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特許7268975カーボンナノチューブ強化ポリマー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ強化ポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230426BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20230426BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230426BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
B29C64/153
C08L101/00
C08K3/04
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018151001
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2019039001
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】62/550,178
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/825,745
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】アンナ エム.トムジンシュカ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ダブリュー.アストン
(72)【発明者】
【氏名】ニコール エム.ヘイスティングス
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033838(WO,A1)
【文献】特表2013-536893(JP,A)
【文献】特表2013-502361(JP,A)
【文献】特開2017-074776(JP,A)
【文献】特開2016-190969(JP,A)
【文献】特開2013-119576(JP,A)
【文献】特開2012-062452(JP,A)
【文献】特開2017-128719(JP,A)
【文献】特表2013-542296(JP,A)
【文献】特開2017-009559(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/00-5/24
C08J 3/00-3/28;99/00
B29C 64/00-64/40
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリクスと、
前記ポリマーマトリクスに埋設された複数のカーボンナノチューブシート片と、を含み、前記カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含む、カーボンナノチューブ強化ポリマーであって、
前記複数のカーボンナノチューブシート片の長さは、1~10,000μmの範囲内であり、前記複数のカーボンナノチューブシート片の長さと幅の比は、1:1~1000:1の範囲内にあり、前記複数のカーボンナノチューブシート片の長さと厚みの比は、1:1~100:1の範囲内にある、カーボンナノチューブ強化ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマーマトリクスを構成するポリマーは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブシート片は、1E12(1×1012)オーム未満の抵抗を前記カーボンナノチューブ強化ポリマーに付与するのに十分な量にて前記ポリマーマトリクスに埋設されている、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーマトリクスにおける前記カーボンナノチューブの重量割合は、0.0001重量%~25重量%の範囲内である、請求項1~3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ強化ポリマーから形成された物品
【請求項6】
カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための方法であって、
複数のカーボンナノチューブシート片を用意し、その際、前記カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含むものとし、
前記複数のカーボンナノチューブシート片とポリマー粉末とを混合し、
前記ポリマー粉末を焼結して、前記複数のカーボンナノチューブシート片を、前記ポリマー粉末で形成されたポリマーマトリクスに埋設する、ことを含み、
前記複数のカーボンナノチューブシート片の長さは、1~10,000μmの範囲内であり、前記複数のカーボンナノチューブシート片の長さと幅の比は、1:1~1000:1の範囲内にあり、前記複数のカーボンナノチューブシート片の長さと厚みの比は、1:1~100:1の範囲内にある、方法。
【請求項7】
複数のカーボンナノチューブシート片を用意することは、
絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含むカーボンナノチューブシートを用意し、
前記カーボンナノチューブシートを前記複数のカーボンナノチューブシート片に切断又は摩砕する、ことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーマトリクスを構成するポリマーは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ強化ポリマーを航空用又は宇宙用のビークルの部品に成形することをさらに含む、請求項6~8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、導電性を有するポリマー化合物に関し、特に、航空用及び宇宙用のビークルにおける使用に適したカーボンナノチューブ強化ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電気は、科学的測定値又は電子部品への干渉などの様々な影響を引き起こしうる。
【0003】
静電気の消散が必要な用途においては、導電性ポリマー化合物が、他の材料と比較して、軽量であって、複雑な形状への加工も可能であるなどのいくつかの利点を有する。ポリマー材料に導電性を与えるために、複数の技術が利用可能である。
【0004】
航空用及び宇宙用のビークルに求められる静電気消散ブリード(static dissipative bleed)を提供するために、炭素繊維の重量割合(percentage weight loading)が最大30%であるポリマーに対して、1E9(1×109)オームの最大抵抗を与えることができる。このように炭素繊維の重量割合が高い場合、ベースポリマー材料の全体的な機械的性能、特に、ベースポリマー材料の靭性が低減する。
【0005】
したがって、当業者は、導電性を有するポリマー化合物の分野における研究及び開発を続けている。
【発明の概要】
【0006】
一態様においては、本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマーは、ポリマーと、前記ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片とを含む。前記カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含む。
【0007】
他の態様においては、カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための本開示の方法は、複数のカーボンナノチューブシート片を用意し、その際、前記カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含むものとし、前記複数のカーボンナノチューブシート片とポリマーとを混合する、ことを含む。
【0008】
さらに他の態様においては、カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための本開示の方法は、ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片を用意し、その際、前記カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含むものとし、前記カーボンナノチューブシート片と前記ポリマーとの混合物を、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品に成形する、ことを含む。
【0009】
本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造する方法、及び、カーボンナノチューブ強化ポリマーを使用する方法の他の態様は、以下の詳細な説明、添付図面、及び、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本書のカーボンナノチューブ強化ポリマーの第1の態様を示す図である。
図2】本書のカーボンナノチューブ強化ポリマーの第2の態様を示す断面図である。
図3図2に示すカーボンナノチューブ強化ポリマーの第2の態様の一例を示す図である。
図4図2に示すカーボンナノチューブ強化ポリマーの第2の態様の他の例を示す図である。
図5】不規則に絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含むカーボンナノチューブシート片の一部を示す断面図である。
図6図2に示すカーボンナノチューブ強化ポリマーの第2の態様の他の例を示す図である。
図7図2に示すカーボンナノチューブ強化ポリマーの第2の態様の他の例を示す図である。
図8】カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための例示的な方法を示すフロー図である。
図9】カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための例示的な方法を示すフロー図である。
図10】カーボンナノチューブ強化ポリマーを使用するための例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマー2は、ポリマー4と、当該ポリマー4と混合された複数のカーボンナノチューブシート片6とを含み、各カーボンナノチューブシート片6は、絡み合ったカーボンナノチューブ8のネットワーク8を含む(図5)。カーボンナノチューブ強化ポリマー2の形態は限定されない。カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、例えば、付加製造プロセスを用いた後続処理のための前駆体(precursor)などの形態であってもよく、付加製造プロセスの例としては、熱溶解積層法(fused deposition modeling)又は選択的レーザー焼結(selective laser sintering)などの、層毎の付加製造プロセスが挙げられる。これに代えて、カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、付加製造プロセスにより形成された物品、例えば、熱溶解積層法又は選択的レーザー焼結などの、層毎の付加製造プロセスにより形成された物品のように、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品の形態であってもよい。
【0012】
図1は、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の第1の態様を示す。同図においては、カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、ポリマー粉末4Aの形態のポリマー4を含み、複数のカーボンナノチューブシート片6は、ポリマー粉末4Aと混合されている。ポリマー粉末4Aとカーボンナノチューブシート片6との混合物に対して、後続処理を行ってもよく、具体的には、例えば、ポリマー4を焼結して、複数のカーボンナノチューブシート片6をポリマー粉末4Aで形成されたポリマーマトリクスに埋設する処理を行ってもよい。すなわち、ポリマー4は、後続処理(例えば、焼結)が完了して初めてポリマーマトリクスとして作用し、この後続処理により、ポリマー4が、カーボンナノチューブシート片6を支持するバインダとして作用する。ポリマー粉末4Aとカーボンナノチューブシート片6との混合物に対する後続処理は限定されるものではなく、例えば、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品を形成するための選択的レーザー焼結などの付加製造プロセスによる後続処理であってもよい。
【0013】
図2~5は、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の第2の態様を示す。図2に示すように、カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、ポリマー4で形成されるポリマーマトリクス4Bを含み、当該ポリマーマトリクス4Bには複数のカーボンナノチューブシート片6が埋設されている。カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、後続処理の前駆体の形態、又は、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品の形態などの、任意の形態をとりうる。
【0014】
図3に示すように、カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、ペレットなどの複数の微粒子3の形態をとりうる。これらの微粒子は、ポリマー4のポリマーマトリクス4Bに埋設されたカーボンナノチューブシート片6を有する。複数の微粒子3は、例えば、上述したポリマー粉末4A(図1)とカーボンナノチューブシート片6との混合物に対する後続処理により形成することができる。複数の微粒子3は、それ自体が、選択的レーザー焼結などの付加製造プロセスによる後続処理を受けて、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品を形成することができる。
【0015】
図4に示すように、カーボンナノチューブ強化ポリマー2は、ファイバやストランドなどのフィラメント5の形態をとりうる。このフィラメントは、複数の微粒子のポリマーマトリクス(不図示)に埋設されたカーボンナノチューブシート片(不図示)を有する。フィラメント5は、例えば、上述したポリマー粉末とカーボンナノチューブシート片との混合物に対する後続処理により形成することができる。フィラメントは、それ自体が、熱溶解積層法などの付加製造プロセスによる後続処理を受けて、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品を形成することができる。
【0016】
図6及び7は、カーボンナノチューブ強化ポリマー2が、物品7の形態をとりうることを示す。この物品は、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有するとともに、当該物品のポリマーマトリクス(不図示)に埋設されたカーボンナノチューブシート片(不図示)を有する。物品7の寸法及び特性は限定されるものではなく、物品の用途に応じて決定することができる。ある態様においては、物品7は、航空用又は宇宙用のビークルの空気再生システム(air revitalization system)の部品などのように、航空用又は宇宙用のビークルの部品であってもよい。図6は、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する例示的な物品7、具体的には、航空用又は宇宙用のビークルの空気再生システムのダクトを示す。図7は、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する例示的な物品7、具体的には、航空用又は宇宙用のビークルの空気再生システムのパネルを示す。
【0017】
先に述べたように、カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含む。カーボンナノチューブはどのような態様で絡み合っていてもよい。例えば、カーボンナノチューブは、規則的に絡み合っていてもよいし、不規則に絡み合っていてもよい。図5には、不規則に絡み合ったカーボンナノチューブ8のネットワークを含むカーボンナノチューブシート片6の一部が示されている。
【0018】
ポリマーに導電性を与えるために、ポリマーマトリクス内の個々のカーボンナノチューブを分散する試みが、以前からなされてきた。しかしながら、個々のカーボンナノチューブは、凝集しやすいため、後続処理が複雑になる傾向がある。例えば、個々のカーボンナノチューブが凝集すると、熱溶解積層法で使用されるノズルが詰まりやすくなる。より具体的には、熱溶解積層法は、ポリマーフィラメントから層状に材料を敷設して、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品の形状を形成することにより実現される。しかしながら、個々のカーボンナノチューブは凝集しやすいため、個々のカーボンナノチューブが組み込まれたポリマーの層を敷設するためのノズルに詰まりが生じて、処理が複雑になる。さらに、個々のカーボンナノチューブは、空気中に浮遊する可能性があり、カーボンナノチューブの取り扱いに懸念が生じる。本書に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマーにおいては、カーボンナノチューブシート片を設けることによりこれらの問題に対処している。これらのカーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含み、これらのカーボンナノチューブは、ポリマー粉末と混合されるか、或いは、ポリマーマトリクスに埋設されている。このため、処理を容易にすることができ、取り扱い上の懸念も緩和することができる。
【0019】
ある態様においては、ポリマー4は、熱可塑性ポリマーを含みうる。熱可塑性ポリマーの種類は限定されない。熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド11、及び、これらの組み合わせを含みうる。1つの具体例においては、熱可塑性ポリマーは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む。他の具体例においては、熱可塑性ポリマーは、ポリフェニレンスルファイド(PPS)を含む。さらに他の具体例においては、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド11を含む。
【0020】
複数のカーボンナノチューブシート片6におけるカーボンナノチューブ8は、単層カーボンナノチューブ(single walled carbon nanotubes)、二層カーボンナノチューブ(double walled carbon nanotubes)、その他の任意の多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes)、又は、これらの組み合わせから選択可能である。
【0021】
カーボンナノチューブシート片6の寸法は限定されるものではなく、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の用途に応じて決定することができる。カーボンナノチューブシート片6の寸法が小さすぎると、カーボンナノチューブ8の取り扱い上の懸念が生じる。したがって、ある態様においては、カーボンナノチューブシート片6の長さは、当該シート片の最大寸法と定義され、少なくとも0.1μm、好ましくは、少なくとも1μm、より好ましくは10μmであってもよい。カーボンナノチューブシート片6の寸法が大きすぎる場合、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の全体的な機械的性能が低減する。したがって、ある態様においては、カーボンナノチューブシート片6における最大寸法として定義される当該シート片6の長さは、10,000μm以下、好ましくは、1000μm以下であってもよい。ある具体例においては、カーボンナノチューブシート片6の長さは、50~200μmの範囲内である。
【0022】
カーボンナノチューブシート片6の幅は限定されるものではなく、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の用途に応じて決定することができる。ある態様においては、複数のカーボンナノチューブシート片6の長さと幅の比は、1:1~1000:1、好ましくは、1:1~100:1、より好ましくは1:1~10:1の範囲内である。ある具体例においては、複数のカーボンナノチューブシート片6の長さと幅の比は、1:1~2:1の範囲内である。
【0023】
カーボンナノチューブシート片6の厚みは限定されるものではなく、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の用途に応じて決定することができる。ある態様においては、複数のカーボンナノチューブシート片6の長さと厚みの比は、好ましくは、1:1~100:1、より好ましくは、1:1~10:1の範囲内である。
【0024】
カーボンナノチューブシート片6の量は限定されるものではなく、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の用途、及び、付与する所望の導電率に応じて決定することができる。例えば、カーボンナノチューブ強化ポリマー2が帯電防止特性を有するとみなされるためには、1E12(1×1012)オーム未満、好ましくは、1E11(1×1011)オーム未満、より好ましくは、1E10(1×1010)オーム未満の抵抗を付与するのに十分な量のカーボンナノチューブシート片6をカーボンナノチューブ強化ポリマー2に埋設すればよい。例えば、カーボンナノチューブ強化ポリマー2が静電気消散特性を有するとみなされるためには、1E9(1×109)オーム未満、好ましくは、1E8(1×108)オーム未満、より好ましくは、1E7(1×107)オーム未満の抵抗を付与するのに十分な量のカーボンナノチューブシート片6をカーボンナノチューブ強化ポリマー2に埋め込めばよい。航空用及び宇宙用のビークルに求められる静電気消散ブリードを提供するために、十分な量のカーボンナノチューブシート片6を埋設することにより、カーボンナノチューブ強化ポリマー2に対して最大1E9(1×109)オームの抵抗を付与することができる。
【0025】
カーボンナノチューブシート片6の量は、カーボンナノチューブ8の重量割合により規定することができる。カーボンナノチューブ8の重量割合が低すぎる場合、カーボンナノチューブ強化ポリマー2に付与される導電性が制限される。したがって、ある態様においては、ポリマーマトリクスにおけるカーボンナノチューブ8の重量割合は、少なくとも0.0001重量%、好ましくは、少なくとも0.001重量%、より好ましくは、少なくとも0.01重量%である。カーボンナノチューブ8の重量割合が高すぎる場合、カーボンナノチューブ強化ポリマー2の機械的特性が低減される。したがって、ある態様においては、ポリマーマトリクス4Bにおけるカーボンナノチューブ8の重量割合は、25重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。一例においては、ポリマーマトリクス4Bにおけるカーボンナノチューブ8の重量割合は、0.05重量%~0.5重量%の範囲内である。他の例においては、カーボンナノチューブシート片6は、100μm×100μm平方のシートであり、ポリマーマトリクス4Bにおけるカーボンナノチューブ8の重量割合は、0.05重量%~0.5重量%の範囲内である。
【0026】
カーボンナノチューブシート片6は、任意の適切な方法により作製することができる。例えば、カーボンナノチューブシート片6は、絡み合ったカーボンナノチューブ8のネットワークを含むカーボンナノチューブシートで作製することができ、このカーボンナノチューブシートを、切断又は摩砕することにより、複数のカーボンナノチューブシート片6が得られる。
【0027】
本書の第2実施形態は、カーボンナノチューブ強化ポリマー2を製造するための方法に関する。カーボンナノチューブ強化ポリマー2を製造する方法は、以下に示す方法に限定されない。
【0028】
さらに、本開示は、以下に列挙する項に記載された例を含む。
【0029】
付記1.ポリマー(4)と、前記ポリマー(4)と混合された複数のカーボンナノチューブシート片(6)と、を含み、前記カーボンナノチューブシート片(6)の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブ(8)のネットワークを含む、カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0030】
付記2.前記ポリマー(4)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド(11)、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される、付記1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0031】
付記3.前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)の長さは、1~10,000μmの範囲内である、付記1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0032】
付記4.前記カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)には、1E12(1×1012)オーム未満の抵抗を前記カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)に付与するのに十分な量のカーボンナノチューブシート片(6)が埋設されている、付記1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0033】
付記5.前記ポリマー(4)における前記カーボンナノチューブ(8)の重量割合は、0.0001重量%~25重量%の範囲内である、付記1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0034】
付記6.前記ポリマー(4)は、ポリマー粉末(4A)の形態であり、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)は、前記ポリマー粉末(4A)と混合される、付記1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0035】
付記7.前記ポリマー(4)は、ポリマーマトリクス(4B)の形態であり、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)は、前記ポリマーマトリクス(4B)に埋設されている、付記1に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0036】
付記8.前記カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)は、複数の微粒子(3)の形態であり、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)は、前記複数の微粒子(3)の前記ポリマーマトリクス(4B)に埋設されている、付記7に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0037】
付記9.前記カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)は、フィラメント(5)の形態であり、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)は、前記フィラメント(5)の前記ポリマーマトリクス(4B)に埋設されている、付記7に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマー(2)。
【0038】
付記10.付記7に記載の前記カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)で形成された物品(7)。
【0039】
付記11.航空用又は宇宙用のビークルの部品である、付記10に記載の物品(7)。
【0040】
付記12.カーボンナノチューブ強化ポリマー(2)を製造するための方法であって、複数のカーボンナノチューブシート片(6)を用意し(22)、その際、前記カーボンナノチューブシート片(6)の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブ(8)のネットワークを含むものとし、前記複数のカーボンナノチューブシート片とポリマー(4)とを混合する(24)、ことを含む、方法。
【0041】
付記13.複数のカーボンナノチューブシート片(6)を用意することは、絡み合ったカーボンナノチューブ(8)のネットワークを含むカーボンナノチューブシートを用意し、前記カーボンナノチューブシートを前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)に切断又は摩砕する、ことを含む、付記12に記載の方法。
【0042】
付記14.前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)をポリマー(4)と混合することは、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)をポリマー粉末(4A)と混合することを含む、付記12に記載の方法。
【0043】
付記15.前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)をポリマー(4)と混合することは、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)をポリマーマトリクス(4B)と混合することを含む、付記12に記載の方法。
【0044】
付記16.前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)を前記ポリマーマトリクス(4B)に埋設することは、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)をポリマー粉末(4A)と混合し、前記ポリマー粉末(4A)を焼結して、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)を、前記ポリマー粉末(4A)で形成されたポリマーマトリクス(4B)に埋設する、ことを含む、付記15に記載の方法。
【0045】
付記17.前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)の長さは、1~10,000μmの範囲内である、付記12に記載の方法。
【0046】
付記18.複数のカーボンナノチューブシート片(6)をポリマー(4)と混合して混合物を形成し(32)、その際、前記複数のカーボンナノチューブ片(6)における各々のカーボンナノチューブシート片(6)は、絡み合ったカーボンナノチューブ(8)のネットワークを含むものとし、前記混合物を、カーボンナノチューブ強化ポリマー品(7)に成形する(34)、ことを含み、前記カーボンナノチューブ強化ポリマー品(7)は、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する、製造方法。
【0047】
付記19.前記ポリマー(4)は、前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)と混合されるポリマー粉末(4A)の形態で用意される、付記18に記載の方法。
【0048】
付記20.前記混合物の成形(34)に際して、選択的レーザー焼結を用いる、付記19に記載の方法。
【0049】
付記21.前記複数のカーボンナノチューブシート片(6)は、ポリマー(4)に埋設されている、付記18に記載の方法。
【0050】
付記22.前記混合物の成形(34)に際して、選択的レーザー焼結及び熱溶解積層法のうちの少なくとも一方を用いる、付記21に記載の方法。
【0051】
付記23.付記18に記載の方法により形成されたカーボンナノチューブ強化ポリマー品(7)。
【0052】
カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための以下の方法は、例えば、付加製造プロセスによる後続処理のための前駆体などの、後続処理のための前駆体の形態、及び、付加製造プロセスにより形成された物品などの、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品の形態で、カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための方法を含む。
【0053】
図8は、カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造する方法の第1態様を示す。カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための方法の第1態様は、ブロック22において、複数のカーボンナノチューブシート片を用意することを含み、その際、カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含む。カーボンナノチューブ強化ポリマーの製造方法は、さらに、ブロック24において、複数のカーボンナノチューブシート片とポリマーとを混合することを含む。
【0054】
ブロック22のステップ、すなわち、複数のカーボンナノチューブシート片を用意することは、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含むカーボンナノチューブシートを用意し、カーボンナノチューブシートを複数のカーボンナノチューブシート片に切断又は摩砕することを含みうる。カーボンナノチューブシートは、カーボンナノチューブをシート形状に化学気相蒸着させるなどの、任意の既知の方法で製造することができる。複数のカーボンナノチューブシート片を用意するステップは、上述した方法で複数のカーボンナノチューブシート片を用意することに制限されない。
【0055】
一例においては、ブロック24の方法、すなわち、複数のカーボンナノチューブシート片をポリマーと混合することは、複数のカーボンナノチューブシート片をポリマー粉末と混合することを含みうる。しかしながら、複数のカーボンナノチューブシート片をポリマーと混合することは、これに限定されない。
【0056】
複数のカーボンナノチューブシート片をポリマーと混合する場合において、本方法は、個々のカーボンナノチューブをポリマーに組み込む過去の試みに関連する取り扱い上の懸念を緩和することができる。具体的には、過去の試みにおいては、個々のカーボンナノチューブのサイズが小さいことと、個々のカーボンナノチューブが空気中に浮遊する可能性があることとを理由として、取り扱いに懸念が生じていた。本書に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための方法においては、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを各々が含む複数のカーボンナノチューブシート片を設けることによりこれらの問題に対処している。これにより、個々のカーボンナノチューブに関連する取り扱い上の懸念を緩和することができる。
【0057】
他の例においては、ブロック24のステップ、すなわち、複数のカーボンナノチューブシート片をポリマーと混合することは、複数のカーボンナノチューブシート片を、ポリマーで形成されたポリマーマトリクスに埋設することを含みうる。
【0058】
複数のカーボンナノチューブシート片をポリマーマトリクスに埋設することを含む場合、複数のカーボンナノチューブシート片をポリマーマトリクスに埋設するステップは、複数のカーボンナノチューブシート片をポリマー粉末と混合し、ポリマー粉末を焼結して、複数のカーボンナノチューブシート片を、ポリマー粉末で形成されたポリマーマトリクスに埋設することを含みうる。
【0059】
本書において、焼結は、ポリマー粉末の溶融温度より高いか、或いは低い温度で当該ポリマー粉末を十分に加熱して、ポリマー粉末の粒子とカーボンナノチューブシート片とを一体化させるように行われる。一例においては、カーボンナノチューブシート片とポリマー粉末との混合物は、レーザー焼結される。他の例においては、カーボンナノチューブシート片とポリマー粉末との混合物を、粉末床(powder bed)に一層ずつ設けてから選択的にレーザー焼結して、所望形状の物品に成形する。
【0060】
図9は、カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造する方法の第2態様を示す。カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造するための方法の第2態様は、ブロック32において、ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片を用意することを含み、その際、カーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含む。カーボンナノチューブ強化ポリマーを製造する方法は、さらに、ブロック34において、カーボンナノチューブシート片とポリマーとの混合物を、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品に成形することを含む。
【0061】
ブロック32のステップ、すなわち、ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片を用意するステップにおいて、ポリマーは、複数のカーボンナノチューブシート片と混合されるポリマー粉末の形態で用意することができる。しかしながら、ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片を用意するステップは、ポリマー粉末の形態でポリマーを用意することに限定されない。
【0062】
ポリマー粉末の形態でポリマーを用意する場合、選択的レーザー焼結などの、粉末から物品を形成する付加製造プロセスを含む処理により物品を形成することができる。しかしながら、ポリマー粉末の形態でポリマーを用意する場合においても、非付加製造プロセス、又は、選択的レーザー焼結以外の付加製造プロセスにより物品を形成してもよい。
【0063】
ブロック32のステップ、すなわち、ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片を用意するステップにおいて、ポリマーは、複数のカーボンナノチューブシート片が埋設されたポリマーマトリクスの形態で用意することができる。しかしながら、ポリマーと混合された複数のカーボンナノチューブシート片を用意するステップは、ポリマーを、複数のカーボンナノチューブシート片が埋設されたポリマーマトリクスの形態で用意することに限定されない。
【0064】
ポリマーを、複数のカーボンナノチューブシート片が埋設されたポリマーマトリクスの形態で用意する場合、選択的レーザー焼結又は熱溶解積層法などの付加製造プロセスを含む処理により、物品を形成することができる。しかしながら、ポリマーを、複数のカーボンナノチューブシート片が埋設されたポリマーマトリクスの形態で用意する場合においても、非付加製造プロセス、又は、選択的レーザー焼結や熱溶解積層法以外の付加製造プロセスにより、物品を形成してもよい。
【0065】
選択的レーザー焼結により物品を形成する場合、ポリマーマトリクスと混合された複数のカーボンナノチューブシート片は、複数のカーボンナノチューブシート片が埋設された、ペレットなどの複数の微粒子の形態で用意されてもよく、物品の形成は、当該複数の微粒子を一層ずつ設けることにより行ってもよい。
【0066】
熱溶解積層法により物品を形成する場合、ポリマーマトリクスと混合される複数のカーボンナノチューブシート片は、ストランド又はファイバなどのフィラメントの形態で用意されてもよく、物品の形成は、当該フィラメントを一層ずつ設けることにより行ってもよい。熱溶解積層法の場合、個々のカーボンナノチューブを組み込む過去の試みにおいては、処理上の問題が発生していた。具体的には、個々のカーボンナノチューブは凝集しやすいため、個々のカーボンナノチューブが組み込まれたポリマーの層を敷設するためのノズルに詰まりが生じて、処理が複雑になる。本書に記載のカーボンナノチューブ強化ポリマーにおいては、カーボンナノチューブシート片を設けることによりこれらの問題に対処している。これらのカーボンナノチューブシート片の各々は、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含み、これらのカーボンナノチューブは、ポリマー粉末と混合されるか、或いは、ポリマーマトリクスに埋設されている。このため、個々のカーボンナノチューブの凝集を回避して処理を容易にすることができる。このため、処理を容易にすることができ、取り扱い上の懸念も緩和することができる。
【0067】
他の例においては、ブロック34のステップ、すなわち、カーボンナノチューブシート片とポリマーとの混合物を、最終的、或いは、ほぼ最終的な寸法を有する物品に成形することは、射出成形、圧縮成形、及び押出成形などの様々なプラスチック成形のうちの1つ又は複数を含みうる。
【0068】
図10に示すように、本書は、さらに、航空用又は宇宙用のビークルの部品に成形されたカーボンナノチューブ強化ポリマーを使用するための方法40に関する。上記方法は、ブロック42において、カーボンナノチューブ強化ポリマーの部品をビークルに配置することを含む。このカーボンナノチューブ強化ポリマー部品は、ポリマーマトリクスと、当該ポリマーマトリクスに埋設された複数のカーボンナノチューブシート片とを含み、これらのカーボンナノチューブシート片の各々は、上述したように、絡み合ったカーボンナノチューブのネットワークを含む。上記方法は、さらに、ブロック44において、ビークルにおける部品を電気的に接地することを含む。上記部品は、例えば、航空用及び宇宙用のビークルに求められる静電気消散ブリードを提供するために、最大1E9(1×109)オームの抵抗を有しうる。
【0069】
実験においては、従来の方法を用いて、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)粉末をカーボンナノチューブシート片と混合し、円板状に溶融した。実験においては、カーボンナノチューブ(CNT)の重量割合が0.5%であるカーボンナノチューブ強化PEKKポリマーの表面抵抗が10E4オームであることが示された。このポリマーは、炭素繊維の重量割合が15%であって、表面抵抗が平均10E8オームである従来の炭素繊維強化PEKKポリマーと比較すると、導電性が10,000倍高い。ポリマーマトリクスにおいて、0.5%のカーボンナノチューブの重量割合は、従来における15%の炭素繊維の重量割合よりも小さく、1/30である。このような重量の低減により、全体的な機械特性、特に靭性の改善が期待される。
【0070】
本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマー及び方法は、航空機及び宇宙船に関連して説明することができる。しかしながら、当業者であれば、本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマー及び方法を様々な用途に利用可能であることが容易に理解できるであろう。例えば、本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマー及び方法は、例えば、旅客船、自動車、海洋製品(ボート、モータ等)などを含む様々なビークルにおいて実施することができる。また、ビークル以外の様々な用途も考えらえる。
【0071】
本開示のカーボンナノチューブ強化ポリマー、製品、及び方法について様々な態様を図示及び説明してきたが、本書を読めば当業者には種々の変形が可能であろう。本願は、そのような変形も包含し、請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10