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特許7268942造粒用バインダー並びに造粒物およびその製造方法
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  • 特許-造粒用バインダー並びに造粒物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】造粒用バインダー並びに造粒物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230426BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230426BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20230426BHJP
   A23L 23/10 20160101ALN20230426BHJP
   A23F 3/32 20060101ALN20230426BHJP
   A23G 1/56 20060101ALN20230426BHJP
   A23L 2/38 20210101ALN20230426BHJP
   A23L 27/00 20160101ALN20230426BHJP
   A23C 11/08 20060101ALN20230426BHJP
   A23L 2/395 20060101ALN20230426BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A61K9/16
A61K9/14
A61K47/36
A61K8/02
A61K8/73
A23L29/30
A23L23/10
A23F3/32
A23G1/56
A23L2/38 C
A23L27/00 F
A23C11/08
A23L2/395
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018104678
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208374
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄右
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050173(JP,A)
【文献】特開2013-076044(JP,A)
【文献】特開2015-104357(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/30
A61K 9/16
A61K 9/14
A61K 47/36
A61K 8/02
A61K 8/73
A23L 29/00-29/10
A23L 29/20-29/206
A23L 23/10
A23F 3/32
A23G 1/56
A23L 2/38
A23L 27/00
A23C 11/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を有効成分として含んでなる、粉末原料の造粒用バインダーであって、前記加工処理物が、難消化性グルカン酵素処理物、難消化性グルカン分画処理物または難消化性グルカン還元処理物である、造粒用バインダー。
【請求項2】
粉末原料の表面に付着させて使用する、請求項1に記載の造粒用バインダー。
【請求項3】
粉末原料1質量部(固形分)に対し、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を0.005~2質量部(固形分)使用する、請求項2に記載の造粒用バインダー。
【請求項4】
粉末原料が、食品、化粧品、農薬品または医薬品である、請求項2または3に記載の造粒用バインダー。
【請求項5】
難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を造粒用バインダーとして用いて粉末原料を造粒する工程を含んでなる、造粒物の製造方法であって、前記工程において粉末原料の表面に造粒用バインダーを付着させ、かつ、前記加工処理物が、難消化性グルカン酵素処理物、難消化性グルカン分画処理物または難消化性グルカン還元処理物である、製造方法。
【請求項6】
造粒物が、粉末原料を凝集させてなるものである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
粉末原料1質量部(固形分)に対し、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を0.005~2質量部(固形分)使用する、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
粉末原料が、食品、化粧品、農薬品または医薬品である、請求項5~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
造粒物が、顆粒または細粒である、請求項5~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
粉末原料と、造粒用バインダーとして難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物とを含んでなる、造粒物であって、粉末原料1質量部(固形分)に対する難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物の割合が0.05~0.215質量部であり、粉末原料の表面に造粒用バインダーが付着してなるものであり、かつ、前記加工処理物が、難消化性グルカン酵素処理物、難消化性グルカン分画処理物または難消化性グルカン還元処理物である、造粒物。
【請求項11】
粉末原料が凝集してなるものである、請求項10に記載の造粒物。
【請求項12】
粉末原料が、食品、化粧品、農薬品または医薬品である、請求項10または11に記載の造粒物。
【請求項13】
造粒物が、顆粒または細粒である、請求項10~12のいずれか一項に記載の造粒物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒用バインダー並びに造粒物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末物質には、粉立ちの発生、付着性が大きく流動性が悪い、溶解し難い、吸湿性が高い、粉塵爆発のリスク等の問題があり、それらの課題を改善し、ハンドリング、保存性、安全性、溶解性等を向上させるため、粉末物質を造粒する技術が用いられてきた。身近なものとしては、医薬品、調味料、粉末飲料、インスタントコーヒー、ココア、粉ミルク、粉末スープ、香辛料、砂糖、菓子類等の飲食品、化粧品、農薬品の造粒品が挙げられる。
【0003】
粉末物質を造粒するためには、原料となる粉末を凝集や被覆によって粒径を大きくすることが必要である。一般に造粒物を製造する手段として流動層造粒装置、転動造粒装置、押し出し造粒装置等が用いられており、装置内でつなぎ成分であるバインダーを造粒化剤として用いることによって粉末原料を凝集や被覆させて顆粒を得ている。例えば、飲食品分野の造粒に使用するバインダーとしては、水を使用したりする他に、デキストリン、寒天、ゼラチン、ブドウ糖、乳糖、塩類、澱粉、カルボキシメチルセルロース、増粘多糖類等の水溶性分散剤を含む水溶液が使用されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-192639号公報
【文献】特開2005-130727号公報
【文献】特開昭63-98372号公報
【発明の概要】
【0005】
粉末原料の造粒において少量のバインダーでより大きな造粒物が得られれば、コスト低減、省エネルギー化および造粒プロセスの短縮に資することができる。本発明者らはこのような観点から鋭意検討を重ねたところ、粉末原料の造粒時に難消化性グルカンまたはその加工処理物を造粒用バインダーとして用いることにより、高い造粒効率で粉末原料を造粒できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明は、造粒効率に優れた新規な造粒用バインダーと、新規な造粒物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を有効成分として含んでなる、造粒用バインダー。
[2]造粒が、粉末原料の造粒である、上記[1]に記載の造粒用バインダー。
[3]粉末原料1質量部(固形分)に対し、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を0.005~2質量部(固形分)使用する、上記[2]に記載の造粒用バインダー。
[4]粉末原料が、食品、化粧品、農薬品または医薬品である、上記[2]または[3]に記載の造粒用バインダー。
[5]難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を用いて粉末原料を造粒する工程を含んでなる、造粒物の製造方法。
[6]粉末原料1質量部(固形分)に対し、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を0.005~2質量部(固形分)使用する、上記[5]に記載の製造方法。
[7]粉末原料が、食品、化粧品、農薬品または医薬品である、上記[5]または[6]に記載の製造方法。
[8]造粒物が、顆粒または細粒である、上記[5]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]粉末原料と、造粒用バインダーとして難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物とを含んでなる、造粒物。
[10]粉末原料1質量部(固形分)に対し、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を0.005~2質量部(固形分)含有する、上記[9]に記載の造粒物。
[11]粉末原料が、食品、化粧品、農薬品または医薬品である、上記[9]または[10]に記載の造粒物。
[12]造粒物が、顆粒または細粒である、上記[9]~[11]のいずれかに記載の造粒物。
【0008】
本発明によれば、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を有効成分とする造粒用バインダーと、それを用いた造粒物および造粒物の製造方法が提供される。本発明は、高い造粒効率で粉末原料を造粒化できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、難消化性グルカンによる造粒効果(実施例2、試験区4)を他のバインダー(実施例2、対照区3~7)との対比で示した図である。図中の白線は1000μmを表す。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明の造粒用バインダーは、難消化性グルカンおよびその加工処理物のいずれかまたは両方を有効成分とするものである。また、本発明の製造方法は、難消化性グルカンおよびその加工処理物のいずれかまたは両方を造粒用バインダーとして使用することを特徴とするものである。
【0011】
本発明において「難消化性グルカン」は、難消化性のグルカン(グルコースポリマー)を意味する。本発明の難消化性グルカンは、DE70~100の澱粉分解物を加熱処理により縮合反応させた糖縮合物からなるものである。
【0012】
難消化性グルカンの原料となる澱粉分解物としては、DEが70~100である澱粉分解物を使用することができる。澱粉分解物は、例えば、澱粉を酸で加水分解したものでも、酵素で加水分解したものでもよい。ここで、「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。澱粉分解物のDEは、例えばレーンエイノン法で測定することができる。難消化性グルカンの原料となる澱粉分解物は、DEが75~100であることが好ましく、80~100であることがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられる「DE70~100の澱粉分解物」は、DEが所定の範囲を満たす澱粉分解物であればよく、例えば、マルトオリゴ糖、水飴、粉飴、グルコース等が挙げられる。その性状も特に制限はなく、結晶品(無水ぶどう糖結晶、含水ぶどう糖結晶等)、液状品(液状ぶどう糖、水飴等)、非結晶粉末品(粉飴等)のいずれでもよいが、ハンドリングや製造コストを考慮すると液状品を用いることが好ましい。特に、グルコースの精製工程で生じる副産物である「ハイドロール」と呼ばれるグルコースシラップの使用は、リサイクルや原料コスト削減の観点から極めて有利である。
【0014】
本発明において「加熱縮合」は、澱粉分解物を加熱条件下において縮合させることをいい、加熱縮合方法は当業者に周知である。加熱縮合における加熱条件は、縮合反応により本発明の難消化性グルカンが得られれば特に制限はなく、当業者であれば加熱条件を適宜決定することができるが、得られる難消化性グルカン(糖縮合物)の食物繊維含量が70%以上となるように加熱することが好ましく、例えば、100℃~300℃で1~180分間、より好ましくは、150℃~250℃で1~180分間加熱処理することで本発明の難消化性グルカンを製造することができる。
【0015】
加熱縮合処理に用いる加熱機器としては、例えば、棚式熱風乾燥機、薄膜式蒸発器、フラッシュエバポレーター、減圧乾燥機、熱風乾燥機、スチームジャケットスクリューコンベヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダー、ウォームシャフト反応機、ニーダー等が挙げられる。また、加熱縮合処理は常圧条件下で行ってもよく、減圧条件下で反応を行ってもよい。減圧条件下で行った場合、反応生成物の着色度が低下する点で有利である。
【0016】
本発明において加熱縮合処理は、無触媒条件下で行ってもよいが、縮合反応の反応効率の点から触媒存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては糖縮合反応を触媒するものであれば特に制限はないが、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、酢酸等の有機酸、珪藻土、活性白土、酸性白土、ベントナイト、カオリナイト、タルク等の鉱物性物質および水蒸気炭、塩化亜鉛炭、スルホン化活性炭、酸化活性炭等の活性炭を用いることができる。得られる水溶性食物繊維素材の着色や安全性、更には味・臭いを考慮すると、触媒として活性炭を用いることが好ましい。前記各触媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0017】
本発明に用いられる難消化性グルカンは上記手法で得られた難消化性グルカンをそのまま用いても良く、あるいは、食物繊維含量の増加や着色の低減等を目的として食品加工上許容される処理が施された難消化性グルカンの各種処理物(本明細書において「加工処理物」という)を用いてもよい。難消化性グルカンの加工処理物としては、例えば、難消化性グルカン酵素処理物、難消化性グルカン分画処理物、難消化性グルカン還元処理物が挙げられる。
【0018】
本発明において「難消化性グルカン酵素処理物」は、難消化性グルカンを糖質分解酵素で酵素処理して得ることができる。
【0019】
本発明において「糖質分解酵素」は、糖質に作用し加水分解反応を触媒する酵素を意味し、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ(アミログルコシダーゼ)、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、α-グルコシダーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-マンノシダーゼ、β-フルクトシダーゼ、セロビアーゼ、ゲンチオビアーゼが挙げられる。糖質分解酵素は、単独で用いてもよく、複数の酵素を組み合わせて用いてもよい。難消化性グルカンへの分解作用からα-アミラーゼおよびグルコアミラーゼが好ましく、両酵素のいずれかを単独で作用させてもよいが、α-アミラーゼおよびグルコアミラーゼを共に作用させるのが特に好ましい。
【0020】
本発明において糖質分解酵素処理の条件は、酵素処理により難消化性グルカンの易消化性部分が消化される条件であれば特に制限はなく、当業者であれば酵素処理条件を適宜決定することができるが、酵素処理により固形分当たりグルコース含量が1質量%以上、より好ましくは2質量%以上増加するように処理するのが好ましく、例えば、20~120℃で30分間~48時間、より好ましくは、50~100℃で30分間~48時間酵素処理することができる。
【0021】
本発明において「難消化性グルカン分画処理物」は、難消化性グルカンおよび/またはその酵素処理物を、分画処理して得ることができる。膜分離やゲルろ過クロマトグラフィー等の分画手段で分画処理し、特定重合度の糖質を除去したものをいう。加えて、食物繊維含量を高めることで食物繊維としての価値や食物繊維由来の生理機能を高めることができる。この「分画処理」は、二糖以下の含量が固形分当たり15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように実施することができる。
【0022】
本発明において「分画処理」は、固形分当たりの二糖以下の含量を15質量%以下にすることができる処理であれば特に制限はなく、その分離方法は当業者に周知の手段を利用することができる。例えば、膜分離、ゲルろ過クロマトグラフィー、カーボン-セライトカラムクロマトグラフィー、強酸性陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、エタノール沈殿、溶媒沈殿等当業者に周知の糖質の精製手段を分画処理に使用することができる。
【0023】
本発明において「難消化性グルカン還元処理物」は、難消化性グルカン、難消化性グルカン酵素処理物、難消化性グルカン分画処理物のいずれかを単独または複数組み合わせたものを還元処理して得ることができる。
【0024】
本発明において「還元処理」は、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基を水酸基に還元する処理をいう。還元処理方法は当業者に周知であり、例えば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法が挙げられる。本発明においては、少量の糖アルコールを調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便で、かつ、特殊な装置を必要とせず好都合であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。「接触水素化反応」とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応であり、一般に水添反応ともいわれている。還元処理を実施することにより、本発明で使用する難消化性グルカンやその加工処理物の着色を低減したり、酸・アルカリに対する安定性を高めたり、加熱による褐変反応やアミノ酸、タンパク質とのメイラード反応を抑制したりすることができる。
【0025】
本発明の難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物は、必要に応じて活性炭により脱色したものや、イオン交換樹脂によりイオン性成分を除去したものを濃縮し、濃縮液とすることができる。保存性やその後の用途においては、脱色、イオン除去したものを微生物の繁殖が問題とならない程度の水分活性となるまで濃縮することが好適である。あるいは、用途によっては、利用しやすいように乾燥させて、粉末とすることもできる。乾燥は、通常、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥等の公知の方法により実施できる。乾燥物は、必要により粉砕することが望ましい。すなわち、本発明の難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物の態様は、その用途に応じて好適な性状を選択することができる。
【0026】
本発明の造粒用バインダーは粉末原料の造粒に用いることができる。また、本発明の製造方法は、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を用いて粉末原料を造粒化するものである。ここで、「粉末原料」とは、粉末の形状である原料をいう。すなわち、「粉末」には、例えば、いわゆる、粉、粉末、微粉、超微粉、粒、細粒、顆粒、粗粒、粒体、粉体のいずれもが包含される。粉末は、1種の粒子からなるものであってもよく、2種またはそれ以上の粒子からなるものであってもよい。
【0027】
造粒の対象となる粉末原料は、上記粉末原料であれば特に制限されるものではないが、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物が経口摂取可能なものであることから、食品粉末や医薬品粉末の造粒に適している。食品粉末としては、澱粉、糖類、塩、穀粉(小麦粉、米粉、そば粉、きな粉、コーンパウダー、ごまパウダー、ピーナッツパウダー、アーモンドパウダー等)、野菜パウダー、ホエイパウダー、ミルクパウダー、クリームパウダー、バターミルクパウダー、チーズパウダー、調味料(グルタミン酸ナトリウム、核酸、粉末醤油、粉末味噌、昆布エキスパウダー等)、粉末油脂、香辛料パウダー(唐辛子、ガーリック、ターメリック、ジンジャー等)、畜肉魚介系エキスパウダー(ポークエキス、チキンエキス、鶏がらエキス、ビーフエキス、魚介エキス等)、ココナッツパウダー、豆乳パウダー、ポテトパウダー、サツマイモパウダー、アミノ酸、有機酸、甘味料、酸味料、pH調整剤、香料、色素、増粘剤(グアーガム、キサンタンガム等)ビタミン類、ミネラル類またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。造粒の対象となる食品粉末としてはまた、上記以外に難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物、難消化性デキストリンおよび/またはその加工処理物、ポリデキストロースおよび/またはその加工処理物等の機能性食品素材が挙げられる。粉末原料を造粒する場合には、造粒前に全ての粉末原料を混合しておくとよい。その際、粉末原料を添加するタイミングや順序は特に限定されない。
【0028】
粉末原料の粒子径は、本発明により所望の性質の造粒物が製造される限り特に制限されない。粉末原料の粒子径は、原料の種類や造粒物の所望の粒子径等の諸条件に応じて適宜設定できる。粉末原料の平均粒子径D50は、例えば、0.01μm以上、0.1μm以上、1μm以上、または5μm以上であってもよく、1000μm以下、500μm以下、200μm以下、または100μm以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。なお、「平均粒子径D50」とは、粒径加積曲線のグラフで通過質量百分率50%に相当する粒子径を意味する。粉末原料の平均粒子径D50は、例えば、レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD-2300(島津製作所社製)等の粒度分布測定装置により測定することができる。
【0029】
粉末原料は、1種の成分のみからなるものであってもよく、2種またはそれ以上の成分の混合物であってもよい。また、粉末原料としては、1種の原料のみを用いてもよく、2種またはそれ以上の原料を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物の使用量は、粉末原料の種類、造粒に用いる装置、造粒温度、造粒時間等の条件により変動するが、粉末原料を造粒できる量であれば特に制限はない。本発明により粉末原料を造粒する場合には、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物は、粉末原料1質量部(固形分)に対し、0.005~2質量部(固形分)、好ましくは0.01~1質量部(固形分)、より好ましくは0.05~0.5質量部の割合で使用することができる。
【0031】
本発明により粉末原料を造粒する場合にはまた、粉末原料に加えて、粉末原料以外の原料(本明細書において「他の原料」という)を付加的に用いてもよい。従って、本発明の造粒用バインダーは、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と他の原料とを含む混合物であってもよい。また、本発明の製造方法においては、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と他の原料とを含む混合物を使用してもよい。他の原料としては、例えば、液体やペースト等の粉末原料以外の性状の原料が挙げられる。他の原料としてはまた、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物以外の造粒用バインダー(例えば、デキストリン、寒天、ゼラチン、ブドウ糖、乳糖、塩類、澱粉、α化澱粉等の加工澱粉、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等の加工セルロース、増粘多糖類、ポリビニルアルコール)が挙げられる。他の原料は、1種の成分のみからなるものであってもよく、2種またはそれ以上の成分の混合物であってもよい。また、他の原料としては、1種の原料のみを用いてもよく、2種またはそれ以上の原料を組み合わせて用いてもよい。粉末原料と他の原料の比率は、本発明により所望の性質の造粒物が製造される限り特に制限されない。
【0032】
本発明において「造粒」は、バインダーを液体媒体に溶解または分散させたバインダー液と粉末原料とを合わせて乾燥処理して造粒物を製造する湿式造粒により実施することができる。本発明の湿式造粒には、バインダーと粉末原料を予め混合した後に、液体媒体を添加し乾燥処理して造粒物を製造する方法も含まれる。バインダー湿式造粒の代表的な方法としては、流動層造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、攪拌流動層造粒法、コーティング造粒法、噴霧造粒法等が挙げられ、流動層造粒法が好ましい。造粒するための装置としては、流動層造粒装置、転動造粒装置、押し出し造粒装置、パンコーティング装置、転動コーティング装置、流動層コーティング装置、転動流動層コーティング装置、スプレードライヤー等が挙げられる。なお、これらの造粒法の詳細は、例えば、「造粒ハンドブック」(オーム社、平成3年3月10日発行)等の公知の文献に記載されており、造粒の基本的手法は、上記文献に記載の手法を利用することができる。
【0033】
バインダー液としては、バインダーに難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を用い、液体媒体に溶解または分散して得ることができる。液体媒体としては、水や有機溶媒等の、いわゆる液体溶媒が挙げられる。有機溶媒として、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテルが挙げられる。液体媒体としては、1種の媒体を用いてもよく、2種またはそれ以上の媒体を組み合わせて用いてもよい。食品用造粒物および医薬品用造粒物を製造する場合には、液体媒体は、例えば、水もしくはエタノール、またはそれらの混合物であってもよい。バインダー液は、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と液体媒体とからなるものであってもよく、これら以外の成分を含有していてもよい。すなわち、バインダー液は、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を含む液体そのもの(すなわち、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と液体媒体からなる液体)であってもよく、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と液体媒体と液体媒体以外の成分とを含有する液体(すなわち、難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と液体媒体と液体媒体以外の成分との組み合わせからなる液体)であってもよい。難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物と液体媒体と液体媒体以外の成分とを含有する液体としては、例えば、溶液、コロイド液、スラリー液が挙げられる。具体的には、例えば、水であってもよく、水と水以外の成分(例えば、エタノール)を含有する液体(水と水以外の成分との組み合わせからなる液体)であってもよい。液体媒体以外の成分は、造粒物の用途等の諸条件に応じた許容可能な性質を有するものであれば特に制限されない。液体媒体以外の成分としては、例えば、上述したような粉末原料や他の原料が挙げられる。
【0034】
本発明による粉末原料の造粒は、バインダーとして難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を使用する以外は常法により実施することができる。例えば、流動層造粒により粉末原料を造粒する場合には、粉末原料を造粒機にいれ、下方から熱風を送り込むことにより、粉末原料を流動させる。この流動層に難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を含有するバインダー液をノズル噴霧し、粉末表面に均一にバインダーを付着させ、凝集粒をつくり、これを乾燥させることにより顆粒を製造することができる。
【0035】
本発明により得られる造粒物は、顆粒、細粒等の形状で提供することができ、所望の用途の造粒物として提供することができる。本発明により得られる造粒物はまた、飲食品(調味料を含む)、医薬品、化粧品または農薬品として提供することができる。本発明により提供される造粒物は、好ましくは、飲食品用の顆粒である。飲食品用の造粒物としては、例えば、インスタントコーヒー、インスタントココア、粉末緑茶、粉末汁粉等の粉末飲料類、粉末中華スープ、粉末コーンスープ、粉末ポタージュスープ、粉末カレースープ、粉末即席麺用スープ、粉末味噌汁、粉末お吸い物等の粉末スープ類、粉末鶏がらスープ、粉末豚骨スープ、粉末コンソメ、粉末だし、粉末つゆ、粉末ソース、粉末醤油、粉末味噌、粉末酢、複合調味料、カレー粉、テーブルソルト、テーブルシュガー等の粉末調味料類、粉末カレールウ、粉末シチューの素等の粉末ルウ類が挙げられる。また、造粒の対象となる粉末原料として難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物等の機能性食品素材を使用した場合には、飲食品用の造粒物を各種機能が付与されたサプリメントや栄養補助食品として提供することができる。
【0036】
本発明において造粒用バインダーとして使用される難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物は、後記実施例に示される通り、造粒させる効果が高く、粉末原料に対して少量でも造粒化させることができる点で有利である。従って、本発明はコスト低減、省エネルギー化および造粒プロセスの短縮に資するものであり、さらには造粒プロセスにおける乾燥時間の短縮により造粒物の品質低下(例えば、着色)の抑制にも資する点で有利である。
【0037】
本発明において造粒用バインダーとして使用する難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物は、水溶性食物繊維成分を有するものである。ここで、食物繊維の中でも水溶性食物繊維は、便通改善効果、食後血糖上昇抑制効果、食後中性脂肪の上昇抑制効果等の生理機能を有することが報告されており、特定保健用食品を含むさまざまな機能性食品が製造・販売されている。本発明の造粒用バインダーを用いて得られる造粒物と、本発明の製造方法により製造される造粒物は、整腸作用、血糖上昇抑制作用、脂質代謝改善作用等の水溶性食物繊維が有する生理機能の発揮が期待される。また、水溶性食物繊維の機能である増粘効果や、脂肪代替効果、乳化効果等の飲食品の物性改善効果も期待される。
【0038】
また、本発明において難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を造粒用バインダーとして使用して得られた造粒物は、従来のバインダーを使用して得られた造粒物と比べて、粒子径や表面積が大きい点で有利である。
【0039】
また、本発明において難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物を造粒用バインダーとして使用して得られた造粒物は、従来のバインダーを使用して得られた造粒物と比べて、溶解性が高い、沈み易い、ダマが発生しにくい、分散性が高い等の優れた性状を有する点でも有利である。
【0040】
本発明の別の面によれば、粉末原料と、造粒用バインダーとして難消化性グルカンおよび/またはその加工処理物とを含んでなる、造粒物が提供される。本発明の造粒物は、本発明の造粒用バインダーおよび本発明の製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【実施例
【0041】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。本明細書において特に記載の無い場合は「%」は質量%を意味し、また「固形分」当たりの割合(含有量)や「固形分」の含有割合(濃度)に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
【0042】
平均平面積、平均最大径および平均最小径の測定
実施例中の平均平面積、平均最大径および平均最小径は、デジタルマイクロスコープVHX-5000(KEYENCE社製)を用いて該装置に添付されたマニュアルに従って測定した。ステージ上にサンプルを乗せ、粉末粒子が重ならないことを確認した後に、自動面積計測により、粒子画像の平均平面積、平均最大径、平均最小径を測定した。なお、レンズ倍率やピント調整、明るさ、コントラスト、深度等はサンプル毎に適切に調整した。ここで、「平均平面積」とは、マイクロスコープにより写し出された画像中の複数の粒子の平面積の平均値を意味する。また、「平均最大径」とは、マイクロスコープにより写し出された画像中の複数の粒子のそれぞれの粒子の内周上の任意の2点間距離が最大となる長さの平均値を意味する。また、「平均最小径」は、マイクロスコープにより写し出された画像中の複数の粒子のそれぞれの粒子を平行な2直線で挟んだときの、2直線間の距離の最小値の平均値を意味する。
【0043】
実施例1:アルファ化澱粉の流動層造粒
粉末原料としてアルファ化澱粉(ワキシーαD-6 日本食品化工社製)を用いて造粒を検証した。造粒機(GB210B ヤマト科学社製、以下同様)を用いてアルファ化澱粉20.0gを乾燥空気量0.1m/分、60℃で流動させながら、試験区には、バインターとして36%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表1参照)の難消化性グルカン(フィットファイバー#80 日本食品化工社製、以下同様)の溶液を流速6.0g/分、噴霧空気圧0.1MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインターとして36%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表1参照)のデキストリン(パインデックス#2 松谷化学工業社製)の溶液を用いた。バインダーを噴霧し終えた後に同様の乾燥空気量で約1分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0044】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積、平均最大径および平均最小径を測定した。また、各試料5gを水200gへ添加、攪拌混合した際の沈み易さおよび溶解性を評価するとともに、ダマの発生状況を観察した。沈み易さおよび溶解性は以下の評価基準に従い判定した。
【0045】
<沈み易さ>
◎:「0~5秒以内に沈む」
○:「5~15秒以内に沈む」
△:「15~60秒以内に沈む」
×:「60秒以内にほとんど沈まない」
【0046】
<溶解性>
◎:「0~5秒以内に溶解する」
○:「5~15秒以内に溶解する」
△:「15~60秒以内に溶解する」
×:「60秒以上溶解に時間を要する」
【0047】
結果は表1に示される通りであった。
【表1】
【0048】
表1の結果から明らかなように、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区1~3は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区1および2と比較して、少ないバインダー添加量で粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。また、難消化性グルカンをバインダーとして用いて得られた試験区1~3の造粒物は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区1および2の造粒物と比較して、沈み易く、溶解性が高く、また、ダマ(ランピング、ママコ)の発生も少ないことが確認された。
【0049】
実施例2:キサンタンガムの流動層造粒
粉末原料としてキサンタンガム(東京化成工業社製)を用いて造粒を検証した。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いてキサンタンガム50.0gを乾燥空気量0.372m/分、100℃で流動させながら、試験区には、バインターとして10%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表2参照)の難消化性グルカンの溶液を流速2.0g/分、噴霧空気圧0.05MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインダーとして10%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表2参照)のデキストリン(パインデックス#4 松谷化学工業社製)、難消化性デキストリン(ファイバーソル2 松谷化学工業社製)、ポリデキストロース(スターライトIII 光洋商会社製)およびブドウ糖(無水ブドウ糖#300 日本食品化工社製)の各溶液を用いた。また、粉末原料のみの試験区や、バインダーに蒸留水を用いた試験区も準備した。バインダーを噴霧し終えた後に同様の乾燥空気量で約1分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0050】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積、平均最大径および平均最小径を測定した。
【0051】
結果は表2および図1に示される通りであった。
【表2】
【0052】
表2および図1の結果から明らかなように、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区4は、従来用いられているデキストリン等をバインダーとして用いた対照区3~7と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られること、すなわち、造粒化効果が高いことが認められた。
【0053】
実施例3:粉末コーンスープの攪拌造粒
粉末原料として粉末コーンスープ(ポタージュエースコーン微粒 理研ビタミン社製)を用いて造粒を検証した。粉末コーンスープには主成分であるスイートコーンパウダーの他に、小麦粉や加工油脂、脱脂粉乳、全粉乳、調味料等が含まれる。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いて粉末コーンスープ50.0gを混合ブレードで常時攪拌させながら、試験区には、バインターとして10%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表3参照)の難消化性グルカンの溶液を流速2.0g/分、噴霧空気圧0.05MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインダーとして10%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表3参照)のデキストリン(パインデックス#2 松谷化学工業社製)の溶液を用いた。バインダーを噴霧し終えた後に乾燥空気量0.372m/分、100℃で1分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0054】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積、平均最大径および平均最小径を測定した。また、各試料20gをお湯200gへ添加、攪拌混合した際の沈み易さおよび溶解性を評価するとともに、ダマの発生状況を観察した。沈み易さおよび溶解性は実施例1の評価基準に従い判定した。
【0055】
結果は表3に示される通りであった。
【表3】
【0056】
表3の結果から明らかなように、攪拌造粒においても難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区5は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区8と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。また、難消化性グルカンをバインダーとして用いて得られた試験区5の造粒物は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区8の造粒物と比較して、沈み易く、また、ダマ(ランピング、ママコ)の発生も少なく、溶解性に優れていることが確認された。
【0057】
実施例4:粉茶の攪拌造粒
粉末原料として粉茶(粉末緑茶 三笠園社製)を用いて造粒を検証した。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いて粉茶10.0gと、バインターとして難消化性グルカン粉末品(フィットファイバー#80P 日本食品化工社製、以下同様)10.0g(試験区)とを混合ブレードで常時攪拌させながら、水を流速2.0g/分、噴霧空気圧0.01MPaで3分間ノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインダーとしてデキストリン粉末(パインデックス#4 松谷化学工業社製)10.0gを用いた。水を噴霧し終えた後に、乾燥空気量0.458m/分、100℃で約1分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0058】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積を測定した。また、各試料5gをお湯100gへ添加、攪拌混合した際の沈み易さおよび分散性を評価するとともに、ダマの発生状況を観察した。沈み易さは実施例1の評価基準に従い判定した。また、分散性は以下の評価基準に従い判定した。
【0059】
<分散性>
◎:「0~5秒以内に分散する」
○:「5~15秒以内に分散する」
△:「15~60秒以内に分散する」
×:「30秒以上分散に時間を要する」
【0060】
結果は表4に示される通りであった。
【表4】
【0061】
表4の結果から明らかなように、原料粉末とバインダー粉末を混合させ、水噴霧による造粒においても、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区6は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区9と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。また、難消化性グルカンをバインダーとして用いて得られた試験区6の造粒物は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区9の造粒物と比較して、沈み易く、分散性が高く、また、ダマ(ランピング、ママコ)の発生も少ないことが確認された。
【0062】
実施例5:ココアの流動層造粒
粉末原料としてココアパウダー(富澤商店社製)を用いて造粒を検証した。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いてココアパウダー50.0gを乾燥空気量0.521m/分、100℃で流動させながら、試験区には、バインターとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表5参照)の難消化性グルカンの溶液を流速0.2g/分、噴霧空気圧0.1MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインダーとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表5参照)のデキストリン(パインデックス#2 松谷化学工業社製)の溶液を用いた。また、粉末原料のみの試験区や、バインダーに代えて蒸留水を用いた試験区も準備した。バインダーを噴霧し終えた後に同様の乾燥空気量で乾燥するまで適時流動させ、造粒物を得た。
【0063】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積、平均最大径および平均最小径を測定した。また、各試料5gをお湯100gへ添加、攪拌混合した際の沈み易さおよび分散性を評価するとともに、ダマの発生状況を観察した。沈み易さは実施例1の評価基準に従い判定した。また、分散性は実施例4の評価基準に従い判定した。
【0064】
結果は表5に示される通りであった。
【表5】
【0065】
表5の結果から明らかなように、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区7は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区10と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。また、難消化性グルカンをバインダーとして用いて得られた試験区7の造粒物は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区10の造粒物と比較して、沈み易く、分散性が高く、また、ダマ(ランピング、ママコ)の発生も少ないことが確認された。
【0066】
実施例6:難消化性グルカンの流動層造粒
粉末原料として難消化性グルカンを用いて造粒を検証した。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いて難消化性グルカン粉末品50.0gを乾燥空気量0.448m/分、120℃で流動させながら、試験区には、バインターとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表6参照)の難消化性グルカンの溶液を流速0.5g/分、噴霧空気圧0.3MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインダーとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表6参照)のデキストリン(パインデックス#2 松谷化学工業社製)の溶液を用いた。また、粉末原料のみの試験区や、バインダーに代えて蒸留水を用いた試験区も準備した。バインダーを噴霧し終えた後に同様の乾燥空気量で約2分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0067】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積、平均最大径および平均最小径を測定した。また、各試料7.5gをお湯100gへ添加、攪拌混合した際の溶解性を実施例1の評価基準に従い評価した。
【0068】
結果は表6に示される通りであった。
【表6】
【0069】
表6の結果から明らかなように、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区8は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区12と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。また、難消化性グルカンをバインダーとして用いて得られた試験区8の造粒物は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区12の造粒物と比較して、溶解性が高い結果となった。難消化性グルカンは生理機能を有する食物繊維素材であることから、これらの結果とあわせて、難消化性グルカンは、取り扱いが容易な顆粒状の健康食品としても使用できることが確認された。
【0070】
実施例7:甘味料の流動層造粒
粉末原料としてマルチトールおよびエリスリトール(いずれも三菱商事フードテック社製)を用いて検証した。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いてマルチトール32.8gとエリスリトール14.5gを乾燥空気量0.5m/分、100℃で流動させながら、試験区には、バインダーとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表7参照)の難消化性グルカンおよび還元難消化性グルカン(フィットファイバー#80H 日本食品化工社製、以下同様)の各溶液に、それぞれ200ppm固形分濃度となる高甘味度甘味料(アスパルテーム 味の素社、アセスルファムカリウム MCフードスペシャリティーズ社)を混合した溶液を用い、流速1.25g/分、噴霧空気圧0.025MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインターとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表7参照)のデキストリン(パインデックス#2 松谷化学工業社製)の溶液に上述した高甘味度甘味料を混合した溶液を用いた。バインダーを噴霧し終えた後に同様の乾燥空気量で約1分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0071】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積を測定した。
【0072】
結果は表7に示される通りであった。
【表7】
【0073】
表7の結果から明らかなように、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区9や還元難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区10は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区14と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。これらの結果から、難消化性グルカンおよび還元難消化性グルカンは低カロリースティックシュガー用途として使用できることが確認された。
【0074】
実施例8:クリーミングパウダーの流動層造粒
粉末原料としてクリーミングパウダー(ネスレブライト ネスレ日本社製)を用いて検証した。クリーミングパウダーには主成分であるコーンシロップ、植物油脂の他に、砂糖、カゼイン(乳由来)、pH調整剤、乳化剤、酸化ケイ素、香料、クチナシ色素が含まれる。実施例1で使用した造粒機と同じ造粒機を用いてクリーミングパウダー50.0gを乾燥空気量0.370m/分、100℃で流動させながら、試験区には、バインダーとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表8参照)の難消化性グルカンおよび還元難消化性グルカンの各溶液を用い、流速1.0g/分、噴霧空気圧0.025MPaでノズル噴霧し、造粒した。対照区には、バインターとして20%固形分濃度となるように水に溶解させた所定量(表8参照)のデキストリン(パインデックス#2 松谷化学工業社製)の溶液を用いた。バインダーを噴霧し終えた後に同様の乾燥空気量で約1分間流動させ、造粒物を乾燥させた。
【0075】
粉末原料および得られた造粒物に関し、粒の平均平面積を測定した。
【0076】
結果は表8に示される通りであった。
【表8】
【0077】
表8の結果から明らかなように、難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区10や還元難消化性グルカンをバインダーとして用いた試験区11は、従来用いられているデキストリンをバインダーとして用いた対照区15と比較して、粒子径の大きい造粒物が得られることが認められた。

図1