(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】燃料電池式産業車両
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230426BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230426BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20230426BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20230426BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230426BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20230426BHJP
B60K 28/10 20060101ALI20230426BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20230426BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/00 Z
H01M8/04313
H01M8/04955
H01M8/04 Z
B60L3/00 H
B60L50/70
B60K28/10
B60K15/04 F
B60K15/04 E
B60K8/00
(21)【出願番号】P 2019125751
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2018168577
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(72)【発明者】
【氏名】水草 遼
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051732(JP,A)
【文献】特開2006-177253(JP,A)
【文献】米国特許第02468673(US,A)
【文献】特開2004-301035(JP,A)
【文献】特開2010-127431(JP,A)
【文献】特開2010-177111(JP,A)
【文献】特開2002-206699(JP,A)
【文献】特開平10-131809(JP,A)
【文献】特開2001-275207(JP,A)
【文献】特開平10-105823(JP,A)
【文献】米国特許第03935410(US,A)
【文献】特開2013-093255(JP,A)
【文献】特開2005-196656(JP,A)
【文献】特開2014-014207(JP,A)
【文献】特表2015-521259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00 - 15/10
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
F17C 1/00 - 13/12
H01M 8/00 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を有する燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットに設けられ、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯留する燃料タンクと、
前記燃料電池ユニットが搭載される車両本体と、
前記車両本体の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記燃料電池ユニットは、
前記燃料タンクに前記燃料ガスを充填するためのプラグであって、燃料ガス供給用の充填ソケットを接続可能な充填プラグと、
前記充填プラグと前記充填ソケットの接続状態を検出する検出機構と、
を備え、
前記検出機構は、前記充填プラグに対する前記充填ソケットの接続状態に応じて出力信号が変化するセンサを有し、
前記制御手段は、前記センサの出力信号を基に前記充填プラグに前記充填ソケットが接続されていると判断した場合に、前記車両本体の動作を禁止するように制御
し、
前記充填プラグは、前記充填ソケットを抜き差し可能に構成され、
前記検出機構は、前記充填プラグに前記充填ソケットを差し込むときに、前記充填ソケットに押されて所定方向に移動する移動部材を有し、
前記移動部材が、前記充填プラグの外周面の一部を囲むように配置され、
前記センサは、前記移動部材の移動によって押し込まれる可動子を有し、
前記充填ソケットが前記移動部材に接触し、前記移動部材を移動させ、前記可動子が押し込まれることにより前記出力信号が変化する
燃料電池式産業車両。
【請求項2】
燃料電池を有する燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットに設けられ、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯留する燃料タンクと、
前記燃料電池ユニットが搭載される車両本体と、
前記車両本体の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記燃料電池ユニットは、
前記燃料タンクに前記燃料ガスを充填するためのプラグであって、燃料ガス供給用の充填ソケットを接続可能な充填プラグと、
前記充填プラグと前記充填ソケットの接続状態を検出する検出機構と、
を備え、
前記検出機構は、前記充填プラグに対する前記充填ソケットの接続状態に応じて出力信号が変化するセンサを有し、
前記制御手段は、前記センサの出力信号を基に前記充填プラグに前記充填ソケットが接続されていると判断した場合に、前記車両本体の動作を禁止するように制御し、
前記充填プラグは、前記充填ソケットを抜き差し可能に構成され、
前記検出機構は、前記充填プラグに前記充填ソケットを差し込むときに、前記充填ソケットに押されて所定方向に移動する移動部材を有し、
前記移動部材が、前記充填プラグの外周面の一部を囲むように配置され、
前記センサは、前記移動部材の移動によって押し込み状態が解除される可動子を有し、
前記充填ソケットが前記移動部材に接触し、前記移動部材を移動させ、前記可動子の押し込み状態が解除されることにより前記出力信号が変化す
る
燃料電池式産業車両。
【請求項3】
前記移動部材を前記所定方向と反対方向に付勢する付勢部材を備える
請求項
1または
2に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項4】
前記移動部材に筒部が設けられ、
前記付勢部材の一端部は前記筒部に収容されている
請求項
3に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項5】
キーオン状態を検知する車両キースイッチを備え、
前記制御手段は、前記車両キースイッチが前記キーオン状態を検知し、かつ前記センサの出力信号を基に前記充填プラグに前記充填ソケットが接続されていると判断した場合に、前記車両本体の動作を禁止するように制御する
請求項1~
4のいずれか一項に記載の燃料電池式産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両に関し、特に、燃料電池式産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業車両をはじめとする車両用として、クリーンでエネルギー効率が高い燃料電池が注目されている。燃料電池が発生する電力を利用して動く産業車両(以下、「燃料電池式産業車両」という。)は、燃料ガスとなる水素を燃料タンクに充填するための充填プラグを備えている。充填プラグは、燃料電池を備える燃料電池ユニットに設けられている。燃料電池式産業車両への水素の供給は水素ステーションで行われる。水素ステーションには、水素供給用のディスペンサが設置されている。ディスペンサには、水素供給用のホースがつながっている。ホースの先端部には充填ソケットが設けられている。燃料電池式産業車両の燃料タンクに水素を充填する場合は、ホースの先端部に設けられた充填ソケットを、燃料電池ユニットの充填プラグに差し込んで接続する。
【0003】
また、燃料電池ユニットには開閉可能な充填リッドが設けられている。充填リッドは、充填プラグを覆うように、燃料電池ユニットの側面に設けられている。充填プラグは、充填リッドを閉じた状態では外部から遮蔽され、充填リッドを開けた状態では外部に露出する。このため、燃料電池式産業車両の燃料タンクに水素を充填する場合は、充填プラグに充填ソケットを接続する前に、充填リッドを開ける必要がある。特許文献1には、充填リッドの開閉操作によって出力信号が切り替わるリミットスイッチを備え、充填リッドの開閉状態をリミットスイッチによって検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、燃料タンクに水素を充填しているあいだは燃料電池式産業車両を停止させておく必要がある。このため、たとえば、充填リッドがオペレータによって開けられ、そのことがリミットスイッチの出力信号により検出された場合は、充填リッドが閉じられるまで燃料電池式産業車両を停止させておくように制御することが望ましい。
【0006】
一方で、燃料電池式産業車両には、デザイン性向上のために車両本体の側面にカバーを取り付ける場合がある。このカバーは、燃料電池ユニットの側面を覆うように取り付けられる。ただし、燃料電池ユニットの側面には上述した充填リッドが設けられているため、車両本体の側面にカバーを取り付けると、充填リッドがカバーの裏に隠れてしまう。このため、カバーには、充填リッドの位置にあわせて開閉式の扉を設ける必要がある。
【0007】
しかしながら、上述したような扉付きのカバーを車両本体に取り付けた場合は、カバーの扉の裏側に充填リッドが存在する、いわゆる二重扉になる。このため、燃料タンクに水素を充填する場合は、まず、カバーの扉を開け、次いで、充填リッドを開けることになる。よって、オペレータの充填作業が煩雑化してしまう。また、充填作業を簡素化するために充填リッドを無くし、カバーの扉の開閉によって上記リミットスイッチの出力信号が切り替わる構成を採用することも考えられる。ただし、その場合は、車両本体に取り付けられるカバーと、燃料電池ユニットに設けられるリミットスイッチとの相対的な位置ズレが生じるおそれがある。このため、燃料電池ユニットとカバーの扉との位置に合わせてリミットスイッチの位置を微調整する必要がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、燃料電池ユニットに充填リッドを設けなくても、また、カバーの扉を利用しなくても、燃料ガスの充填中に産業車両が走行しないように制御することができる燃料電池式産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池式産業車両は、燃料電池を有する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットに設けられ、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯留する燃料タンクと、前記燃料電池ユニットが搭載される車両本体と、前記車両本体の動作を制御する制御手段と、を備え、前記燃料電池ユニットは、前記燃料タンクに前記燃料ガスを充填するためのプラグであって、燃料ガス供給用の充填ソケットを接続可能な充填プラグと、前記充填プラグと前記充填ソケットの接続状態を検出する検出機構と、を備え、前記検出機構は、前記充填プラグに対する前記充填ソケットの接続状態に応じて出力信号が変化するセンサを有し、前記制御手段は、前記センサの出力信号を基に前記充填プラグに前記充填ソケットが接続されていると判断した場合に、前記車両本体の動作を禁止するように制御し、前記充填プラグは、前記充填ソケットを抜き差し可能に構成され、前記検出機構は、前記充填プラグに前記充填ソケットを差し込むときに、前記充填ソケットに押されて所定方向に移動する移動部材を有し、前記移動部材が、前記充填プラグの外周面の一部を囲むように配置され、前記センサは、前記移動部材の移動によって押し込まれる可動子を有し、前記充填ソケットが前記移動部材に接触し、前記移動部材を移動させ、前記可動子が押し込まれることにより前記出力信号が変化する。
【0011】
本発明に係る燃料電池式産業車両は、燃料電池を有する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットに設けられ、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯留する燃料タンクと、前記燃料電池ユニットが搭載される車両本体と、前記車両本体の動作を制御する制御手段と、を備え、前記燃料電池ユニットは、前記燃料タンクに前記燃料ガスを充填するためのプラグであって、燃料ガス供給用の充填ソケットを接続可能な充填プラグと、前記充填プラグと前記充填ソケットの接続状態を検出する検出機構と、を備え、前記検出機構は、前記充填プラグに対する前記充填ソケットの接続状態に応じて出力信号が変化するセンサを有し、前記制御手段は、前記センサの出力信号を基に前記充填プラグに前記充填ソケットが接続されていると判断した場合に、前記車両本体の動作を禁止するように制御し、前記充填プラグは、前記充填ソケットを抜き差し可能に構成され、前記検出機構は、前記充填プラグに前記充填ソケットを差し込むときに、前記充填ソケットに押されて所定方向に移動する移動部材を有し、前記移動部材が、前記充填プラグの外周面の一部を囲むように配置され、前記センサは、前記移動部材の移動によって押し込み状態が解除される可動子を有し、前記充填ソケットが前記移動部材に接触し、前記移動部材を移動させ、前記可動子の押し込み状態が解除されることにより前記出力信号が変化する。
【0012】
本発明に係る燃料電池式産業車両は、前記移動部材を前記所定方向と反対方向に付勢する付勢部材を備える構成であってもよい。
【0013】
本発明に係る燃料電池式産業車両においては、前記移動部材に筒部が設けられ、前記付勢部材の一端部は前記筒部に収容された構成であってもよい。
【0014】
本発明に係る燃料電池式産業車両は、キーオン状態を検知する車両キースイッチを備え、前記制御手段は、前記車両キースイッチが前記キーオン状態を検知し、かつ前記センサの出力信号を基に前記充填プラグに前記充填ソケットが接続されていると判断した場合に、前記車両本体の動作を禁止するように制御する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料電池ユニットに充填リッドを設けなくても、また、カバーの扉を利用しなくても、燃料ガスの充填中に産業車両が走行しないように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る燃料電池式産業車両としてのフォークリフトの側面図である。
【
図2】
図1に示すフォークリフトが備える燃料電池ユニットの外観を示す概略斜視図である。
【
図4】充填プラグの中心軸方向と直交する方向から検出機構を見た図である。
【
図5】充填プラグに充填ソケットを接続したと仮定した場合の、充填ソケットと押動板の位置関係を示す正面図である。
【
図6】本実施の形態1に係る燃料電池式産業車両の制御系の構成と処理内容を説明する概略図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る燃料電池式産業車両が備える検出機構を、充填プラグの中心軸方向と直交する方向から見た図である。
【
図8】
図7に示す検出機構の動作を説明する図である。
【
図9】検出機構の第1変形例を説明する概略図である。
【
図10】検出機構の第2変形例を説明する概略図である。
【
図11】検出機構の第3変形例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
なお、本実施の形態1においては、燃料電池式産業車両として、燃料電池式のフォークリフトを例に挙げて説明する。また、本実施の形態1においては、オペレータがフォークリフトの運転シートに座って、フォークリフトの前進方向を向いた状態を基準に、「前後」、「左右」および「上下」の各方向を規定する。
【0018】
(フォークリフト)
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池式産業車両としてのフォークリフトの側面図である。
図1に示すように、フォークリフト10は、車体部11と、車体部11の前側下部に設けられた駆動輪12と、車体部11の後側下部に設けられた操舵輪13と、車体部11の前部に設けられた荷役装置14と、を備えている。このうち、車体部11および荷役装置14は、フォークリフト10の車両本体を構成する。また、フォークリフト10の前後方向において、駆動輪12は前輪、操舵輪13は後輪に相当する。
【0019】
荷役装置14は、マスト15と、リフトシリンダ16と、フォーク17と、リフトブラケット18と、左右一対のチルトシリンダ19と、を備えている。マスト15は、車体部11の前部に設けられている。マスト15は、左右一対のアウタマスト15aと、左右一対のインナマスト15bとを有している。リフトシリンダ16は、一対のアウタマスト15aの後部に設けられている。リフトブラケット18は、マスト15の前部に昇降可能に設けられている。フォーク17は、リフトブラケット18に取り付けられ、リフトブラケット18と共に昇降する。
【0020】
左右一対のチルトシリンダ19は、マスト15を前後方向に傾き動作させるもので、左右一対のアウタマスト15aに対応して設けられている。チルトシリンダ19の基端部は車体部11に対して回動可能に連結されている。チルトシリンダ19の先端部はアウタマスト15aの側面に回動可能に連結されている。マスト15は、チルトシリンダ19が伸縮駆動されることにより、前後方向に傾き動作する。
【0021】
また、フォークリフト10には運転室20が設けられている。運転室20には運転シート21が設けられている。運転シート21の前側には、ハンドル22、リフトレバー23およびチルトレバー24が装備されている。ハンドル22は、操舵輪13の向きを変えるためのハンドルである。リフトレバー23は、フォーク17を昇降させるためのレバーである。チルトレバー24は、マスト15を前後方向に傾き動作させるためのレバーである。運転室20の床面にはアクセルペダル25が設けられている。アクセルペダル25は、駆動輪12の回転速度、すなわちフォークリフト10の走行速度を調整するためのペダルである。フォークリフト10の走行速度は、アクセルペダル25の踏み込み量に応じて調整される。
【0022】
車体部11には、燃料電池ユニット26と、走行用モータ27と、荷役用モータ28と、が搭載されている。燃料電池ユニット26は、図示しない燃料電池を備えている。燃料電池は、燃料タンク31に接続される。燃料タンク31は、燃料電池ユニット26に設けられる。燃料タンク31には、燃料電池が発電するために必要な燃料ガスが貯留される。
【0023】
燃料電池ユニット26は、カバー29で覆われている。カバー29は、フォークリフト10のデザイン性を高めるために、車体部11の側面部に取り付けられている。カバー29は、車体部11と同じ色に塗装される。カバー29には、開閉可能な扉30が設けられている。
【0024】
走行用モータ27は、駆動輪12を回転させるための駆動源となる。走行用モータ27の出力軸は、図示はしないが、減速機を介して駆動輪12の回転軸に連結されている。荷役用モータ28は、フォーク17を昇降動作させたり傾き動作させたりするための駆動源となる。荷役用モータ28は、図示しない油圧ポンプを駆動することにより、リフトシリンダ16やチルトシリンダ19を伸縮動作させる。
【0025】
(燃料電池ユニット)
図2は、
図1に示すフォークリフトが備える燃料電池ユニットの外観を示す概略斜視図である。また、
図3は、
図2のA部を拡大した図である。なお、
図3においては、燃料電池ユニットの筐体を二点鎖線で示し、この筐体内を部分的に透視した状態で示している。
【0026】
図2に示すように、燃料電池ユニット26は、筐体32を有している。筐体32は全体的に直方体に形成されている。燃料電池は筐体32の内部に設けられている。筐体32の一側面はプレート33で覆われている。フォークリフト10に燃料電池ユニット26を搭載した場合は、プレート33が車体部11の側面に面して配置される。プレート33は略四角形に形成されている。プレート33の1つの隅部には燃料ガス充填用の窓部34が形成されている。窓部34は、プレート33の一部を切り欠いて形成されている。
【0027】
窓部34の奥側は、
図3に示すように、プレート33よりも凹んだ空間35になっている。本実施の形態1においては、燃料電池ユニット26に充填リッドが設けられていない。このため、上述のように車体部11にカバー29(
図1参照)を取り付けていても二重扉にはなっていない。空間35には充填プラグ36が配置されている。充填プラグ36は、フォークリフト10の燃料タンク31に水素を充填するためのプラグである。
図1に示すカバー29の扉30は、燃料電池ユニット26の充填プラグ36の位置にあわせて設けられている。このため、扉30を開けると、燃料電池ユニット26の充填プラグ36が外部に露出した状態になる。充填プラグ36は、図示しない燃料ガス供給路を介して燃料タンク31に接続されている。充填プラグ36は、円筒形に形成されている。充填プラグ36にはキャップ(図示せず)が装着される。このキャップは、充填時以外には充填プラグ36の受け口38を塞ぐように、充填プラグ36の先端部に装着される。
【0028】
一方、充填ソケット41は、燃料ガス供給用のソケットである。上述した充填プラグ36は、この充填ソケット41を接続可能に構成されている。また、本実施の形態1において、充填プラグ36は、充填ソケット41を抜き差し可能に構成されている。充填ソケット41は、円筒形に形成されている。充填ソケット41の外径寸法は、充填プラグ36の外径寸法よりも大きく設定されている。充填ソケット41は、水素供給用のホース42の先端部に設けられている。ホース42は、図示しない水素ステーションのディスペンサにつながり、このディスペンサからホース42を通して充填ソケット41へと水素が送られる。
【0029】
充填ソケット41を充填プラグ36に接続する場合は、充填プラグ36からキャップを取り外して受け口38を露出させ、この受け口38に充填ソケット41の先端部を差し込む。充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むと、図示しないロック機構によって両者の接続状態がロックされ、この状態で燃料タンク31への水素の充填が行われる。一方、充填ソケット41を充填プラグ36から取り外す場合は、ロック機構によるロックを解除して充填プラグ36から充填ソケット41を引き抜く。
【0030】
(検出機構)
また、燃料電池ユニット26は、
図3および
図4に示すように、充填プラグ36と充填ソケット41の接続状態を検出する検出機構45を備えている。充填プラグ36と充填ソケット41の接続状態には2つの状態がある。1つは充填プラグ36に充填ソケット41が接続されている状態であり、もう1つは充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない状態である。すなわち、検出機構45は、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているかどうかを検出するための機構である。
【0031】
検出機構45は、充填プラグ36の近傍に配置された押動板51と、押動板51を移動自在に支持する蝶番52と、押動板51に押されることで出力信号が変化するリミットスイッチ53と、押動板51を押し戻すためのバネ部材54と、押動板51の可動範囲を制限する制限板55と、を備えている。
【0032】
(押動板)
押動板51は、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むときに、充填ソケット41に押されて所定方向に移動する移動部材に相当するものである。
図5は、充填プラグに充填ソケットを接続した場合の、充填ソケットと押動板の位置関係を示す正面図である。なお、
図5においては、充填プラグの中心軸方向から見た場合の充填ソケットの先端部分の外周形状を二点鎖線で示している。
充填プラグ36の中心軸方向における押動板51の位置は、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込んで接続するときに、充填ソケット41の先端部で押動板51を奥側に押し込めるように、受け口38から所定の寸法だけ奥側に設定されている。
【0033】
押動板51には半円状の逃げ部61が形成されている。逃げ部61は、充填プラグ36の外周形状に沿って半円状に湾曲している。また、逃げ部61は、充填プラグ36の上側の外周面を囲むように配置されている。
【0034】
これに対して、充填プラグ36に接続される充填ソケット41の先端部は、充填プラグ36の中心軸方向から見て、押動板51の逃げ部61よりも充填プラグ36の径方向外側に張り出して配置される。このため、充填ソケット41と押動板51は、逃げ部61の外側で互いに重なるように配置される。したがって、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むと、差し込みの途中で充填ソケット41の先端部が押動板51に接触し、これによって押動板51が奥側に押し込まれる。
【0035】
(蝶番)
蝶番52は、
図4に示すように、軸部62と、軸部62を中心に回動自在な一対の翼部63,64とを有している。翼部63には、たとえば溶接によって押動板51が取り付けられている。押動板51は、蝶番52の軸部62を中心に回転移動自在に支持されている。また、押動板51は、蝶番52から自重で垂れ下がっている。翼部64は、たとえば溶接によってブラケット65に取り付けられている。ブラケット65は、L字形のプレートによって構成されている。ブラケット65は、ボルト67によってプラグ取付板68に固定されている。プラグ取付板68は、燃料電池ユニット26の筐体32に固定されるものである。
【0036】
(リミットスイッチ)
リミットスイッチ53は、充填プラグ36に対する充填ソケット41の接続状態に応じて出力信号が変化するセンサに相当する。リミットスイッチ53の出力信号は、充填プラグ36に充填ソケット41が差し込まれるとオン状態となり、充填プラグ36から充填ソケット41が引き抜かれるとオフ状態となる。したがって、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されている状態では、リミットスイッチ53の出力信号がオン状態となり、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない状態では、リミットスイッチ53の出力信号がオフ状態となる。
【0037】
リミットスイッチ53は、
図4に示すように、一対のナット70を用いてプラグ取付板68に取り付けられている。一対のナット70は、リミットスイッチ53の胴部に形成された雄ネジ(図示せず)に噛み合っている。また、一対のナット70は、プラグ取付板68を板厚方向の両側から挟むことにより、リミットスイッチ53をプラグ取付板68に固定している。充填プラグ36は、一対のナット75を用いてプラグ取付板68に取り付けられている。充填プラグ36の中心軸方向におけるリミットスイッチ53の取付位置は、一対のナット70を適宜緩めて締め付け直すことにより調整可能となっている。リミットスイッチ53は、充填プラグ36よりも上側に配置されている。また、リミットスイッチ53は可動子71を有している。可動子71は、プラグ取付板68の板厚方向(
図4の左右方向)と平行な方向に移動可能になっている。また、可動子71は、リミットスイッチ53に内蔵された復帰バネによって一方向(
図4の左方向)に付勢されている。
【0038】
ここで、押動板51の2つの主面51a,51bのうち、筐体32の外側を向く面を表面51a、筐体32の内側を向く面を裏面51bとすると、可動子71は、押動板51の裏面51bに対向して配置されている。また、押動板51が初期位置(詳細は後述)に配置された状態では、リミットスイッチ53の可動子71が押動板51の裏面51bに近接して配置される。そして、押動板51が蝶番52の軸部62を中心に
図4の反時計回り方向に移動すると、可動子71が押動板51によって押し込まれ、これによってリミットスイッチ53の出力信号がオフ状態からオン状態に変化する構成になっている。
【0039】
(バネ部材)
バネ部材54は、押動板51を
図4の時計回り方向に付勢する付勢部材に相当するものである。バネ部材54は、充填プラグ36の中心軸方向において、押動板51とプラグ取付板68との間に配置されている。バネ部材54は、圧縮コイルバネによって構成されている。バネ部材54は、押動板51が充填ソケット41の先端部によって奥側に押されたときに圧縮変形することにより、押動板51を手前側に押し戻すバネ力を発生させる。また、バネ部材54は、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない状態では、押動板51を初期位置(詳細は後述)に保持するバネ力を発生させる。
【0040】
バネ部材54は、支持ピン72によって支持されている。支持ピン72は、プラグ取付板68に固定されている。支持ピン72は、プラグ取付板68の板厚方向に突出し、この突出部分にバネ部材54が取り付けられている。また、押動板51の裏面51bには筒部73が設けられている。筒部73は、押動板51に一体に形成されていてもよいし、押動板51に接着、ネジ止め等によって固定されていてもよい。筒部73にはバネ部材54の一端部が収容されている。筒部73は、押動板51に対するバネ部材54の位置ずれを抑制するものである。
【0041】
(制限板)
制限板55は、プラグ取付板68に取り付けられている。制限板55は、ブラケット65と一体に形成してもよいし、ブラケット65とは別の部材としてプラグ取付板68に取り付けてもよい。制限板55は、突き当て部74を一体に有している。突き当て部74は、押動板51の表面51a側に配置されている。また、突き当て部74は、下向きに突出している。押動板51の可動範囲は、押動板51の表面51aが制限板55の突き当て部74に接触することにより制限される。また、押動板51の初期位置は、押動板51の表面51aが制限板55の突き当て部74に突き当たることにより一義的に決まる。その際、押動板51はバネ部材54の付勢力によって突き当て部74に突き当てた状態に保持される。押動板51の初期位置とは、充填プラグ36に充填ソケット41を接続していないときの押動板51の位置をいい、具体的には、押動板51の表面51aがバネ部材54の付勢力によって突き当て部74に突き当たっているときの押動板51の位置をいう。
【0042】
(検出機構の動作)
続いて、検出機構45の動作について説明する。
まず、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない場合は、押動板51がバネ部材54の付勢力を受けて制限板55の突き当て部74に突き当てられることにより、押動板51が初期位置に保持される。押動板51が初期位置に存在するときは、リミットスイッチ53の可動子71が復帰バネの付勢力によって所定量だけ突出した状態に保持される。このため、リミットスイッチ53の出力信号はオフ状態となる。
【0043】
これに対して、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むと、その差し込みの途中で充填ソケット41の先端部が押動板51の表面51aに接触する。そして、充填ソケット41を更に差し込むと、充填ソケット41に押されて押動板51が
図4の軸部62を中心に反時計回り方向に移動する。このとき、バネ部材54は、押動板51に押されて圧縮変形する。また、上述のように押動板51が移動すると、押動板51の裏面51bがリミットスイッチ53の可動子71に接触し、その状態で可動子71が押動板51によって押し込まれる。このため、リミットスイッチ53の出力信号はオフ状態からオン状態に変化する。
【0044】
また、充填プラグ36から充填ソケット41を引き抜くと、押動板51は、バネ部材54の付勢力を受けながら
図4の軸部62を中心に時計回り方向に移動する。このとき、押動板51は、バネ部材54の付勢力により制限板55の突き当て部74に突き当たるまで移動する。このため、バネ部材54は、押動板51を初期位置に復帰させる機能を果たす。一方、リミットスイッチ53の可動子71は、押動板51の移動に従って
図4の左方向に移動する。このため、リミットスイッチ53の出力信号はオン状態からオフ状態に変化する。
【0045】
このように、検出機構45においては、充填プラグ36に充填ソケット41が差し込まれると、リミットスイッチ53の出力信号がオン状態となり、充填プラグ36から充填ソケット41から引き抜かれると、リミットスイッチ53の出力信号がオフ状態となる。したがって、リミットスイッチ53の出力信号を監視することにより、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているかどうかを検出することが可能となる。
【0046】
図6は、本実施の形態1に係る燃料電池式産業車両の制御系の構成と処理内容を説明する概略図である。
まず、本実施の形態1に係る燃料電池式産業車両としてのフォークリフト10は、FCコントローラ81と、車両コントローラ82とを備えている。FCコントローラ81は、燃料電池ユニット26の動作を制御するもので、燃料電池ユニット内に設けられる。車両コントローラ82は、フォークリフト10の車両本体の動作を制御するもので、車体に設けられる。FCコントローラ81および車両コントローラ82は、検出機構45の検出結果に基づいて車両本体の動作を制御する制御手段を構成する。
【0047】
FCコントローラ81には、リミットスイッチ53と車両キースイッチ83が電気的に接続されている。リミットスイッチ53の出力信号と車両キースイッチ83の出力信号は、FCコントローラ81に個別に入力される。車両キースイッチ83は、キーオン状態を検知するスイッチである。キーオン状態とは、車両キースイッチ83の出力信号がオン状態の場合をいう。車両キースイッチ83の出力信号は、オペレータによる車両キーのキー操作に応じて切り替わる。具体例を挙げて説明すると、車両キースイッチ83の出力信号は、運転室20のハンドル22の周辺に設けられたキーシリンダ(図示せず)にオペレータが車両キーを差し込んで停止位置からキーオン位置まで廻すとオン状態となり、停止位置に戻すとオフ状態になる。このため、車両キースイッチ83がキーオン状態を検知している状況では、車両キースイッチ83の出力信号がオン状態になる。
【0048】
FCコントローラ81は、車両コントローラ82との間でCAN(Controller Area Network)通信85を行うとともに、車両コントローラ82に対して電源ライン86および許可ライン87を出力するものである。CAN通信85は、FCコントローラ81と車両コントローラ82との間で、フォークリフト10の制御に必要な各種の情報をやりとりするための通信ネットワークである。電源ライン86および許可ライン87は、それぞれ、FCコントローラ81と車両コントローラ82とをつなぐラインである。また、電源ライン86は、燃料電池ユニット26の燃料電池で発電した電力をフォークリフト10の車両側に供給するためのラインである。許可ライン87は、フォークリフト10の車両本体の動作を許可するためのラインである。フォークリフト10の車両本体の動作には、車体部11による走行動作と、荷役装置14による荷役動作がある。走行動作は、駆動輪12の回転によって実行される動作であり、荷役動作は、リフトシリンダ16の駆動やチルトシリンダ19の駆動によって実行される動作である。
【0049】
上記の制御構成において、オペレータが車両キーをキーシリンダに差し込んで停止位置からキーオン位置まで廻すと、車両キースイッチ83の出力信号がオフ状態からオン状態に切り替わる。これにより、車両キースイッチ83はキーオン状態を検知している状況になる。この状況では、車両キースイッチ83からFCコントローラ81にオン信号が出力される。そうすると、車両キースイッチ83からオン信号を受け取ったFCコントローラ81は、リミットスイッチ53の出力信号を基に、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているかどうかを判断する。このとき、FCコントローラ81は、リミットスイッチ53の出力信号がオフ状態であれば、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていないと判断し、リミットスイッチ53の出力信号がオン状態であれば、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていると判断する。そして、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていると判断すると、FCコントローラ81は、許可ライン87を遮断する。なお、車両キースイッチ83がキーオン状態を検知している状況下で、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているとFCコントローラ81が判断する場合とは、車両キースイッチ83の出力信号とリミットスイッチ53の出力信号が共にオン状態となる場合、すなわち
図6に示すANDの条件を満たす場合を意味する。
【0050】
上述のようにFCコントローラ81によって許可ライン87が遮断されると、車両コントローラ82は、フォークリフト10の車両本体の動作を禁止する。これにより、フォークリフト10の走行動作と荷役動作が実行不可能となる。このようにフォークリフト10の車両本体の動作が車両コントローラ82によって禁止されると、仮にオペレータがアクセルペダル25を踏み込んでも駆動輪12は停止したまま回転せず、また、仮にオペレータがリフトレバー23やチルトレバー24を操作してもリフトシリンダ16やチルトシリンダ19は停止したまま駆動することはない。
【0051】
<実施の形態1の効果>
本実施の形態1においては、検出機構45の一構成要素となるリミットスイッチ53の出力信号が、充填プラグ36に対する充填ソケット41の抜き差しに応じて変化する構成を採用している。また、リミットスイッチ53の出力信号がオン状態になると、FCコントローラ81は、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていると判断し、フォークリフト10の車両本体の動作を禁止するように制御する。これにより、燃料電池ユニット26に充填リッドが設けられていなくても、また、カバー29の扉30を利用してリミットスイッチの出力信号を切り換えなくても、燃料ガスの充填中にフォークリフト10が走行しないように制御することができる。また、本実施の形態1では、燃料電池ユニット26に充填リッドが設けられていないため、車体部11にカバー29を取り付けても二重扉にならない。よって、二重扉による充填作業の煩雑化を避けることができる。また、リミットスイッチ53の出力信号は、カバー29の扉30の開閉操作とは無関係に切り替わるため、カバー29の扉30の位置に合わせてリミットスイッチ53の位置を微調整する必要がなくなる。
【0052】
また、本実施の形態1においては、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むときに、充填ソケット41に押されて移動する押動板51を検出機構45に設け、押動板51の移動によってリミットスイッチ53の出力信号が変化する構成を採用している。これにより、リミットスイッチ53を取り付ける位置の自由度を高めることができる。
【0053】
また、本実施の形態1においては、充填プラグ36に差し込まれる充填ソケット41に押されて押動板51が移動した場合に、押動板51をバネ部材54の付勢力によって押し戻す構成を採用している。これにより、充填プラグ36から充填ソケット41を引き抜くときに、バネ部材54の付勢力を利用して押動板51を押し戻すことができる。このため、充填プラグ36に対する充填ソケット41の抜き差しに応じて、リミットスイッチ53の出力信号を確実に変化させることができる。また、検出機構45にバネ部材54を設けずに、リミットスイッチ53に内蔵された復帰バネの付勢力だけで押動板51を押し戻すことも可能であるが、その場合は、復帰バネにかかる負荷が大きくなるため、リミットスイッチ53の寿命が短くなるおそれがある。これに対し、バネ部材54を設けた場合は、復帰バネにかかる負荷が大幅に軽減されるため、リミットスイッチ53の寿命を延ばすことができる。
【0054】
また、本実施の形態1においては、押動板51に筒部73を設け、バネ部材54の一端部を筒部73に収容した構成を採用している。これにより、充填プラグ36に対する充填ソケット41の抜き差しに応じて、押動板51が軸部62を中心に反時計回り方向や時計回り方向に移動する場合に、押動板51に対するバネ部材54の位置ずれを抑制し、バネ部材54の付勢力を確実に押動板51に伝えることができる。
【0055】
実施の形態2
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。
本発明の実施の形態2に係る燃料電池式産業車両は、上述した実施の形態1と比較して充填プラグ36と充填ソケット41の接続状態を検出する検出機構の構成が異なる。
【0056】
図7は、本発明の実施の形態2に係る燃料電池式産業車両が備える検出機構を、充填プラグの中心軸方向と直交する方向から見た図である。
図7に示すように、検出機構100は、充填プラグ36の近傍に配置された押動板101と、押動板101を移動自在に支持する蝶番102と、押動板101の移動によって出力信号が変化するリミットスイッチ103と、押動板101を押し戻すためのバネ部材104と、押動板101の可動範囲を制限する制限板105と、を備えている。
【0057】
(押動板)
押動板101は、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むときに、充填ソケット41に押されて所定方向に移動する移動部材に相当するものである。
図7は、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込む前の状態を示しているため、充填ソケット41は表示されていない。押動板101には、実施の形態1で述べた押動板51と同様に、半円状の逃げ部(図示せず)が形成されている。また、押動板101の上部109は、蝶番102の位置よりも上方に延在している。押動板101の上部109には、接触子110が取り付けられている。接触子110は、ボルト110aと、このボルト110aを押動板101の上部109に固定するナット110bとを有している。ボルト110aのネジ部110cは、押動板101を貫通してボルト110aの反対側に突出している。
【0058】
(蝶番)
蝶番102は、軸部112と、この軸部112を中心に回動自在な一対の翼部113,114とを有している。翼部113には、溶接等によって押動板101が取り付けられている。押動板101は、蝶番102の軸部112を中心に回転移動自在に支持されている。翼部114は、溶接等によってブラケット115に取り付けられている。ブラケット115は、L字形のプレートによって構成されている。ブラケット115は、ボルト117によってプラグ取付板118に固定されている。プラグ取付板118は、燃料電池ユニット26の筐体32に固定されるものである。
【0059】
(リミットスイッチ)
リミットスイッチ103は、充填プラグ36に対する充填ソケット41の接続状態に応じて出力信号が変化するセンサに相当する。リミットスイッチ103の出力信号は、充填プラグ36に充填ソケット41が差し込まれるとオフ状態となり、充填プラグ36から充填ソケット41が引き抜かれるとオン状態となる。したがって、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されている状態では、リミットスイッチ53の出力信号がオフ状態となり、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない状態では、リミットスイッチ53の出力信号がオン状態となる。
【0060】
リミットスイッチ103は、一対のナット120を用いてプラグ取付板118に取り付けられている。一対のナット120は、リミットスイッチ103の胴部に形成された雄ネジ(図示せず)に噛み合っている。また、一対のナット120は、プラグ取付板118を板厚方向の両側から挟むことにより、リミットスイッチ103をプラグ取付板118に固定している。充填プラグ36は、一対のナット75を用いてプラグ取付板118に取り付けられている。リミットスイッチ103は、接触子110と対向するように、蝶番102よりも上側に配置されている。また、リミットスイッチ103は可動子121を有している。可動子121は、プラグ取付板118の板厚方向(
図7の左右方向)と平行な方向に移動可能となっている。また、可動子121は、リミットスイッチ103に内蔵された復帰バネによって一方(
図7の左方向)に付勢されている。可動子121には、接触子110が接触している。リミットスイッチ103の可動子121と押動板101との位置の調整は、接触子110のボルト110aとナット110bとによって行われる。具体的には、押動板101の表面101aが制限板105の突き当て部124に接触した状態(詳細は後述)において、リミットスイッチ103の可動子121が所定量だけ押し込まれた所望の状態となるようにボルト110aを締め込むことにより、可動子121と押動板101との位置を微調整し、その後、ナット110bを締めることにより、押動板101に対してボルト110aを固定する。これにより、リミットスイッチ103と押動板101との位置の調整作業を容易に行うことができる。
【0061】
図7は押動板101が初期位置に配置された状態を示している。
図7に示す配置状態では、可動子121の構成要素の一つであるボルト110aのネジ部110cが可動子121に接触し、これによって可動子121がリミットスイッチ103の本体部分に所定量だけ押し込まれている。ここで記述する所定量とは、リミットスイッチ103に内蔵された復帰バネの付勢力に抗して可動子121を押し込んだ場合に、リミットスイッチ103の出力信号をオフ状態からオン状態に切り替えるのに必要な量をいう。したがって、
図7に示す配置状態では、リミットスイッチ103の出力信号がオン状態となっている。これに対し、押動板101が蝶番102の軸部112を中心に
図7の反時計回り方向に移動すると、
図8に示すように、押動板101の傾きにしたがって接触子110がリミットスイッチ103から遠ざかる方向に変位する。このとき、リミットスイッチ103の可動子121は、図示しない復帰バネの付勢力により、接触子110の変位に追従して
図8の左方向に突出する。これにより、リミットスイッチ103の出力信号はオン状態からオフ状態に変化する。
【0062】
(バネ部材)
バネ部材104は、押動板101を
図7の時計回り方向に付勢する付勢部材に相当するものである。バネ部材104は、充填プラグ36の中心軸方向において、押動板101とプラグ取付板118との間に配置されている。バネ部材104は、圧縮コイルバネによって構成されている。バネ部材104は、押動板101が充填ソケット41の先端部によって奥側に押されたときに圧縮変形することにより、押動板101を手前側に押し戻すバネ力を発生させる。また、バネ部材104は、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない状態では、押動板101を初期位置に保持するバネ力を発生させる。
【0063】
バネ部材104は、支持ピン122によって支持されている。支持ピン122は、プラグ取付板118に固定されている。支持ピン122は、プラグ取付板118の板厚方向に突出し、この突出部分にバネ部材104が取り付けられている。また、押動板101の2つの主面101a,101bのうち、筐体32(
図2を参照)の外側を向く面を表面101a、筐体32の内側を向く面を裏面101bとすると、この裏面101bには筒部123が設けられている。筒部123は、押動板101に一体に形成されていてもよいし、押動板101に接着、ネジ止め等によって固定されていてもよい。筒部123にはバネ部材104の一端部が収容されている。筒部123は、押動板101に対するバネ部材104の位置ずれを抑制するものである。
【0064】
(制限板)
制限板105は、プラグ取付板118に取り付けられている。制限板105は、ブラケット115と一体に形成してもよいし、ブラケット115とは別の部材としてプラグ取付板118に取り付けてもよい。制限板105は、突き当て部124を一体に有している。124は、押動板101の表面101a側に配置されている。また、突き当て部124は、下向きに突出している。押動板101の可動範囲は、押動板101の表面101aが制限板105の突き当て部124に接触することにより制限される。また、押動板101の初期位置は、押動板101の表面101aが制限板105の突き当て部124に突き当たることにより一義的に決まる。その際、押動板101はバネ部材104の付勢力によって突き当て部124に突き当てた状態に保持される。押動板101の初期位置とは、充填プラグ36に充填ソケット41を接続していないときの押動板101の位置をいい、具体的には、押動板101の表面101aがバネ部材104の付勢力によって突き当て部124に突き当たっているときの押動板101の位置をいう。
【0065】
(検出機構の動作)
続いて、本発明の実施の形態2における検出機構100の動作について説明する。
まず、
図7に示すように、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていない場合は、押動板101がバネ部材104の付勢力を受けて制限板105の突き当て部124に突き当てられることにより、押動板101が初期位置に保持される。押動板101が初期位置に存在するときは、リミットスイッチ103に内蔵された復帰バネ(図示せず)の付勢力に抗して接触子110がリミットスイッチ103の可動子121を所定量だけ押し込んだ状態となる。このため、リミットスイッチ103の出力信号はオン状態となる。接触子110による押し込み力は、蝶番102の軸部112を間に挟んで接触子110とは反対側に配置されたバネ部材104の付勢力によって得られるものである。
【0066】
これに対して、充填プラグ36に充填ソケット41を差し込むと、その差し込みの途中で充填ソケット41の先端部が押動板101の表面101aに接触する。そして、充填ソケット41を更に差し込むと、充填ソケット41に押されて押動板101が
図8の軸部112を中心に反時計回り方向に移動する。このとき、バネ部材104は、押動板101に押されて圧縮変形する。また、上述のように押動板101が移動すると、押動板101の傾きにしたがって接触子110がリミットスイッチ103から遠ざかる方向に変位する。このとき、リミットスイッチ103の可動子121は、図示しない復帰バネの付勢力により、接触子110の変位に追従して
図8の左方向に突出する。これにより、リミットスイッチ103の出力信号はオン状態からオフ状態に変化する。
【0067】
また、充填プラグ36から充填ソケット41を引き抜くと、押動板101は、バネ部材104の付勢力を受けながら
図8の軸部112を中心に時計回り方向に移動する。このとき、押動板101は、バネ部材104の付勢力により制限板105の突き当て部124に突き当たるまで移動する。このため、バネ部材104は、押動板101を初期位置に復帰させる機能を果たす。一方、押動板101の上部109とそこに取り付けられた接触子110とは、押動板101の移動にしたがってリミットスイッチ103に近づく方向に変位する。このため、リミットスイッチ103の可動子121は接触子110によって所定量だけ押し込まれ、これによってリミットスイッチ103の出力信号はオフ状態からオン状態に変化する。
【0068】
このように、本実施の形態2に係る検出機構100においては、充填プラグ36に充填ソケット41が差し込まれると、リミットスイッチ103の出力信号はオフ状態となり、充填プラグ36から充填ソケット41が引き抜かれると、リミットスイッチ103の出力信号はオン状態となる。したがって、リミットスイッチ103の出力信号を監視することにより、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているかどうかを検出することが可能となる。また、本実施の形態2に係る燃料電池式産業車両の制御系において、FCコントローラ81は、リミットスイッチ103の出力信号がオン状態であれば、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていないと判断し、リミットスイッチ103の出力信号がオフ状態であれば、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていると判断する。そして、FCコントローラ81は、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていると判断すると、フォークリフト10の車両本体の動作(走行動作および荷役動作)を禁止すべく、許可ライン87を遮断する。このような構成を採用すると、たとえば、リミットスイッチ103が脱落するなどの不具合が生じた場合に、リミットスイッチ103の出力信号が充填ソケット41の接続時と同じ状態、すなわちオフ状態に保持される。このため、燃料ガスの充填中に車両本体の動作が誤って許可されてしまうエラーの発生を回避することができる。したがって、燃料ガスの充填中に産業車両が走行しないように制御するための構成が、より堅牢となった燃料電池式産業車両を提供することができる。
【0069】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0070】
たとえば、上記実施の形態1および実施の形態2においては、検出機構45,100の構成として、押動板51,101を移動部材とし、この押動板51,101の移動によってリミットスイッチ53,103の出力信号が変化する構成を採用したが、本発明はこれに限らない。たとえば、
図9に示すように、レバー90を蝶番91によって回転移動自在に支持し、充填プラグ36に差し込まれる充填ソケット41に押されてレバー90が図の反時計回り方向に移動することにより、リミットスイッチ92の可動子93が押し込まれる構成を採用してもよい。また、図示はしないが、カム機構やリンク機構を用いてリミットスイッチの可動子を押し込む構成を採用してもよいし、充填プラグ36に差し込まれる充填ソケット41が直接、リミットスイッチの可動子を押し込む構成を採用してもよい。
また、上記実施の形態1および実施の形態2においては、リミットスイッチ53,103を支持する一対のナット70,120については、プラグ取付板68,118に対して1つのナットを使ってリミットスイッチ53,103を固定したり、ナットを使わずにリミットスイッチ53,103をプラグ取付板68,118に直接溶接して固定したりする等、リミットスイッチ53,103の固定方法は問わない。
【0071】
また、検出機構45または検出機構100が備えるセンサとしては、リミットスイッチのような接触式のセンサに限らず、非接触式のセンサであってもよい。非接触式のセンサとしては、たとえば、
図10に示す距離センサ94、あるいは、
図11に示す光センサ95を用いることができる。
【0072】
図10においては、充填プラグ36の近傍に距離センサ94が設けられている。距離センサ94は、発光部94aと受光部94bとを有する。距離センサ94は、発光部94aから測定対象物に向けて光を出射してから、測定対象物で反射した光を受光部94bで受光するまでの時間差に対応するセンサ信号を出力する。よって、距離センサ94の出力信号は、発光部91aから測定対象物までの距離に応じて変化する。これに対し、測定対象物は、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているか否かによって変わる。具体的には、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていないときは、充填プラグ36が測定対象物となり、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているときは、充填ソケット41が測定対象物となる。このため、充填プラグ36に対する充填ソケット41の接続状態に応じて距離センサ94の出力信号が変化する。したがって、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているか否かを、距離センサ94の出力信号に基づいて検出することが可能となる。
【0073】
一方、
図11においては、充填プラグ36に対する充填ソケット41の差し込み位置に対応して、充填プラグ36の近傍に光センサ95が設けられている。光センサ95は、発光部95aと受光部95bとを有する透過型の光センサである。発光部95aと受光部95bの間にはセンサ光軸96が存在し、このセンサ光軸96を介して発光部95aと受光部95bが対向している。光センサ95の出力信号は、発光部95aから出射された光を受光部95bで受光するとオン状態となり、受光部95bで受光しないとオフ状態となる。センサ光軸96は、充填プラグ36に差し込まれる充填ソケット41によって遮られる位置に設定されている。このため、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているときは、発光部95aから出射されたセンサ光が充填ソケット41によって遮られるため、光センサ95の出力信号はオフ状態となる。また、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されていないときは、発光部95aから出射されたセンサ光が受光部95bで受光されるため、光センサ95の出力信号がオン状態となる。よって、充填プラグ36に対する充填ソケット41の接続状態に応じて光センサ95の出力信号が変化する。したがって、充填プラグ36に充填ソケット41が接続されているか否かを、光センサ95の出力信号に基づいて検出することが可能となる。なお、ここでは透過型の光センサを例示したが、反射型の光センサを用いることも可能である。
【0074】
また、上記実施の形態1においては、付勢部材としてのバネ部材54を、押動板51とプラグ取付板68との間に配置したが、本発明はこれに限らず、たとえば図示はしないが、付勢部材としてのねじりコイルバネを蝶番52(
図4参照)の部分に取り付けた構成を採用してもよい。また、付勢部材はバネ部材に限らず、たとえば、伸縮性に富むゴムなどであってもよい。この点は、上記実施の形態2についても同様である。
【0075】
また、上記実施の形態1においては、車両キースイッチ83がキーオン状態を検知している状況下で、リミットスイッチ53の出力信号がオン状態である場合に、FCコントローラ81は、許可ライン87を遮断することによりフォークリフト10の車両本体の動作を禁止するとしたが、これに限らず、たとえば、許可ライン87に代えて電源ライン86を遮断することによりフォークリフト10の車両本体の動作を禁止してもよい。許可ライン87に代えて電源ライン86を遮断する点は、上記実施の形態2にも適用可能である。
【0076】
また、上記実施の形態1および実施の形態2においては、FCコントローラ81によって許可ライン87が遮断された場合に、車両コントローラ82が禁止するフォークリフト10の車両本体の動作として、走行動作と荷役動作の両方を挙げたが、これに限らず、走行動作のみを禁止してもよい。
また、上記実施の形態1においては、FCコントローラ81と車両コントローラ82が別々に備えられている構成であったが、1つのコントローラで制御してもよい。この点は、上記実施の形態2についても同様である。
【0077】
また、上記実施の形態1においては、燃料電池ユニット26に充填リッドを設けない構成を採用したが、本発明はこれに限らず、燃料電池ユニット26に充填リッドを設けた構成を採用した場合でも、燃料ガスの充填中に産業車両が走行しないように制御することが可能である。この点は、上記実施の形態2についても同様である。ただし、オペレータの充填作業を簡素化するうえでは、充填リッドを設けない構成を採用するほうが好ましい。
【0078】
また、上記実施の形態1においては、車体部11にカバー29を取り付けた構成を採用したが、本発明はこれに限らず、カバー29を取り付けない構成を採用してもかまわない。この点は、上記実施の形態2についても同様である。ただし、フォークリフト10のデザイン性を高めるうえでは、カバー29を取り付けた構成を採用するほうが好ましい。
【0079】
また、上記実施の形態1においては、燃料電池式産業車両として、燃料電池式のフォークリフトを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、たとえば、燃料電池式のトーイング車など、他の燃料電池式産業車両に適用してもよい。この点は、上記実施の形態2についても同様である。
【符号の説明】
【0080】
10 フォークリフト(燃料電池式産業車両)、11 車体部(車両本体)、14 荷役装置(車両本体)、26 燃料電池ユニット、31 燃料タンク、36 充填プラグ、41 充填ソケット、45,100 検出機構、51,101 押動板(移動部材)、53,103 リミットスイッチ(センサ)、54,104 バネ部材(付勢部材)、71,121 可動子、73,123 筒部、81 FCコントローラ(制御手段)、82 車両コントローラ(制御手段)、83 車両キースイッチ。