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特許7268997特に電子式のシガレット製品のための、吸入器用の蒸発装置、および、製造方法
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  • 特許-特に電子式のシガレット製品のための、吸入器用の蒸発装置、および、製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】特に電子式のシガレット製品のための、吸入器用の蒸発装置、および、製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20200101AFI20230426BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20230426BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20230426BHJP
【FI】
A24F47/00
H05B3/20 318
H05B3/20 388
A24F40/46
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018235986
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2019106989
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10 2017 130 501.7
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595112018
【氏名又は名称】ケルバー・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ソナリ・ラト
(72)【発明者】
【氏名】ムハンナト・ガナム
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ヤクリン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ペルツ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ヴォイアス
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ゴルトシュミットベーイング
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506890(JP,A)
【文献】実開昭62-147289(JP,U)
【文献】特表2014-511175(JP,A)
【文献】特開2017-162739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0286630(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0007653(US,A1)
【文献】特表2013-509160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020193(US,A1)
【文献】国際公開第2016/160749(WO,A1)
【文献】特表2017-522873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に電子式のシガレット製品のための、吸入器(27)用の蒸発装置(1)であって、この蒸発装置が、
-その蒸発器(3)に供給された液体の蒸発のための1つまたは複数の加熱要素(15)を有する、電気的な該蒸発器(3)を備えている様式の上記蒸発装置において、
-担持体(2)が、ポリマーフィルム(201)、および、前記ポリマーフィルム(201)と平面状に接触する少なくとも1つの金属フィルム(202)を有する層システムから形成されており、
-前記ポリマーフィルム(201)が、液体透過性の少なくとも1つの第1の開口部(204)を有しており、
-前記金属フィルム(202)が、前記第1の開口部(204)と連絡する、液体透過性の少なくとも1つの第2の開口部(205)を有しており、
-前記金属フィルム(202)が前記加熱要素(15)を形成し、これら加熱要素(15)が、前記第2の開口部(205)を区画する状態で配設されていること、
前記金属フィルム(202)が、少なくとも、前記ポリマーフィルム(201)と接触していない部分、及び/または、前記加熱要素(15)において、この金属フィルムの成分の遊離を防止するための不動態化被覆部(206)を有していること、および、
-前記担持体(2)が、金属層(207)を備えており、および、この金属層(207)が、前記ポリマーフィルム(201)と、前記金属フィルム(202)の反対側に位置する側面の上で接触していること、
前記金属層が、この金属層の成分の遊離を防止するための不動態化被覆部を備えていること、
を特徴とする蒸発装置
【請求項2】
-前記担持体(2)は、電子式の構造部材(4、56)の電気的な接触のための、少なくとも1つの接点(211、212)を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
-前記担持体(2)は、異なる厚さ及び/または曲げ強度の領域を有している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
-前記担持体(2)は、液体タンク(6)との規格化された結合のための、液体接続部(47)を有しており、この液体接続部(47)が、前記第1の開口部(204)及び/または前記第2の開口部(205)と連絡している、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の蒸発装置。
【請求項5】
-前記担持体(2)の稜部(210)において、電気的な差込みコネクタ部(7)が形成されており、
この電気的な差込みコネクタ部が、前記吸入器(27)の基礎部材(20)の相応する差込みコネクタ部(22)との可逆的な協働作用のため、および、電気的なエネルギーの前記蒸発装置(1)への供給のため、及び/または、前記蒸発装置(1)のための制御信号の受信のために設備されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蒸発装置。
【請求項6】
-前記蒸発装置(1)の制御及び/または調節のための電子式の制御装置(4)は、前記担持体(2)の上で保持されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の蒸発装置。
【請求項7】
吸入器(27)のための蒸発ユニット(90)であって、この蒸発ユニットが、
-請求項1から6のいずれか一つによる蒸発装置(1)、および、
-前記蒸発器(3)への液体の搬送のための毛細管要素(12)、
を備えていることを特徴とする蒸発ユニット。
【請求項8】
-前記毛細管要素(12)は、少なくとも部分的に、前記担持体(2)内における前記第1の開口部(204)及び/または前記第2の開口部(205)を通って延びている、ことを特徴とする請求項7に記載の蒸発ユニット。
【請求項9】
吸入器(27)のためのカートリッジ(19)であって、このカートリッジが、
-請求項1から6のいずれか一つによる少なくとも1つの蒸発装置(1)、または、請求項7または8による少なくとも1つの蒸発ユニット(90)、および、
-1つの液体タンク(6)、
を備えていることを特徴とするカートリッジ。
【請求項10】
吸入器(27)であって、この吸入器が、
請求項1から6のいずれか一つによる少なくとも1つの蒸発装置(1)、請求項7または8による少なくとも1つの蒸発ユニット(90)、または、請求項9による少なくとも1つのカートリッジ(19)、および、
これと連絡する1つの基礎部材(20)を備えていることを特徴とする吸入器。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一つによる蒸発装置(1)を製造するための方法において、前記担持体(2)が以下のステップ:即ち、
-前記ポリマーフィルム(201)と前記金属フィルム(202)とが、平面状に互いに結合され、
-前記第1の開口部(204)、導体路、及び/または、加熱要素(15)を形成するために、前記金属フィルム(202)が、構造付与され、
-前記第2の開口部(205)を形成するために、前記ポリマーフィルム(201)が、構造付与される、
ステップによって形成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
-前記金属フィルム(202)は、不動態化被覆部(206)を装備される、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
-金属層(207)は、前記金属フィルム(202)の反対側に位置する、前記ポリマーフィルム(201)の側面の上で、前記ポリマーフィルム(201)と結合される、
ことを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
-前記金属層(207)は、不動態化被覆部(206)を装備される、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電子式のシガレット製品のための、吸入器用の蒸発装置に関し、この蒸発装置が、
その蒸発器に供給された液体の蒸発のための1つまたは複数の加熱要素を有する、電気的な該蒸発器を備えている。
本発明は、更に、相応する吸入器、蒸発ユニット、および、吸入器のためのカートリッジに関し、並びに、蒸発装置を製造するための方法に関している。
【背景技術】
【0002】
現下の電子式のシガレット内において、ウィックコイル原理を基礎として、現在、1つと5つに至るまでの間の蒸発ヘッドが使用されている。広く普及しているウィックコイル電子式シガレットと並んで、更に別の試みとして、液体表面において、直接的に液体を平面状に蒸発させることが存在する(例えば、特許文献1を参照)。
メッシュとも称される線材格子状体を介しての加熱の場合、蒸発器表面を介して、不均等な温度領域が形成可能である。何故ならば、格子面を介しての加熱出力は、確かに、基本的に一定であるが、熱搬出が、局部的に異なる液体追加搬送、および、場合によっては、しかもその上に局部的な乾燥に基づいて、しかしながら、強度に不均等であるからである。
【0003】
蒸発器温度の制御は、温度に依存する加熱器抵抗を介して可能である。但し、このようにして、ただ全加熱器面を介して平均値化された温度が検出されるだけなので、乾燥に基づいての、ただ極めて大きな局部的な温度上昇だけが検知され得る。それに加えて、それに基づいて行われる加熱出力の低減は、同様に、正確に温度を調節された領域にも関係し、且つ、そこで、温度が低減され、従って、生成される蒸気量が低減される。
【0004】
個々の、別個に制御される領域への、蒸発器表面の分割は、特許文献2内において記載されているように、この問題を低減する。分離可能な領域を有する、平面状の蒸発器の可能な実現化は、特許文献1内において記載されている。そこで記載されているシリコン-MEMS技術(Silizium-MEMS-Technologie)は、しかしながら、比較的に高価である。それに加えて、蒸発器チップの個々の管路は、相応する制御電子機器と電気的に結合されるべきであり、このことは、増大された組み付けの手間暇を誘起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願第10 2016 120 803.5号明細書
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願第10 2017 111 119.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、蒸発装置、および、製造方法を提供することにあり、この蒸発装置が、可能な限りコストの安い製造を、同時に高いエアロゾル品質もしくは蒸気品質、もしくは、エアロゾル強度もしくは蒸気強度において許容する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この課題を、独立請求項の特徴によって解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、
担持体が、ポリマーフィルム、および、前記ポリマーフィルムと平面状に接触する少なくとも1つの金属フィルムを有する層システムから形成されており、
前記ポリマーフィルムが、液体透過性の少なくとも1つの第1の開口部を有しており、
前記金属フィルムが、前記第1の開口部と連絡(kommunizierende)する、液体透過性の少なくとも1つの第2の開口部を有しており、
前記金属フィルムが前記加熱要素を形成し、これら加熱要素が、前記第2の開口部を区画する状態で配設されていること、
前記金属フィルムが、少なくとも、前記ポリマーフィルムと接触していない部分、及び/または、前記加熱要素において、
この金属フィルムの成分の遊離を防止するための不動態化被覆部を有していること、および、
-前記担持体が、金属層を備えており、および、この金属層が、前記ポリマーフィルムと、前記金属フィルムの反対側に位置する側面の上で接触していること、
前記金属層が、この金属層の成分の遊離を防止するための不動態化被覆部を備えていること、
を提案している。
【0009】
本発明は、平面状の蒸発が、層構造を有する、フィルムベースの加熱器によって達成され得、このことが、高品質の蒸発もしくはエアロゾル形成、および、同時に、この加熱器のコストの安い製造を可能にすることを明らかにした。
少なくとも、ポリマーフィルムおよび金属フィルムによる層システムから形成された担持体は、フィルムをベースとされており、且つ、加熱要素が、直接的に、同様に回路担持体との称され得る、この担持体の上で付着(aufgebracht)されている。担持体の適当なレイアウトと、これに伴っての電気的な及び/または電子式の構造要素の適当な結合とを許容するために、ポリマーフィルムと金属フィルムとの間の平面状の接触は、一方では、導電性の領域、並びに、電気的に絶縁性の領域を有する1つの複合体を生起する。
【0010】
本発明に従い、担持体を通っての液体移送を許容するために、ポリマーフィルムの第1の開口部と、第2の開口部(die zweite Polymerfolie)とは連絡している。従って、有利には、第1の開口部は、第2の開口部に対応可能な領域内において配設されている。
担持体を通って流動し且つ蒸発器に供給される液体の、蒸発もしくはエアロゾル形成を可能とするために、加熱要素は、金属フィルムの、第2の開口部によって区画された領域によって形成される。
【0011】
有利には、金属フィルムの成分の遊離を防止するために、金属フィルムは、少なくとも、ポリマーフィルムと接触していない部分、及び/または、加熱要素において、不動態化被覆部を有している。
有利には、不動態化被覆部もしくは不動態化部は、非金属で温度安定的な材料、例えば、二酸化ケイ素、石英ガラス、または、窒化ケイ素から成り、この不動態化被覆部もしくは不動態化部が、例えば、低温沈着(Niedertemperaturabscheidung)によって付着可能である。他の実施形態において、同様に、パリレン(Parylen)のような温度安定的なポリマーも、または、例えば金のような貴金属による、加熱要素のガルバニック被覆部(galvanische Beschichtung)も、考慮の対象となる。
【0012】
有利には、例えば、加熱要素と電気的な導体路とを異なる材料から製造可能とするために、担持体は、金属層を備えており、この金属層が、ポリマーフィルムと、金属フィルムの反対側に位置する側面の上で接触している。金属層は、この金属層の成分の遊離を防止するために、有利には、不動態化被覆部を備えている。
【0013】
有利には、例えば統合された制御/調節装置のような、電子式の構成要素を結合可能とするために、担持体は、電子式の構造部材の電気的な接触のための、少なくとも1つの接点を有している。接点が、例えば、はんだ接点として、または、差込み接点として構成されていることは可能である。有利には、接点は、担持体の複数の層もしくはフィルムを通って延びている。
例えば、接点が、基本的にポリマーフィルムによって機械的に保持されていることは可能であり、しかしながら、担持体の導電性の層と、これら接点に/これら接点内において附設された電気的/電子式の構成要素との間の電気的な結合を保証するために、金属フィルム、および、有利には金属層と接触していることは可能である。
【0014】
有利には、構造的、機械的、および、電気的な所与の要件を顧慮するため、および、蒸発装置の可撓的、および、多面的な構成を可能とするために、担持体は、異なる厚さの領域を有している。
【0015】
有利には、担持体を多数の吸入器内へと組込み可能とするために、担持体は、異なる曲げ強度の領域を有している。有利には、担持体は、リジッドフレキシブル基板(Starr-Flex-Substrat)として構成されており、このリジッドフレキシブル基板が、互いに電気的及び/または機械的に結合されている、可撓的な、且つ、剛性の領域を有している。
他の実施形態において、フィルムベースの担持体は、全面的に剛性かまたは可撓的である。
【0016】
有利な実施形態において、液体タンク、または、場合によっては多数の交換可能な液体タンクへの、蒸発装置の直接的な結合を可能とするために、担持体は、液体タンクとの規格化された結合のための液体接続部を有しており、この液体接続部が、第1の開口部及び/または第2の開口部と連絡している。
有利には、液体タンクから蒸発器への液体の、及び/または、この蒸発器から空気流内への蒸発された液体の、移送を可能とするために、担持体は、液体接続部から蒸発器への液体の移送のための少なくとも1つの貫通開口部を有している。貫通開口部は、有利には、第1の開口部および第2の開口部によって形成されている。
【0017】
有利な実施形態において、蒸発装置を安いコストで吸入器内へと統合可能とするために、担持体の稜部において、電気的な差込みコネクタ部が形成されており、この電気的な差込みコネクタ部が、吸入器の基礎部材の相応する差込みコネクタ部との可逆的な協働作用のため、および、電気的なエネルギーの蒸発装置への供給のため、及び/または、蒸発装置のための制御信号の受信のために設備されている。
【0018】
有利な実施形態において、例えば統合された制御/調節装置のような、電子式の構成要素を収容可能とするために、蒸発装置の制御及び/または調節のための電子式の制御装置は、担持体の上で保持されている。
【0019】
本発明は、更に、吸入器のための蒸発ユニットに関し、この蒸発ユニットが、蒸発装置、および、蒸発器への液体の搬送のための毛細管要素を備えている。
【0020】
有利な実施形態において、例えば液体タンクから蒸発器への、液体の信頼性の高い、且つ、整向状態に依存しない搬送を可能とするために、毛細管要素は、少なくとも部分的に、第1の開口部及び/または第2の開口部を通って延びている。
【0021】
本発明は、更に、吸入器のためのカートリッジに関し、本発明に従う蒸発装置を、規格化された1つの構造部材内へと統合可能とするために、このカートリッジが、少なくとも、蒸発装置と液体タンクとを備えている。有利には、蒸発器への液体移送を保証するために、担持体もしくはこの担持体の第1の開口部および第2の開口部は、液体タンクと連絡している。
更に有利には、直接的な接触を形成するために、例えば担持体の上の蒸発装置は、液体タンクに付着されている。有利には、この接触は、液体搬送のための液体接続部及び/または毛細管要素によって仲介される。
【0022】
更に、本発明は、本発明に従う蒸発装置を製造するための方法に関し、この蒸発装置が以下のステップ:即ち、
-ポリマーフィルムと金属フィルムとが、平面状に互いに結合され、
-第1の開口部、導体路、及び/または、加熱要素を形成するために、金属フィルムが、構造付与(strukturiert)され、および、
-第2の開口部を形成するために、ポリマーフィルムが、構造付与される、
ステップによって形成される。
上述の製造ステップは、適宜の順序で実施され得る。特に、既に構造付与されたフィルムは、平面状に互いに付着され得る。
【0023】
有利には、金属層は、金属フィルムの反対側に位置する、ポリマーフィルムの側面の上で、ポリマーフィルムと結合される。有利な実施形態において、金属フィルム及び/または金属層は、不動態化被覆部を装備される。
【0024】
本発明を、以下で有利な実施形態に基づいて、添付された図に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の1つの実施形態における、電子式のシガレットの構成要素の概略図である。
図2】本発明の実施形態における、層構造における、担持体の概略図である。
図3】本発明の実施形態における、層構造における、担持体の概略図である。
図4】本発明の1つの実施形態における、接点を有する層構造における担持体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1内において示された吸入器27は、カートリッジ19内における1つまたは複数の液体タンク6からの1つまたは複数の液体の蒸発のための蒸発装置1と、有利には再利用可能な基礎部材20とを備えている。
【0027】
蒸発装置1は、有利には、フィルムベースの担持体2を備えており、この担持体が、液体タンク6と結合されており、または、結合可能である。蒸発装置1は、1つの蒸発器3、または、複数の蒸発器3を有しており、前記蒸発器3が、液体タンク6から、この、または、これら蒸発器3に供給された液体の蒸発に利用される。図1による実施形態において、蒸発器3は、例えばマトリックス形状において、ここで、例えば4つの蒸発器3が2×2マトリックス形状において配設されている。
【0028】
蒸発器3に供給された液体は、蒸発器3によって、蒸気/エアロゾルに変換される。
特に電気的な蒸発器3は、少なくとも1つの、有利には、複数の、電気的な抵抗-加熱要素15を有している(図3および4を参照)。
【0029】
蒸発装置1は、有利には、1つの液体タンク6を有する1つの構造的なユニットにおいて、交換可能なカートリッジ19として構成されている。それぞれのカートリッジ19は、有利には、1つのカートリッジケーシングを有しており、このカートリッジケーシングが、少なくとも部分的に液体タンク6によって、及び/または、少なくとも部分的に蒸発装置1によって形成されていることは可能である。この少なくとも1つの液体タンク6は、再補充可能であり、従って、カートリッジ19は、再利用可能な複数回使用部材である。カートリッジ19が、選択的に使い捨て部材として構成されていることは可能である。
【0030】
蒸発装置1、もしくは、それぞれのカートリッジは、合目的に、蒸気流出開口部を有しており、この蒸気流出開口部を通って、生成された蒸気及び/またはエアロゾルがこの蒸発装置1から流出し、且つ、吸入器27からの流出の後に吸込み開口部を通って消費者によって吸入されるために、この吸入器27を通って流動する空気流に混ぜ合わされ得る。
【0031】
蒸発装置1は、有利には、デジタル電子式の制御装置4を、有利には担持体2の上に配設されていることが可能である、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を備えている。蒸発装置1の、この、または、これら蒸発器3は、相応する電子式の制御装置4によって、個々に、または、グループにおいて制御され得、且つ、加熱要素15に隣接する液体を蒸発させるために、エネルギー貯蔵部46からの電流によって加熱され得る。
【0032】
蒸発装置1、もしくは、カートリッジ19は、ここで複数の電気的な接点10を有する電気的な差込み部の様式における、電気的な接点要素7を有している。これら接点10は、センサー信号、制御信号、及び/または、電気的なエネルギーを、吸入器27の基礎部材20に伝達するために、電気的な導線を用いて電子式の制御装置4と結合されている。蒸発装置1が、センサー、例えば、加熱温度の測定のための温度センサー、及び/または、流動圧力の測定のための圧力センサーを有していることは可能である。
【0033】
基礎部材20は、制御ユニット29と、この制御ユニット29と結合された、または、結合されるべきエネルギー貯蔵部ユニット40とを備えている。制御ユニット29は、電子式の制御装置21と、この電子式の制御装置と結合された、ここで差込み部7に対して適合している差込みソケットの様式における、接点要素22とを備えている。この制御ユニット29は、有利には、更に、利用者インターフェース32、特に無線インターフェース、例えばブルートゥースインターフェースを備えており、この利用者インターフェースを介して、利用者は、吸入器27を、モバイル通信機器、例えばスマートフォンを用いて制御または調節可能であり、及び/または、このスマートフォンからの情報を受信可能である。
電子式の制御装置21と接点要素22とは、有利には、共通のプリント基板26の上に配設されている。電子式の制御装置4と電子式の制御装置21とから成る全体は、この出願の範囲内において、吸入器27の電子式の制御装置56と称される。
【0034】
電気的な差込み部7と電気的な差込みソケット22とは、互いに相応して設備されており、従って、この差込みソケット22内への差込み部7の差し込みによって、信号、データ、及び/または、電力を伝達するための、蒸発装置1と基礎部材20との間の電気的な結合が形成される。蒸発装置1内において、差込み部7からの供給電流と信号とは、少なくとも1つの蒸発器3、及び/または、センサーに転送される。有利には、差込み部7と差込みソケット22とは、それぞれに、同じ数の電気的な接点10を有している。
【0035】
基礎部材20との、蒸発装置1の結合のために、多くの実施形態において、カートリッジ19が、基礎部材20の長手軸線に対して平行にこの基礎部材内へと挿入され、このことによって、差込み部7が差込みソケット22内へと挿入され、且つ、電気的な結合が形成される。
【0036】
有利には、個々のカートリッジ19の個々の交換を可能とするために、基礎部材20もしくは制御ユニット29は、カートリッジ19の数に相応する数の電気的な接点要素22、ここで差込みソケットを有している。
【0037】
蒸発装置1の電子式の制御装置4内において、有利には、この蒸発装置1の識別記号もしくはID(識別情報)が、永続的に記憶されている。基礎部材20とのカートリッジ19の結合の結果として、電子式の制御装置21は、制御装置4からの識別記号を読み取り可能であり、且つ、タイプ精確な、且つ、それぞれの液体に関して最適な、個々の蒸発器3及び/または蒸発装置1の制御を、例えば制御装置4に対する制御及び/または調節命令の伝達によって、実施または誘起する。
基礎部材20の電子式の制御装置21内において、この目的のために、有利には、複数の、異なる、蒸発器3、もしくは、蒸発器タイプ、及び/または、液体に相応する、複数の識別記号のための制御データが、例えばデータベースの様式において記憶されている。
【0038】
エネルギー貯蔵部ユニット40は、エネルギー貯蔵部46と、電気的な導線31を介しての、このエネルギー貯蔵部ユニット40との制御ユニット29の結合のためのバッテリーインターフェース41と、充電インターフェース42と、充電電子機器を有する電子式の回路とを備えている。
制御ユニット29は、バッテリーインターフェース41を介して、電流を供給される。更に、このバッテリーインターフェース41を介して、アナログ的及び/またはデジタル的な信号が、エネルギー貯蔵部ユニット40と制御ユニット29との間で伝達され得る。有利な実施形態において、電気的な導線31は、デジタル的なデータバスを備えている。基礎部材20とエネルギー貯蔵部ユニット40との間の電気的な結合部31を介して、例えば、エネルギー貯蔵部46の充電状態に関する情報が、または、制御ユニット29とエネルギー貯蔵部ユニット40との間の診断データが伝送可能である。
エネルギー貯蔵部46は、使い捨てバッテリー、または、再充電可能な蓄電池、例えばリチウムイオン電池であることは可能であり、この蓄電池が、充電インターフェース42、例えばUSBインターフェースを介して、または、無線的に、誘導的な充電インターフェースを介して、充電され得る。
【0039】
この、または、それぞれの液体タンク6は、それぞれに、1つの液体リザーバ37A、37B、または、複数の液体リザーバ37A、37Bを形成する。特に、複数のリザーバ37A、37B、...の形成のための、1つの多チャンバータンク6が設けられていることは可能である。
例示的に、図1内において、1つのカートリッジ19は、2つのリザーバ37A、37Bの形成のための、1つの2チャンバータンク6を有して設けられている。もちろん、液体タンク6が、同様に2つよりも多くのリザーバ37A、37Bを形成することも可能である。図1に従う実施形態において、例示的に、それぞれに、2つの蒸発器3が、1つのリザーバ37A、37Bに所属して設けられている。もちろん、1つのリザーバ37A、37Bに、ただ1つの蒸発器3、または、2つよりも多くの蒸発器3が所属して設けられていることは可能である。
【0040】
1チャンバータンクと多チャンバータンクとの間の混合様式は可能であり、例えば、1つの2チャンバータンクと1つの1チャンバータンクとが設けられていることは可能である。
【0041】
液体を、液体タンク6の相応する開口部から、この、または、これら蒸発器へと移送し、且つ、そこで蒸発させるために、それぞれのリザーバ37A、37Bは、所属して設けられた液体供給部16を介して、1つまたは複数の蒸発器3と結合されている。液体供給部16は、例えば、貫通開口部38を、担持体2と液体タンク6との間の、中間部分内において備えている(図3および4を参照)。
【0042】
それぞれの蒸発器3と所属して設けられた液体リザーバ37A、37B、...との間、即ち、液体供給部16内において、有利には、毛細管要素12が設けられており、蒸発器3の湿潤、および、液体の連続的な追加搬送の保障ために、この毛細管要素は、液体を、毛細管現象を用いて、例えば微細管路を使って、液体タンク6から蒸発器3へと搬送する。
毛細管要素12は、例えば、最適化された細孔サイズを有する細孔要素、開口多孔性の発泡された要素、スポンジ要素、及び/または、積層構造を備えている。蒸発装置1と毛細管要素12とは、蒸発ユニット90によって構成(umfasst)されている。
【0043】
液体リザーバ37A、37B、...内における1つまたは複数の液体は、有利には、1,2-プロピレングリコール、グリセリン、水のグループから成る1つまたは複数の成分、少なくとも1つの作用物質、特にニコチン、及び/または、少なくとも1つの芳香物質(芳香料)を、同じ及び/または異なる混合比率において備えている。
【0044】
蒸発装置1は、有利には、この蒸発装置1に対する、特にこの蒸発装置の担持体2に対する液体タンク6の結合のための、規格化された液体接続部47を有している。この液体接続部47は、有利には、蒸発器3に対して反対の、または、この蒸発器の方に向けられた担持体2の側面において配設されている。この液体接続部47に、この、または、これら液体リザーバ37A、37Bからの液体が提供され、且つ、有利な貫通開口部を介して、担持体2を通って、この、または、これら蒸発器3へと導かれる。液体接続部47が、例えば、密閉要素を用いて密閉されていることは可能である。
タンク6が、消費者のために、解離可能または解離不能に蒸発装置1と結合されていることは可能である。担持体の厚さ及び/または剛性は、有利には変化可能であり、且つ、例えば、加熱要素15の領域内において、薄く且つ可撓的であることは可能であり、これに対して、液体タンク6に対する結合部、及び/または、保持に利用されるこの担持体2の外側の縁部が、厚い及び/または硬いことは可能である。
【0045】
図2は、本発明に従う蒸発装置1の担持体2の1つの実施形態を示している。
担持体2は、フィルムベースであり、且つ、ポリマーフィルム201を有しており、このポリマーフィルムが、有利には、この担持体2に、この担持体の幾何学的形状を与える。例えば、ポリマーフィルム201が、そこで、機械的に補強され、この担持体2の他の領域内においてよりも厚く及び/または曲げに対して剛性であるというやり方で、担持体2の1つの稜部210において、差込み結合部7が形成されている。
担持体2は、更に、金属フィルム202を備えており、この金属フィルムが、導体路、および、接点10、211、212を、有利には同様に差込み部7の接点10をも形成する。蒸発器3は、液体の平面状の蒸発を許容する。分離可能な領域を有する、平面状の蒸発器の可能な実現化は、特許文献1内において記載されており、この文献の開示内容が、その限りでは、本願に取り入れられる。
【0046】
この実施形態において、担持体2は、蒸発器3と制御装置4とを有している。蒸発器3は、担持体内に統合されており、且つ、この蒸発器3の加熱要素15が、相応して構造付与された金属フィルム202によって形成されている。
制御装置4は、有利には、複数の接点211、212、例えばはんだ接点または差込み接点を用いて、蒸発装置1と、導体路を介して電気的に結合されている。導体路は、同様に、金属フィルム202、及び/または、有利な実施形態において金属層207内において存在し、この金属層が、同様に接点10をも形成可能である(図4を参照)。
【0047】
回路担持体2は、有利には、直接的に液体タンク6の上に付着され得、その際、この液体タンク6に対する流動的な結合が、直接的に、開口部38、204、205を介して、加熱要素15の下方で、または、これら加熱要素の間に附設された毛細管要素12を介して行われ得る。
毛細管現象による構造が、その際、有利には、例えばガラス繊維、化学的および熱的に安定的なポリマー繊維、またはこれに類する物から成る、一層あるいは多層状のフリースであることは可能である。担持体2は、有利には、液体タンク6の平面状の開口部の上に付着され得る。
【0048】
吸入器27における消費者の吸込みによって、この消費者は、この吸入器27を、空気流を意味する(impliziert)負圧に曝す。この空気流は、蒸発装置1、蒸発器3、もしくは、加熱要素15のかたわらを通り過ぎ、且つ、そこで、この蒸発器3によって生成されたエアロゾルもしくは蒸気を連行し、且つ、このエアロゾルもしくはこの蒸気を、消費者に供給する。
【0049】
図3は、基本的に、2つの層201、202と、同様に層としても理解され得る、不動態化被覆部206とを備える、1つの層構造を有する、本発明に従う蒸発装置1のための、担持体2の1つの実施形態を示している。図3aから3dまでは、種々の、可能な、しかしながら、必須ではない製造ステップの間じゅうの、断面図における担持体2を示しており;且つ、本発明に従う蒸発装置1のこの製造は、記載された方法とは異なる方法でも行われ得る。
【0050】
図3aは、互いに平面状に接触する、ポリマーフィルム201と金属フィルム202とを有する、担持体2を示している。
ポリマーフィルム201のフィルム基板のための出発材料として、ポリマーが利用され、このポリマーは、溶融可能ではなく且つ化学的に耐性である、例えばポリエステルフィルムまたはポリイミドである。金属フィルム202として、有利には、ポリマーフィルム201の上にラミネートされた銅フィルム202が使用され得る。
しかしながら、同様に、例えばニッケルのような他の金属も使用され得、且つ、例えばガルバニック析出(galvanische Abscheidung)、接着、及び/または、貼り合わせのような他の付着方法も使用され得る。担持体の層の結合は、同様に接着によっても行われ得る。
【0051】
図3b内において、図3aを出発点として、先ず第一に、1つの製造ステップが、金属フィルム202を加工および構造付与するために行われる。
有利には1つの製造ステップ内において、蒸発器3の加熱要素15と、制御装置4または差込み結合部7のような、更に別の電子式の構造部材のための接点10と、導体路とを生成するために、金属フィルム202は、有利には、フォトリソグラフィ、ウェットエッチング(Nassaetzen)によって、及び/または、更に別の方法を使って構造付与され得る。
他の製造ステップ内において、しかしながら、同様に、先ず第一に、ポリマーフィルム201が加工されることも可能である。
【0052】
金属フィルム202の構造付与によって、第2の開口部205が形成される。金属フィルム202内における第2の開口部205の形成は、それぞれに、第2の開口部205が、金属フィルム202の異なる領域によって区画されていることを意味する。第2の開口部205を区画する、金属フィルム202の異なる領域は、別個に、電気的な導体として利用され得、且つ、これに伴って、導体路および加熱要素15が形成され得る。
この実施例において、2つの、第2の開口部205によって、これら第2の開口部の間に位置する1つの加熱要素15が形成されている。他の実施形態において、第2の開口部205および加熱要素15の数は変化可能である(図4を参照)。
【0053】
ポリマーフィルム201の加工の結果は、図3c内において示されている。ポリマーフィルム201は、第1の開口部204を提供し、この第1の開口部204が、例えばプラズマエッチングを介して生成され得る。
第1の開口部204は、この第1の開口部が開口部205と連絡可能であるように、即ち、この第1の開口部204と同様に第2の開口部205も通過されるというやり方で、液体が担持体2を貫通可能であるように配設されている。第1の開口部204および第2の開口部205は、これに伴って、液体透過性の貫通開口部38を形成する。有利には担持体2の下方に配設されている液体タンク6から、蒸発器3もしくは加熱要素15への、液体の移送は、これに伴って、貫通開口部38を通って可能にされている。
加熱要素15とポリマーフィルム201との間の不必要な接触、並びに、貫通開口部38を通っての液体移送のための不必要な障害を回避するために、有利には、第1の開口部204は、第2の開口部205よりも大きい。
【0054】
有利には、最後のおよび選択的な1つの製造ステップの後、図3d内において示されているように、不動態化被覆部206は、加熱要素15の領域内における、金属フィルム202の金属表面の上に付着されている。不動態化被覆部206は、有利には、露出している、且つ、ポリマーフィルム201と接触しない、金属フィルム202の領域を取り囲むことの目的のために設備されている。
不動態化被覆部206から、有利には、制御装置4、差込み部7、接点10、211、212、および、導体路のような、電気的な構造部材の収容のために利用される、液体タンク6と反対側の領域が、除かれている。
有利には、金属フィルム202の全ての領域は、不動態化被覆部206を装備されており、この不動態化被覆部が、潜在的に、液体タンク6からの液体、及び/または、蒸気もしくはエアロゾルとの接触状態にあることは可能である。このことによって、不動態化被覆部206は、加熱要素15から剥離され得る、場合によっては所望されない物質の移送を防止する。
【0055】
フィルムベースの担持体2は、少なくとも、ポリマーフィルム201と金属フィルム202とによる層構造によって、少なくとも部分的に可撓的である。
ポリマーフィルム201及び/または金属フィルム202が、異なる厚さの異なる領域を有していることは可能である。このことは、異なる領域内における曲げ強度を異なって構成するために利用され得る。
担持体2に所定の形状を与えるために、特に、ポリマーフィルム201が、担持体2の縁部において、特に、硬い及び/または厚いことは有利であり得る。差込み結合部7を直接的に蒸発装置1に統合することを可能にするために、更に、担持体2の稜部210が、特に、硬く及び/または厚く形成されていることは可能である。更に、より硬い、及び/または、より厚く形成された、担持体2の領域は、接点211、212を提供することのために利用され得る。
【0056】
加熱要素15において蒸発させられる液体の提供は、有利には、液体接続部47及び/または毛細管要素12によって仲介される。液体接続部47及び/または毛細管要素12は、その際、担持体2を通って、即ち第1の開口部204および開口部205を通って、加熱要素15もしくは金属フィルム202及び/または不動態化被覆部206に至るまで延びていることは可能である。担持体2と共に毛細管要素12は、有利な実施形態において、液体タンク6の閉鎖部として利用され得る。
【0057】
有利には、蒸発装置1は、蒸発器3を、個々の、別個に制御される加熱要素15において、部分的に制御もしくは加熱することの目的のために設備されており、それによって、可能な限り高い蒸気品質もしくはエアロゾル品質が達成される。個々の、別個に制御される加熱要素15は、特許文献2内において記載されており、この文献の開示内容が、その限りでは、本願に取り入れられる。
【0058】
図4は、基本的に、3つの層201、202、207と、同様に層としても理解され得る、不動態化被覆部206とを備える、1つの層構造を有する、蒸発装置1の担持体2の更に別の実施形態を示している。
図4aから4eまでは、種々の、可能な、しかしながら、必須ではない製造ステップの間じゅうの、断面図における担持体2を示しており;且つ、本発明に従う蒸発装置のこの製造は、同様に、記載された方法とは異なる方法でも行われ得る。
【0059】
図4aは、ポリマーフィルム201、並びに、金属フィルム202、および、金属層207を備える、担持体2の3つの層201、202、207の提供を示している。
金属フィルム202は、金属層207の反対側に位置する、ポリマーフィルム201の側面の上に附設されている。金属フィルム202から分離された1つの金属層207の使用は、最適な機能の達成のために必要である可能性がある。何故ならば、例えば、加熱要素15、および、電気的な導体路、接点10、差込み結合部7、等々が、異なる材料から製造され得るからである。
この目的のために、この実施形態において示されているように、基本的に、3層状の構造は、考慮に値する。この実施形態において、ポリマーフィルム201が、例えば、打抜き、切断、レーザー切断、エッチング、及び/または、プラズマエッチングによって、既に、構造付与されている場合、有利であり得る。
この例示において、ポリマーフィルム201は、1つの第1の開口部204、並びに、接点211、212の収容のための更に別の開口部を有している。
【0060】
吸入器内への組込みによって要求される幾何学的形状を満たすために、担持体2が、異なる厚さ及び/または剛性の、異なる領域を有していることは、有利であり得る。
【0061】
構造付与されたポリマーフィルム201の上に、図4b内において示されているように、このポリマーフィルム201の一方の側で、良伝導性の金属、例えば銅から成る金属層207が、および、このポリマーフィルム201の他方の側で、例えばニッケル、ニッケル-鉄合金、またはこれに類する物から成る金属フィルム202が、付着、例えばラミネートされていることは可能である。
【0062】
図4cおよび4dは、金属フィルム202および金属層207の構造付与を示している。この例示において、先ず第一に、金属層207が、および、引き続いて、金属フィルム202が構造付与される。他の実施形態において、この製造ステップは、同様に交換、または、同時に実施され得る。
【0063】
金属層207は、この金属層が、有利には、接点211、212を収容する、及び/または、導体路及び/または接点10を形成することの目的のために設備されているように、ポリマーフィルム201と共に構造付与される。有利には、金属層207は、蒸発装置1の差込み結合部7の接点10を形成する。
【0064】
金属フィルム202の構造付与によって、この実施形態において、複数の第2の開口部205が形成される。第2の開口部205のそれぞれに隣接する対は、加熱要素15として利用され且つ別個に制御可能な、電気的な抵抗を形成する。
この実施形態において、5つの第2の開口部205が、4つの加熱要素15を形成する。加熱要素15と、縁部に位置する、ポリマーフィルム201の領域とは、これら第2の開口部205を区画する。第2の開口部205は、これら第2の開口部205が、第1の開口部204と液体透過性に連絡し、且つ、これに伴って、液体透過性の貫通開口部38が形成されるように、配設されている。
【0065】
有利には、最後のおよび選択的な1つの製造ステップにおいて、図4e内において示されているように、不動態化被覆部206は、加熱要素15の領域内における、金属フィルム202の金属表面の上に付着される。不動態化被覆部206は、有利には、露出している、且つ、ポリマーフィルム201とも金属層207とも接触しない金属フィルム202を、個々の、有利には、制御装置4、差込み部7、接点10、211、212、および、導体路のような、電気的な構造部材の収容のために利用される、液体タンク6と反対側の領域を除いて、取り囲むことの目的のために設備されている。
【0066】
有利には、金属フィルム202の全ての領域は、不動態化被覆部206を装備されており、この不動態化被覆部が、潜在的に、液体タンク6からの液体、及び/または、蒸気もしくはエアロゾルとの接触状態にあることは可能である。このことによって、不動態化被覆部206は、加熱要素15から剥離され得る、場合によっては所望されない物質の移送を防止する。
金属フィルム202と、例えば金属層207との間で、及び/または、接点211、212内において、例えばはんだ付け用すず合金によって保持された、例えば制御装置4のような、電子式の構造部材によって、電気的な結合を形成するために、有利には、金属フィルム202が構造付与された後、同様に接点211、212も貫通接触され得る。
【0067】
有利には、金属層207から剥離され得る、場合によっては所望されない物質の移送を防止するために、金属層207は、ここで図示されていない不動態化被覆部206を装備されている。金属層207の不動態化被覆部206の特性は、有利には、金属フィルム202の特性に相応している。有利には、接点211、212を有する金属層207は、回路担持体の形成のために利用される。
【0068】
示されていない他の実施形態において、開口部204、205の数は変化可能である。
【0069】
第2の開口部205の平均の直径もしくは稜部長さは、有利には5μmと1mmとの間の範囲内、更に有利には30μmと250μmとの間の範囲内、なお更に有利には50μmと100μmとの間の範囲内にある。これら寸法を基礎として、有利には、毛細管現象が生成され、従って、有利には、液体接続部47において侵入する液体が、毛細管要素12を通って、蒸発器3に至るまで、上方へと上昇する。
第2の開口部205の加熱要素15に対する面積比率は、例えば10%と50%との間の範囲内、有利には15%と40%との間の範囲内、なお更に有利には20%と30%との間の範囲内にあり、且つ、例えば、25%の値である。
【0070】
加熱要素15を装備された、蒸発装置1の表面の稜部長さは、例えば0.5mmと3mmとの間の範囲内にある。加熱要素15を装備された、蒸発装置1の表面の寸法は、例えば0.95mm×1.75mm;1.9mm×1.75mm、または、1.9mm×0.75mmの値であり得る。
蒸発装置1もしくは担持体2の稜部長さが、例えば0.5mmと5mmとの間の範囲内、有利には0.75mmと4mmとの間の範囲内、更に有利には1mmと3mmとの間の範囲内にあることは可能である。蒸発装置1もしくは担持体2の面積(チップサイズ)が、例えば1mm×3mm、または、2mm×3mmの値であることは可能である。
【0071】
第2の開口部205もしくは加熱要素15の数は、有利には、4と1000との間の範囲内にある。このようにして、熱入力は最適化可能であり、且つ、保護された高い蒸発出力、並びに、十分に大きな蒸気流出面積が実現可能である。
【0072】
第2の開口部205は、有利には、正方形、矩形、多角形、円形、長円形、または、他の形に成形されたアレイの形状において配設されている。このアレイは、s間隙およびz行を有するマトリックスの形状において形成されていることは可能であり、その際、sが、有利には2と50との間の範囲内、および、更に有利には3と30との間の範囲内にあり、及び/または、zが、有利には2と50との間の範囲内、および、更に有利には3と30との間の範囲内にある。
このようにして、効果的および簡単な方法で製造可能な、第2の開口部205もしくは加熱要素15の配設が、保護された高い蒸発出力と共に実現され得る。
【0073】
金属フィルム202は、同様に、第2の開口部205によって与えられた加熱要素15の形状、または、これら第2の開口部205の形状が、生物学的な構造に準拠するように構造付与されていることも可能である。
【0074】
第2の開口部205の断面は、正方形、矩形、多角形、円形、長円形、または、他の形に成形されていることは可能であり、及び/または、長手方向において、部分毎に変化する、特に、拡大され、縮小され、または一定のままであることは可能である。
【0075】
複数の加熱要素15は、有利には、異なって制御もしくは加熱され得る。その際、液体の個々の割当量の個々の成分の、異なる温度及び/または蒸発における個々の蒸発ステップの継続時間は、歩進的な蒸発が消費者により知覚されなく、且つ、それにも拘らず、十分に均一の味覚に適合した反復可能に正確なエアロゾル形成が保証され得るように、短く保持され得、及び/または、1つの制御周波数によって周期的に行われ得る。
特に、先ず第一に、より容易に沸騰する液体の成分の蒸発が、第1の蒸発インターバル内において、第1の温度Aによって、および、引き続いて、より高い温度で沸騰する液体の成分の蒸発が、第2の蒸発インターバル内において、この温度Aを超過する第2の温度Bによって行われる。
【0076】
以下で、蒸発工程の経過を説明する。
【0077】
液体の蒸発のために、加熱要素15のための電圧供給源が作動状態にされる。この電圧Uhは、その際、加熱要素15内における蒸発温度が、使用される液体混合物の個々の蒸発特性に対して適合されているように調節される。このことは、局部的な過熱の危険、および、このことによる有害物質発生を防止する。
【0078】
蒸発器3の表面に存在する液体の容積に相応する、または、これと関連している、液体量が蒸発されるやいなや、加熱電圧供給源は、非作動状態にされる。液体特性および液体量が、有利には、正確に周知されており、且つ、加熱要素15が、測定可能な、温度に依存する抵抗を有しているので、この時点は、極めて精確に算定もしくは制御され得る。
蒸発装置1のエネルギー吸収(Energieaufnahme)は、従って、周知の装置に比して低減され得る。何故ならば、必要とされる蒸発エネルギーが配量され、且つ、これに伴って、より正確に収納され得るからである。
【0079】
加熱工程の終了の後、加熱要素15は、大部分または完全に、流動的な液体を取り除かれている。加熱電圧は、その場合に、例えば毛細管要素12を通っての液体の追加搬送によって加熱要素15の表面が再び湿潤されるまでの間ずっと、スイッチを切られた状態で保持される。このことが、そのような状況になるやいなや、その次の加熱サイクルが、加熱電圧のスイッチオンによって開始され得る。
【0080】
加熱電圧供給源によって生成され、且つ、制御装置4によって制御された、蒸発器3の制御周波数は、有利には、1Hzから50kHzまでの範囲内、有利には30Hzから30kHzまでの範囲内、なお更に有利には100Hzから25kHzまでの範囲内にある。
高い、および、不変の蒸気品質及び/またはエアロゾル品質を達成するために、異なる加熱要素15は、異なる、同じ、時系列的に変化する、または、時系列的に一定の制御周波数によって加熱され得る。
【0081】
加熱要素15のための、加熱電圧Uhの周波数およびデューティサイクルは、有利には、気泡振動の固有振動数もしくは固有周波数に対して、気泡沸騰の間じゅう、適合されている。
有利には、加熱電圧の周期時間1/fは、従って、5msと50msとの間の範囲内、更に有利には10msと40msとの間の範囲内、なお更に有利には15msと30msとの間の範囲内にあり、且つ、例えば20msの値である。
それぞれの蒸発された液体の組成に応じて、上述された周波数とは異なる周波数が、最適に、気泡振動の固有振動数もしくは固有周波数に対して適合されていることは可能である。
【0082】
更に、過熱の回避における集中的な蒸気を保証するために、加熱電圧Uhによって生成される最大の加熱電流が、有利には、7A以下、更に有利には6.5A以下、なお更に有利には6A以下の値であり、且つ、最適には、4Aと6Aとの間の範囲内にあるべきである、ということは判明した。
【0083】
毛細管要素12の搬送率は、他方また、最適に、蒸発器3もしくは加熱要素15の蒸発率に対して適合されており、従って、いつでも、十分な液体が追加搬送され得る。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. 特に電子式のシガレット製品のための、吸入器(27)用の蒸発装置(1)であって、この蒸発装置が、
-その蒸発器(3)に供給された液体の蒸発のための1つまたは複数の加熱要素(15)を有する、電気的な該蒸発器(3)を備えている様式の上記蒸発装置において、
-担持体(2)が、ポリマーフィルム(201)、および、前記ポリマーフィルム(201)と平面状に接触する少なくとも1つの金属フィルム(202)を有する層システムから形成されており、
-前記ポリマーフィルム(201)が、液体透過性の少なくとも1つの第1の開口部(204)を有しており、
-前記金属フィルム(202)が、前記第1の開口部(204)と連絡する、液体透過性の少なくとも1つの第2の開口部(205)を有しており、
-前記金属フィルム(202)が前記加熱要素(15)を形成し、これら加熱要素(15)が、前記第2の開口部(205)を区画する状態で配設されている、
ことを特徴とする装置。
2. -前記金属フィルム(202)は、少なくとも、前記ポリマーフィルム(201)と接触していない部分、及び/または、前記加熱要素(15)において、不動態化被覆部(206)を有している、
ことを特徴とする上記1に記載の蒸発装置。
3. -前記担持体(2)は、金属層(207)を備えており、および、この金属層(207)が、前記ポリマーフィルム(201)と、前記金属フィルム(202)の反対側に位置する側面の上で接触している、
ことを特徴とする上記1または2に記載の蒸発装置。
4. -前記担持体(2)は、電子式の構造部材(4、56)の電気的な接触のための、少なくとも1つの接点(211、212)を有している、
ことを特徴とする上記1から3のいずれか一つに記載の蒸発装置。
5. -前記担持体(2)は、異なる厚さ及び/または曲げ強度の領域を有している、
ことを特徴とする上記1から4のいずれか一つに記載の蒸発装置。
6. -前記担持体(2)は、液体タンク(6)との規格化された結合のための、液体接続部(47)を有しており、この液体接続部(47)が、前記第1の開口部(204)及び/または前記第2の開口部(205)と連絡している、
ことを特徴とする上記1から5のいずれか一つに記載の蒸発装置。
7. -前記担持体(2)の稜部(210)において、電気的な差込みコネクタ部(7)が形成されており、
この電気的な差込みコネクタ部が、前記吸入器(27)の基礎部材(20)の相応する差込みコネクタ部(22)との可逆的な協働作用のため、および、電気的なエネルギーの前記蒸発装置(1)への供給のため、及び/または、前記蒸発装置(1)のための制御信号の受信のために設備されている、
ことを特徴とする上記1から6のいずれか一つに記載の蒸発装置。
8. -前記蒸発装置(1)の制御及び/または調節のための電子式の制御装置(4)は、前記担持体(2)の上で保持されている、
ことを特徴とする上記1から7のいずれか一つに記載の蒸発装置。
9. 吸入器(27)のための蒸発ユニット(90)であって、この蒸発ユニットが、
-上記1から8のいずれか一つによる蒸発装置(1)、および、
-前記蒸発器(3)への液体の搬送のための毛細管要素(12)、
を備えていることを特徴とする蒸発ユニット。
10. -前記毛細管要素(12)は、少なくとも部分的に、前記担持体(2)内における前記第1の開口部(204)及び/または前記第2の開口部(205)を通って延びている、ことを特徴とする上記9に記載の蒸発ユニット。
11. 吸入器(27)のためのカートリッジ(19)であって、このカートリッジが、
-上記1から8のいずれか一つによる少なくとも1つの蒸発装置(1)、または、上記9または10による少なくとも1つの蒸発ユニット(90)、および、
-1つの液体タンク(6)、
を備えていることを特徴とするカートリッジ。
12. 吸入器(27)であって、この吸入器が、
上記1から8のいずれか一つによる少なくとも1つの蒸発装置(1)、上記9または10による少なくとも1つの蒸発ユニット(90)、または、上記11による少なくとも1つのカートリッジ(19)、および、
これと連絡する1つの基礎部材(20)を備えていることを特徴とする吸入器。
13. 上記1から8のいずれか一つによる蒸発装置(1)を製造するための方法において、前記担持体(2)が以下のステップ:即ち、
-前記ポリマーフィルム(201)と前記金属フィルム(202)とが、平面状に互いに結合され、
-前記第1の開口部(204)、導体路、及び/または、加熱要素(15)を形成するために、前記金属フィルム(202)が、構造付与され、
-前記第2の開口部(205)を形成するために、前記ポリマーフィルム(201)が、構造付与される、
ステップによって形成されることを特徴とする方法。
14. -前記金属フィルム(202)は、不動態化被覆部(206)を装備される、
ことを特徴とする上記13に記載の方法。
15. -金属層(207)は、前記金属フィルム(202)の反対側に位置する、前記ポリマーフィルム(201)の側面の上で、前記ポリマーフィルム(201)と結合される、
ことを特徴とする上記13または14に記載の方法。
16. -前記金属層(207)は、不動態化被覆部(206)を装備される、
ことを特徴とする上記15に記載の方法。
【符号の説明】
【0084】
1 蒸発装置
2 担持体、回路担持体
3 蒸発器
4 電子式の構造部材、制御装置
6 液体タンク、多チャンバータンク、タンク、2チャンバータンク
7 電気的な差込みコネクタ部、差込み結合部、差込み部、接点要素
10 接点
12 毛細管要素
15 加熱要素、電気的な抵抗-加熱要素
16 液体供給部
19 カートリッジ
20 基礎部材
21 電子式の制御装置
22 差込みコネクタ部、接点要素、差込みソケット
26 プリント基板
27 吸入器
29 制御ユニット
31 電気的な導線
32 利用者インターフェース
37A 液体リザーバ、リザーバ
37B 液体リザーバ、リザーバ
38 貫通開口部
41 バッテリーインターフェース
42 充電インターフェース
46 エネルギー貯蔵部
56 電子式の構造部材、制御装置
201 ポリマーフィルム、層
202 金属フィルム、銅フィルム
204 開口部
205 開口部
206 不動態化被覆部、被覆部
207 金属層
210 稜部
211 接点
212 接点
図1
図2
図3
図4