(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】運転情報処理装置、運転情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230426BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230426BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 F
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2019043124
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明子
(72)【発明者】
【氏名】澄川 瑠一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169612(JP,A)
【文献】特開2012-113631(JP,A)
【文献】特開2016-199114(JP,A)
【文献】特開2017-185879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得する熟練度取得部と、
複数のドライバから取得された前記熟練度に基づいて、複数のカーブのうち所定割合以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを熟練ドライバとして抽出する熟練ドライバ抽出部と、
複数のドライバから取得された前記熟練度
、および、前記熟練ドライバの抽出結果に基づいて、前記カーブの難易度を判定する難易度判定部と、
を備え
、
前記難易度判定部は、個々のカーブでの前記熟練ドライバの総数に対する非熟練者として判定された熟練ドライバの数の割合に基づいて、前記カーブの前記難易度を判定することを特徴とする、運転情報処理装置。
【請求項2】
前記カーブの難易度に関する情報を各車両に送信することを特徴とする、請求項
1に記載の運転情報処理装置。
【請求項3】
前記熟練度と前記難易度とがレベルに応じて対応付けされており、
前記熟練度に対応する前記難易度よりも難度の高い前記カーブを判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の運転情報処理装置。
【請求項4】
ドライバの前記熟練度と、前記カーブの前記難易度に基づいて、ルートを選択するルート選択部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の運転情報処理装置。
【請求項5】
前記熟練度と前記難易度とがレベルに応じて対応付けされており、
前記ルート選択部は、前記熟練度に対応する前記難易度よりも難度の高い前記カーブを含む前記ルートを選択することを特徴とする、請求項
4に記載の運転情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータが、
カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得するステップと、
複数のドライバから取得された前記熟練度に基づいて、複数のカーブのうち所定割合以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを熟練ドライバとして抽出するステップと、
複数のドライバから取得された前記熟練度
、および、前記熟練ドライバの抽出結果に基づいて、前記カーブの難易度を判定するステップと、
を
実行し、
前記カーブの難易度を判定するステップは、個々のカーブでの前記熟練ドライバの総数に対する非熟練者として判定された熟練ドライバの数の割合に基づいて、前記カーブの前記難易度を判定することを特徴とする、運転情報処理方法。
【請求項7】
カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得する手段、
複数のドライバから取得された前記熟練度に基づいて、複数のカーブのうち所定割合以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを熟練ドライバとして抽出する手段、
複数のドライバから取得された前記熟練度
、および、前記熟練ドライバの抽出結果に基づいて、前記カーブの難易度を判定する手段、
としてコンピュータを機能させ
、
前記カーブの難易度を判定する手段は、個々のカーブでの前記熟練ドライバの総数に対する非熟練者として判定された熟練ドライバの数の割合に基づいて、前記カーブの前記難易度を判定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転情報処理装置、運転情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、運転者の技能レベルに応じたアドバイスを警報装置に表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が走行する道路は様々であり、ドライバにとっての難易度も様々である。例えば、運転の難易度が高いカーブなどを通過する際には、ドライバが予め難易度の高いカーブであることを知っていれば、慎重な運転を行うことができる。しかしながら、カーブの難易度を判定することには困難が伴い、ドライバが予めカーブの難易度を知ることは不可能である。
【0005】
また、カーブの難易度は、ドライバの運転の熟練度に応じて相対的に異なるものである。上記特許文献1に記載された技術は、運転者の技能レベルに応じたアドバイスを提供することは想定しているものの、ドライバの運転の熟練度に応じてカーブの難易度を判定することに関して、何ら考慮するものではない。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両が走行するカーブの難易度を正確に判定することが可能な、新規かつ改良された運転情報処理装置、運転情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得する熟練度取得部と、複数のドライバから取得された前記熟練度に基づいて、複数のカーブのうち所定割合以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを熟練ドライバとして抽出する熟練ドライバ抽出部と、複数のドライバから取得された前記熟練度、および、前記熟練ドライバの抽出結果に基づいて、前記カーブの難易度を判定する難易度判定部と、を備え、前記難易度判定部は、個々のカーブでの前記熟練ドライバの総数に対する非熟練者として判定された熟練ドライバの数の割合に基づいて、前記カーブの前記難易度を判定する、運転情報処理装置が提供される。
【0009】
また、前記カーブの難易度に関する情報を各車両に送信するものであっても良い。
また、前記熟練度と前記難易度とがレベルに応じて対応付けされており、前記熟練度に対応する前記難易度よりも難度の高い前記カーブを判定するものであっても良い。
【0010】
また、ドライバの前記熟練度と、前記カーブの前記難易度に基づいて、ルートを選択するルート選択部を備えるものであっても良い。
【0011】
また、前記ルート選択部は、前記熟練度に対応する前記難易度よりも難度の高い前記カーブを含む前記ルートを選択するものであっても良い。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータが、カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得するステップと、複数のドライバから取得された前記熟練度に基づいて、複数のカーブのうち所定割合以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを熟練ドライバとして抽出するステップと、複数のドライバから取得された前記熟練度、および、前記熟練ドライバの抽出結果に基づいて、前記カーブの難易度を判定するステップと、を実行し、前記カーブの難易度を判定するステップは、個々のカーブでの前記熟練ドライバの総数に対する非熟練者として判定された熟練ドライバの数の割合に基づいて、前記カーブの前記難易度を判定することを特徴とする、運転情報処理方法が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得する手段、複数のドライバから取得された前記熟練度に基づいて、複数のカーブのうち所定割合以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを熟練ドライバとして抽出する手段、複数のドライバから取得された前記熟練度、および、前記熟練ドライバの抽出結果に基づいて、前記カーブの難易度を判定する手段、としてコンピュータを機能させ、前記カーブの難易度を判定する手段は、個々のカーブでの前記熟練ドライバの総数に対する非熟練者として判定された熟練ドライバの数の割合に基づいて、前記カーブの前記難易度を判定するプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両が走行するカーブの難易度を正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図2】カーブ走行区間に基づいて、車両のドライバが熟練者であるかを判定し、カーブの位置とドライバデータをサーバに送信する処理を示すフローチャートである。
【
図3A】ステップS16でヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を示す特性図である。
【
図3B】Z秒間の操舵角速度の分布から求まる、熟練者と非熟練者の標準偏差を示す特性図である。
【
図4】サーバ2000が運転に注意すべきカーブを判定する処理を示すフローチャートである。
【
図5】熟練ドライバA~Cの抽出と、熟練ドライバA、熟練ドライバB、熟練ドライバC、・・・のそれぞれが非熟練者として判定されたカーブ3を抽出する様子を示す模式図である。
【
図6】ドライバのレベルを判定する処理を示すフローチャートである。
【
図7】カーブのレベルの判定方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両システム1000と、その周辺の構成を示す模式図である。車両システム1000は、基本的には自動車などの車両に構成されるシステムである。
図1に示すように、車両システム1000は、車外センサ100、車両センサ200、操舵角センサ300、制御装置400、車内表示装置500、車外表示装置600、ナビゲーション装置700、通信装置800、スピーカ900を有して構成されている。車両システム1000は、外部のサーバ2000と通信可能に構成されている。
【0018】
車外センサ100は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、赤外線センサ等から構成され、自車両周辺の人や車両などの位置、速度を測定する。車外センサ100がステレオカメラから構成される場合、ステレオカメラは、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を制御装置400へ送る。一例として、ステレオカメラは、色情報を取得可能なカラーカメラから構成され、車両のフロントガラスの上部に設置される。
【0019】
車両センサ200は、車両の速度、加速度、角速度、ヨーレートなど、車両内のCAN(Controller Area Network)で通信されている情報を取得する。なお、これらの情報は、各種センサから取得することができる。操舵角センサ300は、ステアリングホイールに装着され、ステアリングホイールの操舵角を検出する。
【0020】
制御装置400は、車両のドライバの運転の熟練度を判定し、サーバ2000へ送る。このため、制御装置400は、熟練度判定部402、送信処理部404、ドライバ認証部406、表示制御部408を有している。熟練度判定部402は、車両のドライバの運転の熟練度を判定する。送信処理部404は、熟練度判定部402が判定したドライバの熟練度を、通信装置800を介してサーバ2000へ送信するための処理を行う。ドライバ認証部406は、車両を運転するドライバの認証を行う。なお、認証方法の一例として、ドライバの顔、指紋を認証する方法が挙げられるが、認証方法としては様々な手法を用いることができる。なお、制御装置400の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0021】
車内表示装置500は、例えば車内のダッシュパネル、メータ周り等に表示を行う装置である。車外表示装置600は、車両外部に向けて表示を行う装置である。なお、車外表示装置600は、HUD(Head-up Display)装置から構成されていても良い。HUD(Head-up Display)装置は、人間の視野に直接情報を映し出す表示装置であって、自動車のフロントガラスやリアガラスなどのガラス上に実像または虚像を表示する。
【0022】
通信装置800は、車両外部のサーバ2000と通信を行い、渋滞情報、道路情報などの各種情報を受信する。また、通信装置800は、後述するように、熟練度を判定したカーブの位置とドライバデータをサーバ2000に送信する。ナビゲーション装置700は、地図情報に基づいて、現在地から目的地までの経路を検索する。このため、ナビゲーション装置700は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System)等により車両の現在位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置700は現在地まで車両が走行してきた経路を記憶している。
【0023】
サーバ2000は、車両側で判定したドライバの熟練度と、熟練度を判定したカーブの情報を取得し、カーブの難易度を判定する。この際、サーバ2000は、複数のドライバから取得された熟練度に基づいて、熟練ドライバを抽出し、熟練ドライバが非熟練者として判定された割合に基づいて、カーブの難易度を判定する。また、サーバ2000は、カーブの難易度に関する情報を車両側に送信する。このため、サーバ2000は、熟練度取得部2010、難易度判定部2020、熟練ドライバ抽出部2030、ルート選択部2040、通信処理部2050、を有している。
【0024】
熟練度取得部2010は、車両システム1000側から送信された、カーブを走行中のドライバの運転の熟練度を取得する。難易度判定部2020は、複数のドライバから取得された熟練度に基づいて、カーブの難易度を判定する。また、難易度判定部2020は、熟練ドライバが非熟練者として判定された割合に基づいて、カーブの難易度を判定する。また、難易度判定部2020は、熟練度と、熟練度に対応するカーブの難易度とをレベルに応じて対応付けしておき、熟練度に対応する難易度よりも難度の高いカーブを判定する。これにより、ドライバの熟練度に応じて、難度の高いカーブの前に警告したり、難度の高いカーブを避けるルートを選択することも可能となる。熟練ドライバ抽出部2030は、複数のドライバから取得された熟練度に基づいて、熟練ドライバを抽出する。ルート選択部2040は、任意のドライバの熟練度と、カーブの難易度に基づいて、熟練度に対応する難易度よりも難度の高いカーブを含むルートを選択する。通信処理部2050は、カーブの難易度に関する情報を各車両に送信する処理を行う。なお、サーバ2000の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0025】
図2は、カーブ走行区間に基づいて、車両のドライバが熟練者であるかを判定し、カーブの位置とドライバデータをサーバ2000に送信する処理を示すフローチャートである。より具体的には、
図2の処理は、難しいカーブをマッピングして知らせ、熟練状態の人が非熟練となる頻度の多いカーブを判定する処理を行う。
図2の処理は、主として制御装置400により、所定の周期毎に行われ、主に熟練度判定部402によって行われる。なお、カーブは単一のカーブであっても良いし、複数のカーブを平均しても良い。
【0026】
先ず、ステップS10では、車内センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両がカーブを走行したか否かを判定する。具体的に、ステップS10では、ヨーレートが第1のしきい値X1よりも大きく、第2のしきい値X2よりも小さい場合は、車両がカーブを走行したと判定する。車両がカーブを走行した場合はステップS12へ進み、車両がカーブを走行していない場合は、処理を終了する。
【0027】
ステップS12では、車両がカーブを走行している時間t1が一定時間継続したか否かを判定する。具体的に、ステップS12では、車両がカーブを走行している時間t1がしきい値Yを超えているか否かを判定し、車両がカーブを走行している時間t1がしきい値Yを超えている場合は、車両がカーブを走行している時間t1が一定時間継続したと判定し、ステップS16へ進む。
【0028】
ステップS16では、車内センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両がカーブを走行している時間t1の中で、ヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を取得する。次のステップS18では、Z秒間における操舵角速度αまたは操舵角加速度βを算出する。次のステップS20では、操舵角速度αまたは操舵角加速度βの標準偏差σを算出する。
【0029】
次のステップS22では、標準偏差σの値が所定のしきい値Tよりも大きいか否かを判定し、標準偏差σが所定のしきい値Tよりも大きい場合はステップS24へ進む。ステップS24へ進んだ場合は、操舵角速度αまたは操舵角加速度βのバラツキが比較的大きいため、操舵が不安定であると考えられる。従って、ステップS24では、車両のドライバが非熟練者であると判定する。ステップS24の後はステップS28へ進み、ドライバが非熟練者であると判定したカーブの位置情報と、ドライバに関する情報(ドライバデータ)をサーバ2000に送信する。ステップS28の後は処理を終了する。なお、ドライバに関する情報は、ドライバの名前など、ドライバを特定するための情報であり、例えばドライバ認証部406の認証により取得することができる。
【0030】
一方、ステップS22で標準偏差σの値が所定のしきい値T以下の場合は、ステップS26へ進む。ステップS26へ進んだ場合は、操舵角速度αまたは操舵角加速度βのバラツキが比較的小さいため、操舵が安定していると考えられる。従って、ステップS26では、車両のドライバが熟練者であると判定する。ステップS26の後はステップS29へ進み、ドライバが熟練者であると判定したカーブの位置情報と、ドライバに関する情報をサーバ2000に送信する。ステップS28の後は処理を終了する。
【0031】
図3Aは、ステップS16でヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を示す特性図である。また、
図3Bは、Z秒間の操舵角速度の分布から求まる、熟練者と非熟練者の標準偏差を示す特性図である。
図4Bに示すように、熟練者の方が非熟練者よりも操舵角速度の分布が狭くなり、標準偏差の値が大きくなる。
【0032】
熟練度判定部402は、予め熟練度が判明しているドライバについては、ドライバ認証部406による認証の結果に基づいて熟練度を判定しても良い。例えば、過去に非熟練者として判定したドライバAが車両を運転する場合に、ドライバ認証部410によってドライバAであることが認証されると、
図2に示した処理を行うことなく、ドライバAを非熟練者と判定することができる。
【0033】
また、ドライバの熟練度の判定方法として、
図2に示した方法以外の方法を用いても良い。例えば、加減速の滑らかさをアクセル開度変化率の標準偏差から評価し、ドライバの熟練度を判定しても良い。また、直線でのふらつきを、GPSまたは白線検知などから得られる走行軌跡に基づいて評価し、ドライバの熟練度を判定しても良い。また、走行軌跡以外にも、操舵角速度の周波数解析結果、操舵角速度の絶対値が所定値を超えた時間(または回数)、ヨーレートの標準偏差、車線逸脱回数などをしきい値で評価しても良い。更に、車間の取り方を衝突余裕時間の標準偏差から評価し、ドライバの熟練度を評価しても良い。
【0034】
図2の処理によれば、個々のドライバについて、カーブ毎に熟練者、非熟練者のいずれに判定されたかを示すデータを収集することができる。サーバ2000側では、このようにして得られたデータに基づいて、運転に注意すべきカーブを判定する。
図4は、サーバ2000が運転に注意すべきカーブを判定する処理を示すフローチャートである。
【0035】
先ず、ステップS30では、熟練ドライバ抽出部2030が、M%以上のカーブ数で熟練者と判定されたドライバを抽出する。Mの値は、例えば60(%)とする。
図5の上段には、ステップS30において、60%以上のカーブ数で熟練者と判定された熟練ドライバA~Cを示している。熟練ドライバA~Cは、5つのカーブのうち3つ以上で熟練者と判定されている。
【0036】
次のステップS32では、ステップS30で抽出された熟練ドライバが、非熟練者として判定されたカーブを抽出する。
図5の下段には、熟練ドライバA、熟練ドライバB、熟練ドライバC、・・・のそれぞれが非熟練者として判定されたカーブ3を抽出する様子を示している。熟練ドライバA、熟練ドライバB、熟練ドライバCは、60%以上のカーブで熟練者と判定されているが、カーブ2,3については、熟練ドライバが非熟練者と判定されている。このため、カーブ2,3は熟練ドライバA~Cであっても難しいカーブであり、注意すべきカーブとして抽出される。
【0037】
次のステップS34では、ステップS32で抽出したカーブでの非熟練判定割合を算出する。個々のカーブでの非熟練判定割合は、熟練ドライバの総数に対する、そのカーブで非熟練と判定された熟練ドライバの数の割合である。
図5の下段に示す例では、4人の熟練ドライバのうち、3人の熟練ドライバがカーブ3で非熟練と判定されている。従って、カーブ3での非熟練割合は、3/4=0.75=75%である。同様に、カーブ2については、4人の熟練ドライバのうち、1人の熟練ドライバがカーブ2で非熟練と判定されている。従って、カーブ2での非熟練割合は、1/4=0.25=25%である。
【0038】
次のステップS36では、難易度判定部2020が、ステップS32で抽出したカーブに関し、ステップS34で算出した非熟練判定割合がN%以上か否かを判定し、非熟練判定割合がN%以上の場合はステップS38へ進む。一方、非熟練判定割合がN%未満の場合は、処理を終了する。
【0039】
Nの値は、一例として70%とする。この場合、カーブ3での非熟練判定割合が75%であることから、ステップS38へ進み、難しい注意すべきカーブとしてカーブ3をサーバ2000に登録する。
【0040】
なお、ステップS36では、1つのしきい値に基づいて非熟練割合を判定し、カーブの難易度を2段階で判定したが、複数の異なるしきい値に基づいて非熟練判定割合を判定し、難易度を3段階以上に分けても良い。
【0041】
次のステップS40では、通信処理部2050が、ステップS38で登録したカーブ3の情報を、各車両に送信する。各車両では、カーブ3が難しく注意すべきカーブである旨の情報を、車内表示装置500に表示する。なお、車内表示装置500への表示は、表示制御部408の制御により行われる。次のステップS42では、車両がカーブ3を走行する際に、車内表示装置500の表示の色を変えたり、スピーカ900で音声を通知するなどして、ドライバに注意を促す。
【0042】
なお、
図4の処理では、熟練ドライバとして抽出されたドライバに基づいて、注意すべきカーブを判定したが、熟練ドライバ以外の判定結果も用いて、単純に熟練者と判定された割合と非熟練者と判定された割合に基づいて、カーブの難易度を判定しても良い。例えば、あるカーブにおいて、熟練者と判定されたドライバが20%であり、非熟練者と判定されたドライバが80%であるような場合に、そのカーブを注意すべきカーブとして判定することができる。
【0043】
次に、
図6及び
図7に基づいて、ドライバが自分の運転レベルよりも少し難しいルートを選択する処理について説明する。
図6及び
図7の処理は、主にルート選択部2040によって行われる。
図6は、ドライバのレベルを判定する処理を示すフローチャートである。この処理によれば、ドライバの運転を上達させることができ、また運転する愉しみを提供することができる。
【0044】
先ず、ステップS50では、レベルの判定対象のドライバに関し、各カーブでの熟練、非熟練の判定結果の割合(熟練割合J)を算出する。熟練割合は、熟練、非熟練を判定したカーブの総数に対する、熟練と判定されたカーブの数の割合である。次のステップS52では、33>熟練割合J≧0であるか否かを判定し、33>熟練割合J≧0の場合はステップS54へ進む。ステップS54では、ドライバのレベルをレベル1と判定する。ステップS54の後はステップS56へ進み、ルート選択部2040が、非熟練判定割合レベル2のカーブを含むルートを選択する。選択したルートの情報は、通信処理部2050の処理により、レベルの判定対象のドライバへ送信される。ステップS56の後は処理を終了する。
【0045】
ステップS52で33>熟練割合J≧0でない場合は、ステップS58へ進む。ステップS58では、66>熟練割合J≧33であるか否かを判定し、66>熟練割合J≧33の場合はステップS60へ進む。ステップS60では、ドライバのレベルをレベル2と判定する。ステップS60の後はステップS62へ進み、非熟練判定割合レベル3のカーブを含むルートを選択する。ステップS62の後は処理を終了する。
【0046】
ステップS58で66>熟練割合J≧33でない場合は、ステップS64へ進む。ステップS64では、100≧熟練割合J≧66であるか否かを判定し、100≧熟練割合J≧66の場合はステップS66へ進む。ステップS66では、ドライバのレベルをレベル3と判定する。ステップS66の後はステップS68へ進み、非熟練判定割合レベル4のカーブを含むルートを選択する。ステップS62の後は処理を終了する。
【0047】
ここで、ドライバのレベル1が非熟練判定レベル1に対応し、ドライバのレベル2が非熟練判定レベル2に対応し、ドライバのレベル3が非熟練判定レベル3に対応するものとする。そして、ドライバのレベルと非熟練判定レベルが一致する場合に、ドライバの技量に応じたカーブを走行できるものとする。このような前提のもと、
図6の処理では、ドライバのレベルよりも一段上の非熟練判定割合レベルのカーブを含むルートが選択される。従って、ドライバの運転レベルよりも少し難しいルートを選択することで、ドライバの運転を上達させることができ、また運転する愉しみを提供ができる。
【0048】
図7は、カーブのレベルの判定方法の処理を示すフローチャートであって、上述した非熟練判定割合レベルを判定する処理を示している。ステップS70、ステップS72、ステップS74の処理は、
図4のステップS30、ステップS32、ステップS34と同様に行われる。次のステップS76では、ステップS74で算出した非熟練判定割合Hが0%か否かを判定し、非熟練判定割合Hが0の場合はステップS78へ進む。ステップS78では、非熟練判定割合レベルを“1”と判定する。ステップS78の後は処理を終了する。
【0049】
ステップS76で非熟練判定割合Hが0%でない場合は、ステップS80へ進み、ステップS74で算出した非熟練判定割合Hが33>非熟練割合H≧0であるか否かを判定し、33>非熟練割合H≧0の場合はステップS82へ進む。ステップS82では、非熟練判定割合レベルを“2”と判定する。ステップS82の後は処理を終了する。
【0050】
ステップS80で33>非熟練割合H≧0でない場合は、ステップS84へ進む。ステップS84では、66>非熟練割合H≧33であるか否かを判定し、66>非熟練割合H≧33の場合はステップS86へ進む。ステップS86では、非熟練判定割合レベルを“3”と判定する。ステップS86の後は処理を終了する。
【0051】
ステップS84で66>非熟練割合H≧33でない場合は、ステップS89へ進む。ステップS89では、100≧非熟練割合H≧66であるか否かを判定し、100≧非熟練割合H≧66の場合はステップS89へ進む。ステップS89では、非熟練判定割合レベルを“4”と判定する。ステップS89の後は処理を終了する。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
2000 サーバ
2010 熟練度取得部
2020 難易度判定部
2030 熟練ドライバ抽出部
2040 ルート選択部