(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】油圧式の自動車ブレーキシステム用のブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 11/18 20060101AFI20230426BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B60T11/18
F16B7/20 A
(21)【出願番号】P 2019512833
(86)(22)【出願日】2017-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2017070753
(87)【国際公開番号】W WO2018046262
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-07-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】102016216854.1
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016218183.1
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】コラサンタ・ジェファソン
(72)【発明者】
【氏名】ゼリンガー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リュファー・マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー・ホルスト
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】内田 博之
【審判官】久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-80986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0069578(US,A1)
【文献】米国特許第5499570(US,A)
【文献】特開2000-192990(JP,A)
【文献】米国特許第4878346(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0166753(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T10/00-13/74,F16B7/00-7/22,F16C11/00-11/12,G05G1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのハウジング(2)と、このハウジング(2)内に配置された少なくとも1つの圧力チャンバ(3)を有し、圧力チャンバ(3)が、軸方向に移動可能な少なくとも1つのシリンダピストン(4)によって画成され、シリンダピストン(4)が、操作ロッドユニット(5)によって操作力(Fb)で機械的に操作可能であり、操作ロッドユニット(5)が
、シリンダピストン(4)に
係止されている、油圧式の自動車ブレーキシステム用のブレーキ装置(1)において、
操作ロッドユニット(5)が、操作ロッド(6)を備え、この操作ロッドのシリンダピストン側の終端に、
操作ロッドユニット(5)をシリンダピストン(4)に係止するための別個の保持部材(7)が固定され、この保持部材が、操作ロッド(6)からシリンダピストン(4)への両軸方向の力の伝達のために設けられていること、及び、保持部材(7)が、そのシリンダピストン(4)とは逆方向に向いた終端に、シリンダピストン(4)からハウジング(2)に軸力を導入するために設けられた、シリンダピストン(4)から軸方向に突出する支持リング(20)を備え、シリンダピストン(4)が、非制動の初期位置で保持部材(7)の支持リング(20)によって軸方向にハウジング(2)の支持ストッパ(24)に支持されていること、
及び、保持部材(7)が、シリンダピストン(4)の軸方向のストッパ(9)と協働する少なくとも1つの係止ノーズ(8)を備え、係止ノーズ(8)の後縁(30)と保持部材(7)の前方の端面(29)との間の軸方向の間隔が、シリンダピストン(4)の保持部材(7)を収容するための盲穴(28)の穴底と軸方向のストッパ(9)との間の軸方向の間隔よりも小さく、これにより、保持部材(7)によってシリンダピストン(4)に係止された操作ロッドユニット(5)が、軸方向にシリンダピストン(4)に対して相対的に限定的に移動可能であること、を特徴とするブレーキ装置(1)。
【請求項2】
ストッパ(9)と係止ノーズ(8)が、対応する接触面を備え、これら接触面は、係止ノーズ(8)が軸方向に向いたストッパ(9)への押付け時に、半径方向外方へ作用する力成分の作用を受けているように協働すること、を特徴とする請求項
1に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項3】
ストッパ(9)の軸方向に係止ノーズ(8)の方向に向いた端面(10)は、ストッパが半径方向のアンダカット部(11)を備えるように、斜めに又はR付けして形成されていること、を特徴とする請求項
2に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項4】
保持部材(7)が、少なくとも2部材部品として形成され、操作ロッド(6)からシリンダピストン(4)へ操作力(Fb)を伝達するために設けられた加圧部材(12)と、この加圧部材(12)と結合されかつシリンダピストン(4)内に係止するための少なくとも1つの係止ノーズ(8)を備える係止部材(13)を有すること、を特徴とする請求項
1に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項5】
保持部材(7)が、周囲に分配されて配置された少なくとも3つの係止ノーズ(8)を備えること、を特徴とする請求項
1に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項6】
係止ノーズ(8)が、バネアーム(14)の第1の自由端に形成され、このバネアームの第2の終端が、保持部材(7)と一体化されていること、を特徴とする請求項
1に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項7】
係止部材(13)が、熱可塑性の材料から形成されていること、を特徴とする請求項
4~
6のいずれか1項に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項8】
操作ロッド(6)が、1部材部品として形成され、各終端に1つのボールヘッド(15,16)を備えること、を特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項9】
操作ロッド(6)が、半径方向段差部(17)を備え、この半径方向段差部によって、操作ロッド(6)へ、非制動の初期位置に操作ロッドユニット(5)を軸方向に変位させるための、戻しバネ(18)に生じた復元力(Fr)が導入されること、を特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項10】
復元力(Fr)が、半径方向段差部(17)へ支持要素(19)を介して導入され、この支持要素が、軸方向に移動可能に操作ロッド(6)に案内されて配置されていること、を特徴とする請求項
9に記載のブレーキ装置(1)。
【請求項11】
ブレーキ装置(1)が、制動圧力を発生させるために少なくとも1つの電気機械式又は電気油圧式の増幅器段と協働するか、増幅器段に統合されていること、を特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載のブレーキ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の油圧式の自動車ブレーキシステム用のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車における油圧式のブレーキシステムのために、ブレーキペダルと機械的に連結された操作ロッドによって力伝達可能な結合で結合された、制動圧力を発生させるために直線的に移動可能なシリンダピストンを有するマスターブレーキシリンダを備えるブレーキ装置を使用することが知られている。この場合、同時に、ピストン及びブレーキペダルへの操作ロッドの確実な結合と、稼働中の構成要素の間の角度補償、簡単な組立て及び持続的に低騒音の稼働が実現されなければならない。増々、コンパクトな構造を目指しかつ高速動的制動過程のために設計された、電気油圧式又は電気機械的な増幅器段と圧力変調段を統合した電子的に遠隔操作可能なブレーキ装置が使用される。これにより、特に、引張力及び圧縮力の効果的な伝達によるシリンダピストンへの操作ロッドの確実な結合が重要になる。
【0003】
例えば、角度補償のためにボールヘッドを備えた操作ロッドを別のアタッチメント内でプレス又はクリンプし、それをシリンダピストンに解離不能にかしめることが知られている。この場合車両内部スペースに取り付けられたブレーキペダルへの操作ロッドの連結及びエンジンルーム内でのブレーキ装置の組立てを可能にするために、操作ロッドを2部材部品として構成するか、ブレーキペダルに対するそのインターフェースを特に複雑に構成しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、前記欠点を回避しつつ、操作ロッドとシリンダピストンの間の確実な結合を可能にし、同時に車両でのできるだけ簡単な組立てを可能にする、冒頭で述べた種類の改善されたブレーキ装置を提供するとの課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1による特徴の組合せを有するブレーキ装置によって解決される。従属請求項には、本発明の別の有利な構成及び発展形態が記載されている。
【0006】
本発明は、操作ロッドユニットが、係止結合作用によってシリンダピストンに固定され、この係止結合作用が、操作ロッドユニットとシリンダピストンの間の軸方向の相対移動だけによって惹起されていること、を企図する。これにより、組立ては、著しく簡素化され、減衰ディスク又はアダプタセットの圧入、シリンダピストン内でのピストンロッドのかしめ及び場合によってはブレーキペダルの連結のためのフォークヘッドによるピストンロッドのネジ固定等の複数のプロセスステップを省略することができる。
【0007】
本発明の発展形態によれば、シリンダピストンに係止された操作ロッドユニットが、軸方向にシリンダピストンに対して相対的に限定的に移動可能に設けられ、これにより、係止結合作用が、特に簡単に確実に再現可能であり、音響的に聞取り可能に行なうことができ、許容差の要求及び試験費用が低減される。
【0008】
本発明は、同様に、操作ロッドユニットが、1部材部品の操作ロッドを備え、この操作ロッドのシリンダピストン側の終端に、別個の保持部材が固定され、この保持部材が、操作ロッドからシリンダピストンへの両軸方向の力の伝達のために設けられている。別の好ましい発展形態によれば、保持部材が、少なくとも1つの係止ノーズを備え、この係止ノーズが、シリンダピストンの軸方向のストッパと協働する。これにより、操作ロッドユニットは、事前製造されたアッセンブリとして車両でのブレーキ装置の最終組立て時に初めて使用し、最終組立て時の費用を著しく低減することができる。1部材部品の操作ロッドにより、必用な機能寸法をより簡単に順守し、較正及び試験のための費用を低減することができる。
【0009】
特に好ましい本発明による実施形態によれば、シリンダピストンのストッパの軸方向に係止ノーズの方向に向いた端面は、ストッパが半径方向のアンダカット部を備えるように斜めに又はR付けして形成される。これにより、対応する接触面は、係止ノーズが軸方向に向いたストッパへの押付け時に、半径方向外方へ作用する力成分の作用を受け、変位させられるように協働させることができる。これにより、保持部材の脱落が、特に高動的制動過程時でも効果的に防止され、機能的に有利な自己調心作用がもたらされ、重量を低減させることができる。
【0010】
有利な本発明による実施形態によれば、保持部材が、2部材部品として形成され、操作ロッドからシリンダピストンへ操作力を伝達するために設けられた加圧部材と、この加圧部材と結合されかつシリンダピストン内に係止するための少なくとも1つの係止ノーズを備える係止部材を備える。これにより、両部材は、異なった負荷シナリオのためにそれぞれ特に適した材料から適切に製造することができる。
【0011】
特に有利な実施形態は、係止部材が、熱可塑性の材料から形成されていること、を企図し、これにより、特に複雑な形状も、簡単かつ安価に射出成型によって製造することができる。
【0012】
好ましくは、保持部材が、周囲に分配されて配置された少なくとも3つの係止ノーズを備え、これにより、空間的に決定された安定した支持と力伝達のための支持が達成される。
【0013】
別の有利な構成によれば、各係止ノーズが、それぞれ、バネアームの第1の自由端に形成され、このバネアームの第2の終端が、保持部材と一体化されており、これにより、十分な弾性変形度を、特に硬質材料の使用時でも大きい労力を費やすことなく達成することができる。
【0014】
本発明は、シリンダピストンが、その非操作の初期位置で保持部材によって軸方向にハウジングに支持されていること、を企図し、これにより、組立てを、更に簡素化することができる。
【0015】
このため、本発明の好ましい構成は、保持部材が、そのシリンダピストンとは逆方向に向いた終端に支持リングを備え、この支持リングが、シリンダピストンからハウジングに軸力を導入するために設けられていること、を企図する。
【0016】
組立ての更なる簡素化のために、本発明は、操作ロッドが、半径方向段差部を備え、この半径方向段差部によって、操作ロッドへ、非制動の初期位置に操作ロッドユニットを軸方向に変位させるための、戻しバネに生じた復元力が導入されること、及び、復元力が、好ましい実施形態により、半径方向段差部へ支持要素を介して導入され、この支持要素が、軸方向に移動可能に操作ロッドに案内されて配置されていること、を企図する。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、ブレーキ装置が、制動圧力を発生させるために少なくとも1つの電気機械式又は電気油圧式の増幅器段と協働するか、増幅器段に統合されて設けられている。これにより、ブレーキ装置は、簡単に組立て可能かつ省スペースの機能モジュールとして提供することができ、この機能モジュールは、全ての重要なブレーキ機能を唯一のアッセンブリに統合する。
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明による実施例の以下の説明からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】操作ロッドが連結された改善されたブレーキ装置の第1の本発明による実施形態の一部の縦断面図a)と、操作ロッドとシリンダピストンの間のインターフェースの公知の不利な構成b)
【
図3】
図1aによる実施形態による操作ロッドユニットとシリンダピストンの間のインターフェースの拡大詳細図
【
図9】シリンダピストンと操作ロッドユニットのいくつかの関連部品の概要
【発明を実施するための形態】
【0020】
-
図1-
図1aに、油圧式の自動車ブレーキシステム用のブレーキ装置1の本発明による実施形態の一部が図示されている。
【0021】
ブレーキ装置1は、ハウジング2を有し、このハウジングは、本体22と後部部材23を備え、これらは、互いに引張力及び圧縮力を伝達可能な結合をしており、この結合は、例えば示してないネジ要素によって実現されている。
【0022】
本体22に、油圧の圧力媒体で満たされかつ示してないシミュレータに接続された圧力チャンバ3が配置され、この圧力チャンバは、シリンダピストン4によって画成されている。圧力チャンバ3内に制動圧力を発生させるために、シリンダピストン4は、ここに図示したその非操作の初期位置から軸方向に圧力チャンバ3の方向に移動させることができる。シリンダピストン4の操作は、これに固定された操作ロッドユニット5による操作力Fbによって行なわれ、この操作ロッドユニットは、シリンダピストン4とは逆方向に向いたその終端において、ここには示してないブレーキペダルに機械的に連結されている。
【0023】
操作ロッドユニット5は、1部材部品の操作ロッド6を備える。シリンダピストン4の実質的に縦軸に平行な直線運動と、操作ロッドユニット5の必ずしも縦軸に平行ではない運動との間の角度補償のため並びに取付け許容差を補償するため、示した実施形態の操作ロッド6は、その両端にそれぞれ1つのボールヘッド15,16を備えている。
【0024】
操作ロッドユニット5をその非操作の初期位置へ逆変位させるため、戻しバネ18が設けられており、この戻しバネは、ハウジング2もしくはその後部部材23と操作ロッド6に軸方向に支持された支持要素19との間に挟まれている。
【0025】
シリンダピストン4内の盲穴28内に、保持部材7が収容され、この保持部材内に、操作ロッド6が、限定的に傾動可能にそのシリンダピストン側のボールヘッド15によって固定されている。
【0026】
シリンダピストン4の操作ロッド側の周縁に設けられた軸方向のストッパ9は、保持部材7を、故に操作ロッドユニット5をシリンダピストン4に固定するために使用される。簡単な組立てのため、保持部材7には、複数の、好ましくは3つ又は6つの周囲に分配されて配置された係止ノーズ8が設けられている。シリンダピストン4と操作ロッドユニット6を接合するため、保持部材7は、単に軸方向に盲穴28内へ押し込むことしか必要でない。その場合、係止ノーズ8は、ストッパ9によって弾性的に半径方向内側に向かって押され、ストッパ9を通過した後に自動的にスナップ留めされる。
【0027】
これにより、保持部材7は、半径方向と両軸方向の両方に操作ロッド6とシリンダピストン4の間で力を伝達するために設計されている。操作力の方向に作用する軸力は、保持部材7のシリンダピストン側の端面29を介して盲穴28の穴底に伝達され、反作用する軸力が、保持部材7から係止ノーズ8を介してストッパ9に導入される。
【0028】
これに対して、
図1bには、シリンダピストン4内での操作ロッド6の既知の固定形態が示されている。操作ロッド6には、ピストン側に、シリンダピストン4内でかしめられたアダプタ25が固定されている。このため、盲穴28の周縁領域26は、別の工具で変形する必要があり、これにより、シリンダピストン4及び操作ロッド6から解離不能のユニットが構成され、このユニットは、ハウジング2へのシリンダピストン4の組立て及び車両へのブレーキ装置1の組立てを困難にする。
【0029】
-
図2-
図2には、
図1aによる構成による保持部材7の1つの実施形態が拡大されて図示されている。
【0030】
示した構成では、保持部7は、異なる機能領域に簡単かつ適切に最適な特性を有する材料を割り当てるために、2部材部品として構成されている。
【0031】
操作ロッド6のボールヘッド15を収容し、シリンダピストン4に操作力を伝達するために、加圧部材12が設けられ、この加圧部材は、比較的耐圧性を有しかつ持続的に形態安定性を有する材料、好ましくは鋼から製造されている。加圧部材12は、好ましくは噛合い係合結合部又は噛合い係合と材料接合の組合せ結合部として形成されたインターフェース27を介して係止部材13と結合され、この係止部材に、弾性的なバネ式の係止ノーズ8が形成されている。好ましくは、係止部材13は、加圧部材12を射出被覆することによる射出成形部品として、係止のために十分な弾性を備える熱可塑性のプラスチックから製造される。
【0032】
予組立て時、操作ロッド6が保持部材7内に導入され、
図3に見られるように、加圧部材12内のボールヘッド15の後をクリンプ加工される。
【0033】
空間的に決定された安定した十分に剛性を有する支持のため、保持部材7に、周囲に分配された配置された少なくとも3つの係止ノーズ8が設けられる。各係止ノーズ8は、バネアーム14の第1の自由端の半径方向の突起として形性され、このバネアームの第2の終端は、保持部材7と一体化されている。各係止ノーズ8のストッパ9の方に向いた後方の切込み面32は、半径方向内側から外側に向かって見て、後方に向かってもしくは操作力Fbとは逆方向に傾斜して形成されているので、これにより、係止ノーズ8は、ストッパ9への当接時に半径方向外側に向かって押され、アンダカット部11へ導入される。
【0034】
周方向に前記係止ノーズ8と交互に、保持部材7には締付けノーズ31が設けられている。各締付けノーズ31も、バネアーム14の第1の自由端の半径方向の突起として形成されている。係止ノーズ8とは違い、締付けノーズ31は、後方、即ちストッパ9の方に向いた摺動面33を備え、この摺動面は、半径方向内側から外側に向かって見て、前方に向かってもしくは操作力Fbの方向に傾斜して形成されている。これにより、締付けノーズ31は、ストッパ9への当接時に操作力Fbの方向に向いた推進力Fv(
図6参照)を増大させつつ半径方向内側に向かって押される。
【0035】
この場合、締付けノーズ31は、軸方向で操作力Fbとは反対の方向に極僅か係止ノーズ8よりも長く形成されている。
【0036】
これにより、摺動面33は、取付け状態で常にストッパ9に当接する。保持部材7がシリンダピストン4内で軸方向に制御されずに動き、それによりがたつくことが、特に防止される。取付け状態、各作動状態及びいつでも、推進力Fvは、保持部材7を操作ロッド5と共に方向Fbに推進し、シリンダピストン4と端面29の接触を確立または維持するために働く。しかしながら、保持部材7は、Fvよりも大きい反力の負荷を受けたときには、シリンダピストン4内で軸方向にシリンダピストン4に対して相対的に限定的に移動可能に保たれる。
【0037】
保持部材7の操作ロッド側の終端に、軸方向に係止ノーズ8に対して間隔を置いて支持リング20が形成され、この支持リングは、ハウジング2内のその非操作の初期位置でのシリンダピストン4の軸方向の支持のために使用される。支持リング20の機能については、以下で特に
図8に関する説明で立ち入る。
【0038】
-
図3-
図3には、
図1aによる非制動の初期位置の保持部材7と隣接する構成要素の位置が図示されている。この場合、特に注目に値するのは、ストッパ9と係止ノーズ8の対応する領域の構成である。ストッパ9の係止ノーズ8の方向に軸方向に向いた端面10は、傾斜してもしくはテーパをつけて形成されているので、ストッパは、半径方向のアンダカット部11を備える。この場合、R付けされた輪郭も可能である。ストッパ9の端面10に対応する係止ノーズ8の接触面も傾斜して、できるだけ端面10の輪郭に対して平行に形成されている。このような形成により、係止ノーズ8は、ストッパ9に軸方向に向いた押圧時に半径方向の力成分の作用を受け、半径方向外側に向かって移動される。これにより、シリンダピストン4内での保持部材7の強制調心と、一種のフックのようなアンダカット部11での係止ノーズ8の固定が、同時に達成される。この固定効果は、作用する軸力に対して正比例し、これにより、保持部材7のシリンダピストン4からの脱落が、高い力の作用下で防止される。
【0039】
組立て時のシリンダピストン4内での保持部材7の係止を可能にするため、係止ノーズ8の後縁30は、ストッパ9の横を通過することができなければならない。このため、係止ノーズ8の後縁30と保持部材7の前方の端面29との間の軸方向の間隔は、穴底28とストッパ9の間の軸方向の間隔よりも小さく設けられ、これにより、操作ロッドユニット5は、シリンダピストン4内での係止後にこのシリンダピストンに対して相対的に、操作力Fbの方向に向いた推進力Fv(
図6b参照)を構成しつつ極僅か軸方向に移動可能に保たれる。
【0040】
-
図4-
図4には、シリンダピストン4がその非操作の初期位置もしくは静止位置にある時の、保持部材7の相対位置が図示されている。圧力チャンバ3の方向からシリンダピストン4に作用する力は、復元力Frと共に保持部7に導入され、この保持部材は、支持リング20によって軸方向に後部部材23に配置された支持ストッパ24に支持され、これにより、力が、シリンダピストン4からハウジング2に導入され、シリンダピストン4の位置が規定されている。付加的に、戻しバネ18から操作ロッド6に導入される予荷重力は、ボールヘッド15を介して保持部材7に導入され、支持リング20からハウジング2にも導入される。係止ノーズ8とストッパ9の間には、自由な
軸方向間隔Sが残っている。
【0041】
-
図5-
操作ロッド6に導入された操作力Fbによる操作過程時に、シリンダピストン4は、保持部材7によって圧力チャンバ3の方向に押され、軸方向に変位され、その際、戻しバネ18が予荷重を受ける。係止ノーズ8とストッパ9の間の軸方向間隔Sは、そのままである。
【0042】
-
図6-
ブレーキ過程の終了後、逆行中に、操作力Fbは、もはや操作ロッド6に印加されない。操作ロッドは、戻しバネ18の予荷重力によって引き戻される。この場合、係止ノーズ8は、ストッパ9に固定されるので、シリンダピストン4は、保持部材7によって共に引っ張られる。ストッパ9は、同時に、締付けノーズ31の摺動面
33を押して、摺動面上を摺動し、これにより、生じる第1の力成分が締付けノーズ
31に半径方向内側に向かって負荷を加え、推進力Fvが、第1の力成分に対して直交する第2の力成分として発生される。
【0043】
-
図7-
支持リング20が支持ストッパ24に当接し次第、操作ロッド6及び保持部材7の後方への移動が終了するので、シリンダピストン4は、もはや引っ張られない。しかしながら、圧力チャンバ3からシリンダピストン4に作用する前記の力により、シリンダピストン4は、後押しされ、その際、シリンダピストン4と端面29の間に接触があり、
図4による初期位置が回復されるまで、保持部材7に対して相対的に軸方向に変位される。
【0044】
-
図8-
図8には、著しく単純化して、支持ストッパ24に当接した時の、
図6による逆行の終了時の保持部材7内の力の推移が図示される。戻しバネ18から操作ロッド6に作用する復元力Frは、ボールヘッド15から保持部材7に導入され、支持リング20を介して支持ストッパ24に導入され、係止ノーズ8及び締付けノーズ31がストッパ9に当接する。
【0045】
-
図9-
図9で、いくつかの構成要素、特に操作ロッド6に戻しバネ18を支持する構造が明確化される。操作ロッド6に、半径方向段差部17が形成されている。半径方向段差部の代わりに、本発明内で、フランジ又は溝に挿入されたディスク又はスナップリングを使用することもできる。
【0046】
戻しバネ18は、好ましくは安価に金属板から打ち抜かれた皿状の支持要素19に支持され、この支持要素自身は、支持スリーブ21を介して半径方向段差部17に支持される。簡単な組立てのため、半径方向段差部17の直径と、支持要素19及び支持スリーブ21の貫通穴は、操作ロッド6の前方のボールヘッド15よりも大きく選択されている。
【0047】
構造的な要件に応じて、本発明内で、支持スリーブを省略すること、又は、支持スリーブ21を支持要素と1つの構成要素に一体化すること、ができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ブレーキ装置
2 ハウジング
3 圧力チャンバ
4 シリンダピストン
5 操作ロッドユニット
6 操作ロッド
7 保持部材
8 係止ノーズ
9 ストッパ
10 端面
11 アンダカット部
12 加圧部材
13 係止部材
14 バネアーム
15 ボールヘッド
16 ボールヘッド
17 半径方向段差部
18 戻しバネ
19 支持要素
20 支持リング
21 支持スリーブ
22 本体
23 後部部材
24 支持ストッパ
25 アダプタ
26 周縁領域
27 インターフェース
28 盲穴
29 端面
30 後縁
31 締付けノーズ
32 切込み面
33 摺動面
S 軸方向間隔
Fb 操作力
Fv 推進力
Fr 復元力