IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回転翼航空機 図1
  • 特許-回転翼航空機 図2
  • 特許-回転翼航空機 図3
  • 特許-回転翼航空機 図4
  • 特許-回転翼航空機 図5
  • 特許-回転翼航空機 図6
  • 特許-回転翼航空機 図7
  • 特許-回転翼航空機 図8
  • 特許-回転翼航空機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】回転翼航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/18 20060101AFI20230426BHJP
   B64C 25/04 20060101ALI20230426BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230426BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20230426BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20230426BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64C25/04
B64C27/08
B64C1/00 B
B64U10/13
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019038075
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020138713
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 英輔
(72)【発明者】
【氏名】村田 巌
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0272308(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107069538(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0126127(KR,A)
【文献】特開2006-051841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355453(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02672238(EP,A1)
【文献】特開2017-159873(JP,A)
【文献】特開平11-310199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 25/04
B64C 25/06
B64C 25/02
B64C 27/08
B64C 27/04
B64C 39/02
B64C 1/00
G01M 1/12
B64C 17/00
B64U 10/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚力を得るための複数のロータと、
前記複数のロータと連結される胴体と、
前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、
前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、
前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、
離陸前に前記各ロッドに負荷される荷重と、前記複数のロータの各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値との関係を直接又は間接的に表す情報を保存する記憶装置と、
を備え
前記制御装置は、前記記憶装置に保存される前記情報を参照して前記複数のロータの各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値を自動設定するように構成される回転翼航空機。
【請求項2】
揚力を得るための複数のロータと、
前記複数のロータと連結される胴体と、
前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、
前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、
前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記荷重センサにより検出された前記荷重の時間変化に基づいて前記胴体の振動の規模を表すパラメータを検出し、検出された前記パラメータが許容範囲外であると自動判定した場合には、離陸を止めさせるための処理を実行するように構成される回転翼航空機。
【請求項3】
揚力を得るための複数のロータと、
前記複数のロータと連結される胴体と、
前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、
前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、
前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、
前記胴体の水平方向に対する傾斜角度を検出する角度センサと、
前記複数のロッドをそれぞれ伸縮させる伸縮機構と
前記角度センサで検出された前記傾斜角度が許容範囲外である場合には、前記伸縮機構を制御することによって、前記角度センサで検出された前記傾斜角度が前記許容範囲内となるように前記複数のロッドの少なくとも1つを伸縮させるロッド制御装置と、
を備え、
前記荷重センサは、前記各ロッドの伸縮量と、前記各ロッドの変形量に基づいて、前記各ロッドに負荷される前記荷重を検出するように構成される回転翼航空機。
【請求項4】
揚力を得るための複数のロータと、
前記複数のロータと連結される胴体と、
前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、
前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、
前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のロッドを長さ方向が平行とならないように前記胴体に取付けることによって、前記各ロッドに荷重が負荷された場合に前記各ロッドが曲げ変形するようにし、
前記荷重センサは、前記各ロッドの曲げ変形量を歪ゲージで測定することによって前記荷重を検出するように構成される回転翼航空機。
【請求項5】
揚力を得るための複数のロータと、
前記複数のロータと連結される胴体と、
前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、
前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、
前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、
を備え、
湾曲した形状を有する複数のロッドを前記胴体に取付け、前記各ロッドを、曲げ変形量が大きくなる程、剛性が増加する非線形な機械的特性を有する繊維強化プラスチックで構成した回転翼航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転翼航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のロータを搭載した回転翼航空機が知られている。特に、3つ以上のロータを搭載した回転翼航空機はマルチコプタとも呼ばれる。複数のロータを搭載した回転翼航空機の姿勢制御は、従来、ジャイロセンサ等を用いて回転翼航空機の姿勢を検知することによって行われている(例えば特許文献1参照)。また、荷物を運搬するマルチコプタ等の飛行を安定させるために、荷重センサで重心位置を算出して表示する技術も提案されている(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-051841号公報
【文献】特開2017-159873号公報
【文献】特開平11-310199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジャイロセンサ等で姿勢を検知して実行される姿勢の制御方式では、姿勢が変化した後にロータに推力を変更するための制御指令信号が出力される。このため、姿勢の制御指示と応答が遅延し、回転翼航空機の離陸時における姿勢の不安定化の原因となる。回転翼航空機の姿勢が不安定になれば、落下のリスクが増加する。
【0005】
そこで本発明は、複数のロータを搭載した回転翼航空機の離陸時における安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る回転翼航空機は、揚力を得るための複数のロータと、前記複数のロータと連結される胴体と、前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、離陸前に前記各ロッドに負荷される荷重と、前記複数のロータの各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値との関係を直接又は間接的に表す情報を保存する記憶装置とを備え、前記制御装置は、前記記憶装置に保存される前記情報を参照して前記複数のロータの各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値を自動設定するように構成されるものである。
また、本発明の実施形態に係る回転翼航空機は、揚力を得るための複数のロータと、前記複数のロータと連結される胴体と、前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記荷重センサにより検出された前記荷重の時間変化に基づいて前記胴体の振動の規模を表すパラメータを検出し、検出された前記パラメータが許容範囲外であると自動判定した場合には、離陸を止めさせるための処理を実行するように構成されるものである。
また、本発明の実施形態に係る回転翼航空機は、揚力を得るための複数のロータと、前記複数のロータと連結される胴体と、前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置と、前記胴体の水平方向に対する傾斜角度を検出する角度センサと、前記複数のロッドをそれぞれ伸縮させる伸縮機構と、前記角度センサで検出された前記傾斜角度が許容範囲外である場合には、前記伸縮機構を制御することによって、前記角度センサで検出された前記傾斜角度が前記許容範囲内となるように前記複数のロッドの少なくとも1つを伸縮させるロッド制御装置とを備え、前記荷重センサは、前記各ロッドの伸縮量と、前記各ロッドの変形量に基づいて、前記各ロッドに負荷される前記荷重を検出するように構成されるものである。
また、本発明の実施形態に係る回転翼航空機は、揚力を得るための複数のロータと、前記複数のロータと連結される胴体と、前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置とを備え、前記複数のロッドを長さ方向が平行とならないように前記胴体に取付けることによって、前記各ロッドに荷重が負荷された場合に前記各ロッドが曲げ変形するようにし、前記荷重センサは、前記各ロッドの曲げ変形量を歪ゲージで測定することによって前記荷重を検出するように構成されるものである。
また、本発明の実施形態に係る回転翼航空機は、揚力を得るための複数のロータと、前記複数のロータと連結される胴体と、前記胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッドと、前記各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサにより検出された前記荷重の実測値が目標値となるように前記ロータを自動制御する制御装置とを備え、湾曲した形状を有する複数のロッドを前記胴体に取付け、前記各ロッドを、曲げ変形量が大きくなる程、剛性が増加する非線形な機械的特性を有する繊維強化プラスチックで構成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転翼航空機の構成を示す斜視図。
図2図1に示すロッドの第1の形状例を示す図。
図3図1に示すロッドの第2の形状例を示す図。
図4図1に示すロッドの第3の形状例を示す図。
図5図1に示すロッドに付与される機械的性質の一例を説明するグラフ。
図6図1に示す回転翼航空機の各ロッドに負荷される荷重に基づいて各ロータの出力を自動設定するための関数の一例を示すグラフ。
図7図1に示す回転翼航空機の離陸時における制御の流れを示すフローチャート。
図8】本発明の第2の実施形態に係る回転翼航空機の構成を示す正面図。
図9図8に示す回転翼航空機の姿勢を水平にした状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る回転翼航空機について添付図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
(回転翼航空機の構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る回転翼航空機の構成を示す斜視図である。
【0011】
回転翼航空機1は、胴体2に複数のロータ3と、複数のロッド4を取付けて構成される。3つ以上のロータ3を有する回転翼航空機1は、マルチコプタと呼ばれる。もちろん、回転翼航空機1は、2つのロータ3を有するヘリコプタであっても良い。
【0012】
回転翼航空機1は、人が搭乗しない無人航空機(UAV:Unmanned aerial vehicle)はもちろん、人が搭乗する有人航空機やOPV(Optionally Piloted Vehicle)であっても良い。OPVはパイロットが搭乗して操縦することも可能な無人航空機であり、有人航空機と無人航空機のハイブリッド航空機である。UAVはドローンとも呼ばれ、無人のマルチコプタやヘリコプタが代表的である。
【0013】
複数のロータ3は、異なる位置において揚力を得るための回転翼である。尚、各ロータ3にチルト機能を設け、回転翼航空機1の離陸後には、各ロータ3をチルトさせて推力を得ることができるようにしても良い。また、揚力を得るための複数のロータ3とは別にテールロータ等の揚力を得る目的以外の目的を有する回転翼を胴体2に連結しても良い。
【0014】
ロッド4は、回転翼航空機1が着陸している間にそれぞれ先端を着陸対象となる面と接触させることによって胴体2を支持する降着装置である。すなわち、回転翼航空機1には、車輪が必ずしも必要では無く、図1に例示されるようにロッド4の先端で着陸することが可能な航空機である。但し、図1に示す例に限らず、ロッド4の先端に車輪を取付け、車輪で着陸するようにしても良い。以降では、主として図1に例示されるように回転翼航空機1がロッド4の先端で着陸する場合を例に説明する。地面等に着陸して胴体2を支持するためには、少なくとも3本のロッド4を胴体2に連結することが必要である。図示された例では、4本のロッド4が胴体2の下部に取付けられている。
【0015】
各ロッド4には、荷重センサ5が取付けられる。このため、回転翼航空機1の離陸前においてロッド4自体を除く回転翼航空機1の重量によって各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4を荷重センサ5で検出することができる。荷重センサ5は、歪ゲージやピエゾ素子等の公知のセンサを用いて構成することができる。このため、各ロッド4への荷重センサ5の取付位置は、ロッド4の形状や荷重センサ5の種類に応じて各ロッド4の中腹部分や付根部分など適切な位置に決定される。
【0016】
図2は、図1に示すロッド4の第1の形状例を示す図である。
【0017】
図2に例示されるように、湾曲せずに直線的な形状を有する複数のロッド4を外側に開くように胴体2に取付けることができる。各ロッド4の形状を直線的にすれば、各ロッド4の設計や製造が容易となる。各ロッド4の材料は金属や複合材など、回転翼航空機1の荷重を支えることが可能な強度を有する材料であれば任意である。例えば、各ロッド4の材料として金属を用いれば素材コストを低減することができる。また、各ロッド4の材料として複合材を用いれば、高い強度を維持しつつ軽量化を図ることができる。
【0018】
複合材は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber reinforced plastics)とも呼ばれ、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass fiber reinforced plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)が代表的である。
【0019】
図3は、図1に示すロッド4の第2の形状例を示す図である。
【0020】
図3に例示されるように各ロッド4の先端に円盤状の部材4Aを設けるようにしても良い。各ロッド4の先端に円盤状の部材4Aを設けると、水上、湿地帯、液状化した土壌或いは植物で覆われた場所等の表面が剛体でない場所に着陸することが可能となる。
【0021】
図4は、図1に示すロッド4の第3の形状例を示す図である。
【0022】
図4に例示されるように湾曲した形状を有する複数のロッド4を胴体2に取付けるようにしても良い。もちろん、湾曲した形状を有する各ロッド4の先端に図3に例示されるような円盤状の部材4Aを設けることもできる。特に、湾曲した形状を有する各ロッド4を、FRPで構成すれば、機械的特性に望ましい異方性を付与することが容易となる。
【0023】
図5は、図1に示すロッド4に付与される機械的性質の一例を説明するグラフである。
【0024】
図5において横軸はロッド4の変位を示し、縦軸はロッド4の剛性を示す。図5に例示されるように、ロッド4の曲げ変形による変位量が大きくなる程、剛性が増加する非線形な機械的特性をロッド4に付与することができる。そうすると、回転翼航空機1の着陸直後にはロッド4の曲げ変形量を大きくし、次第にロッド4の曲げ変形量を小さくすることができる。このため、回転翼航空機1の着陸時における衝撃を和らげることができる。尚、このような機械的特性は、図2に例示される直線的な形状を有するロッド4に対してもある程度付与することができる。
【0025】
また、図5に例示されるような機械的特性をロッド4に付与するか否かを問わず、図2又は図4に例示されるように複数のロッド4を長さ方向が同一方向とならないように胴体2に取付ければ、回転翼航空機1の着陸時における各ロッド4への衝撃を緩和し、荷重センサ5の故障を防止することができる。
【0026】
加えて、複数のロッド4を長さ方向が着陸方向と平行とならないように胴体2に取付ければ、各ロッド4に荷重F1、F2、F3、F4が負荷された場合に各ロッド4を曲げ変形させることができる。このため、各ロッド4の曲げ変形量を歪ゲージで測定することによって荷重F1、F2、F3、F4を検出することが可能となる。すなわち、荷重センサ5を、直交3軸方向の力とモーメントを検出する複数の歪ゲージ等で構成し、各ロッド4の曲げ変形量を測定することによって各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4を公知の荷重計算によって算出することができる。
【0027】
回転翼航空機1の胴体2等には、回転翼航空機1の制御装置6、回転翼航空機1の制御等に必要な情報を保存するための記憶装置7、回転翼航空機1の制御等に必要な情報を制御装置6又は記憶装置7等に入力するための入力装置8並びに回転翼航空機1の離着陸を含むフライトに必要な情報を表示させるための表示装置9が収納される。尚、入力装置8及び表示装置9については、回転翼航空機1を遠隔操作できるように胴体2等の機体の外部に設置しても良い。
【0028】
制御装置6、記憶装置7及び入力装置8は、電気回路で構成することができる。制御装置6については、コンピュータ等の電子回路に回転翼航空機1の制御プログラムを読込ませることによって構築することができる。
【0029】
制御装置6では、複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角(迎角)を含む制御対象の制御を行うことができる。ピッチ角は、各ロータ3を構成するブレードの取付け角度であり、ロータ3のピッチ角を変化させることによって揚力を調整することができる。
【0030】
特に、制御装置6は、回転翼航空機1の離陸時において、荷重センサ5により検出された各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4に基づいて、回転翼航空機1の胴体2が安定化されるようにロータ3を自動制御する機能を有している。回転翼航空機1の胴体2は、各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4がバランスがとれた理想的な荷重となっていれば安定化する。
【0031】
重力以外に回転翼航空機1に作用する力が無視できれば、各ロッド4には回転翼航空機1の設計時に定めた回転翼航空機1の重量に対応する理想的な荷重F1、F2、F3、F4が掛かることになる。このため、回転翼航空機1の姿勢は安定する。これに対して、風や重量が大きい積載物の積載等の外乱によって回転翼航空機1の機体に作用する重力以外の力が回転翼航空機1に作用すると、各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4が変動する。各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4が変動し、アンバランスな状態で回転翼航空機1を離陸させると、姿勢が不安定となる。回転翼航空機1の姿勢が不安定になれば、落下のリスクが増加する。
【0032】
そこで、制御装置6は、回転翼航空機1の離陸前に各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の目標値を重量バランスが取れた望ましい値に設定し、各ロータ3の回転数及びピッチ角を制御することによって、各ロッド4に荷重F1、F2、F3、F4が負荷された状態で離陸しない状態を作り出す機能を有している。これにより、回転翼航空機1が離陸前の姿勢の変化が無い状態において各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4を荷重センサ5で検出することが可能となる。そして、制御装置6は、荷重センサ5により検出された離陸前に各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の実測値が目標値となるように各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4を自動制御できるように構成される。
【0033】
各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4として得られる揚力は、各ロータ3の回転数とピッチ角をパラメータとして可変制御することができる。このため、制御装置6により、複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値を自動設定することにより、各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4の自動制御を行うことができる。
【0034】
風等の外乱は時間的に変化し得るため、各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の実測値を目標値に近づけるために得るべき各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4も時間的に変化する場合がある。このため、制御装置6では、各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の実測値が目標値に近づくように複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方を変化させるフィードバック制御を行うようにすることができる。
【0035】
具体例として、各ロータ3の回転数及びピッチ角の一方又は双方を予め設定した一定の増減量で変化させることによって、各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の実測値を目標値に近づけるフィードバック制御を行うことができる。但し、各ロータ3の回転数及びピッチ角の一方又は双方の変化量を、各ロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の実測値に基づいて適切な量に設定できれば制御応答速度を向上することができる。
【0036】
そこで、離陸前に各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値と、荷重F1、F2、F3、F4の実測値を目標値に近づけるための複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値との関係をテーブルや関数として直接又は間接的に表す情報を、試験やシミュレーションによって事前に求めておくことができる。そして、求めたテーブルや関数等の情報を、記憶装置7に保存しておくことができる。
【0037】
そうすると、制御装置6は、記憶装置7に保存される情報を参照して、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値に対応する複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値を自動設定することが可能となる。つまり、複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の制御値を徐々に変化させるのではなく、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値に応じた適切な制御値に変化させることが可能となる。
【0038】
図6は、図1に示す回転翼航空機1の各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4に基づいて各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4を自動設定するための関数の一例を示すグラフである。
【0039】
図6において横軸は回転翼航空機1の各ロッド4に負荷される荷重Fを示し、縦軸は各ロータ3の出力Pを示す。例えば、離陸前に各ロッド4に負荷される荷重Fと、複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値との関係を間接的に表す情報として、図6に例示されるような、あるロッド4に負荷される荷重Fの実測値Fmと、対応するロータ3の出力Pの目標値Ptとの関係を表す情報を記憶装置7に保存することができる。
【0040】
すなわち、離陸前に各ロッド4に掛かる荷重Fが目標値Ftとなるように対応するロータ3の出力Pを初期値Piに設定しても、荷重センサ5で測定される荷重Fの実測値Fmは風等の外乱によって必ずしも目標値Ftとは一致しない。そのような場合に、荷重Fの実測値Fmを目標値Ftに近づけるために再設定すべきロータ3の出力Pの目標値Ptを、予め関数やテーブル等の情報を参照して設定できるようにすることができる。図6に示す例では、ロッド4に掛かる荷重Fの実測値Fmに基づいてロータ3の出力Pの目標値Ptを求めるための情報が線形関数となっている。
【0041】
図6に示す例では、1つのロッド4に負荷される荷重Fの実測値Fmに基づいて、対応する1つのロータ3の出力Pの目標値Ptが求められるように関数が準備されているが、ロッド4の数とロータ3の数が異なる場合やロッド4の位置とロータ3の位置が対応していない場合のように、単一又は複数のロータ3の出力Pを変化させることによって、単一又は複数のロッド4に掛かる荷重Fを調整することが適切又は不可避である場合もある。このため、離陸前に単一又は複数のロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の各実測値Fmの値又は組合せと、単一又は複数のロータ3の出力P1、P2、P3、P4の各目標値Ptの値又は組合せとを関数やテーブルで関連付けるようにしても良い
【0042】
このような単一又は複数のロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmを単一又は複数のロータ3の出力P1、P2、P3、P4の目標値Ptに変換するためのデータベースとしての機能を記憶装置7に設けると、制御装置6では、荷重センサ5により検出された複数のロッド4に掛かる荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの組合せ、すなわち荷重バランスに基づいて、複数のロータ3で発生させるべき揚力の組合せ、すなわち揚力バランスを特定することができる。
【0043】
各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4の各目標値Ptが制御装置6において自動設定されると、制御装置6では、複数のロータ3の各出力P1、P2、P3、P4の目標値Ptに基づいて複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値を自動設定することができる。
【0044】
尚、離陸前に各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmと、複数のロータ3の各回転数及び各ピッチ角の少なくとも一方の制御値との関係を直接表す情報を関数やテーブルとして準備し、記憶装置7に保存するようにしても良い。つまり、図6の縦軸をロータ3の回転数又はピッチ角の制御値としたような変換情報を予め試験やシミュレーション等によって取得し、参照情報として記憶装置7に保存するようにしても良い。その場合には、記憶装置7に保存された参照情報を参照すれば、直接、ロータ3の回転数又はピッチ角の制御値を特定することが可能となる。
【0045】
上述したように外乱により各ロッド4に作用する力は、時間的に変化する場合もある。このため、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの測定と、記憶装置7に保存された参照情報に基づくロータ3の回転数又はピッチ角の制御値の自動設定とをダイナミックに繰返すフィードバック制御を行うようにしても良い。逆に、外乱により各ロッド4に作用する力が時間的に変化しなければ、原理的には、参照情報に基づくロータ3の回転数及びピッチ角の少なくとも一方の制御値に対する補正が1回実行されれば、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4は目標値Ftになることになる。
【0046】
そして、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4が目標値Ftになった後、制御装置6による制御下において各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4を増加させ、回転翼航空機1の離陸に必要な揚力を発生させることによって、回転翼航空機1を離陸させることができる。
【0047】
このような回転翼航空機1の離陸時における安定化のためのロータ3の自動制御に加えて、制御装置6では、回転翼航空機1の機体が風等の外乱によって過剰に振動した場合には、回転翼航空機1の離陸を止めさせる制御を行うことができる。回転翼航空機1の胴体2を含む機体に生じる振動の規模は、荷重センサ5により検出された荷重F1、F2、F3、F4の時間変化に基づいて検出することができる。
【0048】
振動の規模は、荷重センサ5により検出された荷重F1、F2、F3、F4の時間変化の振幅や周波数等の任意のパラメータで表わすことができる。すなわち、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の時間的な変動量や単位時間当たりの変動量が大きい場合には、振動の規模が大きいと判定することができる。このため、胴体2を含む機体の振動の規模を表すパラメータに対して閾値処理を行い、胴体2を含む機体の振動の規模を表すパラメータが許容範囲内であるか否かを判定することによって、回転翼航空機1の離陸を止める程、振動が過剰であるか否かを検出することができる。
【0049】
そこで、制御装置6には、荷重センサ5により検出された荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの時間変化に基づいて胴体2の振動の規模を表すパラメータを検出し、検出されたパラメータが許容範囲外であると自動判定した場合には、離陸を止めさせるための処理を実行する機能を設けることができる。
【0050】
回転翼航空機1の離陸を止めさせるための処理としては、制御装置6がロータ3の回転を停止させる自動制御を行って回転翼航空機1の離陸を自動的に停止させる制御処理が挙げられる。或いは、離陸を止めさせるための警告情報を表示装置9に表示させ、回転翼航空機1に搭乗する操縦者又は遠隔から操縦する操縦者が手動でロータ3の回転を停止できるようにしても良い。このような情報処理によって、回転翼航空機1の離陸前に安全に離陸可能であるか否かを判断することが可能となる。
【0051】
(回転翼航空機の制御方法)
次に、回転翼航空機1の制御方法について説明する。
【0052】
図7は、図1に示す回転翼航空機1の離陸時における制御の流れを示すフローチャートである。
【0053】
まずステップS1において、回転翼航空機1の降着装置として機能する複数のロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の目標値Ftが制御装置6において設定される。各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の目標値Ftは、予め固定値として設定しても良いし、入力装置8の操作によって可変設定できるようにしても良い。
【0054】
次に、ステップS2において、回転翼航空機1に風等の外乱による力が作用しない場合に、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4を目標値Ftとするために設定すべき各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4の値が制御装置6において初期値Piとして設定される。
【0055】
次に、ステップS3において、各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4が初期値Piとなるように、制御装置6が、各ロータ3の回転数とピッチ角を自動制御する。そうすると、各ロータ3の回転によって、回転翼航空機1が離陸できない程度の揚力が生じる。このため、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4が、各ロータ3の回転開始前に比べて低下する。
【0056】
次に、ステップS4において、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4のの実測値Fmが荷重センサ5により検出される。検出された荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmは、荷重センサ5から制御装置6に出力される。
【0057】
次に、ステップS5において、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の目標値Ftと、実測値Fmとが制御装置6において比較され、実測値Fmの目標値Ftからの乖離量が求められる。例えば、目標値Ftと、実測値Fmとの間における差又は比を実測値Fmの乖離量として算出することができる。そして、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの乖離量が許容範囲であるか否かが制御装置6において自動判定される。具体例として、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmが、±10[N]等の経験的に設定した上限値と下限値で特定される許容範囲内であるか否かが閾値処理によって自動判定される。
【0058】
風力や積載物に作用する重力等の回転翼航空機1自体に作用する重力以外の力によって各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の少なくとも1つが増加すれば、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの少なくとも1つが許容範囲外となり得る。例えば、図6に例示されるように、あるロッド4に負荷される荷重Fの実測値Fmが許容範囲を超えて過剰となる。
【0059】
そのような場合には、ステップS6において、対応する単一又は複数のロータ3の出力Pの制御値が目標値Ptに補正される。ロータ3の出力Pの目標値Ptは、図6に例示されるような関数やテーブルとして表された参照情報に基づいて、制御装置6において自動設定することができる。すなわち、制御装置6が記憶装置7に保存された線形関数等の参照情報を参照することによって、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmに対応する各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4の目標値Ptを自動設定する。
【0060】
次に、ステップS7において、制御装置6は、各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4が目標値Ptとなるように各ロータ3の回転数とピッチ角を自動制御する。これにより、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmを目標値Ftに近づけることができる。すなわち、胴体2を含む機体が安定化されるようにロータ3を自動制御することができる。
【0061】
少なくとも1つのロータ3の回転数及びピッチ角の少なくとも一方が変更されると、再びステップS4における荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの計測と、ステップS5における判定が実行される。そして、ステップS5における判定で、全てのロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの目標値Ftからの乖離量がいずれも許容範囲内であると判定されるまで、ステップS6における単一又は複数のロータ3の出力P1、P2、P3、P4の目標値Ptの補正と、ステップS7における各ロータ3の回転数とピッチ角の制御が繰返される。
【0062】
すなわち、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmを目標値Ftに近づけるためにロータ3の出力P1、P2、P3、P4の目標値Ptを再設定するフィードバック制御が実行される。これにより、風等の外乱による力の大きさが時間的に変動したとしても、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmを目標値Ftに近づけることができる。
【0063】
そして、ステップS5における判定で、全てのロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmの目標値Ftからの乖離量がいずれも許容範囲内であると判定されると、ステップS8において、回転翼航空機1の離陸制御が実行される。すなわち、制御装置6は、各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4を増加させる。このため、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の実測値Fmが徐々に減少し、ゼロとなった時点で回転翼航空機1が離陸することになる。
【0064】
尚、図7に示すフローに先立って荷重センサ5により検出された荷重F1、F2、F3、F4の時間変化に基づいて回転翼航空機1の振動の規模を検出し、振動が過剰となった場合には、離陸を止めるようにすることもできる。
【0065】
(効果)
以上のような回転翼航空機1及び回転翼航空機1の制御方法は、回転翼航空機1の降着装置である複数のロッド4にそれぞれ荷重センサ5を取付けて荷重Fの実測値Fmを測定し、複数のロータ3のうち必要なロータ3の出力Pを補正することによって各ロッド4に掛かる荷重Fが目標値Ftとなった後に離陸するようにしたものである。
【0066】
このため、回転翼航空機1及び回転翼航空機1の制御方法によれば、離陸時における機体の不安定化を抑制し、安定性及び安全性を向上することができる。すなわち、回転翼航空機1の離陸直前に降着装置を構成する複数のロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4を均一にした後で、回転翼航空機1を離陸することができるため、回転翼航空機1の機体の姿勢を安定させることができる。
【0067】
また、回転翼航空機1の振動が過剰に大きい場合には、離陸を取りやめて安全性を確保することもできる。
【0068】
(第2の実施形態)
図8は本発明の第2の実施形態に係る回転翼航空機の構成を示す正面図である。
【0069】
図8に示された第2の実施形態における回転翼航空機1Aは、傾斜面10に着陸した場合であっても機体の姿勢を水平にできるようにした構成が第1の実施形態における回転翼航空機1と相違する。第2の実施形態における回転翼航空機1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における回転翼航空機1と実質的に異ならないため回転翼航空機1Aの概略的な正面図のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0070】
第2の実施形態における回転翼航空機1Aは、第1の実施形態と同様な構成に加えて、胴体2を含む機体の水平方向に対する傾斜角度を検出する角度センサ11、複数のロッド4をそれぞれ伸縮させる伸縮機構12及び伸縮機構12を制御することによって複数のロッド4を伸縮させるロッド制御装置13を備えている。
【0071】
角度センサ11は、機体の空間的な傾斜角度を測定できれば所望の位置に配置することができる。ロッド4を伸縮させる伸縮機構12の具体例としては、ラックアンドピニオン、ボールねじ或いはシリンダ機構等の公知の機構が挙げられる。ロッド制御装置13は、回転翼航空機1Aの制御装置6と同様にコンピュータ等の電子回路にプログラムを読込ませて構築することができる。このため、ロッド制御装置13と、回転翼航空機1Aの制御装置6とを一体化しても良い。
【0072】
図8に例示されるように、回転翼航空機1Aが水平方向に対して傾斜する傾斜面10から離陸しようとすると、各ロータ3で発生する揚力が鉛直方向とならないため、姿勢が不安定となる恐れがある。そこで、角度センサ11で回転翼航空機1Aの傾きを検出し、回転翼航空機1Aが傾いている場合には、必要なロッド4を伸縮機構12で伸縮させることによって、回転翼航空機1Aの姿勢を水平にすることができる。
【0073】
より具体的には、角度センサ11で検出された回転翼航空機1Aの水平方向に対する傾斜角度を、ロッド制御装置13に出力することができる。そして、ロッド制御装置13において回転翼航空機1Aの傾斜角度が許容範囲内であるか否かを閾値処理によって判定し、回転翼航空機1Aの傾斜角度が許容範囲外であると判定された場合には、ロッド制御装置13が伸縮機構12を制御することによって、角度センサ11で検出された回転翼航空機1Aの傾斜角度が許容範囲内となるように複数のロッド4の少なくとも1つを伸縮させることができる。
【0074】
図9図8に示す回転翼航空機1Aの姿勢を水平にした状態を示す正面図である。
【0075】
図9に示すように、傾斜面10の傾斜角度に応じてロッド4を伸縮することができる。これにより、回転翼航空機1Aの機体を水平にし、各ロータ3の回転によって得られる揚力を鉛直方向とすることができる。その結果、第1の実施形態と同様な、各ロッド4に負荷される荷重F1、F2、F3、F4の目標値Ftの設定や各ロータ3の出力P1、P2、P3、P4の目標値Ptの設定を含む離陸時における安定化制御を行うことが可能となる。
【0076】
すなわち、第2の実施形態では、角度センサ11で検出された回転翼航空機1Aの傾斜角度に対応する必要なロッド4を伸縮させて回転翼航空機1Aの姿勢を水平にした後、図7に例示されるフローに沿って回転翼航空機1Aの離陸時における安定化制御を行うことができる。尚、角度センサ11から出力される回転翼航空機1Aの傾斜角度に基づいてロッド4を伸縮させ、回転翼航空機1Aの傾斜角度をゼロとするフィードバック制御を行うようにしても良い。
【0077】
ところで、ロッド4を伸縮させると、ロッド4の構造によってはロッド4の突き出し長さや長さ自体が変化する。ロッド4の突き出し長さが変化すると、ロッド4に同じ荷重Fが負荷されても、異なる変形量でロッド4の先端が曲げ変形する場合がある。そのような場合には、ロッド4に負荷される荷重Fとロッド4の曲げ変形量との関係を表す関数やテーブル等の参照情報をロッド4の伸縮量ごとに事前に求めておくことにより、ロッド4の伸縮量に関わらず荷重Fを検出することが可能となる。すなわち、荷重センサ5は、各ロッド4の伸縮量と、各ロッド4の変形量に基づいて、各ロッド4に負荷される荷重Fを検出するように構成することができる。
【0078】
以上の第2の実施形態によれば、回転翼航空機1Aが水平方向に対して傾斜する傾斜面10から離陸する場合であっても、揚力が鉛直方向から傾斜した方向に発生することを回避し、安定した離陸を実現することができる。
【0079】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0080】
1、1A 回転翼航空機
2 胴体
3 ロータ
4 ロッド
4A 円盤状の部材
5 荷重センサ
6 制御装置
7 記憶装置
8 入力装置
9 表示装置
10 傾斜面
11 角度センサ
12 伸縮機構
13 ロッド制御装置
F1、F2、F3、F4 ロッドに負荷される荷重
P1、P2、P3、P4 ロータの出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9