するとき、上記1つ又は複数の技術的手段により提供される方法を実行するように構成される。
【0088】
実際の応用にあたって、図11に示すように、上述した装置1100における各構成要素は、バスシステム1103によって結合される。バスシステム1103は、これらのデバイス間の接続通信を実現するために用いられることを理解される。バスシステム1103は、データバスの他に、電源バス、制御バス、状態信号バスをさらに含む。ただし、説明の明確化のため、図11には、各種のバスはいずれも、バスシステム1103と表記されている。
【0089】
例示的な実施例には、本開示の実施例は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である記憶媒体をさらに提供し、当該記憶媒体は、例えばコンピュータプログラムを含むメモリであり、前記ステップ、前記方式を完了させるために、前記コンピュータプログラムがモータの移相誤差補償装置のプロセッサにより実行されてよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、磁気ランダムアクセスメモリ(FRAM(登録商標):ferromagnetic randomaccess memory)、読み取り専用メモリ(ROM:Read OnlyMemory)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM:Programmable Read-OnlyMemory)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM:Erasable Programmable Read-OnlyMemory)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-OnlyMemory)、フラッシュメモリ(Flash)、磁気表面メモリ、光ディスク、または読み取り専用光ディスク(CD-ROM:CompactDisc-OnlyMemory)などのメモリであってもよい。
【0090】
なお、「第1」、「第2」等は、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序または前後順序を説明するために用いられる必要がない。
【0091】
また、本開示の実施例に記載の技術的手段同士は、衝突がない場合に任意に組み合わせることができる。
【0092】
以上は、本開示の好ましい実施例に過ぎず、本開示の保護範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0093】
101 ステップ
102 ステップ
103 ステップ
104 ステップ
210 調整器
1000 位相変換誤差補償装置
1001 収集ユニット
1003 決定ユニット
1004 位相変換ユニット
1100 装置
1101 プロセッサ
1102 メモリ
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11