(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20230426BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230426BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230426BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20230426BHJP
B60L 50/50 20190101ALI20230426BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
H01M8/04537
H01M8/10 101
B60L50/50
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2018239389
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博之
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033834(JP,A)
【文献】特開2016-096642(JP,A)
【文献】特開2013-093941(JP,A)
【文献】特開2014-056771(JP,A)
【文献】特開2018-063803(JP,A)
【文献】特開2018-073722(JP,A)
【文献】特開2013-183619(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04858
H01M 8/00
H01M 8/04537
H01M 8/10
B60L 50/50
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムを搭載する移動体であって、
前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池に電気的に接続される蓄電手段と、
前記蓄電手段の充電率を検出する充電率検出手段と、
前記充電率検出手段が検出する前記蓄電手段の充電率に基づいて前記燃料電池の出力状態を多段階に切り換えて制御可能な制御手段と、
移動体に搭載されて前記燃料電池又は前記蓄電手段の電力により移動体を駆動する内部負荷と、
前記内部負荷に電力を供給するための内部給電手段と、
移動体外に設けられる外部負荷に電力を供給するための外部給電手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記外部負荷に電力を供給する場合、前記内部負荷に電力を供給する場合よりも少ない段階の制御条件を適用して前記燃料電池の出力状態を制御し、
前記燃料電池の出力状態を、前記内部負荷に電力を供給する出力において発電停止を除く最低出力の発電量よりも低い、発電停止状態を除く出力の発電量に設定して制御し、
発電停止状態から前記外部負荷に電力を供給する状態へ切り換える前記充電率の閾値を、前記発電停止状態から前記内部負荷に電力を供給する状態へ切り換える前記充電率の閾値より低く設定する、
移動体。
【請求項2】
燃料電池システムを搭載する移動体であって、
前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池に電気的に接続される蓄電手段と、
前記蓄電手段の充電率を検出する充電率検出手段と、
前記充電率検出手段が検出する前記蓄電手段の充電率に基づいて前記燃料電池の出力状態を多段階に切り換えて制御可能な制御手段と、
移動体に搭載されて前記燃料電池又は前記蓄電手段の電力により移動体を駆動する内部負荷と、
前記内部負荷に電力を供給するための内部給電手段と、
移動体外に設けられる外部負荷に電力を供給するための外部給電手段と、
前記外部負荷によって消費される電力量を検出する電力量検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記外部負荷に電力を供給する場合
、
前記内部負荷に電力を供給する場合よりも少ない段階の制御条件を適用して前記燃料電池の出力状態を制御し、前記電力量検出手段が検出する前記電力量に基づいて前記燃料電池の出力状態を制御
し、
前記充電率検出手段が検出する前記蓄電手段の充電率に基づいて前記燃料電池の出力状態を制御し、かつ、発電停止状態から前記外部負荷に電力を供給する状態へ切り換える充電率の閾値を、発電停止状態から前記内部負荷に電力を供給する状態へ切り換える前記充電率の閾値よりも低い状態とする
移動体。
【請求項3】
前記制御手段は、前記内部負荷に電力を供給する場合、前記燃料電池の出力状態を発電停止状態を含む3段階以上に切り換えて制御し、前記外部負荷に電力を供給する場合、前記燃料電池の出力状態を発電停止状態および所定の出力状態のみの2段階に切り換えて制御する
請求項1または2に記載の移動体。
【請求項4】
前記所定の出力状態は、前記内部負荷に電力を供給する出力において発電停止を除く最低出力の発電量よりも低い出力の発電量で設定される
請求項3に記載の移動体。
【請求項5】
前記所定の出力状態は、前記燃料電池
の最高発電効率の0.8倍以上の発電効率となる発電量が得られる条件の出力状態である
請求項3に記載の移動体。
【請求項6】
前記外部負荷によって消費される電力量を検出する電力量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記外部負荷に電力を供給する場合、前記電力量検出手段が検出する前記電力量に基づいて前記燃料電池の出力状態を制御する
請求項1に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムを搭載する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにおいては、燃料電池に水素と酸素が供給され、これら水素と酸素が燃料電池内で化学反応を起こすことにより、電気エネルギーが生成される。近年では、荷役装置を有する産業車両などの移動体に燃料電池システムを搭載する技術が実用化されている。
【0003】
特許文献1には、移動体に搭載される燃料電池システムに関して、蓄電装置の充電率を検出し、検出した充電率に基づいて、燃料電池の出力状態を多段階に切り換えて制御する技術が記載されている。
【0004】
移動体に搭載される燃料電池システムは、移動体を駆動する走行モータなどの内部負荷に電力を供給するものであるが、それ以外にも、たとえば災害などの非常時に電源として活用できるよう、外部給電機能を備えるものがある。外部給電機能を備える燃料電池システムは、一般に、AC100Vの商用電源用コンセントを装備し、このコンセントに外部負荷の電源プラグを差し込むことにより、非常用の電源として使用可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォークリフトなどの移動体では、たとえば、重量物を持った状態での加速時や待機中のアイドリングの時など内部負荷によって消費される電力が大きく変動する。このため、燃料電池システムを搭載する移動体では、そのような消費電力の変動をあらかじめ考慮して燃料電池の制御条件を設定し、設定した制御条件に基づいて燃料電池の出力状態を制御している。その一方で、外部給電の対象となる外部負荷は、内部負荷に比べて消費電力の変動が格段に小さくなる。
【0007】
しかしながら従来の燃料電池システムでは、内部負荷に電力を供給する場合と、外部負荷に電力を供給する場合のいずれにおいても、同じ制御条件を適用して燃料電池の出力状態を制御している。具体的には、内部負荷における消費電力の変動を考慮した制御条件を外部給電時にもそのまま適用している。このため、外部給電時には燃料電池が必ずしも効率良く発電しているとは言えなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、外部給電時における燃料電池の発電効率を従来よりも高めることができる移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料電池システムを搭載する移動体であって、前記燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池に電気的に接続される蓄電手段と、前記蓄電手段の充電率を検出する充電率検出手段と、前記充電率検出手段が検出する前記蓄電手段の充電率に基づいて前記燃料電池の出力状態を多段階に切り換えて制御可能な制御手段と、移動体に搭載されて前記燃料電池又は前記蓄電手段の電力により移動体を駆動する内部負荷と、前記内部負荷に電力を供給するための内部給電手段と、移動体外に設けられる外部負荷に電力を供給するための外部給電手段と、を備え、前記制御手段は、前記外部負荷に電力を供給する場合は、前記内部負荷に電力を供給する場合よりも少ない段階の制御条件を適用して前記燃料電池の出力状態を制御する。
【0010】
本発明の移動体において、前記制御手段は、前記内部負荷に電力を供給する場合は、前記燃料電池の出力状態を発電停止状態を含む3段階以上に切り換えて制御し、前記外部負荷に電力を供給する場合は、前記燃料電池の出力状態を発電停止状態および所定の出力状態のみの2段階に切り換えて制御してもよい。
【0011】
本発明の移動体において、前記制御手段は、前記外部負荷に電力を供給する場合、前記充電率検出手段が検出する前記蓄電手段の充電率に基づいて前記燃料電池の出力状態を制御し、かつ、発電停止状態から前記外部負荷に電力を供給する状態へ切り換える充電率の閾値を、発電停止状態から前記内部負荷に電力を供給する状態へ切り換える前記充電率の閾値よりも低い状態としてもよい。
【0012】
本発明の移動体において、前記所定の出力状態は、前記内部負荷に電力を供給する出力において発電停止を除く最低出力の発電量よりも低い出力の発電量で設定されてもよい。
【0013】
本発明の移動体において、前記所定の出力状態は、前記燃料電池の最高発電効率の0.8倍以上の発電効率となる発電量が得られる条件の出力状態としてもよい。
【0014】
本発明の移動体は、前記外部負荷によって消費される電力量を検出する電力量検出手段を備え、前記制御手段は、前記外部負荷に電力を供給する場合は、前記電力量検出手段が検出する前記電力量に基づいて前記燃料電池の出力状態を制御してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部給電時における燃料電池の発電効率を従来よりも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムを含む移動体の構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】通常給電モードにおける電力の供給経路を示す概念図である。
【
図3】通常給電モードで内部負荷に電力を供給する場合の制御処理の一例を示す模式図である。
【
図4】外部給電モードにおける電力の供給経路を示す概念図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における外部給電モードでのFC制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1実施形態における燃料電池の出力制御を示す模式図である。
【
図7】外部給電モードにおける蓄電装置の充電率の変化を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態における外部給電モードでのFC制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
<移動体の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムを含む移動体の構成例を模式的に示すブロック図である。本発明の第1実施形態においては、燃料電池システムが搭載される移動体として、フォークリフトを例に挙げて説明する。
【0019】
図1において、燃料電池システム100は、燃料電池1と、水素タンク2と、コンプレッサ3と、を備えている。燃料電池1は、図示しない複数の発電セルを積層したFCスタック(fuel cell stack)によって構成されている。各々の発電セルは、たとえば、固体高分子電解質をアノード極とカソード極とによって挟み込んで形成される。水素タンク2は、燃料電池1に対して、発電のための燃料ガスとなる水素を供給する。コンプレッサ3は、燃料電池1に対して、酸化剤ガスとなる酸素を含む空気を供給する。燃料電池1と水素タンク2の間には、流量制御弁4が設けられている。流量制御弁4は、水素タンク2から燃料電池1に供給される水素の量を調整するものである。
【0020】
燃料電池1は、水素タンク2から流量制御弁4を通して燃料電池1に供給される水素と、コンプレッサ3から燃料電池1に供給される空気中の酸素との化学反応により、電気エネルギーを生成する。すなわち、燃料電池1は、水素と酸素の化学反応により発電する。
【0021】
燃料電池1には、燃料電池1を冷却するための冷却機構が接続されている。冷却機構は、冷却水路6と、水温センサ7と、ラジエータ8と、ウォータポンプ9と、冷却ファン10と、を備えた構成になっている。冷却水路6は、燃料電池1を冷却する冷却水が流れる水路である。燃料電池1は、冷却水路6を流れる冷却水と燃料電池1との間で行われる熱交換によって冷却される構成になっている。
【0022】
水温センサ7は、冷却水路6を流れる冷却水の温度を検出するものである。水温センサ7は、燃料電池1からラジエータ8に至る冷却水路6の途中に設けられている。水温センサ7が検出する冷却水の温度は、FC制御装置5に入力される。ラジエータ8は、冷却水路6に流れる冷却水を冷却するものである。ウォータポンプ9は、冷却水路6を流れる冷却水を循環させるポンプである。ウォータポンプ9は、ラジエータ8から燃料電池1に至る冷却水路6の途中に設けられている。
【0023】
冷却ファン10は、ラジエータ8を冷却するものである。冷却ファン10は、冷却ファン10自身の回転によって空気流を発生させる。冷却ファン10が発生する空気流は、ラジエータ8に吹き付けられ、これによってラジエータ8が冷却される。
【0024】
一方、燃料電池1の出力には、DC/DCコンバータ11と蓄電装置12が電気的に接続されている。DC/DCコンバータ11は、燃料電池1から出力される直流電圧を所定の直流電圧に降圧して出力するものである。蓄電装置12は、蓄電手段に相当するものである。蓄電装置12は、燃料電池1が生成する電気エネルギーを充電によって蓄える充電機能と、充電によって蓄えた電気エネルギーを放出する放電機能とを有する。蓄電装置12は、たとえばキャパシタ、あるいはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池などによって構成される。
【0025】
蓄電装置12には、電流センサ13と電圧推定器18とが電気的に接続されている。電流センサ13は、蓄電装置12から内部負荷10に供給される電力の電流値を検知するセンサであり、電圧推定器18は、蓄電装置12の電圧を推定するものである。蓄電装置12、電流センサ13および電圧推定器18は、互いに直列に接続されている。FC制御装置5は、電流センサ13によって検知される電流と電圧推定器18によって推定される蓄電装置12の電圧とに基づいて、蓄電装置12の充電率を算出することができる。このため、FC制御装置5、電流センサ13および電圧推定部18は、蓄電装置12の充電率(SOC)を検出する充電率検出手段を構成する。
【0026】
FC制御装置5は、燃料電池システム100全体の処理および動作を制御するものである。FC制御装置5は、たとえば、マイクロコンピュータ等によって構成される。FC制御装置5には、制御対象として、コンプレッサ3と、流量制御弁4と、冷却ファン10と、DC/DCコンバータ11が、それぞれ電気的に接続されている。コンプレッサ3と流量制御弁4は、FC制御装置5が燃料電池1の出力状態を制御するための制御用機器となる。このため、FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態を制御する制御手段に相当する。また、FC制御装置5には、水温センサ7と、電流センサ13と、電圧推定器18と、電力量検出センサ14と、外部給電スイッチ15が、それぞれ電気的に接続されている。これらのセンサおよびスイッチ類は、FC制御装置5が制御対象を制御する際に参照する参照情報を入力するものである。FC制御装置5に入力される参照情報には、水温センサ7が検出する冷却水の温度、電流センサ13が検知する電流値、電圧推定器18が推定する電圧値、電力量検出センサ14が検出する電力量の各情報が含まれる。外部給電スイッチ15は、たとえば押しボタン式のスイッチであって、オペレータによって操作される。
【0027】
FC制御装置5は、DC/DCコンバータ11に電流指令値を出力することにより、DC/DCコンバータ11が燃料電池1から取り出す出力電流を制御する。また、FC制御装置5は、冷却ファン10に回転数指令値を出力することにより、冷却ファン10の回転数を制御する。また、FC制御装置5は、コンプレッサ3に給気指令値を出力することにより、コンプレッサ3による空気の供給量を制御する。また、FC制御装置5は、流量制御弁4の開度を調整することにより、燃料電池1に供給される水素の量を制御する。燃料電池1に供給される水素の量と酸素の量が多くなると、それに応じて燃料電池1の発電量が多くなる。このため、FC制御装置5は、コンプレッサ3による空気の供給量と、流量制御弁4による水素の供給量とを制御することにより、燃料電池1の出力状態を制御することができる。
【0028】
FC制御装置5は、電流センサ13によって検知される電流と電圧推定器18が推定する蓄電装置12の電圧とに基づいて蓄電装置12の充電率を算出するとともに、算出した蓄電装置12の充電率に基づいて燃料電池1の出力状態を多段階に切り換えて制御可能な構成になっている。ここで記述する「多段階」とは、後述する発電停止状態を含めて3段階以上を意味する。FC制御装置5による具体的な制御の仕方については後段で説明する。
【0029】
DC/DCコンバータ11の出力側には、蓄電装置12を介して、電力量検出センサ14および外部給電部16が電気的に接続されている。電力量検出センサ14は、外部負荷17によって消費される電力量を検出する電力量検出手段に相当するものである。外部給電部16は、外部負荷17に電力を供給するための外部給電手段に相当するもので、DC/ACコンバータ(不図示)と商用電源用のコンセント16aを備えている。外部負荷17は、移動体外に設けられるものである。外部負荷17は、たとえば家庭用電化製品や電動工具などであって、電源プラグ17aを有している。外部負荷17の電源プラグ17aは、外部給電部16のコンセント16aに対して抜き差し可能となっている。なお、本明細書において、外部負荷17や内部負荷20などの用語に含まれる「負荷」とは、電気エネルギーを消費するものを意味する。
【0030】
また、DC/DCコンバータ11の出力側には、蓄電装置12を介して内部負荷20が電気的に接続されている。内部負荷20は、移動体に搭載されて燃料電池1又は蓄電装置12の電力によりフォークリフトを駆動するものである。内部負荷20は、フォークリフトを走行動作または荷役動作させる際に、燃料電池1が発電する電力または蓄電装置12に蓄電された電力の供給を受ける主たる負荷となる。この場合、燃料電池1および蓄電装置12は、内部負荷10に電力を供給するための内部給電手段を構成する。
図1には、内部負荷20の一例として、走行モータ21および荷役モータ22が記載されている。内部負荷20には、ライト等の補機類も含まれる。走行モータ21は、フォークリフトの車軸を駆動するためのモータである。荷役モータ22は、フォークリフトの荷役装置を駆動するためのモータである。フォークリフトの走行は、燃料電池システム100から内部負荷20に供給される直流電力によって走行モータ21が車軸を駆動することにより行われる。フォークリフトの荷役は、燃料電池システム100から内部負荷20に供給される直流電力によって荷役モータ22が荷役装置を駆動することにより行われる。
【0031】
内部負荷20を構成する走行モータ21および荷役モータ22は、それぞれ、車両制御装置33に電気的に接続されている。車両制御装置33は、たとえば、マイクロコンピュータ等によって構成される。車両制御装置33は、制御対象となる走行モータ21および荷役モータ22をそれぞれ個別に制御するものである。
【0032】
車両制御装置33には、アクセルペダル34、リフトレバー35およびチルトレバー36がそれぞれ電気的に接続されている。アクセルペダル34、リフトレバー35およびチルトレバー36は、それぞれ、フォークリフトのオペレータによって操作されるものである。具体的には、アクセルペダル34は、フォークリフトを走行させる際にオペレータによって操作される。リフトレバー35およびチルトレバー36は、フォークリフトの荷役装置を動作させる際にオペレータによって操作される。車両制御装置33とFC制御装置5とは、たとえばCAN(Controller Area Network)により、互いに通信可能に構成されている。
【0033】
<処理および動作>
次に、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム100を備える移動体の処理および動作について説明する。なお、本第1実施形態においては、燃料電池システム100内でFC制御装置5が行う各種の制御処理のうち、特に燃料電池1の出力状態に関連する制御処理について説明する。
【0034】
まず、FC制御装置5は、通常給電モードと外部給電モードといった2つの給電モードを備え、電力の供給先となる負荷に応じていずれか一方の給電モードを適用して燃料電池1の出力状態を制御する。通常給電モードは、燃料電池システム100から内部負荷20に電力を供給する場合に適用される給電モードであり、外部給電モードは、燃料電池システム100から外部負荷17に電力を供給する場合に適用される給電モードである。通常給電モードと外部給電モードでは、燃料電池1の出力制御に適用される制御条件が異なる。各々の給電モードで適用される具体的な制御条件については後段で詳しく説明する。
【0035】
FC制御装置5の給電モードは、外部給電スイッチ15によって切り替え可能となっている。具体的には、FC制御装置5の給電モードは、オペレータのキーオン操作によって燃料電池システム100が起動した後、外部給電スイッチ15が押される前は通常給電モードとなっており、外部給電スイッチ15が押されると通常給電モードから外部給電モードに切り替わる。給電モードの切り替えは、外部給電スイッチ15の操作に応答してFC制御装置5自身が行う。すなわち、FC制御装置5は、通常給電モードのもとで外部給電スイッチ15が押されると、給電モードを通常給電モードから外部給電モードに切り換える。また、FC制御装置5は、外部給電モードのもとで外部給電スイッチ15が押されると、給電モードを外部給電モードから通常給電モードに切り換える。給電モードが通常給電モードから外部給電モードに切り替わった段階、すなわち外部給電モードの初期状態では、燃料電池1の出力状態は発電停止状態となる。
【0036】
以下に、FC制御装置5が燃料電池1の出力状態を制御する際の具体的な制御処理につき、通常給電モードの場合と外部給電モードの場合に分けて説明する。
【0037】
(通常給電モード)
まず、FC制御装置5が通常給電モードで燃料電池1の出力状態を制御する場合について説明する。
図2は、通常給電モードにおける電力の供給経路を示す概念図である。
通常給電モードでは、燃料電池1から内部負荷20に電力を供給する経路R1と、燃料電池1から蓄電装置12に電力を供給する経路R2と、蓄電装置12から内部負荷20に電力を供給する経路R3と、内部負荷20から蓄電装置12に電力を戻す経路R4がある。内部負荷20から蓄電装置12に戻される電力は、移動体の回生エネルギーによる電力である。
【0038】
FC制御装置5は、通常給電モードにおいて、燃料電池1の出力状態を多段階に切り換えて制御する。本第1実施形態では、一例として、FC制御装置5が燃料電池1の出力状態を4段階に切り換えて制御するものとする。燃料電池1の出力状態は、燃料電池1の発電量の違いにより、発電停止状態、低出力状態、中出力状態、高出力状態の4段階に区分される。
【0039】
発電停止状態は、燃料電池1の発電量がゼロ、すなわち燃料電池1が発電を停止している状態である。高出力状態は、燃料電池1の発電量が最大の状態である。低出力状態は、燃料電池1の発電量がゼロよりも多く、かつ、中出力状態の発電量よりも少ない状態である。中出力状態は、燃料電池1の発電量が低出力状態の発電量よりも多く、かつ、高出力状態の発電量よりも少ない状態である。
【0040】
FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が、発電停止状態、低出力状態、中出力状態、高出力状態のうちいずれか1つの状態となるように制御する。具体的には、FC制御装置5は、電流センサ13と電圧推定器18とを用いて蓄電装置12の充電率を検出し、この検出結果に基づいて、燃料電池1の出力状態を4段階に切り換えて制御する。
【0041】
図3は、通常給電モードで内部負荷に電力を供給する場合の制御処理(制御条件)の一例を示す模式図である。以降では、
図3を参照して、FC制御装置5による燃料電池1の出力状態の制御方法を、発電量を増やす場合と、発電量を減らす場合に分けて説明する。なお、燃料電池1の発電量を増やす場合は、FC制御装置5がコンプレッサ3と流量制御弁4を制御することにより、燃料電池1に供給される水素の量と酸素の量を増やすことになる。また、燃料電池1の発電量を減らす場合は、FC制御装置5がコンプレッサ3と流量制御弁4を制御することにより、燃料電池1に供給される水素の量と酸素の量を減らすことになる。また、燃料電池1の発電を停止する場合は、FC制御装置5がコンプレッサ3と流量制御弁4を制御することにより、燃料電池1に対して水素の供給と酸素の供給を共に停止することになる。
【0042】
(発電量を増やす場合)
FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が発電停止状態のときに、蓄電装置12の充電率(SOC)が予め設定された閾値50%以下になると、燃料電池1の出力状態を発電停止状態から低出力状態に切り換える(ステップS1)。また、FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が低出力状態のときに、蓄電装置12の充電率が予め決められた閾値45%以下になると、燃料電池1の出力電状態を低出力状態から中出力状態に切り換える(ステップS2)。また、FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が中出力状態のときに、蓄電装置12の充電率が予め決められた閾値30%以下になると、燃料電池1の出力状態を中出力状態から高出力状態に切り換える(ステップS3)。
【0043】
(発電量を減らす場合)
FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が高出力状態のときに、蓄電装置12の充電率が予め決められた閾値45%以上になると、燃料電池1の出力状態を高出力状態から中出力状態に切り換える(ステップS4)。また、FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が中出力状態のときに、蓄電装置12の充電率が予め決められた閾値60%以上になると、燃料電池1の出力状態を中出力状態から低出力状態に切り換える(ステップS5)。また、FC制御装置5は、燃料電池1の出力状態が低出力状態のときに、蓄電装置12の充電率が予め決められた閾値70%以上になると、燃料電池1の出力状態を低出力状態から発電停止状態に切り換える(ステップS6)。
なお、上述した通常給電モードや後述する外部給電モードで適用する各々の閾値は、必要に応じて変更可能である。
【0044】
(外部給電モード)
次に、FC制御装置5が外部給電モードで燃料電池1の出力状態を制御する場合について説明する。
図4は、外部給電モードにおける電力の供給経路を示す概念図である。
外部給電モードでは、燃料電池1から外部負荷17に電力を供給する経路R11と、燃料電池1から蓄電装置12に電力を供給する経路R12と、蓄電装置12から外部負荷17に電力を供給する経路R13がある。
【0045】
図5は、本発明の第1実施形態における外部給電モードでのFC制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
まず、FC制御装置5は、外部給電スイッチ15の押下操作に応答して外部給電モードに切り替わった後、外部給電部16のコンセント16aに外部負荷17の電源プラグ17aが差し込まれると、蓄電装置12を利用して外部負荷17への給電を開始する(ステップS11)。蓄電装置12を利用した外部給電は、蓄電装置12に蓄積された電力を、外部給電部16を介して外部負荷17に供給することで行う。このとき、燃料電池1の出力状態は発電停止状態になっている。このため、蓄電装置12による外部給電を開始すると、外部負荷17で消費される電力量に応じて蓄電装置12の充電率が低下していく。
【0046】
次に、FC制御装置5は、電流センサ13と電圧推定器18とを用いて検出される蓄電装置12の充電率の情報を監視しつつ、蓄電装置12の充電率(SOC)が予め設定された第1閾値30%以下になったか否かを判断する(ステップS12)。そして、FC制御装置5は、蓄電装置12の充電率が第1閾値超であれば、ステップS11に戻って蓄電装置12による外部給電を継続する。また、FC制御装置5は、蓄電装置12の充電率が第1閾値以下になると、燃料電池1の発電を開始するとともに、蓄電装置12に代わって燃料電池1による外部給電を開始する(ステップS13)。外部給電モードにおいて、FC制御装置5は、前述した通常給電モードにて内部負荷20に電力を供給する場合よりも少ない段階の制御条件を適用して燃料電池1の出力状態を制御する。具体的には、FC制御装置5は、内部負荷20に電力を供給する場合は、燃料電池1の出力状態を4段階に切り換えて制御するが、外部負荷17に電力を供給する場合は、燃料電池1の出力状態を発電停止状態および所定の出力状態のみの2段階に切り換えて制御する。
【0047】
外部給電モードで適用される「所定の出力状態」は、燃料電池1の発電量が少なくともゼロを超える出力状態であって、好ましくは、燃料電池1が高効率で発電可能な出力状態である。燃料電池1が高効率で発電可能な出力状態とは、理想的には、燃料電池1の発電効率が最も高くなる発電量(以下、「最高効率発電量」という。)が得られる出力状態をいう。燃料電池1の発電効率は、燃料ガスとなる水素の消費量と燃料電池1が発電する発電量との関係で規定され、一定量の水素を燃料電池1に供給したときに生成される発電量が多いほど高効率となる。一般に燃料電池1の発電効率は発電量に応じて変化し、所定の発電量(最高効率発電量)のときに最も高くなる。
【0048】
燃料電池1の発電効率が最も高くなる発電量は、使用する燃料電池1の特性および燃料電池システムを駆動する補機(コンプレッサ3など)の消費電流等によって変わる。このため、燃料電池1の最高効率発電量を予め実験等によって求めておき、外部給電時には、事前の実験等で求めた最高効率発電量が得られる条件で燃料電池1の出力状態を制御すればよい。ただし、燃料電池1が高効率で発電可能な出力状態は、必ずしも最高効率発電量が得られる出力状態でなくてもよい。たとえば、燃料電池1の最高発電効率がX(%)である場合は、好ましくは0.8X以上、より好ましくは0.9X以上、さらに好ましくは0.95X以上の発電効率となる発電量が得られる条件で燃料電池1の出力状態を制御してもよい。
【0049】
本第1実施形態においては、通常給電モードとは異なる制御条件の1つとして、上記所定の出力状態が、内部負荷20に電力を供給する出力の最低出力よりも低い出力で設定される。具体的には、上記所定の出力状態は、通常給電モードで適用される低出力状態(
図3参照)の発電量よりも少ない発電量となる条件で設定される。ただし、外部負荷17に供給する電力が不足しないよう、FC制御装置5は、次の条件を満たすように燃料電池1の出力状態を制御する。すなわち、外部負荷17によって消費される電力量をQ11とし、燃料電池1を所定の出力状態で発電させるときの発電量をQ12とすると、FC制御装置5は、Q11<Q12の条件を満たすように燃料電池1の出力状態を制御する。これにより、燃料電池1を利用した外部給電では、余剰の電力が燃料電池1から蓄電装置12に供給されて蓄電される。このため、蓄電装置12の充電率は徐々に上昇していく。
【0050】
その後、FC制御装置5は、電流センサ13と電圧推定器18と用いて検出される蓄電装置12の充電率の情報を監視しつつ、蓄電装置12の充電率が予め設定された第2閾値70%以上になったか否かを判断する(ステップS14)。そして、FC制御装置5は、蓄電装置12の充電率が第2閾値未満であれば、ステップS13に戻って燃料電池1による外部給電を継続する。また、FC制御装置5は、蓄電装置12の充電率が第2閾値以上になると、燃料電池1の出力状態を所定の出力状態から発電停止状態に切り換える(ステップS15)。これにより、燃料電池1による発電が停止する。その後は、ステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。
【0051】
以上の制御処理は、FC制御装置5の給電モードが外部給電モードから通常給電モードに切り替わるまで行われる。これにより、外部給電モードにおいては、燃料電池1の出力状態が
図6のように発電停止状態と所定の出力状態の2段階で切り替え制御される。
【0052】
図7は、外部給電モードにおける蓄電装置の充電率の変化を示す図である。
図7においては、縦軸に蓄電装置12の充電率、横軸に時間をとっている。また、外部負荷17によって消費される電力量が一定であるという前提で、本第1実施形態における充電率の変化を一点鎖線で示し、参考形態における充電率の変化を破線で示している。ここで記述する参考形態とは、通常給電モードに適用される多段階の切り替え制御をそのまま外部給電モードに適用する場合、すなわち従来例に相当するものである。
【0053】
まず、参考形態の場合は、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が発電停止状態に維持されている期間Taでは、蓄電装置12の充電率が一定の割合で低下する。その後、蓄電装置12の充電率が閾値50%まで低下すると、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が低出力状態で発電を開始する。そうすると、蓄電装置12の充電率が低下傾向から上昇傾向に転じる。その後、蓄電装置12の充電率が閾値70%まで上昇すると、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が発電停止状態になる。このため、燃料電池1は、蓄電装置12の充電率が50%~70%の範囲内で、発電停止状態と低出力状態を繰り返す。また、その繰り返し周期T1の長さは、充電率の低下期間Taと上昇期間Tbを合わせた長さになる。
【0054】
一方、第1実施形態の場合は、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が発電停止状態に維持されている期間Tcでは、蓄電装置12の充電率が一定の割合で低下する。ただし、蓄電装置12の充電率が50%まで低下した後も、充電率の下降傾向は続く。その理由は、外部給電モードに適用する制御条件の1つとして、上記第1閾値を50%よりも低い状態、すなわち30%に設定しているからである。すなわち、第1実施形態においいては、通常給電モードでは、蓄電装置12の充電率が第1の値50%以下になった際に燃料電池1の出力状態を発電停止状態から低出力状態に変化させ、外部給電モードでは、蓄電装置12の充電率が上記第1の値よりも小さい第2の値30%以下となった際に燃料電池1の出力状態を発電停止状態から低出力状態に変化させる。これにより、参考形態の場合は蓄電装置12の充電率の変動幅が20%となるのに対し、本第1実施形態の場合はそれよりも広い40%となる。このため、蓄電装置12の充電率が低下する期間Tcは、参考形態の場合(期間Ta)よりも長くなる。
【0055】
その後、蓄電装置12の充電率が閾値30%まで低下すると、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が所定の出力状態で発電を開始する。そうすると、蓄電装置12の充電率が低下傾向から上昇傾向に転じる。このとき、蓄電装置12の充電率の上昇率は参考形態に比べて緩やかになる。その理由は、外部給電モードに適用する制御条件の1つとして、通常給電モードで適用される低出力状態の発電量よりも少ない発電量、すなわち超低出力状態の発電量となる条件で所定の出力状態を設定しているからである。このため、蓄電装置12の充電率が上昇する期間Tdは、参考形態の場合(期間Tb)よりも長くなる。
【0056】
その後、蓄電装置12の充電率が閾値70%まで上昇すると、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が発電停止状態になる。このため、燃料電池1は、蓄電装置12の充電率が30%~70%の範囲内で、発電停止状態と所定の出力状態を繰り返す。また、その繰り返し周期T2の長さは、充電率の低下期間Tcと上昇期間Tdを合わせた長さになり、この繰り返し周期T2の長さは、参考形態における繰り返し周期T1の長さよりも長くなる。
【0057】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態においては、給電モードが外部給電モードの場合に、通常給電モードとは異なる制御条件を適用してFC制御装置5が燃料電池1の出力状態を制御する。すなわち、FC制御装置5は、外部負荷17に電力を供給する場合は、内部負荷20に電力を供給する場合よりも少ない段階の制御条件を適用して燃料電池1の出力状態を制御する。このため、外部給電モードでは、燃料電池1の発電効率を優先した制御条件を適用して燃料電池1の出力状態を制御することができる。これにより、外部給電時における燃料電池1の発電効率を従来よりも高めることができる。
【0058】
また、通常給電モードで適用される、燃料電池1が低出力状態のときの発電量は、フォークリフトなどの産業車両を含む移動体向けの発電量である。このため、低出力状態の発電量は、内部負荷20での急激な電力消費にも対応できるよう、一定以上の高い値に設定される。これに対し、外部負荷17で消費される電力や、その消費電力の変動は、内部負荷20の場合に比べて非常に小さくなる。このため、外部給電モードでは、燃料電池1の発電量に対する制約が小さく、その分、発電量の設定自由度が高い。したがって、燃料電池1を高い発電効率で発電させることができる。
【0059】
また、本第1実施形態においては、燃料電池1の出力状態をFC制御装置5で制御する場合、通常給電モードでは、蓄電装置12の充電率が第1の値以下となったときに燃料電池1の出力状態を発電停止状態から低出力状態に変化させ、外部給電モードでは、蓄電装置12の充電率が上記第1の値よりも小さい第2の値以下となったときに燃料電池1の出力状態を発電停止状態から低出力状態(超低出力状態)に変化させる。これにより、外部給電モードにおいては、蓄電装置12の充電率が通常給電モードの場合よりも低くなった段階で燃料電池1が超低出力状態となるため、電位変動の頻度を低下させてFCスタックの特性劣化を抑制することができる。また、通常給電モードにおいては、蓄電装置12の充電率が外部給電モードの場合よりも高い段階で燃料電池1が低出力状態となるため、走行モータ21や荷役モータ22による消費電力の変動に対応することができる。
【0060】
また、本第1実施形態においては、外部給電モードに適用する制御条件の1つとして、燃料電池1が高効率で発電可能な出力状態で発電するよう、燃料電池1の出力状態を制御する。このため、燃料ガスとなる水素ガスの消費量を節約しつつ、外部負荷17に効率良く電力を供給することができる。
【0061】
また、本第1実施形態によれば、FCスタックの特性劣化を抑制することにより、燃料電池1のさらなる長寿命化を図ることができる。その理由は次のとおりである。一般に、燃料電池1が発電と停止を繰り返すと、その都度、燃料電池1の出力が変動する。燃料電池1の劣化を抑制する観点からは、燃料電池1の出力変動はなるべく小さいほうが望ましい。この点、本第1実施形態においては、上記参考形態に比べて、蓄電装置12の充電率の変動幅を広く確保するとともに、燃料電池1の発電量を低く抑えている。このため、外部給電モードにおいて燃料電池1が発電と停止を繰り返す回数を参考形態よりも減らすことができる。また、燃料電池1の発電量を低く抑えることで、燃料電池1の出力変動を小さく抑えることができる。したがって、本第1実施形態によれば、燃料電池1の劣化を抑制して長寿命化を図ることができる。
【0062】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態に係る移動体について説明する。なお、第2実施形態においては、上述した第1実施形態と比べて、外部給電モードにおけるFC制御装置の処理手順が異なる。
【0063】
図8は、本発明の第2実施形態における外部給電モードでのFC制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
まず、FC制御装置5は、外部給電スイッチ15の押下操作に応答して外部給電モードに切り替わった後、外部給電部16のコンセント16aに外部負荷17の電源プラグ17aが差し込まれると、外部負荷17によって消費される電力量の監視を開始する(ステップS21)。この場合、電力量検出センサ14は外部負荷17によって消費される電力量を検出し、この検出結果をFC制御装置5に入力する。そうすると、FC制御装置5は、外部負荷17で消費される電力量を、たとえば時間tごとの消費電力量の平均、すなわち時間平均によって求める。その際、時間tが短すぎる、または長すぎると、消費電力量に対する発電量の追従性が悪化する。このため、時間tは、好ましくは10秒以下、より好ましくは4秒以上6秒以下の範囲に設定するとよい。これにより、消費電力量に対する発電量の追従性が良好になる。
【0064】
次に、FC制御装置5は、電力量検出センサ14が検出する電力量に基づいて燃料電池1の出力状態を制御する(ステップS22)。この場合、外部負荷17によって消費される電力量をQ21とし、燃料電池1の発電量をQ22とすると、FC制御装置5は、Q21=Q22の条件を満たすように、燃料電池1の出力状態を制御する。これにより、外部給電モードにおいては、FC制御装置5の制御下で燃料電池1が発電することにより、外部負荷17で消費される電力と同じ量の電力が外部負荷17に供給される。
以降は、FC制御装置5の給電モードが外部給電モードから通常給電モードに切り替わるまで、FC制御装置5は、Q21=Q22の条件で燃料電池1の出力状態を制御する。
【0065】
このように、外部給電モードにおいてFC制御装置5が燃料電池1の出力状態を制御することにより、蓄電装置12の充電率は、上記
図7に二点鎖線で示すように、ほぼ一定の値で推移する。このため、通常給電モードから外部給電モードに切り替わった段階で蓄電装置12の充電率が図例のように60%であったとすると、60%の充電率を維持したまま、外部給電モードから通常給電モードに復帰することができる。このため、通常給電モードに復帰したときに、蓄電装置12の充電率に過不足を生じることなく、内部負荷20への電力の供給に素早く対応することができる。
【0066】
<第2実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第2実施形態においては、FC制御装置5の給電モードが外部給電モードの場合に、通常給電モードとは異なる制御条件を適用してFC制御装置5が燃料電池1の出力状態を制御する。このため、上記第1実施形態と同様に、外部給電時における燃料電池1の発電効率を従来よりも高めることができる。また、上記第1実施形態でも述べたように、外部負荷17で消費される電力やその変動は、内部負荷20の場合に比べて非常に小さいため、外部給電モードでは、燃料電池1の発電量に対する制約が小さく、その分、発電量の設定自由度が高くなる。よって、上記第1実施形態と同様に、燃料電池1を高い発電効率で発電させることができる。
【0067】
また、本第2実施形態においては、外部負荷17の消費電力量Q21と燃料電池1の発電量Q22が等しくなるように、燃料電池1の出力状態を制御する。このため、外部負荷17の消費電力量が一定であれば、それに応じて燃料電池1の発電量も一定となる。また仮に、外部負荷17の消費電力が変動するとしても、その変動量は内部負荷20の場合に比べて格段に小さくなる。このため、上記比較形態や上記第1実施形態に比べて、燃料電池1の発電量の変動を小さく抑えることができる。また、本第2実施形態においては、外部負荷17によって電力が消費されている間、燃料電池1が常に発電した状態となる。このため、上記比較形態や上記第1実施形態に比べて、燃料電池1が発電と停止を繰り返す回数が少なくなる。したがって、本第2実施形態によれば、燃料電池1の劣化をより一層抑制することができる。
【0068】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0069】
たとえば、上記実施形態においては、移動体の一例としてフォークリフトを挙げたが、本発明はこれに限らず、たとえば車両や牽引車などの移動体に適用してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態においては、FC制御装置5が燃料電池1の出力状態を切り替える段数に関して、内部負荷20に電力を供給する場合には発電停止状態を含む4段階、外部負荷17に電力を供給する場合には発電停止状態を含む2段階として説明したが、この段数に限定されるものではない。たとえば、外部負荷17に電力を供給する場合に、発電効率の観点から発電停止状態を含む3段階の方が好ましい燃料電池システムであれば、内部負荷20に電力を供給する場合の上記段数を4段階とし、外部負荷17に電力を供給する場合の上記段数を3段階としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、オペレータによって操作される外部給電スイッチ15によってFC制御装置5の給電モードを切り換えるものとしたが、本発明はこれに限らず、オペレータの操作を要することなく、給電モードが自動的に切り替わる構成としてもよい。具体的には、たとえば、外部給電部16のコンセント16aに外部負荷17の電源プラグ17aが差し込まれたときに、これをFC制御装置5が感知して給電モードを通常給電モードから外部給電モードに切り換える構成を採用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態においては、外部給電モードでFC制御装置5が燃料電池1の出力状態を制御するときの処理内容を第1実施形態と第2実施形態に分けて説明したが、たとえば、オペレータが希望する処理内容をボタン操作等によって選択できる構成としてもよい。具体的には、たとえば、燃料ガスである水素の消費を節約したい場合は第1実施形態の処理内容をボタン操作等によって選択し、燃料電池1の劣化を抑制したい場合は第2実施形態の処理内容をボタン操作等によって選択可能な構成としてもよい。
【0073】
また、上記第2実施形態においては、外部負荷17の消費電力量Q21と燃料電池1の発電量Q22が等しくなるように燃料電池1の出力状態を制御するとしたが、これに限らず、所定の安全率を見込んで「Q22+α」の発電量となるように燃料電池1の出力状態を制御してもよい。その場合は、「+α」の発電量に対応する電力が蓄電装置12に蓄電されるため、蓄電装置12の充電率が徐々に上昇することになる。このため、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、蓄電装置12の充電率が閾値70%以上となったら、燃料電池1を「Q22+α」の発電状態から発電停止状態に切り換える制御、すなわち2段階の切り替え制御を適用する場合があり得る。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料電池(内部給電手段)、5 FC制御装置(制御手段、充電率検出手段)、12 蓄電装置(蓄電手段、内部給電手段)、13 電流センサ(充電率検出手段)、18 電圧推定器(充電率検出手段)、14 電力量検出センサ(電力量検出手段)、16 外部給電部(外部給電手段)、17 外部負荷、20 内部負荷。