(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】燃料流量調整バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/124 20060101AFI20230426BHJP
F16K 1/52 20060101ALI20230426BHJP
B64D 37/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F16K31/124
F16K1/52 E
B64D37/00
(21)【出願番号】P 2019056761
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、防衛省、製造請負契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 三和司
(72)【発明者】
【氏名】小川 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】熊木 健太
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 亨
(72)【発明者】
【氏名】金井 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】小泉 隆
(72)【発明者】
【氏名】中谷 明義
(72)【発明者】
【氏名】宮部 明
(72)【発明者】
【氏名】池田 真司
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-164476(JP,A)
【文献】特表2013-527077(JP,A)
【文献】特公昭45-040229(JP,B1)
【文献】特開平05-118466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00- 5/60
B64G 1/00-99/00
B67D 7/00-99/00
F16K 1/00- 1/54
15/00-15/20
17/18-17/34
31/12-31/165
31/36-31/42
G05D 7/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに燃料を給油または他の燃料タンクから燃料を移送するために用いられ
る燃料流量調整バルブ装置であって、
バルブシートが設けられる主流路と
、
前記バルブシートに当接する方向である閉方向と前記バルブシートから離間する方向である開方向とに移動可能なポペットと、前記閉方向および前記開方向に移動可能で前記ポペットに前記開方向側から当接して前記ポペットの前記開方向への移動を制限するピストン機構とを含み、前記ポペットを前記閉方向と前記開方向とに移動することにより前記主流路を遮断または開放するシャットオフバルブと
、
前記主流路
の前記バルブシートの上流側で、前記主流路から分岐して燃料を前記ピストン機構に流入させる副流路と
、
前記副流路から分岐
して前記ピストン機構からの燃料を前記ピストン機構以外に還流する還流路と
、
前記副流路および前記還流路の何れかに少なくとも一つ設けられる制御バルブと、前記制御バルブの切り替え動作を制御するバルブ制御部を有し、前記シャットオフバルブの流量を調整する流量調整部と、を備え
、
前記バルブ制御部は、前記制御バルブ
を切り替え
ることで、前記副流路から前記ピストン機構に燃料を流入させて前記ピストン機構を前記閉方向に移動させ
た状態と、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流させて前記ピストン機構を前記開方向に移動させ
た状態とを切り替える、燃料流量調整バルブ装置。
【請求項2】
前記制御バルブが、前記副流路および前記還流路の間に設けられ、前記副流路を前記ピストン機構に接続する副流路接続位置および前記副流路を遮断して前記還流路を前記ピストン機構に接続する還流路接続位置に切り替え可能であるピストン機構制御バルブであり、
前記ピストン機構は、前記ポペットの背面部に当接または離間可能に設けられ、
前記流量調整部は、
前記主流路での燃料の流量を小流量化するときには、前記ピストン機構制御バルブを前記副流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構に前記副流路から燃料を流入させることにより、前記ピストン機構を前記閉方向に移動させた状態で、前記ポペットを前記開方向に移動させることにより、前記ポペットの開度を小さくし、
前記主流路での燃料の流量を大流量化するときには、前記ピストン機構制御バルブを前記還流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流させて前記ピストン機構を前記開方向に移動させた状態で、前記ポペットを前記開方向に移動させることにより、前記ポペットの開度を大きくすることを特徴とする、
請求項1に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項3】
前記制御バルブが、
前記還流路および前記ポペットの背面部の間に設けられ、前記還流路を接続する接続位置および前記還流路を遮断する遮断位置に切り替え可能であるポペット制御バルブ、並びに、
前記副流路および前記還流路の間に設けられ、前記還流路を前記ピストン機構に接続する還流路接続位置および前記還流路を遮断して前記副流路を前記ピストン機構に接続する副流路接続位置に切り替え可能であるピストン機構制御バルブであり、
前記ポペットの頭部には、前記燃料の流入を可能とする貫通孔が形成され、
前記ピストン機構は、前記ポペットにおける前記開方向側の内部で前記ポペットに当接して前記貫通孔を閉止可能に設けられ、
前記流量調整部は、
前記主流路での燃料の流量を小流量化するときには、前記ポペット制御バルブを前記接続位置に切り替えて、前記ポペットの背面側に燃料を流入させることにより、前記ポペットを前記バルブシートに当接させて前記主流路を遮断するとともに、前記ピストン機構制御バルブを前記還流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流することにより、前記ピストン機構を前記開方向に移動させて前記貫通孔を開放し、
前記主流路での燃料の流量を大流量化するときには、前記ピストン機構制御バルブを前記還流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流することにより、前記ピストン機構を開方向に移動させるとともに、前記ポペット制御バルブを前記遮断位置に切り替えて、前記ポペットの背面側から燃料を前記還流路に還流し、前記ポペットを前記開方向に移動させることにより、前記ポペットの開度を大きくすることを特徴とする、
請求項1に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項4】
前記制御バルブは、前記バルブ制御部により、複数段階に切り替え可能に構成されていることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項5】
前記ポペットからの燃料を前記還流路に還流可能とするように、前記ポペットの背面側に接続されるポペット流路を備えるとともに、
前記制御バルブとして、前記ポペット流路に設けられ、前記ポペット流路を前記還流路に接続する接続位置またはポペット流路を遮断する遮断位置を切り替えるポペット制御バルブをさらに備え、
前記流量調整部は、前記主流路を遮断するときには、前記バルブ制御部により前記ポペット制御バルブを遮断位置に切り替え、前記主流路を開放するときには、前記ポペットの開度に関わらず、前記バルブ制御部により前記ポペット制御バルブを接続位置に切り替えることを特徴とする、
請求項2に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項6】
前記ピストン機構制御バルブは、前記副流路と前記還流路との間に設けられるとともに、
前記主流路から前記副流路を介して伝達されるクラッキング圧で作動することにより、前記副流路を前記ポペット流路に接続する前記副流路接続位置および前記還流路を前記ポペット流路に接続する前記還流路接続位置を切り替え可能とするクラッキングバルブであることを特徴とする、
請求項5に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項7】
前記ポペットの開度を調整するストッパ機構をさらに備え、
前記ストッパ機構は、前記シャットオフバルブが前記主流路を開放しているときに、前記主流路での燃料の流量の大小に関わらず、前記主流路内における前記ポペットの頭部の位置を調整可能とするように構成されていることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項8】
前記ストッパ機構は、前記ポペットまたは前記ピストン機構から背面側に延伸するバルブシャフトを内部に挿入した状態で、前記バルブシャフトに対して回転可能に設けられ、その一端が、燃料タンクの外部に露出する操作端となっているストッパ部材を備え、
前記ストッパ部材は、前記操作端を回転させることにより、前記ポペットが開方向に移動したときの前記ポペットの頭部の位置を、前記バルブシャフトの延伸方向に沿って変化させるように構成されていることを特徴とする、
請求項7に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項9】
前記ストッパ機構は、前記バルブシャフトに設けられ、前記ストッパ部材の他端である係止端に係止するストッパ係止部をさらに備え、
前記ストッパ部材の係止端には、前記ストッパ係止部に当接する複数段の段差部が設けられ、
前記ストッパ機構は、前記ストッパ部材の前記操作端を回転させて、前記係止端の段差部における前記ストッパ係止部に係止する段を切り替えることにより、前記ポペットが開方向に移動したときの前記ポペットの頭部の位置を変化させるよう構成されていることを特徴とする、
請求項8に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項10】
前記ストッパ機構は、
前記バルブシャフトに設けられ、前記ストッパ部材の他端である係止端に係止するストッパ係止部と、
前記ストッパ部材の前記係止端側に外装されるストッパ外装体と、
を備え、
前記ストッパ部材の前記係止端側には突起部が設けられるとともに、前記ストッパ外装体には、前記突起部に当接する複数段の段差部が設けられ、
前記ストッパ機構は、前記ストッパ部材の前記操作端を回転させて、前記ストッパ外装体の段差部における前記ストッパ係止部の突起部に当接する段を切り替えることにより、前記ポペットが開方向に移動したときの前記ポペットの頭部の位置を変化させるように構成されていることを特徴とする、
請求項8に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項11】
前記バルブシャフトの一端は前記ポペットまたは前記ピストン機構に固定される固定端であり、前記バルブシャフトの他端は前記ストッパ部材の前記操作端とともに前記燃料タンクの外部に露出する露出端であり、
前記ストッパ部材の操作端、および、前記バルブシャフトの露出部の少なくともいずれかには、前記ストッパ部材の回転位置を識別するためのマーキングが設けられていることを特徴とする、
請求項8から10のいずれか1項に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【請求項12】
前記燃料タンクは、航空機のエンジンに供給される燃料を貯留する主タンク、および、前記主タンクに燃料を移送するために当該燃料を貯留する補助タンクの少なくとも一方であることを特徴とする、
請求項1から11のいずれか1項に記載の燃料流量調整バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料流量調整バルブ装置に関し、特に、燃料の大流量での流れと小流量での流れとを簡素な構成で容易に調整できる燃料流量調整バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な航空機では、単一の燃料タンクではなく複数の燃料タンクを備えていることが多い。代表的な燃料タンクとしては、翼および胴体の一部の内部を密閉した構造を有するインテグラルタンクが挙げられるが、このインテグラルタンクは、基本的には、その内部が複数の燃料タンクに区画されている。区画された複数の燃料タンクのうち、エンジンに直接燃料を供給する燃料タンクが「主タンク」であり、それ以外は「補助タンク」となる。
【0003】
複数の燃料タンクに対して燃料を給油する場合、基本的には、主タンクに対する給油が優先されるが、容量の異なる複数の燃料タンクに対して同時並行での給油も行われる。また、航空機が飛行している間、左右の主タンク内の燃料が消費されると、補助タンクから主タンクに対して燃料が順次移送(または補給)される。
【0004】
ここで、例えば、主タンクに燃料を給油するときの燃料の流量は、補助タンクから主タンクに燃料を移送するときに比べて大流量となる。逆に言えば、移送時の燃料の流量は、主タンクへの燃料の給油時に比べて小流量となる。移送時の流量(小流量)は、諸条件によって異なるものの、一般的には、給油時の流量(大流量)の1/10~1/20程度の流量域となる。また、複数の燃料タンクに対して同時並行的に燃料を給油するときには、これら燃料タンクの容量が異なっていると、各燃料タンクへの燃料の流量を個別に設定する必要がある。
【0005】
燃料の流量を大流量と小流量との間で切り替えるため、あるいは、複数の燃料タンクへの流量を個別に設定するためには、従来から様々な手法が用いられている。例えば、(1)各燃料タンクに設けられるバルブの前後にオリフィスを装着して流量を調整する方法、(2)各燃料タンクに同程度の流量のバルブを複数設け、これらバルブを適宜開閉することによって流量を調整する方法、(3)各燃料タンクに大流量用のバルブと小流量用のバルブをそれぞれ設ける方法、等が挙げられる。
【0006】
ところで、航空機に燃料を給油するために用いられるバルブとしては、例えば、特許文献1に開示されるような、給油自動車を介して航空機に燃料を圧送して給油する管路に設けられる、サージコントロールバルブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の技術では、燃料の給油または移送のために部材点数が増加したり、配管系の構成が複雑化したりするという課題が生じる。例えば、前記(1)の方法では、バルブの前後に別途オリフィスが必要となって部材点数が増加するとともに、オリフィスによる流量を調整するために事前の設定が必要となる。また、前記(2)または(3)の構成では、流量調整のために各燃料タンクに複数のバルブを設ける必要があるため、部材点数が増加するとともに配管系の構成が複雑化するおそれがある。
【0009】
さらに、特許文献1に開示されるサージコントロールバルブは、燃料を給油する際にサージ圧の発生を抑制することが目的となっている。そのため、所定の流量に対して対応する制御圧力を調整することはできても、流量を好適に調整することはできない。また、特許文献1では、給油自動車を介した燃料の給油が前提であって、飛行時に補助タンクから主タンクに燃料を移送することについては想定されていない。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、簡素な構成で、燃料の大流量での流れと小流量での流れとを容易に切り替えることができるとともに、容量の異なる燃料タンクへの流量を容易に設定することが可能な、燃料流量調整バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料流量調整バルブ装置は、前記の課題を解決するために、燃料タンクに燃料を給油または他の燃料タンクから燃料を移送するために用いられ、バルブシートが設けられる主流路と、前記バルブシートにポペットを当接または離間させることにより前記主流路を遮断または開放するシャットオフバルブと、前記主流路から分岐する副流路と、前記副流路から分岐する還流路と、前記シャットオフバルブの流量を調整する流量調整部と、を備え、前記シャットオフバルブは、前記ポペットと、前記ポペットに当接可能に設けられ、前記ポペットの位置を規定するピストン機構と、を備えるとともに、前記ポペットの頭部が前記バルブシートに当接する方向を閉方向とし、その頭部が前記バルブシートから離間する方向を開方向としたときに、前記ポペットおよび前記ピストン機構は、それぞれ、前記閉方向および前記開方向に移動可能であり、前記副流路は、前記バルブシートの上流側で前記主流路から分岐して燃料を前記ピストン機構に流入させるように設けられ、前記還流路は、前記副流路から分岐し、前記ピストン機構からの燃料を前記ピストン機構以外に還流するように設けられ、前記流量調整部は、少なくとも一つの制御バルブおよび前記制御バルブの切り替え動作を制御するバルブ制御部を備え、前記制御バルブは、前記バルブ制御部により切り替えられることで、前記副流路から前記ピストン機構に燃料を流入させ前記ピストン機構を前記閉方向に移動させるとともに、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流させて前記ピストン機構を前記開方向に移動させるように、前記副流路および前記還流路の少なくとも何れかに設けられている構成である。
【0012】
前記構成によれば、シャットオフバルブが、ポペットの位置を規定するピストン機構を備え、このピストン機構の移動は流量調整部により制御される。流量調整部は、ピストン機構に対して副流路から燃料を流入させたり、ピストン機構から燃料を還流路に還流させたりする。それゆえ、シャットオフバルブの主流路を流通する燃料を作動流体としてピストン機構を動作させてポペットの位置を調整することができるので、部材点数の増加を抑制した簡素な構成で、ポペットの開閉またはポペットの開度等を調整することができる。
【0013】
その結果、例えば燃料タンクへ給油するときには、少なくともピストン機構を制御することにより大流量で燃料を流通させることができる。また、例えば他の燃料タンクから燃料を移送するときには、少なくともピストン機構を制御することにより小流量で燃料を流通させることができる。また、容量が異なるタンクへ同時並行で燃料を給油または移送する場合であっても、ピストン機構を制御することにより、各タンクへの燃料の流量を容易に設定することができる。
【0014】
前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記制御バルブが、前記副流路および前記還流路の間に設けられ、前記副流路を前記ピストン機構に接続する副流路接続位置および前記副流路を遮断して前記還流路を前記ピストン機構に接続する還流路接続位置に切り替え可能であるピストン機構制御バルブであり、前記ピストン機構は、前記ポペットの背面部に当接または離間可能に設けられ、前記流量調整部は、前記主流路での燃料の流量を小流量化するときには、前記ピストン機構制御バルブを前記副流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構に前記副流路から燃料を流入させることにより、前記ピストン機構を前記閉方向に移動させた状態で、前記ポペットを前記開方向に移動させることにより、前記ポペットの開度を小さくし、前記主流路での燃料の流量を大流量化するときには、前記ピストン機構制御バルブを前記還流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流させて前記ピストン機構を前記開方向に移動させた状態で、前記ポペットを前記開方向に移動させることにより、前記ポペットの開度を大きくする構成であってもよい。
【0015】
前記構成によれば、ポペットが開放されている状態でピストン機構がポペットの背面部に当接したり離間したりする。それゆえ、例えば燃料タンクへ給油するときには、ピストン機構を離間させてポペットの開度を大きくすることにより、大流量で燃料を流通させることができる。また、例えば他の燃料タンクから燃料を移送するときには、ピストン機構を当接させてポペットの開度を小さくすることにより、小流量で燃料を流通させることができる。また、容量が異なるタンクへ同時並行で燃料を給油または移送する場合であっても、ポペットの開度を変化させることで、各タンクへの燃料の流量を容易に設定することができる。
【0016】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記制御バルブが、前記還流路および前記ポペットの背面部の間に設けられ、前記還流路を接続する接続位置および前記還流路を遮断する遮断位置に切り替え可能であるポペット制御バルブ、並びに、前記副流路および前記還流路の間に設けられ、前記還流路を前記ピストン機構に接続する還流路接続位置および前記還流路を遮断して前記副流路を前記ピストン機構に接続する副流路接続位置に切り替え可能であるピストン機構制御バルブであり、前記ポペットの頭部には、前記燃料の流入を可能とする貫通孔が形成され、前記ピストン機構は、前記ポペットにおける前記開方向側の内部で前記ポペットに当接して前記貫通孔を閉止可能に設けられ、前記流量調整部は、前記主流路での燃料の流量を小流量化するときには、前記ポペット制御バルブを前記接続位置に切り替えて、前記ポペットの背面側に燃料を流入させることにより、前記ポペットを前記バルブシートに当接させて前記主流路を遮断するとともに、前記ピストン機構制御バルブを前記還流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流することにより、前記ピストン機構を前記開方向に移動させて前記貫通孔を開放し、前記主流路での燃料の流量を大流量化するときには、前記ピストン機構制御バルブを前記還流路接続位置に切り替えて、前記ピストン機構から燃料を前記還流路に還流することにより、前記ピストン機構を開方向に移動させるとともに、前記ポペット制御バルブを前記遮断位置に切り替えて、前記ポペットの背面側から燃料を前記還流路に還流し、前記ポペットを前記開方向に移動させることにより、前記ポペットの開度を大きくする構成であってもよい。
【0017】
前記構成によれば、ピストン機構がポペットの頭部に設けられる貫通孔を開閉することができる。それゆえ、例えば燃料タンクへ給油するときには、ピストン機構を離間させてポペットの開度を大きくすることにより、大流量で燃料を流通させることができる。また、例えば他の燃料タンクに燃料を移送するときには、ポペットを閉止した状態でピストン機構のみを開方向に移動させ、貫通孔で燃料を流通させることにより、小流量で燃料を流通させることができる。あるいは、ピストン機構を当接させた状態でポペットを開方向に移動することで、ポペットの開度を調整することができる。また、容量が異なるタンクへ同時並行で燃料を給油または移送する場合であっても、ピストン機構の移動を調整してポペットの開度を変化させることで、各タンクへの燃料の流量を容易に設定することができる。
【0018】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記制御バルブは、前記バルブ制御部により、複数段階に切り替え可能に構成されてもよい。
【0019】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記ポペットからの燃料を前記還流路に還流可能とするように、前記ポペットの背面側に接続されるポペット流路を備えるとともに、前記制御バルブとして、前記ポペット流路に設けられ、前記ポペット流路を前記還流路に接続する接続位置またはポペット流路を遮断する遮断位置を切り替えるポペット制御バルブをさらに備え、前記流量調整部は、前記主流路を遮断するときには、前記バルブ制御部により前記ポペット制御バルブを遮断位置に切り替え、前記主流路を開放するときには、前記ポペットの開度に関わらず、前記バルブ制御部により前記ポペット制御バルブを接続位置に切り替える構成であってもよい。
【0020】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記ピストン機構制御バルブは、前記副流路と前記還流路との間に設けられるとともに、前記主流路から前記副流路を介して伝達されるクラッキング圧で作動することにより、前記副流路を前記ポペット流路に接続する前記副流路接続位置および前記還流路を前記ポペット流路に接続する前記還流路接続位置を切り替え可能とするクラッキングバルブである構成であってもよい。
【0021】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記ポペットの開度を調整するストッパ機構をさらに備え、前記ストッパ機構は、前記シャットオフバルブが前記主流路を開放しているときに、前記主流路での燃料の流量の大小に関わらず、前記主流路内における前記ポペットの頭部の位置を調整可能とするように構成されてもよい。
【0022】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記ストッパ機構は、前記ポペットまたは前記ピストン機構から背面側に延伸するバルブシャフトを内部に挿入した状態で、前記バルブシャフトに対して回転可能に設けられ、その一端が、燃料タンクの外部に露出する操作端となっているストッパ部材を備え、前記ストッパ部材は、前記操作端を回転させることにより、前記ポペットが開方向に移動したときの前記ポペットの頭部の位置を、前記バルブシャフトの延伸方向に沿って変化させるように構成されてもよい。
【0023】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記ストッパ機構は、前記バルブシャフトに設けられ、前記ストッパ部材の他端である係止端に係止するストッパ係止部をさらに備え、前記ストッパ部材の係止端には、前記ストッパ係止部に当接する複数段の段差部が設けられ、前記ストッパ機構は、前記ストッパ部材の前記操作端を回転させて、前記係止端の段差部における前記ストッパ係止部に係止する段を切り替えることにより、前記ポペットが開方向に移動したときの前記ポペットの頭部の位置を変化させるよう構成されてもよい。
【0024】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記ストッパ機構は、前記バルブシャフトに設けられ、前記ストッパ部材の他端である係止端に係止するストッパ係止部と、前記ストッパ部材の前記係止端側に外装されるストッパ外装体と、を備え、前記ストッパ部材の前記係止端側には突起部が設けられるとともに、前記ストッパ外装体には、前記突起部に当接する複数段の段差部が設けられ、前記ストッパ機構は、前記ストッパ部材の前記操作端を回転させて、前記ストッパ外装体の段差部における前記ストッパ係止部の突起部に当接する段を切り替えることにより、前記ポペットが開方向に移動したときの前記ポペットの頭部の位置を変化させるように構成されてもよい。
【0025】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記バルブシャフトの一端は前記ポペットまたは前記ピストン機構に固定される固定端であり、前記バルブシャフトの他端は前記ストッパ部材の前記操作端とともに前記燃料タンクの外部に露出する露出端であり、前記ストッパ部材の操作端、および、前記バルブシャフトの露出部の少なくともいずれかには、前記ストッパ部材の回転位置を識別するためのマーキングが設けられている構成であってもよい。
【0026】
また、前記構成の燃料流量調整バルブ装置においては、前記燃料タンクは、航空機のエンジンに供給される燃料を貯留する主タンク、および、前記主タンクに燃料を移送するために当該燃料を貯留する補助タンクの少なくとも一方である構成であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、以上の構成により、簡素な構成で、燃料の大流量での流れと小流量での流れとを容易に切り替えることができるとともに、容量の異なる燃料タンクへの流量を容易に設定することが可能な、燃料流量調整バルブ装置を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(A)および(B)は、本発明の実施の形態1に係る燃料流量調整バルブ装置が適用される、航空機の燃料タンクの代表的な構成例を示す模式図であって、(A)は、燃料を給油するときの燃料の流れの一例を示す図であり、(B)は、燃料を移送するときの燃料の流れの一例を示す図である。
【
図2】(A)は、
図1に示す燃料タンクに用いられる燃料流量調整バルブ装置の代表的な構成例を示す模式図であり、(B)は、(A)に示す燃料流量調整バルブ装置において、ポペットおよびピストン機構の移動方向を説明する模式図である。
【
図3】(A)~(C)は、
図2(A)に示す燃料流量調整バルブ装置において、ポペットおよびピストン機構が移動したときのこれらの位置を説明する模式図である。
【
図4】(A)~(C)は、
図2(A)に示す燃料流量調整バルブ装置において、燃料移送の開始時における動作の一例を示す模式図である。
【
図5】(A)および(B)は、
図4(A)~(C)に示す燃料移送の開始時の動作に続く燃料移送から燃料移送の終了時までの動作を示す模式図である。
【
図6】(A)および(B)は、
図2(A)に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料移送の開始時の動作の他の例を示す模式図である。
【
図7】(A)および(B)は、
図2(A)に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料給油の開始時の動作の一例を示す模式図である。
【
図8】(A)および(B)は、
図7(A)および(B)に示す燃料給油の開始時に続く燃料給油時の動作を示す模式図である。
【
図9】(A)および(B)は、
図8(A)および(B)に示す燃料給油時に続く燃料給油の終了時の動作を示す模式図である。
【
図10】(A)および(B)は、
図2(A)に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料給油の開始時の動作の他の例を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る燃料流量調整バルブ装置の代表的な構成例を示す模式図である。
【
図12】(A)は、
図11に示す燃料流量調整バルブ装置において待機状態を示す模式図であり、(B)は、燃料移送時における動作の一例を示す模式図である。
【
図13】(A)および(B)は、
図11に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料給油時の動作の一例を示す模式図である。
【
図14】本発明の実施の形態3に係る燃料流量調整バルブ装置の代表的な構成例を示す模式図である。
【
図15】(A)は、
図14に示す燃料流量調整バルブ装置において燃料移送時における動作の一例を示す模式図であり、(B)は、
図14に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料給油の開始時の動作の一例を示す模式図である。
【
図16】(A)および(B)は、
図14に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料給油時に続く燃料給油の終了時の動作の一例を示す模式図である。
【
図17】(A)および(B)は、
図14に示す燃料流量調整バルブ装置における燃料抜油時の動作の一例を示す模式図である。
【
図18】本発明の実施の形態4に係る燃料流量調整バルブ装置が備えるストッパ機構の代表的な構成例を示す模式図である。
【
図19】
図18に示す燃料流量調整バルブ装置において、ストッパ機構の操作によるポペットの開度の違いの一例を示す模式図である。
【
図20】本発明の実施の形態5に係る燃料流量調整バルブ装置が備えるストッパ機構の代表的な構成例を示す模式図である。
【
図21】
図20に示す燃料流量調整バルブ装置において、ストッパ機構の操作によるポペットの開度の違いの一例を示す模式図である。
【
図22】(A)は、本発明の実施の形態6に係る燃料流量調整バルブ装置が備えるストッパ機構の代表的な構成例を示す模式図であり、(B)は、(A)に示すストッパ機構の要部構成を示す模式図である。
【
図23】
図22に示す燃料流量調整バルブ装置において、ストッパ機構の操作によるポペットの開度の違いの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0030】
(実施の形態1)
本発明に係る燃料流量調整バルブ装置の適用対象は特に限定されないが、代表的には航空機に好ましく適用することができる。本実施の形態1では、本発明に係る燃料流量調整バルブ装置を航空機の燃料タンクに適用した例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0031】
[航空機の燃料タンク]
まず、本発明に係る燃料流量調整バルブ装置が適用される航空機の燃料タンクの代表的な一例について、
図1(A)および
図1(B)を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、燃料流量調整バルブ装置を適宜「バルブ装置」と略す。
【0032】
本発明に係るバルブ装置の適用対象となる燃料タンクの具体的な構成は特に限定されず、公知の航空機が備える公知の様々な燃料タンクを挙げることができる。代表的な燃料タンクとしては、例えば、翼および胴体の一部そのものをタンク容器とした構成のインテグラルタンク、あるいは、翼または胴体の内部に、例えば合成ゴムまたは樹脂製のタンク容器を収納した構成のセルタンク等が挙げられる。
【0033】
航空機の燃料タンクは、単一のタンク容器から構成されてもよいが、一般的には、複数のタンク容器から構成されている。複数のタンク容器には、各エンジンに直接燃料を供給するための燃料を貯留する主タンクと、主タンク以外の補助タンク(または副タンク)とが含まれるが、これら以外のタンク容器が含まれてもよい。補助タンクは、通常、主タンクに対して必要に応じて燃料を移送(または補給する)ために燃料を貯留している。
【0034】
本実施の形態1では、燃料タンクとして、航空機の主翼内部と胴体のうち主翼の付け根部分の内部に設けられるインテグラルタンクを例示する。具体的には、例えば、
図1(A)および(B)に示すように、本実施の形態におけるインテグラルタンクは、センタータンク11、右舷タンク12、および左舷タンク13の少なくとも三つのタンク容器に区画されている。燃料タンクを構成するタンク容器は、主翼だけでなく尾翼内部にも設けられてもよいし、機外(例えば翼下または胴体下等)に増設されてもよい。すなわち、本発明で適用対象となる燃料タンクには、主翼タンクだけでなく、尾翼タンクまたは機外タンク等も含まれる。
【0035】
図1(A)および(B)に示すように、センタータンク11、右舷タンク12、および左舷タンク13には、それぞれ給油移送配管40が接続されているとともに、右舷タンク12には右舷エンジン配管52が接続され、左舷タンク13には左舷エンジン配管53が接続されている。給油移送配管40は、全体給油配管40aとタンク相互配管40bとから少なくとも構成されている。全体給油配管40aは、給油口46から延伸してタンク相互配管40bに接続されている。タンク相互配管40bは、全体給油配管40aに接続され、三つのタンク容器の間を相互に接続する。
【0036】
なお、給油移送配管40(全体給油配管40aおよびタンク相互配管40b)、並びに、右舷エンジン配管52および左舷エンジン配管53(まとめてエンジン配管52,53)は、燃料を給油、移送または供給する配管を説明する上で、機能的に分類した説明の便宜上の配管構成である。したがって、
図1(A)および(B)に図示される給油移送配管40、並びに両エンジン配管52,53は、実際の航空機の具体的な配管構成を忠実に反映したものではなく、本発明を適用した具体的な航空機の構成が
図1(A)または(B)の図示内容によって限定されないことは言うまでもない。
【0037】
センタータンク11は、補助タンクとして機能し、航空機の胴体のうち主翼の付け根部分の内部に設けられる。センタータンク11には、タンク相互配管40bの一部を構成するセンタータンク給油配管41aおよびセンタータンク移送配管41bが接続されている。センタータンク給油配管41aには、センタータンク給油バルブ21が設けられており、このセンタータンク給油バルブ21が開放されているときに、センタータンク11に対して燃料が給油または移送される。また、センタータンク移送配管41bにはセンタータンク移送ポンプ31が接続され、このセンタータンク移送ポンプ31が動作することにより、センタータンク11内の燃料がセンタータンク移送配管41b(およびこれを含むタンク相互配管40b)を介して他のタンク容器に移送される。
【0038】
右舷タンク12は、センタータンク11の右側に設けられ、右主翼に設けられる右エンジン61に燃料を直接供給する主タンクとなっている。右舷タンク12には、タンク相互配管40bの一部を構成する右舷タンク給油配管42と、前述した右舷エンジン配管52が接続されている。右舷タンク給油配管42には、右舷タンク給油バルブ22が設けられており、この右舷タンク給油バルブ22が開放されているときに、右舷タンク12に対して燃料が給油または移送される。また、右舷タンク12の内部には、右舷ブースターポンプ32が設けられ、この右舷ブースターポンプ32に右舷エンジン配管52が接続されている。右舷エンジン配管52には右エンジン61が接続されており、右舷ブースターポンプ32が動作することにより、右舷タンク12内の燃料が右エンジン61に直接供給される。さらに、右舷ブースターポンプ32とタンク相互配管40bとの間に、図示されていない移送配管と移送バルブとが設置されており、移送バルブを切り替えて右舷ブースターポンプ32が動作することにより、右舷タンク12内の燃料が他のタンク容器に移送される。
【0039】
左舷タンク13は、センタータンク11の左側に設けられ、左主翼に設けられる左エンジン62に燃料を直接供給する主タンクとなっている。左舷タンク13には、タンク相互配管40bの一部を構成する左舷タンク給油配管43と、前述した左舷エンジン配管53が接続されている。左舷タンク給油配管43には、左舷タンク給油バルブ23が設けられており、この左舷タンク給油バルブ23が開放されているときに、左舷タンク13に対して燃料が給油または移送される。また、左舷タンク13の内部には、左舷ブースターポンプ33が設けられ、この左舷ブースターポンプ33に左舷エンジン配管53が接続されている。左舷エンジン配管53には左エンジン62が接続されており、左舷ブースターポンプ33が動作することにより、左舷タンク13内の燃料が左エンジン62に直接供給される。さらに、左舷ブースターポンプ33とタンク相互配管40bとの間に、図示されていない移送配管と移送バルブとが設置されており、移送バルブを切り替えて左舷ブースターポンプ33が動作することにより、左舷タンク13内の燃料が他のタンク容器に移送される。
【0040】
前記構成のインテグラルタンクに対して、給油口46から燃料が給油される場合であって、特に、三つのタンク容器それぞれに同時並行で燃料が給油される場合には、
図1(A)のブロック矢印で示すように、センタータンク給油バルブ21、右舷タンク給油バルブ22、および左舷タンク給油バルブ23が開放されていることになる。
【0041】
一方、航空機の飛行中に、補助タンクであるセンタータンク11から、主タンクである右舷タンク12および左舷タンク13に燃料が移送される場合には、
図1(B)のブロック矢印に示すように、センタータンク給油バルブ21が遮断されており、右舷タンク給油バルブ22および左舷タンク給油バルブ23が開放されるとともに、センタータンク移送ポンプ31が動作する。
【0042】
本発明に係るバルブ装置は、各タンク容器に設けられる、センタータンク給油バルブ21、右舷タンク給油バルブ22、および左舷タンク給油バルブ23として適用可能となっている。また、インテグラルタンクのより具体的な構成、並びに、各タンク容器に接続される配管の具体的な構成も特に限定されず、公知のさまざまな構成を好適に用いることができる。
【0043】
[バルブ装置の構成]
次に、本実施の形態1に係るバルブ装置の構成の代表的な一例について、
図2(A)および
図2(B)、並びに
図3(A)から
図3(C)を参照して具体的に説明する。
図2(A)に示すように、本実施の形態に係るバルブ装置200Aは、燃料の流路として、主流路201、副流路202、還流路203、ポペット流路204、およびピストン流路205を備えているとともに、主流路201を開閉するシャットオフバルブ210と、このシャットオフバルブ210が開放されているときの流量を調整する流量調整部220とを備えている。
【0044】
シャットオフバルブ210は、ポペットバルブであり、マニホールド211、ポペット212、バルブシート213、ピストン機構214、ポペットシャフト215(図中点線で図示)、およびバルブスプリング216等を備えている。マニホールド211は、主流路201および副流路202の分岐箇所を構成し、バルブシート213とともに一体化された一つの部材として構成されている。なお、バルブシート213は、マニホールド211に一体化されずに独立した他の部材として構成されてもよい。
【0045】
主流路201は、
図2(A)に模式的に示すように、燃料の流れの上流から下流に向かって例えば略直角に折れ曲がるように構成されており、ポペット212は、主流路201を遮断または開放するために、マニホールド211の下流側に設けられる。バルブシート213を基準として位置関係を見た場合、主流路201および副流路202の分岐箇所は、バルブシート213の上流側に位置し、ポペット212は、バルブシート213の下流側に位置する。したがって、主流路201の上流側から下流側に向かって、副流路202の分岐箇所、バルブシート213、およびポペット212の順となっている。
【0046】
ポペット212の上流側の端部は、バルブシート213に当接可能なポペット頭部212aであり、このポペット頭部212aがバルブシート213に当接することで、主流路201が遮断される。また、ポペット頭部212aがバルブシート213から離間することで、主流路201は開放される。したがって、ポペット212は、少なくともポペット頭部212aがバルブシート213に当接または離間するように、主流路201内で移動可能に設けられている。
【0047】
本実施の形態では、ポペット212は、主流路201の内部形状に応じた円筒状であってその内部は空洞になっている。この空洞を、説明の便宜上、ポペット内空間212cと称する。また、ポペット212の背面側(ポペット頭部212aの反対側)の部分をポペット背面部212bとしたときに、このポペット背面部212bに当接可能にピストン機構214が設けられている。ポペット212の一方の端部であるポペット頭部212aは、バルブシート213側に突出するように封止された形状となっているが、他方の端部であるポペット背面部212bは開口形状となっている。さらに、ポペット頭部212aには、主流路201とポペット内空間212cとをつなぐ頭部貫通孔212dが形成されている。この頭部貫通孔212dはオリフィス機能を有している。
【0048】
図2(B)に示すように、ポペット212は、バルブシート213に当接する側の方向L1と、バルブシート213から離間する側の方向L2とに移動可能に構成されている。したがって、方向L1および方向L2は互いに反対側の方向となっている。なお、
図2(B)では、L1方向を黒のブロック矢印で示し、L2方向を白抜きのブロック矢印で示すとともに、特に方向L2を図示する便宜上、バルブスプリング216を点線で図示している。
【0049】
また、L1方向は、ポペット212がバルブシート213に当接して主流路201を遮断して閉止する方向になるので、説明の便宜上、L1方向を「閉方向L1」と称する。同様に、L2方向は、ポペット212がバルブシート213から離間して主流路201を開放する方向になるので、説明の便宜上、L2方向を「開方向L2」と称する。
【0050】
ピストン機構214は、
図2(A)に示すように、ポペット背面部212bがバルブシート213から離間したときの限界となる位置を規定するために設けられる。ピストン機構214は、ピストン214aを備えており、このピストン214aはピストンシリンダ214b内で移動可能に構成されている。ピストンシリンダ214bは、ポペット212から見て開方向L2側に位置しているので、ポペット内空間212cに隣接していることになる。ピストン214aは、ポペット212と同様に閉方向L1および開方向L2に移動可能に構成されている。
【0051】
ピストン214aにおける閉方向L1側の面であるピストン閉頂面214cは、ポペット背面部212bに対して当接可能になっている。また、ピストン214aにおける開方向L2側の面であるピストン開頂面214dは、ピストンシリンダ214bの開方向L2の底面であるシリンダ底面214eに対して当接可能になっている。それゆえ、ピストン閉頂面214cおよびピストン開頂面214dは互いに反対側を向いていることになる。なお、図示の便宜上、
図2(A)および
図2(B)を含めてピストン機構214を図示する図面では、シリンダ底面214eの位置を一点鎖線の矢印で示している。
【0052】
また、前述したように、本実施の形態では、ポペット212は円筒状であるため、ポペット背面部212bは開口形状となっている。それゆえ、ピストン214aもポペット背面部212bに応じた円環形状を有しており、ピストンシリンダ214bもピストン214aの形状に応じた円筒形状の内部空間を有している。また、ポペット背面部212bに当接するピストン閉頂面214cも、ポペット背面部212bの開口形状に対応した円環形状となっている。
【0053】
ピストン機構214には、ピストン流路205が接続され、主流路201からの燃料が副流路202からピストン流路205を介してピストン機構214のシリンダ底面214eに(すなわちピストンシリンダ214bにおける開方向L2側から)流入可能となっている。それゆえ、ピストン機構214は燃料を作動流体として動作することになる。後述するように、ピストン流路205から燃料が流入すると、ピストン機構214のピストン214aは閉方向L1に移動する。また、ピストン機構214内の燃料を、ピストン流路205を介して還流路203に流入させると、ピストン機構214のピストン214aは開方向L2に移動する。
【0054】
ポペット内空間212cには、ポペット頭部212aに設けられる頭部貫通孔212dから燃料が流入する。したがって、ポペット内空間212cには、燃料が満たされていることになる。また、ポペット内空間212cには、
図2(A)において点線で示すポペットシャフト215が設けられているとともに、ポペット212の動作方向に沿ってバルブスプリング216が設けられている。ポペットシャフト215は、ポペット頭部212aから背面側(開方向L2側)に延伸する軸であり、ポペット212を支持している。バルブスプリング216は、ポペット212をバルブシート213に向かって付勢している。
【0055】
副流路202は、前述したように、上流側の一端がバルブシート213の上流側となる位置で主流路201から分岐しており、下流側の他端がピストン流路205を介してピストン機構214に接続されている。また、還流路203は、ポペット流路204あるいはピストン流路205から分岐して
図2(A)には図示しない燃料タンク(タンク容器)に直接または間接的に接続されている。ここでいう間接的な接続とは、燃料タンクとの間に、他の配管、バルブ、または燃料の整流具等を介在させた接続を意味する。還流路203は、前述したように、ピストン機構214内の作動流体(燃料)を燃料タンクに還流するために設けられる。
【0056】
流量調整部220は、バルブ制御部221、ピストン機構制御バルブ222、およびポペット制御バルブ223等を備えている。
図2(A)に示すように、ピストン機構制御バルブ222は、ピストン流路205を副流路202および還流路203に分岐する箇所に設けられている。ピストン機構制御バルブ222は、バルブ制御部221の制御によりピストン流路205を副流路202に接続する副流路接続位置またはピストン流路205を還流路203に接続する還流路接続位置に切り替え可能に構成されている。ピストン機構制御バルブ222が副流路接続位置に切り替えられれば、副流路202がピストン流路205に接続されて、副流路202からの燃料がピストン機構214に流入する。一方、ピストン機構制御バルブ222が還流路接続位置に切り替えられれば、ピストン流路205が還流路203に接続されて、ピストン機構214からの燃料が還流路203に還流される。
【0057】
さらに、本実施の形態では、ポペット212の背面側となる位置に、ポペット流路204が接続されている。このポペット流路204は、ポペット制御バルブ223を介し還流路203に接続している。ポペット制御バルブ223は、バルブ制御部221の制御により、ポペット流路204を還流路203に接続する接続位置またはポペット流路204を還流路203から遮断する遮断位置に切り替え可能に構成されている。
【0058】
バルブ制御部221は、主流路201を遮断する(ポペット頭部212aをバルブシート213に当接させて主流路201を遮断する)ときには、ポペット制御バルブ223を遮断位置に切り替える。一方、主流路201を開放する(ポペット頭部212aをバルブシート213から離間させて主流路201を開放する)ときには、後述するポペット212の開度に関わらず、ポペット制御バルブ223を接続位置に切り替える。
【0059】
ここで、
図2(A)、並びに、後述するバルブ装置200Aの動作を説明する際に参照する
図4(A)~
図10(C)においては、便宜上、バルブ制御部221からポペット制御バルブ223およびピストン機構制御バルブ222に対する制御指令を点線で示している。点線C1がバルブ制御部221からピストン機構制御バルブ222に出力される制御指令であり、点線C2がバルブ制御部221からポペット制御バルブ223に出力される制御指令である。これら制御指令C1またはC2がバルブ制御部221から出力されない状態では点線のままで図示し、C1またはC2を括弧書きで記載するが、出力される状態では太線の矢印で図示する(例えば、
図4(B)または
図7(B)参照)。この点は後述する実施の形態2または3も同様である(制御指令C3またはC4)。
【0060】
なお、
図2(A)に示す構成では、主流路201、副流路202の上流側、および還流路203の下流側、ポペット流路204の上流側、ピストン流路205の上流側、並びにシャットオフバルブ210は、タンク隔壁101の内部に位置しており、バルブ制御部221、ピストン機構制御バルブ222、およびポペット制御バルブ223を含む流量調整部220、並びに、副流路202の下流側、還流路203の上流側、ポペット流路204の下流側、およびピストン流路205の下流側は、タンク隔壁101の外部に位置している。しかしながら、本発明に係るバルブ装置200Aは、これに限定されず、当該バルブ装置200Aが設けられる燃料タンク(あるいは個別のタンク容器)の構成に応じて、好適な形態を採用することができる。
【0061】
また、主流路201、副流路202、還流路203、ポペット流路204、およびピストン流路205、並びに、これらの分岐箇所の具体的構成は特に限定されず、燃料を流通させるバルブの分野で公知の流路構成を好適に用いることができる。
図2(A)では、主流路201は略直角に折れ曲がっているが、主流路201の構成はこれに限定されず、例えば、ポペットバルブの分野で公知の範囲内で、直角以外の角度で折れ曲がってもよいし、折れ曲がらずに延伸する構成であってもよい。同様に、シャットオフバルブ210を構成するマニホールド211、ポペット212、バルブシート213、ピストン機構214、ポペットシャフト215、およびバルブスプリング216の具体的な構成も特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0062】
さらに、流量調整部220を構成するバルブ制御部221、ピストン機構制御バルブ222、およびポペット制御バルブ223の具体的な構成も特に限定されない。バルブ制御部221は、公知の制御回路で構成されてもよいし、公知の演算装置が図示しない記憶部に格納されるプログラムに従って動作する機能構成であってもよい。また、ピストン機構制御バルブ222およびポペット制御バルブ223としては、例えば、ソレノイドバルブを好適に用いることができるが、他の公知のバルブであってもよい。
【0063】
加えて、本発明に係るバルブ装置200Aに用いられるピストン機構214以外のバルブ機構は、
図2(A)に示すようなシャットオフバルブ210に限定されず、公知のポペットバルブと同様の構成を採用することもできる。したがって、ポペット212を動作させる構成は、ポペット制御バルブ223およびポペット流路204のような、燃料を作動流体とするバルブ機構に限定されず、公知の他の手法を用いたバルブ機構も好適に用いることができる。
【0064】
ここで、バルブ装置200Aでは、前記の通り、ポペット212およびピストン機構214のピストン214aは、閉方向L1または開方向L2に移動可能となっている。そのため、バルブ装置200Aの動作を説明する便宜上、
図3(A)~(C)を参照して次のように、ピストン214aの位置を「開死点」または「閉死点」と呼称するものとし、ポペット212の位置を「閉位置」、「最大開位置」、または「中間開位置」と呼称するものとする。なお、
図3(A)~(C)(並びに、後述するバルブ装置200Aの動作を説明する際に参照する
図4(A)~
図10(C))においては、
図2(B)と同様に、閉方向L1を黒のブロック矢印で示し、開方向L2を白抜きのブロック矢印で示す。
【0065】
まず、ピストン214aの位置の呼称について説明する。
図3(A)または
図3(B)に示す状態では、ピストン214aは、開方向L2側の限界位置に達しており、ピストン開頂面214dがシリンダ底面214eに当接している。そこで、ピストン214aのこのような位置を、開方向L2の「死点」に達したという意味で、便宜上「開死点」と称する。一方、
図3(C)に示す状態では、ピストン214aは、閉方向L1側の限界位置に達している。そこで、ピストン214aのこのような位置を、閉方向L1の「死点」に達したという意味で、便宜上「閉死点」と称する。
【0066】
次に、ポペット212の位置の呼称について説明する。
図3(A)に示す状態では、ポペット212がバルブシート213に当接している。この位置では、主流路201が遮断されており、ポペット212は閉方向L1側に限界まで移動していることになる。そこで、このポペット212の位置を「閉位置」と称する。なお、ポペット212が閉位置にあるときには、ピストン214aが閉死点に位置していても、ポペット背面部212bがピストン閉頂面214cに当接することはない。
【0067】
次に、
図3(B)に示す状態では、ピストン214aが開死点に位置しているとともに、ポペット212がバルブシート213から離間して、ポペット背面部212bがピストン閉頂面214cに当接している。この位置では、主流路201は開放されており、ポペット212は開方向L2側に限界まで移動していることになる。そこで、このポペット212の位置を「最大開位置」と称する。
【0068】
次に、
図3(C)に示す状態では、ピストン214aが閉死点に位置しているとともに、ポペット212がバルブシート213から離間して、ポペット背面部212bがピストン閉頂面214cに当接している。この位置では、前記の最大開位置と同様に主流路201は開放されているが、ポペット212はピストン機構214によって開方向L2側への移動が制限されていることになる。言い換えれば、ポペット212による主流路201の開放は、最大開位置に比べて制限され、中程度に開放されていることになる。そこで、このポペット212の位置を「中間開位置」と称する。
【0069】
なお、
図2(A)では、ポペットシャフト215を点線で図示していたが、閉方向L1および開方向L2を説明する
図2(B)、並びに、ポペット212およびピストン214aの位置を説明する
図3(A)~(C)では、便宜上、ポペットシャフト215の図示を省略している。同様に、後述するバルブ装置200Aの動作を説明する際に参照する
図4(A)~
図10(C)においても、ポペット212の移動、並びに、網掛けによる圧力差を図示する便宜上、ポペットシャフト215の図示を省略している。
【0070】
[燃料移送時のバルブ装置の動作]
次に、前述したバルブ装置200Aの動作について具体的に説明する。本発明に係るバルブ装置200Aは、燃料が小流量で流れる場合と大流量で流れる場合との双方を良好に切り替えられるだけでなく、小流量の場合および大流量の場合の双方で流量も良好に調整することができる。そこで、まず、燃料が小流量で流れる場合におけるバルブ装置200Aの動作について、
図4(A)~(C)、
図5(A)・(B)、並びに、
図6(A)・(B)を参照して具体的に説明する。
【0071】
前述したように、本実施の形態では、
図1(A)または
図1(B)に示すインテグラルタンクは、センタータンク11、右舷タンク12、および左舷タンク13を備えており、これらタンク同士は給油移送配管40により接続されている。それゆえ、各タンク同士の間で給油移送配管40を介して燃料を移送する場合が、燃料が小流量で流れる場合に相当する。
【0072】
ここで、待機状態では、バルブ装置200Aが主流路201を遮断しているので、ポペット212は閉位置にある。この状態では、ピストン機構214のピストン214aの位置としては、開死点の場合と閉死点の場合とがあり得る。そこで、まず、ピストン214aが開死点にある場合について説明する。
【0073】
まず、
図4(A)に示す状態は、ポペット212は閉位置にあるので主流路201が遮断されており、ピストン機構214のピストン214aは開死点の位置にある。ポペット212は、バルブスプリング216により閉方向L1(上流側)に付勢されているため、ポペット頭部212aはバルブシート213に当接している。このとき、バルブ制御部221は、ピストン機構制御バルブ222を副流路接続位置にするとともに、ポペット制御バルブ223を遮断位置にしている。この状態では、ピストン流路205は副流路202に接続し、ポペット流路204は、還流路203から遮断されていることになる。
【0074】
ここで、
図4(A)を含む動作説明の図では、各流路等の圧力状態を二種類の網掛けで区分して示しており、相対的に高圧の状態を濃い網掛けで図示し、相対的に低圧の状態を薄い網掛けで図示している。
図4(A)に示す状態では、センタータンク移送ポンプ31により、主流路201には燃料を移送するために圧力が加えられている。このとき、主流路201の上流側、ポペット内空間212c、ピストンシリンダ214b、副流路202、ポペット流路204、並びに、ピストン流路205は相対的に高圧となり、還流路203のみ相対的に低圧となっている。それゆえ、ポペット212は閉位置のままとなる。
【0075】
次に、
図4(B)に示すように、バルブ制御部221は、ポペット制御バルブ223に対して制御指令C2(図中太線矢印)を出力する。これにより、ポペット制御バルブ223が遮断位置から接続位置に切り替えられる。ポペット制御バルブ223が接続位置になると、ポペット流路204が還流路203に接続される。このとき、オリフィス機能を有する頭部貫通孔212dの圧力損失は、ポペット流路204および還流路203に比べて大きい。そのため、ポペット内空間212c内に満たされている燃料はポペット流路204から還流路203に流入し、燃料タンクに還流する。これにより、還流路203、ポペット流路204、ピストンシリンダ214bおよびポペット内空間212cが相対的に低圧となる。
【0076】
その結果、
図4(C)に示すように、ピストン流路205を介して副流路202からの高圧状態により、ピストン214aは開死点から閉死点に移動する。したがって、ポペット内空間212cに満たされている燃料は、ポペット212にとっての作動流体として機能する。また、このとき、ポペット頭部212aはバルブシート213に当接しているので、ポペット背面部212bとピストン214aのピストン閉頂面214cとの間には隙間が生じている。このように、主流路201が遮断されていれば、ピストン閉頂面214cはポペット212の位置に影響を与えない。
【0077】
ここで、
図4(C)に示す状態では、主流路201の上流側が高圧であり、ポペット内空間212cおよびポペット流路204が低圧である。それゆえ、主流路201における燃料の移送のための高圧により、
図5(A)に示すように、ポペット212は閉位置から開方向L2に向かって移動する。このとき、ピストン214aは閉死点に位置しているので、ポペット212の開方向L2への移動はピストン機構214により制限される。その結果、ポペット212の位置はピストン機構214により中間開位置に調整される。この状態では、バルブ装置200Aは、主流路201の小流量に応じた中程度で開放されていることになるので、主流路201においては上流から下流に向けて燃料が良好に移送される。
【0078】
その後、燃料の移送が完了すれば、バルブ制御部221はポペット制御バルブ223に対する制御指令C2の出力を停止する。これにより、ポペット制御バルブ223は遮断位置になるので、
図5(B)に示すように、ポペット流路204およびポペット内空間212cは還流路203から遮断され、相対的に高圧な状態に戻る。それゆえ、バルブスプリング216の付勢、ポペット212の前面および背面にかかる圧力差、並びに、ポペット212の前面および背面における面積差に由来する力によって、ポペット212は中間開位置から閉方向L1側に移動し、ポペット頭部212aがバルブシート213に当接する。その結果、ポペット212は、
図4(A)に示す状態と同様に閉位置に戻る。このとき、ポペット212は、オリフィス機能を有する頭部貫通孔212dからの燃料流入により緩やかに移動するため、主流路201の急激な閉止に伴うサージ圧の発生が抑制される。
【0079】
次に、ピストン214aが閉死点にある場合について説明する。
図6(A)に示す状態は、
図4(A)に示す状態と同様に、ポペット212は閉位置にあって主流路201は遮断されているが、ピストン機構214のピストン214aは閉死点の位置にある。その後、
図6(B)に示すように、バルブ制御部221は、ポペット制御バルブ223に対して制御指令C2(図中太線矢印)を出力する。これにより、ポペット制御バルブ223が遮断位置から接続位置に切り替えられる。
【0080】
ポペット制御バルブ223が接続位置になると、ポペット流路204が還流路203と接続されるので、ポペット内空間212c内に満たされている燃料はポペット流路204から還流路203に流入し、燃料タンクに還流する。これにより、
図6(B)に示すように、還流路203、ポペット流路204、およびポペット内空間212cが相対的に低圧となる。この状態では、ピストン214aは既に閉死点に位置している。それゆえ、
図5(A)に示すように、主流路201の高圧により、ポペット212は閉位置から開方向L2に向かって移動すれば、ポペット212の位置はピストン機構214により中間開位置に調整され、小流量の燃料が移送される。
【0081】
その後、燃料の移送が完了すれば、バルブ制御部221はポペット制御バルブ223に対する制御指令C2の出力を停止する。これにより、ポペット制御バルブ223は遮断位置になるので、
図5(B)に示すように、ポペット212は、
図6(A)に示す状態と同様に閉位置に戻る。
【0082】
[燃料給油時のバルブ装置の動作]
次に、燃料が大流量で流れる場合におけるバルブ装置200Aの動作について、
図7(A)・(B)、
図8(A)・(B)、
図9(A)・(B)、並びに、
図10(A)~(C)を参照して具体的に説明する。
【0083】
前述したように、
図1(A)または
図1(B)に示すインテグラルタンクでは、燃料が小流量で流れる場合は、各タンク同士の間で給油移送配管40を介して燃料を移送する場合に相当する。これに対して、燃料が大流量で流れる場合としては、外部からインテグラルタンクに対して燃料を給油する場合が挙げられる。なお、前述したように、ポペット212が閉位置にある待機状態では、ピストン機構214のピストン214aの位置としては、開死点の場合と閉死点の場合とがあり得る。そこで、小流量の場合と同様に、まず、ピストン214aが開死点にある場合について説明する。
【0084】
まず、
図7(A)に示す状態は、ポペット212は閉位置にあり主流路201は遮断されているため、ピストン機構214のピストン214aは開死点の位置にある。ポペット212は、バルブスプリング216により閉方向L1(上流側)に付勢されているため、ポペット頭部212aはバルブシート213に当接している。このとき、バルブ制御部221は、ピストン機構制御バルブ222を副流路接続位置にするとともに、ポペット制御バルブ223を遮断位置にしている。この状態では、ピストン流路205は副流路202に接続し、ポペット流路204は、還流路203から遮断されている。
【0085】
ここで、
図7(A)に示す状態では、主流路201には外部から燃料を給油するための圧力が加えられている。それゆえ、還流路203以外の各流路(主流路201の上流側、ポペット内空間212c、ピストンシリンダ214b、副流路202、ポペット流路204、並びにピストン流路205)は相対的に高圧となり、還流路203のみ相対的に低圧となっている。
【0086】
次に、
図7(B)に示すように、バルブ制御部221は、ピストン機構制御バルブ222に対して制御指令C1(図中太線矢印)を出力する。これにより、ピストン機構制御バルブ222が副流路接続位置から還流路接続位置に切り替えられる。ピストン機構制御バルブ222が還流路接続位置になると、ピストン流路205が還流路203に接続されるので、ピストン流路205内に満たされている燃料は還流路203に流入し、燃料タンクに還流する。これにより、ピストンシリンダ214bの開方向L2側(あるいはシリンダ底面214e側)は、ピストンシリンダ214bの閉方向L1側よりも相対的に低圧となる。
【0087】
その後、
図8(A)に示すように、バルブ制御部221は、ポペット制御バルブ223に対して制御指令C2(図中太線矢印)を出力する。これにより、ポペット流路204も還流路203に接続される。その結果、ポペット内空間212cおよびピストンシリンダ214b内も高圧状態から低圧状態に変化するとともに、ピストン機構214では、ピストン214aの位置は開死点のままで維持される。それゆえ、ポペット212は、
図8(A)に示す閉位置から
図8(B)に示す最大開位置まで移動する。
【0088】
さらにその後、燃料の給油が完了すれば、
図9(A)に示すように、バルブ制御部221はポペット制御バルブ223に対する制御指令C2の出力を停止する。これにより、ポペット制御バルブ223は遮断位置になるので、ポペット流路204およびポペット内空間212cは還流路203から遮断され、相対的に高圧な状態に戻る。それゆえ、バルブスプリング216の付勢、ポペット212の前面および背面にかかる圧力差、並びに、ポペット212の前面および背面における面積差に由来する力によって、ポペット212は最大開位置から閉方向L1側に移動し、ポペット頭部212aがバルブシート213に当接する。このとき、ポペット212は、オリフィス機能を有する頭部貫通孔212dからの燃料流入により緩やかに移動するため、主流路201の急激な閉止に伴うサージ圧の発生が抑制される。
【0089】
また、
図9(B)に示すように、バルブ制御部221はピストン機構制御バルブ222に対する制御指令C1の出力を停止する。それゆえ、ピストン機構制御バルブ222は、副流路接続位置になるので、ピストン流路205は相対的に高圧な状態に戻る。ポペット212は、閉方向L1側に移動して閉位置に戻るので、その結果、バルブ装置200Aは、
図7(A)に示す状態に戻る。
【0090】
次に、ピストン214aが閉死点にある場合について説明する。
図10(A)に示す状態は、
図7(A)に示す状態と同様に、ポペット212は閉位置にあって主流路201が遮断されているが、ピストン機構214のピストン214aは閉死点の位置にある。その後、
図10(B)に示すように、バルブ制御部221は、ピストン機構制御バルブ222に対して制御指令C1(図中太線矢印)を出力する。これにより、ピストン機構制御バルブ222が副流路接続位置から還流路接続位置に切り替えられる。
【0091】
ピストン機構制御バルブ222が還流路接続位置になると、ピストン流路205が還流路203に接続される。それゆえ、ピストン流路205およびピストンシリンダ214b内に満たされている燃料は還流路203に流入し、燃料タンクに還流する。これにより、ピストンシリンダ214bの開方向L2側(あるいはシリンダ底面214e側)は、ピストンシリンダ214bの閉方向L1側よりも相対的に低圧となる。その結果、
図10(C)に示すように、ピストン214aは、閉死点から開方向L2側に移動して開死点に位置することになる。
【0092】
その後、
図8(A)に示すように、バルブ制御部221は、ポペット制御バルブ223に対して制御指令C2(図中太線矢印)を出力する。これにより、ポペット流路204も還流路203に接続されるので、
図8(B)に示すように、ポペット212は、閉位置から最大開位置まで移動する。
【0093】
さらにその後、燃料の給油が完了すれば、
図9(A)に示すように、バルブ制御部221はポペット制御バルブ223に対する制御指令C2の出力を停止する。これにより、ポペット制御バルブ223は遮断位置になるので、バルブスプリング216の付勢、ポペット212の前面および背面にかかる圧力差、並びに、ポペット212の前面および背面における面積差に由来する力によって、ポペット212は最大開位置から閉方向L1側に移動し、ポペット頭部212aがバルブシート213に当接する。このとき、ポペット212は、オリフィス機能を有する頭部貫通孔212dからの燃料流入により緩やかに移動するため、主流路201の急激な閉止に伴うサージ圧の発生が抑制される。
【0094】
また、
図9(B)に示すように、バルブ制御部221はピストン機構制御バルブ222に対する制御指令C1の出力を停止し、ピストン流路205は相対的に高圧な状態に戻る。ポペット212は、閉方向L1側に移動して閉位置に戻る。その結果、バルブ装置200Aは、
図7(A)に示す状態に戻る。
【0095】
このように、本発明に係るバルブ装置200Aでは、シャットオフバルブ210の主流路201を流通する燃料をピストン機構214の作動流体として用い、ポペット212の位置を調整することができる。それゆえ、部材点数の増加を抑制した簡素な構成で、ポペット212の開閉またはポペット212の開度等を調整することができる。特に本実施の形態では、ポペット212が開放されている状態でピストン214aにポペット212のポペット背面部212bが当接したり離間したりする。
【0096】
それゆえ、例えば燃料タンクへ給油するときには、ピストン214aを開死点に位置させてポペット212の開度を大きくすることにより、大流量で燃料を流通させることができる。また、例えば他の燃料タンクに燃料を移送するときには、ピストン214aを開死点に位置させてポペット212の開度を小さくすることにより、小流量で燃料を流通させることができる。また、容量が異なるタンクへ同時並行で燃料を給油または移送する場合であっても、ポペット212の開度を変化させることで、各タンクへの燃料の流量を容易に設定することができる。
【0097】
[変形例]
本実施の形態では、流量調整部220が備える制御バルブが、ピストン機構制御バルブ222およびポペット制御バルブ223であるが、本発明はこれに限定されず、制御バルブとしては、ピストン機構214の制御に利用されるピストン機構制御バルブ222のみであってもよい。また、単一のピストン機構制御バルブ222を複数の制御バルブに代えてピストン機構214を制御するように構成されてもよいし、ピストン機構制御バルブ222およびポペット制御バルブ223以外の制御バルブを備えてもよい。
【0098】
また、本実施の形態では、ポペット212は、主流路201を流通する燃料の圧力によって移動するよう構成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ポペット212は公知の機械的または電気的な手法で閉方向L1または開方向L2に移動可能に構成されてもよい。
【0099】
また、本実施の形態では、
図3(A)~(C)に示すように、ポペット212の開度として、より小さな開度(中間開位置、
図3(C)参照)と全開状態の開度(最大開位置、
図3(B)参照)との二段階を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ピストン機構制御バルブ222として、ピストン機構214に印加する燃料(作動流体)の圧力を調整できるような公知のバルブ装置を用いることで、ポペット212の開方向L2側への移動位置を複数段階に変化させることが可能となる。
【0100】
これにより、ピストン214aが閉死点に位置するときのポペット212の開度(中間開位置)と、ピストン214aが開死点に位置するときのポペット212の開度(最大開位置)との間となる、中間の開度を少なくとも一つ設定することができる。これにより、ピストンシリンダ214bにおけるピストン流路205の接続側の内部に対して、当該ピストン流路205からより低い圧力を加えることができるので、ポペット212の位置を中間段階で規定することが可能となる。その結果、主流路201における燃料の流量を、小流量化または大流量化できるだけでなく、少なくとも一段階の中間流量化も実現することができる。
【0101】
さらに、
図1(A)に示すセンタータンク11、右舷タンク12、および左舷タンク13は、全てが同じ容量ではなく、例えば、右舷タンク12および左舷タンク13が同じ容量であったとしても、右舷タンク12および左舷タンク13と、センタータンク11とはそれぞれ容量が異なっているとする。
【0102】
この場合、前述したように、ピストン機構制御バルブ222の副流路接続位置を複数段階に設定して、中間の開度を設定することにより、主流路201での燃料の流量として、小流量および大流量だけでなく、さまざまな中間流量を設定することができる。これにより、それぞれのタンク容器の容量に合わせて燃料の流量を容易に設定することが可能となる。したがって、ピストン機構制御バルブ222等の制御バルブは、バルブ制御部221により複数段階に切り替え可能に構成されてもよい。
【0103】
また、本実施の形態では、前述したように、バルブ装置200Aを燃料移送または燃料給油の場合を例に挙げて説明したが、バルブ装置200Aは燃料移送または燃料給油だけでなく、燃料タンクからの抜油にも対応することができる。
【0104】
さらに、本実施の形態、並びに後述する各実施の形態では、本発明に係る燃料流量調整バルブ装置を航空機の燃料タンクに適用した構成を例示しているが、本発明は航空機分野に限定されず、他のさまざまな分野の燃料タンクにも好適に用いることができる。
【0105】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、制御バルブであるポペット制御バルブ223がバルブ制御部221による制御指令C2に基づいて動作する構成であったが、本発明はこれに限定されず、制御バルブが給油または移送の際の燃料の圧力で動作する構成であってもよい。このような構成の一例について、
図11~
図13(A)・(B)を参照して具体的に説明する。
【0106】
[バルブ装置の構成]
図11に示すように、本実施の形態2に係るバルブ装置200Bは、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aと同様に、燃料の流路として、主流路201、副流路202a,202b、還流路203a,203b、ポペット流路204およびピストン流路205を備えているとともに、主流路201を開閉するシャットオフバルブ230と、流量調整部240とを備えている。
【0107】
シャットオフバルブ230の構成は前記実施の形態1に係るシャットオフバルブ210と同様であり、マニホールド231、ポペット232、バルブシート233、ピストン機構234、ポペットシャフト235、およびバルブスプリング236等を備えている。ポペット232の基本的な構成も前記実施の形態1に係るポペット212と同様であり、閉方向L1側のポペット頭部232a、開方向L2側のポペット背面部232b、およびポペット内空間232cを有している。また、ポペット232には、前記実施の形態1と同様に、ポペット頭部232aからポペット内空間232cに貫通する頭部貫通孔232dが設けられ、この頭部貫通孔232d内には、チェックバルブ232eが設けられている。
【0108】
また、ピストン機構234の基本的な構成も前記実施の形態1に係るピストン機構214と同様であり、ピストン234aおよびピストンシリンダ234bにより少なくとも構成されている。また、ピストン234aの閉方向L1側の頂面がピストン閉頂面234cであり、ピストン234aの開方向L2側の頂面がピストン開頂面234dである。さらに、ピストンシリンダ234bの開方向L2側の底面がシリンダ底面234eである(図中一点鎖線の矢印)。
【0109】
また、流量調整部240の基本的な構成も前記実施の形態1に係る流量調整部220と同様であり、バルブ制御部241、ピストン機構制御バルブ242、およびポペット制御バルブ243を含む構成となっている。バルブ制御部241は、ポペット制御バルブ243に対して制御指令C3を出力可能としている。
【0110】
ピストン機構制御バルブ242は、前記実施の形態1に係るピストン機構制御バルブ222と同様に、ピストン流路205を副流路202aと還流路203aとに分岐する箇所に設けられ、ピストン流路205を副流路202aに接続する副流路接続位置およびピストン流路205を還流路203aに接続する還流路接続位置に切り替え可能に構成されている。本実施の形態では、ピストン機構制御バルブ242は、予め設定された給油または移送の際の燃料の圧力により動作するクラッキングバルブとなっている。
【0111】
また、ポペット制御バルブ243は、抜油を考慮して、前記実施の形態1に係るポペット制御バルブ223とは異なり、
図11に示すように、ポペット流路204を副流路202bまたは還流路203bに接続する箇所に設けられている。このように、本実施の形態に係るバルブ装置200Bは、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aとは異なり、二つの副流路202aおよび副流路202bを備えているとともに、二つの還流路203a,203bを備えている。
【0112】
副流路202aは、前記実施の形態1と同様に、ピストン機構制御バルブ242およびピストン流路205を介してピストン機構234に接続され、還流路203aも前記実施の形態1と同様に、ピストン機構制御バルブ242に接続されている。これに対して、副流路202bは、副流路202aより分岐してポペット制御バルブ243に接続されており、還流路203bは、還流路203aより分岐してポペット制御バルブ243に接続されている。
【0113】
ポペット制御バルブ243は、ポペット流路204を還流路203bに接続する還流路接続位置と、ポペット流路204を副流路202bに接続する副流路接続位置とを切り替え可能となっている。なお、ポペット制御バルブ243としてはソレノイドバルブが例示されるが、これに限定されず公知の他のバルブを用いることができる。
【0114】
[バルブ装置の動作]
次に、本実施の形態に係るバルブ装置200Bの動作の一例について説明する。まず、
図12(A)に示す状態は、ポペット232が閉位置にあるので主流路201が遮断されている。なお、ピストン機構234のピストン234aは閉死点の位置にある。ポペット232は、バルブスプリング236により閉方向L1に付勢されているため、ポペット頭部232aはバルブシート233に当接している。
【0115】
このように、ポペット232がバルブシート233に当接して主流路201を遮断しているときには、ピストン機構制御バルブ242は副流路接続位置にあり、ポペット制御バルブ243も副流路接続位置にある。この状態では、ポペット制御バルブ243には制御指令は出力されていない。また、主流路201、ポペット内空間232c、ピストンシリンダ234b、副流路202a,202b、ポペット流路204、並びに、ピストン流路205のいずれも相対的に高圧な状態となっている。
【0116】
なお、
図12(A)・(B)および
図13(A)・(B)に示す動作説明の図では、各流路等の圧力状態を三種類の網掛けで区分して示している。例えば、
図12(A)、
図13(A)・(B)に示す主流路201等では、相対的に高圧の状態を濃い網掛けで図示し、
図12(B)、
図13(A)に示すポペット内空間232c等では、相対的に低圧の状態を薄い網掛けで図示している。さらに、
図12(B)に示す主流路201等では、燃料を移送する比較的低圧な状態を、中間的な網掛けで図示している。
【0117】
次に、燃料移送時等のように燃料が小流量で流れる場合には、センタータンク移送ポンプ31により、
図12(B)に示すように、燃料を移送するために比較的低圧で主流路201内に燃料が流入する(中間的な網掛けで図示)。この状態で、バルブ制御部241はポペット制御バルブ243に対して制御指令C3を出力する(図中太線矢印)。これにより、ポペット制御バルブ243は、副流路接続位置から還流路接続位置に切り替えられるので、ポペット内空間232c内の燃料は、ポペット流路204および還流路203bを介して燃料タンクに還流される。それゆえ、ポペット内空間232cは、主流路201よりもさらに低圧となるので、ポペット232が開方向L2に移動する。
【0118】
このとき、ピストン機構234内(ピストンシリンダ234b内)は、主流路201と同程度の圧力であり(中間的な網掛けで図示)、ポペット内空間232cはより低圧である(薄い網掛けで図示)。それゆえ、ピストンシリンダ234b内はポペット内空間232cよりも相対的に高圧のままであるので、ピストン234aは閉死点に位置する。その結果、ポペット232は中間開位置となり、主流路201が相対的に小さく開放され、小流量の燃料が流通することになる。
【0119】
次に、燃料給油時等のように燃料が大流量で流れる場合には、
図13(A)に示すように、例えば外部から高圧で主流路201内に燃料が流入する(
図12(B)よりも濃い網掛けで図示)。この状態で、バルブ制御部241はポペット制御バルブ243に対して制御指令C3を出力する。また、このとき、ポペット232が移動するときのクラッキング圧(主流路201内の高圧)が副流路202aを介してピストン機構制御バルブ242に伝達され、ピストン機構制御バルブ242が動作して副流路接続位置から還流路接続位置に切り替わる。
【0120】
制御指令C3によりポペット制御バルブ243は副流路接続位置から還流路接続位置に切り替えられ、ポペット内空間232cは、主流路201よりもさらに低圧となる。また、ピストン機構制御バルブ242が還流路接続位置となれば、ピストン機構234内の燃料は還流路203aを介して燃料タンクに還流されるため、ピストン234aは閉死点から開死点に移動する。その結果、ポペット232が開方向L2に移動する状態が維持されるとともに、ポペット背面部232bは、開死点に位置するピストン234aのピストン閉頂面234cに当接する。それゆえ、ポペット232は最大開位置となり、主流路201は最大開度で開放され、大流量の燃料が流通することになる。
【0121】
その後、
図13(B)に示すように、給油が完了すれば、バルブ制御部241は、ポペット制御バルブ243に対する制御指令C3の出力を停止する。これにより、ポペット制御バルブ243は副流路接続位置になるので、バルブスプリング236の付勢、ポペット232の前面および背面にかかる圧力差、並びに、ポペット232の前面および背面における面積差に由来する力によって、ポペット232は最大開位置から閉方向L1に移動する。
【0122】
これにより、ポペット232は閉位置となり、主流路201が遮断される。なお、ポペット232は、チェックバルブ232eを有する頭部貫通孔232dからの燃料流入により緩やかに移動するため、主流路201の急激な閉止に伴うサージ圧の発生が抑制される。また、ポペット制御バルブ243が副流路接続位置に切り替わることにより、クラッキングバルブであるピストン機構制御バルブ242では、その上下の圧力が等しくなる。そのため、スプリングの付勢により、ピストン機構制御バルブ242は、還流路接続位置から副流路接続位置に切り替わる。その結果、ピストン機構234の動作も停止する。このとき
図13(B)では、ピストン234aは開死点に位置しているが、閉死点に位置してもよい。
【0123】
このように、本実施の形態では、ピストン機構制御バルブ242としてクラッキングバルブを用いている。前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aでは、ピストン機構制御バルブ222およびポペット制御バルブ223のいずれも、バルブ制御部241により制御されるソレノイドバルブを用いるが、本実施の形態では、ポペット制御バルブ243のみソレノイドバルブにすることができるので、制御バルブとしてソレノイドバルブの個数を減らすことができる。
【0124】
また、本実施の形態では、前述したように、バルブ装置200Bを燃料移送または燃料給油の場合を例に挙げて説明したが、バルブ装置200Bは、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aと同様に、燃料移送または燃料給油だけでなく、燃料タンクからの抜油にも対応することができる。
【0125】
(実施の形態3)
前記実施の形態1および2では、ポペットの開度を調整することのみで、主流路を流れる燃料の流量を調整している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、小流量を実現するために、ポペット頭部に設けられた貫通孔を利用することで、ポペットを閉じた状態でも小流量を実現することが可能である。このような構成の一例について、
図14~
図17(A)・(B)を参照して具体的に説明する。
【0126】
[バルブ装置の構成]
図14に示すように、本実施の形態3に係るバルブ装置200Cは、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aまたは前記実施の形態2に係るバルブ装置200Bとは異なり、ピストン機構254は、ポペット頭部252aに設けられた頭部貫通孔252dを閉止するように、ポペット頭部252aの開方向L2側から嵌合した構成となっている。
【0127】
具体的には、バルブ装置200Cは、燃料の流路として、主流路201、二つの副流路202c,202d、二つの還流路203c,203d、二つのポペット流路204a,204b、およびピストン流路205を備えているとともに、さらに抜油路206を備えている。また、バルブ装置200Cは、主流路201を開閉するシャットオフバルブ250と、流量調整部260とを備えている。
【0128】
シャットオフバルブ250の構成は前記実施の形態1に係るシャットオフバルブ210または前記実施の形態2に係るシャットオフバルブ230と同様であり、マニホールド251、ポペット252、バルブシート253、ピストン機構254、ピストンシャフト255、およびバルブスプリング256等を備えている。ポペット252は、閉方向L1側のポペット頭部252a、開方向L2側のポペット背面部252b、およびピストン嵌合部252cを有している。ポペット頭部252aの開方向L2側にはピストン嵌合部252cが設けられており、ピストン機構254が嵌合可能な凹部が形成されている。
【0129】
また、ポペット頭部252aには、閉方向L1側から開方向L2側に貫通して、主流路201とピストン嵌合部252cとを連通可能とする頭部貫通孔252dが形成されている。さらに、ポペット252の側部には、ピストン嵌合部252cの内部空間(凹部内)と主流路201の下流側とを連通可能とする側部貫通孔252eが形成されている。この頭部貫通孔252dおよび側部貫通孔252eは、ピストン嵌合部252cにピストン機構254が嵌合することで閉止され、ピストン機構254がピストン嵌合部252cから脱離することで開放される。
【0130】
なお、ポペット252内には、前記実施の形態1に係るポペット212または前記実施の形態2に係るポペット232と同様に、その内部にポペット内空間252fを有している。ただし、ポペット内空間252fはポペット内空間212cまたはポペット内空間232cとは異なり、ポペット252の開閉には実質的に寄与しない。また、ポペット背面部252bは、前記実施の形態1に係るポペット212とピストン機構214のピストン214aとが一体化したような構成となっており、ピストン機構254を囲むような円筒状の形状を有している。また、ポペット背面部252bの開方向L2側にはポペット背面空間252gが形成されている。
【0131】
ピストン機構254は、前記実施の形態1に係るピストン機構214または前記実施の形態2に係るピストン機構234とは異なり、円環状ではなくポペット背面部252bに当接するように構成されていない。ピストン機構254は、ロッド状のピストン254aおよびピストンシリンダ254bを備えており、ピストンシャフト255は、ピストン254aの開方向L2側から延伸するようにピストン254aに設けられている。ピストン254aはポペット頭部252aの開方向L2側に設けられるピストン嵌合部252cに嵌合可能となっている。
【0132】
ピストン254aの開方向L2側の端部には、ピストン背面部254cが設けられている。このピストン背面部254cは、ピストン254a本体とピストンシャフト255の段差として構成される。また、ピストン254aの閉方向L1側の端部はピストン頂面254dとなっており、ピストン254aがピストン嵌合部252cに嵌合したときには、ポペット頭部252aの頭部貫通孔252dを閉止するように構成される。また、ピストン背面部254cの開方向L2側には、ピストン254aを閉方向L1側に付勢するピストンスプリング254eが設けられている。
【0133】
ピストンシリンダ254bは、ピストン254aの全体を収納するのではなく、ピストン254aの開方向L2側(ピストン背面部254c近傍)のみを収容するよう構成されている。これは、ピストン254aの閉方向L1側(すなわちピストン頂面254d近傍)はポペット頭部252aのピストン嵌合部252cに嵌合するためである。また、ピストンシリンダ254bの開方向L2側には、ピストン流路205が接続されている。さらに、ピストン254aには、ピストン頂面254dから内部を貫通してピストン背面部254cの側部に至るピストン貫通孔254fが設けられている。このピストン貫通孔254fはオリフィス機能を有している。
【0134】
流量調整部260の基本的な構成は、前記実施の形態2に係る流量調整部240と同様であり、バルブ制御部261、ピストン機構制御バルブ262、およびポペット制御バルブ263を含む構成となっている。さらに、流量調整部260は、抜油バルブ264およびチェックバルブ265,266,267を備えている。バルブ制御部261は、ピストン機構制御バルブ262に対して制御指令C4を出力可能としている。
【0135】
ピストン機構制御バルブ262は、ピストン流路205および還流路203cの間に設けられ、ピストン流路205を還流路203cに接続する接続位置およびピストン流路205と還流路203cとを遮断する遮断位置に切り替え可能に構成されている。なお、本実施の形態では、ピストン機構制御バルブ262はソレノイドバルブとして構成されるが、特に限定されない。
【0136】
また、ポペット制御バルブ263は、ポペット流路204a、副流路202cおよびピストン流路205を接続する箇所に設けられ、ポペット流路204aを副流路202cに接続する副流路接続位置と、ポペット流路204aをピストン流路205に接続するピストン流路接続位置とを切り替え可能となっている。なお、本実施の形態では、ポペット制御バルブ263としてはクラッキングバルブが例示されるが、特に限定されない。
【0137】
抜油バルブ264は、燃料移送時または燃料給油時には動作しないが、燃料タンクから燃料を抜油するときに動作する。抜油バルブ264は、抜油路206、副流路202dおよびポペット流路204bを接続する箇所に設けられ、副流路202dと抜油路206との圧力差により、ポペット流路204bをピストン流路205から遮断する遮断位置と、ポペット流路204bをピストン流路205に接続する接続位置との間で切り替え可能に構成されている。
【0138】
副流路202c,202dは、それぞれ主流路201から分岐している。一方の副流路202cは、ポペット制御バルブ263を介してポペット流路204aに接続可能となっている。また、副流路202cには、副流路チェックバルブ267が設けられている。
【0139】
還流路203c,203dのうち、一方の還流路203cはピストン流路205から分岐しており、他方の還流路203dは抜油路206に接続されている。還流路203cおよび還流路203dは、前記実施の形態2と同様に下流側で合流しており、合流箇所の下流側には還流路チェックバルブ266が設けられている。また、還流路203dと抜油路206との間には抜油路チェックバルブ265が介在している。
【0140】
さらに本実施の形態では、前記の通り、ポペット流路204a,204bが設けられており、いずれもポペット252の背面側(開方向L2側)に接続されている。一方のポペット流路204aは、ポペット制御バルブ263を介して副流路202cまたはピストン流路205に接続されており、他方のポペット流路204bは、抜油バルブ264を介してピストン流路205に接続されている。
【0141】
抜油路206の下流は、前記の通り抜油路チェックバルブ265を介して還流路203dに接続され、抜油路206の上流は、主流路201の下流側に接続されている。また、抜油バルブ264に対して、主流路201の上流から分岐した副流路202dおよびピストン流路205がそれぞれ分岐して接続されている。さらに、抜油バルブ264を介してポペット流路204bがピストン流路205に接続されている。抜油路チェックバルブ265は、抜油バルブ264が接続位置になり、抜油を完了させるときに、抜油路206の圧力を開放する。
【0142】
[バルブ装置の動作]
次に、本実施の形態に係るバルブ装置200Cの動作の一例について説明する。まず、
図14に示す状態は、ポペット252が閉位置にあるので主流路201が遮断されている。ポペット252は、バルブスプリング256により閉方向L1に付勢されているため、ポペット頭部252aはバルブシート253に当接している。また、ピストン機構254のピストン254aは閉死点の位置にいる。ピストン254aは、ピストンスプリング254eにより閉方向L1に付勢しているため、ポペット頭部252aのピストン嵌合部252c内に嵌合された状態で、頭部貫通孔252dの内面に当接している。
【0143】
このように、ポペット252がバルブシート253に当接して主流路201を遮断しているときには、ピストン機構制御バルブ262は遮断位置にあり、ポペット制御バルブ263は副流路接続位置にある。また、
図14には網掛けで図示しないが、主流路201、ピストンシリンダ254b、ポペット背面空間252g、並びに、副流路202c,202dのいずれも相対的に高圧な状態となっている。
【0144】
なお、
図15(A)~
図17(B)に示す動作説明の図では、各流路等の圧力状態を四種類の網掛けで区分して示している。例えば、
図15(B)、
図16(A)・(B)に示す主流路201等では、相対的に高圧の状態を濃い網掛けで図示し、
図15(A)・(B)、
図16(A)、
図17(B)に示す還流路203c,203d、ピストン流路205、
図15(B)、
図16(A)、
図17(B)に示すポペット背面空間252g等では、相対的に低圧の状態を薄い網掛けで図示している。
【0145】
さらに、
図15(A)に示す主流路201等では、前記実施の形態2で説明した
図12(B)と同様に、燃料を移送する比較的低圧な状態を、中間的な網掛けで図示している。加えて、
図17(A)に示す主流路201、ポペット背面空間252g、ピストン流路205、並びに、
図17(B)に示す主流路201の上流側等では、主流路201の下流から上流に向けて生じる負圧を、低圧の網掛けとは異なる薄い網掛けで図示している。
【0146】
次に、燃料移送時等のように燃料が小流量で流れる場合には、センタータンク移送ポンプ31により、
図15(A)に示すように、燃料を移送するために比較的低圧で主流路201内に燃料が流入する(中間的な網掛けで図示)。このとき、ポペット制御バルブ263は副流路接続位置にあり、ポペット背面部252bの開方向L2側であるポペット背面空間252gは、副流路202cを介して主流路201と同圧になるので、ポペット252は開方向L2には移動しない。
【0147】
この状態から、バルブ制御部261はピストン機構制御バルブ262に制御指令C4を出力する(図中太線矢印)。これにより、ピストン機構制御バルブ262は、遮断位置から接続位置に切り替えられ、ピストンシリンダ254b内は主流路201よりもさらに低圧となる。それゆえ、ピストン254aが開方向L2に移動する。
【0148】
ピストン254aが開方向L2に移動することにより、閉死点でピストン254aにより閉止されていた頭部貫通孔252dおよび側部貫通孔252eが開放される。その結果、主流路201の上流から頭部貫通孔252d、ピストン嵌合部252cおよび側部貫通孔252eを介して主流路201の下流に燃料が少量で流れることになる。
【0149】
次に、燃料給油時等のように燃料が大流量で流れる場合には、
図15(B)に示すように、例えば外部から高圧で主流路201内に燃料が流入する(
図15(A)よりも濃い網掛けで図示)。この状態から、バルブ制御部261はピストン機構制御バルブ262に制御指令C4を出力する。また、このとき、ピストン254aが移動するときのクラッキング圧(主流路201内の高圧)が副流路202cを介してポペット制御バルブ263に伝達され、ポペット制御バルブ263が動作して副流路接続位置からピストン流路接続位置に切り替わる。
【0150】
制御指令C4によりピストン機構制御バルブ262は遮断位置から接続位置に切り替えられるので、ピストンシリンダ254b内は、主流路201よりも低圧となる。そのため、ピストン254aは閉死点から開方向L2に移動して開死点に達する。また、ポペット制御バルブ263がピストン流路接続位置となれば、ポペット背面部252bから見て開方向L2側のポペット背面空間252g内の燃料は、ピストン流路205を介して還流路203cに還流される。そのため、ポペット背面空間252gは主流路201よりも低圧となり(薄い網掛けで図示)、
図16(A)に示すように、ポペット252は開方向L2に移動する。それゆえ、ポペット252は最大開位置となり、主流路201は最大開度で開放され、大流量の燃料が流通することになる。
【0151】
その後、
図16(B)に示すように、給油が完了すれば、バルブ制御部261はピストン機構制御バルブ262に対する制御指令C4の出力を停止する。これにより、ピストン機構制御バルブ262は遮断位置になるので、ピストン流路205およびピストンシリンダ254bは還流路203cから遮断され、相対的に高圧な状態に戻る。それゆえ、ピストンスプリング254eの付勢、並びに、ピストン254aの前面および背面にかかる圧力差に由来する力によって、ピストン254aは、閉方向L1側に移動するので、
図14に示す状態と同様に閉死点に位置する。そのため、ピストン嵌合部252cにピストン254aが嵌合して頭部貫通孔252dおよび側部貫通孔252eが閉止される。このとき、ピストン254aは、オリフィス機能を有するピストン貫通孔254fからの燃料流入により緩やかに移動するため、主流路201の急激な閉止に伴うサージ圧の発生が抑制される。
【0152】
また、主流路201内では給油時の高圧が失われるので、ポペット制御バルブ263は、ピストン流路接続位置から副流路接続位置に切り替わる。そのため、ポペット流路204aおよびポペット内空間252fは主流路201内と同圧となる。このとき、ポペット252に対しては、バルブスプリング256の付勢に加えて、ピストン254aの閉方向L1側への移動による力も加わる。そのため、ポペット252も閉方向L1に移動し、ポペット頭部252aがバルブシート253に当接する。その結果、ポペット252は
図14に示す状態と同様に閉位置に戻り、主流路201が遮断される。
【0153】
なお、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aおよび前記実施の形態2に係るバルブ装置200Bは、いずれも燃料の移送、給油および抜油に対応できるが、本実施の形態に係るバルブ装置200Cにおいては、燃料を抜油する際には、前述した抜油バルブ264、副流路202d、および抜油路206等が必要になる。
【0154】
具体的には、主流路201の下流から上流に向けて負圧がかかる。そこで、
図17(A)に示すように、抜油バルブ264が動作し、遮断位置から接続位置に切り替わる。これにより、ポペット流路204bがピストン流路205に接続されるので、ピストンシリンダ254b、ポペット背面空間252gのいずれも主流路201と同じく負圧の状態となり(低圧とは異なる薄い網掛けで図示)、ポペット252およびピストン254aが開位置L2に移動する。このとき、ピストン機構制御バルブ262は動作していない(遮断位置にある)ので、還流路203cから燃料が還流しない。その結果、燃料タンクから燃料を抜油することができる。
【0155】
その後、抜油が完了すれば、
図17(B)に示すように、ピストン機構制御バルブ262を動作させ、接続位置に切り替える。また、主流路201の下流側には抜油路206が接続されているので、この抜油路206から抜油バルブ264、還流路203dおよび203c、ピストン機構制御バルブ262およびピストン流路205を介して、主流路201からピストン254aおよびポペット252を作動させる燃料が流入する。これにより、ピストン254aおよびポペット252は閉方向L1に移動し、主流路201を遮断する。
【0156】
具体的には、抜油バルブ264は接続位置にあるので、抜油路206からの燃料は、抜油バルブ264、還流路203dおよび203c、ピストン機構制御バルブ262およびピストン流路205を介して、ポペット流路204bからポペット背面空間252gに流入する。これによりポペット252が閉方向L1に移動する。また、抜油バルブ264が接続位置にあれば、抜油路206からの燃料は、抜油バルブ264、還流路203dおよび203c、ピストン機構制御バルブ262およびピストン流路205を介して、ピストンシリンダ254bのピストン背面部254c側(開方向L2側)にも流入する。これによりピストン254aが閉方向L1に移動する。
【0157】
ここで、還流路203c,203dの下流には還流路チェックバルブ266が、また、抜油路206の下流には抜油路チェックバルブ265が設けられている。そのため、これらチェックバルブ265,266により還流路203cおよび還流路203d(燃料タンクに開放されている)へ空気が流入することが回避される。
【0158】
さらに、ポペット制御バルブ263は、
図17(B)に示すように副流路接続位置にあるので、ポペット背面空間252gと副流路202cとは接続状態にある。ここで、副流路202cにも副流路チェックバルブ267が設けられているので、主流路201の下流からポペット背面空間252gに流入した燃料が、副流路202cを介して主流路201の上流側に逆流することが防止される。
【0159】
このように、本発明に係るバルブ装置200Cでは、シャットオフバルブ250の主流路201を流通する燃料をポペット252およびピストン機構254の作動流体として用いるとともに、ピストン機構254がポペット頭部252aに設けられる頭部貫通孔252dを開閉することができる。それゆえ、例えば燃料タンクへ給油するときには、ピストン機構254を離間させてポペット252の開度を大きくすることにより、大流量で燃料を流通させることができる。また、例えば他の燃料タンクに燃料を移送するときには、ポペット252を閉止した状態でピストン機構254のみを開方向に移動させ、頭部貫通孔252dで燃料を流通させることにより、小流量で燃料を流通させることができる。
【0160】
なお、本実施の形態では、ポペット252の位置としては、閉位置(例えば
図14、
図15(A)等)および最大開位置(例えば
図16(A)等)のみを例示しているが、ピストン機構254の位置を変化させることにより、中間開位置を実現することもできる。例えば、ピストン機構制御バルブ262の制御により、ピストン254aの位置として、閉死点および開死点の中間となる位置を実現することができれば、ピストン機構254を当接させた状態でポペット252を開方向L2に移動することで、ポペット252の開度を調整することができる。また、容量が異なるタンクへ同時並行で燃料を給油または移送する場合であっても、ピストン機構254の移動を調整してポペット252の開度を変化させることで、各タンクへの燃料の流量を容易に設定することができる。
【0161】
(実施の形態4)
前記実施の形態1~3では、ポペットに対してピストン機構を組み合わせることにより、小流量および大流量を切り替えているが、本実施の形態4では、ポペットの開度を燃料タンク外部から設定するためのストッパ機構をさらに備えている。このストッパ機構について、
図18~
図23を参照して具体的に説明する。なお、本実施の形態では、ストッパ機構を前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aの構成に適用させた場合を例示するが、本発明はこれに限定されない。
【0162】
[ストッパ機構の構成]
まず、ストッパ機構を備えるバルブ装置の代表的な構成例について、
図18および
図19を参照して具体的に説明する。
図18に示すように、本実施の形態4に係るバルブ装置200Dのストッパ機構270Aは、ポペットシャフト215に被せられた状態で設けられるストッパ部材271と、ポペットシャフト215の側面に設けられるストッパ係止部272とにより少なくとも構成されている。ポペットシャフト215は、ポペット頭部212aから背面側に延伸する軸である。ポペットシャフト215の一端は、ポペット頭部212aに固定される固定端であり、ポペットシャフト215の他端は燃料タンクの外部に露出する露出端である。
【0163】
ストッパ部材271は、例えばポペットシャフト215の周囲を覆う形状(例えば筒状)であり、ポペットシャフト215を内部に挿入した状態で、当該ポペットシャフト215に対して回転可能となっている。また、ストッパ係止部272は、ポペットシャフト215の側面から突出する突起部である。ストッパ部材271の一端は、燃料タンクの外部に露出するストッパ操作端271bであり、ストッパ部材271の他端は、ストッパ係止部272に当接するストッパ係止端271aである。
【0164】
なお、本実施の形態では、ストッパ係止部272は、前記の通り突起部として構成され、ストッパ部材271の他端(ストッパ係止端271a)を係止する構成となっているが、ストッパ係止部272の構成はこれに限定されない。ストッパ係止部272は、ポペットシャフト215または235もしくはピストンシャフト255に設けられ、ストッパ係止端271aに係止する構成であれば突起状でなくてもよい。例えば、ストッパ部材271の当接部位が平坦な面状(当接面)であれば、ストッパ係止部272の係止部位は、当接面を受けることが可能な平坦な面状に構成されればよい(後述するストッパ機構270C参照)。
【0165】
ストッパ係止端271aには、ストッパ係止部272に当接する複数の段差部が設けられている。この段差部は、ストッパ機構270Aでは、ストッパ部材271の係止端側を階段状に突出させた形状となっており、
図18および
図19に示す例では、段差部は3段の段部で構成されている。ストッパ係止部272は、ストッパ係止端271aの段差部に当接することにより、ポペットシャフト215に対するストッパ部材271の相対的な位置を規定する。
【0166】
なお、本実施の形態では、
図19に示すように、3段の段差部のうち最も閉方向L1側に位置する段部を上段273aとし、次の段部を中段273bとし、最も後端側に位置する段部を下段273cとする。また、段差部の段数および段差の程度(各段部の高さの違い)は特に限定されず、後述するように、調整されるポペット頭部212aの位置の段階に応じて適宜設定することができる。
【0167】
ストッパ操作端271bは、ポペットシャフト215の露出端とともに外部に露出している。また、ポペットシャフト215の露出端、および、ストッパ操作端271bの少なくともいずれかには、ストッパ部材271の回転位置を識別するためのマーキングが形成されている。
【0168】
マーキングの具体的な構成は特に限定されないが、ポペットシャフト215の露出端に設けられるマーキングとしては、例えば、
図18または
図19に示すように、ポペットシャフト215の周囲を一周する形状のシャフトマーキング215a,215bが挙げられる。これらシャフトマーキング215a,215bは、ポペットシャフト215の周囲を公知の塗料等で塗装した構成であってもよいし、ポペットシャフト215の周囲から突出したり陥没したりする溝状の構成であってもよい。
【0169】
2つのシャフトマーキング215a,215bのうち、一方のシャフトマーキング215aは、ポペットシャフト215の露出端側(外側)に位置し、他方のシャフトマーキング215bは、シャフトマーキング215aよりも固定端側(内側)に位置する。なお、シャフトマーキング215aは、
図18および
図19の双方に図示しているが、シャフトマーキング215bは、
図19のみに図示し、
図18では、ストッパ部材271の内部に隠れた状態にある。また、本実施の形態では、外側のシャフトマーキング215aを白抜きの太線で図示し、内側のシャフトマーキング215bを黒の太線で図示している。
【0170】
また、ストッパ部材271の後端に設けられるマーキングとしては、例えば、ストッパ操作端271bの外周の一部を切り欠いた切欠き部271cが挙げられる。切欠きの形状または深さ等については特に限定されず、目視により確認できる程度であればよい。また、マーキングは、切欠きではなく公知の塗料で形成されてもよいし、突出部として形成されてもよい。本実施の形態では、外周の一部を矩形に切り欠いた形状となっている。
【0171】
前述したように、ストッパ係止端271aに設けられる段差部は、上段273a、中段273b、および下段273cの3段の段部で構成される。
図19上図に示すように、ストッパ係止部272が上段273aに当接しているときには、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ部材271の中に隠れており、切欠き部271cは、外側から見て上方に位置している。なお、この状態を、説明の便宜上、上段当接状態と称する。
【0172】
また、
図19中央図に示すように、ストッパ係止部272が中段273bに当接しているときには、2つのシャフトマーキング215a,215bのうち後端側のシャフトマーキング215aのみが外側に露出し、外側のシャフトマーキング215bはストッパ部材271の中に隠れている(
図18に示す状態と同じ)。また、切欠き部271cは、外側から見て上側方に傾斜して位置している。なお、この状態を、説明の便宜上、中段当接状態と称する。
【0173】
さらに、
図19下図に示すように、ストッパ係止部272が下段273cに当接しているときには、2つのシャフトマーキング215a,215bはともに外側に露出しており、切欠き部271cは、外側から見て側方に位置している。なお、この状態を、説明の便宜上、下段当接状態と称する。
【0174】
ここで、
図19では、説明の便宜上、ポペット212、ポペットシャフト215、およびストッパ部材271のみを実線で図示し、マニホールド211および主流路201の一部を破線で図示している。また、
図19では、ポペット212の基準位置を点線で図示し、ストッパ機構270Aで位置規制されたポペット212を実線で図示している。さらに、
図19では、上図、中央図、下図の間で、ストッパ操作端271bの位置とポペット頭部212aの基準位置(図中点線で図示)とを一点鎖線で対応付けている。
【0175】
なお、バルブ装置200Dにおけるストッパ機構270A以外の構成は、
図18に示すように、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aと同様であるため、その具体的な説明は省略する。さらに、ストッパ機構270Aを構成するストッパ部材271およびストッパ係止部272等の具体的な構成も特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0176】
[ポペットの開度調整]
次に、前述したストッパ機構270Aを備えるバルブ装置200Dにおいて、ポペット212の開度を調整する点について、
図19を参照して具体的に説明する。
【0177】
例えば、操作者がストッパ操作端271bを回転させて、
図19上図に示す上段当接状態に切り替えると、前記の通り、ストッパ係止部272がストッパ係止端271aの上段273aに当接する。このとき、ポペット212が開方向L2に移動したとすれば、ポペットシャフト215の位置は、ストッパ部材271により最も閉方向L1側で規制されることになる。それゆえ、
図19には図示しないが、ピストン機構214が開死点に位置していれば、ポペット頭部212aは、最小の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は最小量となる。
【0178】
このとき、前記の通り、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ部材271の中に隠れており、切欠き部271cは、外側から見て上方に位置している。このように、シャフトマーキング215a,215bが露出せずに隠れており、切欠き部271cが上方に向いているときには、ストッパ機構270Aは上段当接状態にあり、ポペット212が最小の開度で開放可能であることがわかる。
【0179】
次に、操作者がストッパ操作端271bを回転させて、
図19中央図に示す中段当接状態に切り替えると、前記の通り、ストッパ係止部272がストッパ係止端271aの中段273bに当接する。このとき、ポペット212が開方向L2に移動したとすれば、ポペットシャフト215の位置は、ストッパ部材271により閉方向L1側で中程度に規制されることになる。それゆえ、
図19には図示しないが、ピストン機構214が開死点に位置していれば、ポペット頭部212aは、中間の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は中間量となる。
【0180】
このとき、前記の通り、2つのシャフトマーキング215a,215bのうち、一方のシャフトマーキング215aのみがストッパ部材271の外側に露出し、他方のシャフトマーキング215bはストッパ部材271の中に隠れている。また切欠き部271cは、外側から見て上側方に傾斜して位置している。このように、シャフトマーキング215aのみが露出し、切欠き部271cが上方から側方に傾斜して向いているときには、ストッパ機構270Aは中段当接状態にあり、ポペット212が中間の開度で開放可能であることがわかる。
【0181】
次に、操作者がストッパ操作端271bを回転させて、
図19下図に示す下段当接状態に切り替えると、前記の通り、ストッパ係止部272がストッパ係止端271aの下段273cに当接する。このとき、ポペット212が開方向L2に移動したとすれば、ポペットシャフト215の位置は、ストッパ部材271により最も開方向L2側で規制されることになる。それゆえ、
図19には図示しないが、ピストン機構214が開死点に位置していれば、ポペット頭部212aは、最大の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は最大量となる。
【0182】
このとき、前記の通り、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ部材271の外側に露出しており、切欠き部271cは、外側から見て側方に位置している。このように、シャフトマーキング215a,215bが露出し、切欠き部271cが側方に向いているときには、ストッパ機構270Aは下段当接状態にあり、ポペット212が最大の開度で開放可能であることがわかる。
【0183】
このように、本実施の形態では、ストッパ機構270Aのストッパ操作端271bを回転させることにより、ストッパ係止端271aの複数の段差部のうちいずれかがストッパ係止部272に当接することになる。これにより、主流路201が開放されているときに、ポペット212が下流側に移動する位置をストッパ部材271により制限することができる。それゆえ、主流路201内におけるポペット頭部212aの位置を多段階に調整することができる。その結果、主流路201を流通する燃料の流量を多段階に変更することができる。また、ストッパ機構270Aは簡素な構成であるため、部材点数の増加を抑制しつつポペット212の開度を容易に調整することもできる。
【0184】
特に、本実施の形態では、ストッパ機構270Aをタンク隔壁101の外側から操作することができるので、例えば、
図1(A)に示すセンタータンク11、右舷タンク12、および左舷タンク13に対して同時並行で燃料を給油するときに、これらタンク容器の容量が異なっていても、ストッパ機構270Aをタンク容器の外部から操作することで、それぞれのタンク容器の容量に合わせて燃料の流量を容易に設定することが可能となる。
【0185】
ポペット212の開度の調整をタンク容器(燃料タンク)の内部で行うとすれば、タンク容器から燃料を全て排出させる必要があるだけでなく、作業者がタンク容器内で作業できる環境を準備する必要がある(例えば、照明設備および換気設備等の準備等)。その結果、開度の調整を行うだけで非常に煩雑かつ長時間を要することになる。これに対して、本実施の形態であれば、燃料移送中または給油中にタンク容器の外側からストッパ機構270Aを操作するだけで、容易に開度の調整ができるだけでなく、ストッパ機構270Aに各種マーキングを設けることにより、ポペット212の開度の程度についても、タンク容器の外側から簡単に判断することができる。
【0186】
しかも、本実施の形態に係るバルブ装置200Dは、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aと同様にピストン機構214および流量調整部220を備えている。それゆえ、複数のタンク容器それぞれについて、ストッパ機構270Aにより好適な燃料の流量を容易に調整できるだけでなく、各タンク容器に対して燃料を大流量で給油する場合、あるいは、各タンク容器の間で燃料を小流量で移送する場合には、流量調整部220によりピストン機構214を動作させることで容易に対応することができる。
【0187】
さらに、前記実施の形態1で説明したように、ピストン機構214の開度として中間の開度を設定することができれば、主流路201での燃料の流量として、小流量、中間流量、および大流量を設定することができる。それゆえ、ストッパ機構270Aによる流量の多段階調整と組み合わせることにより、主流路201での燃料の流量をさらに多段階に調整することが可能となる。
【0188】
[変形例1]
次に、ストッパ機構270Aの変形例について、
図20~
図23を参照して説明する。前述したストッパ機構270Aでは、ストッパ部材271の一方の端部(ストッパ係止端271a)のみに段差部が設けられていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図20に示すように、ストッパ部材271の両端に段差部が設けられるストッパ機構270Bであってもよい。
【0189】
具体的には、ストッパ機構270Bは、
図20に示すように、基本的には、前述したストッパ機構270Aと同様の構成を有しているが、ストッパ操作端271dにも段差部が設けられている。この段差部は、ストッパ係止端271aの段差部と同様に3段構成となっている。なお、ストッパ操作端271d以外の構成は、前記す突破機構270Aと同様であるので、その説明を省略する。
【0190】
次に、このストッパ機構270Bを備えるバルブ装置200Dにおいて、ポペット212の開度を調整する点について、
図21を参照して具体的に説明する。
【0191】
ここで、ストッパ機構270Aを用いた場合のポペット212の開度を説明する
図19では、ポペット212の基準位置を点線で図示し、ストッパ機構270Aで位置規制されたポペット212を実線で図示していた。しかしながら、
図21では、基準位置にあるポペット212およびポペットシャフト215を実線で図示し、ストッパ機構270Bで位置規制されたポペット212およびポペットシャフト215を点線で図示している。また、
図21では、上図、中央図、下図の間で、ポペットシャフト215の基準位置とポペット頭部212aの基準位置とを一点鎖線で対応付けている。
【0192】
例えば、操作者がストッパ操作端271dを回転させて、
図21上図に示す上段当接状態に切り替える。ポペット212が開方向L2に移動すれば、ポペットシャフト215のストッパ係止部272は、ストッパ係止端271aの最も閉方向L1の位置となる上段273aに当接する。これにより、ポペット頭部212aは、最小の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は最小量となる。
【0193】
このとき、前述したストッパ機構270Aでは、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ部材271の中に隠れているが、ストッパ機構270Bでは、ストッパ操作端271dに段差部が設けられているので、側方から見れば、段差部によって2つのシャフトマーキング215a,215bを目視することができる。なお、切欠き部271cは、外側から見て上側方に傾斜して位置している。それゆえ、ストッパ操作端271dがこのような状況にあれば、ストッパ機構270Bは上段当接状態にあり、ポペット212が最小の開度で開放可能であることがわかる。
【0194】
次に、操作者がストッパ操作端271dを回転させて、
図21中央図に示す中段当接状態に切り替える。ポペット212が開方向L2に移動すれば、ポペットシャフト215のストッパ係止部272は、ストッパ係止端271aの中段273bに当接する。これにより、ポペット頭部212aは、中間の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は中間量となる。
【0195】
このとき、ストッパ機構270Bでは、2つのシャフトマーキング215a,215bのうち、一方のシャフトマーキング215aのみが段差部の外側に露出し、他方のシャフトマーキング215bの大部分は段差部の中に隠れている。また切欠き部271cは、外側から見て側方に位置している。それゆえ、ストッパ操作端271dがこのような状況にあれば、ストッパ機構270Bは中段当接状態にあり、ポペット212が中間の開度で開放可能であることがわかる。
【0196】
次に、操作者がストッパ操作端271dを回転させて、
図21下図に示す下段当接状態に切り替える。ポペット212が開方向L2に移動すれば、ポペットシャフト215のストッパ係止部272は、ストッパ係止端271aの最も開方向L2側の位置となる下段273cに当接する。これにより、ポペット頭部212aは、最大の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は最大量となる。
【0197】
このとき、ストッパ機構270Bでは、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ操作端271dの段差部の中に隠れており、切欠き部271cは、外側から見て下側方に傾斜して位置している。それゆえ、ストッパ操作端271dがこのような状況にあれば、ストッパ機構270Bは下段当接状態にあり、ポペット212が最大の開度で開放可能であることがわかる。
【0198】
[変形例2]
また、他の例としては、
図22(A)・(B)に示すように、押し込みながら回転可能な構成のストッパ部材274を備えるストッパ機構270Cであってもよい。このストッパ機構270Cは、ストッパ部材274に加えて、ストッパ外装体275、ストッパ係止部276を備えている。
【0199】
ストッパ部材274は、前述したストッパ機構270Aまたは270Bのストッパ部材271と同様に、ポペットシャフト215の周囲を覆う形状(例えば筒状)であり、ポペットシャフト215を内部に挿入した状態で、当該ポペットシャフト215に対して回転可能となっている。また、ストッパ部材271と同様に、ストッパ部材274の一端はストッパ操作端274bであり、ストッパ部材274の他端はストッパ係止端274aである。また、ストッパ操作端274bには、ストッパ機構270Aまたは270Bと同様に切欠き部274cが設けられており、ストッパ係止端274aの側面には、ストッパ突起部274dが設けられている。
【0200】
ストッパ外装体275は、ストッパ部材274の外側に位置し、内挿されたストッパ部材274を回転可能に保持する。ストッパ外装体275におけるストッパ係止端274a側には、平坦部275aと段差部としての段差凹部275bとが設けられている。段差凹部275bは、
図22(B)に示すように、凹部第一段277aおよび凹部第二段277bの2段の凹部で構成される。それゆえ、段差凹部275bと平坦部275aとにより3段の段差部が構成される。平坦部275aを段差部の「上段」とすれば、凹部第一段277aは段差部の「中段」となり、凹部第二段277bは段差部の「下段」となる。
【0201】
なお、
図22(B)は、
図22(A)に示すストッパ機構270Cの要部拡大図であり、
図22(B)には、凹部第一段277aおよび凹部第二段277bについて符号を図示しているが、
図22(A)では、ストッパ機構270Cの全体を図示する便宜上、段差凹部275bのみ符号を図示し、凹部第一段277aおよび凹部第二段277bについては符号を図示していない。また、
図23においても、開度調整を説明する便宜上、上図では、平坦部275aおよび段差凹部275bについて符号を図示し、中央図では、段差凹部275bおよび凹部第一段277aについて符号を図示し、下図では、段差凹部275bおよび凹部第二巻277bについて符号を図示している。
【0202】
ストッパ係止部276は、ポペットシャフト215におけるポペット212への支持端側に外装され、ストッパ部材274のストッパ係止端274aに当接可能となっている。ストッパ係止端274aには、前述したストッパ係止端271aとは異なり、段差が設けられておらず平坦な面となっている。それゆえ、ストッパ係止部276における係止部位の形状は、平坦なストッパ係止端274aに当接可能なように、同様に平坦な面状となっている。なお、これら以外のストッパ機構270Cの構成は、ストッパ機構270Aまたは270Bと同様であるため、その説明を省略する。
【0203】
次に、このストッパ機構270Cを備えるバルブ装置200Dにおいて、ポペット212の開度を調整する点について、
図23を参照して具体的に説明する。ここで、
図23では、
図21と同様に、基準位置にあるポペット212およびポペットシャフト215を実線で図示し、ストッパ機構270Cで位置規制されたポペット212およびポペットシャフト215を点線で図示している。また、
図23では、上図、中央図、下図の間で、ポペットシャフト215の基準位置およびポペット頭部212aの基準位置に加えて、ストッパ突起部274dが段差凹部275bの凹部第一段277aに位置するときのストッパ係止端274aを、それぞれ一点鎖線で対応付けている。
【0204】
例えば、操作者が、ストッパ部材274のストッパ操作端274bを回転させて、
図23上図に示すように、ストッパ外装体275の平坦部275a(段差部の上段)にストッパ部材274のストッパ突起部274dを当接可能な状態(上段当接状態)に切り替える。このとき、ストッパ係止端274aの位置は基準位置よりも最も閉方向L1側となる位置(閉側位置)に移動している。それゆえ、ポペット212が開方向L2に移動すれば、ストッパ係止部276は、より手前でストッパ係止端274aに当接する。その結果、ポペットシャフト215の位置は、ストッパ部材274により最も閉方向L1側で規制されることになるので、ポペット頭部212aは、最小の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は最小量となる。
【0205】
このとき、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ部材274の外側に露出しており、切欠き部274cは、外側から見て側方に位置している。それゆえ、ストッパ操作端274bがこのような状況にあれば、ストッパ機構270Cは上段当接状態にあり、ポペット212が最少の開度で開放可能であることがわかる。なお、
図23上図に示すように、ストッパ係止部276が基準位置から閉側位置に移動するまでの間隔を、可動範囲m1として図示している。
【0206】
次に、操作者が、ストッパ部材274のストッパ操作端274bを回転させて、
図23中央図に示すように、ストッパ外装体275の段差凹部275bの凹部第一段277a(段差部の中段)にストッパ部材274のストッパ突起部274dを当接可能な状態(中段当接状態)に切り替える。このとき、ストッパ係止端274aの位置は、
図23上図に示す閉側位置よりも開方向L2側となる位置(中間開側位置)に移動し、基準位置に近づいている。
【0207】
ここで、
図23中央図に示すように、凹部第一段277aの段差が間隔n1を有しており、ストッパ係止部276が基準位置から中間開側位置に移動するまでの間隔を、可動範囲m2とすれば、この可動範囲m2は、
図23上図に示す可動範囲m1および間隔n1の和(m2=m1+n1)となる。
【0208】
このように、ストッパ係止部276の可動範囲m2は、可動範囲m1よりも段差凹部275bの段差一つ分大きくなる。この状態で、ポペット212が開方向L2に移動すれば、ポペットシャフト215のストッパ係止部272は、中程度でストッパ係止端274aに当接する。その結果、ポペットシャフト215の位置は、ストッパ部材274により中程度に閉方向L1側で規制されることになるので、ポペット頭部212aは、中間の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は中間量となる。
【0209】
このとき、2つのシャフトマーキング215a,215bのうち、一方のシャフトマーキング215aのみがストッパ部材274の外側に露出し、他方のシャフトマーキング215bはストッパ部材274の中に隠れている。また切欠き部274cは、外側から見て上側方に傾斜して位置している。それゆえ、ストッパ操作端274bがこのような状況にあれば、ストッパ機構270Cは中段当接状態にあり、ポペット212が中間の開度で開放可能であることがわかる。
【0210】
次に、操作者が、ストッパ部材274のストッパ操作端274bを回転させて、
図23下図に示すように、ストッパ外装体275の段差凹部275bの凹部第二段277b(段差部の下段)にストッパ部材274のストッパ突起部274dを当接可能な状態(下段当接状態)に切り替える。このとき、ストッパ係止端274aの位置は基準位置に一致する位置(最大開側位置)まで移動している。
【0211】
ここで、
図23下図に示すように、凹部第二段277bの段差が間隔n2を有しており、ストッパ係止部276が基準位置から最大開側位置に移動するまでの間隔を、可動範囲m3とすれば、この可動範囲m3は、
図23上図に示す可動範囲m1および間隔n2の和(m3=m1+n2)となる。間隔n2は、平坦部275aから見て凹部第一段277aおよび凹部第二段277bの二つ分の段差になるので、凹部第一段277aの間隔n1よりも大きい(n2>n1)。それゆえ、可動範囲m3は、可動範囲m2よりも大きくなる(m3>m2>m1)。
【0212】
このように、ストッパ係止部276の可動範囲m3は、可動範囲m1を基準とすれば、段差凹部275bの段差二つ分大きくなり、可動範囲m2を基準とすれば、段差凹部275bの段差一つ分大きくなる。この状態で、ポペット212が開方向L2に移動すれば、ストッパ係止部276は、最も開方向L2側でストッパ係止端274aに当接する。その結果、ポペットシャフト215の位置は、ストッパ部材274により最も開方向L2側で規制されることになるので、ポペット頭部212aは、最大の開度でバルブシート213から離間することができる。この場合、主流路201を流れる燃料の流量は最大量となる。
【0213】
このとき、2つのシャフトマーキング215a,215bはストッパ部材274の中に隠れており、切欠き部274cは、外側から見て上方に位置している。それゆえ、ストッパ操作端274bがこのような状況にあれば、ストッパ機構270Cは下段当接状態にあり、ポペット212が最大の開度で開放可能であることがわかる。
【0214】
[その他の変形例]
ここで、本実施の形態4では、ストッパ機構270A~270Cのいずれにおいても、作業者が手作業により直接ストッパ操作端271b、271d、または274bを回転させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、公知の操作器を用いて、当該操作器を作業者が操作することによりストッパ操作端271b、271d、または274bが自動で回転するように構成されてもよい。公知の操作器としては、ボタンまたはスイッチを備え、ストッパ部材271または274を回転させるような構成を挙げることができる。
【0215】
また、本実施の形態に係るストッパ機構270A~270Cは、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aに適用した構成となっている。言い換えれば、本実施の形態4に係るバルブ装置200Dは、ストッパ機構270A~270Cを除いて、前記実施の形態1に係るバルブ装置200Aと同様である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ストッパ機構270A~270Cは、前記実施の形態2に係るバルブ装置200Bまたは前記実施の形態3に係るバルブ装置200Cに適用されてもよい。
【0216】
ここで、バルブ装置200Cには、ポペットシャフト215または235に該当する構成が存在しないが、代わりに、ピストン機構254がピストンシャフト255を備えている。バルブ装置200Cでは、ポペット252の開度をピストン機構254により規制することができるので、ピストン機構254の閉方向L1の移動をストッパ機構270A~270Cで規制することで、ポペット252の開度を調整することが可能である。
【0217】
それゆえ、本実施の形態では、ストッパ部材271または274は、シャットオフバルブ210,230または250が備えるバルブシャフト(シャットオフバルブ210ではポペットシャフト215、シャットオフバルブ230ではポペットシャフト235、シャットオフバルブ250ではピストンシャフト255に相当)に対して回転可能に設けられていればよい。また、マーキングもバルブシャフトに設けられていればよいので、ポペットシャフト215または235ではなく、ピストンシャフト255に設けることができる。
【0218】
なお、バルブ装置200Dにおけるストッパ機構270Aまたは270Bは、ストッパ係止端271aにはストッパ係止部272に当接する複数段の段差部が設けられている。そのため、ストッパ操作端271bを回転させて、段差部におけるストッパ係止部272に係止する段(例えば、上段273a、中段273b、および下段273c)を切り替えることにより、ポペット212が開方向L2に移動したときのポペット頭部212aの位置を変化させることができる。
【0219】
また、バルブ装置200Dにおけるストッパ機構270Cは、ストッパ部材274のストッパ係止端274a側に外装され、複数段の段差部(平坦部275aおよび段差凹部275b)が設けられるストッパ外装体275を備えている。そのため、ストッパ操作端274bを回転させて、ストッパ外装体275の段差凹部275bにおける段(例えば、下段277a、中段277b、および上段277c)を切り替えることにより、ポペット212が開方向L2に移動したときのポペット頭部212aの位置を変化させるように構成されている。
【0220】
しかしながら、本発明に係るバルブ装置のストッパ機構は、前述したストッパ機構270A~270Cに限定されず、ストッパ部材のストッパ操作端を回転させることにより、ポペットが開方向L2に移動したときのポペット頭部の位置を、バルブシャフトの延伸方向に沿って変化させるように構成されていればよい。これにより、簡素な構成で、ポペットの開度を良好に調整することができる。
【0221】
また、ストッパ機構270A~270Cは、いずれも複数段で構成される段差部を含むが、この段差部の各段は同じ間隔を有してもよいし、異なる間隔を有してもよい。例えば、
図22(A)・(B)および
図23に例示するストッパ機構270Cでは、段差部として平坦部275aおよび段差凹部275bを含むが、凹部第一段277aの段差(間隔n1)と、凹部第二段277bの段差(間隔n2-間隔n1)とは、同じ間隔であってもよいし異なる間隔であってもよい。また、ストッパ機構270A~270Cが有する段差部は、いずれも3段で例示しているが、4段以上であってもよいし、2段であってもよい。
【0222】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本発明は、燃料タンクの種類に関わらず、さまざまな燃料タンクの分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0224】
11 センタータンク(補助タンク)
12 右舷タンク(主タンク)
13 左舷タンク(主タンク)
21 センタータンク給油バルブ(バルブ装置)
22 右舷タンク給油バルブ(バルブ装置)
23 左舷タンク給油バルブ(バルブ装置)
40 給油移送配管
52 右舷エンジン配管
53 左舷エンジン配管
61 右エンジン
62 左エンジン
200A~200D バルブ装置
201 主流路
202,202a,202b 副流路
203 還流路
204,204a,204b ポペット流路
205 ピストン流路
210,230,250 シャットオフバルブ
211,231,251 マニホールド
212,232,252 ポペット
212a,232a,252a ポペット頭部
212b,232b,252b ポペット背面部
213,233,253 バルブシート
214,234,254 ピストン機構
216,236 ポペットシャフト(バルブシャフト)
215a,215b シャフトマーキング
220,240,260 流量調整部
221,241,261 バルブ制御部
222,242,262 ピストン機構制御バルブ
223,243,263 ポペット制御バルブ
255 ピストンシャフト(バルブシャフト)
270A~270C ストッパ機構
271,274 ストッパ部材
271a ストッパ係止端(段差部を含む)
274a ストッパ係止端
271b,274b ストッパ操作端
271d ストッパ操作端(段差部を含む)
271c,274c 切欠き部(マーキング)
274d ストッパ突起部
272,276 ストッパ係止部
275 ストッパ外装体
275a 平坦部(段差部)
275b 段差凹部(段差部)