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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】マイクロ流体分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230426BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230426BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G01N21/64 E
G02B21/36
G01N37/00 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020502340
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 GB2018051965
(87)【国際公開番号】W WO2019016516
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】1711699.7
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】300002942
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリストル
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デイ, ジョン チャールズ クリッフォード
(72)【発明者】
【氏名】プール, アラステア
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-003249(JP,A)
【文献】特表2012-504764(JP,A)
【文献】特開2003-156443(JP,A)
【文献】特表2014-524589(JP,A)
【文献】特開2006-322707(JP,A)
【文献】特表2016-534714(JP,A)
【文献】特表2013-519908(JP,A)
【文献】特開昭61-163314(JP,A)
【文献】特開昭61-158313(JP,A)
【文献】特開2009-157283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0206727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
G02B 21/36
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体セルと、
前記マイクロ流体セルの一部を含む視野から光を収集するように構成されている対物レンズ、第2のレンズ、及び前記対物レンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させて前記視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されているアクチュエータを備える顕微鏡と、を備えるマイクロ流体分析システムであって、
前記マイクロ流体セルが、マイクロ流体チャンネルを備え、前記アクチュエータが、前記対物レンズを前記マイクロ流体チャンネルの長さに沿って移動させて前記視野の位置を変えるように構成されており、
前記アクチュエータが、前記第2のレンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させることなく、前記対物レンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させるように構成されており、前記第2のレンズが、前記マイクロ流体セルに対して移動することなく、前記視野の前記複数の位置について前記対物レンズにより収集された前記光を受け取るように構成されており、
前記マイクロ流体分析システムが、
光検出器であって、前記第2のレンズが、前記対物レンズから受けた前記光を前記光検出器へと投影するように構成されており、前記光検出器が、光検出素子の2次元アレイを有するアレイ検出器である、光検出器と、
前記光検出器に結合されている画像プロセッサであって、前記画像プロセッサが、前記光検出器からの信号を処理して、複数の視野のうちの対応する1つと各々関連付けられている複数の画像を生成するように構成されている、画像プロセッサと、
前記複数の画像に基づいて指標を決定するように構成された制御及び処理ユニットと、
をさらに備える、マイクロ流体分析システム。
【請求項2】
前記画像プロセッサにより生成された前記画像(複数可)を表示するように構成されているディスプレイをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のレンズが、前記対物レンズの径よりも大きい径を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
マイクロ流体セルと、
前記マイクロ流体セルの一部を含む視野から光を収集するように構成されている対物レンズ、第2のレンズ、及び前記対物レンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させて前記視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されているアクチュエータを備える顕微鏡と、を備え、
前記アクチュエータが、前記第2のレンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させることなく、前記対物レンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させるように構成されており、前記第2のレンズが、前記マイクロ流体セルに対して移動することなく、前記視野の前記複数の位置について前記対物レンズにより収集された前記光を受け取るように構成されており、
前記マイクロ流体セルの表面が、血小板による血栓の形成を促進する材料でコーティングされている、マイクロ流体分析システム。
【請求項5】
前記対物レンズ及び前記第2のレンズが、前記対物レンズが移動するにつれて、前記第2のレンズにより受け取られる前記光が前記第2のレンズを横切って移動するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記顕微鏡は、前記対物レンズにより収集された前記光を受け取り、この光を光学経路に沿って前記第2のレンズへと反射させるように構成されているミラーをさらに備え、前記アクチュエータが、前記ミラーを前記対物レンズと一緒に移動させるように構成されており、前記アクチュエータが、前記ミラーを前記光学経路に従って移動させるように構成されており、前記ミラーが移動する際に、前記ミラーにより前記第2のレンズへと反射する前記光が、前記第2のレンズを横切って移動しないようになっている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記対物レンズを移動させて前記マイクロ流体セルに合焦させるように構成されている焦点調整アクチュエータをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記マイクロ流体チャンネルが、1mm未満の幅を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータが、前記対物レンズを前記第2のレンズに対して前記対物レンズの光軸に対して交差する方向に移動させて、前記視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
マイクロ流体セル内に流体の流れを生成するステップであって、前記マイクロ流体セルが、マイクロ流体チャンネルを備える、ステップと、
対物レンズの視野から光を収集することであって、前記視野が前記マイクロ流体セルの一部を含む、収集すること、
前記対物レンズを前記マイクロ流体セルに対して前記マイクロ流体チャンネルの長さに沿って移動させて、前記視野の位置を複数の位置の間で変えること、及び
前記対物レンズにより収集された前記光を、第2のレンズを前記マイクロ流体セルに対して移動させることなく、前記視野の前記複数の位置について前記第2のレンズで受け取ること
によって、前記マイクロ流体セルを顕微鏡で観察するステップと、
前記対物レンズから受けた前記光を前記第2のレンズによって光検出器へと投影するステップであって、前記光検出器が、光検出素子の2次元アレイを有するアレイ検出器である、ステップと、
前記光検出器からの信号を処理して、複数の視野のうちの対応する1つと各々関連付けられている複数の画像を生成するステップと、
前記複数の画像に基づいて指標を決定するステップと、
を含む、分析方法。
【請求項11】
前記マイクロ流体セルを複数回観察するステップであって、各観察は、前記視野の前記複数の位置のうちの対応する1つと関連付けられている、ステップと、
前記複数回観察に基づいて前記指標を決定するステップと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流体が体液である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体が血液である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロ流体セルにおける血栓の形成を複数回観察するステップであって、各観察は前記視野の前記複数の位置のうちの対応する1つと関連付けられている、ステップと、
前記複数回観察に基づいて指標を決定するステップと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対物レンズが、前記第2のレンズに対して前記対物レンズの光軸に対して交差する方向に移動されて、前記視野の前記位置を複数の位置の間で変える、請求項1014のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
マイクロ流体セルと、
前記マイクロ流体セルの一部を含む視野から光を収集するように構成されている対物レンズ、前記対物レンズにより収集された前記光を受け取るように構成されている第2のレンズ、及び前記対物レンズを前記第2のレンズに対して前記対物レンズの光軸に対して交差する方向に移動させて、前記視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されているアクチュエータ、を備える顕微鏡であって、前記マイクロ流体セルが、マイクロ流体チャンネルを備え、前記アクチュエータが、前記対物レンズを前記マイクロ流体チャンネルの長さに沿って移動させて前記視野の位置を変えるように構成されている、顕微鏡と、
を備えるマイクロ流体分析システムであって、
前記マイクロ流体分析システムが、
光検出器であって、前記第2のレンズが、前記対物レンズから受けた前記光を前記光検出器へと投影するように構成されており、前記光検出器が、光検出素子の2次元アレイを有するアレイ検出器である、光検出器と、
前記光検出器に結合されている画像プロセッサであって、前記画像プロセッサが、前記光検出器からの信号を処理して、複数の視野のうちの対応する1つと各々関連付けられている複数の画像を生成するように構成されている、画像プロセッサと、
前記複数の画像に基づいて指標を決定するように構成された制御及び処理ユニットと、
をさらに備える、マイクロ流体分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、マイクロ流体分析システム及び関連する方法に関し、任意選択で、但し排他的にではないが、血流中の血栓形成を観察するための、マイクロ流体分析システム及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]血液が凝固する能力は、我々が出血を止めるために非常に重要である。しかしながら、凝血形成の根底にある機序が異常であるか又は薬物で制御することが必要となる、多種多様な状況が存在する。人によって、過度に出血し易い人から、血液が過度に容易に凝固して血管を閉塞し、深部静脈血栓症又は心臓発作などの症状に至る、血栓症のリスクがある人まで、様々である。血小板は、このプロセスに関与する中心的な細胞である。臨床用途に関して、血小板がどの程度良好に機能するかについてのいくつかの臨床試験を現在利用可能であるが、患者が出血する傾向があるのか、又は血栓症の高いリスクがあるのかを予測するための十分に正確な推定値を提供するものは無い。このことは、大手術、抗血栓治療中の患者、及び輸血を受けている患者を含む、病院を基本とする様々な状況において、非常に重要である。
【0003】
[0003]制御された環境下で凝血を誘起させて共焦点顕微鏡又は従来の顕微鏡で撮像する血小板研究が、多くの研究室で行われている。典型的には、血液を、コラーゲン又は他の着目した作用物質でコーティングした小型のフローセルに、体内で見られるせん断速度と同程度のせん断速度をもたらすように計算された流量で通過させる。撮像は光学窓を通して行われ、血栓形成のサイズ及び速さは、得られる画像の分析によって判定される。これらのシステムでは、血小板にタグ付けするDiOC6などの蛍光色素で通常ドープされている全血が、一般に使用される。次いで蛍光画像化によって血小板及び生じる血栓のコントラストを高める。この技法は、現在の臨床機器が提供する測定よりも生理学的に遥かに適切な測定ができる可能性を有しており、血小板機能の異なる態様同士を区別できない単一の値とは対照的な、血栓形成の様々な機序を記述するいくつかの指標を提供し得る。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の第1の態様は、マイクロ流体セルと、マイクロ流体セルの一部を含む視野から光を収集するように構成されている対物レンズ、第2のレンズ、及び対物レンズをマイクロ流体セルに対して移動させて視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されているアクチュエータ、を備える、顕微鏡と、を備え、アクチュエータが、第2のレンズをマイクロ流体セルに対して移動させることなく、対物レンズをマイクロ流体セルに対して移動させるように構成されており、第2のレンズが、マイクロ流体セルに対して移動することなく、対物レンズにより収集された視野の複数の位置についての光を受け取るように構成されている、マイクロ流体分析システムを提供する。
【0005】
[0005]アクチュエータは、対物レンズを第2のレンズに対して対物レンズの光軸に対して交差する方向に移動させて、視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されているのが好ましい。
【0006】
[0006]本発明の第2の態様は、マイクロ流体セル内に流体の流れを生成するステップと、対物レンズの視野から光を収集することであって、視野がマイクロ流体セルの一部を含む、収集すること、対物レンズをマイクロ流体セルに対して移動させて、視野の位置を複数の位置の間で変えること、及び対物レンズにより収集された光を、第2のレンズをマイクロ流体セルに対して移動させることなく、視野の複数の位置について第2のレンズで受け取ることによって、マイクロ流体セルを顕微鏡で観察するステップと、を含む、分析方法を提供する。
【0007】
[0001]本発明のさらなる態様は、マイクロ流体セルと、マイクロ流体セルの一部を含む視野から光を収集するように構成されている対物レンズ、対物レンズにより収集された光を受け取るように構成されている第2のレンズ、及び対物レンズを第2のレンズに対して対物レンズの光軸に対して交差する方向に移動させて、視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されている、アクチュエータ、を備える、顕微鏡と、を備える、マイクロ流体分析システムを提供する。
【0008】
[0002]第2のレンズは接眼レンズであってもよく、顕微鏡は、接眼レンズを介してマイクロ流体セルを直接見るように使用される。但し、より典型的には、顕微鏡は、光検出器をさらに備え、第2のレンズは、対物レンズから受け取られた光を光検出器へと投影するように構成されている。
【0009】
[0003]任意選択で、パーソナルコンピュータなどの画像プロセッサが光検出器に結合されており、画像プロセッサは、光検出器からの信号を処理して1つ又は複数の画像を生成するように構成されている。例えば画像プロセッサは、光検出器からの信号を処理して、複数の視野のうちの対応する1つと各々関連付けられている複数の画像を生成するように、又は複数の視野から編集されたモンタージュとして単一の画像を生成するように、構成されている。
【0010】
[0004]画像プロセッサが生成した画像(複数可)を表示するようにディスプレイが構成されているのが好ましい。
【0011】
[0005]光検出器は、光検出素子の1次元又は2次元アレイを有する、アレイ検出器であってもよい。
【0012】
[0006]任意選択で、システムは、流体をマイクロ流体セル内へと圧送するように構成されているポンプをさらに備える。
【0013】
[0007]任意選択で、マイクロ流体セルの表面は、コラーゲンなどの血小板による血栓の形成を促進する材料でコーティングされている。
【0014】
[0008]任意選択で、第2のレンズは対物レンズよりも大きい。
【0015】
[0009]任意選択で、第2のレンズは、対物レンズの径よりも大きい径を有する。典型的には、レンズの径は2:1よりも大きい又は3:1よりも大きい比を有する-言い換えれば、第2のレンズは対物レンズの径よりも少なくとも2又は3倍大きい径を有する。
【0016】
[0010]一実施形態では、対物レンズ及び第2のレンズは、対物レンズが移動するにつれて、第2のレンズが受け取る光が第2のレンズを横切って移動するように構成されている。
【0017】
[0011]別の実施形態では、顕微鏡は、対物レンズにより収集された光を受け取り、この光を光学経路に沿って第2のレンズへと反射させるように構成されている、ミラーをさらに備え、アクチュエータはミラーを対物レンズと一緒に移動させるように構成されており、アクチュエータは、ミラーを光学経路に従って移動させるように構成されており、ミラーが移動する際に、ミラーが第2のレンズへと反射する光が第2のレンズを横切って移動しないようになっている。
【0018】
[0012]焦点調整アクチュエータは、対物レンズを移動させてマイクロ流体セルに合焦させるように構成されてもよい。焦点調整アクチュエータは典型的には、対物レンズを対物レンズの光軸に沿って移動させるように構成されている。
【0019】
[0013]マイクロ流体セルはマイクロ流体チャンネルを備え、アクチュエータは、対物レンズをマイクロ流体チャンネルに沿って移動させて視野の位置を変えるように構成されているのが好ましい。典型的にはマイクロ流体チャンネルは1mm未満の幅を有する。
【0020】
[0014]分析方法は、第2のレンズを介してマイクロ流体セルを複数回観察するステップであって、各観察は視野の複数の位置のうちの対応する1つと関連付けられている、複数回観察するステップと、複数回の観察に基づいて指標を決定するステップと、を含み得る。
【0021】
[0015]任意選択で、流体は体液である。
【0022】
[0016]任意選択で、流体は血液である。
【0023】
[0017]一実施形態では、方法は、マイクロ流体セルにおける血栓の形成を複数回観察するステップであって、各観察は前記視野の前記複数の位置のうちの対応する1つと関連付けられている、複数回観察するステップと、複数回の観察に基づいて指標を決定するステップと、を含む。例えば、この指標は血栓の数をさす場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[0018]ここで、本発明の実施形態について、以下の添付の図面を参照して説明する。
図1】マイクロ流体分析システムの概略図である。
図2】マイクロ流体分析システムの詳細図である。
図3】マイクロ流体セル及び顕微鏡を示す分解図である。
図4】CCDを示す、カメラの断片的な拡大図である。
図5】マイクロ流体セルの平面図である。
図6】マイクロ流体セルの断片的な拡大図である。
図7】マイクロ流体セルの等角図である。
図8】コラーゲン層及び血小板を示すチャンネルに沿った拡大断面図を含む、マイクロ流体セルの側面図である。
図9】ボイスコイル及び対物レンズを担うスレッドを示す図である。
図10】ボイスコイル及び対物レンズを担うスレッドを示す図である。
図11】血栓の形成及び融合を示す低速度撮影シークエンスにおける画像である。
図12】血栓の形成及び融合を示す低速度撮影シークエンスにおける画像である。
図13】血栓の形成及び融合を示す低速度撮影シークエンスにおける画像である。
図14】代替の光学構成を有するマイクロ流体分析システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0030]図1は、マイクロ流体分析システムの概略図である。顕微鏡1を使用してマイクロ流体セル2を観察する。顕微鏡1は、マイクロ流体セル2の一部を含む視野からの光4を収集するように構成されている対物レンズ3を備える。第2のレンズ6は、対物レンズ3により収集された光を受け取り、この光を2次元アレイ光検出器7へと投影するように構成されている。ステッパモータなどのアクチュエータ(図示せず)は、対物レンズ3をマイクロ流体セル2に対して移動させて、視野の位置を複数の位置、例えば図1において5、5a、5bとラベル付けされた位置の間で変えるように構成されている。
【0026】
[0031]アクチュエータは、対物レンズ3を第2のレンズ6に対して対物レンズ3の光軸9に対して交差する方向8に移動させて、視野の位置を複数の位置の間で変えるように構成されている。この場合、対物レンズ3の移動の方向8は、対物レンズ3の光軸9に対して直角である。
【0027】
[0032]対物レンズ3は、マイクロ流体セル2に対して側方に移動するが、第2のレンズ6は不動のままである。第2のレンズ6は、対物レンズ3により収集された視野の複数の位置5、5a、5bについての光を移動することなく受け取るように構成されている。
【0028】
[0033]光学構成は、対物レンズ3が移動するにつれて、第2のレンズ6が受け取る光が第2のレンズ6を横切って側方に移動するようになっている。この理由から、第2のレンズ6は対物レンズ3よりも遥かに大きい-この場合、レンズの径の比は約5:1である。
【0029】
[0034]マイクロ流体セル2が1つのマイクロ流体チャンネルから成る場合には、対物レンズ3を、図1に示すようにチャンネルの長さに沿った1つの次元(X)にのみ移動させればよい可能性がある。セル2が2つの直交する方向(X,Y)に延びている場合、対物レンズ3の視野は図1に示す移動の線に対して垂直な寸法(Y)の全体を覆ってはおらず、この場合は対物レンズ3を両方向(X及びY)にセル2の平面と実質的に平行に移動させることができる。
【0030】
[0035]対物レンズ3に、対物レンズ3の光軸9と平行かつセル2の平面に対して実質的に垂直であるZ軸に沿った、追加の合焦のための移動を適用してもよい。任意選択で、この合焦のための移動は、対物レンズ3を取り囲むボイスコイルによって電気的に誘起される。
【0031】
[0036]図2図10は、図1に示すようなシステムと同じ原理で動作するマイクロ流体分析システム100を示す。図2図10のシステムは、血小板による血栓の形成を分析するためのものである。
【0032】
[0037]システム100は、図5図8に詳細に示すCellix Vena8マイクロ流体セル(Cellix ltd Ireland)を使用する。セルは、図8に示すコラーゲンでコーティングされたガラス製カバースリップ126と、略正方形の断面を有する、幅0.4mm~0.8mm、長さ10mmの8つの流れのチャンネルを収容する透明な本体120と、を備える。流れのチャンネルのうちの1つは、図5及び図6において125とラベル付けされている。各チャンネルは各端部に接続ポートを有する-チャンネル125の接続ポートは123、124とラベル付けされている。図8は、血液がチャンネルを通って矢印に示すように流れる、流れのチャンネルの詳細な断面図を含む。血小板128はコラーゲンコーティング129に付着し、凝集して血栓を形成し、これがカバースリップ126を通して撮像される。ある構成では、セル本体120は、温度を典型的には30℃~38℃の範囲である実験で望まれるレベルに維持するために、図示しない加熱されたプレートに装着されている。
【0033】
[0038]図2には、配線126a及びコネクタ122によってポート123に接続された、血液を収容する流体リザーバ127が示されており、また、配線125及びコネクタ121によってポート124に接続された、血液を収容する流体排液路124が示されている。血液は、シリンジポンプ123(Cellix ltd Ireland)によって、リザーバ127からチャンネル125を介して排液路124内へと引き入れられる。ポンプ123は、制御線231を介してマイクロ制御装置230によって制御される。ポンプ123の速さは、チャンネル125を通る血液の流量が、体内の血管中で見られるせん断速度と同様のせん断速度をチャンネル内でもたらすように設定される。
【0034】
[0039]対物レンズ130は、図9及び10に示す、焦点制御のためにレンズの高さを電子制御することを可能にするボイスコイル132内に装着されている。ボイスコイル132は、フレクシャ131を介してスレッド202に装着されている。スレッド202には、対物レンズ130の光軸に沿った磁場を生成する磁石と、ボイスコイル132とが組み込まれている。ボイスコイル132を流れる電流により、対物レンズ130の光軸に沿った動きが引き起こされる。対物レンズ130は、従来の50X顕微鏡対物レンズと同程度である、2.98mmの焦点距離を有する。対物レンズ130は、その焦点面において、チャンネル125の一部-図6において5、5a、5bとラベル付けされている視野の3つの位置-を含む視野から光を収集するように構成されている。
【0035】
[0040] 対物レンズ130により収集された光を受け取りこの光を図4に詳細に示すようなカメラ170のCCD171へと投影するように、非球面の第2のレンズ160(Edmund Optics) を構成する。第2のレンズ160は25mmの焦点距離を有する。カメラ170はAtik Titan Camera(Artemis CCD UK)であり、CCD171は、各7.7平方μmである659x494個の画素を有して5mm×4mmの寸法を有する、冷却されたSony ICX424 CCDである。CCD171を0.4mm視野の画像で埋めることによって、必要な倍率は約10に設定され、この結果、対物面において理論上0.8μmの画素サイズが得られる。
【0036】
[0041]対物レンズ130は、対物レンズ130から背後にある程度の距離に又は好ましくは無限遠に、チャンネル125の画像を作り出す。第2のレンズ160はより大きい径のものであり、対物レンズ130からの光を収束させて、CCD171を含む画像面に画像を作り出す。
【0037】
[0042]スレッド202はガイドレール203の対に装着されている。ステッパモータ200は、駆動アーム201によってスレッド202に取り付けられている。ステッパモータ200は、対物レンズ130が対物レンズ130の光軸に対して交差するチャンネル125に沿って移動して、図6において5、5a、及び5bとラベル付けされた複数の位置の間で視野の位置を変えるような様式で、スレッド202をガイドレール203に沿って移動させるように構成されている。任意選択で、図9の移動するレンズ組立体は、従来のコンパクトディスク又はDVD又は類似のデバイスの、光ピックアップユニットと移動ステージとから構築されている。ステッパモータ200を制御するために、別個のステッパモータ制御装置(図示せず)が使用される。
【0038】
[0043]第2のレンズ160は、スレッド202又は駆動アーム201に取り付けられておらず、このため、ステッパモータ200は、第2のレンズ160をマイクロ流体セルに対して移動させることなく、対物レンズ130をマイクロ流体セルに対して移動させることができる。第2のレンズ160のサイズが大きいことは、このレンズが、マイクロ流体セルに対して移動することなく、対物レンズ130により収集された視野の複数の位置5、5a、5bについての光を受け取ることができることを意味する。
【0039】
[0044]顕微鏡100を制御するために、パーソナルコンピュータ(PC)240を使用する。PCは、制御線250によってカメラ171に、及び制御線251によってマイクロ制御装置230に結合されている、制御及び処理ユニット241を備える。制御及び処理ユニット241は、以下にさらに詳細に記載するように、カメラ171からの信号を処理して1つ又は複数の画像を生成するようにプログラムされている。ディスプレイスクリーン242は、制御及び処理ユニット241が生成した画像(複数可)を表示するように構成されている。制御及び処理ユニット241はまた、以下にさらに詳細に記載するように、画像を分析して血液分析指標を生成及び格納するようにも構成されている。
【0040】
[0045]リザーバ127中の血液試料は、482nmのピーク励起波長及び504nmの発光波長を有する、蛍光タグDiOC6でドープされる。マイクロ流体セルの下方には、励起用の単一の5W青色LED210(LedEngin LZ1-10B200)が、励起帯域における残留照射を除去するための45nmの帯域幅を有する445nmバンドパス励起フィルタ220(Thor Labs MF445-45)とともに位置決めされている。LED210は、制御線232を介してマイクロ制御装置230によって制御される。マイクロ流体セルの下方に、直接の明視野撮像のための追加の低電力緑色LED(図示せず)を含めてもよい。撮像経路におけるCCD171の正面に、42nmバンドパスの510nmバンドパス収集光フィルタ260が位置決めされている。顕微鏡はタグの蛍光波長のみを画像化するので色収差は問題とはならない。
【0041】
[0046]図2図9図11図12及び図13を参照すると、血小板機能の測定を行うために使用されるとき、従来の手段で典型的には1mlの血液試料を取得し、少量の蛍光タグDiOC6と混合する。試料をリザーバ127に投入する。新しいチャンネル(例えばチャンネル125)を選択し、コラーゲン溶液を満たしその後水を通して洗浄することによって、コラーゲンでコーティングする。リザーバ127を、パイプ126aを介して、フローセル120における選択したチャンネル125に接続する。フローセルチャンネルの排液端部は、パイプ125によって、受け入れ側のリザーバ124への排液を行うポンプ123に接続されている。対物レンズ130を、その視野がチャンネルの一方の端部へと向かう位置、例えば位置5aに移動するように移動させ、ボイスコイル132に電流を流すことによって画像への合焦を行う。次いで対物レンズ130を、例えば視野を位置5及び5bへと移動させるために、チャンネル長さに沿った他の所望の地点へと移動させて、同様の様式で合焦を行う。制御及び処理ユニット241は、各地点に合焦させるために必要な電流の値を格納し、次いで、フローセルに沿ったいずれかの任意の地点で必要な電流を補間する。この値を使用して、移動に沿ったあらゆる位置においてセルのコラーゲン表面129におおよそ合焦されている状態を維持する。さらに、制御及び処理ユニット241は、取得される画像の鮮明さに基づいて焦点を調節するようにプログラムされてもよい。ポンプ123により血液がフローセルに送り込まれ、制御及び処理ユニット241及びマイクロ制御装置230が対物レンズ130にセルを横切らせて、セルに沿った複数の地点での画像が取得される。通過がそれぞれ終わると、対物レンズ130は開始位置に戻り、このプロセスを繰り返し、この結果各位置において低速度撮影シークエンスを作成される。図11~13はディスプレイ242上に提示される3つの画像を示し、各画像は、視野の単一の位置に対する低速度撮影シークエンスにおける異なる画像である。血小板はコラーゲンに付着して、図11に示すように250、251のような小さい血栓を形成し始める。時間が経過するにつれ、図12に示すように、血栓はより大きく及びより数が多くなる。血栓はその後1つに融合して、より大きい血栓を形成し得る。したがって例えば図13には、融合した2つの血栓250、251から形成された血栓252が示されている。時間と相関した血栓のサイズ及び数を用いて、制御及び処理ユニット241は、血小板機能に関連する指標を推定する。
【0042】
[0047]各シークエンスが視野の異なる位置5、5a、5bと関連付けられている複数の低速度撮影シークエンスを取得することの利点は、例えばチャンネルの長さに沿ったコラーゲン層の厚さ方向の変動によって引き起こされる系統的誤差に対して、指標の感度がより低いことである。さらに、フローセルに沿った複数の地点からデータを取得することにより、より大きい合計面積からより大きいデータセットを提供することによって、ランダムな誤差に対する指標の感度が下がる。
【0043】
[0048]代替の光学構成を有する顕微鏡300が図14に示されている。顕微鏡300は、対物レンズ3により収集された光を受け取り、この光を光学経路に沿って第2のレンズ306へと反射させるように構成されている、ミラー301をさらに備える。アクチュエータは、ミラー301を対物レンズ3と一緒に光学経路302に従ってかつ対物レンズ3の光軸に対して交差して移動させるように構成されており、ミラー301が移動する際に、ミラー301が第2のレンズ306へと反射する光が第2のレンズ306を横切って側方に移動しないようになっている。この結果、第2のレンズ306を、図1の第2のレンズで6と比べて相対的に小さくすることができる。図14の実施形態はまた、第2のレンズ306の中心に光が入射したままとなるため、図1の実施形態よりも光学収差に関して難点が少ない。但し、図14の実施形態の問題は、図1の実施形態とは異なり、(図14の紙面に出入りする)対物レンズ3のY方向への動きに対処できないことである。
【0044】
[0049]本発明について1つ又は複数の好ましい実施形態を参照して記載したが、付属の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更又は修正を行い得ることが諒解されるであろう。
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