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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】火災検知器及びトンネル防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/12 20060101AFI20230426BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G08B17/12 A
G08B17/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018241890
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020106875
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-042262(JP,A)
【文献】特開平07-262464(JP,A)
【文献】特開2002-042264(JP,A)
【文献】特開2018-136726(JP,A)
【文献】特開2002-163735(JP,A)
【文献】特開2014-026446(JP,A)
【文献】特開2011-186895(JP,A)
【文献】特開2018-169893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G08B17/00-17/12
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炎から放射される放射線エネルギーを、炎検出センサにより観測して炎受光信号を出力する炎受光部と、
燃焼炎以外から放射される放射線エネルギーを、非炎検出センサにより観測して非炎受光信号を出力する非炎受光部と、
前記炎受光信号と前記非炎受光信号に基づいて火災を判断する火災判断部と、
試験光により前記炎受光部と前記非炎受光部の試験を行う試験部と、
前記試験部による試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部と、
を備え
前記故障診断部は、前記試験部による試験時に得られた前記炎受光信号と前記非炎受光信号に基づき、
前記炎受光信号のレベルが所定の第1上限側判定条件を充足したとき、
前記非炎受光信号のレベルが所定の第1下限側判定条件を充足したとき、
前記炎受光信号のレベルと前記非炎受光信号のレベルと相対比が所定の第1相対比判定条件を充足したとき
或いはこれらの組み合わせを、前記誤報側故障と識別し、
前記炎受光信号のレベルが所定の第2下限側判定条件を充足したとき、
前記非炎受光信号のレベルが所定の第2上限側判定条件を充足したとき、又は、
前記炎受光信号のレベルと前記非炎受光信号のレベルと相対比が所定の第2相対比判定条件を充足したとき
或いはこれらの組み合わせを、前記失報側故障と識別することを特徴とする火災検知器。
【請求項2】
請求項1記載の火災検知器に於いて、
前記故障診断部は、前記誤報側故障を識別判断した場合に、防災受信盤に故障予兆信号を送信することを特徴とする火災検知器。
【請求項3】
請求項1記載の火災検知器に於いて、
前記火災判断部は、前記故障診断部で識別した前記誤報側故障と前記失報側故障の識別結果に応じ、火災判断条件を変更することを特徴とする火災検知器。
【請求項4】
請求項記載の火災検知器に於いて
前記火災判断部は、前記故障診断部で前記誤報側故障を識別判断した場合に、火災を判断する所定の蓄積条件を厳格な所定の蓄積条件に変更することを特徴とする火災検知器。
【請求項5】
請求項記載の火災検知器に於いて
前記火災判断部は、前記故障診断部で前記失報側故障を識別判断した場合に、火災を判断する所定の蓄積条件を緩和した所定の蓄積条件に変更することを特徴とする火災検知器。
【請求項6】
請求項1記載の火災検知器に於いて
前記故障診断部は、前記試験結果に応じて識別された前記誤報側故障と前記失報側故障の識別結果防災受信盤に送信することを特徴とする火災検知器。
【請求項7】
所定の試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部を備えた火災検知器を防災受信盤に接続して火災を監視するトンネル防災システムであって、
前記火災検知器は、隣接した他の火災検知器との間の検知エリアを相互に重複して監視しており、
前記防災受信盤は、前記火災検知器による前記失報側故障の識別結果に応じ、前記隣接して配置された他の火災検知器の検出感度を高めるように変更することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項8】
防災受信盤に前記請求項1乃至に記載の火災検知器を接続して火災を監視するトンネル防災システムであって
前記火災検知器は、隣接した他の火災検知器との間の検知エリアを相互に重複して監視しており、
前記防災受信盤は、前記火災検知器による前記失報側故障の識別結果に応じ、前記隣接して配置された他の火災検知器の検出感度を高めるように変更することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項9】
請求項7又は8記載のトンネル防災システムに於いて、
前記防災受信盤は、前記火災検知器で識別された前記誤報側故障と前記失報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数に基づき、前記火災検知器の劣化を判断して報知することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項10】
請求項7又は8記載のトンネル防災システムに於いて、
前記防災受信盤は、前記火災検知器で識別された前記誤報側故障又は前記失報側故障の識別結果に基づき、前記火災検知器の故障予兆を判断して報知することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項11】
請求項10記載のトンネル防災システムに於いて、
前記防災受信盤は、前記火災検知器の故障予兆を判断した場合、当該火災検知器から送信された火災信号を非火災報と判断して所定の火災処理を行わないようにすることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項12】
請求項11記載のトンネル防災システムに於いて、
前記防災受信盤は、前記火災検知器の故障予兆を判断した場合、遠方監視制御設備に故障予兆移報信号を送信して報知させることを特徴とするトンネル防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の火災を監視する火災検知器及びトンネル防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両等を守るため、火災を監視する火災検知器が設置され、防災受信盤から引き出された信号線に接続されている。
【0003】
火災検知器は左右の両方向に検知エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との検知エリアが相互補完的に重なるように、例えば、25m間隔、或いは50m間隔で連続的に配置されている。
【0004】
火災検知器は、有炎燃焼により発生する放射線エネルギーを検出して、炎の有無を検出するものであり、炎と炎以外の赤外線放射体との識別を行うため、有炎燃焼時に発生するCOの共鳴放射に伴い発生する赤外線波長帯域を含む複数の波長帯域における放射線強度を検出して、それら複数の波長帯域における検出値の相対比により炎の有無を検出する2波長式、3波長式等の火災検知器が知られている。
【0005】
例えば、2波長式の火災検知器にあっては、4.5μm付近の炎波長帯域と、例えば5.0μm付近の非炎波長帯域における各々の放射線エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過させて、4.5μm帯の炎検出センサと5.0μm帯の非炎検出センサにより放射線エネルギーを受光し、これを光電変換したうえで増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する電気信号(以下、「受光信号」という)とし、4.5μm帯の炎受光信号レベル(炎受光値)と5.0μm帯の波長帯域の非炎受光信号レベル(非炎受光値)の相対比をとり、所定の閾値と比較することにより炎の有無を判定する。
【0006】
また、火災検知器は透光性窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線エネルギー、たとえば赤外線エネルギーを監視しており、炎の監視機能を維持するために、透光性窓の汚れを監視するための汚れ試験や受光センサの感度を点検するための感度試験を行っている。
【0007】
透光性窓の汚れ試験は、防災受信盤から定期的に送信される試験信号を受信した場合に、火災検知器に設けられた試験光源から試験光を透光性窓に入射し、受光センサで受光して減光率を求め、例えば減光率が所定の汚れ閾値を超えた場合に汚れ異常信号を防災受信盤に送信して汚れ警報を出力させている。また、火災検知器から減光率データを取得して防災受信盤側で閾値と比較して汚れを判断して汚れ警報を出力するシステムも知られている。
【0008】
受光センサの感度試験は、防災受信盤から定期的に送信される試験信号を受信した場合に、別に内蔵した試験光源から炎を模擬した試験光を試験用光源から透光性窓を介さずに受光センサに入射して受光感度を検出し、受光感度が所定の閾値感度に低下するまでは、検出感度の逆数となる補正値で受光値を補正し、検出感度が所定の感度閾値に低下して補正限界となった場合には、受光素子の故障信号を防災受信盤に送信してセンサ故障警報を出力させている。
【0009】
また、受光センサの感度試験及び透光性窓の汚れ試験にあっては、受光信号レベル(受光値)が予め定めた上限閾値から下限閾値の間にあれば正常、そうでなければ故障予兆候補とし、更に、火災判断に用いる炎受光信号レベルと非炎受光信号レベルの相対比については、予め定めた上限閾値から下限閾値の間にあれば正常、そうでなければ故障予兆候補とし、所定の蓄積条件(例えば故障予兆候補の所定発生回数等)を充足したときに故障の可能性が高いことを示す故障予兆と判断して故障予兆信号を防災受信盤に送信するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-246962号公報
【文献】特開2016-128796号公報
【文献】特開2018-169893号公報
【文献】特開2003-067861号公報
【文献】特開2002-197580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来の火災検知器にあっては、例えば運用期間が長くなった場合、感度試験によるセンサ故障や汚れ試験による汚れ異常が検出されることなく正常に運用されていると思われる状態で、突然、火災検知器が火災信号を出力して防災受信盤から非火災報が出される事態が発生する可能性があり、このような場合、それが非火災報であることを確認するまでは、警報表示板設備などにより進入禁止警報を行って車両のトンネル通行を禁止し、担当者が現場に出向いて確認する必要があり、トンネル通行を再開するまでに手間と時間がかかり、トンネル防災システムの信頼性を確保できないおそれがある。
【0012】
また、従来の試験に伴う故障判断にあっては、炎受光信号と非炎受光信号の信号レベルや両者の相対比が上限閾値と下限閾値の間の範囲を外れた場合に一律に故障予兆候補と判断しているが、炎受光信号レベルや非炎受光信号レベルが故障等により上限閾値を上回ったときと下限閾値を下回ったときでは火災判断に対する影響は異なったものとなることが想定される。
【0013】
例えば、炎受光信号レベルが正常範囲にあるが、故障等により非炎受光信号レベルが感度低下して下限閾値を下回った場合には誤って火災と判断される可能性があり、また、非災受光信号レベルが正常範囲にあるが、炎受光信号レベルが故障等により感度低下して下限閾値を下回った場合には火災であっても火災と判断されない可能性がある。
【0014】
しかしながら、従来の故障判断にあっては、上限閾値と下限閾値の間の範囲を外れた場合に一律に故障予兆候補と判断しており、火災判断に対する影響は考慮されておらず、故障状況に応じたきめ細かな対処はなされていなかった。
【0015】
本発明は、定期的に行われる試験で得られた受光信号レベルの異常から火災判断に対する故障の影響を識別判断して非火災報防止等についてきめ細かく適切な対処を可能とする火災検知器及びトンネル防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(火災検知器)
本発明は、トンネル内の火災を監視する火災検知器に於いて、
所定の試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部が設けられたことを特徴とする。
【0017】
ここで、誤報側故障とは、火災(炎)でないにも関わらず火災と誤って判断され易い状態となる異常であり、失報側故障とは、火災(炎)であるにも関わらずこれを検知し難い状態となる異常である。
【0018】
(誤報側故障と失報側故障)
火災検知器には、
燃焼炎から放射される放射線エネルギーを、炎検出センサにより観測して炎受光信号を出力する炎受光部と、
燃焼炎以外から放射される放射線エネルギーを、非炎検出センサにより観測して非炎受光信号を出力する非炎受光部と、
炎受光信号と非炎受光信号に基づいて火災を判断する火災判断部と、
試験光により炎受光部と非炎受光部の試験を行う試験部と、
試験部による試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部と、
を備え
故障診断部は、試験部による試験時に得られた炎受光信号と非炎受光信号に基づき、
炎受光信号のレベルが所定の第1上限側判定条件を充足したとき、
非炎受光信号のレベルが所定の第1下限側判定条件を充足したとき、
炎受光信号のレベルと非炎受光信号のレベルとの相対比が所定の第1相対比判定条件を充足したとき、
或いは、これらの組み合わせを、誤報側故障と識別し、
炎受光信号のレベルが所定の第2下限側判定条件を充足したとき、
非炎受光信号のレベルが所定の第2上限側判定条件を充足したとき、
炎受光信号のレベルと非炎受光信号のレベルとの相対比が所定の第2相対比判定条件を充足したとき、或いは、これらの組み合わせを、失報側故障と識別する。
【0019】
(誤報側故障による故障予兆信号の送信)
故障診断部は、誤報側故障を識別判断した場合、防災受信盤に故障予兆信号を送信する。
【0020】
(故障識別判断に応じた火災判断条件の変更)
火災判断部は、故障診断部で識別した誤報側故障と失報側故障の識別結果に応じ、火災判断条件を変更する。
【0021】
(誤報側故障による蓄積条件の厳格化)
火災判断部は、誤報側故障を識別判断した場合に、火災を判断する所定の蓄積条件を厳格な所定の蓄積条件に変更する。
【0022】
(誤報側故障による蓄積条件の緩和)
火災判断部は、失報側故障を識別判断した場合に、火災を判断する所定の蓄積条件を緩和した所定の蓄積条件に変更する。
【0023】
(故障識別結果の送信)
故障診断部は、試験結果に応じて識別された誤報側故障と失報側故障の識別結果を防災受信盤に送信する。
【0024】
(トンネル防災システム:失報側故障による隣接火災検知器の感度変更)
本発明は、防災受信盤に前述した誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部を備えた火災検知器を接続して火災を監視するトンネル防災システムに於いて、
火災検知器は、隣接した他の火災検知器との間の検知エリアを相互に重複して監視しており、
防災受信盤は、火災検知器による失報側故障の識別結果に応じ、隣接して配置された他の火災検知器の検出感度を高めるように変更することを特徴とする。
【0025】
(火災検知器の劣化判断)
防災受信盤は、火災検知器で識別された誤報側故障と失報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数に基づき、火災検知器の劣化を判断して報知する。
【0026】
(故障予兆判断)
防災受信盤は、火災検知器で識別された誤報側故障又は失報側故障の識別結果に基づき、火災検知器の故障予兆を判断して報知する。
【0027】
(故障予兆判断と火災処理)
防災受信盤は、火災検知器の故障予兆を判断した場合、当該火災検知器から送信された火災信号を非火災報と判断して所定の火災処理を行わないようにする。
【0028】
(故障予兆の移報)
防災受信盤は、火災検知器の故障予兆を判断した場合、遠方監視制御設備に故障予兆移報信号を送信して報知させる。
【発明の効果】
【0029】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル内の火災を監視する火災検知器に於いて、所定の試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部が設けられため、誤報側故障であれば、火災(炎)でないにも関わらず火災と誤って判断されることで非火災報となり易い故障であることが分かることで、緊急度の高い故障と判断して対処することが可能となり、一方、失報側故障であれば、火災(炎)であるにも関わらず火災と判断されにくい故障であることが分かるので、失報を抑制する対処を行うことを可能とし、誤報側か失報側かの故障傾向が識別判断されることで、試験結果に基づく適切な故障判断と対処ができる。
【0030】
(誤報側故障と失報側故障の効果)
また、火災検知器には、燃焼炎から放射される放射線エネルギーを、炎検出センサにより観測して炎受光信号を出力する炎受光部と、燃焼炎以外から放射される放射線エネルギーを、非炎検出センサにより観測して非炎受光信号を出力する非炎受光部と、炎受光信号と非炎受光信号に基づいて火災を判断する火災判断部と、試験光により炎受光部と非炎受光部の試験を行う試験部と、試験部による試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部と、を備え、故障診断部は、試験部による試験時に得られた炎受光信号と非炎受光信号に基づき、炎受光信号のレベルが所定の第1上限側判定条件を充足したとき、非炎受光信号のレベルが所定の第1下限側判定条件を充足したとき、炎受光信号のレベルと非炎受光信号のレベルと相対比が所定の第1相対比判定条件を充足したとき、或いは、これらの組み合わせを、誤報側故障と識別し炎受光信号のレベルが所定の第2下限側判定条件を充足したとき、非炎受光信号のレベルが所定の第2上限側判定条件を充足したとき、炎受光信号のレベルと非炎受光信号のレベルとの比が所定の第2相対比判定条件を充足したときに、或いは、これらの組み合わせを、失報側故障と識別するようにしたため、試験結果から適切に誤報側故障と失報側故障とを識別判断して対処できる。
【0031】
(誤報側故障による故障予兆信号の送信による効果)
また、故障診断部は、誤報側故障を識別判断した場合、防災受信盤に故障予兆信号を送信するようにしたため、誤報側故障は火災検知器が誤って火災信号を送信して防災受信盤から非火災報が出されるという緊急度の高い故障となることから、誤報側故障を識別した場合は、速やかに防災受信盤に故障予兆信号を送信して非火災報の防止を可能とする。
【0032】
(故障識別判断に応じた火災判断条件の変更による効果)
また、火災判断部は、故障診断部で識別した誤報側故障と失報側故障の識別結果に応じ、火災判断条件を変更するようにしたため、誤報側故障と失報側故障の識別結果に対応した感度変更等により、受光センサの故障に起因した誤報と失報を抑制可能とし、きめ細かな対処を可能とする。
【0033】
(誤報側故障による蓄積条件の厳格化による効果)
また、火災判断部は、誤報側故障を識別判断した場合に、火災を判断する所定の蓄積条件を厳格な所定の蓄積条件に変更するようにし、例えば、火災判断の蓄積回数を増加させることで蓄積条件を厳格に変更して誤った火災判断による火災信号を送信しにくくし、非火災報を防止可能とする。
【0034】
(誤報側故障による蓄積条件の緩和による効果)
また、火災判断部は、失報側故障を識別判断した場合に、火災を判断する所定の蓄積条件を緩和した所定の蓄積条件に変更するようにし、例えば、火災判断の蓄積回数を低下させることで蓄積条件を緩和して火災を検知し易くし、失報を防止可能とする。
【0035】
(故障識別結果の送信による効果)
また、故障診断部は、試験結果に応じて識別された誤報側故障と失報側故障の識別結果を防災受信盤に送信するようにしたため、防災受信盤は火災検知器で識別判断した誤報側故障と失報側故障を故障情報として受信記憶し、必要に応じて故障情報を読み出して参照又は解析、更には、外部への持ち出し利用を可能とし、防災受信盤側での火災検知器の故障情報に基づく、点検や交換修理等の運用管理を適切に行うことを可能とする。
【0036】
(トンネル防災システム:失報側故障による隣接火災検知器の感度変更の効果)
本発明は、防災受信盤に前述した誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部を備えた火災検知器を接続して火災を監視するトンネル防災システムに於いて、火災検知器は、隣接した他の火災検知器との間の検知エリアを相互補完的に重複して監視しており、防災受信盤は、火災検知器による失報側故障を識別判断した場合、隣接して配置された他の火災検知器の検出感度を高めるように変更するようにしたため、失報側故障が識別判断された火災検知器の火災監視を補償して、確実に火災を検知して対処することができる。
【0037】
(火災検知器の劣化判断の効果)
また、防災受信盤は、火災検知器で識別された誤報側故障と失報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数に基づき、火災検知器の劣化を判断して報知するようにしたため、例えば、誤報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数等が高いときには劣化が進んでいると判断して、迅速な点検強化や交換計画の立案等を行うことができ、一方、失報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数等が高いときには劣化が進んでいるが、隣接する火災検知器が健全であれば緊急性は比較的低いと判断し、余裕を持って点検強化や交換計画の立案等を行うことができる。
【0038】
(故障予兆判断の効果)
また、防災受信盤は、火災検知器で識別された誤報側故障又は失報側故障の識別結果に基づき、火災検知器の故障予兆、即ち信頼性低下を判断して報知するようにし、例えば、誤報側故障は緊急度が高いことから蓄積なしで故障予兆と判断して報知することで、点検強化や交換計画の立案等を可能とし、一方、失報側故障は隣接する火災検知器が健全であれば緊急度が比較的低いことから所定の蓄積条件を充足したときに故障予兆と判断して報知することで、必要な点検や交換計画の立案等を可能とする。
【0039】
(故障予兆判断と火災処理による効果)
また、防災受信盤は、火災検知器の故障予兆を判断した場合、当該火災検知器から送信された火災信号を非火災報と判断して所定の火災処理を行わないようにしたため、火災検知器が誤った火災判断により火災信号を送信して、防災受信盤が火災信号を受信しても例えば車両進入禁止警報を含む火災処理を行わないようにすることで、非火災報による問題を解消する。
【0040】
(故障予兆移報の効果)
また、防災受信盤は、火災検知器の故障予兆を判断した場合、遠方監視制御設備に故障予兆移報信号を送信して報知させるようにしたため、例えば、複数のトンネルを監視している遠方監視制御設備側の担当者は、火災検知器の信頼性が低下していることを知ることができ、この傾向から非火災報に発展し得る状態を認識することで、トンネル側の火災検知器による火災の監視状況を適切に把握して、トンネルの運用管理に利用可能とする
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】トンネル防災システムの概要を示した説明図
図2】火災検知器の検知エリアを示した説明図
図3】火災検知器の外観を示した説明図
図4】火災検知器の機能構成の概略を示したブロック図
図5】火災検知器の制御動作を示したフローチャート
図6図5のステップS1の火災判断処理の詳細を示したフローチャート
図7図5のステップS5の故障診断処理の詳細を示したフローチャート
図8】防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図
【発明を実施するための形態】
【0042】
[実施形態の基本的概念]
図1はトンネル防災システムの概要を示した説明図であり、図2は火災検知器の検知エリアを示した説明図である。本実施形態の基本的な概念は、防災受信盤10から上り線トンネル1a及び下り線トンネル1b内に引き出された信号線14a,14bに接続して火災を監視する火災検知器12であって、感度試験等の所定の試験結果に応じ、誤報側故障と失報側故障とを識別判断する故障診断部が設けられたものである。
【0043】
故障診断部が識別判断する誤報側故障とは、火災(炎)でないにも関わらず火災と誤って判断され易い状態となる異常であり、また、失報側故障とは、火災(炎)であるにも関わらずこれを検知し難い状態となる異常である。
【0044】
このため故障診断部は、試験により得られた炎受光信号と非炎受光信号が、所定の上限値以上又は上限値を上回ったとき、非炎受光信号が所定の下限値以下又は下限値を下回ったとき、炎受光信号と非炎受光信号の比が所定の上限値以上又は上限値を上回ったとき、或いは、これらの組み合わせを、誤報側故障と識別判断し、また、故障診断部は、試験により得られた炎受光信号と非炎受光信号が、炎受光信号が所定の下限値以下又は下限値を下回ったとき、非炎受光信号が所定の上限値以上又は上限値を上回ったとき、炎受光信号と非炎受光信号の比が所定の下限値以下又は下限値を下回ったとき、或いは、これらの組み合わせを、失報側故障と識別判断する。
【0045】
このような故障診断が行われることで、誤報側故障であれば、火災(炎)でないにも関わらず火災と誤って判断され非火災報となり易い故障であることが分かることで、緊急度の高い故障と判断して対処することが可能となり、一方、失報側故障であれば、火災(炎)であるにも関わらず火災と判断されにくい故障であることが分かるので、失報を抑制する対処を行うことを可能とし、誤報側か失報側かの故障傾向が識別判断されることで、試験結果に基づく適切な対処ができることになる。
以下、詳細に説明する。
【0046】
[トンネル防災システムの概要]
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築されている。上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば25メートル又は50メートル間隔で火災検知器12が設置されている。
【0047】
火災検知器12は2組の火災検知部を備えることで、図2に示すように、トンネル長手方向上り側および下り側の両方向に検知エリア15を持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器12との検知エリア15が例えば右眼13Rと左眼13Lで相互補完的に重なるように連続的に配置され、検知エリア15内で起きた火災による炎からの赤外線を観測して火災を検知する。
【0048】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bには、非常用施設として、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備などが設置されるが、図示を省略している。
【0049】
防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに対し電源線を含む信号線14a,14bを引き出して火災検知器12が接続されており、火災検知器12には固有のアドレスが設定されている。
【0050】
また、防災受信盤10に対しては、消火ポンプ設備16、ダクト用の冷却ポンプ設備18、IG子局設備20、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30等が設けられており、火災検知器12と防災受信盤10は信号線14a,14bを介して所謂R型伝送で通信する。
【0051】
ここで、IG子局設備20は、防災受信盤10と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備32とネットワークを経由して結ぶ通信設備である。
【0052】
換気設備22は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0053】
警報表示板設備24は、トンネル内の利用者に対して、火災に伴う進入禁止警報等のトンネル内の異常を、電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備26は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備28は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備30はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0054】
[火災検知器]
(火災検知器の外観)
図3は火災検知器の外観を示した説明図、図4は火災検知器の機能構成の概略を示したブロック図である。
【0055】
図3に示すように、火災検知器12は、筐体46の上部(検知器カバー)に設けられたセンサ収納部48に、左右に分けて2組の透光性窓50R,50Lが設けられ、透光性窓50R,50L内の各々に、受光センサを備えた火災検知部が収容配置されている。また、透光性窓50R,50Lの近傍の、受光センサを見通せる位置に、透光性窓50R,50Lの汚れ試験に使用される外部試験光源を収納した2組の試験光源用透光窓52R,52Lが設けられている。
【0056】
以下の説明では、透光性窓50Rを右眼透光性窓50Rといい、透光性窓50Lを左眼透光性窓50Lという場合がある。
【0057】
(火災検知器の概略構成)
図4に示すように、火災検知器12には、検知器制御部54、伝送部56、電源部58、左右2組の火災検知部60R,60L、試験発光駆動部72、感度試験に用いられる内部試験光源74R,75Rと内部試験光源74L,75L、汚れ試験に用いられる外部試験光源76R,76Lが設けられている。以下の説明では、火災検知部60Rを右眼火災検知部60Rといい、火災検知部60Lを左眼火災検知部60Lという場合がある。
【0058】
検知器制御部54は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用される。
【0059】
伝送部56は信号線14の伝送線Sと伝送コモン線SCにより図1に示した防災受信盤10の伝送部36に接続され、各種信号がR型伝送により送受信される。
【0060】
電源部58は信号線14に含まれる電源線Bと電源コモン線BCにより図1に示した防災受信盤10から電源供給を受け、例えば検知器制御部54、伝送部56、左右2組の火災検知部60R,60L、試験発光駆動部72に対し所定の電源電圧が供給されている。
【0061】
試験発光駆動部72には、感度試験に使用する内部試験光源74R,75R,74L,75Lが接続され、また、汚れ試験に使用する外部試験光源76R,76Lが接続され、それぞれ発光素子としてクリプトンランプが設けられている。
【0062】
(火災検知部)
火災検知部60R,60Lは、炎検出センサ64、非炎検出センサ68、増幅処理部66,70を備える。例えば右眼火災検知部60Rを例にとると、炎検出センサ64と非炎検出センサ68の前面には検知器カバーに設けた右眼透光性窓50Rが配置されており、右眼透光性窓50Rを介して外部の検知エリアからの赤外線エネルギーが炎検出センサ64と非炎検出センサ68に入射されている。
【0063】
右眼火災検知部60Rは、例えば2波長式の炎検知により火災を監視している。炎検出センサ64は、右眼透光性窓50Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、炎に特有なCOの共鳴放射帯である4.4~4.5μmの波長帯域を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過させて、受光センサ素子により該赤外線線のエネルギーを検出して光電変換したうえで、増幅処理部66により増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する炎受光信号E1Rにして検知器制御部54へ出力する。ここで、炎検出センサ64と増幅処理部66は炎受光部を構成している。
【0064】
非炎検出センサ68は、左眼透光性窓50Lを介して入射した赤外線エネルギーの中から、5~6μmの波長帯域を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過させて、受光センサ素子により該赤外線のエネルギーを検出して光電変換したうえで、増幅処理部70により増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する非炎受光信号E2Rにして検知器制御部54へ出力する。ここで、非炎検出センサ68と増幅処理部70は非炎受光部を構成している。
【0065】
増幅処理部66,70には、プリアンプ、炎のゆらぎ周波数帯域を選択通過させるフィルタ及びパワーアンプ等が設けられている。
【0066】
(火災判断)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、火災判断部80の機能が設けられている。火災判断部80は、例えば、右眼火災検知部60Rの増幅処理部66,70から出力された炎受光信号E1Rと非炎受光信号E2Rの受光値(受光信号レベル)の相対比E1R/E2Rをとり、所定の閾値と比較することにより炎の有無を判定し、炎有りの判定により火災を検知した場合には、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号として火災検知情報を設定した火災信号を防災受信盤10へ送信させる制御を行う。なお、以下の説明では、炎受光信号E1Rの信号レベルを炎受光値E1R、非炎受光信号E2Rの信号レベルを非炎受光値E2Rという場合がある。各レベルは、例えば受光信号の所定時間(例えば2秒間)ごとの積分値等としても良い。左眼火災検知部60Lにおいても同様に行う。
【0067】
火災炎からの赤外線は、4.4~4.5μmの帯域が強く放射され、これに対し5~6μmの帯域の放射が比較的弱く、一方、車輛や人体の通過等に伴う性外線放射はその反対であることが知られており、上述のように構成することで火災を識別検知するようにしている。
【0068】
(感度試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、感度試験部82が設けられている。感度試験部82は試験部として機能する。感度試験部82は、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部72に指示して、内部試験光源74R,75R,74L,75Lを順番に発光駆動して火災検知部60R,60Lの感度試験を行わせる。なお、内部試験光源74R,75Rと内部試験光源74L,75Lは、それぞれ1つの光源で共用しても良い。
【0069】
例えば右眼火災検知部60Rにおける炎検出センサ64と増幅処理部66で構成された炎受光部の感度試験を例にとると、試験発光駆動部72は内部試験光源74R,75Rを発光駆動することにより、火災炎を模擬した炎疑似光を炎検出センサ64及び非炎検出センサ68に入射させる。内部試験光源74R,75Rからの炎疑似光は、炎検出センサ64で受光する炎に固有な4.4~4.5μm及び非炎検出センサ68で受光する5~6μmの放射エネルギーを含み、且つ、炎に固有な例えば1~8Hzのゆらぎ周波数をもつ光とされている。
【0070】
感度試験部82は、炎検出センサ64と増幅処理部66で構成された炎受光部と、非炎検出センサ68と増幅処理部70で構成された非炎受光部毎に感度試験を行う。
【0071】
例えば、炎検出センサ64と増幅処理部66で構成された炎受光部の感度試験は、工場出荷時に初期設定された基準受光値E1Rrefがメモリに記憶されており、異常がなければ感度試験で得られる炎受光値E1Rは基準受光値E1Rrefに略一致しており、炎受光値E1Rを基準受光値E1Rrefで割った検出感度は概ね1となっている。運用期間の経過等に伴い例えば炎検出センサ64の性能が低下し、感度が低下する場合は、炎受光値E1Rは徐々に低下し、例えば検出感度は0.9,0.8,0.7・・・といった値になる。
【0072】
このように検出感度が1以下に低下した場合、感度試験部82は感度試験により検出感度を求めると共に、検出感度の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で検出される炎受光値E1Rに補正値を乗算して感度補正を行い、火災判断部80は感度補正された受光値により火災を判断する。
【0073】
また、感度試験部82には、感度補正限界に対応した感度閾値、例えば感度閾値0.5が予め設定されており、感度試験で求められた検出感度が感度閾値以下又は感度閾値を下回った場合にセンサ部64の感度異常による故障と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号にセンサ故障情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。なお、センサ故障の判断を確実なものとするため、感度試験部82は複数回連続して感度異常による故障と判断される蓄積条件を充足した場合に、センサ故障を設定した応答信号を送信させても良い。なお、故障に伴う異常出力等により検出感度が増加する場合も同様にして補正し、限界に達すると異常とする。
【0074】
右眼火災検知部60Rにおける非炎検出センサ68と増幅処理部70で構成された非炎受光部の感度試験も、試験発光駆動部72は内部試験光源75Rを発光駆動することにより、同様にして感度試験が行われる。
【0075】
また、左眼火災検知部60Lにおける炎検出センサ64と増幅処理部66で構成される炎受光部と、非炎検出センサ68と増幅処理部70で構成される非炎受光部の感度試験についても、試験発光駆動部72により内部試験光源74L,75Lを発光駆動することにより、同様にして感度試験が行われる。
【0076】
更に、感度試験部82は、防災受信盤10からの試験信号を受信して行った右眼火災検知部60R及び左眼火災検知部60Lの感度試験により検出された炎受光値E1R,E1Lと非炎受光値E2R,E2Lを記憶し、故障診断部86による故障の識別判断で使用する。このような感度異常は、検出センサの故障だけではなく、例えば増幅回路部66の回路故障による場合もある。
【0077】
(汚れ試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、汚れ試験部84が設けられている。汚れ試験部84も試験部として機能する。汚れ試験部84は、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部72に指示して、外部試験光源76R,76Lを順番に発光駆動して透光性窓50R,50Lの汚れ試験を行わせる。
【0078】
例えば透光性窓50Rの汚れ試験を例にとると、試験発光駆動部72は外部試験光源76Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光を、透光性窓50Rを介して炎検出センサ64に入射させる。外部試験光源76Rからの炎疑似光は、炎検出センサ64で受光する炎に固有な4.4~4.5μm及び非炎検出センサ68で受光する5~6μmの放射エネルギーを含み、且つ、炎に固有な例えば1~8Hzのゆらぎ周波数をもつ光とされている。
【0079】
透光性窓50Rは工場出荷時に汚れはなく、光の透過性能は最大である。この状態で、汚れ試験で得られた炎受光値E1R,E2Rが基準受光値E1Rref,E2Rrefとしてメモリに記憶されており、減光率の演算に利用される。
【0080】
システム立上げ時の汚れ試験で得られる炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rは基準受光値E1Rref,E2Rrefに略一致しており、基準受光値から炎受光値を減算した値を基準受光値で割った減光率は概ね0となっている。運用期間が経過していくと、透光性窓50Rに汚れが付着し、減光率は、例えば0.1,0.2,0.3・・・いうように徐々に増加していく。
【0081】
このように減光率が増加した場合、汚れ試験部84は汚れ試験により減光率を求めると共に、(1-減光率)の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で検出される受光値(感度試験の補正値により補正された受光値)を補正値により除算して汚れ補正を行い、火災判断部80は汚れ補正された受光値により火災を判断する。なお、運用状態で検出される受光値は、前述した感度試験で得られた補正値および汚れ試験で得られた補正値の両方に基づいて補正されることになる。
【0082】
また、汚れ試験部84には、汚れ補正限界に対応した減光率となる汚れ閾値、例えば汚れ閾値0.2が予め設定されており、感度試験で求められた減光率が汚れ閾値以上又は汚れ閾値を上回った場合に透光性窓50Rの汚れ補正が限界に達した汚れ異常と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に汚れ異常情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。左眼火災検知部60Lにおいても同様に行う。
【0083】
更に、汚れ試験部84は、防災受信盤10からの試験信号を受信して行った透光性窓50R,50Lの汚れ試験により検出された炎受光値E1と非炎受光値E2を記憶しており、感度補正部82による感度補正に使用される。
【0084】
汚れ閾値よりも減光率が低い例えば0.3を汚れ予告閾値として設定し、汚れ試験時の減光率が汚れ予告閾値の0.3に達しており、しかし汚れ閾値の0.2に達してにいないときには、汚れ補正限界に近づいていることを示す汚れ予告の異常情報を防災受信盤10に送信するようにしても良い。ここで、減光率が汚れ閾値0.2に達したときの汚れ異常、及び、減光率が汚れ予告閾値0.3に達したときの汚れ予告の異常情報は、各々、故障診断情報の一つとすることができる。
【0085】
(故障診断部)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、故障診断部86の機能が設けられている。
【0086】
故障診断部86は、例えば、感度試験部82が防災受信盤10からの試験信号を受信して行った例えば右眼火災検知部60Rの感度試験により検出して記憶している炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rを読出し、炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rの各々について、誤報側故障か失報側故障かを識別判断する。
【0087】
ここで、誤報側故障とは、火災(炎)でないにも関わらず火災と誤って判断され易い状態となる異常であり、失報側故障とは、火災(炎)であるにも関わらず火災が検知され難い状態になる異常である。
【0088】
故障診断部86による誤報側故障か失報側故障かの識別判断は次のようになる。まず、故障診断部86による誤報側故障の識別判断は、
(A1) 炎受光値E1Rが所定の上限閾値E1Rmax以上又は上限閾値E1Rmaxを上回ったとき、
(A2) 非炎受光値E2Rが所定の下限閾値E2Rmin以下又は下限閾値E2Rminを下回ったとき、
(A3) 炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rの相対比RR=(E1R/E2R)が所定の上限閾値RRmax以上又は上限閾値RRmaxを上回ったとき、
(A4) (A1)~(A3)の組み合わせ、
の何れかの場合となる。
【0089】
一方、故障診断部86による失報側故障の識別判断は、
(B1) 炎受光値E1Rが所定の下限閾値E1Rmin以下又は下限閾値E1Rminを下回ったとき、
(B2) 非炎受光値E2Rが所定の上限閾値E2Rmax以上又は上限閾値E2Rmaxを上回ったとき、
(B3) 炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rの相対比RR=(E1R/E2R)が所定の下限閾値RRmin以下又は下限閾値RRminを下回ったとき、
(B4) (B1)~(B3)の組み合わせ、
の何れかの場合となる。左眼火災検知部60Lにおいても同様に行う。
【0090】
また、故障診断部86は、誤報側故障を識別判断した場合、防災受信盤10に故障予兆信号を送信する制御を行う。誤報側故障は火災検知器12が誤って火災信号を送信して防災受信盤10から非火災報が出されるという緊急度の高い故障となることから、誤報側故障を識別判断した場合は、速やかに防災受信盤10に故障予兆信号を送信して非火災報を防止するための処理制御を可能とする。
【0091】
また、故障診断部86は、誤報側故障又は失報側故障の識別判断結果を火災判断部80に通知し、火災判断条件を変更させる制御を行う。火災判断部80は、故障診断部86で誤報側故障が識別判断された場合、火災を判断する所定の蓄積条件を厳格な所定の蓄積条件に変更する。例えば、火災判断部80は、火災判断の蓄積回数を増加させることで蓄積条件を厳格にするように変更する。これにより誤報側故障により誤った火災判断により火災信号を送信する可能性が高くなっていることから、蓄積条件を厳格な条件に変更して誤った火災判断による火災信号を送信しにくくし、防災受信盤10による非火災報を防止可能とする。
【0092】
また、火災判断部80は、故障診断部86で失報側故障が識別判断された場合、火災を判断する蓄積条件を緩和した蓄積条件に変更する。例えば、火災判断部80は、火災判断の蓄積回数を低下させることで蓄積条件を緩和するように変更する。これは失報側故障により火災を検知し難くなっていることから、蓄積条件を緩和して火災判断による火災信号を送信し易くし、防災受信盤10による失報を防止可能とする。
【0093】
また、故障診断部86は、試験結果に応じて識別された誤報側故障と失報側故障の識別判断結果を防災受信盤10に送信する制御を行う。故障診断部86は識別された誤報側故障と失報側故障の識別判断結果を故障診断情報として記憶しており、例えば、感度試験の終了時に防災受信盤10に送信し、又は、防災受信盤10からの読出し要求を受けたときにログ情報として記憶している故障診断情報を読み出して送信する制御を行う。このとき、あわせて汚れ試験部84による汚れ試験時の受光値をログ情報に含めることができる。
【0094】
このため防災受信盤10は、火災検知器12で試験により得られた誤報側故障と失報側故障の識別判断結果となる故障診断情報を受信して記憶し、必要に応じて故障診断情報を読み出して参照又は解析、更には、外部への持ち出し利用を可能とし、防災受信盤10側での火災検知器12の故障情報に基づく、点検や交換修理等の運用管理を適切に行うことを可能とする。
【0095】
また、故障診断部86は、汚れ試験部84が防災受信盤10からの試験信号を受信して行った透光性窓50R,50Lの汚れ試験により検出して記憶している炎受光値E1と非炎受光値E2を読み出し、炎受光値E1と非炎受光値E2の各々について、感度試験の場合と同様に、故障を識別判断し、識別結果に応じた処理制御を行うことができる。なお、汚れに関する異常は失報側故障と同様に扱うことができる。汚れ異常を知った管理者は透光性窓を清掃して対応すれば良く、隣接する火災検知器が健全であればこの清掃時期に猶予を設けることもできる。
【0096】
[火災検知器の制御動作]
(制御動作の概要)
図5は火災検知器の制御動作を示したフローチャートである。図5に示すように、火災検知器12の検知器制御部54は、ステップS1で火災判断部80による火災判断処理を行っており、ステップS2で防災受信盤10からの試験信号の受信を判別するとステップS3に進み、感度試験部82による感度試験を行い、続いて、ステップS4に進んで汚れ試験部84による汚れ試験を行い、これらの試験が済むとステップS5に進み、試験により得られた受光値に基づき故障診断部86による故障診断処理を行う。
【0097】
(火災判断処理)
図6図5のステップS1の火災判断処理の詳細を示したフローチャートであり、火災判断部80の制御動作となる。
【0098】
図6に示すように、火災判断部80は、図4の例えば右眼火災検知部60Rを例にとると、ステップS11で増幅処理部66,70から出力された炎受光信号E1Rと非炎受光信号E2RをAD変換により読込み、ステップS12で炎受光信号E1が所定値以上であればステップS13に進み、炎受光信号E1Rと非炎受光信号E2Rの相対比(E1R/E2R)を算出し、所定値以上の場合は第1段階の火災判定を充足したとしてステップS14に進む。
【0099】
続いて、火災判断部80はステップS14で炎受光信号E1Rの高速フーリエ変換(FFT演算)を行い、ステップS15で例えば8Hz以下の低周波側と8~16Hzの高周波側の成分の比が所定値以上であれば第2段階の火災判定を充足したとしてステップS16に進み、所定の蓄積条件としてステップS11~S15による第1段階及び第2段階の火災判定が所定の蓄積回数だけ連続して成立したかの蓄積条件の通過の有無を判定する。
【0100】
続いて、火災判断部80は、ステップS16で蓄積条件としての蓄積回数を充足することを判断すると、ステップS17に進んで火災を断定し、火災信号を防災受信盤10に送信して火災処理を行わせる。続いて、ステップS18で防災受信盤10からの火災復旧信号の受信を判別するとステップS19で火災蓄積回数をクリアして復旧し、初期のステップS11に戻る。左眼火災検知部60Lについても並行して同様に行われる。
【0101】
(故障診断処理)
図7図5のステップS5の故障診断処理の詳細を示したフローチャートであり、故障診断部86の制御動作となる。
【0102】
図7に示すように、故障診断部86は、右眼火災検知部60Rを例にとると、ステップS21で例えば感度試験により検出記憶された試験結果しての炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rを読込み、ステップS22で炎受光値E1Rが正常範囲(上限閾値E1Rmaxと下限閾値E1Rminの間の範囲)か否か判別し、正常範囲にないときはステップS23に進み、上限閾値E1Rmax以上であればステップS31に進んで誤報側故障と識別する。また、故障診断部86は、ステップS23で炎受光値E1Rが上限閾値E1Rmax以上でないときはステップS24に進み、炎受光値E1が下限閾値E1Rmin以下であればステップS32に進み、失報側故障と識別する。
【0103】
故障診断部86は続いてステップS25に進み、非炎受光値E2が正常範囲(上限閾値E2Rmaxと下限閾値E2Rminの間の範囲)か否か判別し、正常範囲にないときはステップS26に進み、上限閾値E2Rmax以上であればステップS32に進んで失報側故障と識別する。故障診断部86は、ステップS26で非炎受光値E2が上限閾値E2Rmax以上でないときはステップS27に進み、ステップS27で非炎受光値E2Rが下限閾値E2Rmin以下であればステップS31に進み、誤報側故障と識別する。
【0104】
続いて、故障診断部86は、ステップS28に進んで相対比RR=(E1R/E2R)を算出し、相対比Rが正常範囲(上限閾値Rmaxと下限閾値Rminの間の範囲)か否か判別し、正常範囲にないときはステップS29に進み、上限閾値RRmax以上であればステップS31に進んで誤報側故障と識別する。故障診断部86は、ステップS29で相対比RRが上限閾値RRmax以上でないときはステップS30に進み、ステップS30で相対比RRが下限閾値RRmin以下であればステップS32に進み、失報側故障と識別する。左眼火災検知部60Lにおいても並行して同様に行う。
【0105】
なお、図6の故障診断処理は、前述した(A1)~(A3)の誤報側故障の識別と、(B1)~(B3)の失報側故障の識別を例にとっているが、これらを組み合わせた故障診断としても良い。また、故障診断部86は汚れ試験により検出して記憶された炎受光値E1Rと非炎受光値E2Rについても、減光率を使用した前述の概略に沿って所定の故障診断処理を行う。
【0106】
[防災受信盤]
(防災受信盤の概略構成)
図8は防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図である。図8に示すように、防災受信盤10は受信制御部34を備え、受信制御部34は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0107】
受信制御部34に対しては伝送部36a,36bが設けられ、伝送部36a,36bから引き出した信号線14a,14bに上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに設置した火災検知器12がそれぞれ複数台接続されている。
【0108】
また、受信制御部34に対しスピーカ、警報表示灯等を備えた警報部38、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部40、各種スイッチ等を備えた操作部42、IG子局設備20を接続するモデム44が設けられ、更に、図1に示した消火ポンプ設備16、冷却ポンプ設備18、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30が接続されたIO部45が設けられている。
【0109】
受信制御部34は、伝送部36a,36bに指示して火災検知器12のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を繰り返し送信しており、火災検知器12は自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、火災検知、試験結果等の自己の状態情報を含む応答信号を返信する。なお、以下の説明では、火災検知の旨の情報を含む応答信号を火災信号という場合がある。火災信号は、火災を検知したときに火災検知器12から防災受信盤10へ割込信号として送信するようにしても良い。
【0110】
また、防災受信盤10の受信制御部34は、火災検知器12から火災信号の受信を検知した場合は警報部38により火災警報を出力させると共にIO部45を介し他設備の連動制御を指示する制御を行う。
【0111】
また、受信制御部34は、システムの立上げ時あるいは運用中の所定の周期毎に、火災検知器12のアドレスを順次指定した試験指示コマンドを設定した試験信号を送信し、火災検知器12に感度試験、汚れ試験を行わせ、それぞれの試験結果を応答させる制御を行う。必要に応じ、故障診断情報や各試験時の各受光値等の付加情報を含めて送信するようにする。また、操作部42により特定の火災検知器12のアドレスを指定した試験操作により、個別の火災検知器12に対し試験信号を送信して試験を行わせることもできる。
【0112】
また、受信制御部34は火災検知器12の感度試験で得られた故障の応答信号を受信した場合、火災検知器12のアドレスを特定した故障警報を警報部38の警報音、表示部40のディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0113】
また、受信制御部34は火災検知器12の感度試験により得られた汚れ異常の応答信号を受信した場合、火災検知器12のアドレスを特定した汚れ警報を警報部38の警報音、表示部40のディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0114】
また、受信制御部34は、火災検知器12の感度試験及び汚れ試験により得られた故障又は汚損等の異常の応答信号を受信した場合、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に送信し、故障警報又は異常警報を報知させる制御を行う。
【0115】
また、受信制御部34は、例えば表示部40のディスプレイを利用した操作部42の操作に基づき、火災検知器12に設定されている感度異常、汚れ異常を判断するための閾値を変更させる制御を行う。この閾値を変更させる制御は、火災検知器12の閾値を一斉に変更させることもできるし、アドレスを指定して特定の火災検知器12の閾値を変更させることもできる。もちろん、操作部42の操作によらず自動判別、自動制御により閾値変更するようにしても良い。
【0116】
(火災検知器の故障診断結果に基づく制御機能)
受信制御部34は、上り線トンネル1a及び下り線トンネル1bに設置された複数の火災検知器12が、隣接した他の火災検知器12との間の検知エリアを相互補完的に重複して監視していることから、火災検知器12から故障診断情報として受信した受信した失報側故障の識別結果に応じ、隣接して配置された他の火災検知器12の検出感度を高めるように変更する制御を行う。
【0117】
このため、火災検知器12の失報側故障が識別された場合には、同じ検知エリアを監視している他の火災検知器12の検出感度を高められることで、失報側故障が識別された火災検知器12の火災監視を補償して、確実に火災を検知して対処することができる。
【0118】
また、受信制御部34は、火災検知器12から故障診断情報として受信した誤報側故障と失報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数に基づき、火災検知器12の劣化を判断して報知する制御を行う。受信制御部34は、例えば、誤報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数等が高いときには劣化が進んでいると判断して報知し、これにより担当者は迅速な点検強化や交換計画の立案等を行うことができる。また、受信制御部34は、失報側故障の発生頻度、継続期間、発生回数等が高いときには劣化が進んでいるが、隣接する火災検知器が健全である場合は緊急性は比較的低いと判断して劣化予兆を報知し、担当者は余裕を持って点検強化や交換計画の立案等を行うことが可能となる。
【0119】
また、受信制御部34は、火災検知器12から故障診断情報として受信した誤報側故障又は失報側故障に基づき、例えば、誤報側故障又は失報側故障の発生回数をカウントし、所定の閾値回数に達したとき蓄積条件を充足したとして火災検知器12の故障予兆と判断して報知する制御を行う。
【0120】
この場合、受信制御部34は、誤報側故障は緊急度が高いことから、例えば蓄積なしで故障予兆と判断して報知することで、担当者による点検強化や交換計画の立案等を可能とし、一方、失報側故障は隣接する火災検知器が健全である場合は緊急度が比較的低いことから所定の蓄積条件を充足したときに故障予兆と判断して報知することで、担当者による必要な点検や交換計画の立案等を可能とする。
【0121】
また、受信制御部34は、火災検知器12の故障予兆(信頼性低下)を判断した状態で(火災検知器12から故障予兆信号を受信した場合を含む)、故障予兆と判断した火災検知器12から火災信号を受信したとき、非火災報と判断してトンネル進入禁止警報を含む所定の火災処理を行わないようする。このため、故障予兆と判断された火災検知器12が誤った火災判断により火災信号を送信してきても、例えば車両進入禁止警報を含む火災処理を行わないようにすることで、車輛の急停止に伴う事故の発生や渋滞の発生などの、非火災報に伴う問題を解消する。
【0122】
また、受信制御部34は、火災検知器12の故障予兆を判断した場合(火災検知器12から故障予兆信号を受信した場合を含む)、図1に示した遠方監視制御設備32に故障予兆移報信号を送信して報知させる制御を行う。これにより、複数のトンネルを監視している遠方監視制御設備32側の担当者は、火災検知器12の信頼性が低下していることを知ることができ、トンネル側の火災検知器12による火災の監視状況を適切に把握して、トンネルの運用管理に活用できる。
【0123】
このような故障予兆は、火災検知器12の火災検知部に不具合が発生している場合だけでなく、設置環境の、例えば検知エリア15に赤外線発生源が存在している場合に、この赤外線が試験光に不要に混入することにより生ずる場合もあり、故障予兆を知った管理者は、必要に応じ不要な赤外線源を確認して撤去する等の対処も可能になる。
【0124】
[本発明の変形例]
(火災検知器)
上記の実施形態は、2波長方式の火災検知器を例にとっているが、他の方式でも良く、例えば、前述した2波長に加え、COの共鳴放射帯である4.5μm帯の短波長側の例えば、2.3μm付近の波長帯域における放射線エネルギーを2波長式と同様の手法で検知し、これらの3波長帯域における各受光信号の相対比によって炎の有無を判定する3波長式の炎検知器としても良い。
【0125】
(P型のトンネル防災システム)
また、本発明は火災検知器を防災受信盤からの信号線単位に接続したP型のトンネル防災システムでも適用できる。この場合、火災検知器は自己で処理制御し、故障予兆をパルス信号で防災受信盤に送るようにすれば良い。
【0126】
(その他)
また本発明は、トンネル防災システム以外の防災システムにも適用することができる。
【0127】
また本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0128】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
12:火災検知器
14a,14b:信号線
16:消火ポンプ設備
18:冷却ポンプ設備
20:IG子局設備
22:換気設備
24:警報表示板設備
26:ラジオ再放送設備
28:テレビ監視設備
30:照明設備
32:遠方監視制御設備
34:受信制御部
36,36b,56:伝送部
46:筐体
48:センサ収納部
50R,50L:透光性窓
52R,52L:試験光源用透光窓
54:検知器制御部
58:電源部
60R,60L:火災検知部
64:炎検出センサ
66,70:増幅処理部
68:非炎検出センサ
72:試験発光駆動部
74R,74L,75R,75L:内部試験光源
76R,76L:外部試験光源
80:火災判断部
82:感度試験部
84:汚れ試験部
86:故障診断部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8