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特許7269087テキスタイル製品の製造方法、それから取得可能な製品、および製品の再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】テキスタイル製品の製造方法、それから取得可能な製品、および製品の再生方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 17/00 20060101AFI20230426BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20230426BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230426BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
D06M17/00 J ZAB
D06M17/00 C
A47G27/02 102
C09J7/35
C09J201/00
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019087277
(22)【出願日】2019-05-07
(62)【分割の表示】P 2016517635の分割
【原出願日】2014-06-10
(65)【公開番号】P2019148052
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2019-06-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】13171237.4
(32)【優先日】2013-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】13171238.2
(32)【優先日】2013-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】13173428.7
(32)【優先日】2013-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ティヘラール, ミシェル ポウル
(72)【発明者】
【氏名】コーニング, コルネリウス エメ
(72)【発明者】
【氏名】ウッディング, ヤン ヘンデリクス
(72)【発明者】
【氏名】ウェスターホフ, ウィルヘルミナ
(72)【発明者】
【氏名】レウテリングスペルガー, クリス
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン, ホフラント
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】藤井 眞吾
【審判官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-514895(JP,A)
【文献】特表2004-514073(JP,A)
【文献】特開2010-233764(JP,A)
【文献】特開平05-005266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0284558(US,A1)
【文献】米国特許第4576665(US,A)
【文献】特開平08-104860(JP,A)
【文献】特開2008-200288(JP,A)
【文献】特表2009-535535(JP,A)
【文献】特開2001-040315(JP,A)
【文献】特開2001-019926(JP,A)
【文献】特開平09-047352(JP,A)
【文献】特表平08-501129(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060698(WO,A1)
【文献】特許第3644962(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08J 7/04 - 7/06
B65D 65/40
D21H 19/82
D21H 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)第1のシートであって、
(i)前記第1のシートが第1の表面と第2の表面とを有し、かつヤーンが前記第1のシートの前記第1の表面から及び前記第1のシートの前記第2の表面を貫通して延在する状態で、前記第1のシートへの前記ヤーンの機械的装着を含む第1のファスナーにより、およびそして
(ii)前記第1のシートの前記第2の表面に存在する前記ヤーンが、少なくとも部分的に、前記第1のシートにおよび/または互いに、任意選択で熱および/または圧力による融合を含む第2のファスナーにより、およびそして
(iii)実質的に前記第1のシートの前記第2の表面上に位置し、150℃で500Pa・s未満の溶融粘度を有しかつ前記第1のシートおよび前記ヤーンのそれぞれよりも低い融点を有するホットメルト接着剤(HMA)を含む第3のファスナーであることを特徴とする第3のファスナーにより、続いて固定されたヤーンを有する、第1のシート
を含み、
(A)前記HMA(成分(I)(iii))は、重量基準でHMAの全量の20%以下が、シート内およびヤーン内に埋め込まれてテキスタイル製品中に存在すること、および
(B)前記第2のファスナー(成分(I)(ii))で、前記ヤーンが、前記第1のシートの表面に平行な方向に、前記ヤーンの溶融部分に付与された、前記第1のシートの前記第2の表面がカレンダー処理される機械力により、前記第1のシートにおよび/または互いに少なくとも部分的に融合されること、
を条件とする、テキスタイル製品。
【請求項2】
前記HMAが、ポリマーPを含み、かつ/または前記ヤーン、および前記第1のシートが、少なくとも1種のポリマーRを含み、
前記ポリマーPおよび/またはいずれかの前記ポリマーRが、独立して、重縮合、環状モノマーの開環重合、段階成長重合方法により取得されおよび/または取得可能であり、かつ/またはリサイクルされた重縮合物である、請求項1に記載のテキスタイル製品。
【請求項3】
前記ヤーン、および前記第1のシートのそれぞれに対する前記ポリマーRが、実質的に同一の材料を含む、請求項2に記載のテキスタイル製品。
【請求項4】
前記ポリマーPおよび/またはいずれかの前記ポリマーRが、(コ)ポリウレタン、(コ)ポリカーボネート、(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、(コ)ポリ(エステル-アミド)、それらの混合物および/またはそれらのコポリマーからなる群から選択される1種以上のポリマーおよび/またはコポリマーを含む、請求項2または3に記載のテキスタイル製品。
【請求項5】
前記ポリマーPおよび/またはいずれかの前記ポリマーRが、(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、および/またはポリ(エステル-アミド)である、請求項4に記載のテキスタイル製品。
【請求項6】
前記ポリマーPおよび/またはいずれかの前記ポリマーRが(コ)ポリエステルである、請求項5に記載のテキスタイル製品。
【請求項7】
前記ポリマーPが150℃で500Pa・s未満の溶融粘度を有する、請求項2~6のいずれか一項に記載のテキスタイル製品。
【請求項8】
カーペット、カーペットタイル、ラグ、および/またはマットを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のテキスタイル製品。
【請求項9】
前記第1のシート、および前記ホットメルト接着剤が、実質的に同一のタイプのポリマーであり、前記ポリマーPが前記ポリマーRに使用されるポリマーと実質的に同じである、請求項2~8のいずれか一項に記載のテキスタイル製品。
【請求項10】
ポリエステルカーペットタイルである、請求項1~9のいずれか一項に記載のテキスタイル製品。
【請求項11】
少なくとも1つのポリエステル層または少なくとも2つのポリエステル層をむポリエステル織りカーペットである、請求項1~9のいずれか一項に記載のテキスタイル製品。
【請求項12】
ナイロン層(第2のシートを構成する)とポリエステル層(前記第1のシートを構成する)とを含むラミネート織りカーペットである、請求項1~9のいずれか一項に記載のテキスタイル製品。
【請求項13】
使用済みの請求項12に記載のテキスタイル製品を受け取る工程を含むテキスタイル製品の再生方法であって、前記ホットメルト接着剤を加熱して前記第2のシートから前記第1のシートの接合を解除する工程と、再使用に供すべく前記第1のシートおよび/または前記第2のシートを収集する工程と、を含む、方法。
【請求項14】
前記ホットメルト接着剤を加熱して前記第2のシートから前記第1のシートの接合を解除する工程と、前記第1のシートと前記第2のシートとを2つの個別のストリームで収集する工程と、前記個別のストリームをそれらの融解温度よりも高い温度にさらに加熱してリサイクルされたポリマーを取得する工程と、前記取得されたポリマーを再使用する工程と、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
使用済みの請求項1~12のいずれか一項に記載のテキスタイル製品を受け取る工程を含むテキスタイル製品の再生方法であって、前記製品を全体として加熱することにより、前記ヤーン、前第1のシート、および前記ホットメルト接着剤に含まれるポリマーを溶融する工程と、前記取得されたポリマーを再使用する工程と、を含む、方法。
【請求項16】
前記溶融が1回の溶融工程で行われ、かつ前記方法が前記溶融と前記再使用との間の分離工程なしで行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記テキスタイル製品から取得された前記ポリマーが重縮合物である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載のテキスタイル製品を製造するための、150℃で500Pa・s未満の溶融粘度を有しかつ前記第1のシートおよび前記ヤーンのそれぞれよりも低い融点を有するホットメルト接着剤の使用。
【請求項19】
床カバーとしての、請求項1~12のいずれか一項に記載のテキスタイル製品の使用。
【請求項20】
テキスタイル製品を床に適用する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のテキスタイル製品を床に適用する工程と、前記テキスタイル製品を前記床に固定する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、床カバー(たとえば、カーペット、カーペットタイル、ラグ、およびマット)などの用途に使用するためのテキスタイル製品、それらの製造、およびこれらの製品の再生方法に関する。
【0002】
床を覆うために使用されるテキスタイル製品(たとえば、カーペットなど)は、通常、ヤーンを第1の材料に縫合してトップ表面から突出するヤーンのタフトを有するヤーン担持層を形成することにより製造される。ヤーン担持層は、典型的には、架橋性ポリマーのラテックスで含浸される。ラテックスポリマーが製品内に含浸した後、ラテックスは、架橋されてヤーンタフトを所定の位置に永久的に固着させる。ヤーンと第1の材料とラテックスとの組合せは、先行技術では、多くの場合、一次層として(また一次バッキングおよび/または一次マットとしても)これまで参照されてきた。得られるテキスタイル製品の寸法安定性などの機械的性質を改良するために、キャリヤー材料の第2の層が使用されてきた(また先行技術では二次層および/または支持シートとしてもこれまで参照されてきた)。この第2の層は、典型的には、所望の性質を有するラミネートテキスタイル製品を形成するために、一次層のバック面に接合される。
【0003】
ロールカーペット中の一次層と二次層とを結合するために、ホットメルト接着剤(HMA)が使用されてきたのは、HMAが比較的安価でありかつ容易に入手可能であるからである。
【0004】
典型的には、一次層、二次層、およびそれらを連結する接着剤は、異なる機能を発揮するように設計されるため、それぞれ、異なる機械的性質を有する非常に異なる材料を含む。
【0005】
一次層を作製するために架橋性ラテックスを使用すると、以下に記載の欠点の一部または全部などの種々の欠点を生じる。
【0006】
ラテックスポリマーが水性である場合、テキスタイル製品は、低い耐水性を有するおそれがあるため、湿分が製品に浸透する可能性がある。このため、白黴および糸状菌の発生リスクが増加して、製品を劣化させる可能性がある。さらに、ラテックスポリマー中に存在することが多い残留モノマーの痕跡もまた、環境ハザードである空気の質の低下を引き起こす可能性がある。したがって、ラテックス系床カバーが高湿度に暴露される場合、たとえば、ロビーまたは浴室で使用される場合、床カバーを頻繁に交換する必要があろう。
【0007】
他の選択肢として、たとえば、ラテックスが界面活性剤により水中に分散された疎水性ポリマーである場合、界面活性剤の存在もまた、製品の湿分感受性を増加させるおそれがある。いくつかのラテックスは、スチレンを含有しうるため(たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR)など)、製品中に望ましくないほど多量の残留スチレンをもたらす可能性がある。環境上の理由および他の理由で、テキスタイル製品中の揮発性有機化合物(VOC)の量は、できるかぎり低くすることが好ましい。
【0008】
ラテックス系テキスタイル製品では、一次層内および二次層内の成分で異なる材料が使用されるため、それらの回収および再使用を行うのであれば、これらの各成分を分離する必要があろう。しかしながら、ヤーンおよび第1の材料は、化学架橋(たとえば、加硫)されたラテックス接着剤に強固に埋め込まれている。したがって、ラテックス系テキスタイル製品では、一次層の成分は、容易には分離されない。いくつかの再生技術が開発され、これらの課題のいくつかは対処されてきたが、そのような方法は、経費がかかり、しかも使用される材料をすべて完全に再生できるわけではない。結果として、ラテックス系テキスタイル床カバーを再生することは、非現実的であるため、これらは、単純に廃棄、燃焼、または細断される。細断された床カバーは、典型的には、埋立て地に投棄されるが、架橋されたラテックスは、それほど生分解性ではないため、細断された残留物は、長年にわたり存在することになろう。
【0009】
これらの課題のいくつかに対処するために、ポリオレフィンおよびポリウレタンなどの種々の合成ポリマーが開発され、テキスタイル製品中のラテックスポリマーが置き換えられてきた。そのような置換えは、完全に満足なものではなかった。
【0010】
上述の問題を解決しようと試みられたこれらのおよび他の先行技術のカーペットのいくつかは、以下の文献に記載されている。
【0011】
欧州特許第747525号明細書(BASF)には、ホットメルト接着剤(HMA)により一次バッキングのバック面に結合された熱可塑性基材のキャリヤーを有して、突出タフト(好ましくはバッキングと同一の材料)を含むバッキングから作製されたリサイクル可能なカーペットが記載されている。バッキングおよびタフトは、ナイロン、ポリオレフィン、および/またはポリエステルなどの材料から作製され、かつ熱可塑性キャリヤーは、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート(EVA)、および/またはポリビニルクロリド(PVC)などの材料から作製される。HMAは、タフトを所定の位置にロックしかつバッキングとキャリヤーとの間でバッファーとして作用するように、一次バッキングのバック表面に適用されるため、バッキングおよびキャリヤーのポリマーと適合性になるように選択される。好ましいHMAは、カプロラクタム系コポリアミドであるが、適合性のポリオレフィンおよび/またはコポリエステル接着剤もまた、使用されうる。カーペットがその2つの構成層に分離するように、タフトバッキングおよびキャリヤー基材のポリマーの融点未満でHMAを(再)軟化させるのに十分な温度に加熱することにより、カーペットをリサイクルしうる。
【0012】
米国特許第3975224号明細書(Lutravil Spinnvlies)には、ニードルパンチカーペットおよびタフトカーペットのための寸法安定性補強バッキング材料として使用される不織ウェブの製造方法が開示されている。ウェブは、少なくとも200p/g/mの相対グラブ引張り強度、50%以下の破断伸び、および160℃で1%以下の収縮率を有する。マトリックスフィラメントとバインダーフィラメントとの平行な線状束の並びを含む不織ウェブ。マトリックスフィラメントは、溶融紡糸性ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートである。バインダーフィラメントは、160℃超かつマトリックスフィラメントよりも30°低い融点を有する溶融紡糸性ポリマーである。好適なバインダーポリマーは、ポリアミドまたはコポリアミド(たとえば、ポリカプロラクタムまたはポリカプロラクタムとポリヘキサメチレンアジパミドとのコポリアミド)、ポリエステルまたはコポリマー(たとえば、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/エチレンアジペート、またはテレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールと1,4-シクロヘキサンジエタノールとの四元コポリエステル)、アイソタクチックポリオレフィン(たとえば、アイソタクチックポリプロピレン)、および線状ポリウレタンであると明記されている。
【0013】
米国特許第5240530号明細書(Tennessee Valley Performance Products)には、たとえばアイソタクチックポリオレフィンから作製された押出しシートの二次バッキングに一次バッキングが加熱融合されて、合成繊維の突出タフトを含む一次バッキングを有するリサイクル可能なカーペットが記載されている。一次バッキングおよび二次バッキングならびに繊維はすべて、熱可塑性物質を含みうる。この参照には、「カーペットのリサイクルを妨害する」と両方とも明記されている従来のラテックス接着剤もホットメルト接着剤も使用しないことが、読者に直接教示されている(第4欄、第16~17行)。
【0014】
米国特許第5538776号明細書(Hoechst Celenese)(=欧州特許第0604897号明細書)には、タフトを有する一次バッキングと、ポリエステルホットメルト接着剤層により一次バッキングに装着された二次バッキングと、で作製されたリサイクル可能な熱可塑性タフトカーペットが記載されている。HMAがラテックス接着剤の代わりをして(第2欄、第50~51行を参照されたい)、タフト、一次バッキング、HMA、および二次バッキングが、一タイプの熱可塑性物質(好ましくはポリエステル)から作製される。したがって、カーペットは、解糖またはメタノリシスによるポリエステルのリサイクルプロセスなどの公知の方法により、リサイクル可能である。しかしながら、ラテックス接着剤の不在下では、HMAは、それ単独で十分に良好な結合を提供しないため、タフトは、カーペットに十分に強固に固着されないであろうから、このカーペットは、良好な機械的性質を有していないであろう。
【0015】
米国特許出願公開第2010-0112250号明細書(Eastman Chemical)には、二酸成分としての1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、およびジエチレングリコールから選択される少なくとも2つのジオールを含有するジオール成分と、を含有するポリエステルから作製されたホットメルト接着剤(HMA)が記載されている。これらのHMAは、たとえば、ロール適用ラベル用のシーム接着剤として、ラベルに適用するのに好適であると記載されている。これらのポリエステルがカーペットなどのテキスタイル製品の作製に好適であるという提案は、この文献には存在しない。
【0016】
米国特許出願公開第2010/0260966号明細書(Beaulieu Group)には、安定化材が組み込まれた不織クッション材料を有する寸法安定性カーペットタイルが開示されている。安定化されたクッション材料は、ポリマー接着剤層を用いてフェース布に装着される。好適なポリマー接着剤の例は、PVC、ポリエチレン、変性ポリプロピレン、エチルビニルアセテート、変性PET、およびそれらのブレンドとして与えられている。一実施形態では、安定化されたクッション材料、フェース布、および接着剤は、押出し、ホットメルト、ベルトラミネーションなどの好適な方法によりラミネート一体化される。しかしながら、いずれの装着方法を用いるにしても、クッション材料とフェース布との間に適切な結合を確保するために、ポリマー接着剤は、実質的な程度まで両方に浸透しなければならない。このため、その構成ポリマー材料が不適合性となって、一緒にリサイクルできないうえにさらに、分離が非常に困難であるため、カーペットタイルのリサイクルは、非常に厄介な問題となる。
【0017】
米国特許出願公開第2011/039056号明細書(Interface International)には、加熱溶媒で処理することにより接着機能を喪失可能な接着剤を含むカーペットが開示されている(そのような接着剤は「熱水性溶媒スイッチャブル接着剤」として参照される)。好ましくは、スイッチャブル接着剤は、可塑化エステル化膨張デンプンである。そのようなスイッチャブル接着剤を用いてカーペットを製造すれば、接着剤をスイッチオフしてカーペット成分を分離し、より容易なリサイクルに供することが可能になる。しかしながら、そのような接着剤はまた、とくに強固ではないおそれがあるとともに、デンプン系の場合、水の影響を受けやすく、低耐湿性になるおそれがある。
【0018】
国際公開第2007/127222号パンフレット(Mohawk Industries)には、ラミネートカーペットタイルを作製するためのホットメルト接着剤(HMA)の使用が記載されている。タイルは、タフトフェースヤーンと、一次バッキングと、HMAのプレコート層と、少なくとも20重量%のタック付与樹脂と、少なくとも2つの無溶媒層と、を有する。好ましいプレコート層は、2~80重量%のポリエチレンと20~98重量%のタック付与剤とを有する。このラミネートタイルは、複雑な多層構造を有するため、それを製造するのに経費がかかる。これらの層間に強固な結合を達成するために、ホットメルト接着剤を他の材料内に実質的に含浸させる必要があるため、成分部分の分離が困難であり、このタイルは容易にはリサイクルできない。
【0019】
欧州特許第1598476号明細書(Klieverik Heli)には、カーペットを製造するための中間体としてのバッキングの製造方法が記載されている。この場合、バッキングは、繊維(ヤーン)を所定の位置に固着するためにラテックスを使用しない。バッキングは、シートの厚さを貫通して縫合された上側表面から突出する熱可塑性繊維のパイルを有するシートを含む。バッキングは、加熱ローラー表面に沿って供給され(繊維を上側にして)、その下側は、繊維が溶融するようにローラーにプレスされる。冷却後、繊維は、ラテックスポリマーを必要とすることなく、互いにおよびバッキングに堅固に固着されると、Klieverikは述べている。一実施形態では、加熱表面により繊維および接着剤が溶融一体化されてパイルと接着剤とバッキングとの間に良好な接着が形成されるように、熱可塑性接着剤(たとえば、ホットメルト接着剤)を粉末としてバッキングの下側に追加的に適用しうる、と教示されている。他の実施形態では、加熱後、たとえば、繊維が熱のみにより融合する温度未満のより低い温度に加熱ローラーを維持して、バッキング表面に垂直な方向に(すなわち、下側から)バッキングおよびパイルに圧力を加えることにより(たとえば、加圧ローラーにより)、可塑化繊維を擦り付けて一体化させ、それらの相互の接着を増強しうる。この方法は、繊維およびバッキングシートを同一のポリマーから作製可能であるため、中間バッキングを容易にリサイクルすることが可能であるという利点を提供する。繊維パイル内に浸透した不適合性ラテックスは存在しない(段落[003]を参照されたい)。先行技術の方法と比較して、さらに、エネルギーおよび原料コストが節約される。しかしながら、この方法は、依然として、いくつかの欠点を有する。繊維は、多くの用途で、たとえば、繊維が高い機械的負荷を受ける場合(たとえば、車、列車、飛行機、事務所、店舗などで)、依然として、バッキングに十分に強固に固着されない。たとえば、Klieverikにより記載された中間バッキングから実際にカーペットを製造するためには、カーペットのパイルおよびバッキングの中にHMAを含浸および/または広範に含浸させてHMAのみで十分な接着が提供されるように、依然として、バッキングの下側に追加の(不適合性)接着剤またはラテックスを適用する必要があろう。そのような不適合性材料および/または埋込みHMAの存在は、そのようなカーペットのリサイクルが困難であることを意味しよう。
【0020】
国際公開第2012/076348号パンフレット(Niaga)には、ヤーンの固着強度を改良するテキスタイル製品の製造方法が記載されている。この方法では、第1のヤーン担持シートを加熱表面にプレスした時、シートと表面との相対速度を調整して、それらの間に機械方向に追加の機械力を提供することにより(以下を参照されたい)、依然として溶融状態にある間にヤーンの材料を展延して、第1のシートとヤーンとの間に強固な結合をもたらす。理論上、多くの場合、追加の二次支持層はもはや必要ではないことがありうるが、この文献では、とくに、テキスタイル製品とキャリヤー材料との間の界面に存在する反応性分子間の熱可逆反応に依拠する反応性接着剤を含む場合、そのような支持層が依然として有用でありうることが教示されている。そのような反応性接着剤は、ホットメルト接着剤(HMA)などの他のタイプの接着剤により典型的に達成されるよりもかなり強固な結合を提供する。しかしながら、反応性接着剤を用いると強固な結合が提供されリサイクルが可能であるが(ラテックスとは異なる)、それを使用しても、依然として、最適な機械的性質を有していないテキスタイル製品を生じる。化学反応性接着剤を使用するさらなる欠点は、連結される両方の成分および接着剤が共反応性基を有していなければならないことである。たとえば、標準的な市販のポリマーが反応性接着剤との併用に好適な所要の官能基を含有していないこともあるため、一次バッキングおよび/またはタフトの作製に使用されるポリマーは、追加の工程で化学修飾を必要とするであろう。
【0021】
国際公開第2000-61853号パンフレット(Polyloom Corp.)には、一次バッキングの下側を加熱してヤーンのバックループ部分の個別の繊維を融合一体化し、次いで、それに反復極性部分(極性TPP)を有する熱可塑性ポリオレフィンポリマーのコーティングを適用することによりカーペットベース(グレイジグッズとしても参照される)を形成したカーペットが記載されている。極性TPPコーティングは、バックループ中の実質的にすべての繊維に接着するかまたは融合一体化される。極性TPPの一例は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。Polyloomにより記載されたヤーンタフトの装着方法は、本発明に係るものとは異なる。Polyloomは、溶融時、ヤーンにMD方向の力を加えてバック側表面を平坦化しそれへのコーティングの接着性を改良するという利点を教示も認識もしていない。結果として、Poyloomのグレイジグッズは、依然として、適用されたいずれのコーティングともそれほど良好な結合を達成しないヤーンのループおよびノットを含む不均一で粗く平坦でない下側表面を有する。したがって、本発明とは対照的に、極性TPPの強力接着剤コーティングを使用しなければならない。TPPコーティングは、HMAとは非常に異なる。この文献には、オレフィンコポリマーと比較して非常に低い引張り強度であることおよびカーペットへの適用時に冷却されて粘度が増加することを含めて、ホットメルト接着剤(HMA)の使用に関連して提示されたいくつかの問題が広範に記載されている(第9頁第3行~第11頁第9行)。したがって、この文献の読者は、カーペットを作製するためにいずれのHMAの使用も避けるように強く教示され、唯一の接着剤としてHMAを用いることによりバッキング層を一次層に装着してカーペットを形成する可能性はさらに低い。
【0022】
米国特許第5876827号明細書(Polyloom)には、国際公開第2000-61853号パンフレットにすでに記載されたものに類似した方法によりポリプロピレン一次バッキングに熱融合されたポリプロピレンヤーンを含む、国際公開第2000-61853号パンフレットのものに類似したカーペットが記載されている。この文献ではまた、HMA(第2欄第42~65行)の使用に関連して提示された欠点が説明され、「ホットメルト接着剤カーペットは容易にはリサイクルできない」(第2欄第57~59行)と実際に明記され、本発明に係るカーペットを避けるように直接教示されている。
【0023】
国際公開第2012-060698号パンフレット(Interface)には、タフトヤーンが支持体材料に熱融合され、かつ補強不織布材料層がタイルの寸法安定性を改良するために添加される、カーペットタイルの製造方法が記載されている。この出願では、ラテックス、接着剤、またはHMAでタフト層をプレコートすることには欠点が存在すると明記され(第1頁第19~28行を参照されたい)、したがってまた、本発明に係るカーペットを避けるように教示されている。
【0024】
仏国特許第2565610号明細書(SIRS)には、タフト層と支持層との間にビニルまたはオレフィンのポリマーまたはコポリマーの樹脂コーティングを有するカーペットが記載されている。好ましい樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチルビニルアセテートコポリマーである。これらのポリマーがホットメルト接着剤であるという提案はなされておらず、実際に、樹脂は、ホットメルトとしてではなく粉末としてまたはフィルムとして適用されると記載されている。
【0025】
欧州特許第2172589号明細書には、ゴムラテックスにより支持された葉片状要素から作製されて競技場用人工芝の形成に使用される合成芝マットが記載されており、また、欧州特許第1705292号明細書には、任意選択でキャリヤーに装着された支持体表面に繊維を熱融合することにより芝が作製される人工芝が記載されている。これらの文献のいずれにも、HMAを用いてキャリヤー層を装着可能であるという提案は、存在しない。そのような人工競技場表面が受ける強い摩耗および引裂きを考えると、当業者であれば、支持層にHMAを組み込むことによりこれらの芝表面のいずれを改変することも行わないであろう。
【0026】
したがって、テキスタイル製品の現在の製造方法およびそれにより作製される製品は、本明細書に記載の種々の欠点を有することが分かる。たとえば、現在の製造技術では、非常に高い機械的負荷に容易には耐えられず使用時に製品からヤーンが引き裂かれるリスクが高い、最適な機械的性質を有していない、および/または完全に再生することが困難である、テキスタイル製品が製造される。好ましくは、ヤーンが強固に固着されて最適な機械的性質を有する再生可能なテキスタイル製品を有することが望ましいであろう。
【0027】
また、ホットメルト接着剤(HMA)は、カーペットに使用するうえで特定の欠点を有すると考えられたことも分かる。凝固温度未満では、HMAは、通常、脆性であり、機械的衝撃下で引き裂かれたりまたは破壊されたりする傾向があるため、結果的に、第1の(ヤーン担持)材料は、キャリヤー材料から剥離される。テキスタイル中の異なる材料は、環境に対して異なる応答を示すため(たとえば、熱または湿分への暴露時に異なる膨張を示す)、これによっても、HMAにさらなる応力が誘導されてキャリヤー材料の剥離を生じる可能性がある。したがって、HMAが十分な結合を提供するように、テキスタイル製品内に十分に含浸させることによりこの問題を克服して良好なタフト接着を提供しなければならないと考えられてきた。その場合、その構成成分の分離が困難であったため、そのような含浸構造は、リサイクルが困難であった。したがって、HMAは、得られる製品が容易にリサイクル可能であったとしてもそれほど耐久性がないか、または十分に耐久性であったとしてもリサイクルが困難であるか、のいずれかであると考えられたため、テキスタイル床の接着剤の代替品として広範に使用されてこなかった。
【0028】
したがって、高負荷下でヤーンに対して十分に強固で耐久性のあるアンカーを提供するとともに、さらに製品の容易なリサイクルを可能にするホットメルト接着剤を用いて、テキスタイル製品を作製可能であることは、驚くべきことである。
【0029】
本発明の目的は、たとえば、先行技術の方法およびテキスタイル製品の欠点の一部または全部を軽減することにより、本明細書に明記された問題の一部または全部を解決することである。
【0030】
したがって、広義には、本発明に従ってテキスタイル製品の製造方法が提供される。本方法は、以下の工程、すなわち、
a)固定されたヤーンを有する第1の製品(たとえば、第1のシート)を提供する工程であって、第1の製品(たとえば、第1のシート)が第1の表面(たとえば、フロント表面)と第2の表面(たとえば、バック表面)とを有し、かつヤーンが第1の製品の第1の表面から延在する、工程と、
b)第1の製品の第2の表面を加熱することにより、第1の製品に固定されたヤーンを少なくとも部分的に溶融してヤーンを第1の製品に結合する工程と、
c)第1の製品の第2の表面を圧力に暴露する工程と、
d)任意選択で、第1の製品の表面に平行な方向に、ヤーンの溶融部分に機械力を付与する工程と、
e)第1の製品の第2の表面にホットメルト接着剤を適用する工程と、
f)任意選択で、第1の製品の第2の表面に寸法安定性の第2の製品(たとえば、第2のシート)を適用する工程と、
を含み、
ただし、任意選択の工程(f)(第2の製品を適用する工程)が不在の場合、工程(d)(第1の製品の表面に平行な方向に、ヤーンの溶融部分に機械力を適用する工程)は任意選択ではないことを条件とする。
【0031】
本発明に係る方法は、固着されたヤーンを有するテキスタイル製品を提供する。
【0032】
第1の製品は、シートの形態(本明細書に定義されるとおり)であり、かつ第2の製品もまた、シートの形態(本明細書に定義されるとおり)であることが好ましい。
【0033】
好ましくは、工程(a)で、ヤーンは、第1のシートに一時的に固定される。第1のシートはまた、本明細書では、ヤーン担持シートとしても参照されうる。第1のシートの第1の表面はまた、たとえば、フロント表面とも記されうるとともに、第1のシートの第2の表面はまた、バック表面とも記されうる。
【0034】
任意選択で、第1のシートのヤーンは、第1のシートの第2の表面(たとえば、バック表面)から追加的に延在しうる。したがって、ヤーンは、第1のシートの第1および第2の表面(たとえば、フロント表面およびバック表面)の両方から延在しうる。
【0035】
好ましくは、本発明によりテキスタイル製品の製造方法が提供される。本方法は、以下の工程、すなわち、
a)固定されたヤーンを有する第1の製品(たとえば、第1のシート)を提供する工程であって、第1の製品(たとえば、第1のシート)が第1の表面(たとえば、フロント表面)と第2の表面(たとえば、バック表面)とを有し、かつヤーンが第1の製品の第1の表面から延在する、工程と、
b)第1の製品の第2の表面を加熱することにより、第1の製品に固定されたヤーンを少なくとも部分的に溶融してヤーンを第1の製品に結合する工程と、
c)第1の製品の第2の表面を圧力に暴露する工程と、
d)好ましくは第1の製品の表面に平行な方向に、ヤーンの溶融部分に機械力を付与する工程と、
e)第1の製品の第2の表面にホットメルト接着剤を適用する工程と、
f)任意選択で、第1の製品の第2の表面に寸法安定性の第2の製品(たとえば、第2のシート)を適用する工程と、
を含む。
【0036】
本発明に係る方法の工程(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)は、以上の順序[すなわち、工程(a)次いで(b)次いで(c)次いで(d)(存在する場合)次いで(e)]で逐次的に行うこと、および/またはこれらの工程の一部もしくは全部を一緒に同時に行うこと(存在する場合、任意選択の工程(d)および(f)もまた、以上の順序でおよび/または同時に行うこと)が好ましい。たとえば、存在する場合、工程(b)、(c)および(d)を同時に行いうる。存在する場合、工程(d)の後、工程(e)を行うことがより好ましい。
【0037】
本発明の一態様では、本発明に係る第1のシートは、先行技術で、多くの場合、一次層(一次バッキングおよび/または一次マットとしても知られる)として参照されるものと均等であってもよく(またはそれを含んでいてもよく)、かつ/または本発明に係る第2のシートは、先行技術で、多くの場合、二次層(二次バッキング、キャリヤー材料、および/または支持層としても知られる)として参照されるものと均等であってもよい(またはそれを含んでいてもよい)。しかしながら、先行技術で用いられる「一次層」および「二次層」などの用語はまた、本発明を説明するために本明細書で用いられる「第1のシート」および「第2のシート」という用語とは異なる独立した意味を有することもある。したがって、一次層および第1のシートという用語ならびに二次層および第2のシートという用語は、必ずしも先行技術のテキスタイル製品に記載の類似の特徴に対応するとはかぎらない。
【0038】
有用には、テキスタイル製品は、機械を通り抜ける1つ以上のシート(たとえば、ロールから供給される連続ウェブを含めて)から製造される。従来的には、長手方向(LD)は、シートが機械を通り抜ける方向(機械方向またはMDとしても知られる)であり、かつ横方向(TD)(接線方向としても知られる)は、シートの平面内のMDに垂直である。したがって、工程(d)では、ヤーンの溶融部分に加わる機械力は、長手方向および/または横方向、好ましくは長手方向に適用されることが好ましい。機械力は、任意の好適な方法またはデバイス(たとえば、当業者に公知の任意のもの)により適用されうるとともに、たとえば、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載の方法により、ステンターにより、延伸ロールにより、および/またはそれらの任意の組合せにより、2つの互いに垂直な方向(たとえば、MDおよび/またはTD)のそれぞれで同時におよび/または逐次的に適用されうる。
【0039】
工程(d)では、ホットメルトグルーを適用するための良好なベースとして作用するように、溶融ヤーンが展延された第1のシートの第2の表面(たとえば、バック表面)の部分に平滑表面を提供して、たとえば、第1のシートに第2のシートを装着するのに十分な程度に、第1のシートの第2の表面(たとえば、バック表面)を横切って(好ましくはMD方向に)ヤーンの溶融部分を展延させうる。したがって、好ましくは、工程(d)は、第1のシートの第2の表面(たとえば、バック表面)の少なくとも一部をカレンダー処理(平滑化)するように作用する。
【0040】
したがって、本発明に係る方法の一実施形態では、第1のシートの第2の表面(たとえば、バック表面)は、全体的または部分的にカレンダー処理され、かつ接着剤は、第1のシートのカレンダー処理された第2の表面(たとえば、バック表面)に溶融接着剤を適用することにより提供され、かつ第1のシートのカレンダー処理された第2の表面(たとえば、バック表面)は、接着剤が適用される時、ホットメルト接着剤の融解温度超の温度を有する。
【0041】
本発明に係る方法の他の実施形態では、工程(a)から中間製品が取得され、製品は、ヤーンが依然として強固にシートに結合されていない(すなわち、一時的に装着される)一次バッキングシートである。本発明に係る方法のさらなる実施形態では(任意選択で、前の実施形態の好ましい特徴として)、工程(b)および/または工程(e)の製品として一次マットシートが取得され、一次マットシートでは、ヤーンは、ヤーンタフトが一次マットシートの第1の表面(たとえば、フロント表面)から突出するように、それぞれ熱処理によりおよび/または任意選択で接着剤によりシートに強固に結合される(すなわち、永久的に装着される)。
【0042】
工程(f)が存在する場合、工程(d)は、工程(b)および(c)と実質的に同時にまたはその直後に行われることが好ましく、より好ましくは、工程(e)および(f)の前に行われる。
【0043】
本発明のさらなる態様では、本発明に係る方法により取得されるおよび/または取得可能なテキスタイル製品が提供される。
【0044】
本発明のさらに他の態様によれば、
I)第1のシートであって、
(i)第1のシートが第1の表面と第2の表面とを有し、かつヤーンが第1のシートの第1の表面から延在する状態で、第1のファスナーにより、および
(ii)ヤーンが、任意選択で、ただし、好ましくは、熱および/または圧力により、第1のシートにおよび/または互いに少なくとも部分的に融合された状態で、第2のファスナーにより、
(iii)実質的に第1のシートの第2の表面上に位置するホットメルト接着剤(HMA)を含む第3のファスナーにより、
固定されたヤーンを有する、第1のシートと、
II)任意選択で、ホットメルト接着剤により任意選択で装着された第1のシートの第2の表面に装着された寸法安定性の第2のシートと、
を含み、
ただし、第2のシートが不在の場合、
(A)HMA(成分(a)(iii))が、非埋込みHMAを含むこと、好ましくは、実質的にそれからなること、および
(B)第2のファスナー(成分(I)(ii))で、ヤーンが、第1のシートの表面に平行な方向に、ヤーンの溶融部分に付与された機械力により第1のシートにおよび/または互いに少なくとも部分的に融合されていること、
を条件とする、テキスタイル製品が提供される。
【0045】
好ましいテキスタイル製品は、実質的に再生可能である(たとえば、リサイクル可能である)。
【0046】
本発明の他の実施形態では、工程(I)(i)の製品は、ヤーンがシートに一時的に装着されている一次バッキングシートである。
【0047】
本発明のさらに他の実施形態では、工程(I)(ii)および/または工程(I)(iii)の製品は、ヤーンがそれぞれ熱処理および/または接着剤により、好ましくは両方によりシートに永久的に装着されている一次マットシートである。
【0048】
本出願人は、驚くべきことに、本発明に係るポリエステルカーペット(すなわち、ポリエステル成分のみからなるカーペット)をリサイクルしてペレットなどのポリエステル材料を生成する場合、得られるポリエステル材料が、驚くべきことに、材料をリサイクルにとくに好適なものにする有利な性質を有することを見いだした。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、リサイクルポリエステル材料中にホットメルト接着剤ポリエステルが存在すると粘度が低減されうるため、リサイクル製品の製造に使用した場合、ポリエステルの溶融に役立つと考えられる。この回収ポリエステルは、たとえば、PETボトルからポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルすることなどにより、他の従来の供給源から取得される回収ポリエステルよりも、優れた改良点を有する。
【0049】
したがって、本発明のさらに他の実施形態は、ポリエステル繊維とポリエステルホットメルト接着剤とを含むテキスタイル製品(ポリエステルHMAテキスタイル製品)からポリエステル材料を回収する方法を含む。本方法は、以下の工程、すなわち、
a)ポリエステルHMAテキスタイル製品を加熱してポリエステルを溶融および/または軟化させる工程と、
b)工程a)のポリエステルを押し出して押出し物を形成する工程と、
c)工程の押出し物を細断して回収ポリエステル材料を形成する工程と、
を含む。
【0050】
好ましくは、工程c)では、リサイクルポリエステル材料は、500マイクロメートル(μm)~10mmの平均最大線寸法を有するペレットを形成する。
【0051】
好ましくは、本発明に係る回収方法の工程(a)で使用されるポリエステルHMAテキスタイル製品は、本発明に係るテキスタイル製品である。回収方法に使用するためのより好ましいポリエステルHMAテキスタイル製品は、片面に融合一体化されたポリエステル繊維と、ポリエステルホットメルトグルーと、任意選択で少なくとも1つのポリエステル支持層と、を含む。本発明に係る回収方法に使用するためのさらにより好ましいテキスタイル製品は、非ポリエステル成分を実質的に含まないもの、最も好ましくは、ポリエステルからなるものである。
【0052】
任意選択で、本発明に係る回収ポリエステル材料は、ポリエステルテキスタイル製品(たとえば、本発明に係るテキスタイル製品)および/またはテキスタイル製品のポリエステル成分(たとえば、ポリエステル繊維、ポリエステル支持層、および/またはポリエステルホットメルト接着剤)を作製するために使用可能である。
【0053】
一般的には、本発明に係る回収ポリエステルは、不純物の存在に起因して、強い着色、さらには黒色であろう。多くの用途(たとえば、カーペット支持層)では、このことは問題ではなく、回収ポリエステルは直接使用されうる。しかしながら、無色または弱着色の材料が好ましいいくつかの用途では(たとえば、任意選択で着色されうるポリエステルカーペット繊維の場合)、脱色されたポリエステル材料を取得するために、脱色(たとえば、酸化剤または漂白剤の使用による)のさらなる工程d)を本発明に係る回収方法に追加しうる。
【0054】
また、回収ポリエステルは、PETの製造などのポリエステルの他の用途で、たとえば、ボトルに使用するためにおよび/またはダイヤパーを製造する成分として、使用されうる。
【0055】
便利には、本発明に係るテキスタイル製品は、多層または単層(たとえば、工程(f)(第2のシートを適用する工程)が不在の場合、本発明に係る方法により作製される)でありうる。
【0056】
本発明に係る好ましいテキスタイル製品は、スチレンブロックコポリマーおよび/またはゴム系接着剤(たとえば、SBRまたはSBS)を実質的に含まず(より好ましくは、含まず)、本発明に係る最も好ましいテキスタイル製品は、いずれの架橋性のポリマーラテックスも、たとえば、いずれの架橋されたポリマーラテックスも含まない。
【0057】
便利には、本発明に係るテキスタイル製品は、HMAが実質的に含浸されていない第1のシートおよび/または第2のシート(すなわち、第1のシートおよび/または第2のシート(存在する場合)は、埋込みHMAを実質的に含まない(より便利には、含まない))以外のものを含む。
【0058】
有用には、本発明に係るテキスタイル製品は、化学反応性接着剤を実質的に含まない(より有用には、含まない)。
【0059】
「埋込み」という用語は、テキスタイル製品の作製に使用される成分材料との関連で(たとえば、HMAとの関連で)本明細書で用いられる場合、特定の材料(たとえば、HMA)が、第1および/または第2のシートおよび/またはヤーン繊維の構造内に実質的に含浸されていること、たとえば、シート内およびヤーン内の間隙および/または空隙に位置することを意味する。したがって、非埋込み材料(たとえば、非埋込みHMA)とは、重量基準でその材料(たとえば、HMA)の全量の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、最も好ましくは1%未満が、以上に記載のシート内およびヤーン内に埋め込まれてテキスタイル製品中に存在する、広範には含浸されていない材料を意味する。したがって、いかなる理論にも拘束されるものではないが、非埋込みHMAは、たとえば、一方もしくは両方のシートの表面に実質的に連続した接着剤フィルムを形成し、かつ/またはそれらの間に個別の層を形成すると考えられる。埋込み材料(たとえば、埋込みHMA)の存在または不在は、任意の好適な方法により(たとえば、テキスタイル製品を貫通して行われる断面の顕微鏡観察などの目視検査により)、容易に決定可能である。
【0060】
便利には、本明細書に記載の第1のシートは、ウェブでありうる。その場合、製造プロセスは、連続的でありうる。たとえば、第1のヤーン担持シートのロールを用いてテキスタイル製品のウェブを形成し、次いで、ロールに巻き取りうる。他の選択肢として、シートをあらかじめ定義された長さに切断しうる。その場合、製造プロセスは、所望のサイズのテキスタイル製品の多くの(任意選択でフラットな)シートを製造するバッチプロセスでありうる。
【0061】
工程(a)では、ヤーンは、任意選択で、一時的に装着されうる。このことは、ヤーンが、テキスタイル製品(たとえば、床カバー)の所望の最終用途で使用するのに十分な程度には結合されないことを意味するため、少なくとも理論上は、ヤーンおよび第1のシートは、容易に分離された状態になりうる。
【0062】
一時的な好ましい装着方法は、機械的な装着方法、より好ましくは、織り合わせるような方法によりヤーンを第1のシートに連結する任意の方法であり、さらにより好ましい方法は、植設、編成、縫付け、織成、および/または縫合から選択され、最も好ましくは、縫合糸を用いてヤーンを固定または連結する縫合である。機械的な装着方法は、ヤーンを所定の位置に維持する他のより永久的かつ不可逆的な方法、たとえば、グルー接合、溶融、および/または化学反応を除外する。
【0063】
本明細書で用いられるファスナーという用語(たとえば、本発明に係るテキスタイル製品を記述するためのもの)は、永久的または一時的であってもなくてもよい任意の好適な装着方法を意味し、機械的方法、化学的方法、接着剤による方法、および/もしくは任意の他の好適な方法、ならびに/またはそれらの任意の組合せ、たとえば、当業者に公知の任意の好適な方法を含みうる。
【0064】
工程(b)の加熱方法は、任意の好適な方法さらには熱的加熱(たとえば、加熱ローラーによるもの)、たとえば、好適な電磁線および/または微粒子線の照射による加熱、たとえば、超音波および/または赤外線を用いた加熱を含みうる。加熱および圧力は、同一の方法および/またはデバイス(たとえば、任意選択で加熱されたピンチローラーまたはニップローラー)により提供されうる。加熱はまた、ヒーターなどの個別の熱入力を用いることなく、圧力および/または照射のみにより提供されうる。本発明の一実施形態では、個別の熱ヒーターの不在は、本発明に係る方法で使用される機械の有意な省エネルギーおよびコンパクト性という利点を有する。
【0065】
本発明の他の実施形態では、工程(b)での加熱は、好ましくは、熱表面(たとえば、加熱ローラー)を用いて達成され、他の選択肢としてまたは追加として、加熱はまた、ヤーンと第1のシートとの間に機械力を適用してヤーンの展延および結合の増強を行うことにより、全体的または部分的に達成される。工程(b)では、任意選択で、シートは、前記機械力を付与する加熱表面とは異なる速度で加熱表面上に供給されうる。ヒーターが加熱ローラーを含む本発明の好ましい実施形態では、たとえば、国際公開第20012-076348号パンフレットに記載されるように、圧力は、加熱ローラーに対するものとは異なる速度で作動される加圧ローラーにより、全体的または部分的に加えられうる。
【0066】
工程(c)では、圧力は、加圧ローラーにより全体的または部分的に加えられ、かつ任意選択で、工程(b)および(c)は、同時に行われうる。好ましくは、加熱および圧力は、第1のシートをカレンダー処理しうる同一のローラーにより適用される。
【0067】
本発明に係る第1のシート(本明細書のいくつかの実施形態では、一次マットシートでありうる)は、加熱プロセスb)によりそれに固定されたヤーン/タフトを有し、かつ本明細書に記載の従来のテキスタイル製品の一次層に類似した機能を発揮する。しかしながら、一実施形態では、本発明に係るテキスタイル製品は、第1のシートを支持する第2の層を必要としないでも十分に寸法安定性である。
【0068】
それにもかかわらず、本発明のさらなる任意選択の実施形態では、依然として、工程(b)および/または(c)および/または(d)の後、任意選択の工程(f)で、寸法安定性の第2のシート(キャリヤーシート、二次バッキング、または支持シートとしても知られる)が第1のシートのバック表面に適用されうる。その場合、工程(e)で、ホットメルト接着剤(HMA)が第1および第2のシート間に適用されうるとともに、これをプレス一体化してラミネートテキスタイル製品を形成しうる。好ましくは、工程(e)のHMAは、第1および第2のシートをグルー接合で一体化するために使用される唯一の接着剤であり、さらなる接着剤は必要とされない。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、フロント表面とバック表面とを有するバッキングと、バッキング中に縫合されたヤーンと、を含む第1の中間製品を提供することであって、ヤーンがバッキング材料のフロント表面から延在する、提供することと、加熱表面を有する物体に沿って、バック表面を前記加熱表面にプレスした状態で、中間製品を供給することにより、中間製品中に存在するヤーンを少なくとも部分的に溶融してヤーンをバッキングに結合することであって、加熱表面にプレスされるバック表面の部分が、加熱表面に対して、カレンダー処理されたバック表面(すなわち、少なくともヤーンが溶融された部位であり、バッキング自体のバック表面材料が、必ずしもカレンダー処理されるとはかぎらない)を有する第2の中間製品を提供するような相対速度を有する、結合することと、寸法安定性キャリヤーシートを提供することと、カレンダー処理された表面とシートとの間にホットメルト接着剤を提供することにより、第2の中間製品をキャリヤーシートに接合することと、シートを第2の中間製品にプレスしてテキスタイル製品を形成することと、を含む、ラミネートテキスタイル製品の製造方法が提供される。
【0070】
本発明に係るテキスタイル製品は、ラテックスポリマーを実質的に含まない(好ましくは、含まない)ことが好ましい。本明細書で用いられる場合、ラテックスポリマーとは、水性相に分散されたポリマーからなる任意のポリマーを意味する。接着剤として使用可能な典型的なラテックスポリマーとしては、感圧接着剤(PSA)を作製するために使用されることの多いアクリルエマルジョン、スチレンブロックコポリマー、および/またはゴム系接着剤、たとえば、スチレンブタジエンゴムポリマー(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)などが挙げられる。ラテックスポリマーは、ヤーンを一次層に固着するためにおよび/または寸法安定性を改良するために、先行技術で使用されてきたが、以上に記載した欠点を有するため、本発明に係るテキスタイル製品の作製にはもはや必要ではない。したがって、本発明に係るテキスタイル製品は、いかなる残留スチレンも含有しないで済むというさらなる任意選択の利点を有する。したがって、好ましくは、本発明に係るテキスタイル製品は、実質的に、より好ましくは完全にリサイクル可能である。
【0071】
ラテックスポリマーの不在はまた、テキスタイル製品中の揮発性成分の量を低減しうるため、環境上の利点および他の利点を有する。したがって、さらなる実施形態では、有用には、本発明に係るテキスタイル製品は、低いVOC含有率を有し、より有用には、VOCを実質的に含まない。
【0072】
本明細書で用いられる場合、VOCとは、標準条件下で高い蒸気圧を有する揮発性有機化合物(VOC)、好ましくは、50~250℃の沸点を有する化合物を意味する。本明細書で用いられる「低VOC」という用語は、液体組成物または樹脂に存在するVOCの量が100g/l未満、好ましくは<50g/l(固体材料に関するかぎり、/kgと同一の値)であることを意味する。
【0073】
本発明に係る方法により作製される本発明の他の実施形態は、ヤーンを有するバッキングを含む実質的に完全にリサイクル可能な(好ましくは、完全にリサイクル可能な)テキスタイル製品に関する。ヤーンは、バッキング内に適用され、かつヤーンの溶融によりバッキングに固定される(テキスタイル製品の上側表面を形成する)。ヤーンは、ホットメルト接着剤をバッキングの裏面に適用することによりバッキングにさらに固定され(さらなるシートをなんら用いない)、非ラミネート寸法安定性テキスタイル製品を形成する。
【0074】
本発明に係る方法により作製される本発明のさらに他の実施形態は、ヤーンを有するバッキングを含む実質的に完全にリサイクル可能な(好ましくは、完全にリサイクル可能な)ラミネートテキスタイル製品に関する。ヤーンは、バッキング内に適用され、かつヤーンの溶融によりバッキングに固定される(テキスタイル製品の上側表面を形成する)。バッキングは、ホットメルト接着剤を用いて寸法安定性キャリヤーシートにラミネートされ、ラミネート寸法安定性テキスタイル製品を形成する。
【0075】
広義には、本発明の他の態様は、本発明に係る方法により取得されるおよび/または取得可能なテキスタイル製品、好ましくは、テキスタイル床カバー、より好ましくは、カーペット、カーペットタイル、ラグ、および/またはマットから選択されるもの、最も好ましくは、カーペット、たとえば、不織タフトカーペットを提供する。任意選択で、本発明に係るテキスタイル製品は、ラミネートされてないものでありうるか(たとえば、第1のシートおよび/または一次マットシートが、ヤーンおよび/またはタフトを結合して有する単一バッキングシートであり、かつ第2の支持シートが存在しない場合)、またはラミネートされたのでありうる(たとえば、第1のシートおよび/または一次マットシートが、タフトおよび/またはヤーンを結合して有する一次バッキングシートを含み、かつ少なくとも1つの支持シートが、たとえば、接着剤により、それに結合される場合)。
【0076】
本発明に係る好ましいテキスタイル製品は、いずれの化学架橋(たとえば、加硫)ラテックス接着剤も実質的に含まない(より好ましくは、完全に含まない)。
【0077】
本発明に係る有用なテキスタイル製品は、従来のリサイクル方法により、実質的に再生可能であり、より有用にはリサイクル可能であり、最も有用には完全にリサイクル可能である。
【0078】
本発明のさらに他の態様は、本発明に係る(任意選択で非ラミネートの)テキスタイル製品のリサイクル方法を提供する。本方法は、以下の工程、すなわち、
a)使用済みの本発明に係る(任意選択で非ラミネートの)テキスタイル製品を提供する工程と、
b)テキスタイル製品の構成ポリマーの融解温度超の温度まで製品を加熱する工程と、
c)得られたポリマー溶融物を再使用する工程と、
を含む。
【0079】
本発明のさらなる他の態様は、本発明に係るラミネートテキスタイル製品のリサイクル方法を提供する。本方法は、以下の工程、すなわち、
a)使用済みの本発明に係るラミネートテキスタイル製品を提供する工程と、
b)ホットメルト接着剤の軟化温度超ただしテキスタイル製品の第1のシート(一次バッキングシート)および任意選択の第2のシート(二次キャリヤーシート)の構成ポリマーの融解温度未満の温度まで製品を加熱する工程と、
c)任意選択で、第2のシートが存在する場合、第2のシート(二次キャリヤーシート)から第1のシート(一次バッキングシート)の接合を解除して個別に再生される各シートを収集する工程と、
を含む。
【0080】
本発明の範囲をなんら限定するものと考えるべきではない本明細書に記載のいかなる理論や推測にも拘束されることを望むものではないが、本出願人は、本発明で観測された効果のいくつかの可能な説明を以下に提供する。
【0081】
ホットメルト接着剤をそのまま用いたのでは、そのような接着剤の性質が通常は脆性であることから判断して、良好な機械的性質が形成されないと、これまで考えられてきた。驚くべきことに、本出願人は、ヤーンを縫合して有する一次バッキングに繊維結合プロセスが施される時(たとえば、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載されている)、ホットメルト接着剤を用いて一次シートをキャリヤーシートに接合すると、非常に強固で機械的耐久性のある結合が形成されうることを見いだした。さらに驚くべきことに、本出願人は、反応性接着剤(国際公開第2012/076348号パンフレットの好ましい接着剤)を用いるよりもさらに強固にヤーンが一次バッキングに結合されるようであることを見いだした。ホットメルト接着剤は、共有結合を用いて接着する反応性接着剤と比較して、一般的には、比較的弱い結合(ファンデルワールス力または水素結合に基づく)を生成すると、これまで考えられてきたため、このことは、予想外なことである。
【0082】
ホットメルト接着剤、とくに本明細書に記載のHMA(および任意選択で安定なキャリヤーシート)が存在すると、そのままでも、本発明に係るテキスタイル製品の機械的安定性を向上させるように作用しうるため、良好な機械的安定性を付与するために接着剤ラテックスの必要性はなく、さらにはヤーンが十分に固着されると、本出願人は考えている。したがって、ラテックス接着剤をなんら用いることなく、本発明に係るテキスタイル製品は、より容易に構成成分に分離され、容易にリサイクル可能である。
【0083】
機械的衝撃に対するホットメルト接着剤の改良された耐性(凝固されたホットメルト接着剤の脆性の問題はない)はまた、接着剤層のサイズに関連付けられうる。たとえば、熱および圧力で処理(カレンダー処理)された一次表面に適用した場合、より薄く適用することが可能である。薄い層は、明らかに、より可撓性でありうるとともに、脆性に関連付けられる問題を最小限に抑えうる。しかしながら、この説明は、正しくない可能性もあり、観測された効果の詳細な理由は、いまだ不明である。
【0084】
HMAが本発明に係るテキスタイル製品で反応性接着剤よりも良好な性能を発揮することは、驚くべきことである。本発明でホットメルト接着剤が反応性接着剤よりも強固な結合を提供する理由について、本出願人は、いかなる理論にも拘束されることを望むものではない。それにもかかわらず、HMAは、反応性接着剤よりも容易に繊維に浸透および含浸しうるとともに、HMAは、反応性グルーの共反応性成分が共有結合を形成するために必要とされる分子スケールでの一次マットシート材料との非常に近い接触を行う必要がないことが、1つの理由であろう。国際公開第2012/076348号パンフレットに記載の繊維結合プロセスは、完全に平滑な表面を生成すると考えられたが、HMAの驚くべき性能のより詳細な説明は、本出願人の観測によれば、実際には、このプロセスが、依然として、固有の不連続部をバッキング材料のバック表面に残すことでありうる。この仮説が正しければ、ヤーンが不連続領域に適用された時(典型的には、タフトヤーンのレーンにより示されうる)、ヤーンの溶融に伴って、ヤーン材料とバック表面との間に急激な相変化が発生しうるため(典型的に見られるゼブラストライプパターンの説明にもなろう)、共反応性材料間の距離が拡大し、それらの反応が妨害されるであろう。そのような急激な相変化の境界はまた、テキスタイル製品が機械的負荷下にある場合(とくにテキスタイルが変形される場合)、機械的張力が増加しうる。ホットメルト接着剤がバック表面に適用された場合、他の接着剤タイプ(たとえば、化学反応を起こすために分子レベルでの直接接触が必要とされる反応性接着剤)よりも良好に急激な相変化の領域を浸透すると考えられる。したがって、HMAの使用により、より大きい面積にわたり機械力を広げうるとともに、これらの領域で受ける局所張力を低減しうるため、HMAが機械的負荷に対して改良された耐性を付与すること(すなわち、強固な結合を形成すること)を説明しうる。
【0085】
以下の図面により本発明を例示するが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、リサイクル可能でない先行技術のラテックス系カーペットを貫通する断面図を示している。
図2図2は、不十分なタフト固着を有する先行技術のリサイクル可能なカーペットの断面図を示している。
図3図3は、本発明の一実施形態のラミネートカーペットの断面図を示している。
図4図4は、本発明の他の実施形態の非ラミネートカーペットの断面図を示している。
図5図5は、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載のプロセスに準拠した繊維結合プロセスを適用するための構成を概略的に示している。
図6図6は、第2のシート、この場合、寸法安定性ポリエステルシートを、図5との関連で記載された方法を用いて作製された100%ポリエステルの製品のバック面に、適用するための構成を概略的に示している。
【0087】
典型的な先行技術の非リサイクル可能なラテックス系カーペットが、図1に示されている。カーペット(1)は、ポリプロピレン(PP)などの材料から作製された一次バッキング(3)を有する。一次バッキングは、孔(5)を内有し、これを介して、タフト(7)が取り付けられ、フロント表面(9)をから突出する。タフトは、架橋ラテックス接着剤(11)により一次バッキングにグルー接合され、タフトマット(13)を形成する。PVCやPETなどの材料から作製された二次支持キャリヤー(15)は、ラテックス接着剤でありうるかまたは固体熱可塑性グルーでありうる追加の接着剤層(19)を用いてタフトマットのバック面(17)にグルー接合される。
【0088】
タフト(7)は、カーペット(1)全体にわたるラテックス接着剤(11、19)の浸透によりマット(13)に強固に固定されるが、これはまた、不適合性ラテックス(11、19)をカーペットのバッキング成分、タフト成分、およびキャリヤー成分(3、7、15)から分離できないため、カーペットのリサイクルを不可能にする。
【0089】
ホットメルト接着剤(HMA)を用いて作製されたリサイクル可能な先行技術カーペットが、図2に示されている。カーペット(101)は、ポリエステル(PE)などのHMA適合性材料から作製された一次バッキング(103)を有する。一次バッキングはまた、孔(105)を内有し、これを介して、突出タフト(107)がフロント表面(109)に取り付けられる。タフトは、ポリエステルホットメルトグルーなどのHMA(111)により一次バッキングにグルー接合され、タフトマット(113)を形成する。ポリエステルなどの熱可塑性材料から作製された二次支持キャリヤー(115)は、HMA層(119)を用いてタフトマットのバック面(117)にグルー接合される。
【0090】
バッキング成分、タフト成分、およびキャリヤー成分(103、107、115)はすべて、カーペットをリサイクルできるように、ポリエステルなどの適合性熱可塑性材料から作製される。しかしながら、HMA接着剤(111,119)の浸透が不十分なため、タフト(107)は、マット(103)に弱く固定され、脆性の弱い結合を形成する。
【0091】
本発明に係るリサイクル可能なラミネートカーペットが、図3に示されている。カーペット(201)は、ポリアミドやポリエステルなどの材料から作製された一次バッキング(203)を有する。一次バッキングは、孔(205)を内有し、これを介してタフト(207)が取り付けられ、フロント表面(209)から突出する。タフト(207)は、一次バッキング(203)との適合性があるPAやPETなどの材料から作製される。タフト(207)は、繊維結合プロセス(すなわち、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載されるようにヤーンを溶融するもの)により一次バッキング(203)に装着され、接着剤をなんら用いることなく一次マットシートとしてタフトマット(213)を形成する。PETなどの材料から作製された二次支持キャリヤー(215)は、ポリエステルホットグルー(219)などのHMAを用いてタフトマットのバック面(217)にグルー接合される。
【0092】
この実施形態では、全カーペット(201)をリサイクルできるように、一次バッキング成分、タフト成分、および二次バッキング成分(203、207、215)はすべて、ポリエステルなどの適合性熱可塑性材料から作製される。タフト(207)は、繊維結合プロセス(ヤーンをバッキングへの融着するもの)とHMAの単層(219)との組合せ使用によりマット(203)に強固に結合される。この実施形態では、オールポリエステルカーペットを有するため、材料は適合性であるが、類似の代替実施形態では(図2には示されていないが、類似の構成である)、ポリアミドタフト(たとえば、ナイロン6)およびポリアミド一次バッキング(たとえば、ナイロン6)とポリエステル系二次バッキング(たとえば、PET)などの不適合性材料を含みうることは、分かるであろう。ポリエステル部分およびポリアミド部分は、適合性である必要はない(一般的には、適合性ではないであろう)。その実施形態では、HMAが可逆である場合(たとえば、加熱により)、ナイロンのヤーンおよびナイロンの第1のシートは、PET支持層から接合を解除することが可能であるため、ナイロン部分およびPET部分は、個別にリサイクル可能でありうる。
【0093】
本発明に係るリサイクル可能な非ラミネートカーペットが、図4に示されている。カーペット(301)は、ポリアミドやポリエステルなどの材料から作製された一次バッキング(303)を有する。一次バッキングは、孔(305)を内有し、これを介して、タフト(307)が取り付けられ、フロント表面(309)から突出する。タフト(307)は、一次バッキング(303)との適合性があるPAやPETなどの材料から作製される。したがって、この実施形態では、タフトがポリアミドである場合、一次バッキングもまた、ポリアミド系であり、タフトがポリエステルタフトである場合、一次バッキングはポリエステル系である。タフト(307)は、繊維結合プロセス(すなわち、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載されるようにヤーンを溶融するもの)により一次バッキング(303)に装着され、かつポリエステルホットメルトグルーなどのHMA(311)により一次バッキングに追加的にグルー接合され、完全単層の非ラミネートタフトカーペット(301)を形成する。
【0094】
この実施形態では、一次バッキング成分およびタフト成分(303、307)がすべて、適合性熱可塑性ポリエステルから作製される場合、全カーペット(301)をリサイクルすることが可能である。タフト(307)は、繊維結合プロセス(ヤーンをバッキングに融着するもの)とポリエステルHMA(311)との組合せ使用によりカーペット(301)に強固に結合され、カーペットは、単一バッキング層(303)から形成される。この実施形態では、非ラミネートカーペット(301)に寸法安定性を提供するために、さらなるキャリヤー層や支持層は必要とされない。しかしながら、一実施形態では、タフトおよび一次層が両方ともポリアミド(たとえば、ナイロン6)である場合、最終テキスタイル製品に十分な寸法安定性を付与するために、一般的には、二次バッキング(好ましくはPETのもの)が追加的に必要になろう。
【0095】
図5は、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載のプロセスに準拠した繊維結合プロセスを適用するための構成を概略的に示している。図5に示される構成では、それぞれ加熱ブレード505および506として示される発熱素子を加熱するために、第1の加熱ブロック500および第2の加熱ブロック501が存在する。これらの発熱素子は、それぞれ、作用表面515および516を有し、この表面は、処理される製品に、典型的には、縫合プロセスを介してヤーンが適用される一次キャリヤーに、接触される。作用表面は両方とも、18mmの作用幅および26mmの中間距離を有する。製品のバック表面は、発熱素子の作用表面に接触した状態にされる。処理される製品に適正な圧力を加えるために、発熱素子に適用される押圧力の影響を打ち消すべく使用されるテフロン(Teflon、「テフロン」は登録商標)支持体520が存在する。操作時、発熱素子は、製品に対して指示方向に移動される。典型的には、発熱素子は静止状態であり、製品は、Xで表される方向と反対の方向に作用表面とテフロン支持体との間を移動するように押圧される。
【0096】
一実施形態では、以上に記載の構成を用いて処理される製品は、Lutradur(登録商標)バッキングにタフトされた100%ポリエステルのヤーンのカットパイルを備えた、約280℃の融解温度を有する100%ポリエステルのバッキングであるLutradur(登録商標)E6412という商標名でFreudenberg(独国)から市販されている一次キャリヤーからなる。ヤーンは、約285℃の融解温度を有する。この製品は、製品を予備加熱するために、220℃の第1の発熱素子の温度を用いて処理される。第2の発熱素子は、298℃の温度に維持される。温度を所要のレベルに維持するために、加熱ブロックおよび発熱素子は、それぞれ、絶縁性材料の層510、511、512、および513を備えている。製品は、12mm/秒(0.72メートル/分)の速度で供給され、発熱素子により加えられる圧力は、約1.35ニュートン/平方センチメートルである。この結果、カレンダー処理されたバック表面を有する製品が得られる。すなわち、縫合ヤーンがバック表面から延在する部位は平滑である。
【0097】
図6は、第2のシート、この場合、寸法安定性ポリエステルシートを、図5との関連で記載された方法を用いて作製された100%ポリエステルの製品のバック面に、適用するための構成を概略的に示している。この図では、第1のローラー600が示されており、このローラーには、前記(あらかじめ作製された)ポリエステル製品の2メートル幅のウェブが巻き取られている。製品は、バック面217が第2のローラー601に接触するように、ローラー600から巻き出される。このローラーは、ホットメルト接着剤の層219をバック面217に適用するように提供される。このために、バルク量のHMA219が存在し、ローラー601と602との間で加熱される。この層の厚さは、これらの2つのローラー間のギャップを調整することにより調整可能である。HMAの適用部位の下流には、第2のキャリヤーシート215であり、このシートは、ローラー603から巻き出される。このシートは、ホットタック接着剤にプレスされ、ユニット700で冷却される。このユニットは、2つのベルト701および702からなり、これらのベルトは、一方では、シート215を一次製品にプレスし、一方では、接着剤をその凝固温度未満に冷却する。得られた最終製品201は、その後、ローラー604に巻き取られる。代替実施形態では、図5との関連で記載された繊維結合プロセスおよびラミネーションプロセスは、インラインで行われる。その場合、図5に示される繊維結合装置は、ローラー600とローラー601との間に配置されうる。
【0098】
一実施形態では、適用されるHMAは、本明細書に記載の実施例6のカーペットの作製に使用されるポリエステルの実施例Dである。HMAが一次バッキングのバック面に適用される部位のローラー601の好適な温度は、140℃である。2mmのギャップをもたせるにより、HMAは、2m/minのウェブ速度、回転しないローラー602、および±1.6m/minの周速度を有するローラー601を用いて、約500g/mの厚さで適用されるであろう。これは、一次バッキングにポリエステルシート215をグルー接合するのに適している。
【0099】
さらに他の実施形態では、ヤーンが一次バッキングを介して延在する場合(たとえば、ループ、ウィーブなどとして、フェース面だけでなくバック表面も貫通して延在する場合)、バック表面から延在するヤーンの少なくとも一部は、溶融される。この実施形態では、一次バッキングのバック表面から延在するヤーンの少なくとも一部(典型的には、多かれ少なかれバッキング表面に平行に移動する繊維の一部)は、溶融される。ヤーンがバック表面から延在する場合、溶融材料が実際に「バック表面」の上に位置するため、溶融がより容易であり、かつカレンダー処理もまた、より容易なプロセスであることを見いだした。他の利点は、ヤーンの融解温度よりもはるかに高い融解温度を有する材料から一次バッキング材料自体を選択しうるため、所望により、バッキング自体は、溶融プロセスの影響をまったく受けない状態を維持することである。また、このことから、繊維結合に使用される高いプロセス温度でより寸法安定性のある一次バッキングを使用しうるという利点が提供される。
【0100】
他の実施形態では、中間体(または繊維結合マット)のカレンダー処理された表面上に溶融接着剤を適用することにより接着剤を提供する場合、中間体のカレンダー処理された表面は、接着剤が適用された時、ホットメルト接着剤の融解温度超の温度を有する。接着剤が適用される場合、繊維結合マットのカレンダー処理された表面がホットメルト接着剤の融解温度超の温度を有する時、機械的負荷に対する耐性がさらに改良された製品を取得可能であることを見いだした。バック表面の温度がホットメルト接着剤の融解温度超であるため、この接着剤は、たとえば、分子スケールで、中間体の材料(ヤーンの材料および/または一次バッキング自体の材料)を浸透してさらにより優れた結果を提供可能であると考えられる。特定的には、第2の中間体が、低い表面張力を有する材料を含む場合(したがって、接着剤などの材料を反撥する固有の傾向を有する場合)、この場合も、依然として、とにかく非常に耐久性のある結合が提供されうる。
【0101】
ホットメルト接着剤は、任意選択で、1mm未満、有用には0.5mm未満、より有用には0.2~0.4mmの厚さを有する層として提供されうる。市場に出回っている先行技術のカーペットでは、ホットメルト層は、典型的には、1mmをかなり上回る厚さを有しているが、この層の厚さを1mm以下に低減しても、依然として、適正な接着を取得可能であることを、本出願人は見いだした。したがって、本発明に係るテキスタイル製品中に存在する接着剤層(たとえば、一次ヤーン担持層とキャリヤー基材との間)は、50ミクロン~1mm、より好ましくは0.1mm~0.8mm、最も好ましくは0.2mm~0.4mmの好ましい平均厚さを有しうる。
【0102】
本発明に係るテキスタイル製品中の接着剤層の形成に使用されるHMAの量(当業者に周知の任意の好適な従来の方法を用いて測定される)は、0.01~1000g/mのHMA/接着剤層面積でありうる。他の実施形態では、HMAは、0.05~800g/mの量で適用されうる。さらに他の実施形態では、HMAは、0.1~600g/mの量で適用されうる。
【0103】
本発明では、テキスタイル製品の実質的に完全なリサイクル性を達成するために、第1のヤーン担持材料(一次バッキング)およびそれに結合されるヤーンは、同程度の融点を有することが好ましい。有用には、ヤーン担持材料およびヤーンは、同一の材料、たとえば、ポリアミド6などのポリアミドまたはポリエステルに由来する。しかしながら、これらの材料が異なる場合、便利には、ヤーン担持材料はヤーンよりも高い融解温度を有する。
【0104】
本明細書で用いられる場合、とくに指定がないかぎり、同程度の融点とは、融点が互いに10℃以内、より好ましくは互いに5℃以内、最も好ましくは実質的に同一であることを意味する。
【0105】
いずれかの任意選択のキャリヤー材料(二次バッキング)が、第1のヤーン担持材料およびヤーンと同一の材料タイプから作製されるとともに、それらと同程度(好ましくは実質的に同一、より好ましくは同一)の融点を有することは、任意選択である(ただし、テキスタイル製品の実質的に完全なリサイクル性を達成するために必要というわけではない)。融点が同程度である場合、かつヤーン担持材料(一次バッキング)、ヤーン、およびキャリヤー材料(二次バッキング)[さらには任意選択でHMA]がすべて、同一のタイプの材料から作製される場合、これらはすべて、任意選択で、同一の方法により一緒にリサイクル可能であり、分離の必要がないこともありうる。それらヤーン担持材料、ヤーン、およびキャリヤー材料は、同一でありうるかまたは異なりうる。キャリヤー材料がヤーン担持材料および/またはヤーンと異なる場合、キャリヤー材料は、ヤーン担持材料およびヤーンの少なくとも一方の融点、より好ましくは両方の融点よりも高い融点を有することが好ましい。好ましいキャリヤー材料の1つは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0106】
しかしながら、キャリヤー材料およびヤーン担持材料(ヤーンを含む)は、適合性の融点を有する必要はない。たとえば、キャリヤーおよびヤーン担持材料が異なるポリマー材料から作製される場合、それらは、異なる融点を有しうる。キャリヤーおよびヤーン担持材料は、可逆ホットメルト接着剤を加熱することにより互いに容易に分離可能であるため、HMAは、本明細書に記載のすべての他の成分の融点未満の融点を有し、かつ分離後、必要であれば、これらの材料を異なる方法によりリサイクル可能であることが好ましい。
【0107】
本発明のとくに好ましい一実施形態では、ヤーン、ヤーン担持材料、およびキャリヤー(存在する場合)がすべて、ポリエステルである場合、それらの融点は、それぞれ、適合性であり、より好ましくは同一である(たとえば、それぞれポリエステルなどの同一のポリマーから形成される場合が当てはまろう)。この実施形態では、HMAは、ヤーン、ヤーン担持材料、およびキャリヤーよりも低い融点を有することが好ましい。より好ましくは、この実施形態では、HMAは、ヤーンと類似のタイプのポリマー(たとえば、ポリエステル)を含みうる。この場合、ヤーンは、材料および/またはキャリヤーである。
【0108】
本発明で使用されるホットメルト接着剤(任意選択で、ポリエステルである)は、好ましくは、ヤーン担持材料、ヤーン、およびキャリヤー材料(存在する場合)のうちの最も低い融解温度よりも低い軟化温度を有する。
【0109】
本発明に係るテキスタイル製品の成分、たとえば、ヤーン、第1のシート(一次バッキングシート)、接着剤、および/または二次バッキングを構成しうる材料に対する選好性については、以下の説明で述べる。たとえば、本発明で使用される好適なホットメルト接着剤は、以下でさらに規定されるように、ポリマーPとして示されるポリマーを含むHMAでありうる。同様に、ヤーン、第1のシート(ヤーン担持シート)、および/または第2のシート(キャリヤーシート)(存在する場合)に好適なポリマーは、それぞれ独立して、以下でさらに規定されるように、ポリマーRとして示されるものに属する1つ以上のポリマーを含む。本発明の一実施形態では、HMAの主成分のポリマーPは、ポリマーRに使用されるポリマーと本質的に同一でありうるが、HMAは、テキスタイル製品の他の成分よりも低い温度で融解することが好ましい(ポリマーPおよびポリマーRが同一である場合、融解温度を低下させるように作用しうる他の成分をHMAに含めることにより、HMAの溶融の低下を達成しうる(すなわち、HMAは、必ずしも純粋なポリマーPであるとはかぎらない)。
【0110】
本発明に係るテキスタイル製品のさらなる実施形態では、一次バッキング、二次バッキング、またはキャリヤーシート、およびホットメルト接着剤は、本質的に同一のタイプのポリマー、たとえば、ポリエステルである。このことにより、摩耗時のテキスタイル製品(摩耗テキスタイル製品としても参照される)を容易にリサイクルする能力が大きく改良される。摩耗製品全体を一工程で単に溶融することにより、一タイプの従来のポリマーの溶融物を生成することが可能である。そのような溶融材料は、たとえば、ポリアミドおよびポリエステルなどの2つのタイプのポリマーの混合物を含む溶融材料よりも新しい用途ではるかに使用しやすい。この実施形態では、HMAは、ヤーン、ヤーン担持材料、およびキャリヤーよりも低い融点を有することが好ましい。
【0111】
本発明に係るリサイクル方法の他の実施形態では、リサイクルされるテキスタイル製品を全体として一緒に加熱することにより、ヤーン、バッキング、支持シート(存在する場合)、およびホットメルト接着剤を含むポリマーを溶融して、再使用可能な一タイプの溶融ポリマーを取得する。
【0112】
[ヤーン]
本発明でヤーン繊維(タフトとしても知られる)を構成すべく使用しうる好適な材料は、当業者に周知のヤーン材料から選択可能であり、たとえば、天然繊維(たとえば、ウール、コットン、および/またはジュート)、合成繊維(たとえば、ポリプロピレン、ポリアミド(たとえば、脂肪族ポリアミド、たとえば、ナイロン、たとえば、ナイロン6またはナイロン6-6)、およびポリエステル、および/またはアクリル)、および/または天然繊維および合成繊維のブレンド(たとえば、ウールブレンド、たとえば、ウール対合成繊維の80対20ブレンド)が挙げられる。
【0113】
しかしながら、好ましいヤーン材料は、本発明に係るプロセスで溶融可能なもの(または少なくともその成分が溶融可能なもの)であるため、ポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレン)、ポリアミド(たとえば、脂肪族ポリアミド、たとえば、ナイロン、たとえば、ナイロン6またはナイロン6-6)、ポリエステル、アクリレート、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含む(より有用には、それらからなる)合成繊維から選択される。
【0114】
より好ましいヤーン材料は、ポリエステルおよび/またはポリアミドを含む。
【0115】
最も好ましいヤーン材料は、ポリエステルおよび/または脂肪族ポリアミド(たとえば、ナイロン)を含む。
【0116】
好適なヤーン材料の例、ナイロン-6および/またはナイロン6-6を含む。
【0117】
ヤーンが含みうる、任意選択で、ヤーンを構成しうる他の好適なポリマーは、本明細書ではポリマーRとして参照される。
【0118】
[第1のシート]
本発明で第1のヤーン担持材料(一次バッキングとしても知られる)を形成すべく使用しうる好適な材料は、ヤーンとして使用すべく以上に明記されたもののいずれか(さらには本明細書でポリマーRとして参照されるポリマーのいずれか)から選択可能である。
【0119】
第1のシートが複数の材料の混合物を含みうるか、または1つの材料からなりうることは、分かるであろう。本発明の一実施形態では、第1のシートは、ヤーンと同一の材料、さらには存在する場合、任意選択で、第2のシートと同一の材料(または混合物の場合、その成分)を(全体またはその一部のいずれかとして)含む。
【0120】
好ましい第1のシート材料は、ポリエステルおよび/またはポリアミドを含む。
【0121】
より好ましい第1のシート材料は、ポリエステルおよび/または脂肪族ポリアミド(たとえば、ナイロン)を含む。
【0122】
最も好ましい第1のシート材料は、ナイロン-6および/またはナイロン6-6を含む。
【0123】
一次バッキング(または第1のシート)を構成しうる追加のまたは代替の好適な材料は、当業者に周知であり、たとえば、ポリオレフィンから選択されうる。
【0124】
[第2のシート]
本発明で任意選択のキャリヤー(二次バッキングまたは支持層または第2のシートとしても知られる)を形成すべく使用しうる好適な材料は、ヤーンおよびまたはヤーン担持材料として使用すべく以上に明記されたもののいずれか(さらには独立して、本明細書でポリマーRとして参照されるポリマーのいずれか)から選択可能である。
【0125】
本発明で第2のシート(支持シートまたはキャリヤーシートとしても知られる)を形成すべく使用しうる好適な材料は、ヤーンまたは第1のシートとして使用すべく以上に明記されたもののいずれかから選択可能である。第2のシートが複数の材料の混合物を含みうるか、または1つの材料からなりうることは、分かるであろう。本発明の一実施形態では、第2のシートは、ヤーンと同一の材料、さらには存在する場合、任意選択で、第1のシートと同一の材料(または混合物の場合、その成分)を(全体またはその一部のいずれかとして)含む。
【0126】
好ましい第2のシート材料は、ポリエステルおよび/またはポリアミドを含む。
【0127】
より好ましい第2のシート材料は、ポリエステルおよび/または脂肪族ポリアミド(たとえば、ナイロン)を含む。
【0128】
最も好ましい第2のシート材料は、ナイロン-6および/またはナイロン6-6を含む。
【0129】
全体的または部分的に二次バッキング(または第2のシート)を構成しうる追加のまたは代替の好適な材料は、当業者に周知であり、たとえば、任意選択で、機能性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロリド(PVC)、および/またはビチューメンから選択されうる。
【0130】
また、存在する場合、第2のシートは、それにより一部が形成された最終テキスタイル製品に追加の寸法安定性も付与するように良好な寸法安定性を有することが好ましい。したがって、便利には、第2のシートに好適な材料は、とくに、第1のシートが、水への暴露時に低減された寸法安定性を呈しうる材料(たとえば、いくつかのナイロン)を含む場合、水中でさえも良好な寸法安定性を有することから、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーを含みうる。
【0131】
また、本発明に係るテキスタイル製品は、全体的または部分的にある程度リサイクル可能であることが望まれるため、第1または第2のシートを構成すべく使用するのに好適な他の材料は、環境への影響(たとえば、ライフサイクルアセスメント(またはLCA)により測定される)が全体的に低いもの、たとえば、固体または半固体の形態の石油堆積物からなる天然に存在する材料であるビチューメンである。
【0132】
[ホットメルト接着剤(HMA)]
本明細書で用いられる場合、「接着剤」または「接着剤組成物」という用語は、本明細書で意図される使用に対して商業的に許容可能かつ実用性のある期間にわたり、周囲条件下で乾燥後に実質的にタック性を維持する(すなわち、タックフリーでない)任意の組成物を意味する。典型的な接着剤組成物は、表面に適用された後、少なくとも16時間にわたりタック性を維持しうる。タック時間は、便利には、本明細書に記載されるように測定されうる。
【0133】
ホットメルト接着剤(本明細書ではHMAと略記される)は、当業者に周知である。好ましいホットメルト接着剤(HMA)(ホットグルーとしても知られる)は、熱可塑性接着剤であり、少量の溶媒を有し、好ましくは、溶媒を実質的に含まず、かつ流体として熱基材に適用される(たとえば、ディップ処理またはスプレー処理により)。したがって、接着剤は、好適に低い粘度を有し、熱時にタック性であり、かつ適用後、乾燥をほとんどまたはまったく必要とすることなく、迅速に凝固する(典型的には数秒間~1分間)。有用には、固体接着剤フィルムは、適用後、しばらくの間、タック性を維持したままであり、適用された基材の(再)位置決めが可能であるが、感圧接着剤(PSA)とは異なり、典型的なHMAは、固体フィルムとして永久的にタック性ではない。HMAは、溶媒系接着剤とは異なり、ほとんどまたはまったくない溶媒を含んでいないため、HMAフィルム層は、凝固に伴って収縮したり厚さを喪失したりしない。HMAの他の任意選択の利点は、必要に応じて、テキスタイル製品の成分を再位置決めするのに十分な時間を提供する良好なオープンタイム(永久的結合を得るのに要する時間)である。
【0134】
本明細書で用いられるHMAは、単独で、または他の接着剤タイプ(たとえば、反応性接着剤)と組み合わせて、またはたとえば、同一の接着剤組成物中で混合して(「HMA/接着剤混合物」として示される)、使用可能である。しかしながら、多くの好ましい実施形態では、HMAは、そのまま使用され、同一の組成物中で他の接着剤タイプと混合されない。それにもかかわらず、HMAと他の接着剤タイプとの混合は、いくつかの利点を有しうる。HMA/接着剤混合物は、基材上への熱負荷を軽減して、より高い温度に感受性を有する基材の使用を可能にしうる。また、HMA/接着剤混合物を用いて、より高い温度で結合強度を喪失するHMAの傾向を相殺して、接着剤の融解温度までのその使用を可能にしうる。そのようなHMA/接着剤混合物はまた、改良された耐薬品性および耐候性を有しうる。しかしながら、HMA/接着剤混合物を本明細書に記載のホットメルト成分として使用する場合、他の(非HMA)接着剤タイプは、重量基準で、HMA/接着剤混合物の全重量の50%以下、より好ましくは40%未満、さらにより好ましくは30%未満、最も好ましくは20%未満、たとえば10%未満を構成することが好ましい。
【0135】
HMAは、その融解温度超ただしそれが適用される第1および/または第2のシートの融解温度未満の温度で適用されることが好ましい。したがって、HMAは、第1および第2のシートよりも低い融解温度を有することが好ましい(または第1および/または第2のシートがラミネートである場合、HMAは、第1のシートのバック表面および/または第2のシートのトップ表面よりも低い融解温度を有することが好ましい)。いくつかの材料は、他のものよりも容易に熱を保持しうるため、HMAをテキスタイル製品に容易に適用するのに十分な程度に低い粘度を有してHMAが溶融状態を維持するように、HMA適用時、いずれかのシートが予備加熱および/または加熱を必要とするか否かは、第1および/または第2のシートを構成する材料に依存することは、当業者であれば、理解されよう。
【0136】
第1または第2のシートの一方または両方がナイロンなどのポリアミドを含む場合、この材料は、ホットメルト接着剤の適用時、好適な温度(たとえば、HMAの融解温度近傍または融解温度超)に加熱されることが好ましい。
【0137】
本発明に使用するのに好適な有用なホットメルト接着剤は、任意選択で主成分として(すなわち、接着剤組成物の少なくとも50重量%の量で)存在するポリマーPを含みうる。便利には、ホットメルト接着剤は、接着剤組成物の重量を基準にして少なくとも60%、より便利には少なくとも70%、最も便利には少なくとも80%のポリマーPを含む。
【0138】
とくに文脈上明確に示されてないかぎり、HMAのポリマーPに対して本明細書に列挙されたポリマーはまた、テキスタイル製品の他の成分(たとえば、ヤーン、第1のシート、および存在する場合、第2のシート(以上を参照されたい))を独立して構成しうるポリマーRのいずれかに好適なものとしても選択されうる。したがって、いくつかのポリマーRに対する追加の好ましい選択肢は、ポリマーPに対して本明細書に与えられた好ましい選択肢に関して必ずしも追加的に本明細書に繰り返されているわけではないことは、分かるであろう。
【0139】
有用には、ポリマーP、ポリマーR、および/またはホットメルト接着剤は、実質的にバイオ系でありうる。
【0140】
主にポリエステルであるテキスタイル製品では、たとえば、ヤーン、ヤーンバッキング、およびキャリヤー(二次バッキング)がポリエステルを含む場合、ホットメルト接着剤はまた、任意選択で、有用にはエステル成分と架橋させるべく、少量の架橋剤(好ましくはHMAの重量の10%以下、より好ましくは5%未満、最も好ましくは<3%)を含みうる。なぜなら、これらの架橋は、リサイクル時に容易に破壊されるであろうからである。ポリアミドマット(すなわち、ポリアミドのヤーンおよび一次バッキング)とポリエステルのキャリヤー(二次バッキング)とを含むテキスタイル製品では、HMAが架橋剤を含有すると、テキスタイル製品の成分の完全分離がはるかに困難なるであろうから、望ましくない。そのような実施形態(ポリアミド一次マットおよびポリエステル二次バッキング)では、HMAは、いずれの架橋剤も実質的に含まない(好ましくは、含まない)ことが好ましい。
【0141】
ポリマーP(および/またはポリマーR)は、有用には、熱可塑性ポリマーを含みうる。
【0142】
ポリマーP(および/またはポリマーR)は、結晶性ポリマーを含みうるかまたはアモルファスでありうる。便利には、ポリマーPは、半結晶性である。ポリマーP(および/またはポリマーR)は、ポリマーがポリアミド以外である場合、40~300℃の融点を有しうるとともに、ポリマーP(および/またはポリマーR)がポリアミドを含む場合、40~215℃の融点を有しうる。有用には、ポリマーP(および/またはポリマーR)は、40~200℃、より有用には60~160℃、最も有用には60~150℃、たとえば約70℃の融点を有する。
【0143】
「結晶性」とは、本明細書では、材料(たとえば、本発明で使用されるまたは本発明に係るポリマー、樹脂、樹脂組成物、および/またはポリマー組成物)が、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも8J/g、より好ましくは少なくとも10J/g、最も好ましくは少なくとも15J/gの融解エンタルピー(ΔHm)を有することを意味する。当業者であれば、多くの結晶性材料が完全に結晶性ではなく、100%未満、好ましくは2~98%、より好ましくは5~90%、最も好ましくは10~80%の結晶化度を有することは分かるであろう。そのような材料は、アモルファス材料のドメインや結晶性材料のドメイン(たとえば、ポリマー鎖が実質的にアラインメントされている場合)などの相の混合物を含み、多くの場合、「半結晶性」という変則的な用語により参照される。異なるドメインは、たとえば、偏光顕微鏡および/または透過型電子顕微鏡(TEM)の下で観察可能である。「半結晶性」材料の結晶化度は、任意の好適な方法により、たとえば、密度の測定により、示差走査熱量測定(DSC)により、X線回折(XRD)により、赤外分光法により、および/または核磁気共鳴(NMR)により、測定されうる。
【0144】
ポリマーP(および/またはポリマーR)は、100℃未満、有利には80℃未満、より有利には70℃未満、さらにより有利には50℃未満、最も有利には40℃未満のガラス転移温度を有しうる。
【0145】
ポリマーP(および/またはポリマーR)は、500Pa・s未満、有用には300Pa・s未満、より有用には200Pa・s未満、最も有用には100Pa・s未満の溶融粘度(すべて本明細書に記載の方法により150℃で測定される)を有しうる。
【0146】
本発明の一実施形態では、ポリマーP(および/またはポリマーR)は、40~200℃の融点、50℃未満のガラス転移温度、および150℃で500Pa・s未満の溶融粘度を有しうる。
【0147】
本発明の他の実施形態では、ポリマーP(および/またはポリマーR)は、60~100℃の融点、50℃未満のガラス転移温度、および150℃で300Pa・s未満の溶融粘度を有しうる。
【0148】
本発明のさらに他の実施形態では、ポリマーP(および/またはポリマーR)は、60~120℃の融点、40℃未満のガラス転移温度、および150℃で200Pa・s未満の溶融粘度を有しうる。
【0149】
以上の実施形態のいずれでも、ポリマーP(および/またはポリマーR)は、最も好ましくは(コ)ポリエステルである。
【0150】
ポリマーP(および/またはポリマーR)は、重縮合、環状モノマー(たとえば、環状エステルおよび/または環状アミド)の開環重合、および/または段階成長重合法により取得されるおよび/または取得可能なポリマーでありうるとともに、かつ/またはリサイクルされた重縮合物である。
【0151】
ポリマーP(および/またはポリマーR)は、(コ)ポリウレタン、(コ)ポリカーボネート、(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、(コ)ポリ(エステルアミド)、それらの混合物および/またはそれらのコポリマーからなる群から選択される1つ以上のポリマーまたはコポリマーを含みうる。ポリマーP(および/またはポリマーR)はまた、(コ)ポリウレタンおよび/または(コ)ポリカーボネート型ポリマーを含みうるが、好ましくは、ポリマーP(および/またはポリマーR)は、(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、および/またはポリ(エステルアミド)を含む。より好ましいポリマーPおよび/またはポリマーRは、重縮合および/または環状モノマー(たとえば、環状エステルおよび/または環状アミド)の開環重合により取得される。さらにより好ましいポリマーPおよび/またはポリマーRは、(コ)ポリエステルを含み、最も好ましくはポリエステルである。
【0152】
好ましくは、ポリマーPおよび/またはポリマーRの重量平均分子量(Mw)は、<500000g/mol、より好ましくは<250000g/mol、最も好ましくは<100000g/molである。好ましくは、ポリマーPおよび/またはポリマーRの重量平均分子量(Mw)は、>1000g/mol、より好ましくは>3500g/mol、最も好ましくは>5000g/molである。好ましくは、ポリマーPおよび/またはポリマーRの重量平均分子量(Mw)は、100~500000g/mol、より好ましくは3500~250000g/mol、最も好ましくは5000~100000g/mol)である。
【0153】
好ましくは、ポリマーPおよび/またはポリマーRの数平均分子量(Mn)は、<300000g/mol、より好ましくは<100000g/mol、および最も好ましくは<50,000g/molである。好ましくは、ポリマーPおよび/またはポリマーRの数平均分子量(Mn)は、>500g/mol、より好ましくは>1000g/mol、最も好ましくは>2000g/molである。好ましくは、ポリマーPおよび/またはポリマーRの数平均分子量(Mn)は、500~300000g/mol、より好ましくは100~100000g/mol、最も好ましくは2000~50000g/mol)である。
【0154】
有用には、ポリマーPおよび/またはポリマーR(特定的には、ポリエステルを含む場合)の重量平均分子量(Mw)は、>3500g/mol、より有用には>5000g/mol、最も有用には8000g/mol>、特定的には>10000g/molである。有用には、ポリマーPおよび/またはポリマーR(特定的には、ポリエステルを含む場合)の重量平均分子量(Mw)は、<75000g/mol、より有用には<60000g/mol、最も有用には<50,000g/mol、特定的には<40000g/molである。有用には、ポリマーPおよび/またはポリマーR(特定的には、ポリエステルを含む場合)の重量平均分子量(Mw)は、3500~75000g/mol、より有用には5000~60000g/mol、最も有用には8000~50000g/mol、特定的には10000~40000のg/molである。
【0155】
有用には、ポリマーPおよび/またはポリマーR(特定的には、ポリエステルを含む場合)の数平均分子量(Mn)は、>1500g/mol、より有用には>2000g/mol、最も有用には>3000g/mol、特定的には>5000g/molである。有用には、ポリマーPおよび/またはポリマーR(特定的には、ポリエステルを含む場合)の数平均分子量(Mn)は、<60000g/mol、より有用には<50000g/mol、最も有用には<40000g/mol、特定的には<30000g/molである。有用には、ポリマーPおよび/またはポリマーR(特定的には、ポリエステルを含む場合)の数平均分子量(Mn)は、1500~60000g/mol、より有用には2000~50000g/mol、最も有用には3000~40000g/mol、特定的には5000~30000のg/molである。
【0156】
ポリマーの分子量分布(MWD)は、それらを含む組成物の平衡粘度などの性質に影響を及ぼしうる。MWDは、従来的には多分散性指数(PDi)により記述される。PDiは、重量平均分子量を数平均分子量(Mw/Mn)で除算したものとして定義され、下限値は、下限PDiと均等である。好ましくは、PDiの値は、<30、より好ましくは<15、最も好ましくは<10、特定的には<5である。
【0157】
一般的な(コ)ポリエステル-アミドは、たとえば、酸またはアンヒドリド官能基を有する分子と、アルコールおよび/またはアミン官能基を有する分子と、の縮合反応により形成されうる。したがって、たとえば、好適な多官能性酸(好ましくは、二酸)と、好適なポリオール(好ましくは、ジオールまたは三官能性もしくは四官能性アルコール(との混合物))と、の重縮合、またはヒドロキシ酸の重縮合により、ポリエステルを生成することが可能である。また、環状エステル、たとえば、カプロラクトン、ペンタデカラクトン、アンブレットリド、および類似の材料の開環重合により、ポリエステルを生成することが可能である。同様に、好適な多官能性酸(好ましくは、二酸)と、好適なポリアミン(好ましくは、ジアミンまたは三官能性アミンとの混合物)と、の重縮合またはアミノ酸の重縮合により、ポリアミドを生成することが可能である。環状アミド、たとえば、カプロラクタム、ラウロラクタム、および類似の材料の開環重合により、ポリアミドを生成することが可能である。同様に、好適な多官能性酸(好ましくは、二酸)と、好適なポリアミノアルコール(好ましくは、ジアルカノールアミン)、ポリオール(好ましくは、ジオール)、および/またはポリアミン(好ましくは、ジアミン)と、の重縮合により、ポリ(エステルアミド)を生成することが可能である。ポリエステルアミドはまた、ラクトンおよび/またはラクタムの(共)重合により生成することも可能である(本明細書に記載のとおり)。
【0158】
1つの分子に2つ以上のそのような官能基をもたせるにより、ポリマーを形成することが可能である。ジアルカノールアミンなどのアミンを使用した場合、得られるポリエステル樹脂は、一般的には、「ポリエステルアミド」として命名される。1つの分子にさらに多くの官能基をもたせるにより、当技術分野で周知のように、ハイパーブランチポリエステルを形成することが可能である。ポリイソシアネート成分を組み込むことにより、ウレタン化ポリエステル(ポリエステルウレタンとしても知られる)を形成しうる。
【0159】
ポリマーPおよび/またはポリマーRを取得するために使用しうる好ましいアミンおよびそれらの誘導体は、任意のアルキルアミン、アルカノールアミン、アルコキシアルキルアミン、ジアミン、およびポリアミン、さらにはアミノ酸、ラクタムアミン、および類似の材料、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、ダイマー脂肪ジアミン(たとえば、Priamine(登録商標)という商標名でCrodaから入手可能なもの)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、カプロラクタム、ラウロラクタム、リシン、グリシン、および/またはグルタミンを含む。
【0160】
したがって、カルボニルオキシ(すなわち、-C(=O)-O-)結合基を含有するポリエステルが、縮合重合プロセスにより調製されうることは、周知であり、この場合、「酸成分」(そのエステル形成誘導体を含めて)を提供するモノマーと、「ヒドロキシル成分」を提供するモノマーと、を反応させる。
【0161】
酸成分を提供するモノマーは、1つ以上の多塩基性カルボン酸、たとえば、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらのエステル形成誘導体、たとえば、酸ハリド、酸アンヒドリド、もしくは酸エステルから選択されうる。ヒドロキシル成分を提供するモノマーは、1つ以上の多価アルコールまたはフェノール(ポリオール)、たとえば、ジオール、トリオールなどでありうる。本明細書に記載のポリエステル樹脂は、任意選択で、主鎖または側鎖に自動酸化性ユニットを含みうることを理解すべきである。そのようなポリエステルは、自動酸化性ポリエステルとして知られる。
【0162】
所望により、ポリエステルはまた、ヒドロキシル成分の一部として適切なアミノ官能性反応剤を組み込むことにより、一定の割合のカルボニルアミノ結合基-C(=O)-NH-(すなわち、アミド結合基)または-C(=O)-N-R-(第3級アミド結合基)を含みうるか、または代替的にヒドロキシル成分のすべてが、アミノ官能性反応剤を含むことにより、ポリエステルアミド樹脂を生成しうる。そのようなアミド結合は、より耐加水分解性であるという点で実際に有用である。
【0163】
酸成分を提供するモノマーの提供に供されるポリエステル合成で使用可能なカルボン酸(またはそのエステル形成誘導体、たとえば、アンヒドリド、酸クロリド、または低級(すなわち、C1~6)アルキルエステル)には、多くの例が存在する。例としては、単官能性酸、たとえば、(アルキル化)安息香酸およびヘキサン酸、およびC4~20脂肪族、脂環式、および芳香族ジカルボン酸(またはより多官能性の酸)、またはそれらのエステル形成誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
ポリマーPおよび/またはポリマーRなどのポリエステルを取得するために使用しうる好適な酸およびその誘導体の好ましい例は、次のもの、すなわち、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、イタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ピメリン酸、ノナン二酸、デカン二酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸の酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸の酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、スルホイソフタル酸、および/またはそれらの金属塩(たとえば、5-ソジオスルホイソフタル酸)、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)、任意の好適なそれらの混合物、それらの組合せ、および/またはそれらの任意の好適な誘導体(たとえば、エステル、たとえば、ジ(C1~4アルキル)エステル、金属塩、および/またはアンヒドリド)のいずれかを含む。好適なアンヒドリドとしては、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、トリメリト酸、およびヘキサヒドロフタル酸のアンヒドリドが挙げられる。
【0165】
より好ましい(コ)ポリエステルは、次の酸、すなわち、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ダイマー脂肪酸、セバシン酸、アゼライン酸、スルホイソフタル酸(および/またはのその金属塩)、1,3シクロヘキサンジカルボン酸の酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメリト酸アンヒドリド、それらのエステル(たとえば、それらのジアルキルエステル)、それらの組合せ、および/またはそれらの混合物から取得されうる。
【0166】
同様に、ヒドロキシル成分を提供するモノマーの提供に供されるポリエステル樹脂合成で使用されうる(任意選択で、自動酸化性)ポリオールには、多くの例が存在する。ポリオールは、好ましくは、1~6(より好ましくは2~4)個のヒドロキシ基/分子を有する。好適な単官能性アルコールとしては、たとえば、エイコサノールおよびラウリルアルコールが挙げられる。1分子あたり2個のヒドロキシ基を有する好適なポリオールとしては、ジオール、たとえば、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2-、1,3-、および1,4-シクロヘキサンジオール、および対応するシクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびジオール、たとえば、アルコキシル化ビスフェノールA生成物、たとえば、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールAが挙げられる。1分子あたり3個のヒドロキシ基を有する好適なポリオールとしては、トリオール、たとえば、トリメチロールプロパン(TMP)および1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン(TME)が挙げられる。1分子あたり4個以上のヒドロキシ基を有する好適なポリオールとしては、ビス-TMP、ペンタエリトリトール(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)、ビス-ペンタエリトリトール、およびソルビトール(1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロキシヘキサン)が挙げられる。ヒドロキシル官能基とアミン官能基との両方を有するヒドロキシル官能性アミンの例は、たとえば、国際公開第00/32708号パンフレットに記載されており、ジイソプロパノールアミンの使用が好ましい。これらを用いて、ポリエステルアミド樹脂を調製することが可能である。
【0167】
ポリマーPおよび/またはポリマーR(たとえば、ポリエステル)を調製するためのビルディングブロックとして、エラストマーポリオールも使用しうる。また、好適なポリオールは、ジヒドロキシ末端ポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)、ジヒドロキシ末端ポリプロピレングリコール、ジヒドロキシ末端ポリブチレンスクシネート、ジヒドロキシ末端ポリブチレンアジペート、0未満のTgおよび2個のOH末端基を有する他の脂肪族ポリエステル、および/またはそれらの任意の混合物、および/またはそれらの任意の組合せを含みうる。そのようなポリオールから取得可能なおよび/または取得される好適なコポリエステルエラストマーの例は、Arnitel(登録商標)という商標名でDSMから入手可能なものである。
【0168】
ポリエステルポリマーPおよび/またはRを取得するために使用しうる好適なアルコールの好ましい例は、次のもの、すなわち、イソソルビド、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,8オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、2,2、4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール(たとえば、再生可能資源由来)1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンデジオール、1,4-ブタンジオール、ダイマー脂肪酸ジオール、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、および任意の好適な組合せおよび/またはそれらの混合物のいずれかを含む。
【0169】
さらに他の実施形態では、(コ)ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ダイマー脂肪酸、セバシン酸、アゼライン酸、スルホイソフタル酸、またはそれらの金属塩、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フランジカルボン酸、トリメリト酸アンヒドリド、および/またはそれらのジアルキルエステル、から選択される酸と、それらの混合物、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、2,2、4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンデジオール、1,4-ブタンジオール、ダイマー脂肪酸ジオール、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、および/またはそれらの混合物から選択されるアルコールと、から構築されうる。
【0170】
また、ポリマーPおよび/またはRを取得するための可能性のあるビルディングブロックとして、ダイマー脂肪酸、ダイマー脂肪ジオール、および/またはダイマー脂肪ジアミン(たとえば、Crodaから入手可能なもの)も使用されうる。
【0171】
本発明に係る組成物で使用するためのポリエステルを作製するためのエステル化重合プロセスは、当技術分野で周知であり、本明細書に詳細に記載する必要はない。通常、任意選択で、チタン系触媒やスズ系触媒などの触媒を用いて、かつ縮合反応から形成されるいずれの水(またはアルコール)も除去すべく準備して、溶融状態で行われることのみを述べておく。
【0172】
好ましくは、ポリエステル樹脂がカルボン酸官能基を含む場合、それは、ポリ酸またはアンヒドリドから誘導される。
【0173】
ポリマーPおよび/またはRに好適なものとして本明細書に記載の(コ)ポリエステルおよび他の樹脂はまた(全体的もしくは部分的にHMAおよび/または本明細書の第1および/または第2のシートを形成するかにかかわらず)、カルボン酸部分以外の酸部分を含みうる。この場合、樹脂は、強酸、たとえば、スルホン酸、ホスホン酸、それらの誘導体(たとえば、エステル)、および/またはそれらの塩(たとえば、アルカリ金属塩)から調製される。好ましい非カルボン酸部分は、スルホン酸部分、ホスホン酸部分、および/またはそれらの誘導体から選択される中和または部分中和された強酸基を含み、より好ましくは、芳香族スルホン化酸またはその塩、最も好ましくは、ベンゼンジカルボン酸のアルカリ金属スルホ塩、たとえば、式:
【化1】

により表される。
【0174】
これらの強酸(たとえば、SSIPA)は、ポリエステルを調製するために少量(好ましくは、ポリエステルの10重量%まで)で使用可能である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ポリエステル上にスルホ基などのイオン性基(およびその誘導体)が存在すると、たとえば、そのようなポリエステルから形成されたテキスタイル製品上に静電荷を形成する傾向が低減されることにより、テキスタイル製品に追加の利点が提供されうると考えられる。
【0175】
依然としてヒドロキシル官能性であるポリエステルまたはポリエステルアミドをイソシアネート(たとえば、固体基準で1~20wt%、より好ましくは1~12wt%、特定的には1~7wt%のイソシアネート)と反応させて、ウレタン化ポリエステルまたはウレタン化ポリエステルアミドを与えることも可能である(本明細書では、両方まとめて、ウレタン化ポリエステル(-アミド)として、すなわち、アミド基の存在は任意選択であるとして、記載されている)。ジイソシアネートの使用は、たとえば、分子量を増加させるうえで、好ましい。
【0176】
好適なポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族、ならびに/またはウレタン、アロファネート、ウレア、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、ウレトジオン、および/もしくはイソシアヌレート残基の導入により修飾されたるポリイソシアネートを含む。好適なポリイソシアネートの例は、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、α,α’-テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートのエチルエステル、およびそれらの混合物を含む。
【0177】
好ましいポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0178】
好ましくは、ヒドロキシル末端またはカルボキシル末端自動酸化性ウレタン化ポリエステルは、少なくとも0.05:1のイソシアネート基対イソシアネート反応性基の比、より好ましくは少なくとも0.1:1、好ましくは1.0:1未満のイソシアネート基対イソシアネート反応性基の比、より好ましくは0.85:1未満、最も好ましくは0.75:1未満、特定的には0.5:1未満に対応する割合で反応剤を反応させることにより、直接調製されうる。
【0179】
代替的に、イソシアネート反応性ポリエステルは、最初にポリイソシアネートと反応させ、続いて、酸官能基化を行って、追加の安定化基を提供する。
【0180】
所望により、ジブチルスズジラウレートや第一スズオクトエートなどの触媒、ジルコニウム系またはチタン系の触媒を用いて、ウレタン化反応を支援しうる。
【0181】
好ましくは、ポリエステルアミド樹脂またはウレタン化ポリエステル(-アミド)樹脂の重量平均分子量(Mw)は、<20,000g/mol、より好ましくは<12,000g/mol、最も好ましくは<9,000g/molである。
【0182】
好ましくは、ポリエステルアミド樹脂または自動酸化性ウレタン化ポリエステル(アミド)樹脂は、8未満のPDI、より好ましくは5.5未満のPDI、最も好ましくは4.0未満のPDIを有する。
【0183】
好ましくは、ポリエステルアミド樹脂またはウレタン化ポリエステル(アミド)樹脂は、少なくとも10ミリモル/100g固体樹脂、より好ましくは少なくとも20ミリモル/100g、最も好ましくは少なくとも50ミリモル/100g固体樹脂、特定的には少なくとも65ミリモル/100g固体樹脂のカルボニルアミン含有率(ミリモル/100g固体樹脂単位でNH-C=OまたはN-C=Oの存在として定義される)を有する。
【0184】
それに加えて、ポリエステルアミド樹脂またはウレタン化ポリエステル(-アミド)樹脂は、好ましくは500ミリモル未満/100g固体樹脂、より好ましくは400ミリモル未満/100g固体樹脂、最も好ましくは300ミリモル未満/100g固体樹脂、特定的には225ミリモル未満/100g固体樹脂のカルボニルアミン含有率(ミリモル/100g固体樹脂中のNH-C=OまたはN-C=Oの存在として定義される)を有する。
【0185】
本発明の一実施形態では、便利には、ポリマーPおよび/またはポリマーRは、(コ)ポリエステルが、テレフタル酸、2,5フランジカルボン酸の酸、アジピン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、および/またはそれらの組合せから選択される少なくとも1つの酸と、エチレングリコール、1,6-ヘキサンデジオール、1,4-ブタンジオール、ダイマー脂肪酸ジオール、および/またはそれらの組合せから選択される少なくとも1つのアルコールと、の反応から取得されるおよび/または取得可能であることを特徴として、(コ)ポリエステルを含む。
【0186】
有用には、本発明で使用されるホットメルト接着剤は、製造プロセスの任意の段階でまたは後で導入される、タック付与剤、ワックス、可塑剤、核剤、作用剤を中和する帯電防止剤、接着促進剤、顔料、染料、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、抗クレーターを形成する作用剤、充填剤、沈降阻害剤、UV吸収剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、共溶媒、湿潤剤、反応性希釈剤など、および/またはそれらの組合せから選択される50重量%までの任意選択の成分を(ポリマーPに加えて)含む。
【0187】
好ましくは、存在する場合、任意の反応性希釈剤は、Mn>1000g/mol、より好ましくは>1500g/mol、最も好ましくは>2000g/mol、好ましくはMn<5000g/mol、より好ましくは<4000g/mol、特定的には<3500g/molを有する。接着剤の遅燃性を向上させるために、接着剤に酸化アンチモンのような遅燃剤を組み込むことも可能である。
【0188】
タック付与剤のいくつかの例としては、トール油、ガム、またはウッドロジン(未変性、部分水素化、完全水素化、または不均化のいずれか)、重合ロジン、ロジン誘導体、たとえば、ロジンエステル、フェノール変性ロジンエステル、酸変性ロジンエステル、蒸留ロジン、二量体化ロジン、マレイン化ロジン、および重合ロジン、炭化水素樹脂(脂肪族および芳香族の樹脂を含む)、クマロン-インデン樹脂、ポリテルペン、テルペン-フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、反応性樹脂、ハイブリッド樹脂-およびポリエステル樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0189】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)を低下させるために、柔軟剤を使用することが可能である。可塑剤のいくつかの例としては、ベンゾエートエステル、フタレートエステル、シトレートエステル、ホスフェートエステル、テレフタレートエステル、イソフタレートエステル、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者には周知のように、発明で使用されるホットメルト接着剤を調製するために、他の好適な市販の柔軟剤を使用することも可能である。
【0190】
接着剤組成物はまた、結合強度を向上させるために、コールドフローを防止または低減するために、かつ凝結時間を短縮するために、1つ以上の適合性ワックスを含みうる。いくつかの例は、12-ヒドロキシステアルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)-12-ヒドロキシステアルアミド、ステアルアミド、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、12-ヒドロキシステアリン酸、Ν,Ν’-エチレン-ビス-ステアルアミド、水素化ヒマシ油、酸化合成ワックス、および官能基化合成ワックス、たとえば、酸化ポリエチレンワックスであるが、これらに限定されるものではない。
【0191】
結晶形成の改変および制御のために、接着剤組成物と共に核化剤を使用しうる。「核化剤」および「核剤」という用語は、同義的であり、ポリマーへの組込み時にポリマー溶融物中に結晶成長用の核形成する化学物質を意味する。溶融接着剤の冷却に伴って急速に粒子に分離するかぎり、任意の不適合性材料が核剤として機能しうる。本発明で使用するのに好適なものとして当業者が選択可能な核化剤として知られる有機および無機の材料は、多種多様である。70℃~130℃の融解温度を有する低分子量のポリオレフィンおよび/またはオレフィンアイオノマーまたはタルカムは、本発明で使用可能な好適な核化剤であるが、これらに限定されるものではない。
【0192】
さらに他の実施形態では、接着剤の性能は、50重量パーセントまでのタック付与剤、ワックス、可塑剤、核化剤、帯電防止剤、またはそれらの組合せを用いることにより、向上する。タック付与剤のいくつかの例としては、トール油、ガム、またはウッドロジン(未変性、部分水素化、完全水素化、または不均化のいずれか)、重合ロジン、ロジン誘導体、たとえば、ロジンエステル、フェノール変性ロジンエステル、酸変性ロジンエステル、蒸留ロジン、二量体化ロジン、マレイン化ロジン、および重合ロジン、炭化水素樹脂(脂肪族および芳香族の樹脂を含む)、クマロン-インデン樹脂、ポリテルペン、テルペン-フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、反応性樹脂、ハイブリッド樹脂およびポリエステル樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0193】
可塑剤を用いてTgを低減することが可能である。可塑剤のいくつかの例としては、ベンゾエートエステル、フタレートエステル、シトレートエステル、ホスフェートエステル、テレフタレートエステル、イソフタレートエステル、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者には周知のように、他の市販の可塑剤も使用しうる。
【0194】
接着剤組成物はまた、結合強度を向上させるために、コールドフローを防止または低減するために、かつ凝結時間を短縮するために、1つ以上の適合性ワックスを含みうる。いくつかの例は、12-ヒドロキシステアルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)-12-ヒドロキシステアルアミド、ステアルアミド、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、12-ヒドロキシステアリン酸、Ν,Ν’-エチレン-ビス-ステアルアミド、水素化ヒマシ油、酸化合成ワックス、および官能基化合成ワックス、たとえば、酸化ポリエチレンワックスであるが、これらに限定されるものではない。
【0195】
本発明に使用するのに好適な好ましいホットメルト接着剤は、以下の性質、すなわち、
それらは、60~150℃、好ましくは75~130℃の温度で適用可能である(溶融状態で);
150℃で500Pa・s未満、好ましくは<200Pa・sの粘度;
60~130℃の融解温度(Tとも記される);および/または
60~130℃の結晶化温度(Tとも記される);
およびTは、示差走査熱量測定(DSC)などの任意の好適な方法により取得されうる。サンプルの溶融および/または結晶化が温度範囲にわたり観測される場合、Tmおよび/またはTc値はこの範囲で観測されたピーク(最大)温度として記録される;
の1つ以上の(より好ましくはすべて)を呈する。
【0196】
[テキスタイル製品の任意選択の性質]
任意選択で、本発明に係るテキスタイル製品、たとえば、本発明に係るカーペットは、試験方法で以下の性質の1つ以上、さらなる任意選択で2つ以上、さらなる任意選択で3つ以上、さらなる任意選択で4つ以上、たとえば5つ以上、たとえばすべてを呈しうる。
(i)<10,000g水/m/日の耐水性(米国繊維化学者色彩技術者協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)試験方法127-2008に記載の静水圧試験で測定される);
(ii)少なくとも20N、好ましくは>25N、より好ましくは>30Nのテキスタイル製品への繊維の接着(米国特許出願公開第2010-0098901号明細書(Dow Chemical)の段落[0071]およびASTM D1335に記載の「タフト結合」方法に類似した方法で繊維の除去に必要とされる平均力として測定され、ポンド力(lbf)からNに変換される);
(iii)少なくとも0.2N/mm、好ましくは>0.3N/mm、より好ましくは>0.5N/mmのドライラミネーション強度(第1および第2のシートが両方とも存在する場合)(米国特許出願公開第2010-0098901号明細書の段落[0072]およびASTM D3936に記載の「ドライラミネーション強度」方法に類似した方法で第1および第2のシート間の結合の強度の尺度として測定され、ポンド/インチ(lb/in)からN/mmに変換される);
(iv)少なくとも0.05N/mm、好ましくは>0.10N/mm、より好ましくは>0.15Nのウェットラミネーション強度(第1および第2のシートが両方とも存在する場合)(米国特許出願公開第2010-0098901号明細書の段落[0073]に記載の「ウェットラミネーション強度」方法に類似した方法で第1および第2のシート間の結合の強度の尺度として測定され、ポンド/インチ(lb/in)からN/mmに変換される);
(v)200N以下、好ましくは<175N、より好ましくは<150Nの可撓性(「標準」条件、すなわち、50%の相対湿度(RH)および22.2℃で米国特許出願公開第2010-0098901号明細書の段落[0074]に記載の「ハンド」方法に記載されるようにテキスタイル製品のサンプルを1.3cm偏位させるのに必要とされる平均力として測定され、ポンド力(lbf)からNに変換される);
(vi)20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは7%未満、最も好ましくは5%未満の低い収縮または膨張(-10℃~40℃の温度範囲内でテキスタイル製品の任意の線寸法について);
(vii)100~150℃の温度で第1および第2のシート(存在する場合)を接着するHMAの可逆的接着;および/または
(viii)1000g/m未満、好ましくは<800g/m、より好ましくは<600g/m、さらにより好ましくは<400g/m、さらにより好ましくは<350g/mのHMAの層厚さ。
【0197】
本明細書で用いられる以下の意味を有する以下の用語が用いられる。
【0198】
たとえば一次バッキングとして本明細書で用いられるバッキングという用語は、ヤーンを適用して延在するヤーンを有するテキスタイル製品を取得するのに好適な実質的にフラットな材料を意味し、典型的には、床カバーの製造に使用されるが、他の実施形態では、衣類、テント用キャンバス、家庭用テキスタイルなどの製造にも有用でありうる。ヤーンの適用は、たとえば、植設、編成、織成、縫付けなどの任意の方法により達成されうる。
【0199】
本明細書で用いられる縫合とは、縫合糸を用いてまたはあたかも縫合糸を用いたかのように固定または接合することを意味する。一般的には、これは、機械的装着プロセスの一例であり、この場合、ヤーンは、たとえば、単に、織り合わせるようなプロセス(たとえば、植設、編成、縫付け、縫合、織成など)により連結されるが、たとえば、グルー接合、溶融、化学反応、さもなければ、ヤーンを所定の位置に維持する補助的固定方法の使用により連結されるものではない。
【0200】
本明細書で用いられる再生とは、リサイクルという用語と同義であり、製品および/またはその構成要素(たとえば、本発明に係るテキスタイル製品)を全体的または部分的にリサイクル、修理、救済、再建、変換、および/または再処理して(たとえば、本明細書に記載されるような任意の好適な方法により)、他の製品、任意選択で、カーペットなどの他のテキスタイル製品を作製するために再使用可能な原料(ポリマーなど)を生成しうることを意味する。
【0201】
カレンダー処理とは、たとえば、ローラーを用いてまたはローラーを用いたかのように、任意選択で、高温で、プレスすることにより、テキスタイルを平滑にして光沢をもたせるために使用される仕上げプロセスのことである。
【0202】
シートとは、実質的に二次元の物質または材料を意味し(すなわち、典型的には、広幅かつ薄肉であるが、必ずしも矩形ではない)、したがって、有限寸法のカットシートと、たとえばロールから供給可能な連続したウェブおよび/またはフィルムと、の両方を含む。好ましいシートは、フラットである。しかしながら、本発明の他の態様では、発明に係る第1および/または第2のシートの一方または両方が、それぞれ、第1および/または第2の製品であることが可能であり、したがって、形状がそれほど二次元性でないテキスタイル製品を形成するのに好適な他の形態を呈しうる。ただし、シートが非常に有利である。
【0203】
ホットメルト接着剤とは、溶融すなわち加熱(典型的には標準温度超)により固体状態から液体状態に変化し、凝固後、材料に接着するように設計された熱可塑性接着剤を意味する。ホットメルト接着剤は、典型的には、非反応性であり、少量の溶媒を含むかまたは溶媒を全く含まないため、適正な接着を提供するために、典型的には、硬化や乾燥を必要としない。
【0204】
床カバーとは、床(この用語は、壁、天井などを含む)、家具、車の内装、列車、船、航空機などの対象物を覆うために使用可能なテキスタイル製品を意味する。
【0205】
溶融:材料が重力のみで流動可能な材料の状態(すなわち、液体)になる温度よりも高温に加熱すること。放射線などの種々のエネルギー源、蒸気や水などの熱材料の対流、熱材料との接触による熱伝導を用いて、または圧力などの機械力により、または種々のエネルギー源の組合せにより、熱を加えることが可能である。
【0206】
寸法安定性:次の条件、すなわち、機械的負荷(たとえば、上側歩行、床カバーに特有な他の負荷、たとえば、24時間にわたる80kg/cmの負荷)、温度変化(たとえば、24時間にわたる0℃~160℃への暴露)、および/または湿度変化(たとえば、標準条件下、0%~70%の相対湿度(RH)への24時間までの暴露)の1つ以上、好ましくは全部に暴露された時、10%超の顕著な変化を起こさない(好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下)線寸法を有する基材を意味する。
【0207】
繊維結合:単に手で引っ張るだけでは除去できないように、繊維(またはヤーン)を基材に機械的にロックするプロセス。繊維結合はまた、本明細書では「ヤーン結合」とも記される。
【0208】
テキスタイルとは、スレッドまたはヤーンとして参照されることが多い天然繊維または人工繊維のネットワークからなる可撓性材料(通常は織布)のことである。ヤーンは、原繊維を紡糸して長いストランドを生成することにより生成される。テキスタイルは、繊維を織成、編成、クロシェ編み、ノット編み、またはプレスして一体化(フェルト)することにより、形成されうる。テキスタイル製品は、たとえば機械的性質および/または他の性質を向上させるために使用されうる他の成分、たとえば、バッキング層、キャリヤー層、および/または接着剤と共にテキスタイルを含む製品である。テキスタイル製品の例としては、カーペット、マット、ラグ(たとえば、フックドラグ)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。マットおよびラグは、典型的には、ルーズレイ床カバーであるが、カーペット(広幅織りおよびタイルの両方)は、典型的には、それらが置かれる表面上(多くの場合、クッション付きアンダーレイ上)にタック、ロッド、接着剤などの方法により、より永久的に装着される。カーペットは、典型的には、バッキングに装着されたパイルの上層(起毛パイル繊維はまた、カーペットの「ナップ」とも記される)を含むが、平織りでもよい。カーペットは、織成、ニードルフェルト、ノット編み、植設、および/または刺繍など、種々の異なる構成でありうるが、タフトカーペットが、最も一般的なタイプである。カーペットパイルは、天然繊維(たとえば、ウール、コットン、および/またはジュート)、合成繊維(たとえば、ポリプロピレン、ポリアミド(たとえば、脂肪族ポリアミド、たとえば、ナイロン、たとえば、ナイロン6またはナイロン6-6)、およびポリエステル、および/またはアクリル)、および/または天然繊維および合成繊維のブレンド(たとえば、ウールブレンド、たとえば、ウール対合成繊維の80対20ブレンド)から作製可能である。多くの場合、パイル繊維は、ツイストタフトから形成され、熱処理されてその構造を維持しうる。パイルは、カットされうるか(プラッシュカーペットの場合)またはループを形成しうる(バーバーカーペットの場合)。カーペットは、非常に幅広い織り機で織成可能であるため(その場合、「広幅織りカーペット」として参照される)、シームレスに広範囲に設置可能である。カーペットはまた、より小さいサイズで、たとえば、カーペットタイルとして、作製可能であり(モザイク形状に、通常は矩形にカットされる)、その場合、個別のタイルが破損しても容易に交換できるため、かつ/または摩耗を分散させるように再配置できるため、高負荷を受ける事務所などの領域を覆うのに有用である。
【0209】
とくに文脈上明確に示されてないかぎり、本明細書で用いられる場合、本明細書の用語の複数形は、単数形を含むものとして解釈されるべきであり、その逆も同様である。
【0210】
本明細書で用いられる「comprising(~を含む)」という用語は、それに続いて列挙された事項が網羅されたものではなく、必要に応じて、任意の他の追加の好適な事項、たとえば、1つ以上のさらなる特徴、成分、構成要素、および/または置換基を含んでいても含んでいなくてもよいことを意味と理解されるものとする。
【0211】
本明細書の本発明の考察では、相反する記載がないかぎり、パラメーターの許容範囲の上限および下限に対する択一値が、前記値の一方が他方よりも好ましいことを示唆して、開示されている場合、前記択一値のより好ましい値とそれほど好ましくない値との間にある、前記パラメーターの各中間値それ自体が、前記それほど好ましくない値よりも好ましく、さらには各それほど好ましくない値および前記中間値よりも好ましいということを黙示事項とみなすべきである。
【0212】
本明細書に与えられたいずれのパラメーターに関してもそのすべての上側境界および/または下側境界に対して、境界値は、各パラメーターに対する値に含まれる。また、本発明の種々の実施形態で本明細書に記載されたパラメーターの好ましいおよび/または中間の最小境界値および最大境界値の組合せはすべて、そのような値が本明細書に特定的に開示されているか否かにかかわらず、本発明の種々の他の実施形態および/または選好性で各パラメーターに対して代替範囲を定義するためにも、使用されうることも理解されよう。
【0213】
パーセントとして本明細書に明示されたいずれの量に関してもその総和が100%を超えることができないことは、理解されよう(丸め誤差を考慮して)。たとえば、組成物(またはその同一部分)を基準にして重量(または他の)パーセントとして明示された場合、本発明に係る組成物(またはその一部)が含むすべての成分の和は、丸め誤差を考慮して合計100%になる。しかしながら、成分のリストが網羅的でない場合、本明細書に明示的に記載されていない可能性のある任意の追加の成分の追加の量に対して特定のパーセントを割り当てると、そのような成分のそれぞれのパーセントの和は、100%未満でありうる。
【0214】
本明細書で用いられる「実質的に」という用語は、多量またはその割合を示唆する量または実体を意味しうる。しかるべき文脈で用いられている場合、「実質的に」とは、定量的な意味をもつと理解されうるため(説明との関連で参照される量または実体のいかんにかかわらず)、関連する全体の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、特定的には少なくとも98%、たとえば約100%の割合を占める。類推して、「実質的に含まない」という用語も同様に、参照される量または実体が、関連する全体の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下、特定的には2%以下、たとえば約0%を占めることを意味しうる。
【0215】
本発明に係るおよび/または本発明で使用される組成物はまた、類似の方式で使用される既知の組成物よりも改良された性質を呈しうる。そのような改良された性質は、(好ましくは以下に規定されるように)以下で1~Nと記された性質の少なくとも1つ、好ましくは複数、より好ましくは3つ以上でありうる。本発明に係るおよび/または本発明で使用される好ましい組成物は、本明細書に記載の性質の2つ以上、好ましくは3つ以上、最も好ましくはその残りの部分で、(既知の組成物および/またはその成分と比較して)同程度の性質を呈しうる。
【0216】
本明細書で用いられる改良された性質とは、本発明に係るおよび/または本発明で使用される成分および/または組成物の値が、本明細書に記載の既知の参照の成分および/または組成物の値の>+8%、より好ましくは>+10%、さらにより好ましくは>+12%、最も好ましくは>+15%であることを意味する。
【0217】
本明細書で用いられる同程度の性質とは、本発明に係るおよび/または本発明で使用される成分および/または組成物の値が、本明細書に記載の既知の参照の成分および/または組成物の値の±6%以内、より好ましくは±5%以内、最も好ましくは±4%以内であることを意味する。
【0218】
本明細書の改良されたおよび同程度の性質のパーセント差とは、同一の方法で同一の単位で性質を測定したときの本発明に係るおよび/または本発明で使用される成分および/または組成物と本明細書に記載の既知の参照の成分および/または組成物との間の差分率を意味する(すなわち、比較される値もまたパーセントとして測定される場合、それは絶対差を意味しない)。
【0219】
本発明に係るポリマーは、1つ以上の好適なポリマー前駆体により調製されうる。ポリマー前駆体は、有機物および/または無機物でありうるとともに、任意の好適な(コ)モノマー、(コ)ポリマー[ホモポリマーを含む]、およびそれらの混合物を含みうる。また、これらは、本明細書に示されるように、前記または各ポリマー前駆体と結合を形成して鎖延長を提供可能である、かつ/または直接結合を介して前記または各ポリマー前駆体の他のものと架橋可能である、部分を含む。
【0220】
本発明に係るポリマー前駆体は、好適な重合性官能基を有する1つ以上のモノマー、オリゴマー、ポリマー、それらの混合物、および/またはそれらの組合せを含みうる。
【0221】
モノマーは、重合可能な低分子量(たとえば、千ダルトン未満)の実質的に単分散の化合物である。
【0222】
ポリマーは、重合方法により調製される高分子量の(たとえば、何千ダルトンもある)高分子の多分散混合物である。高分子は、より小さいユニット(それ自体は、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーでありうる)の多数の繰返しを含み、(性質が分子構造の細部に決定的に依存しないかぎり)ユニットの1つまたは少数の添加または除去を行っても、高分子の性質に及ぼす影響は無視しうる。
【0223】
オリゴマーは、モノマーとポリマーとの間の中間の分子量を有する分子の多分散混合物であり、分子は、少数のモノマーユニットを含み、その1つまたは少数の除去を行っても、分子の性質は有意には変化しない。
【0224】
状況に依存して、ポリマーという用語は、オリゴマーを包含することもあれば、包含しないこともある。
【0225】
本発明に係るおよび/または本発明で使用されるポリマー前駆体は、直接合成によりまたは(高分子前駆体自体が高分子である場合)重合により調製されうる。重合性ポリマー自体を本発明に係るおよび/または本発明で使用されるポリマー前駆体として使用する場合、そのようなポリマー前駆体は、低多分散性を有することが好ましく、より好ましくは、副反応、副生成物の数、および/またはこのポリマー前駆体から形成される任意の高分子材料の多分散性を最小限に抑えるために、実質的に単分散である。ポリマー前駆体は、通常の温度および圧力で実質的に反応性ではなくてもよい。
【0226】
本明細書に指定のある場合を除いて、本発明に係るおよび/または本発明で使用されるポリマーおよび/または高分子ポリマー前駆体は、当業者に周知の任意の好適な重合方法により(共)重合可能である。好適な方法の例としては、熱的開始、好適な作用剤の添加による化学的開始、触媒作用、ならびに/あるいは任意選択の開始剤を用いた開始、続いて、たとえばUVなどの好適な波長の電磁線(フォト化学的開始)および/または電子ビーム、α粒子、中性子、および/もしくは他の粒子などの他のタイプの放射線の照射が挙げられる。
【0227】
材料と、本明細書に記載の使用のために配合および/または組込みが行われうるポリマーおよび/または樹脂と、の相溶性を向上させるために、ポリマーおよび/またはオリゴマーの繰返しユニット上の置換基を選択しうる。したがって、樹脂との物理的絡合いまたは内部配置を最適化するために、置換基のサイズおよび長さを選択してもよいし、または必要に応じて、そのような他の樹脂との化学反応および/または架橋が可能な他の反応性物質を含んでいても含んでいなくてもない。好ましい置換基は、有機置換基である。
【0228】
本明細書で用いられる高分子科学の他の従来用語(たとえば、ポリマー、モノマー、オリゴマーなど)は、IUPACにより推奨されたおよびPure Appl.Chem.,Vol.68,No.12,pp.2287-2311,1996に定義された意味を有するものとする(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0229】
本明細書で用いられる「任意選択の置換基」および/または「任意選択で置換された」という用語は、(とくに他の置換基のリストが後続しないかぎり)、次の基、すなわち、カルボキシ、スルホ、ホルミル、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、メチル、メトキシ、および/またはそれらの組合せの1つ以上(またはこれらの基による置換)を意味する。これらの任意選択の基は、複数(好ましくは2つ)の上述の基の同一部分に、すべての化学的に可能な組合せを含む(たとえば、アミノおよびスルホニルは、互いに直接装着されるのであれば、スルファモイル基を示す)。好ましい任意選択の置換基は、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、メチル、ハロ、トリハロメチル、および/またはメトキシを含む。
【0230】
本明細書で用いられる「有機置換基」および「有機基」という同義的用語(本明細書では「オルガノ」としても略記される)は、1つ以上の炭素原子と任意選択で1つ以上の他のヘテロ原子とを含む任意の1価または多価の部分(任意選択で、1つ以上の他の部分に装着される)を意味する。有機基は、炭素含有一価基を含むオルガノヘテリル基(有機元素基としても知られる)を含みうるため、有機物であるが、炭素以外の原子に自由原子価を有する(たとえばオルガノチオ基)。有機基は、他の選択肢としてまたは追加として、官能基のタイプにかかわらず、炭素原子に1つの自由原子価を有する任意の有機置換基を含むオルガニル基を含む。有機基はまた、ヘテロシクリル基を含みうる。ヘテロ環式化合物の任意の環原子から水素原子を除去することにより形成される1価基を含みうる。(少なくとも2つの異なる元素の原子を環員として有する環式化合物、この場合、1つは炭素である)。好ましくは、有機基中の非炭素原子は、水素、ハロ、リン、窒素、酸素、ケイ素、および/または硫黄から、より好ましくは、水素、窒素、酸素、リン、および/または硫黄から選択されうる。
【0231】
最も好ましい有機基は、任意選択で、次のヘテロ原子含有部分、すなわち、オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、イミノ、ニトリロ、および/またはそれらの組合せの1つ以上との組合せで、次の炭素含有部分、すなわち、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、カルボキシ、カルボニル、ホルミル、および/またはそれらの組合せの1つ以上を含む。有機基は、複数(好ましくは2つ)の上述の炭素含有部分および/またはヘテロ原子部分の同一部分に、すべての化学的に可能な組合せを含む(たとえば、アルコキシおよびカルボニルは、互いに直接装着されるのであれば、アルコキシカルボニル基を示す)。
【0232】
本明細書で用いられる「ヒドロカルボ基」という用語は、有機基の一部であり、1つ以上の水素原子と1つ以上の炭素原子とからなる任意の一価部分または多価部分(任意選択で、1つ以上の他の部分に装着される)を意味し、1つ以上の飽和、不飽和、および/または芳香族の部分を含みうる。ヒドロカルボ基は、次の基の1つ以上を含みうる。ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を除去することにより形成された一価基を含む(たとえば、アルキル)。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2個の水素原子を除去することにより形成された二価基を含み、それらの自由原子価は二重結合に関与しない(たとえば、アルキレン)。ヒドロカルビリデン基は、炭化水素の同一の炭素原子から2個の水素原子を除去することにより形成された二価基(「RC=」により表されうる)を含み、それらの自由原子価は、二重結合に関与する(たとえば、アルキリデン)。ヒドロカルビリジン基は、炭化水素の同一の炭素原子から3個の水素原子を除去することにより形成された三価基(「RC≡」により表されうる)を含み、自由原子価は、三重結合に関与する(たとえば、アルキリジン)。ヒドロカルボ基はまた、飽和炭素-炭素単結合(たとえば、アルキル基中)、不飽和二重および/または三重炭素-炭素結合(たとえば、それぞれ、アルケニル基およびアルキニル基中)、芳香族基(たとえば、アリール基中)、ならびに/あるいは同一の部分内のそれらの組合せを含みうるとともに、指定があれば、他の官能基で置換されうる。
【0233】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語またはその均等物(たとえば、「アルク」)は、適切であれば、とくに文脈上明確に示されてないかぎり、本明細書に記載されるような任意の他のヒドロカルボ基を包含する用語(たとえば、二重結合、三重結合、芳香族部分(たとえば、それぞれ、アルケニル、アルキニル、および/またはアリール)、および/またはそれらの組合せ(たとえば、アラルキル)、さらには2つ以上の部分を結合する任意の多価ヒドロカルボ種(たとえば、二価ヒドロカルビレン基、たとえば、アルキレン)を含む)により、容易に置き換えられうる。
【0234】
本明細書に挙げられた任意の基または部分(たとえば、置換基として)は、とくに明記されていないかぎりまたはとくに文脈上明確に異なる指定がないかぎり、多価基または一価基でありうる(たとえば、2つの他の部分を結合する二価ヒドロカルビレン部分)。しかしながら、本明細書に指定があれば、そのような一価基または多価基はまた、依然として、任意選択の置換基を含みうる。3つ以上の原子の鎖を含む基は、鎖が全体的にまたは部分的に線状、分岐状でありうる、および/または環(スピロ環および/または縮合環を含む)を形成しうる基を意味する。特定の原子の全数は、特定の置換基に対して規定され、たとえば、C1~Nオルガノは、1~N個の炭素原子を含むオルガノ部分を意味する。本明細書の式のいずれかでは、1つ以上の置換基が部分中の任意の特定の原子に装着されるように表されていない場合(たとえば、鎖および/または環に沿った特定の位置)、置換基は、任意のHと交換しうる、および/または化学的に好適および/または有効な部分の任意の利用可能な位置に位置しうる。
【0235】
好ましくは、本明細書に列挙されたオルガノ基のいずれは、1~36個、より好ましくは1~18個の炭素原子を含む。オルガノ基の炭素原子数は、1~12個、特定的には両端を含めて1~10個、たとえば1~4個の炭素原子であることがとくに好ましい。
【0236】
本明細書で用いられる場合、括弧内に与えられたある特徴を含む化学用語(具体的に特定された化合物のlUAPC名以外)、たとえば、(アル)アルキルおよび/または(コ)ポリマーは、を意味する、括弧内の部分が、内容から分かるように任意選択であるため、たとえば、(コ)ポリマーという用語は、コポリマーおよびポリマーの両方を意味する。
【0237】
材料と、本明細書に記載の使用のために配合および/または組込みが行われうるポリマーおよび/または樹脂と、の相溶性を向上させるために、ポリマーおよび/またはオリゴマーの繰返しユニット上の置換基を選択しうる。したがって、樹脂との物理的絡合いまたは内部配置を最適化するために、置換基のサイズおよび長さを選択してもよいし、または必要に応じて、そのような他の樹脂との化学反応および/または架橋が可能な他の反応性物質を含んでいても含んでいなくてもない。
【0238】
本明細書に記載の本発明の一部または全部を構成するおよび/またはそれらで使用される特定の部分、種、基、繰返しユニット、化合物、オリゴマー、ポリマー、材料、混合物、組成物、および/または配合物は、1つ以上の異なる形態として、たとえば、次の網羅的でないリスト、すなわち、立体異性体(たとえば、エナンチオマー(たとえば、E型および/またはZ型)、ジアステレオ異性体、および/または幾何異性体)、互変異性体(たとえば、ケト形および/またはエノール形)、コンフォーマー、塩、双性イオン、錯体(たとえば、キレート、クラスレート、クラウン化合物、キプタンド/クリプテード、包接化合物、インターカレーション化合物、侵入形化合物、配位子錯体、有機金属錯体、非化学量論錯体、TT付加物、溶媒和物、および/または水和物)、同位体置換形、高分子構成[たとえば、ホモポリマーまたはコポリマー、ランダムポリマー、グラフトポリマー、および/またはブロックポリマー、線状ポリマーおよび/または分岐状ポリマー(たとえば、星形および/または側鎖分岐状)、架橋ポリマーおよび/またはネットワークポリマー、二価/または三価繰返しユニットから取得可能なポリマー、デンドリマー、異なるタクティシティーのポリマー(たとえば、アイソタクチックポリマー、またはシンジオタクチックポリマー、またはアタクチックポリマー)]、多形体(たとえば、侵入形、結晶形、および/またはアモルファス形)、異相、固溶体、および/または可能であればそれらの組合せおよび/またはそれらの混合物のいずれかとして存在しうる。本発明は、本明細書に定義される有効なすべてのそのような形態を包含および/または使用する。
【0239】
本明細書の式(e)は、ポリマー混合物または一連の個別化合物を表しうる。本明細書の式(e)が単分散(たとえば、化合物)種を表す場合、そこに示されるいずれの数値変数の値も(たとえば、繰返しユニットの数を表す「n」など)、独立して、特定の範囲以内の整数(または文脈上許容されるのであればゼロ)である。式が多分散オリゴマーおよび/またはポリマー混合物中に存在する多くの個別の種の平均構造を表す場合、式に示されるいずれの変数の値も、特定の範囲を有する実数の非整数でありうる。
【0240】
「有効」、「許容可能」、「活性」、および/または「好適」という用語は(たとえば、必要に応じて、本発明に係るおよび/または本明細書に記載の任意のプロセス、使用、方法、適用、調製、製品、材料、配合物、化合物、モノマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、および/またはポリマーを参照して)、本明細書に記載のように、適正に使用されれば、有用に追加および/または組込みがなされて所要の性質を提供する本発明の特徴を参照することが理解されよう。そのような有用性は、材料が、たとえば、上述の使用に必要な性質を有する場合、直接的でありうるし、および/または、たとえば、材料が、直接的有用性の他の材料の調製時に合成中間体および/または診断ツールとして使用される場合、間接でありうる。本明細書で用いられる場合、これらの用語はまた、官能基が、有効、許容可能、活性、および/または好適な最終製品の製造に適合性することを意味する。
【0241】
本発明の好ましい有用性は、接着剤組成物ラミネートテキスタイル製品、たとえば、床カバー、たとえば、カーペット、カーペットタイル、ラグ、およびマットを作製するための本明細書に記載のポリマーの使用を含む。
【0242】
たとえば、接着剤用途に使用される樹脂のサステイナビリティーを向上させるために、バイオ再生可能な材料を使用する需要が増加しつつある。近年、地球規模の環境問題をもたらす化石燃料資源の枯渇または大気中の二酸化炭素の増加が問題になっていることを考慮して、バイオマス資源からのこれらのポリマーの原料を製造する方法に、多くの関心が払われてきた。これらの資源は再生可能であり、したがって、カーボンニュートラルなバイオマスを有するため、そのような方法は、将来、とくに重要性が増すことが期待される。したがって、可能であれば、本明細書で用いられる成分をできるかぎりバイオ再生可能にすることが、本発明の好ましい特徴および本明細書に記載の態様である。
【0243】
好ましくは、本発明で使用されるポリマーPの形成に使用される成分の少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%、特定的には少なくとも40wt%は、少なくとも1つのバイオ再生可能材料から誘導されうる。バイオ再生可能な材料は、バイオ再生可能な資源から完全にまたは部分的に取得されうる。したがって、また、ポリマーPおよび/またはホットメルト接着剤の成分のバイオ再生可能率を決定する、炭素14含有率を測定することが好ましい。バイオ系という用語も、バイオ再生可能に対する同義語として本明細書で用いられる(本明細書に定義されるとおり)。
【0244】
炭素14(C14)の含有率は、バイオ系材料の年齢の指標となる。C14が約5,700年の半減期を有し、バイオ再生可能な材料では見いだされるが、化石燃料では見いだされないことは、当技術分野で公知である。したがって、「バイオ再生可能な材料」とは、炭素が非化石生物源に由来する有機材料を意味する。バイオ再生可能な材料の例としては、が挙げられるはとしては、糖、デンプン、トウモロコシ、天然繊維、サトウキビ、ビート、柑橘、木本、セルロース系物質、リグノセルロース系物質、ヘミセルロース、ジャガイモ、植物油、他の多糖、たとえば、ペクチン、キチン、レバン、およびプルラン、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。C14レベルは、液体シンチレーション計数を介してその崩壊プロセス(崩壊/分/g炭素またはdpm/gC)を測定することにより決定可能である。本発明の一実施形態では、ポリマーAおよびまたはポリマーBは、少なくとも約1.5dpm/gC(崩壊/分/g炭素)、より好ましくは少なくとも2dpm/gC、最も好ましくは少なくとも2.5dpm/gC、特定的には少なくとも4dpm/gCの炭素14を含む。
【0245】
本発明の実施形態の多くの他の変形形態では、当業者には自明なことであるだろう。また、そのような変形形態は、本発明の広義の範囲内で想定される。
【0246】
本発明のさらなる態様およびその好ましい特徴は、本明細書の特許請求の範囲に与えられている。また、(本明細書の特許請求の範囲に依存して明記されているか否かにかかわらず)本発明に係るテキスタイル製品のいずれかまたはすべて、たとえば、本明細書の説明におよび/または本明細書の特許請求の範囲に記載されたテキスタイル製品の製造方法のいずれかまたはすべてから取得されるおよび/または取得可能なもの(本明細書の説明におよび/または本明細書の任意の従属請求項に記載されものなどの任意選択のいずれかの特徴を含めて)は、本明細書の説明におよび/または本明細書の特許請求の範囲のいずれかまたはすべてに記載された本発明のいずれかまたはすべての他の態様(たとえば、他の方法および使用)でも、使用されうることも理解されよう。
【0247】
[試験方法:]
とくに指定がないかぎり、本明細書の試験はすべて、本明細書に定義されとおり標準条件下で行われる。
【0248】
[ガラス転移温度(Tg)]
Tgは、50μlの標準TA Instrumentsアルミナカップを備えたTA Instruments DSC Q1000を用いてDSCにより測定された。流量は、50ml/minの窒素であった。また、サンプルは、20~25℃の温度範囲で充填した。次いで、サンプルを-20℃に冷却し、-20℃でサンプルを5℃/minの速度で200℃に加熱した。Tgを実験的に測定できなかった場合、周知のフォックス式を用いて、ポリマーのTgを理論的に計算しうる。「n」個の共重合コモノマーを有するコポリマーのTg(ケルビン単位)は、各コモノマータイプのそれぞれのホモポリマーの重量分率「W」および式Tg値(ケルビン単位)により、式「1/Tg=W/Tg+W/Tg+..........W/Tg」に従って与えられる。ケルビン単位の計算Tgは、容易に℃に変換されうる。
【0249】
[溶融粘度]
溶融粘度は、プレート/プレート25mmスピンドルを備えたAnton Paar Physica MCR301を用いてレオメーターにより測定した。測定時、窒素250ln/hオーバーフローを使用した。ギャップ距離を0.5mmに設定した。サンプルを200℃に加熱した。200℃で、冷却を4℃/minを開始する。冷却時、5s-1の剪断速度で粘度を測定である。
【0250】
[分子量]
文脈上明らかに異なる記述がないかぎり、本明細書で用いられるポリマーまたはオリゴマーの分子量という用語は、重量平均分子量(Mwとも記される)を意味する。Mwは、任意の好適な従来の方法により、たとえば、気相クロマトグラフィー(GPC-以上に記載の方法GCMSと同様に行われる)によりおよび/または以下に記載のSEC方法により測定されうる。GPC方法が好ましい。数平均分子量(Mnとも記される)もまた、Mwと類似の方法により決定されうるかおよび/または理論的に計算されうる。
【0251】
[SECを用いたポリマーの重量平均分子量(Mw)の決定]
ポリマーのMwは、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて、または溶出液として1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロイソプロパノールを用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて決定されうる。
【0252】
[1)テトラヒドロフラン溶出液を用いたSECによるMw]
SEC分析は、ポンプ、オートインジェクター、デガッサー、およびカラムオーブンを含めて、Alliance Separation Module(Waters 2690)を用いて行われた。溶出液は、1.0vol%酢酸が添加されたテトラヒドロフラン(THF)であった。注入量は、150μlであった。フローは、1.0ml/minに設定された。試験対象のサンプルは、40℃の温度でガードカラム(3μmPL)付きの3つのPL Mixed B SECカラム(Polymer Laboratories製)に適用した。検出は、示差屈折率検出器(410を灌水する)を用いて行った。サンプル溶液を8ml THF(+1vol%酢酸)中20mg固体の濃度で調製し、サンプルを24時間にわたり溶解した。500~4,000,000g/molの範囲内の8つのポリスチレン標準(polymer standard services)を用いて校正を行った。三次校正曲線を用いてMillennium 32ソフトウェア(Waters)により計算を行った。取得されたモル質量は、ポリスチレン当量モル質量(g/mol)である。
【0253】
[2)溶出液として1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロイソプロパノールを用いたSECによるMw]
SEC分析は、Waters Alliance2695(ポンプ、デガッサー、およびオートサンプラー)を用いてShodex RI101示差屈折率検出器およびShimadzu CTO 20ACカラムオーブンにより行った。溶出液は、0.2Mカリウムトリフルオロアセテート(KTFA)が添加された1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)であった。注入量は、50μlであった。フローは、0.8ml/minに設定された。ガードカラム(PFG PSS)付きの2つのPSS PFG Linear XLカラム(Polymer Standards Service)に40℃の温度で適用した。検出は、示差屈折率検出器により行った。サンプル溶液を2ml HFIP(+0.2M KTFA)中5mg固体の濃度で調製し、サンプルを24時間にわたり溶解した。500~2,000,000g/molの範囲内の11のポリメチルメタクリレート標準(polymer standard services)を用いた校正を行った。三次校正曲線を用いてEmpower Proソフトウェア(Waters)により計算を行った。従来の校正を介してモル質量分布を取得し、モル質量はポリメチルメタクリレート当量モル質量(g/mol)である。
【0254】
[標準条件]
本明細書で用いられる場合、とくに文脈上異なる指定がないがきり、標準条件(たとえば、フィルムの乾燥用)とは、50%±5%の相対湿度、周囲温度(23℃±2°)、および0.1m/s(以下)のエアフローを意味する。
【0255】
[タック時間(TFT):]
乾燥フィルムにコットンウール片(約1cm3、0.1g)を配置し、コットンウール片に直径4.8cmの1kgの錘を配置することにより(10秒間)、組成物がタック性を維持する時間(タック時間)を決定した。フィルム内またはフィルム上にいかなるのウールもマークも残存させることなく手で基材からコットンウール片を除去可能であった場合、フィルムはもはやタック性でないでない(タックフリー)と考え、フィルムがタックフリーになるのに要する時間をタック時間として記録する。
【0256】
[実施例]
次に、以下の実施例を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、例示を目的としたものにすぎず、限定を目的としたものではない。各成分の量は、以下の成分の全量を基準にして相対重量部として括弧内に与えられている。
【0257】
[実施例A(ポリエステル接着剤)]
以下に記載の標準的なポリエステル合成を用いて、ポリエステルを調製した。
【0258】
成分の1,6-ヘキサンジオール(533g)、テレフタル酸(423g)、n-ブチルクロロスズ(IV)二水和物(0.05g)、およびジステアリルペンタエリトリトールジホスフィット(0.08g)を240℃で反応器内で加熱した。混合物の酸価が2mgKOH/g未満になるまで、反応から生じたる水を除去し、次いで、反応器を180℃に冷却した。フマル酸(194g)、n-ブチルクロロスズ(IV)二水和物(0.05g)。およびモノtertブチル(MTB)ヒドロキノン(0.2g)を反応器に添加し、混合物を210℃に加熱した。混合物の酸価が30mgKOH/g未満になるまで、反応から生じたる水を除去し、次いで、反応器を180℃に冷却した。酸価が4mgKOH/g未満になるまで、減圧下で残留水を除去して、次の特徴、すなわち、ヒドロキシル価=22.1mgKOH/g、酸価AV=3.6mgKOH/g、結晶化温度Tc=59℃、150℃の粘度8.0Pa・sを有するポリエステルを得る。
【0259】
以下に記載の実施例B~Gは、実施例Aに対して以上に記載された方法と同様に表1に示される成分(モル量)を用いて調製されたポリエステル(PE)である。
【0260】
【表1】
【0261】
表1中、HDは1,6-ヘキサンジオールを表し、BDは1,4-ブタンジオールを表し、EGはエチレングリコールを表し、TPAはテレフタル酸を表し、ScAは無水コハク酸を表し、FAはフマル酸を表し、そしてAdAはアジピン酸を表す。
【0262】
当業者に公知の任意の好適な方法により、ポリエステルBおよびFも調製可能である。たとえば、ポリエステルEおよびFは、米国特許出願公開第号2010-122250明細書に記載のポリエステルホットメルト接着剤の実施例のいずれかを調製するために記載された方法のいずれかに類似した方法により調製されうる(たとえば、段落[0161]の実施例1、段落[0162]の実施例1B、段落[0163]および/または実施例1C)。
【0263】
[実施例1(カーペットタイル-ナイロンポリエステルラミネート)]
実施例Aのポリエステル接着剤を用いて、以下のナイロンタフトカーペットタイルを作製しうる。ナイロン-6繊維をナイロン-6一次バッキングに織成する。国際公開第2012/076348号パンフレット(Niaga)に記載の超音波結合方法により、繊維ループを固着する。繊維ループが依然として熱いうちに(150℃)、120~150℃の温度で適用された実施例1で調製された溶融結晶性ポリエステル接着剤を用いて、ポリエステルの二次キャリヤー層を一次バッキングに装着する。リサイクル可能な耐久性ナイロン-6カーペットタイルが取得される。
【0264】
100~120℃の温度に加熱することにより、ホットメルトポリエステル接着剤が軟化し、ナイロンタフトおよびナイロン一次バッキングをポリエステルキャリヤーから剥離可能である時、カーペットタイルをリサイクルすることが可能である。
【0265】
[実施例2(カーペットタイル-ポリエステルラミネート)]
ナイロン-6タフトおよびナイロン-6一次バッキングをポリエステルタフトおよびポリエステル一次バッキングに置き換えて、実施例1と同様にポリエステルタフトを有するカーペットタイルを作製することが可能である。その結果、ポリエステルのみからなる耐久性のリサイクル可能なラミネートカーペットタイルが得られる。100~120℃に加熱してポリエステル接着剤を軟化させ、かつキャリヤーからタフトおよび一次バッキングを分離することにより、ポリエステルタイルをリサイクルすることが可能である。代替的に、カーペットタイルがポリエステル成分のみを有するため、任意選択で、ポリエステルの分解に用いられるいずれの公知の方法による分離工程を用いることなく、リサイクル可能である。
【0266】
[実施例3(カーペットタイル-ポリエステル非ラミネート)]
キャリヤー層を追加することなく(すなわち、単に実施例Aのポリエステル接着剤のみで)、実施例2に記載されるようにカーペットタイルを作製することが可能である。そのようなカーペットタイルは、ポリエステルタフトに対して十分な固着を提供し、しかも(ポリエステルを分解する公知のいずれか方法による)分離工程を用いることなく、直接リサイクル可能であるか、または100~120℃に加熱して、接着剤からポリエステルタフトおよびバッキングを分離することが可能である。
【0267】
[比較例I(カーペットタイル-ナイロン-ポリエステルラミネート不良固着)]
ポリエステル接着剤Aのみによりタフトを永久的に結合させるように、国際公開第2012/076348号パンフレットに記載の超音波結合方法を省略した以外は、実施例1に記載されるのに同様にナイロンポリエステルカーペットタイルを作製する。しかしながら、リサイクル可能な得られたカーペットタイルは、機械的負荷下でタフトが容易に除去されるため、不十分な耐久性を有する。
【0268】
さらに、以下の表に示される材料を用いて、実施例1に記載のものに類似した方法で、本発明に係るテキスタイル製品を作製しうる。
【0269】
[実施例4~6]
本発明に係るテキスタイル製品のさらなる実施例(実施例4~6)は、以下の表2にある。
【0270】
【表2】
【0271】
実施例4および6は、広幅織りカーペットとして使用するのにとくに好適であり、実施例4は、100%ポリエステル(PE)であるか、ポリアミド(PA)とポリエステル(PE)とのラミネートであるかにかかわらず、カーペットタイルとして使用するのにとくに好適であるが、広幅織りカーペットとしても使用されうる。実施例のそれぞれで、一次バッキング中へのグルーの良好な浸透が得られるように、機械設定を調整する。
【0272】
本明細書に記載の教示に照らして、テキスタイル製品が100%ポリエステルのグルーを含み、かつ広幅織りカーペットおよび/またはカーペットタイルのいずれかに好適であるように、分子量および原料を最適化して、本明細書の実施例(たとえば、実施例4~6)のものに類似したテキスタイル製品を作製することが可能である。
【0273】
[実施例7]
PEを作製するために使用した他の成分の全質量の6質量%の量で添加された5-(ソジオスルホ)イソフタル酸(SSIPA)の追加の成分から作製された半結晶性スルホ官能性ポリエステルをホットメルトグルーとして使用して、実施例4に対して記載されたようにテキスタイル製品を作製した。そのような半結晶性スルホ官能性PEグルーは、テキスタイル製品中の静電荷の蓄積を低減するという追加の利点を有しうると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6