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特許7269012マトリックス材料としての特定のコポリカーボネートを含む多層複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】マトリックス材料としての特定のコポリカーボネートを含む多層複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230426BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230426BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230426BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20230426BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20230426BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20230426BHJP
   C08F 255/04 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFH
B32B5/28 A
B32B27/00 101
C08G81/00
C08L83/10
C08L69/00
C08F255/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018562670
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017063122
(87)【国際公開番号】W WO2017207611
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】16172989.2
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グリム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クールマン,ティモ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/065611(WO,A1)
【文献】特開2016-098376(JP,A)
【文献】特開2013-107979(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104655(WO,A1)
【文献】国際公開第94/016003(WO,A1)
【文献】特表2008-520807(JP,A)
【文献】特開2016-204480(JP,A)
【文献】特開2016-222774(JP,A)
【文献】特開2007-514854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0244528(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0344687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B32B1/00-43/00
C08F251/00-283/00
283/02-289/00
291/00-297/08
C08J5/04-5/10
5/24
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料の少なくとも1の層を含む繊維複合材料であって、前記繊維材料が、エンドレス繊維として又は織物及び編物の形態としてガラス繊維及び/又は炭素繊維から選択され、シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチックに埋め込まれており、前記シロキサン含有ブロック共縮合物が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物であり、前記シロキサンブロックが、以下の構造:
【化1】
(ここで、aは、1~150の繰り返し単位の平均数である。)、又は
【化2】
(ここで、aは、1~150の繰り返し単位の平均数である。)
から誘導される、繊維複合材料。
【請求項2】
繊維材料の少なくとも1の層を含む繊維複合材料であって、前記繊維材料が、エンドレス繊維として又は織物及び編物の形態としてガラス繊維及び/又は炭素繊維から選択され、シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチックに埋め込まれており、前記シロキサン含有ブロック共縮合物が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物であり、前記シロキサンブロックが、以下の構造(10)
【化3】
(ここで、
R5は、水素又はメチルであり、
R6及びR7は、独立して、メチルであり、
Vは、単結合、O、C1~C6-アルキル又はC1~C6-アルコキシであり、
Wは、単結合、C1~C6-アルキレン、C2~C5-アルキリデン又はC1~C6-アルコキシであり、
Yは、単結合、-CO-、-O-、C1~C6-アルキレン、C2~C5-アルキリデン、C1~C4-アルキルで一置換若しくは多置換されていてもよいC5~C6-シクロアルキリデン基、又はヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合されていてもよいC6~C12-アリーレンであり、
mは、2~6の繰り返し単位の平均数であり、
oは、10~400の繰り返し単位の平均数であり、
p及びqは、それぞれ0又は1である)
から誘導される、繊維複合材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維複合材料の少なくとも2つの相互に重ね合せた層を含む多層複合材料であって、3つの複合材料層の場合、これらが、互いに対して、繊維複合材料の2つの外層及び繊維複合材料の少なくとも1つの内層として定められており、繊維材料としてのエンドレス繊維の場合、これらが、各層内に一方向に配列されている、多層複合材料。
【請求項4】
繊維複合材料の前記内層が、実質的に同じ配向を有し、それらの配向が、繊維複合材料の前記外層に対して30°~90°回転しており、繊維複合材料の1つの層の配向が、その中に存在する一方向に配列した繊維の配向によって決まる、請求項3に記載の多層複合材料。
【請求項5】
前記層の少なくとも一部が同じ配向を有し、それに対して、少なくとも一部の他の層が30°~90°回転しており、前記外層が0°配向にある、請求項3に記載の多層複合材料。
【請求項6】
前記内層が同じ配向を有し、その配向が繊維複合材料の前記外層に対して30°~90°回転している、請求項3に記載の多層複合材料。
【請求項7】
繊維複合材料の前記外層の繊維体積含有率が、繊維複合材料の前記外層の体積に基づいて、50体積%以下である、請求項3から6のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項8】
前記シロキサン含有ブロック共縮合物の構成について、前記シロキサンブロックが、3000~20000g/molの分子量を有し、前記ポリカーボネートブロックが、15000~27000g/molの分子量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の繊維複合材料又は多層複合材料。
【請求項9】
a)繊維複合材料の少なくとも1つの内層及び繊維複合材料の2つの外層を提供するステップであって、個々の繊維複合材料層が、圧力-剪断振動下で、溶融シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチックを該シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチックのガラス転移温度を超えて予熱された原料繊維ベルトに適用することによって製造される、ステップ、
b)繊維複合材料の前記少なくとも1つの内層を繊維複合材料の前記外層間に挿入するステップであって、繊維複合材料の前記内層が同じ配向を有し、その配向が繊維複合材料の前記外層に対して30°~90°回転している、ステップ、
c)多層複合材料を与えるため、繊維複合材料の重ねた層を結合するステップ
を含む、多層複合材料を製造するための方法であって、
前記繊維複合材料が、繊維材料の少なくとも1の層を含む繊維複合材料であって、前記繊維材料が、エンドレス繊維として又は織物及び編物の形態としてガラス繊維及び/又は炭素繊維から選択され、シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチックに埋め込まれており、前記シロキサン含有ブロック共縮合物が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物であり、前記シロキサンブロックが、以下の構造:
【化4】
(ここで、aは、1~150の繰り返し単位の平均数である。)、
【化5】
(ここで、aは、1~150の繰り返し単位の平均数である。)、又は
【化6】
(ここで、
R5は、水素又はメチルであり、
R6及びR7は、独立して、メチルであり、
Vは、単結合、O、C1~C6-アルキル又はC1~C6-アルコキシであり、
Wは、単結合、C1~C6-アルキレン、C2~C5-アルキリデン又はC1~C6-アルコキシであり、
Yは、単結合、-CO-、-O-、C1~C6-アルキレン、C2~C5-アルキリデン、C1~C4-アルキルで一置換若しくは多置換されていてもよいC5~C6-シクロアルキリデン基、又はヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合されていてもよいC6~C12-アリーレンであり、
mは、2~6の繰り返し単位の平均数であり、
oは、10~400の繰り返し単位の平均数であり、
p及びqは、それぞれ0又は1である)
から誘導される、方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の繊維複合材料又は多層複合材料から得られるハウジング部品又は構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料の1又は複数の繊維層、及びマトリックス材料としてのケイ素含有コポリカーボネートを含む複合材料に関する。(1又は複数の)繊維層は、マトリックス材料に埋め込まれている。本発明はさらに、これらの複合材料を製造するためのプロセス、及び構造物又はハウジング部品の製造のためのその使用、及び構造物又はハウジング部品自体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーに基づくマトリックスを有する繊維含有複合材料又は多層複合材料は、以下及び先行技術の両方において、「複合材シート」又は「複合材料」と呼ばれる。
【0003】
繊維補強のない押出プラスチックシートと比べて、この種類の複合材シートは、より高い強度及び剛性を有し、さらには金属シートの強度及び剛性に達し、又は実際これらを超えることができる。この種類の材料の重要性は、例えば、エレクトロニクス及びIT産業だけでなく、自動車及び航空機産業におけるハウジング部品として、絶えず増している。これらの複合材料は、高い剛性と同時に優れた機械的特性を有する。鋼などの従来の材料と比べて、これらの複合材料はさらに、明らかな重量の利点を有する。
【0004】
多層複合材料の別の利用分野は、軽量構造及び耐荷重構造が必要とされる部門にある。既に述べた自動車部門(例えば、テールゲート、ルーフモジュール、ドアモジュール、クロスメンバ、前部及び後部構造物、ダッシュパネル)及び航空機部門だけでなく、これらは、ユーティリティビークル部門、鉄道車両、及び日用品、例えば、ベビーカー、スキー靴、スケートボード、スポーツシューズなどの分野である。
【0005】
このようなポリマーに支持された複合材料の別の利点は腐食のリスクであり、これは、鋼が存在しない結果、低減又は完全に排除される。
【0006】
多層複合材料は、熱可塑性材料と組み合わせたガラス繊維層又は炭素繊維層などの繊維層から調製できることが既知である。適した熱可塑性基材材料には、ポリエチレン又はポリプロピレン、ポリアミド、例えば、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,12、ポリカーボネート、特にビスフェノールAを含む芳香族ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー、例えば、ポリスチレン並びにアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー及びスチレンアクリロニトリルコポリマーなどのスチレン含有コポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、多環芳香族、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアミド、ポリアクリレート又はポリアミドイミド、ポリキノキサリン、ポリキノリン又はポリベンズイミダゾール、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアクリロニトリル若しくはポリ塩化ビニルなどのポリビニル化合物、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリビニルラクタム、ポリビニルアミン並びに述べたポリマーの混合物などの多数の熱可塑性プラスチックが含まれる。
【0007】
とりわけシロキサン含有ブロック共縮合物を含み、且つ高い割合のフィラーを含む熱可塑性マトリックス材料は原則として既知である。例えば、米国特許出願公開第20150197633号及び米国特許出願公開第20150197632号には、とりわけシロキサン含有ブロック共縮合物を含む、ガラス繊維と組み合わせたポリマーブレンドが記載されている。しかし、この種類の組成物は、弾性率において高い値を実現することができない。本発明に記載されている多層複合材料の場合、熱可塑性マトリックスに表面で作用する力がはるかに高く、例えば、クラックの形成は同等ではない。
【0008】
同様に、非結合ガラス繊維及びシロキサン含有ブロック共縮合物を含む充填材料が、国際公開第2013/170452(A1)号に記載されている。この場合も、多層複合材料との大きな違いが存在し、多層複合材料は、ガラス繊維充填材料と比べて異なる構造及び異なる物理的特性を示す。
【0009】
熱可塑性マトリックスに埋め込まれた繊維層を有する多層複合材料も文献に記載されている。例えば、国際公開第2015114427号には、特定のポリエーテルイミド繊維をさらに含む多層複合材料が記載されている。シロキサン含有ブロック共縮合物、又は曲げ特性に関する情報の記載はない。
【0010】
エンドレス繊維含有複合材料の製造が、例えば、欧州特許出願公開第2886305(A)号に記載されている。マトリックス材料としてのポリカーボネートの使用が、この場合も述べられている。ブロック共縮合物の記載はない。
【0011】
ポリカーボネートから調製された特に高い難燃性を示す多層複合材料が、国際公開第2015052114(A1)号に記載されている。シロキサン含有コポリカーボネートが、述べられた材料の中にある。本出願の特定の構造のブロック共縮合物の記載はない。加えて、この文書には、多層複合材料の曲げ応力及び表面品質に関する詳細が記載されていない。
【0012】
エンドレス繊維含有複合材料が国際公開第2012126910号に記載されているが、ブロック共縮合物は記載されていない。
【0013】
一方向繊維から形成され、且つ熱可塑性マトリックス材料を含む繊維複合材料層(プリプレグと呼ばれる)の製造が、国際公開第2011163365号に記載されている。プリプレグを製造することができる材料の中にポリカーボネートがあり、シロキサン含有ブロック共縮合物は記載されていない。
【0014】
熱可塑性マトリックスからなり、織布、レイドスクリム又は一方向織物により補強されており、且つ他の材料の中でもポリカーボネートを含むこともできるシート状の半完成品が米国特許出願公開第2011020572号に記載されている。
【0015】
繊維複合材料用のマトリックス材料としてのポリエーテルイミド-シロキサンブロック共縮合物が米国特許出願公開第2014018491号に記載されている。しかし、これらのブロック共縮合物は、本発明による本明細書に記載のブロック共縮合物とはまったく異なる構造を有し、はるかに費用がかかる。
【0016】
熱可塑系多層複合材料は、非常に高い強度、高い弾性率及び機械的な突刺抵抗を有するが、変形時、例えば、曲げ時、引張応力が生じ、したがって熱可塑性マトリックスにクラックが生じる可能性がある。このクラックは、外部から加わる変形応力に依存する。大きな力は、表面から多層複合材料ワークピース本体内へと進んで広がる微小クラックを生じる。応力によって、且つ応力が加わる期間に応じて、微小クラックはさらに大きくなり、さらに広がる。この種類のクラックは、多層複合材料及びそれから製造された部品の機械的強度を低下させる。加えて、このクラックは、表面品質の低下に関連する表面粗さを大きくする可能性がある。これらの表面の問題はまた、多層複合材料の表面仕上げにおける塗装プロセスの問題につながる可能性もある。対応する表面欠陥内に浸透する塗料溶剤は、後の硬化の過程で、例えば、膨れが生じた結果、塗膜に損傷を与える可能性がある。したがって、熱可塑性マトリックスにおけるこの種類の表面欠陥及びクラックは望ましくない。
【0017】
さらに、熱可塑性マトリックスに対する各繊維の良好な接着は有利である。接着が不十分である場合、外部応力が加わったとき、動的衝撃又は引張効果が、熱可塑性マトリックス及び繊維織物の複合材の崩壊につながる可能性がある。次いで、これは、複合材料内の空洞形成の増加に現れる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許出願公開第20150197633号
【文献】米国特許出願公開第20150197632号
【文献】国際公開第2013/170452(A1)号
【文献】国際公開第2015114427号
【文献】欧州特許出願公開第2886305(A)号
【文献】国際公開第2015052114(A1)号
【文献】国際公開第2012126910号
【文献】国際公開第2011163365号
【文献】米国特許出願公開第2011020572号
【文献】米国特許出願公開第2014018491号
【発明の概要】
【0019】
したがって、対処される課題は、変形応力の存在下でクラックが生じる傾向がより低い多層複合材料を提供するという課題である。さらに、繊維織物に対する熱可塑性マトリックスの接着性が高くあるべきである。
【0020】
驚くべきことに、複数の繊維複合材料層から形成され、そして、エンドレスガラス繊維又はエンドレス炭素繊維又はガラス繊維又は炭素繊維を、それぞれの場合において織物又は編物として、そうでなければ熱可塑性マトリックスとして、含み、そして、特定のシロキサン含有ブロック共縮合物を含む、多層複合材料は、従来の多層複合材料と比べてクラックを形成する傾向が著しく低いことが明らかになった。
【0021】
したがって、本発明は、繊維材料の少なくとも1つの層を含む繊維複合材料であって、繊維材料が、エンドレス繊維として又は織物及び編物としてガラス繊維及び/又は炭素繊維から選択され、シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチック(以下、略して「SiCoPC」とも、又は「ポリシロキサンブロック共縮合物」若しくは「マトリックス材料」とも呼ばれる)に埋め込まれている、繊維複合材料を提供する。
【0022】
本発明はさらに、繊維複合材料の少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの相互に重ね合せた層を含む多層複合材料であって、3つの複合材料層の場合、これらが、互いに対して、繊維複合材料の2つの外層及び繊維複合材料の少なくとも1つの内層として定められており、
ここで、繊維複合材料のこれら少なくとも2つの層のそれぞれが、シロキサン含有ブロック共縮合物に基づく熱可塑性プラスチックに埋め込まれた繊維材料を含み、繊維材料としてのエンドレス繊維の場合には、これらが、各層内において一方向に配列されている、多層複合材料を提供する。
【0023】
繊維材料としてのエンドレス繊維の場合、繊維複合材料の内層は、実質的に同じ配向を有してもよく、それらの配向は、繊維複合材料の外層に対して30°~90°回転していてもよく、繊維複合材料の1つの層の配向は、その中に存在する一方向に配列した繊維の配向によって決まる。
【0024】
好ましい実施形態において、層は、交互に配置されている。この場合、外層は、0°配向にある。繊維複合材料の内層が、同じ配向を有し、それらの配向が、繊維複合材料の外層に対して90°回転しているとき、実用的に特に有用であることが明らかになった。或いは、内層を外層に対して30°、40°、50°、60°、70°又は80°回転させることが考えられる。それぞれの場合において、配向は、記載されたガイド値から±5°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°ずれてもよい。「交互」は、内層が、90°の角度又は30°~90°の角度でそれぞれ交互に配置されていることを意味する。外層は、それぞれの場合において0°配向にある。角度は、それぞれ、層毎に30°~90°変化していてもよい。
【0025】
さらに好ましい実施形態において、層の少なくとも一部は、同じ配向を有し、少なくとも一部の他の層は、30°~90°回転している。この場合、外層は、0°配向にある。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、内層は、同じ配向を有し、それらの配向は、繊維複合材料の外層に対して30°~90°回転しており、外層は、それらに対して0°配向にある。
【0027】
これらの好ましい実施形態は、エンドレス繊維に特に適している。
【0028】
織物の場合、繊維複合材料の層は、経糸方向(0°)及び緯糸方向(90°)に、又は上記の角度で交互に積層されている。
【0029】
特定の実施形態において、多層複合材料は、6つの、好ましくは5つの、特に4つの、より好ましくは3つの内部繊維複合材料層を含む。しかし、本発明による多層複合材料はまた、2つ又は6つを超える、例えば、7、8、9、10、又は10層を超える内部繊維複合材料層を含んでもよい。
【0030】
原則として、繊維複合材料における繊維層の数に制限はない。したがって、2つ以上の繊維層を重ね合わせて配置することも可能である。重ね合わせた2つの繊維層は、それぞれがいずれの面もマトリックス材料に囲まれているように、マトリックス材料中にそれぞれ個別に埋め込まれてもよい。加えて、2つ以上の繊維層は、それらの全体がマトリックス材料に囲まれるように直接重なり合っていてもよい。この場合、これらの2つ以上の繊維層が、1つの厚い繊維層と見なされてもよい。繊維複合材料の一実施形態において、繊維層は、一方向繊維層、織布若しくはレイドスクリム層、ループドローニット(loop-drawn knit)、ループ状ニット若しくはブレード、又はランダム繊維マット若しくは不織ウェブの形態の長繊維、或いはこれらの組み合わせの形態を取る。
【0031】
マトリックス材料としてのポリシロキサンブロック共縮合物を有する本発明の多層複合材料は、機械的応力下で高い耐クラック性を有する。
【0032】
この種類の材料は、金属のような外観、金属のような音特性及び金属のような感触特性、並びに金属のような機械的特性を有することができる。本発明の多層複合材料はまた、安価に製造することができるという利点、及びその中で使用されるプラスチックのために極めて軽量であるという利点を有する。加えて、本発明の多層複合材料はまた、良好な被覆性及び射出成形によるバック成形性を特徴とする。本発明による多層複合材料に関して同様に有利であることは、多層複合材料の熱成形性のために、構造、例えばハウジング部品の構造を特に簡単且つ柔軟に実現できることである。
【0033】
繊維材料の繊維(繊維材料)は、多種多様な異なる種類の化学構造を有してもよい。繊維材料は、好ましくは、存在するそれぞれの熱可塑性マトリックス材料よりも高い軟化点又は融点を有する。繊維材料の例には、多種多様な異なる種類のケイ酸及び非ケイ酸ガラス、炭素、玄武岩、ホウ素、炭化ケイ素、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物及びシリケートなどの有機材料、並びに天然及び合成ポリマー、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、超高延伸ポリオレフィン繊維、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、綿及びセルロースなどの有機材料が含まれる。高融点材料、例えば、ガラス、炭素、アラミド、玄武岩、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルイミドが好ましい。特に好ましい繊維材料は、エンドレス繊維の形態の、そうでなければ織物及び編物の形態のガラス繊維又は炭素繊維であり、特に好ましいのはエンドレスガラス繊維又はエンドレス炭素繊維である。エンドレス繊維は特に、繊維複合材料の層の全長にわたって実質的に延びる。
【0034】
適した繊維材料は、エンドレスガラス繊維、エンドレス炭素繊維、及び織物のような繊維又は編物である。繊維材料の層(繊維層とも呼ばれる)は、平面内に実質的に配置された繊維によって形成された平坦な層を意味すると理解される。繊維は、互いに対するそれらの位置によって、例えば、繊維の織物のような配置によって互いに結合されていてもよい。加えて、繊維層はまた、繊維を互いに結合するために、樹脂又は別の接着剤の一部を含んでもよい。繊維は、或いは、結合されていなくてもよい。これは、大きな力を費やすことなく繊維を互いに分離できることを意味すると理解される。繊維層はまた、結合された繊維及び結合されていない繊維の組み合わせを有してもよい。繊維層の少なくとも片面が、マトリックス材料としてのSiCoPCに埋め込まれている。これは、繊維層が、少なくとも片面で、好ましくは両面でSiCoPCに取り囲まれていることを意味すると理解される。繊維複合材料又は多層複合材料の外縁は、SiCoPCマトリックスにより形成される。
【0035】
本発明の文脈において、用語「エンドレス繊維」は、当業者に同じく既知の短繊維又は長繊維からの区切りと理解されるべきである。エンドレス繊維は一般に、繊維複合材料の層の全長にわたって延びる。用語「エンドレス繊維」は、これらの繊維がロール上に巻き取られ、繊維複合材料の個々の層の製造時に巻きが解かれ、プラスチックを含浸させ、したがって、時々起こる切断又はロールの切り替えを除いて、前記繊維の長さは、典型的には、繊維複合材料の製造された層の長さと一致することに由来する。
【0036】
本発明の関連において「一方向」は、エンドレス繊維が実質的に一方向に配列されており、すなわち、長手方向と同じ方向に向いており、したがって、同じ走行方向を有することを意味する。「実質的に一方向」は、本明細書において、最大5%の繊維走行方向のずれの可能性があることを意味する。しかし、繊維走行方向のずれが明らかに3%を下回るときが好ましく、より好ましくは明らかに1%を下回る。
【0037】
本発明の一の特定の実施形態において、多層複合材料のすべての繊維複合材料層は、向かい合って結合されており、ここで、繊維材料は、各層内に一方向に配列されており、且つマトリックス材料に埋め込まれている。この実施形態において、更なる材料層が繊維複合材料の層間に存在することが可能であってもよく、例えば仕上げ層、例えばペイント層、典型的には、単一層又は複層での、ウレタン系及びアクリレート系のペイントシステムに基づくものであって、熱的に又はUV照射によって硬化できるもの(その表面は、仕上げの前に、それに応じて前処理されていても、例えばプラズマ処理若しくは火炎処理により、活性化されていても、又は清浄化されていてもよい)がある。
【0038】
繊維複合材料の層に加えて、本発明による多層複合材料はまた、1又は複数の更なる層を含んでもよい。ここに言及することができる例は、繊維複合材料の層に使用されるプラスチックマトリックスと同一でも異なっていてもよいプラスチックの更なる層である。これらのプラスチック層はまた、特に、本発明に従って提供される繊維材料とは異なるフィラーを含んでもよい。本発明による多層複合材料はまた、加えて、接着剤層、織層、不織層又は表面強化層、例えばペイント層を含んでもよい。これらの更なる層は、繊維複合材料の内層と外層の間、繊維複合材料の複数の内層の間並びに/又は繊維複合材料の外層の一方若しくは両方の上に存在してもよい。しかし、繊維複合材料の外層及び繊維複合材料の少なくとも1つの内層は、それらの間に更なる層が存在しないように互いに結合されているときが好ましい。
【0039】
多層複合材料はまた、各層内に一方向に配列されており、且つポリカーボネート系プラスチックに埋め込まれている本発明による繊維複合材料層のみから構成されてもよく、1又は複数の表面強化層、例えばペイント層が、繊維複合材料の外層の一方又は両方の上に存在していてもよい。
【0040】
繊維複合材料の個々の層は、実質的に同一であるか若しくは異なる構成及び/又は配向を有してもよい。
【0041】
繊維複合材料層の「実質的に同一である構成」は、本発明の関連において、化学組成、繊維体積含有量及び層厚さを含む群からの少なくとも1の特徴が同一であることを意味すると理解される。
【0042】
「化学組成」は、繊維複合材料のポリマーマトリックスの化学組成及び/又はエンドレス繊維などの繊維材料の化学組成を意味すると理解される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、繊維複合材料の外層は、それらの組成、それらの繊維体積含有量及びそれらの層厚さに関して実質的に同一である構成を有する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、多層複合材料は、0.5~2mm、好ましくは0.8~1.8mm、特に0.9~1.2mmの全厚を有する。実際の試験は、本発明による多層複合材料が、これらの薄厚でも優れた機械的特性を実現できることを示した。
【0045】
繊維複合材料のすべての内層の合計が、200μm~1200μm、好ましくは400μm~1000μm、より好ましくは500μm~750μmの全厚を有するとき特に有利であることが分かった。
【0046】
繊維複合材料の2つの外層のそれぞれの厚さが、それぞれ100~250μm、好ましくは120μm~230μm、より好ましくは130μm~180μmであるとき、本発明の関連においてさらに有利である。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、繊維複合材料層は、30体積%以上且つ60体積%以下、好ましくは35体積%以上且つ55体積%以下、より好ましくは37体積%以上且つ52体積%以下の繊維体積含有率を有する。繊維体積含有率が30体積%未満である場合、得られる繊維複合材料の点荷重下での機械的特性は準最適であることが多く、すなわち、繊維複合材料は、点荷重に十分に耐えることができず、場合によっては穴さえ開く。60体積%を超える繊維体積含有率も同じく、繊維複合材料の機械的特性が悪化する結果となる。いかなる科学的理論にも拘束されることは本意ではないが、この理由は、このように高い繊維体積含有率では含浸時、繊維がもはや十分に濡れることができず、空気の混入が増加し、繊維複合材料内の表面欠陥の発生が増加することであるように思われる。
【0048】
多層複合材料の一実施形態において、多層複合材料の全体積中の繊維材料の体積含有率は、30体積%~60体積%の範囲内、好ましくは40体積%~55体積%の範囲内である。
【0049】
本発明の一実施形態において、繊維複合材料の外層は、50体積%以下、好ましくは45体積%以下、特に42体積%以下の繊維体積含有率を有する。
【0050】
本発明の一の特定の実施形態において、繊維複合材料の外層は、少なくとも30体積%、好ましくは少なくとも35体積%、特に少なくとも37体積%の繊維体積含有率を有する。
【0051】
これらの繊維体積含有率の上限及び下限は、上述の特に有利な機械的特性に関連する。
【0052】
本発明の更なる特定の実施形態において、繊維複合材料の外層は、繊維複合材料の層の全体積に基づいて、繊維複合材料の少なくとも1つの内層よりも低い繊維体積含有率を有する。
【0053】
繊維複合材料の内層は、繊維複合材料の層の全体積に基づいて、40体積%~60体積%、好ましくは45体積%~55体積%、より好ましくは48体積%~52体積%の繊維体積含有率を有することができる。
【0054】
ここで「体積%」は、繊維複合材料の層の全体積に基づく体積による割合(%v/v)を意味すると理解される。
【0055】
本発明による多層複合材料における繊維複合材料の少なくとも3つの層は、好ましくは、実質的に空隙がなく、特に実質的に空気の混入がない。
【0056】
「実質的に空隙がない」は、一実施形態において、本発明による多層複合材料における繊維複合材料の少なくとも3つの層の空隙率が、2体積%未満、特に1体積%未満、より好ましくは0.5体積%未満であることを意味する。
【0057】
繊維複合材料層又は多層複合材料の空隙率は、一般に受け入れられていると見なされる様々な方法で決定することができる。例えば、試験片の空隙率は、樹脂灰化試験により決定することができて、この試験では、試験片において繊維を囲む樹脂を灰化するために、試験片が、例えば、オーブン内で600℃の温度に3時間曝露される。次いで、さらなる計算ステップの後に試験片の空隙率に達するために、こうして曝露された繊維の質量を決定することができる。このような樹脂灰化試験は、繊維及びポリマーマトリックスの個々の重量を決定するためにASTM D2584-08に従って実施することができる。試験片の空隙率は、そこからさらなるステップにおいて以下の式1を使用することによって決定することができる:
Vf=100*(ρt-ρc)/ρt(式1)
ここで、
Vfは、サンプルの空隙率[%]であり、
ρcは、例えば液体又は気体比重瓶法により決定される、試験片の密度であり、
ρtは、以下の式2:
ρt=1/[Wf/ρf+Wm/ρm](式2)
により決定される試験片の理論密度であり、
ρmは、(例えば、適当な結晶化度のための)ポリマーマトリックスの密度であり、
ρfは、使用された繊維の密度であり、
Wfは、使用された繊維の重量割合であり、
Wmは、ポリマーマトリックスの重量分率である。
【0058】
或いは、空隙率は、ASTM D3171-09に従って、試験片からのポリマーマトリックスの化学的溶解により決定されてもよい。樹脂灰化試験及び化学的溶解法は、溶融処理又は化学的処理に対して一般に不活性なガラス繊維により適している。より敏感な繊維のための更なる方法は、ASTM D2734-09(方法A)によるポリマー、繊維及び試験片の密度による空隙率の間接的な計算であり、ここで、密度は、ASTM D792-08(方法A)に従って決定することができる。さらに、画像処理プログラム、グリッドテンプレート又は欠陥計数を利用して、従来の顕微鏡により決定された画像記録の空隙率を評価することも可能である。
【0059】
空隙率を決定する更なる方法は、ポリマー及び繊維の既知の基本重量及び密度について理論上の構成厚さと実際の構成厚さの間の層厚差の決定を含む厚差法である。理論上の構成厚さの計算では、空隙が構成内に存在せず、繊維がポリマーで完全に濡れていると仮定する。厚差を実際の構成厚さに関連付けると空隙百分率が得られる。これらの厚さは、例えば、マイクロメートルで測定されてもよい。この方法については、好ましくは4層を超える、より好ましくは6層を超える、特に非常に好ましくは8層を超える複数の個々の層から構成された部品に対して空隙率を決定することにより、誤差を最小限に抑えた結果を好ましく求めることができる。
【0060】
すべての前述のプロセスは、適切な標準を同時に試験するとき、同等の結果が得られるが、本明細書に記載の空隙率は、実施例において報告される厚差法により決定された。
【0061】
本発明による多層複合材料の繊維複合材料の3つの層に空隙がなく、特に空気の混入がないとき特に非常に好ましい。
【0062】
本発明の関連においてシロキサン系ブロック共縮合物は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物である。この種類のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、低温耐衝撃性又は低温ノッチ付き耐衝撃性、耐薬品性及び難燃性に関して良好な特性を有する。
【0063】
シロキサン含有ブロック共縮合物は、以下の構造単位:
【化1】
【0064】
(ここで、R1は、二価の置換若しくは非置換の芳香族基、二価の直鎖状若しくは環状の脂肪族基であり、
或いは構造単位(1)は単位の混合物であり、ここで、R1が、二価の置換若しくは非置換の芳香族基であり、又はR1が、二価の直鎖状若しくは環状の脂肪族基である。使用された式(3)のジフェノールの重量%での総和に基づいて、芳香族R1基の割合は60重量%~100重量%であり、脂肪族基の割合は0重量%~40重量%である)、
及び構造単位(2)
【化2】
【0065】
(ここで、R2は、独立して、直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族基、好ましくはC1~C12アルキル、より好ましくはC1~C4アルキル、特にメチル、又は置換若しくは非置換の芳香族基、好ましくはフェニルである)
を含むブロック共縮合物に関する。
【0066】
特に非常に好ましい構造単位(2)は、ジメチルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチル/フェニルシロキサン単位又はジメチルシロキサン単位及びジフェニルシロキサン単位の混合物である。
【0067】
構造単位(1)において、R1は、好ましくは、式(3):
【化3】
【0068】
(式中、
Zは、6個~30個の炭素原子を有し、且つ1又は複数の芳香環を含んでもよい芳香族基であり、置換されていてもよく、且つ脂肪族基又はアルキルアリール又はヘテロ原子を架橋要素として含んでもよい)
に対応するジヒドロキシアリール化合物から誘導される。
【0069】
好ましくは、式(3)中のZは、式(3a)
【化4】
【0070】
(式中、
R6及びR7は、独立して、H、C1~C18-アルキル、C1~C18-アルコキシ、Cl若しくはBrなどのハロゲン又はそれぞれの場合において置換されていてもよいアリール若しくはアラルキル、好ましくは独立してH若しくはC1~C12-アルキル、より好ましくはH若しくはC1~C8-アルキル、最も好ましくは独立してH若しくはメチルであり、
Xは、-CO-、-O-、-S-、C1~C6-アルキレン、C2~C5-アルキリデン、C6~C10-シクロアルキリデン又はヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合されていてもよいC6~C12-アリーレンである)の基である。
【0071】
好ましくは、Xは、C1~C5-アルキレン、C2~C5-アルキリデン、C6~C9-シクロヘキシリデン-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO2-、より好ましくはイソプロピリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン又は酸素、特にイソプロピリデンである。
【0072】
本発明によるSiCoPCの製造に適している式(3)のジフェノールの例には、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、[アルファ],[アルファ]’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン並びにそのアルキル化、環アルキル化及び環ハロゲン化化合物が含まれる。
【0073】
式(3)のさらに好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0074】
式(3)の特に好ましいジフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、ヒドロキノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン及び2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0075】
これら及び更なる適したジフェノールは市販されており、例えば、“H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,New York 1964,p.28 ff;p.102 ff”及び“D.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000,p.72 ff”に記載されている。
【0076】
一実施形態において、シロキサンブロックは、以下の構造(4)を有してもよい。
【化5】
【0077】
ここで、R2は、上述の定義を有し、
nは、1~150、好ましくは1~100、さらにより好ましくは3~50、特に5~30であり、
mは、0又は1、好ましくは0である。
【0078】
R3は、独立して、以下の構造:
【化6】
【0079】
(ここで、R4は、独立して、水素、ハロゲン及び/或いはそれぞれの場合においてC1~C10、好ましくはC1~C4、直鎖若しくは分岐鎖の、非置換若しくは一置換~四置換のアルキル基若しくはアルコキシ基であり、アルキル基及びアルコキシ基は、好ましくは非置換であり、そしてR4は、特に好ましくは水素であり、
eは、2~12、好ましくは2~6の自然数である)を含む。
【0080】
更なる実施形態において、R3は、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン基又は式(6)
【化7】
【0081】
(式中、R6、R7及びXは、式(3a)に記載の定義を有する)の構成要素から誘導される。
【0082】
例えば、好ましくは、シロキサンブロックは、以下の構造を含んでもよく、又は、以下の構造から誘導される:
【化8】
【化9】
【0083】
(ここで、aは、1~150、好ましくは1~100、より好ましくは3~50、特に5~30の繰り返し単位の平均数である)。
【0084】
更なる実施形態において、前述のシロキサンブロックは、単独で、又はテレフタル酸若しくはイソフタル酸を介して複合的に結合して、例として示す以下の構成要素を形成することができる:
【化10】
【0085】
(ここで、pは1~5であり、
R2、R3、n及びmは、構成要素(4)についての上述の定義を有する)。
【0086】
ポリカーボネートとの反応のための、又は式(3)若しくは(3a)のジフェノールとのホスゲン又はジアリールカーボネートとの反応のための対応するシロキサンブロックはそれぞれ、末端フェノール性OH基を有する。これらは、
【化11】
【0087】
(ここで、R2、R3、n、m及びpは、構成要素(9)についての上述の定義を有する)である。
【0088】
更なる実施形態において、好ましいシロキサンブロックはヒドロキシアリール末端ポリシロキサンであり、式(10)
【化12】
【0089】
に対応する。
【0090】
一般式(10)において、Rは、好ましくは水素又はメチル、より好ましくは水素である。
【0091】
(R2に対応する)R及びRは、好ましくはメチルである。
【0092】
Yは、好ましくは、単結合、-CO-、-O-、C~C-アルキレン、C~C-アルキリデン又はC~C-アルキルで一置換若しくは多置換されていてもよいC~C-シクロアルキリデン基、より好ましくは単結合、-O-、イソプロピリデン又はC~C-アルキルで一置換若しくは多置換されていてもよいC~C-シクロアルキリデン基、特にイソプロピリデンである。
【0093】
Vは、単結合、酸素、C1~C6アルキレン、C2~C5-アルキリデン又はC1~C6アルコキシ、好ましくは単結合、C3アルキレン又はC3アルコキシである。
【0094】
Wは、単結合、S、C1~C6アルキレン、C2~C5-アルキリデン又はC1~C6アルコキシ、好ましくは単結合、C3アルキレン又はC3アルコキシである。
【0095】
p及びqは、それぞれ独立して0又は1である。
【0096】
oは、10~400、好ましくは10~100、より好ましくは20~60の繰り返し単位の平均数である。
【0097】
mは、1~6、好ましくは2~5の繰り返し単位の平均数である。
【0098】
o×mの積は、好ましくは12~400、より好ましくは15~200の数値である。
【0099】
特に好ましいのは、式(11)及び(12)のシロキサンである
【化13】
【化14】
【0100】
式中、R1は、H、Cl、Br又はC1~C4-アルキル、好ましくはH又はメチル、特に好ましくは水素であり、
R2は、アリール又はC1~C4-アルキル、好ましくはメチルであり、
Xは、単結合、-SO2-、-CO-、-O-、-S-、C1~C6-アルキレン、C2~C5-アルキリデン、又は別のヘテロ原子を含む芳香環に縮合されていてもよいC6~C12-アリーレンである。
【0101】
好ましくは、Xは、単結合、イソプロピリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン又は酸素、最も好ましくはイソプロピリデンであり、
nは、1~300、好ましくは2~200、特に好ましくは10~150、最も好ましくは20~100の平均数であり、
mは、1~10、好ましくは1~6、特に好ましくは1.5~5の平均数である。
【0102】
シロキサンブロックの分子量は、3000~20000g/mol、好ましくは4000~15000g/molであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び標準としてジフェノールとしてのビスフェノールAからのポリカーボネートにより決定される。
【0103】
シロキサンブロックの調製は原則として既知であり、それらは、例えば、米国特許出願公開第20130267665号に記載のプロセスにより調製することができる。
【0104】
ポリカーボネートの調製は、同じく既知である。ポリカーボネートは、既知の方法で、ジフェノール、炭酸誘導体、任意選択で連鎖停止剤及び分岐剤から製造される。
【0105】
ポリカーボネートの製造の詳細は、過去約40年間の多くの特許明細書に記載されている。本明細書において、単に例としてSchnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Polymer Reviews,Volume 9,Interscience Publishers,New York,London,Sydney 1964、D.Freitag,U.Grigo,P.R.Muller,H.Nouvertne,BAYER AG,“Polycarbonates” in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Volume 11,Second Edition,1988,pages 648-718、最後にDres.U.Grigo,K.Kirchner and P.R.Muller “Polycarbonate”[Polycarbonates] in Becker/Braun,Kunststoff-Handbuch[Plastics Handbook],volume 3/1,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester[Polycarbonates,Polyacetals,Polyesters,Cellulose Esters],Carl Hanser Verlag Munich,Vienna 1992,pages 117-299を参照することができる。
【0106】
ポリカーボネートの好ましい調製モードは、既知の界面プロセス及び既知の溶融エステル転移プロセス(例えば、国際公開第2004/063249(A1)号、国際公開第2001/05866(A1)号、国際公開第2000/105867号、米国特許第5,340,905号、米国特許第5097002号、米国特許出願公開第5,717,057号参照)である。
【0107】
SiCoPC中のシロキサンブロックの含有量は、それぞれの場合において使用されたシロキサンブロック及びポリカーボネートブロックに基づいて、0%を超え、好ましくは0.5重量%~40重量%、好ましくは1重量%~20重量%、特に好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは2重量%~10重量%である。それに対応して、ブロック共縮合物中のポリカーボネートブロックの割合は、60重量%~100重量%未満(好ましくは99.5%)、好ましくは99重量%~80重量%、特に好ましくは98重量%~85重量%、最も好ましくは98重量%~90重量%である。
【0108】
前述のシロキサンブロックは、好ましくは15000~27000、特に好ましくは17000~27000、特に好ましくは18000~26500g/molの(標準としてBPAポリカーボネートを使用したGPCにより測定された)分子量を有するポリカーボネートと反応させる。
【0109】
ポリカーボネートの調製のためのジフェノールは、前述の構造単位(3)である。
【0110】
個々の構成要素(シロキサンブロック及びポリカーボネートブロック)は、ここで、反応押出プロセスにより反応させ、或いは、式(3)のジフェノールによるシロキサンブロックは、既知の界面プロセスによりホスゲン又はジアリールカーボネートと反応させる。ポリカーボネート合成のためのこのプロセスの多岐にわたる説明が文献に存在し、例として、H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,vol.9,Interscience Publishers,New York 1964 p.33 ff.、Polymer Reviews,vol.10,“Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods”,Paul W.Morgan,Interscience Publishers,New York 1965,ch.VIII,p.325、Dres.U.Grigo,K.Kircher and P.R.Muller “Polycarbonate” in Becker/Braun,Kunststoff-Handbuch,volume 3/1,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester,Carl Hanser Verlag Munich,Vienna,1992,p.118-145及び欧州特許出願公開第0517044(A)号が参照される。ポリオルガノシロキサンの界面プロセスにおける変換は、例えば、米国特許第3821325号に記載されている。
【0111】
SiCoPCは、例えば、国際公開第2015/052110号に記載の反応押出プロセスにおいて調製することができる。
【0112】
使用される集成装置は、一軸反応器、二軸反応器、遊星ロール押出機又はリング押出機であってもよい。加えて、集成装置は、高容積のポリマーニーダーであってもよい。
【0113】
予備反応器及び高粘度反応器からなる反応器組み合わせにおいて、280℃~400℃、好ましくは300℃~390℃、さらに好ましくは320℃~380℃(高粘度反応器内に存在する)、最も好ましくは330℃~370℃の温度及び0.001mbar~50mbar、好ましくは0.005mbar~40mbar、特に好ましくは0.02~30mbar、最も好ましくは0.03~5mbar(高粘度反応器内に存在する)の圧力で、好ましくは触媒の存在下で、15000~27000、特に好ましくは17000~27000、特に好ましくは18000~26500g/molの(標準としてBPAポリカーボネートを使用したGPCにより測定された)分子量を有するポリカーボネートが使用されることを特徴とするプロセスを実施するのが好ましい。
【0114】
反応押出プロセスが、ブロック共縮合物の調製に使用される場合、好ましい実施形態において、特定の再配置構造を含むポリカーボネートが使用される。この実施形態における使用のためのポリカーボネートは、少なくとも1つの、好ましくは2つ以上の以下の構造(13)~(16):
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0115】
(ここで、フェニル環は、独立して、C1~C8アルキル、ハロゲン、好ましくはC1~C4アルキル、より好ましくはメチル、最も好ましくはHで一置換又は二置換されており、Xは、単結合、C1~C6アルキレン、C2~C5アルキリデン又はC5~C6シクロアルキリデン、好ましくは単結合及びC1~C4アルキレン、特に好ましくはイソプロピリデンである)を含み、(加水分解後に決定される)構造単位(13)~(16)の量は合計で、一般に50~1000ppmの範囲内、好ましくは80~850ppmの範囲内である。
【0116】
さらに、末端基としてフェノールを持つポリカーボネート(フェニル末端ポリカーボネート)が好ましい。
【0117】
再配置構造の量を決定するために、特定のポリカーボネートは全加水分解を受け、それ故に、式(13a)~(16a)の対応する分解生成物が生成され、その量がHPLCにより決定される(これは、例えば、以下の通り実施することができる:ポリカーボネートサンプルが、ナトリウムメトキシドにより還流下で加水分解される。対応する溶液が酸性化及び濃縮乾固される。乾燥残留物がアセトニトリルに溶解され、式(1a)~(4a)のフェノール化合物がHPLC及びUV検出により決定される):
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0118】
好ましくは、放出される式(13a)の化合物の量は、20~800ppm、より好ましくは25~700ppm、特に好ましくは30~500ppmである。
【0119】
好ましくは、放出される式(14a)の化合物の量は、0(すなわち10ppmの検出限界未満)~100ppm、より好ましくは0~80ppm、特に好ましくは0~50ppmである。
【0120】
好ましくは、放出される式(15a)の化合物の量は、0(すなわち10ppmの検出限界未満)~800ppm、さらに好ましくは10~700ppm、より好ましくは20~600ppm、最も好ましくは30~350ppmである。
【0121】
好ましくは、放出される式(16a)の化合物の量は、0(すなわち10ppmの検出限界未満)~300ppm、好ましくは5~250ppm、特に好ましくは10~200ppmである。
【0122】
SiCoPCは、好ましくは、200ppb未満、特に好ましくは150ppb未満のナトリウム含有量を有する。
【0123】
本発明によるプロセスにより得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に、添加剤を0.0重量%~5.0重量%、好ましくは0.01重量%~1.00重量%の量で加えることが可能である。添加剤は、市販のポリマー添加剤、例えば、欧州特許出願公開第0839623(A)号、国際公開第96/15102(A)号、欧州特許出願公開第0500496(A)号又は“Plastics Additives Handbook”,Hans Zweifel,5th Edition 2000,Hanser Verlag,Munichに記載されている以下の添加剤である:難燃剤、UV安定剤、ガンマ安定剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、流動性向上剤、熱安定剤、無機顔料、離型剤又は加工助剤。
【0124】
これらの添加剤は、単独で、又は任意の所望の混合物若しくは複数の異なる混合物でポリマー溶融物に加えることができて、すなわち、添加剤は、(例えば、二次押出機などのサイドユニットのような)ポリマーの分離において直接、純物質として、又はポリカーボネート中のマスターバッチとして、そうでなければ、いわゆるコンパウンディングステップにおけるペレット材料の溶融後に供給することができる。添加剤又はその混合物は、固体として、すなわち、粉末として、又は溶融物としてポリマー溶融物に加えることができる。計量添加の別のモードは、添加剤若しくは添加剤混合物のマスターバッチ又はマスターバッチの混合物の使用である。
【0125】
好ましい実施形態において、ポリマー組成物は、国際公開第2015/052110号に同様に記載の熱安定剤又は加工安定剤を含む。ホスファイト及びホスホナイトが、ホスフィンのように優先的に適している。例は、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリアルキルフェニルホスフィン、ビスジフェニルホスフィノエタン又はトリナフチルホスフィン、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイトである。特に好ましいのは、トリフェニルホスフィン(TPP)、Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)及びトリス(ノニルフェニル)ホスファイト又はこれらの混合物である。
【0126】
加えて、アルキル化モノフェノール、アルキル化チオアルキルフェノール、ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノンなどのフェノール系酸化防止剤を使用することが可能である。Irganox(登録商標)1010(ペンタエリトリトール3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート;CAS:6683-19-8)及びIrganox 1076(登録商標)(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)を使用することが特に好ましい。
【0127】
適したUV吸収剤は、例えば、欧州特許出願公開第1308084(A1)号、独国特許出願公開第102007011069(A1)号及び独国特許出願公開第10311063(A1)号に記載されている。
【0128】
特に適した紫外線吸収剤は、2-(3’,5’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)234、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(tert-オクチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)329、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(2-ブチル)-5’-(tert-ブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)350、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-2-ヒドロキシ-5-tert-オクチル)メタン、(Tinuvin(登録商標)360、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)、(2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin(登録商標)1577、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)などのヒドロキシベンゾトリアゾール、並びに2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimasorb(登録商標)22、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)及び2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(登録商標)81、Ciba、バーゼル)のベンゾフェノン、2-プロペン酸、2-シアノ-3,3-ジフェニル-、2,2-ビス[[(2-シアノ-1-オキソ-3,3-ジフェニル-2-プロペニル)オキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(登録商標)3030、BASF AG ルートヴィヒスハーフェン)、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン(CGX UVA 006、Ciba Spezialitatenchemie、バーゼル)又はテトラエチル2,2’-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート(Hostavin(登録商標)B-Cap、Clariant AG)である。
【0129】
これらの紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0130】
本発明によるポリマー組成物は、離型剤を含んでいてもよい。特に適した離型剤は、ペンタエリトリトールテトラステアレート(PETS)若しくはグリセロールモノステアレート(GMS)又はこれらの混合物である。
【0131】
加えて、本発明によるブロック共縮合物に他のポリマー、例えば、ポリエステルカーボネート、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET-シクロヘキサンジメタノールコポリマー(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの芳香族ポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリ-又はコポリアクリレート及びポリ-又はコポリメタクリレート、例えば、ポリ-又はコポリメチルメタクリレート(PMMAなど)、並びにスチレンとのコポリマー、例えば、透明なポリスチレン-アクリロニトリル(PSAN)、熱可塑性ポリウレタン、環状オレフィンに基づくポリマー(例えば、TOPAS(登録商標)、Ticona製の商品)を加えることも可能である。
【0132】
本発明はさらに、本発明による繊維複合材料又は多層複合材料を製造するための方法、及び多層複合材料から得ることができる部品を製造するための方法、並びに、例えば、電子デバイスのための、又は自動車用途における部品としてのハウジングの製造のための多層複合材料の使用、及びそれから得ることができる部品又はハウジングを提供する。
【0133】
繊維複合材料及び多層複合材料の製造:本発明による多層複合材料の繊維複合材料層は、当業者に既知の繊維複合材料を製造するための通例のプロセスにより製造されてもよい。
【0134】
本発明による繊維複合材料又は多層複合材料の製造については、様々な製造方法を使用することが可能である。本明細書において、繊維複合材料又は複合材シートが、例えば、一方向繊維層、織物層、ランダム繊維層又はこれらの組み合わせからなるのかどうかについてまず根本的に区別することが可能であり、ここで、一方向繊維を半完成品(例えば、レイドスクリム)の形態で又は純粋な繊維ストランドとして直接に複合材シートに導入することができる。後者のアプローチの場合、繊維ストランドは一般に、次にプレスされて多層複合材料である多層系(ラミネート)を形成するために、まず少なくとも1つの層において熱可塑性樹脂(繊維複合材料)が含浸されるが、ここで含浸のためには様々な方法が存在する。複合材シートが半完成繊維製品(織物、スクリム、ランダム繊維など)から製造される場合、先行技術は同じく、繊維及びマトリックスを組み合わせることができる様々な手段を示している。標準的な方法は、例えば、粉末プリプレグを利用したプロセス又はいわゆるフィルム積層プロセスである。フィルム積層プロセスは、前述の繊維複合材料の製造のために好ましく使用することができる。これは、フィルム及び織物層を交互に成層するものであり、例えば、所望の繊維体積含有量を得るように織物の基本重量及び膜の厚さを互いに整合させることができる。
【0135】
本発明の好ましい実施形態において、多層複合材料の繊維複合材料層は、圧力-剪断振動下、溶融ポリカーボネート系プラスチックを該プラスチックのガラス転移温度を超えるまで予熱されたエンドレス繊維ウェブに適用することによって製造できる。このような製造プロセスは、独国特許第102011005462(B3)号に記載されている。
【0136】
「エンドレス繊維ウェブ」は、本発明によれば、一緒に合わせた複数のロービングを意味すると理解され、ロービングは、多くのエンドレス繊維の無撚りの束である。
【0137】
多層複合材料の繊維複合材料層を製造するための好ましいプロセスは特に、以下のステップを含む:
-エンドレス繊維ウェブを提供し、エンドレス繊維ウェブを処理ラインに沿って搬送するステップ、
-ポリカーボネート系プラスチックのガラス転移温度よりも高い処理温度までエンドレス繊維ウェブを予熱するステップ、
-エンドレス繊維ウェブの全幅にわたってエンドレス繊維ウェブの1つの表面上に溶融ポリカーボネート系プラスチックを適用するステップ、
-ポリカーボネート系プラスチックの適用後、ウェブの平面に対して垂直な圧力をエンドレス繊維ウェブ上にかけるステップであって、圧力の付加が、少なくとも1のプレスラムにより、ウェブ平面で且つウェブ走行方向に対して横方向の振動運動成分を有するプレスラムへの剪断振動の同時付加を伴って行われるステップ、
-少なくとも圧力-剪断振動の付加が終了するまでポリカーボネート系プラスチックのガラス転移温度を上回る処理温度範囲内にエンドレス繊維ウェブを保持するステップ。
【0138】
原料繊維ウェブがポリカーボネート系プラスチックのガラス転移温度を上回る温度である間のメルト適用と次の圧力-剪断振動付加の結果、原料繊維ウェブの繊維体積構造全体にプラスチック溶融物が効果的に取り込まれる。380℃のエンドレス繊維ウェブ温度を超えないことが好ましい。エンドレス繊維ウェブの温度は、典型的には、180℃~260℃の間、好ましくは200℃~240℃の間、より好ましくは210℃~230℃の間、特に220℃である。プラスチックのガラス転移温度を上回るまでの加熱又はプラスチックのガラス転移温度を上回る温度での保持について言及すると、これは、プラスチックが完全に溶融状態になる温度までの加熱を意味する。プラスチックのガラス転移温度は、DIN EN ISO 17025により決定することができる。プラスチック溶融物がエンドレス繊維ウェブと接触しているときの繊維温度と溶融温度の間の差は、60℃~120℃、好ましくは70℃~110℃、より好ましくは80℃~100℃の範囲内である。圧力-剪断振動の付加は、原料繊維ウェブ内に依然として存在するガス量を効率的に排出させる。プロセスは、連続的に実施されてもよい。プラスチックのガラス転移温度を上回る温度にエンドレス繊維ウェブを保持すると、ポリカーボネート系プラスチックがエンドレス繊維ウェブの内部及び上に完全に浸透及び分配する前に、望まれない固化が起こらなくなる。プラスチックのガラス転移温度を上回る温度のこの保持は、圧力-剪断振動の付加の終了後、休止期間中に継続されてもよい。示したプロセスステップが実施されると、製造された含浸エンドレス繊維ウェブは、定義された方法で冷却されてもよい。エンドレス繊維ウェブは、多数のエンドレス繊維を含んでもよい。圧力-剪断振動の付加は、あるとしてもわずかな繊維の損傷で、繊維ウェブの良好なプラスチックの浸透、すなわち、良好な含浸の実現を可能にする。
【0139】
エンドレス繊維ウェブが環境大気圧下で搬送される間、エンドレス繊維ウェブへのポリカーボネート系プラスチックの適用が行われるように、多層複合材料の繊維複合材料層を製造するためのプロセスが実施されるとき特に好ましい。プラスチックのこのような適用によって、加圧適用チャンバーの複雑で且つ不便な外部シーリングを避けることができる。
【0140】
プラスチックの適用後のエンドレス繊維ウェブの一区画への圧力-剪断振動の付加が、処理ラインに沿って連続して繰り返し行われるように、多層複合材料の繊維複合材料層を製造するためのプロセスを実施することがさらに好ましい。プラスチックの適用後のエンドレス繊維ウェブの一区画への圧力-剪断振動の付加がウェブ平面の両側から行われるように、プロセスを実施することも可能である。圧力-剪断振動の繰り返される付加は、製造プロセスの効率を高める。圧力-剪断振動の付加のための様々なデバイスの横断運動成分は、逆に同期して、すなわち、プッシュプルで制御されてもよい。原料繊維ウェブに、事前に定められた期間、圧力及び/又は剪断振動が付加されない休止期間は、それぞれの場合において、的を絞って圧力-剪断振動の連続付加間に設けられてもよい。両側からの圧力-剪断振動の付加は、処理ラインに連続して配置された圧力付加デバイスによって行われてもよい。或いは、両側からの圧力-剪断振動の同時付加が可能である。両側からの圧力-剪断振動の付加はまた、逆に同期して、すなわち、制御されたプッシュプルで発生する横断運動成分により行うことができる。
【0141】
圧力-剪断振動の付加の周波数は、1Hz~40kHzの間の範囲内であってもよい。剪断振動の付加の振幅は、0.1mm~5mmの間の範囲内であってもよい。圧力-剪断振動の付加の圧力は、0.01MPa~2MPaの間の範囲内であってもよい。
【0142】
「繊維複合材料の重ねた層を結合すること」は、本発明によれば、繊維複合材料の重ねた層の物理的結合をもたらす任意のプロセスを意味すると理解される。多層複合材料を与える繊維複合材料の重ねた層の結合は、圧力及び/又は温度により、例えば、ラミネーションにより行われるとき好ましい。多層複合材料を与える繊維複合材料の重ねた層を結合するために使用される圧力は、5~15bar、好ましくは7~13bar、より好ましくは8~12barの範囲内であってもよい。繊維複合材料層を結合するための温度は、80℃~300℃であってもよい。加熱ゾーン及び冷却ゾーンを使用する結合プロセスが使用される場合、加熱ゾーン内で繊維複合材料層を結合するための温度は、220℃~300℃、好ましくは230℃~290℃、より好ましくは240℃~280℃であってもよい。冷却ゾーン内の温度は、80℃~140℃、好ましくは90℃~130℃、より好ましくは100℃~120℃であってもよい。
【0143】
しかし、ラミネーションに加えて、繊維複合材料の重ねた層を結合する接着結合又は溶接も可能である。
【0144】
好ましい実施形態において、繊維複合材料の重ねた層の結合は、向かい合う繊維複合材料の層を生じる。この関連において「向かい合う」は、互いに面している繊維複合材料の2つの隣接する層の表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、90%、95%、99%又は100%(「均一な」結合)が直接相互に結合されていることを意味する。結合の程度は、断面で顕微鏡により決定されてもよく、そうでなければ、空隙、例えば、繊維複合材料内の空気の混入の不在により決定されてもよい。
【0145】
多層複合材料は、加えて、静圧プレスにより製造することができる。これは、SiCoPCのフィルム及び織物層を交互に成層するものであり、外層はフィルム層によってそれぞれ完成する。
【0146】
本発明による多層複合材料の更なる利点は、任意の所望の形状に成形できることである。成形は、当業者に既知の任意の成形プロセスにより実現することができる。このような成形プロセスは、圧力及び/又は熱の作用下で行われてもよい。
【0147】
本発明によるプロセスの一実施形態において、成形は、熱の作用下で、特にサーモフォーミングにより行われる。
【0148】
繊維層、特にエンドレス繊維の熱可塑性マトリックス材料とのより良い親和性を得るために、繊維層、特にエンドレス繊維又は織物/編物をシラン化合物で表面前処理することができる。好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランである。
【0149】
一般に、例えば、繊維層及びマトリックス材料からの繊維複合材料のその後の製造において、繊維及びマトリックス材料の間の所望の結合度を確立するように、サイズ剤によって繊維を化学的及び/又は物理的に修飾することができる。この目的のために、当業者に既知の任意のサイズ剤、具体的には前述のシラン化合物だけでなく、好ましくはエポキシ樹脂及びその誘導体、エポキシエステル、エポキシエーテル、エポキシウレタン、ポリウレタンエステル、ポリウレタンエーテル、イソシアネート、ポリイミド、ポリアミド、並びに上述の化合物の2種以上の任意の所望の混合物も使用することが可能である。サイズ剤材料の具体的な選択は、繊維用の材料及び所望の結合強度に依存する。サイズ剤は、本明細書において、例えば、水性若しくは非水性の溶液又はエマルションの形態で使用することができて、サイズ剤は、短繊維のサイジングのための既知の方法により、例えば、浸漬プロセスにおいて、本発明による繊維に付着させることができる。
【0150】
本質的な態様は、構造強化繊維材料及び熱可塑性材料が互いに粘着結合することである。粘着結合は、プロセスパラメータ、特に溶融温度及び型温度及び圧力により確立され、さらに前述のサイズ剤に依存する。
【0151】
本発明はさらに、電子デバイスのハウジングとしての使用又は電子デバイスのハウジングにおける使用に適しているハウジング部品を提供し、ここで、ハウジング部品は、本発明による多層複合材料を含み、又は本発明によるハウジング部品を製造するための方法により得ることができ、そして、電子デバイスのハウジングは、好ましくは、モニタ背面又はラップトップの下面である。
【0152】
本発明による複合材料から得ることができるハウジング部品は、特にIT部門においてハウジング部品として、例えば、コンピュータ、モニタ、タブレット又は電話に使用される。例えば、ハウジング部品は、携帯電話の背面、ラップトップの下面、ラップトップのモニタ背面、タブレットの背面などであってもよく、そうでなければ、単に、携帯電話の背面、ラップトップの下面、ラップトップのモニタ背面、タブレットの背面などの構成要素であってもよい。
【0153】
本発明はさらに、モータビークル内部(壁、カバートリム、ドア、窓など)、小荷物棚、ドライバーのコンソール、テーブル、遮音材及び他の絶縁材、乗り物外板の垂直面、底部の外面、ライトカバー、散光器など向けの構成部品又は構造要素及びトリム要素を提供し、ここで、部品又は構造要素及びトリム要素は、本発明による多層複合材料を含む。本発明の繊維複合材料はまた、使用される材料のノッチ付き耐衝撃性、ウェルドライン強度、難燃性及び表面品質に対する要求が特に高い薄肉成形品(例えば、データシステムハウジング部品、TVハウジング、ノートブック)の製造のために使用することもできて、さらに、例えば、家庭用電気機器用、モニタ若しくはプリンタなどのオフィス機器用のハウジング部品、或いは構造物部門向けカバーパネル及びモータビークル部門向け部品又は電気部門向け部品の製造のために使用することもできて、これらは同じく本発明の主題の一部を形成する。
【0154】
本発明のさらなる詳細及び利点は、好ましい実施形態を示す添付の例示の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0155】
図1】繊維複合材料の重ね合わせた3つの層でできた多層複合材料の概略斜視図及び拡大詳細図であり、ここで、内層は繊維複合材料の外層に対して90°回転している。
図2】繊維複合材料の重ね合わせた5つの層でできた多層複合材料の概略斜視図であり、ここで、内層は同じ配向を有し、これらの配向は繊維複合材料の外層に対して90°回転している。
図3a】繊維複合材料の重ね合わせた6つの層でできた多層複合材料の概略斜視図であり、ここで、内層は同じ配向を有し、これらの配向は繊維複合材料の外層に対して90°回転している。
図3b】繊維複合材料の重ね合わせた3つの層でできた多層複合材料の概略斜視図であり、ここで、内層は、2つの外層の合計よりも大きい厚さを有する。2つの外層の合計に対する内層の厚さの比は、図3aからの多層複合材料の2つの外層の合計に対するすべての内層の合計の厚さの比と同じである。
図4a】繊維複合材料の重ね合わせた3つの層及び繊維複合材料の外層上の追加の材料層でできた多層複合材料の概略斜視図である。
図4b】繊維複合材料の重ね合わせた3つの層及び2つの追加の内部の更なる材料層、例えばプラスチック層でできた多層複合材料の概略斜視図であり、ここで、内部の更なる材料層は、繊維複合材料の各外層と繊維複合材料の内層の間に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0156】
図1は、繊維複合材料の重ね合わせた3つの層2,3でできた多層複合材料1の一部を示し、ここで、繊維複合材料の内層2は、繊維複合材料の外層3に対して90°回転している。図1の拡大詳細図は、多層複合材料の層2,3のそれぞれが、各層内に一方向に配列され且つポリカーボネート系プラスチック5に埋め込まれているエンドレス繊維4を含むことを示す。繊維複合材料の各層2,3の配向は、その中に存在する一方向に配列したエンドレス繊維4の配向によって決まる。エンドレス繊維4は、多層複合材料の全長/幅にわたって延びる。層2,3は、均一に相互結合されている。
【0157】
図2による多層複合材料1は、繊維複合材料の重ね合わせた5つの層2,3でできており、繊維複合材料の内層2は、同じ配向を有し、これらの配向は繊維複合材料の外層3に対して90°回転している。
【0158】
図3aによる多層複合材料1は、繊維複合材料の重ね合わせた6つの層2,3でできており、ここで、繊維複合材料の内層2は、同じ配向を有し、これらの配向は繊維複合材料の外層3に対して90°回転している。
【0159】
図3bは、繊維複合材料の重ね合わせた3つの層2,3でできた多層複合材料1を示し、ここで、内層2は、2つの外層3の合計よりも大きい厚さを有する。図4aは、図1について記載したように、繊維複合材料の重ね合わせた3つの層2,3でできた多層複合材料1を示すが、繊維複合材料の外層3の1つの上に追加の更なる外側材料層6を有する。外側材料層6は例えば、1又は複数の繊維を含まないプラスチック層及び/又は薄い外装、例えばペイント層又は単板を含んでもよい。
【0160】
図4bは、図1について記載したように、繊維複合材料の重ね合わせた3つの層2,3でできた多層複合材料1を示すが、2の追加の更なる内部材料層7を有し、ここで、各内部の更なる材料層7は、繊維複合材料の外層3の1つと繊維複合材料の内層2の間にそれぞれ位置する。更なる内部材料層7は、同一の又は異なる構成を有してもよく、また、例えば1又は複数の繊維を含まないプラスチック層を含んでもよい。
【0161】
実施例
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明し、反対の記載がない限り、本明細書に記載の測定方法は、本発明におけるすべての対応パラメータのために使用される。
【0162】
ブロック共縮合物の調製:
出発材料:
ポリカーボネート:
反応押出に使用される出発材料は、(ISO 1133(2011)に従って、300℃、荷重1.2kgで測定された)59~62cm/10minのメルトボリュームインデックスを有する、フェノールに基づく末端基を有する直鎖状ビスフェノールAカーボネートである。このポリカーボネートは、UV安定剤、離型剤又は熱安定剤などの添加剤を含まない。このポリカーボネートを、独国特許出願公開第102008019503号に記載の溶融エステル転移プロセスにより調製した。このポリカーボネートは、約600ppmのフェノール末端基含有量を有する。
【0163】
シロキサンブロック:
式(2)において約20のn及び3~4の範囲内のmを有し、ヒドロキシル含有量22.2mgKOH/g及び粘度175mPa・s(23℃)を有する式(11)のヒドロキノン末端ポリジメチルシロキサン(R=H、R=メチル);ナトリウム含有量は約3ppmである。このシロキサンは、約3重量%のイソオクタノールを含む。
【化23】
【0164】
触媒:
使用される触媒は、マスターバッチの形態のRhein Chemie Rheinau GmbH(マンハイム、ドイツ)製テトラフェニルホスホニウムフェノキシドである。テトラフェニルホスホニウムフェノキシドは、フェノールとの共結晶の形態で使用され、テトラフェニルホスホニウムフェノキシド約70%を含む。以下の量は、(フェノールとの共結晶として)Rhein Chemieから入手された物質に基づく。
【0165】
マスターバッチは、0.25%混合物として製造される。この目的のために、18gのテトラフェニルホスホニウムフェノキシドをドラムフープミキサー内で30分間、4982g上に吐出した。ポリカーボネートの総量のうち0.025重量%の割合で触媒が存在するように、マスターバッチは、1:10の比で計量される。
【0166】
MVR
特に記載しない限り、メルトボリュームフローレート(MVR)は、他の条件が記載されていない限り、ISO 1133(2011)に従って(300℃;1.2kgで)決定される。
【0167】
溶液粘度
溶液粘度の測定:相対溶液粘度(ηrel;イータrelとも呼ばれる)を、ジクロロメタン中、濃度5g/l、25℃でウベローデ粘度計を使用して測定した。
【0168】
ナトリウム含有量
ナトリウム含有量は、誘導結合プラズマを使用した質量分析法(ICP-MS)により測定される。
【0169】
ブロック共縮合物は、国際公開第2015/052110(A1)号による反応押出プロセスにより、ポリカーボネート成分及びシロキサン成分から調製される。
【0170】
国際公開第2015/052110(A1)号の図1は、シロキサン含有ブロック共縮合物の調製のためのスキームを示す。ポリカーボネート及び触媒マスターバッチは、重量供給装置(4)及び(5)により二軸スクリュー押出機(1)内に計量される。押出機(Leistritz Extrusionstechnik GmbH(ニュルンベルク)製ZSE 27 MAXX)は、蒸気除去用の真空ゾーンを備えた共回転二軸スクリュー押出機である。この押出機は、11のハウジング部品からなる。ハウジング部品1において、ポリカーボネート及び触媒マスターバッチが加えられ、ハウジング2及び3において、これらの成分が溶融される。ハウジング部品4において、液体シリコーン成分が加えられる。ハウジング部品5及び6は、液体シリコーン成分の混合に役立つ。ハウジング7~10は、縮合生成物を取り出すために抜出オリフィスを備える。ハウジング7及び8は第1の真空段階に、ハウジング9及び10は第2の真空段階に割り当てられる。第1の真空段階の真空は、絶対圧力で250~500mbarの間である。第2の真空段階の真空は1mbar未満である。シロキサンを初めにタンクに入れ、定量ポンプにより押出機に導入する。真空は、2台の真空ポンプにより発生させる。蒸気は押出機から導かれ、2台の凝縮器内に集められる。このようにして脱気された溶融物は、二軸スクリュー押出機から導管を経由して高粘度反応器まで導かれる。
【0171】
高粘度反応器は、水平且つ軸方向に平行に配置された2の共回転ロータを有する自己洗浄装置である。この構成は、欧州特許出願第460466号に記載されており、その中の図7を参照されたい。使用される機械は、ロータ直径187mm及び長さ924mmを有する。反応器の内部全体は、容積44.6リットルを有する。高粘度反応器は同じく、真空ポンプ(8)及び冷却器(9)に接続される。高粘度反応器内で適用される真空は0.1~5mbarである。反応の最後に、ブロック共縮合物が排出スクリューを介して取り出され、続いて(水浴(10)及びペレタイザー(11)により)ペレット化される。ブロック共縮合物の分子量は、処理量により制御される。押出機/高粘度反応器の組み合わせにおける処理量は、イータrelがおよそ1.31のブロック共縮合物の溶液粘度を与えるように調整される。
【0172】
ブロック共縮合物は、6.3cm/10minのMVRを有する。
【0173】
ブロック共縮合物は、ナトリウム含有量140ppbを有する。
【0174】
比較例の材料:
6cm/10minのMVRを有するCovestro Deutschland AG製Makrolon(登録商標)3108(直鎖状ビスフェノールA系ポリカーボネート)。
【0175】
12cm/10minのMVRを有するCovestro Deutschland AG製Makrolon(登録商標)2608(直鎖状ビスフェノールA系ポリカーボネート)。
【0176】
多層複合材料の製造:
それぞれのペレット材料が、110℃で4時間乾燥され、次いで、一軸スクリュー押出機(Kuhne(モデル:K35-24D)、押出機速度40rpm;押出機溶融温度約250℃)及びスロットダイ(スロットフィルムダイ450mm;リップギャップ0.8mm;キャスティングロール引取130℃;冷却ロール引取130℃;引取速度約3m/min)により処理され、厚さ約130μmのフィルムを与える。次いで、これらのフィルムをさらに処理し、フィルム積層法によりGottfried Joos Maschinenfabrik GmbH製Organo Presse LAP 100タイプの静圧プレス内で下記のプロセスパラメータに従い、複合材シートを得た。複合材シートの製造については、スタイル3107タイプ及びK506仕上げのSchlosser&Cramer KG(ハーン、ドイツ)製ガラス繊維織物を使用した。織物は、目付390g/mの2/2綾織である。フィルム及び織物層を交互に積層し、複合材シートの上面及び下面はそれぞれフィルム層によって完成した。経糸方向が同じままであるように、基材材料の全5つのフィルムを、4つのガラス繊維織物マットと交互に積層した。材料は、12barの一定圧力、280~295℃の間の温度でプレスされる。
【0177】
例1(比較)
多層複合材料は、Makrolon 2608を使用して製造される。材料は、上述の通り押し出されてフィルムを与え、さらに処理して多層複合材を与える。
【0178】
例2(比較)
多層複合材料は、Makrolon 3108を使用して製造される。材料は、上述の通り押し出されてフィルムを与え、さらに処理して多層複合材を与える。
【0179】
例3(本発明)
多層複合材料は、上述の通り製造されたシロキサン含有ブロック共縮合物を使用して製造される。材料は、上述の通り押し出されてフィルムを与え、さらに処理されて多層複合材を与える。
【0180】
例4(本発明)
多層複合材料は、上述の通り製造されたシロキサン含有ブロック共縮合物を使用して製造される。コンパウンディングにより、二酸化チタン(Kronos Worldwide Inc.製Kronos 2230)1%及びArkema製Lotader 8900 0.2%も着色のためにこのシロキサン含有ブロック共縮合物に加えられる。材料は、6.6のMVRを有する。
【0181】
曲げ試験:
複合材シートからバーを切り出す。試験片の長辺が経糸方向である。切断した試験片(約80×20mm)を、縁部の繊維伸び約0.96%でテンプレート内にクランプし、その中に24時間放置した。この後に、以下で説明する欠陥の評価が続いた。
【0182】
光学顕微鏡法による表面欠陥の評価:
長さ約2cmの片(縁部から中央)及び中央から直接の片(約1cm)において、光学顕微鏡像(透過光;明視野)をそれぞれ撮影した。3つのサンプルすべての画像が、垂直並びに水平に走るクラックを示す。評価では、垂直に走るクラック、すなわち、試験片の長辺(経糸方向)に対して直角に走るクラックを考慮する。
【表1】
【表2】
【表3】
【0183】
本発明による多層体の基材材料は、例外的に高い溶融安定性を示し、したがって、本発明による多層体を与える処理に特に適している。反応押出プロセスにより調製されたシロキサン含有ブロック共縮合物が、界面プロセスにより調製された従来のポリカーボネートと比べて、同等か、又はさらに高い溶融安定性を有することは驚くべきことである。ブロック共縮合物の異常に高いナトリウム値にも関わらず、この材料がこのような高い溶融安定性を有することは驚くべきことである。
【0184】
コンピュータ断層撮影法:
試験片は、曲げサイクル試験により、コンピュータ断層撮影法により調査される。この目的のために、Panalytical製Empyrian instrumentが使用される。サンプルにCu-Kα線が照射され、断層像が生成される。サンプルは、ガラス繊維織物の向きの方向に(a分割の)角度ステップで回転される(約900画像)。断層像は、サンプル中の構成要素(ガラス繊維織物、マトリックス、空隙)の密度分布の三次元表示である。画像のコントラストは密度と相関する。黒い領域は、(空隙に関連している)最も低い密度を有し、明るい領域(ガラス繊維織物)は最も高い密度を有する。個々の画像を利用して、密度分布の三次元表示(ソフトウェア:Volume Graphics(ハイデルベルク)製VG Studio)が生成され、空隙の体積(空気の体積)が、それに割り当てられた濃淡値により、CTの三次元表示から確認される。
【0185】
曲げサイクル試験:
幅0.5cmのバーを例1~4の多層体から切り出した。これらのロッドをクランプして両側に10回曲げ、次いで、サンプルのコンピュータ断層像を上述の通り生成し、上述の通り解析し、形成された空隙の体積を調査した。
【表4】
【0186】
CT画像及び空隙の体積評価は、比較例1及び2からのサンプルが、曲げサイクル試験後に、本発明の例3及び4からのサンプルよりも大きな空隙を有することを示す。例1及び2からのサンプルの場合、形成された空隙の割合は約12.4%であるが、本発明の例は、驚くべきことに、平均4.1%の割合を有する。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b