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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ホールプラグ
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/14 20060101AFI20230426BHJP
   F16J 13/12 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F16J13/14
F16J13/12 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019104465
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020197254
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 直洋
(72)【発明者】
【氏名】山中 憲征
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011841(JP,A)
【文献】特開2011-185387(JP,A)
【文献】特開2006-151110(JP,A)
【文献】実開昭54-069262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00-2/26
F16B 17/00-19/14
F16J 12/00-13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部材において隣り合うように形成された複数のネジ孔を塞ぎ可能に隣り合うように構成された複数のホールプラグ体が連結されているホールプラグであって、
前記複数のホールプラグ体は、第1ホールプラグ体と、前記第1ホールプラグ体と隣り合う単数または複数の第2ホールプラグ体と、から構成されており、
前記第1ホールプラグ体と前記第2ホールプラグ体とは、前記ネジ孔を塞ぎ可能な蓋部と、前記蓋部の内面から突出するように前記ネジ孔に挿し込み可能な支柱部と、からそれぞれ構成されており、
前記第2ホールプラグ体の各蓋部は、前記第1ホールプラグ体の前記蓋部に対して折曲部位を介して連結されており、
前記第1ホールプラグ体の第1支柱部は、前記ネジ孔に前記第1支柱部自身を挿し込むと、前記第1支柱部自身が前記ネジ孔に取り付けられるように構成されており、さらに、前記ネジ孔に取り付けられた前記第1支柱部自身を前記ネジ孔に対して回転させると、前記第1支柱部自身が前記ネジ孔から取り外されるように構成されており、
前記第2ホールプラグ体の第2支柱部は、前記ネジ孔に前記第2支柱部自身を挿し込むと、前記第2支柱部自身が前記ネジ孔に取り付けられるように構成されており、
前記ネジ孔に取り付けられた前記第1支柱部に作用する第1保持力は、前記ネジ孔から前記第1支柱部を引き抜くと前記第1支柱部が破損するように高く設定されており、
前記ネジ孔に取り付けられた前記第2支柱部に作用する第2保持力は、前記ネジ孔から前記第2支柱部を引き抜いても前記第2支柱部が破損することがないように低く設定されており、
前記第1保持力>前記第2保持力の関係が成立するホールプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のホールプラグであって、
前記第1支柱部には、前記ネジ孔のネジ山に係合可能な係合面を有する第1係合片が形成され、
前記第2支柱部には、前記ネジ孔のネジ山に係合可能な係合面を有する第2係合片が形成され、
前記第1保持力>前記第2保持力の関係は、前記第1支柱部の軸方向に対する前記第1係合片の係合面の角度である第1角度と、前記第2支柱部の軸方向に対する第2係合片の係合面の角度である第2角度と、において、少なくとも、前記第1角度>前記第2角度の関係によって成立しているホールプラグ。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のホールプラグであって、
前記折曲部位は、ヒンジであるホールプラグ。
【請求項4】
請求項2および請求項2を引用する請求項3のいずれかに記載のホールプラグであって、
前記複数のホールプラグ体の各支柱部には、前記各係合面が前記ネジ山に係合した状態で前記相手部材に当接して弾性変形可能な当接片がそれぞれ形成されているホールプラグ。
【請求項5】
請求項2および請求項2を引用する請求項3~4のいずれかに記載のホールプラグであって、
前記ネジ孔に前記第1支柱部と前記第2支柱部とが取り付けられた状態において、
前記第1ホールプラグ体の前記蓋部から前記第1係合片の係合面までの前記第1支柱部の軸方向における長さである第1長さと、
前記第2ホールプラグ体の前記蓋部から前記第2係合片の係合面までの前記第2支柱部の軸方向における長さである第2長さと、において、
前記第1長さ>前記第2長さの関係が成立するホールプラグ。
【請求項6】
請求項2および請求項2を引用する請求項3~5のいずれかに記載のホールプラグであって、
前記第1係合片は、対向して対を成すように形成されており、
前記第2係合片は、前記対を成す第1係合片を結ぶ直線上に位置するように形成されており、
前記第2係合片は、前記第2支柱部において、前記第1係合片に対して遠い側に形成されているホールプラグ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のホールプラグであって、
前記複数の第2ホールプラグ体の各蓋部には、前記折曲部位の反対側に向けて突出する取手部が形成されているホールプラグ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホールプラグに関し、詳しくは、相手部材において隣り合うように形成された複数のネジ孔を塞ぎ可能に隣り合うように構成された複数のホールプラグ体が連結されているホールプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンには、ネジ孔を有する金属製(例えば、鉄製)のエンジンマウントブラケット(以下、単に「ブラケット」と記す)が複数(例えば、2個)設けられている。このブラケットには、隣り合うように複数(例えば、2個)のネジ孔が形成されており、このネジ孔には、フックが螺合可能となっている。そのため、例えば、エンジンのオーバーホール等のメンテナンス時、このブラケットのネジ孔にフックを螺合させ、この螺合させたフックを介して吊上装置(例えば、クレーン)によってエンジンを吊り上げることができる。したがって、車両ボデーからエンジンを簡便に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【文献】特開2006-151110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、ブラケットのネジ孔にフックを螺合させると、この螺合させたフックによってネジ孔の内面が錆びてしまうことがあった。そのため、このブラケットに防錆剤を塗る必要があった。また、防錆剤を塗ることなく錆を目隠しするために、例えば、このブラケットのネジ孔をホールプラグで塞ぐことが考えられた。しかしながら、この考えでは、ブラケットのネジ孔を塞ぐホールプラグには、通常時に自動車の走行による震動等によってネジ孔から脱落しない高い保持力と、メンテナンス時にブラケットのネジ孔から簡便に取り外すことができるメンテナンス力とが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、通常時にネジ孔から脱落しない高い保持力を確保しつつ、メンテナンス時にネジ孔から簡便に取り外すことができるホールプラグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると、相手部材において隣り合うように形成された複数のネジ孔を塞ぎ可能に隣り合うように構成された複数のホールプラグ体が連結されているホールプラグであって、複数のホールプラグ体は、第1ホールプラグ体と、第1ホールプラグ体と隣り合う単数または複数の第2ホールプラグ体とから構成されている。第1ホールプラグ体と第2ホールプラグ体とは、ネジ孔を塞ぎ可能な蓋部と、蓋部の内面から突出するようにネジ孔に挿し込み可能な支柱部とからそれぞれ構成されている。第2ホールプラグ体の各蓋部は、第1ホールプラグ体の蓋部に対して折曲部位を介して連結されている。第1ホールプラグ体の第1支柱部は、ネジ孔に第1支柱部自身を挿し込むと、第1支柱部自身がネジ孔に取り付けられるように構成されており、さらに、ネジ孔に取り付けられた第1支柱部自身をネジ孔に対して回転させると、第1支柱部自身がネジ孔から取り外されるように構成されている。第2ホールプラグ体の第2支柱部は、ネジ孔に第2支柱部自身を挿し込むと、第2支柱部自身がネジ孔に取り付けられるように構成されている。ネジ孔に取り付けられた第1支柱部に作用する第1保持力は、ネジ孔から第1支柱部を引き抜くと第1支柱部が破損するように高く設定されている。ネジ孔に取り付けられた第2支柱部に作用する第2保持力は、ネジ孔から第2支柱部を引き抜いても第2支柱部が破損することがないように低く設定されている。第1保持力>第2保持力の関係が成立する。
【0007】
そのため、ホールプラグにおいて、メンテナンス時を除いた通常時に自動車の走行による震動等によって一方のネジ孔から脱落しない高い保持力を第1保持力(一方のネジ孔に取り付けられた第1支柱部に作用する保持力)によって確保できる。また、一方のネジ孔に取り付けられた第1支柱部を一方のネジ孔に対して回転させると、第1支柱部を一方のネジ孔から取り外すことができる。また、他方のネジ孔から第2支柱部を引き抜くと第2支柱部が破損することがない。そのため、ホールプラグにおいて、メンテナンス時に相手部材の複数のネジ孔から簡便に取り外すことができるメンテナンス力を確保できる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、第1支柱部には、ネジ孔のネジ山に係合可能な係合面を有する第1係合片が形成されている。第2支柱部には、ネジ孔のネジ山に係合可能な係合面を有する第2係合片が形成されている。第1保持力>第2保持力の関係は、第1支柱部の軸方向に対する第1係合片の係合面の角度である第1角度と、第2支柱部の軸方向に対する第2係合片の係合面の角度である第2角度と、において、少なくとも、第1角度>第2角度の関係によって成立している。
【0009】
そのため、第1保持力>第2保持力の関係を第1角度と第2角度の関係によって容易に設定できる。
【0010】
また、本開示の他の特徴によると、折曲部位は、ヒンジである。
【0011】
そのため、折曲部位を簡便に設けることができる。
【0012】
また、本開示の他の特徴によると、複数のホールプラグの各支柱部には、各係合面がネジ山に係合した状態で相手部材に当接して弾性変形可能な当接片がそれぞれ形成されている。
【0013】
そのため、例えば、一方のネジ孔に第1支柱部を取り付けると、相手部材に当接した当接片が撓んだ状態となっているため、この撓んだ状態の当接片と相手部材とが密着する。したがって、第1ホールプラグ体の蓋部による一方のネジ孔の塞ぎの度合いを高めることができる。このことは、第2ホールプラグ体の蓋部においても同様である。
【0014】
また、本開示の他の特徴によると、ネジ孔に第1支柱部と第2支柱部とが取り付けられた状態において、第1ホールプラグ体の蓋部から第1係合片の係合面までの第1支柱部の軸方向における長さである第1長さと、第2ホールプラグ体の蓋部から第2係合片の係合面までの第2支柱部の軸方向における長さである第2長さと、において、第1長さ>第2長さの関係が成立する。
【0015】
そのため、第2保持力を抑えることができる。したがって、相手部材の複数のネジ孔に取り付けたホールプラグを取り外す時、第2ホールプラグ体を取り外し易い。
【0016】
また、本開示の他の特徴によると、第1係合片は、対向して対を成すように形成されている。第2係合片は、対を成す第1係合片を結ぶ直線上に位置するように形成されている。第2係合片は、第2支柱部において、第1係合片に対して遠い側に形成されている。
【0017】
そのため、第2係合片が一対の第1係合片に対して近い側に形成されている場合と比較すると、第2ホールプラグ体を取り外し易い。
【0018】
また、本開示の他の特徴によると、複数の第2ホールプラグ体の各蓋部には、折曲部位の反対側に向けて突出する取手部が形成されている。
【0019】
そのため、取手部の操作によって、第2ホールプラグ体を簡便に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るブラケットの斜視図である。
図2】実施形態に係るホールプラグの斜視図である。
図3図2を外面側から見た斜視図である。
図4図2の平面図である。
図5図2の側面図である。
図6図2の内面図である。
図7】ブラケットにホールプラグを取り付けた状態を示す斜視図である。
図8図7の縦断面図である。
図9】ブラケットに取り付けたホールプラグを取り外す手順を説明する縦断面図である。
図10図9の次の手順を説明する縦断面図である。
図11図10の次の手順を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、図1~11を用いて説明する。まず、実施形態に係るブラケット1と、ホールプラグ2とを個別に説明する。はじめに、ブラケット1から説明する(図1参照)。このブラケット1は、相手部材の一例である自動車のエンジン(図示しない)に対向するように設けられる金属製のエンジンマウントブラケットの一部である。そのため、このブラケット1には、隣り合うように複数(例えば、2個)のネジ孔1aが形成されている。
【0022】
このネジ孔1aには、フック(図示しない)が螺合可能となっている。したがって、例えば、エンジンのオーバーホール等のメンテナンス時、このブラケット1のネジ孔1aにフックを螺合させ、この螺合させたフックを介して吊上装置(例えば、クレーン)によってエンジンを吊り上げることができる。このようにして、車両ボデー(図示しない)からエンジンを簡便に取り外すことができる。
【0023】
次に、ホールプラグ2を説明する(図2~6参照)。このホールプラグ2は、隣り合う複数(例えば、2個)のホールプラグ体3、4(第1ホールプラグ体3、第2ホールプラグ体4)から構成されている。以下に、これら第1ホールプラグ体3と第2ホールプラグ体4とを個別に説明する。
【0024】
はじめに、第1ホールプラグ体3から説明する。第1ホールプラグ体3は、第1蓋部10と第1支柱部12とから構成されている。この第1蓋部10は、ブラケット1の一方のネジ孔1aの外径より大きな外径を有しており、この一方のネジ孔1aを塞ぎ可能な薄板状の蓋部材である。この第1蓋部10の縁の4辺は、直線形状の第1辺10aと、この第1辺10aに対して直交する直線形状の第2辺10bと、この第2辺10bに対して直交する直線形状の第3辺10cと、円弧形状の第4辺10dとから構成されている。
【0025】
一方、この第1支柱部12は、ブラケット1のネジ孔1aに挿し込み可能に第1蓋部10の内面から突出するように形成されている。この第1支柱部12の外面には、弾性変形可能な一対の第1係合片14が対向するように形成されている。この一対の第1係合片14には、先端爪14aと基端爪14cとがそれぞれ形成されている。この各先端爪14aには、ブラケット1のネジ孔1aのネジ山1bの傾斜面1cに係合可能な係合面14bが形成されている。また、この各基端爪14cには、ブラケット1のネジ孔1aのネジ山1bの傾斜面1cに係合可能な係合面14dが形成されている。
【0026】
また、この一対の第1係合片14は、後述するように第1支柱部12をブラケット1のネジ孔1aに取り付けた状態において、第1蓋部10から一対の第1係合片14の先端爪14aの係合面14bまでの第1支柱部12の第1軸A1の軸方向における長さが第1長さL1となるように形成されている(図8参照)。
【0027】
また、この先端爪14aは、後述するように第1支柱部12をブラケット1のネジ孔1aに取り付けた状態において、その係合面14bと第1支柱部12の軸方向に延びる第1軸A1とが成す第1角度R1は、大きく(例えば、約60度)なるように形成されている(図8参照)。このことは、基端爪14cにおいても同様である。また、この第1支柱部12には、肉抜き16が形成されている。また、この第1蓋部10の内面と第1支柱部12の基端との間には、弾性変形可能な円皿状の第1当接片18が形成されている。第1ホールプラグ体3は、このように構成されている。
【0028】
次に、第2ホールプラグ体4を説明する。第2ホールプラグ体4は、第2蓋部20と第2支柱部22とから構成されている。この第2蓋部20は、ブラケット1の他方のネジ孔1aの外径より大きな外径を有しており、この他方のネジ孔1aを塞ぎ可能な薄板状の蓋部材である。この第2蓋部20の縁の4辺は、直線形状の第1辺20aと、この第1辺20aに対して直交する直線形状の第2辺20bと、この第2辺20bに対して直交する直線形状の第3辺20cと、円弧形状の第4辺20dとから構成されている。この第2蓋部20の第4辺20dには、折曲部位の一例であるヒンジ30の反対側(外方)に向けて突出する取手部21が形成されている。
【0029】
一方、この第2支柱部22は、ブラケット1のネジ孔1aに挿し込み可能に第2蓋部20の内面から突出するように形成されている。この第2支柱部22の外面には、第2係合片24が形成されている。この第2係合片24は、一対の第1係合片14を結ぶ直線C上に位置するように形成されている。また、この第2係合片24は、第2支柱部22の外面において、一対の第1係合片14に対して遠い側(第2辺20b側でなく、第4辺20d側)に形成されている。この第2係合片24には、ブラケット1のネジ孔1aのネジ山1bの傾斜面1cに係合可能な係合面24bが形成されている。
【0030】
また、この第2係合片24は、後述するように第2支柱部22をブラケット1のネジ孔1aに取り付けた状態において、第2蓋部20から第2係合片24の係合面24bまでの第2支柱部22の第2軸A2の軸方向における長さが第2長さL2となるように形成されている。そして、第1長さL1>第2長さL2の関係が成立している。
【0031】
また、この第2係合片24は、後述するように第2支柱部22をブラケット1のネジ孔1aに取り付けた状態において、その係合面24bと第2支柱部22の軸方向に延びる第2軸A2とが成す第2角度R2は、小さく(例えば、約30度)なるように設定されている。また、この第2支柱部22には、大きく肉抜きされた肉抜き26が形成されている。これにより、第2支柱部22を撓ませることができる。また、この第2蓋部20の内面と第2支柱部22の基端との間には、弾性変形可能な円皿状の第2当接片28が形成されている。第2ホールプラグ体4は、このように構成されている。
【0032】
このように構成されている第1ホールプラグ体3の第1蓋部10の第2辺10bと第2ホールプラグ体4の第2蓋部20の第2辺20bとは、上述した直線Cに対して直交する方向を軸方向とするヒンジ30を介して連結されている。なお、これら第1ホールプラグ体3と第2ホールプラグ体4とは、剛性を有する合成樹脂によって一体的に成形されている。ホールプラグ2は、このように構成されている。
【0033】
続いて、上述したホールプラグ2の作用(ブラケット1の両ネジ孔1aにホールプラグ2を取り付ける手順と、ブラケット1の両ネジ孔1aに取り付けたホールプラグ2を取り外す手順)を説明する。
【0034】
まず、ブラケット1の両ネジ孔1aにホールプラグ2を取り付ける手順から説明する(図7~11参照)。はじめに、ヒンジ30を基点に第1ホールプラグ体3に対して第2ホールプラグ体4を折り曲げた状態で、ブラケット1の一方のネジ孔1aに第1支柱部12を挿し込む作業を行う。すると、一対の第1係合片14が一方のネジ孔1aのネジ山1bに押し付けられて撓んだ状態となる。さらに、ブラケット1に当接して第1当接片18が撓むまで(この挿し込む作業が規制されるまで)、この挿し込む作業を行う。
【0035】
すると、この撓んだ状態の一対の第1係合片14の両係合面14b、14dがブラケット1の一方のネジ孔1aのネジ山1bの傾斜面1cに係合する。そのため、一対の第1係合片14による両掛かり状態で第1支柱部12をブラケット1の一方のネジ孔1aに取り付けることができる。したがって、第1蓋部10によってブラケット1の一方のネジ孔1aを塞ぐことができる。このとき、この当接した第1当接片18が撓んだ状態となっているため、この撓んだ状態の第1当接片18とブラケット1とが密着する。そのため、上述した第1蓋部10による一方のネジ孔1aの塞ぎの度合いを高めることができる。
【0036】
また、このとき、先端爪14aの係合面14bと第1支柱部12の軸方向に延びる第1軸A1とが成す第1角度R1は、大きく(例えば、約60度)なっている(図8参照)。このように、第1支柱部12が取り付けられた状態の第1角度R1は大きくなっており、さらに、上述したように、この取り付けが両掛かり状態となっているため、この取り付けられた第1支柱部12に作用する保持力(以下、「第1保持力」と記す)は、高いものとなる。そのため、この取り付けられた第1支柱部12を一方のネジ孔1aから引き抜くと、この引き抜いた第1支柱部12の一対の第1係合片14が破損する。このことからも明らかなように、この第1保持力は、高く設定されている。
【0037】
なお、上述したように第1支柱部12をブラケット1のネジ孔1aに取り付けると、この取り付けた第1支柱部12の一対の第1係合片14は、ブラケット1のネジ孔1aに対してネジを成す格好となっている。
【0038】
次に、ヒンジ30を基点に第2ホールプラグ体4を回転させながら(折り曲げを戻しながら)、ブラケット1の他方のネジ孔1aに第2支柱部22を挿し込む作業を行う。すると、第2係合片24が他方のネジ孔1aのネジ山1bに押し付けられて第2支柱部22が撓んだ状態となる。さらに、ブラケット1に当接して第2当接片28が撓むまで(この挿し込む作業が規制されるまで)、この挿し込む作業を行う。
【0039】
すると、この第2係合片24の係合面24bがブラケット1の他方のネジ孔1aのネジ山1bの傾斜面1cに係合する。そのため、第2係合片24による片掛かり状態で第2支柱部22をブラケット1の他方のネジ孔1aに取り付けることができる。したがって、第2蓋部20によってブラケット1の他方のネジ孔1aを塞ぐことができる。このとき、この当接した第2当接片28が撓んだ状態となっているため、この撓んだ状態の第2当接片28とブラケット1とが密着する。そのため、上述した第2蓋部20による他方のネジ孔1aの塞ぎの度合いを高めることができる。
【0040】
また、このとき、第2係合片24の係合面24bと第2支柱部22の軸方向に延びる第2軸A2とが成す第2角度R2は、小さく(例えば、約30度)なっている(図8参照)。すなわち、第1角度R1>第2角度R2の関係が成立している。このように、第2支柱部22が取り付けられた状態の第2角度R2は小さくなっており、さらに、上述したように、この取り付けが片掛かり状態となっているため、この取り付けられた第2支柱部22に作用する保持力(以下、「第2保持力」と記す)は、低いものとなる。
【0041】
そのため、この取り付けられた第2支柱部22を他方のネジ孔1aから引き抜いても、この引き抜いた第2支柱部22の第2係合片24が破損することがない。このことからも明らかなように、この第2保持力は、低く設定されている。すなわち、第1保持力は、第2保持力より高く設定されている。なお、この第1保持力と第2保持力の高低は、上述したように、第1角度R1>第2角度R2の関係によって設定されている。このようにして、ブラケット1の両ネジ孔1aを塞ぐようにホールプラグ2を取り付けることができる(図7~8参照)。
【0042】
次に、ブラケット1の両ネジ孔1aに取り付けたホールプラグ2を取り外す手順を説明する。はじめに、ヒンジ30を基点に第1ホールプラグ体3に対して第2ホールプラグ体4が折り曲がるように、取手部21を操作してブラケット1の他方のネジ孔1aから第2支柱部22を引き抜く作業を行う(図9参照)。すると、上述したように、第2支柱部22に作用する第2保持力は、小さく設定されているため、第2係合片24が破損することなく第2支柱部22を引き抜くことができる。
【0043】
次に、この第2支柱部22を引き抜いた状態のまま、第1支柱部12をネジ孔1aに対して回転させる作業を行う(図10参照)。すると、上述したように、第1支柱部12の一対の第1係合片14は、ブラケット1のネジ孔1aに対してネジを成す格好となっているため、このネジ孔1aのネジ山1bの傾斜面1cに沿って一対の第1係合片14の両係合面14b、14dが螺旋状に移動する。したがって、ネジが緩む格好となるため、一対の第1係合片14が破損することなく、このネジ孔1aから第1支柱部12を取り外すことができる(図11参照)。このようにして、ブラケット1の両ネジ孔1aに取り付けたホールプラグ2を取り外すことができる。
【0044】
なお、上述したように、ホールプラグ2の取り外しにおいて、第1ホールプラグ体3の第1支柱部12の一対の第1係合片14と第2ホールプラグ体4の第2支柱部22の第2係合片24とも破損することがない。そのため、この取り外したホールプラグ2を使用して、再度、ブラケット1の両ネジ孔1aに取り付けることができる。すなわち、ホールプラグ2を使い捨てることなく再利用できる。
【0045】
本発明の実施形態に係るホールプラグ2は、上述したように構成されている。この構成によれば、ホールプラグ2は、第1ホールプラグ体3と第2ホールプラグ体4とから構成されている。第1ホールプラグ体3は、第1蓋部10と第1支柱部12とから構成されている。また、第2ホールプラグ体4は、第2蓋部20と第2支柱部22とから構成されている。第1ホールプラグ体3の第1支柱部12は、ブラケット1の一方のネジ孔1aに第1支柱部12自身を挿し込むと、第1支柱部12自身が一方のネジ孔1aに取り付けられるように構成されている。そのため、第1ホールプラグ体3の第1蓋部10によってブラケット1の一方のネジ孔1aを塞ぐことができる。また、この第1ホールプラグ体3の第1支柱部12は、一方のネジ孔1aに取り付けられた第1支柱部12自身を一方のネジ孔1aに対して回転させると、第1支柱部12自身が一方のネジ孔1aから取り外されるように構成されている。一方、第2ホールプラグ体4の第2支柱部22は、他方のネジ孔1aに第2支柱部22自身を挿し込むと、第2支柱部22自身が他方のネジ孔1aに取り付けられるように構成されている。そのため、第2ホールプラグ体4の第2蓋部20によってブラケット1の他方のネジ孔1aを塞ぐことができる。そして、一方のネジ孔1aに取り付けられた第1支柱部12に作用する第1保持力は、一方のネジ孔1aから第1支柱部12を引き抜くと第1支柱部12が破損するように高く設定されている。また、他方のネジ孔1aに取り付けられた第2支柱部22に作用する第2保持力は、他方のネジ孔1aから第2支柱部22を引き抜くと第2支柱部22が破損することがないように低く設定されている。これら第1保持力>第2保持力の関係が成立する。
【0046】
そのため、ホールプラグ2において、メンテナンス時を除いた通常時に自動車の走行による震動等によって一方のネジ孔1aから脱落しない高い保持力を第1保持力(一方のネジ孔1aに取り付けられた第1支柱部12に作用する保持力)によって確保できる。また、一方のネジ孔1aに取り付けられた第1支柱部12を一方のネジ孔1aに対して回転させると、第1支柱部12を一方のネジ孔1aから取り外すことができる。また、他方のネジ孔1aから第2支柱部22を引き抜くと第2支柱部22が破損することがない。そのため、ホールプラグ2において、メンテナンス時にブラケット1の両ネジ孔1aから簡便に取り外すことができるメンテナンス力を確保できる。
【0047】
また、この構成によれば、第1保持力>第2保持力の関係は、第1支柱部12の軸方向に対する一対の第1係合片14の係合面14b、14dの角度である第1角度R1と、第2支柱部22の軸方向に対する第2係合片24の係合面24bの角度である第2角度R2とにおいて、第1角度>第2角度の関係によって成立している。そのため、第1保持力>第2保持力の関係を第1角度と第2角度の関係によって容易に設定できる。
【0048】
また、この構成によれば、折曲部位はヒンジ30である。そのため、この折曲部位を簡便に設けることができる。
【0049】
また、この構成によれば、第1蓋部10の内面と第1支柱部12の基端との間には、弾性変形可能な円皿状の第1当接片18が形成されている。そのため、一方のネジ孔1aに第1支柱部12を取り付けると、ブラケット1に当接した第1当接片18が撓んだ状態となっているため、この撓んだ状態の第1当接片18とブラケット1とが密着する。したがって、第1蓋部10による一方のネジ孔1aの塞ぎの度合いを高めることができる。このことは、第2蓋部20においても同様である。
【0050】
また、この構成によれば、一対の第1係合片14は、第1支柱部12をブラケット1のネジ孔1aに取り付けた状態において、第1蓋部10から一対の第1係合片14の先端爪14aの係合面14bまでの第1支柱部12の第1軸A1の軸方向における長さが第1長さL1となるように形成されている。また、第2係合片24は、第2支柱部22をブラケット1のネジ孔1aに取り付けた状態において、第2蓋部20から第2係合片24の係合面24bまでの第2支柱部22の第2軸A2の軸方向における長さが第2長さL2となるように形成されている。そして、第1長さL1>第2長さL2の関係が成立している。そのため、第2保持力を抑えることができる。したがって、ブラケット1の両ネジ孔1aに取り付けたホールプラグ2を取り外す時、第2ホールプラグ体4を取り外し易い。
【0051】
また、この構成によれば、第2係合片24は、一対の第1係合片14を結ぶ直線C上に位置するように形成されている。また、この第2係合片24は、第2支柱部22の外面において、一対の第1係合片14に対して遠い側(第2辺20b側でなく、第4辺20d側)に形成されている。そのため、第2係合片24が一対の第1係合片14に対して近い側(第2辺20b側)に形成されている場合と比較すると、第2ホールプラグ体4を取り外し易い。
【0052】
また、この構成によれば、第2蓋部20の第4辺20dには、折曲部位の一例であるヒンジ30の反対側(外方)に向けて突出する取手部21が形成されている。そのため、この取手部21の操作によって、第2ホールプラグ体4を簡便に取り外すことができる。
【0053】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0054】
実施形態では、第1支柱部12をブラケット1の一方のネジ孔1aに取り付けた後に、第2支柱部22をブラケット1の他方のネジ孔1aに取り付ける手順を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、この手順は同時であっても、逆であっても構わない。
【0055】
また、実施形態では、第2ホールプラグ体4は、単数ある形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、第2ホールプラグ体4は、複数(例えば、2個、3個等)でも構わない。
【0056】
また、実施形態では、ブラケット1の両ネジ孔1aにホールプラグ2を取り付ける手順の説明において、ブラケット1の一方のネジ孔1aに第1支柱部12を挿し込む作業を行った後に、ブラケット1の他方のネジ孔1aに第2支柱部22を挿し込む作業を行う形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、この取り付けの手順の説明において、ブラケット1の一方のネジ孔1aに第1支柱部12を挿し込む作業を行うと同時に、ブラケット1の他方のネジ孔1aに第2支柱部22を挿し込む作業を行う形態でも構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 ブラケット(相手部材)
1a ネジ孔
2 ホールプラグ
3 第1ホールプラグ体
4 第2ホールプラグ体
10 第1蓋部(蓋部)
12 第1支柱部(支柱部)
20 第2蓋部(蓋部)
22 第2支柱部(支柱部)
30 ヒンジ(折曲部位)
図1
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