IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社セイブ・ザ・プラネットの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/84 20060101AFI20230426BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F23D14/84 B
F23D17/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019090767
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020186843
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519048584
【氏名又は名称】株式会社セイブ・ザ・プラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 光宏
(72)【発明者】
【氏名】楠原 功
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107559883(CN,A)
【文献】特開2010-266160(JP,A)
【文献】実開平04-108141(JP,U)
【文献】特開昭59-049419(JP,A)
【文献】実開平06-014727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/84
F23D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる方向へ貫通し、第1のガスが噴出する複数の貫通口が形成されたノズルプレートと、
前記ノズルプレートに対して相対移動可能に設けられ、複数の前記貫通口のうちのいずれかに一致する開口部を有するセレクタと、
を備え
前記セレクタの前記開口部の貫通方向と、前記開口部の内壁面の角度は、前記開口部の貫通方向と、前記ノズルプレートの前記貫通口の貫通方向の角度よりも大きい燃焼装置。
【請求項2】
第1方向へ貫通し、第1のガスが噴出する複数の第1貫通口と、前記第1貫通口とは異なる第2方向へ貫通し、前記第1のガスが噴出する複数の第2貫通口と、が形成されたノズルプレートと、
前記ノズルプレートに対して相対回転可能に設けられ、前記第1貫通口及び前記第2貫通口のいずれかに一致する複数の開口部を有するセレクタと、
を備え
前記セレクタの前記開口部の貫通方向と、前記開口部の内壁面の角度は、前記開口部の貫通方向と、前記ノズルプレートの前記貫通口の貫通方向の角度よりも大きい燃焼装置。
【請求項3】
前記ノズルプレートの前記第1貫通口及び前記第2貫通口は、前記セレクタの回転軸を中心とする円周上に配置される請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記第1貫通口、前記第2貫通口、及び前記開口部は、前記円周上に等間隔に配置される請求項3に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記ノズルプレートと前記セレクタの中央部には、前記第1のガスとは異なる第2のガスが噴出する開口部が形成される請求項1乃至のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記第1のガスが燃焼する燃焼室を形成するケーシングを備える請求項1乃至のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記ノズルプレートの前記貫通口は、前記ケーシングの内壁面に沿って形成される請求項に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量を削減する観点から、燃焼しても二酸化炭素が発生しないアンモニアが、次世代の燃料として注目されている。しかしながら、アンモニアは、炭素系の燃料と比較して、難燃性が高く着火させるのが困難である。また、層流燃焼速度が低く完全燃焼させるのが困難である。そのため、アンモニアを燃料とする燃焼装置では、燃料の不完全燃焼により、未燃のアンモニアや窒素酸化物が生成されることがある。そこで、アンモニアを効率よく燃焼させるための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される燃焼装置では、アンモニアなどの燃料と空気などの酸化剤の混合ガスが燃焼する燃焼室に、混合ガスとは別に酸化剤を供給する。これにより、未燃のアンモニアと酸化剤との間で二次燃焼が生じ、アンモニアが効率よく燃焼する。しかしながら、上述の燃焼装置では、燃焼ガスの温度が低下することにより、燃料ガスの燃焼効率が低下したり、燃料ガスへ着火するための装置が別途必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-155412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は上記の問題点を解決し、燃焼ガスを着火させて効率よく燃焼させる燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の燃焼装置は、相互に異なる方向へ貫通し、第1のガスが噴出する複数の貫通口が形成されたノズルプレートと、ノズルプレートに対して相対移動可能に設けられ、複数の貫通口のうちのいずれかに一致する開口部を有するセレクタと、を備える。
【0007】
本発明に係る第2の燃焼装置は、第1方向へ貫通し、第1のガスが噴出する複数の第1貫通口と、第1貫通口とは異なる第2方向へ貫通し、第1のガスが噴出する複数の第2貫通口と、が形成されたノズルプレートと、ノズルプレートに対して相対回転可能に設けられ、第1貫通口及び第2貫通口のいずれかに一致する複数の開口部を有するセレクタと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る燃焼装置では、ノズルプレートに設けられ、ガスの噴出方向が異なる貫通口を、セレクタを用いて選択することで、ガスの噴出方向を変えることができる。したがって、当該ガスを用いた燃焼を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る燃焼装置の斜視図である。
図2】燃焼装置のAA断面を示す図である。
図3】バーナの展開斜視図である。
図4】ノズルプレートの平面図である。
図5】セレクタの平面図である。
図6】セレクタの開口部と、ノズルプレートの貫通口の位置関係を模式的に示す図である。
図7】バーナの動作を説明するための図である。
図8】ノズルプレートの右端に位置する貫通口とセレクタの開口部の位置関係を模式的に示す図である。
図9】燃焼ガスの噴出方向を説明するための図である。
図10】ノズルプレートの右端に位置する貫通口とセレクタの開口部の位置関係を模式的に示す図である。
図11】燃焼ガスの噴出方向を説明するための図である。
図12】ノズルプレートの右端に位置する貫通口とセレクタの開口部の位置関係を模式的に示す図である。
図13】燃焼ガスの噴出方向を説明するための図である。
図14】開口部の内壁面の角度と、貫通口の貫通方向との関係を説明するための図である。
図15】ノズルプレートとセレクタの位置関係を説明するための図である。
図16】開口部と貫通口の位置関係を模式的に示す図である。
図17】ノズルプレートの変形例を示す図である。
図18】ノズルプレートのB1断面を、セレクタの断面とともに示す図である。
図19】ノズルプレートのB2断面を、セレクタの断面とともに示す図である。
図20】ノズルプレートのB3断面を、セレクタの断面とともに示す図である。
図21】ノズルプレートのB1断面を、セレクタの断面とともに示す図である。
図22】ノズルプレートのB2断面を、セレクタの断面とともに示す図である。
図23】ノズルプレートのB3断面を、セレクタの断面とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明にあたっては、相互に直行するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を適宜用いる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る燃焼装置10の斜視図である。燃焼装置10は、例えばアンモニアを主成分とする燃焼ガスを主たる燃料とする燃焼装置である。図1に示されるように、燃焼装置10は、フレーム20と、フレーム20に支持されるケーシング30及びバーナ40を備えている。
【0012】
フレーム20は、ベース21と、ベース21の上方に4本の支柱22によって支持される支持板23と、支持板23の上方に4本の支柱24によって支持される支持部材25を備えている。
【0013】
ベース21は、例えば鉄やステンレス鋼などの金属からなる環状の部材である。ベース21は、燃焼装置10が設置される床などの設置面に載置される。
【0014】
支柱22は、長手方向をZ軸方向とする円柱状の部材である。支柱22は、例えば鉄やステンレスなどの金属からなり、ボルトやネジなどによって、ベース21の上面(+Z側の面)に固定されている。
【0015】
支持板23は、正方形板状の部材である。支持板23は、ベース21の上方に、支柱22によって水平に支持されている。支持板23は、下面の4つの角に支柱22の上端が例えばボルト等によって固定されることで、ベース21と一体化されている。図2は、図1における燃焼装置10のAA断面を示す図である。図2に示されるように、支持板23の中央部には、鉛直方向(Z軸方向)に貫通する円形の開口23aが形成されている。支持板23は、例えば、鉄やステンレス鋼などからなる。
【0016】
図1に示されるように、支柱24は、長手方向をZ軸方向とする円柱状の部材である。支柱24は、例えば鉄やステンレスなどの金属からなり、ボルトやネジなどによって、支持板23の上面の4つの角に固定されている。
【0017】
支持部材25は、環状部25aと、環状部25aから放射状に、XY面に平行に伸びる4本のアーム25bからなる部材である。支持部材25は、各アーム25bの一端が支柱24によって支持されることで、支持板23の上方に水平になった状態で支持されている。支持部材25は、例えば鉄やステンレス鋼などに代表される耐熱性のある金属からなる。
【0018】
バーナ40は、支持板23の下面に固定されている。図3は、バーナ40の展開斜視図である。図3に示されるように、バーナ40は、ノズル部材41,底板42,環状部材43,ノズルプレート44,セレクタ45、及びスワラー46を備えている。
【0019】
ノズル部材41は、内部が中空で上端部と下端部が開放された部材である。ノズル部材41は、フランジ部411,大径部412,及び突出部413の3部分を有する部材である。フランジ部411は、環状に整形され、上面(+Z側の面)及び下面(-Z側の面)が平坦になっている。大径部412は、フランジ部411の下面側に設けられ円筒状に整形されている。また、突出部413は、フランジ部411の上面側に設けられ下端部の外径が大きく上端部の外径が小さくなるように整形されている。突出部413の上端には、小径部413aが形成されている。小径部413aの外径は、突出部413の外径よりも小さい。図2に示されるように、ノズル部材41の内部空間は、下端部の内径が大きく上端部の内径が小さくなった空間になっている。ノズル部材41は、腐食や熱に対する耐性を有するステンレス鋼などの金属からなる。
【0020】
図3に示されるように、底板42は円形板状の部材である。底板42の外径は、ノズル部材41に設けられる大径部412の外径とほぼ等しい。
【0021】
環状部材43は、フランジ部431,大径部432,及び小径部433の3部分からなる環状の部材である。フランジ部431は、環状に整形され、上面及び下面が平坦になっている。大径部432は、フランジ部431の下面側に設けられ、円筒状に整形されている。大径部432の外径は、ノズル部材41に設けられるフランジ部411の外径と等しい。また、小径部433は、フランジ部431の上面側に設けられ、円筒状に整形されている。環状部材43は、ノズル部材41と同様に、ステンレス鋼などの金属からなる。
【0022】
ノズルプレート44は、中央に円形の開口44aが形成された円形板状の部材である。ノズルプレート44の外径は、環状部材43の小径部433の外径と等しく、開口44aの内径は、ノズル部材41の小径部413aの外径とほぼ等しい。
【0023】
図4は、ノズルプレート44の平面図である。図4に示されるように、ノズルプレート44には、仮想線で示される円C1上に形成された3つの貫通口51,52,53からなる8つの貫通口群441が形成されている。なお、円C1は、中心がノズルプレート44の上面(+Z側の面)の中心と一致する円である。
【0024】
各貫通口群441を構成する8つの貫通口51は、円C1上に等間隔に形成されている。そして、各貫通口51を中心に貫通口52,53がそれぞれ配置されている。貫通口51,52も、円C1上に等間隔に形成されており、貫通口51から貫通口52までの距離と、貫通口51から貫通口53までの距離は等しい。
【0025】
貫通口51~53は、それぞれノズルプレート44を貫通する方向が異なっている。例えば貫通口51は、ノズルプレート44の上面に垂直な方向にノズルプレート44を貫通している。また、貫通口52は、ノズルプレート44の上面から下面に向かうに連れてノズルプレート44の中心に近づく方向に貫通し、貫通口53は、ノズルプレート44の上面から下面に向かうに連れてノズルプレート44の中心から遠ざかる方向に貫通している。このため、ノズルプレート44の上面では、貫通口51~53が円C1上に位置するが、ノズルプレート44の下面側では、貫通口52,53が円C1上に位置しない。上述のように構成されるノズルプレート44は、ノズル部材41等と同様に、ステンレス鋼などの金属からなる。
【0026】
図3に示されるように、セレクタ45は、中央に円形の開口45aが形成された円形板状の部材である。セレクタ45の外径は、ノズルプレート44の外径と等しい。また、開口45aの内径は、ノズルプレート44の開口44aの内径と等しい。
【0027】
図5は、セレクタ45の平面図である。図5に示されるように、セレクタ45には、仮想線で示される円C1上に8つの開口部451が形成されている。なお、円C1は、中心がセレクタ45の上面(+Z側の面)の中心と一致する円である。8つの開口部451は、円C1上に等間隔に形成されている。開口部451は、セレクタ45をZ軸方向に貫通する円形の貫通口である。開口部451の内壁面は、セレクタ45の上面から下面に向かって内径が小さくなるテーパー形状に整形されている。セレクタ45の下面での開口部451の内径は、ノズルプレート44の貫通口51~53の内径とほぼ等しい。上述のように構成されるセレクタ45は、ノズル部材41等と同様に、ステンレス鋼などの金属からなる。
【0028】
図3に示されるように、スワラー46は、ハブとハブを中心に放射状に延びる複数の羽からなる部材である。スワラー46は、ノズル部材41等と同様に、ステンレス鋼などの金属からなる。
【0029】
上述したノズル部材41,底板42,環状部材43,ノズルプレート44,セレクタ45、及びスワラー46からなるバーナ40を組み立てる際には、図3を参照するとわかるように、ノズル部材41の下面に、底板42を取り付ける。底板42は、例えばネジなどによって取り付けることができる。次に、環状部材43の下方からノズル部材41の上端部を挿入する。これにより、図2に示されるように、環状部材43の大径部432の下面が、ノズル部材41のフランジ部411の上面に当接し、環状部材43の大径部432にノズル部材41の突出部413が挿入され、ノズル部材41と環状部材43が隙間なく嵌合する。ノズル部材41のフランジ部411に環状部材43の大径部432を、ネジなどを用いて固定することで、ノズル部材41と環状部材43が一体化する。
【0030】
次に、ノズルプレート44の開口44aに、環状部材43から突出するノズル部材41の小径部413aを挿入することで、ノズルプレート44をノズル部材41に嵌合する。これにより、ノズルプレート44は、中央部がノズル部材41によって支持され、外縁部が環状部材43によって支持された状態になる。ノズルプレート44は、ネジなどによって環状部材43に固定される。
【0031】
ノズルプレート44を固定したら、次に、セレクタ45の開口45aに、ノズル部材41の小径部413aを挿入することで、セレクタ45をノズル部材41に嵌合する。この状態のときに、例えば小径部413aの上端部にストッパ等を取り付けることで、ノズルプレート44が小径部413aを中心に回動可能に取り付けられる。
【0032】
例えば、図6は、セレクタ45の開口部451と、ノズルプレート44の貫通口51~53の位置関係を模式的に示す図である。図6を参照するとわかるように、セレクタ45の開口部451と、ノズルプレート44の貫通口51~53は、円C1上に形成されている。そのため、ノズル部材41にノズルプレート44とセレクタ45が取り付けられたときには、セレクタ45を回転させることで、セレクタ45の開口部451と、ノズルプレート44の貫通口51~53のいずれかを一致させることができる。
【0033】
次に、スワラー46をノズル部材41の小径部413aの内部に配置する。スワラー46は、例えば、ノズル部材41に設けられる不図示の支持部材によって支持される。
【0034】
以上の手順で、ノズル部材41,底板42,環状部材43,ノズルプレート44,セレクタ45、及びスワラー46を組み合わせることで、バーナ40が完成する。バーナ40では、図2に示されるように、ノズル部材41と底板42によって、混合部A2が形成され、ノズル部材41と環状部材43によって、混合部A3が形成される。
【0035】
ノズル部材41には、外部空間と混合部A2とを連絡する開口41a,41bが形成され、環状部材43には、外部空間と混合部A3とを連絡する開口43a,43bが形成されている。
【0036】
バーナ40は、上端部がフレーム20を構成する支持板23の開口23aに挿入された状態で、環状部材43のフランジ部431が、支持板23の下面にボルトやネジによって固定されることで、フレーム20に取り付けられる。
【0037】
図1に戻り、ケーシング30は、長手方向をZ軸方向とする円筒状の部材である。ケーシング30は、例えば耐熱性を有する石英ガラスなどから構成される。図2に示されるように、ケーシング30は、バーナ40を構成する環状部材43の小径部433が下方から挿入された状態で、環状部材43のフランジ部431に載置される。また、ケーシング30の上端部は、フレーム20を構成する支持部材25に支持される。ケーシング30と支持部材25によって、バーナ40から供給される燃料が燃焼する燃焼室A1が形成される。
【0038】
次に、上述のように構成される燃焼装置10の動作について説明する。図7は、バーナ40の動作を説明するための図である。燃焼装置10を稼働するときには、図7に示されるように、バーナ40の混合部A2に、開口41aを介してアンモニアを供給し、開口41bを介して酸化剤としての空気を供給する。また、混合部A3に、開口43aを介してメタンガスを供給し、開口43bを介して酸化剤としての空気を供給する。
【0039】
混合部A2では、供給されたアンモニアと酸素が混合し燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、燃焼装置10の主たる燃焼ガスとなる。以下、この燃焼ガスを第1燃焼ガスと表す。第1の燃焼ガスは、スワラー46を介して、渦を巻きながら燃焼室A1へ噴出される。
【0040】
また、混合部A3では、供給されたメタンガスと酸素が混合し燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、第1燃焼ガスに比較して着火性能や燃焼性能が高く、第1燃焼ガスの着火や二次燃焼になどに用いられる。以下、この燃焼ガスを第2燃焼ガスと表す。第2燃焼ガスは、ノズルプレート44の貫通口51~53のいずれかと、セレクタ45の開口部451を介して、燃焼室A1へ供給される。燃焼室A1へ供給される第2燃焼ガスは、不図示の着火装置によって着火される。これにより、燃焼室A1では、第2燃焼ガスによる燃焼が継続的に維持される。着火装置としては、例えばアーク放電を発生させる圧電点火装置を用いることができる。
【0041】
燃焼室A1に供給される第1燃焼ガスは、第2燃焼ガスの燃焼により着火する。これにより、燃焼室A1では、第1燃焼ガスが継続的に燃焼する。主燃料としての第1燃焼ガスによる燃焼が開始された後は、混合部A3へのメタンガスや酸素の供給を停止してもよい。
【0042】
本実施形態に係る燃焼装置10では、セレクタ45によって、第2燃焼ガスが噴出するノズルプレート44の貫通口51~53を選択することで、第2燃焼ガスの噴出方向を変更することができる。
【0043】
図8は、図6に示されるノズルプレート44の右端に位置する貫通口51とセレクタ45の開口部451の位置関係を模式的に示す図である。図8に示されるように、セレクタ45をノズルプレート44に対して相対回転させて、ノズルプレート44の貫通口51とセレクタ45の開口部451を重ねることで、図9の白抜き矢印に示されるように、第2燃焼ガスを、上方に噴出させることができる。
【0044】
図10は、図6に示されるノズルプレート44の右端に位置する貫通口52とセレクタ45の開口部451の位置関係を模式的に示す図である。図10に示されるように、セレクタ45をノズルプレート44に対して相対回転させて、ノズルプレート44の貫通口52とセレクタ45の開口部451を重ねることで、図11の白抜き矢印に示されるように、第2燃焼ガスを、燃焼室A1を規定するケーシング30に向けて噴出させることができる。
【0045】
図12は、図6に示されるノズルプレート44の右端に位置する貫通口53とセレクタ45の開口部451の位置関係を模式的に示す図である。図12に示されるように、セレクタ45をノズルプレート44に対して相対回転させて、ノズルプレート44の貫通口53とセレクタ45の開口部451を重ねることで、図13の白抜き矢印に示されるように、第2燃焼ガスを、燃焼室A1の中央に向けて噴出させることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る燃焼装置10では、主燃料となる第1燃焼ガスに比較して燃焼性能の高い燃焼ガスの噴出方向を変えることができる。したがって、例えば、燃焼装置10のウォーミングアップを行う場合や、燃焼室A1の外部の温度が低いような場合には、図11に示されるように、第2燃焼ガスをケーシング30に向けて噴出させることによりケーシング30の予熱を行ったり、燃焼室A1の内部と外気との温度差による燃焼効率の低下を抑制することができる。
【0047】
また、例えば、主燃料を着火させる際などには、図13に示されるように、燃焼室A1の中央に第2燃焼ガスを噴出させて、主燃料の燃焼を効率よく促進させることができる。
【0048】
また、例えば、未燃となる主燃料の発生を抑制するためには、図9に示されるように、燃焼室A1の上方に第2燃焼ガスを噴出させることで、未燃の主燃料の二次燃焼を効率的に促進させることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る燃焼装置10では、主燃料を着火させて効率よく燃焼させることができる。
【0050】
上記実施形態では、第2燃焼ガスが噴出する貫通口51~53及び開口部451が、ケーシング30の内壁面に沿って形成されている。これにより、効率よくケーシング30を予熱することができる。また、ケーシング30の外部の温度が低い場合にも、効率よく第1燃焼ガスを燃焼させることが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ノズルプレート44に24個の貫通口が形成されている場合について説明した。ノズルプレート44の貫通口の数はこれに限定されるものではなく、ノズルプレート44には、相互に異なる向きの貫通口が形成され、セレクタ45によりいずれかの貫通口を選択することができればよい。この場合には、貫通口は円C1に沿って形成される必要はない。
【0052】
上記実施形態では、ノズルプレート44に貫通方向が異なる3種類の貫通口51~53が形成されていることとした。これに限らず、ノズルプレート44には、貫通方向が異なる2種類の貫通口や、貫通方向が異なる4種類以上の貫通口が形成されていてもよい。4種類以上の貫通口を設けることで、燃焼ガスの噴出方向を細かく調整することが可能となる。
【0053】
上記実施形態では、ノズルプレート44に対してセレクタ45を相対回転することにより、貫通口51~53からいずれかの貫通口を選択することとした。これに限らず、ノズルプレート44に対して、例えばスライド可能にセレクタ45を設け、ノズルプレート44に対してセレクタ45を相対移動して、貫通口を選択することとしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、ノズルプレート44に貫通口51~53それぞれが、円C1に沿って等間隔に配置されている場合について説明した。これに限らず、貫通口51~53それぞれは、円C1に沿って等間隔に形成されていなくてもよい。
【0055】
上記実施形態では、セレクタ45の開口部が円形であることとした。セレクタ45の開口部451の形状はこれに限定されるものではなく、開口部451の形状は、例えば、四角形や多角形などであってもよい。
【0056】
また、本実施形態の燃焼装置10では、一例として図10に示されるように、開口部451の内壁面がテーパー形状に整形されている。図14に示されるように、開口部451の貫通方向(Z軸方向)に対する内壁面の角度θ2は、開口部451の貫通方向(Z軸方向)に対する貫通口52の貫通方向の角度θ1よりも大きいことが好ましい。この条件を満たすことで、貫通口52から噴出する燃焼ガスの方向が、開口部451の形状の影響により変化することがない。開口部451と貫通口53との関係においても同様である。
【0057】
上記実施形態では、ノズルプレート44の貫通口51~53から燃焼ガスを噴出させる場合について説明した。これに限らず、貫通口51~53から酸化剤としての空気や酸素を噴出させることとしてもよい。
【0058】
上記実施形態では、ノズルプレート44の貫通口51~53から、メタンガスを含む燃焼ガスを噴出させる場合について説明した。これに限らず、貫通口51~53から、メタンガス以外のガスを主成分とする燃焼ガスを噴出させることとしてもよい。
【0059】
上記実施形態では、燃焼装置10がケーシング30によって規定される燃焼室A1を備える場合について説明した。これに限らず、燃焼装置10は、必ずしも燃焼室A1を備えていなくてもよい。
【0060】
上記実施形態では、例えば図13に示されるように、ノズルプレート44の上面(+Z側の面)にセレクタ45が配置されていることとした。これに限らず、一例として図15に示されるように、ノズルプレート44とセレクタ45の位置を入れ替えて、セレクタ45の上面にノズルプレート44を配置することとしてもよい。この場合にも、ノズルプレート44を、セレクタ45に対して相対回転させることで、燃焼ガスの吹き出し方向を変えることができる。具体的には、図16を参照するとわかるよう、ノズルプレート44を、セレクタ45に対して相対回転させて、開口部451に貫通口52等を位置決めすることで、燃焼ガスの吹き出し方向を変えることができる。
【0061】
上記実施形態では、燃焼ガスの吹き出し方向(吐出方向)を変えるには、ノズルプレート44に形成された相互に貫通方向が異なる貫通口51~53のいずれかを、セレクタ45の開口部451に位置決めしていた。この構成によれば、セレクタ45の開口部451が貫通口51と貫通口52との間に位置するとき、及びセレクタ45の開口部451が貫通口52と貫通口53との間に位置するときには燃焼ガスの吐出は妨げられるので燃焼ガスの吐出方向を徐々に連続的に変えることができない。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0062】
例えば、燃焼装置10は、上記実施形態における貫通口51と貫通口52との間および貫通口52と貫通口53との間が繋げられた構成であってもよい。すなわち、貫通口51~52が、円C1に沿った位置に応じて貫通方向が異なるように断面形状が徐々に連続的に変化する貫通口54として構成されてもよい。この構成によれば、ノズルプレート44の貫通口54と、セレクタ45の開口部451との位置を時計回り方向に徐々に連続的に回転させることにより、燃焼ガスの吹き出し方向(吐出方向)を徐々に連続的に変えることが可能となる。以下詳細に説明する。
【0063】
図17はノズルプレート44の変形例を示す図である。図17に示されるように、ノズルプレート44には、円C1に沿った位置に応じて貫通方向が異なるように断面形状が徐々に連続的に変化するように構成された貫通口54が形成されている。ここで、貫通口54は、円C1の周方向の位置に応じてノズルプレート44の板厚方向(Z軸方向)の穿孔方向が徐々に変化するように構成されている。従って、かかる長穴である貫通口54に燃焼ガスを流すと、貫通口54の断面形状に応じて(貫通口54と重なるセレクタ45の開口部451の位置に応じて)、燃焼ガスの吹き出し方向を徐々に連続的に変えることが可能となる。
【0064】
図18図19及び図20には、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させたときの断面形状がそれぞれ示されている。図18には、ノズルプレート44のB1断面が、セレクタ45の断面とともに示されている。図19には、ノズルプレート44のB2断面が、セレクタ45の断面とともに示されている。図20には、ノズルプレート44のB3断面が、セレクタ45の断面とともに示されている。
【0065】
ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させると、開口部451が貫通口54に重なり、図19に示すように、まず、下面から上面に向かうにつれてノズルプレート44の中心から離れる方向に貫通した貫通口54の部分が、開口部451に重なる。従って、図11の白抜き矢印に示されるように、燃焼ガスを、燃焼室A1を規定するケーシング30に向けて噴出させることができる。
【0066】
さらに、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させると、図18に示すように、ノズルプレート44の上面に垂直な方向に貫通した貫通口54の部分が、開口部451に重なる。従って、図9の白抜き矢印に示されるように、燃焼ガスを、上方に噴出させることができる
【0067】
さらに、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させると、図20に示すように、下面から上面に向かうにつれてノズルプレート44の中心へ近づく方向に貫通した貫通口54の部分が、開口部451に重なる。従って、図13の白抜き矢印に示されるように、燃焼ガスを、燃焼室A1の中央に向けて噴出させることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施例に係る燃焼装置では、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、本実施例に係る燃焼装置は、上述した実施形態に係る燃焼装置と比較すると、円C1に沿った位置に応じて貫通方向が異なるように断面形状が連続的に変化する貫通口54が設けられているので、セレクタの開口部の位置を、例えば時計回り方向に徐々に連続的に回動させることにより、燃焼ガスの吐出方向を徐々に連続的に変えることが可能となる。
【0069】
さらに、本実施例に係る燃焼装置では、上述した実施形態に係る燃焼装置10と比較すると、燃焼ガスの吐出方向を変えるためのセレクタの開口部の位置の回動距離を短縮できるので、該燃焼ガスの吐出方向を例えば燃焼室の中央側から燃焼室を規定するケーシング側へと急峻に変え易くなる。従って、本実施例に係る燃焼装置は、上述した実施形態に係る燃焼装置10と比較すると、燃焼室の外部の温度が低いような場合には、燃焼ガスの噴出方向を、より急峻にケーシング30に向けることが可能となるので、ケーシング30をより短時間に加熱することができ、燃焼室の内部と外気との温度差による燃焼効率の低下をさらに抑制することが可能となる。
【0070】
なお、かかる動作は、燃焼室内のどの位置に火炎を集中させたいか、といった燃焼制御上の要求事項を精緻に反映させる効果を与え、これにより、好ましい燃焼状態を維持させたり、燃焼開始時にあっては、火炎核の形成場所を適宜調整することが容易となる。
【0071】
上述した変形例では、セレクタ45の下面側に、貫通口54が形成されたノズルプレート44を配置するように構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、セレクタ45の上面側に、貫通口54が形成されたノズルプレート44を配置するように構成されてもよい。この場合においても、上述した変形例と同様の作用効果を得ることができる。以下に図21図23を用いて動作を説明する。
【0072】
図21図22及び図23には、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させたときの断面形状がそれぞれ示されている。図21には、ノズルプレート44のB1断面が、セレクタ45の断面とともに示されている。図22には、ノズルプレート44のB3断面が、セレクタ45の断面とともに示されている。図23には、ノズルプレート44のB2断面が、セレクタ45の断面とともに示されている
【0073】
ここで、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させると、開口部451が貫通口54に重なり、図23に示すように、まず、下面から上面に向かうにつれてノズルプレート44の中心から離れる方向に貫通した貫通口54の部分が、開口部451に重なる。従って、図11の白抜き矢印に示されるように、燃焼ガスを、燃焼室A1を規定するケーシング30に向けて噴出させることができる。
【0074】
さらに、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させると、図21に示すように、ノズルプレート44の上面に垂直な方向に貫通した貫通口54の部分が、開口部451に重なる。従って、図9の白抜き矢印に示されるように、燃焼ガスを、上方に噴出させることができる
【0075】
さらに、ノズルプレート44に対して相対回転可能に設けられたセレクタ45を時計回り方向に徐々に連続的に回転させると、図22に示すように、下面から上面に向かうにつれてノズルプレート44の中心へ近づく方向に貫通した貫通口54の部分が、開口部451に重なる。従って、図13の白抜き矢印に示されるように、燃焼ガスを、燃焼室A1の中央に向けて噴出させることができる。
【0076】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10 燃焼装置
20 フレーム
21 ベース
22,24 支柱
23 支持板
23a 開口
25 支持部材
25a 環状部
25b アーム
30 ケーシング
40 バーナ
41 ノズル部材
411 フランジ部
412 大径部
413 突出部
413a 小径部
41a,41b 開口
42 底板
43 環状部材
431 フランジ部
432 大径部
433 小径部
43a,43b 開口
44 ノズルプレート
441 貫通口群
44a 開口
45 セレクタ
451 開口部
45a 開口
46 スワラー
51~53 貫通口
A1 燃焼室
A2 混合部
A3 混合部
C1 円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23