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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/08 20060101AFI20230426BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20230426BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G02C7/08
G02B3/08
G02B5/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018244567
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106645
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中條 恵介
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/120588(WO,A1)
【文献】特開昭62-062340(JP,A)
【文献】特開2013-047823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0128334(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108646448(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0241196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/08
G02B 3/08
G02B 5/18
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が透過する透過領域と光が透過しない非透過領域とを有する回折格子のパターンが電気活性によって発現し、電気的に失活することによって逼塞する、電気活性フレネルゾーンプレートを有し、全体の領域の度数が使用者の第1の処方度数に合うように決定されている眼鏡レンズであって、
前記眼鏡レンズ上の前記パターンが発現した領域は、視線センサによって検出される使用者の視線の方向と前記眼鏡レンズとの交点を含み、
前記パターンは、前記パターンが発現した領域の度数が前記第1の処方度数とは異なる度数であって前記視線の方向の物体が見やすくなるように矯正された度数である第2の処方度数に合うように決定されている
眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記第1の処方度数は、遠くの物体が見やすくなるように矯正された度数であり、
前記第2の処方度数は、近くの物体が見やすくなるように矯正された度数である
請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記パターンが発現した領域には、前記全体の領域における中央以外の位置が含まれる
請求項1または請求項2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記パターンが発現した領域とは、第1の領域であって、
前記視線の方向とは、第1の視線の方向であって、
前記電気活性フレネルゾーンプレートを前記眼鏡レンズ上の前記第1の領域と、前記第1の領域とは異なる第2の領域との複数有し、
前記第2の領域は、視線センサによって検出される前記使用者の視線の方向であって前記第1の視線の方向とは異なる第2の視線の方向と前記眼鏡レンズとの交点を含む
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記パターンが発現していない場合の透過率は、前記パターンが発現している場合の透過率以下である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記パターンが発現している場合における前記非透過領域の外観は、ミラー、もしくは前記使用者の肌の色と同じ色または前記使用者の肌の色と似た色である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の累進レンズでは、レンズの領域毎に度数が決められており、近用領域や遠用領域などの領域が、物体を見る距離によって使い分けられる。従来の累進レンズでは、領域毎に度数が固定されている。
フレネルレンズ型の電気活性な液晶レンズにおいて、電気的な制御によって焦点が調整可能であるレンズが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-47823号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様における眼鏡レンズは、光が透過する透過領域と光が透過しない非透過領域とを有する回折格子のパターンが電気活性によって発現し、電気的に失活することによって逼塞する、電気活性フレネルゾーンプレートを有し、全体の領域の度数が使用者の第1の処方度数に合うように決定されている眼鏡レンズであって、前記眼鏡レンズ上の前記パターンが発現した領域は、視線センサによって検出される使用者の視線の方向と前記眼鏡レンズとの交点を含み、前記パターンは、前記パターンが発現した領域の度数が前記第1の処方度数とは異なる度数であって前記視線の方向の物体が見やすくなるように矯正された度数である第2の処方度数に合うように決定されている
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の実施形態に係る眼鏡の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るフレネルゾーンプレートの一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るフレネルゾーンプレートのパターンの一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る可変領域が備えられる位置の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る不正乱視を波面補正の方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る眼鏡1の一例を示す図である。眼鏡1は、右眼用眼鏡レンズ11と、左眼用眼鏡レンズ12とを備える。
右眼用眼鏡レンズ11は、右眼用可変領域111と、右眼用非可変領域112とを有する。右眼用眼鏡レンズ11は、右眼用可変領域111に右眼用フレネルゾーンプレート13を有する。左眼用眼鏡レンズ12は、左眼用可変領域121と、左眼用非可変領域122とを有する。左眼用眼鏡レンズ12は、左眼用可変領域121に左眼用フレネルゾーンプレート14を有する。
【0007】
右眼用眼鏡レンズ11と、左眼用眼鏡レンズ12との構成は同様であるため、以下では右眼用眼鏡レンズ11と、左眼用眼鏡レンズ12とを区別しない場合には眼鏡レンズ10と総称して説明する。当該場合においては、右眼用フレネルゾーンプレート13と、左眼用フレネルゾーンプレート14とをフレネルゾーンプレート20と総称して説明する。当該場合においては、右眼用可変領域111と、左眼用可変領域121とを可変領域30と総称して説明する。右眼用非可変領域112と、左眼用非可変領域122とを非可変領域40と総称して説明する。
【0008】
非可変領域40は、一例として、遠くの物体を見るための領域である遠用領域として用いられる。可変領域30は、フレネルゾーンプレート20によって焦点距離を変更可能な領域である。可変領域30は、一例として、近くの物体を見るための領域である近用領域、及び遠用領域として用いられる。
【0009】
ここで図2を参照し、フレネルゾーンプレート20について説明する。図2は、本実施形態に係るフレネルゾーンプレート20の一例を示す図である。
【0010】
フレネルゾーンプレート20は、透過領域T(透過領域T1、T2、T3、・・・Tn)と、非透過領域N(非透過領域N1、N2、N3、・・・Nn)とが交互に配置された同心円状の輪帯である。透過領域Tとは、光を通す輪帯である。非透過領域Nとは、フレネルゾーンプレート20が電気活性の状態にある場合において光を吸収または反射させる輪帯である。非透過領域Nは、フレネルゾーンプレート20が電気活性の状態にない場合においては光を通す。
【0011】
中心Oは、フレネルゾーンプレート20の同心円の中心である。半径r1は非透過領域N1の半径を示し、半径r2は透過領域T1の半径を示す。ここで透過領域の半径には中心Oに近い半径と、中心Oから遠い外側の半径とがあるが、フレネルゾーンプレートの定義における半径では外側の半径を用いる。そして半径r3は非透過領域N2の半径を示す。つまり、非透過領域は奇数番目の半径によって定められ、透過領域は偶数番目の半径によって定められる。
【0012】
フレネルゾーンプレート20では、電気活性によってパターンPが発現する。また、フレネルゾーンプレート20では、パターンPが電気的に失活することによって逼塞する。パターンPとは、フレネルゾーンプレート20が電気活性の状態にある場合において、上述した透過領域Tと、非透過領域Nとによって形成される同心円状のパターンである。ここで透過領域Tと非透過領域Nとは交互に配置されているため、パターンPが発現したフレネルゾーンプレート20は回折格子として機能する。
つまり、フレネルゾーンプレート20では、光が透過する透過領域と光が透過しない非透過領域とを有する回折格子のパターンが電気活性によって発現し、電気的に失活することによって逼塞する。
【0013】
フレネルゾーンプレート20では、パターンPが発現し、透過領域Tを透過する光は回折する。フレネルゾーンプレート20では、透過領域Tを通じて回折する回折光の回折角によって、眼鏡レンズ10の可変領域30の焦点距離が変化する。つまり、眼鏡レンズ10の度数も回折角によって変化する。
【0014】
フレネルゾーンプレート20はパターンPを発現させることによって、一例として、可変領域30の焦点距離を、遠用領域に対応する焦点距離から近用領域に対応する焦点距離へと変化させる。
【0015】
ここで図3を参照し、フレネルゾーンプレート20のパターンPについて説明する。図3は、本実施形態に係るフレネルゾーンプレート20のパターンPの一例を示す図である。図3の部分Aは、図2の部分Aに対応する。パターンPは、非透過領域Nの半径の組によって指定される。
【0016】
図3の例では、パターンPは、半径r1、半径r2、半径r3、半径r4、半径r5、半径r6、半径r7、半径r8、及び半径r9の組によって指定される。それぞれの半径の長さは式(1)によって、決定される。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで式(1)において、nは輪帯がn番目であること、fは焦点距離、λは光の波長を示す。光学設計では一般的に波長546nmのe線が基準として用いられる。式(1)でもλは波長546nmが一般的に用いられる。
【0019】
フレネルゾーンプレート20では、所望の度数に応じて、非透過領域Nの半径の組によって指定されるパターンPが決定される。焦点距離を短くするには式(1)におけるfの値を小さく設定すればよい。
なお、本実施形態では、一例として、フレネルゾーンプレート20のパターンPは、眼鏡レンズ10の製造時に決定され固定される。
【0020】
平面に貼り付けられた場合のフレネルゾーンプレートの各輪帯のn番目の半径rnは、上述の式(1)によって表現される。フレネルゾーンプレート20は眼鏡レンズ10の曲面に貼り付けられているため、フレネルゾーンプレート20の各輪帯のn番目の半径は、平面に貼り付けられた場合の半径rnを、曲面に対応するように変換して算出される。
【0021】
図1に戻って眼鏡1の説明を続ける。
フレネルゾーンプレート20には、例えば、エレクトロクロミック、電子ミラー、及び電気泳動表示素子などが用いられる。フレネルゾーンプレート20の電気活性を切り替えるためのスイッチ、及び電源(いずれも不図示)は、例えば、眼鏡1のフレームに備えられる。
【0022】
なお、フレネルゾーンプレート20には、液晶が用いられてもよい。ただし、液晶の封入によって可変レンズ部分が狭くなる場合があるため、眼鏡レンズ10において可変レンズ部分の範囲の制限を小さくするためには、フレネルゾーンプレート20は、上述したエレクトロクロミック、電子ミラー、及び電気泳動表示素子などが用いられることが好ましい。
【0023】
フレネルゾーンプレート20は、眼鏡レンズ10の物体側の表面に備えられる。なお、フレネルゾーンプレート20は、眼鏡レンズ10の内部の層に備えられてもよい。
【0024】
なお、非透過領域Nには、パターンPが発現している場合における非透過領域Nの外観が、眼鏡レンズ10が装用された状態において目立たなくするための処理が施されてもよい。例えば、パターンPが発現している場合に眼鏡レンズ10を装用した状態において外観が目立つことのないように、非透過領域Nをミラーにする、眼鏡レンズ10の使用者の肌の色と同じ色または使用者の肌の色と似た色で遮光するなどの処理が施されてもよい。
【0025】
ここで眼鏡レンズ10の透過率について説明する。
上述したようにフレネルゾーンプレート20は、透過領域Tと、非透過領域Nとが交互に配置されているため、眼鏡レンズ10の表面において、可変領域30と、非可変領域40とで明るさが異なる場合がある。可変領域30と、非可変領域40とで明るさが異なる場合があるため、可変領域30を近用領域として用いて近くの物体を見た場合と、非可変領域40を遠用領域として用いて遠くの物体を見た場合とにおいて明るさが異なる場合がある。
【0026】
そこで眼鏡レンズ10において、非可変領域40の透過率と、可変領域30においてパターンPが発現していない場合の透過率とは、パターンPが発現している場合の可変領域30の透過率に応じて低くしてもよい。例えば、これらの透過率を一致させてよい。
つまり、眼鏡レンズ10において、フレネルゾーンプレート20のパターンPが発現していない場合の透過率は、パターンPが発現している場合の透過率に応じていてもよい。
【0027】
本実施形態では、可変領域30の位置は、眼鏡レンズ10における中央である。可変領域30の位置は、眼鏡レンズ10における中央以外の位置であってもよい。例えば、下方の近くの物体を見る場合には、眼鏡レンズ10の下方に可変領域30が備えられ、上方の近くの物体を見る場合には、眼鏡レンズ10の上方に可変領域30が備えられてもよい。
可変領域30の位置が眼鏡レンズ10における中央以外の位置に備えらえる場合、パターンPは、非透過領域Nの半径の組に加え、同心円の中心Oの位置によって指定される。
また、眼鏡レンズ10は、用途に応じて可変領域30を複数有してもよい。
【0028】
ここで図4を参照し、可変領域30が備えられる位置の他の例について説明する。図4は、本実施形態に係る可変領域30が備えられる位置の一例を示す図である。図4の眼鏡レンズ10aとは、眼鏡レンズ10において可変領域30が複数中央以外の位置に備えられた場合の眼鏡レンズである。可変領域31a、及び可変領域32aは、中央以外の位置に備えられる可変領域30の一例である。
【0029】
例えば読書をする場合、本の紙面に向けられる使用者の視線は、使用者の姿勢によって様々に変わり得る。例えば、椅子に座って本を読む場合には、視線は水平方向からやや下方に向けられる。また例えば、仰向けになって頭上に持ち上げて本を読む場合には、視線は鉛直方向つまりレンズの中心を通る方向か、もしくは鉛直方向からレンズの上部にややずれた方向に向けられる。
【0030】
方向D1は、使用者の眼Eが物体O1を見る場合の視線の方向である。物体O1は、例えば、椅子に座って本を読む場合の本の紙面である。方向D2は、使用者の眼Eが物体O2を見る場合の視線の方向である。物体O2は、例えば、仰向けになって頭上に持ち上げて本を読む場合の本の紙面である。
【0031】
点EP1は、方向D1と眼鏡レンズ10aとの交点である。眼鏡レンズ10aでは、可変領域31aは、可変領域31aが点EP1を含む位置に備えられる。点EP2は、方向D2と眼鏡レンズ10aとの交点である。眼鏡レンズ10aでは、可変領域32aは、可変領域32aが点EP2を含む位置に備えられる。
可変領域30が複数備えられる場合には、眼鏡レンズ10を装用した使用者が様々な姿勢で読書をする場合などに好適である。
【0032】
本実施形態では、フレネルゾーンプレート20のパターンPが固定である場合について説明したが、これに限らない。パターンPは動的に決定されてもよい。
例えば、パターンPは、眼鏡1の使用者の処方度数に応じて動的に決定されてもよい。パターンPが眼鏡1の使用者の処方度数に応じて動的に決定される場合、パターンPは眼鏡レンズ10の製造時に処方度数に応じて決定され、固定されたパターンとなる。
【0033】
別の例では、パターンPは、眼鏡レンズ10の使用時の見る物体の距離に応じて、使用者の操作によって変更可能であってもよい。パターンPが使用者の操作によって変更可能である場合においても、パターンPは使用者の処方度数に応じて決定されたパターンを含んでよい。
【0034】
また、パターンPは、眼鏡1の使用者の視線に応じて発現位置が動的に決定されてもよい。パターンPが眼鏡1の使用者の視線に応じて動的に決定される場合、パターンPは、一例として、微細なドットマトリックスである。眼鏡1には、使用者の視線を検出する視線センサが備えられ、パターンPは、当該視線センサが検出した視線の方向に応じて即時に変化する。
例えば、ドットマトリックスとしてのパターンPは、フレネルゾーンプレート20において視線センサによって検出された視線と眼鏡レンズ10との交点を含む領域において発現するように変化する。
別の例では、発現位置が動的なパターンPは、操作ボタンが操作されることによって、その発現位置を変化する。
【0035】
本実施形態では、フレネルゾーンプレート20のパターンPは、同心円である場合について説明したが、これに限らない。フレネルゾーンプレートのパターンは、処方度数等の条件に合わせられた同心楕円状のパターンであってもよい。同心楕円状のパターンを有するフレネルゾーンプレートは、乱視補正となる。
【0036】
また、フレネルゾーンプレート20のパターンPの輪帯の形状を円から不正乱視に合わせて変えれば、角膜・水晶体・網膜の形状に起因する不正乱視を波面補正することもできる。
【0037】
ここで図5を参照し、不正乱視を波面補正の方法について説明する。図5は、本実施形態に係る不正乱視を波面補正の方法の一例を示す図である。
従来、角膜形状解析装置を用いて同心円状のパターンを角膜に反射させて、角膜に映ったパターンを観察することによって、角膜の乱視状態の検査が行われることがある。正常な状態では角膜に映ったパターンは正円であるが、不正乱視の状態では円が崩れる。図5に示す不正乱視パターンAPは角膜に映ったパターンの一例であり、円が崩れており不正乱視の状態に対応する。
【0038】
円が崩れた不正乱視パターンAPのうち部分Cを中心として軸度AXの位置における屈折力を求める。ここで部分Cは、角膜形状解析装置の同心円状のパターンの中心が映った部分である。この軸度AXの位置における屈折力を求める操作を、360度全ての軸度について繰り返し、各軸度AXの位置の屈折力を求める。
【0039】
求めた屈折力に基づいて、眼の軸度による屈折力の相対変化とは逆方向の変化を、フレネルゾーンプレート20の輪帯半径に対して軸度毎に反映させる。ここで眼の軸度は、0度から360度までの範囲に値をもつ。
なお本実施形態における眼の軸度は、一般的な眼の乱視軸度とは異なる。一般的な定義では、眼の軸度は、中心を通る直線であるため0度から180度までの範囲に値をもつ。一方、本実施形態では眼の軸度AXは、中心から片側に伸びた直線であるため、0度から360度までの範囲に値をもつ。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態に係る眼鏡レンズ10は、光が透過する透過領域Tと光が透過しない非透過領域Nとを有する回折格子のパターンPが電気活性によって発現し、電気的に失活することによって逼塞する、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)を有する。
この構成により、本実施形態に係る眼鏡レンズ10は、眼鏡レンズ10に入る光を回折させることができるため、度数を変化させることができる。従来の累進レンズでは、物体を見る距離によってレンズ内の領域が使い分けられ、物体を見る距離によってレンズ内の一部の領域しか用いることができなかった。本実施形態に係る眼鏡レンズ10では、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)は電気活性によってパターンPが発現するため、例えば、近くの物体を見る場合にパターンPを発現させて、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)の面積に応じて従来の累進レンズに比べて眼鏡レンズ10の広い領域を近用領域に用いることができる。
【0041】
また、本実施形態に眼鏡レンズ10では、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)のパターンPは動的に決定される。
この構成により、本実施形態に眼鏡レンズ10では、度数が動的に決定されるため、度数が所定の度数に固定される場合に比べて適切な度数を有することができる。ここで適切な度数とは、眼鏡レンズ10の使用者にとって所望の物体が見やすくなるように適切に矯正された度数である。
【0042】
また、本実施形態に眼鏡レンズ10では、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)のパターンPは、使用者の処方度数に応じて動的に決定される。
この構成により、本実施形態に眼鏡レンズ10では、パターンPが発現した領域の度数を使用者の処方度数に応じた度数にすることができるため、パターンPが発現した領域の度数が処方度数に合っていない事態が起こることを防ぐことができる。
【0043】
また、本実施形態に眼鏡レンズ10では、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)のパターンPは、使用者の視線に応じて動的に決定される。
この構成により、本実施形態に眼鏡レンズ10では、使用者の視線に応じた領域の度数を変化させることができ、スイッチなどによって電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)を制御する必要がないため、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)の操作を不要とすることができる。
【0044】
また、本実施形態に眼鏡レンズ10では、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)のパターンPが発現していない場合の透過率は、パターンPが発現している場合の透過率に応じている。
この構成により、本実施形態に眼鏡レンズ10では、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)のパターンPが発現している場合の明るさと、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)のパターンPが発現していない場合の明るさとの差を低減できるため、電気活性フレネルゾーンプレート(この一例において、フレネルゾーンプレート20)の発現や逼塞に伴う明るさの変化を使用者が感じにくい。
【0045】
また、本実施形態に眼鏡レンズ10では、パターンPが発現している場合における非透過領域Nの外観は、眼鏡レンズ10が装用された状態において目立たない。
この構成により、本実施形態に眼鏡レンズ10では、パターンPが発現している場合においてもパターンPが発現していない場合と比べて外観の変化が少なくなるため、外観が目立たない。
【0046】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…眼鏡、10…眼鏡レンズ、20…フレネルゾーンプレート、P…パターン、T…透過領域、N…非透過領域
図1
図2
図3
図4
図5