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  • 特許-ステアリングコラム装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/185 20060101AFI20230426BHJP
   B62D 1/19 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B62D1/185
B62D1/19
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019158762
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021037791
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】藤村 統
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168244(JP,A)
【文献】特開2012-250651(JP,A)
【文献】特開2013-169912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に相対摺動可能に嵌合され、ステアリングシャフトを回転自在に支持するアッパージャケット、ロアージャケット、及び規制部材を含むステアリングコラム装置であって、
前記規制部材は、頭部と、前記頭部から延設された胴部と、前記胴部から延設された脚部とを有し、前記ロアージャケットに空けられた孔に前記規制部材の前記胴部及び前記脚部を挿入して回転させ、前記ロアージャケットを狭着することにより、前記規制部材の前記頭部を前記ロアージャケット上から突き出した状態で前記規制部材を前記ロアージャケットに固定した、
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記規制部材は、樹脂により形成される、請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記規制部材は、金属により形成される、請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
前記規制部材は、前記胴部の太さに応じて二次衝突の際に吸収するエネルギーの大きさを調整するようにした、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、テレスコ機能を有するとともに、二次衝突の際に車体前方へ移動して衝撃を緩和するステアリングコラム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、相対摺動可能に、つまりテレスコ可能に、リテーナを介して嵌合されたアウターチューブ及びロアーチューブを有するステアリング装置が記載されている。
【0003】
かかる従来のステアリング装置では、例えば、車両への取り付け前のステアリング装置単品の状態でロック機構が解除された場合に、両チューブが互いに離脱しそうになったとしても、アウターチューブに固定状態で取り付けられた規制部材が、リテーナの軸方向の所定部に当接することにより、両チューブが互いに離脱することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-213521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のステアリング装置では、規制部材は、ステアリング装置が車両に取り付けられる前の単体の状態のときに、両チューブが互いに離脱することを防止する目的でのみ設けられ、ステアリング装置が車両に取り付けられた後は、不要となる。
【0006】
本願は、車体への取付け前に離脱目的で設けられた規制部材を取付け後にも他の目的に使用することが可能となるステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係るステアリングコラム装置は、軸方向に相対摺動可能に嵌合され、ステアリングシャフトを回転自在に支持するアッパージャケット、ロアージャケット、及び規制部材を含むステアリングコラム装置であって、規制部材は、頭部と、頭部から延設された胴部と、胴部から延設された脚部とを有し、ロアージャケットに空けられた孔に規制部材の胴部及び脚部を挿入して回転させ、ロアージャケットを狭着することにより、規制部材の頭部をロアージャケット上から突き出した状態で規制部材をロアージャケットに固定したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係るステアリングコラム装置は、請求項1のステアリングコラム装置において、規制部材は、樹脂により形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係るステアリングコラム装置は、請求項1のステアリングコラム装置において、規制部材は、金属により形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係るステアリングコラム装置は、請求項1~3のステアリングコラム装置において、規制部材は、胴部の太さに応じて二次衝突の際に吸収するエネルギーの大きさを調整するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るステアリングコラム装置によれば、1つの規制部材で、ロアージャケットがアッパージャケットから離脱することを規制する役割と、二次衝突の際のエネルギーを吸収する役割の両方の役割を果たすようにしたので、ステアリングコラム装置の製造コストをさらに低減させることが可能となる。
【0012】
また、請求項4に係るステアリングコラム装置によれば、二次衝突の際に吸収するエネルギーの大きさを、規制部材の胴部の太さを変更するだけで簡単に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願の一実施の形態に係るステアリングコラム装置に含まれる構成の一部の外観を示す斜視図である。
図2図1の構成に含まれるロアージャケットに樹脂ピンを差し込む様子を示す斜視図である。
図3図1の構成からアッパーブラケットを除いた構成を示す平面図である。
図4図3のP-P線に沿う断面図((a))、同断面図の部分拡大図((b))及び樹脂ピンの斜視図((c))である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本願の一実施の形態に係るステアリングコラム装置の構成の一部の外観を示している。本実施形態のステアリングコラム装置は、チルト機能とテレスコ機能を備えているが、本発明は、テレスコ機能を備えた場合に生ずる問題点を解決するためになされているので、チルト機能については言及しない。なお、図1図4において、方向に言及する場合には、各図に示される矢印の方向を用いるものとする。但し、前後方向は、軸方向である。
【0016】
本実施形態のステアリングコラム装置は、図1に示すようにステアリングコラム10を備えている。ステアリングコラム10は、アッパーシャフト11及びロアーシャフト15と、アッパーシャフト11及びロアーシャフト15をそれぞれ回転自在に支持するアッパージャケット12及びロアージャケット16とにより、主として構成されている。なお、アッパーシャフト11の先端には、図示しないステアリングホイールが取り付けられる。
【0017】
アッパーシャフト11及びアッパージャケット12と、ロアーシャフト15及びロアージャケット16とは、図4(a)に示すように相対摺動可能に構成され、ステアリングコラム10は全体として、前後方向に伸縮可能に構成されている。
【0018】
アッパージャケット12には、図1に示すように、アッパーブラケット30が取り付けられる。アッパーブラケット30は、アッパージャケット12を車体(図示せず)に固定するためのものである。つまり、アッパージャケット12は、アッパーブラケット30を介して車体に取り付けられる。
【0019】
一方、ロアージャケット16にも、ロアーブラケット40が取り付けられ、ロアージャケット16も、ロアーブラケット40を介して車体に取り付けられる。
【0020】
ステアリングコラム10が、アッパーブラケット30及びロアーブラケット40を介して車体に取り付けられた場合、テレスコ機能は主として、アッパージャケット12を介して実現されるため、テレスコ機能を実現するためのテレスコ機構は、アッパージャケット12周辺に設けられる。
【0021】
アッパージャケット12には、図3に示すように、ロックボルト26が挿通されている。このとき、ロックボルト26は、摩擦板20の長孔20a(図1参照)にも挿通されている。ロックボルト26は、図示しない操作レバーにより締めたり緩めたりすることで、摩擦板20を含む複数枚の摩擦板をアッパージャケット12に接触させたり、離したりして、テレスコ機能をロック又は解除することができる。
【0022】
そして、テレスコ機能のロックに連動して、テレスコポール24が、押圧部22を下方に押し下げて、アッパージャケット12を押圧することにより、アッパージャケット12とロアージャケット16との間のガタつきを抑制するようにしている。
【0023】
ロアージャケット16の所定の位置には、図2に示すように、樹脂ピン50を挿入して回転させ、ロアージャケット16上に固定するための孔16aが設けられている。樹脂ピン50は、本実施形態のステアリングコラム装置が車体に取り付けられる前の単体の状態のときには、テレスコ機能のロックが意図に反して解除された場合でも、ロアージャケット16がアッパージャケット12から離脱することを規制する役割を果たしている。
【0024】
樹脂ピン50は、かまぼこ型の頭部51と、頭部51の底面から下方に延設された円柱状の胴部52と、胴部52から両横方向に延設されたテーパー状の脚部53とにより構成されている。ロアージャケット16の孔16aは、樹脂ピン50の胴部52と両脚部53とを、両脚部53を前後方向に向かせて挿入することができるような形状に空けられている。したがって、樹脂ピン50を、その両脚部53を前後方向に向かせて孔16aに挿入した後、90°回転させると、樹脂ピン50は、頭部51の底面と両脚部53の各上面とで、ロアージャケット16を狭着して、ロアージャケット16上に固定される。これにより、ロアージャケット16の表面からは、樹脂ピン50の頭部51が突き出した状態となる。
【0025】
樹脂ピン50のロアージャケット16への固定は、図3に示すように、ロアージャケット16とアッパージャケット12とが嵌合した状態でなされる。但し図3は、樹脂ピン50のロアージャケット16への固定後の状態を示している。
【0026】
このように、ロアージャケット16とアッパージャケット12とが嵌合した状態で樹脂ピン50がロアージャケット16に固定された後、テレスコ機能のロックが、例えば作業者の意図に反して解除され、ロアージャケット16が、アッパージャケット12から離脱方向に摺動したとする。図4(a)において、ロアージャケット16がアッパージャケット12から離脱方向に摺動することは、ロアージャケット16が前方向に摺動することである。この場合、樹脂ピン50がロアージャケット16の移動に伴って前方向に移動するので、図4(b)に示すように、樹脂ピン50(の頭部51)がアッパージャケット12上に設けられた押圧部22と当接した後は、ロアージャケット16はそれ以上、前方向に進まない。つまり、樹脂ピン50により、ロアージャケット16がアッパージャケット12から離脱することを防止できる。
【0027】
一方、本実施形態のステアリングコラム装置を車体に取り付けた後、二次衝突が発生すると、図4(a)において、アッパージャケット12は前方向に移動する。これにより、樹脂ピン50(の頭部51)がアッパージャケット12により押圧され、押圧力が樹脂ピン50の頭部51と胴部52との間を剪断するために必要な圧力を超えると、例えば、図4(c)中、一点鎖線で示す部分(52a)で頭部51と胴部52とが剪断される。
【0028】
この剪断により二次衝突の際のエネルギーが吸収され、運転者に対する衝撃が緩和される。剪断に必要な押圧力、つまり荷重は、樹脂ピン50の胴部52の径長に依存するので、胴部52の径長を調整することにより、剪断時の荷重も調整でき、ひいては二次衝突の際のエネルギーの吸収力も調整できる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のステアリングコラム装置は、軸方向に相対摺動可能に嵌合され、アッパーシャフト11及びロアーシャフト15を回転自在に支持するアッパージャケット12及びロアージャケット16を含むステアリングコラム10と、頭部51と、頭部51から延設された胴部52と、胴部52から延設された脚部53とを有する樹脂ピン50と、を備えている。
【0030】
そして、本実施形態のステアリングコラム装置は、ロアージャケット16に空けられた孔16aに樹脂ピン50の胴部52及び脚部53を挿入して回転させ、樹脂ピン50の脚部53と頭部51とによりロアージャケット16を狭着することにより、樹脂ピン50の頭部51をロアージャケット16上から突き出した状態で樹脂ピン50をロアージャケット16に固定し、ロアージャケット16がアッパージャケット12から離脱する方向に摺動した場合には、アッパージャケット12が樹脂ピン50の頭部51に当接することにより、ロアージャケット16がアッパージャケット12から離脱することを規制し、ステアリングコラム10が車体に取り付けられた後、二次衝突が発生した場合には、運転者がステアリングコラム10を押したことに応じて、アッパージャケット12が車体の前方に移動し、樹脂ピン50の頭部51を胴部52から剪断することにより、二次衝突の際のエネルギーを吸収する。
【0031】
このように、本実施形態のステアリングコラム装置では、1つの樹脂ピン50で、ロアージャケット16がアッパージャケット12から離脱することを規制する役割と、二次衝突の際のエネルギーを吸収する役割の両方の役割を果たすようにしたので、本実施形態のステアリングコラム装置の製造コストをさらに低減させることが可能となる。
【0032】
ちなみに、本実施形態において、樹脂ピン50は、「規制部材」の一例である。
【0033】
また、樹脂ピン50は、胴部52の径長に応じて二次衝突の際に吸収するエネルギーの大きさを調整するようにした。
【0034】
これにより、二次衝突の際に吸収するエネルギーの大きさを、樹脂ピン50の胴部52の径長を変更するだけで簡単に調整することが可能となる。
【0035】
ちなみに、径長は、「太さ」の一例である。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0037】
(1)上記実施形態では、樹脂ピン50は、樹脂により一体的に形成したが、これに限らず、金属により一体的に形成してもよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、樹脂ピン50の胴部52は、円柱状に形成したが、これに限らず、多角柱状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ステアリングコラム装置
10 ステアリングコラム
11 アッパーシャフト
12 アッパージャケット
15 ロアーシャフト
16 ロアージャケット
16a 孔
22 押圧部
50 樹脂ピン
51 頭部
52 胴部
53 脚部
図1
図2
図3
図4