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特許7269177セキュリティ文書の認証方法並びにセキュリティ文書、装置及びセキュリ素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】セキュリティ文書の認証方法並びにセキュリティ文書、装置及びセキュリ素子
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20230426BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20230426BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20230426BHJP
   B42D 25/373 20140101ALI20230426BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20230426BHJP
   B42D 25/20 20140101ALI20230426BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20230426BHJP
   B42D 25/346 20140101ALI20230426BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20230426BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20230426BHJP
   G07D 7/202 20160101ALI20230426BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20230426BHJP
【FI】
G06K7/10 412
G06K19/06 009
B41M3/14
B42D25/373
B42D25/328
B42D25/20
B42D25/30
B42D25/346
B42D25/378
B42D25/305 100
G07D7/202
G07D7/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019553639
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2017082681
(87)【国際公開番号】W WO2018109035
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】102016124717.0
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017102556.1
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151626
【氏名又は名称】オーファウデー キネグラム アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】519215935
【氏名又は名称】クルツ デジタル ソリューションズ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリーザー ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】グラウ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタウプ ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ミヒャエル
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-182767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0115139(US,A1)
【文献】米国特許第06373965(US,B1)
【文献】特開2006-293729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
G06K 19/00-19/18
G07D 7/12
B41M 3/14
B42D 25/20-25/378
G07D 7/202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取装置を用いたセキュリティ文書の認証方法であって、
前記読取装置により、第1スペクトル帯域で前記セキュリティ文書の第1領域における第1透過・反射特性の少なくとも1つを検出し、前記検出された第1透過・反射特性の少なくとも1つから前記第1透過・反射特性の少なくとも1つを示す第1データセットを生成するものであって、
前記第1領域は、少なくともいくつかの領域において、前記セキュリティ文書上に配置された光学セキュリティ素子又は前記セキュリティ文書に埋め込まれた光学セキュリティ素子と重なり、
さらに、前記読取装置により、第2スペクトル帯域で前記セキュリティ文書の前記第1領域における第2透過・反射特性の少なくとも1つを検出し、前記検出された第2透過・反射特性の少なくとも1つから前記第2透過・反射特性の少なくとも1つを示す第2データセットを生成するものであって、
前記第1スペクトル帯域は、前記第2スペクトル帯域と異なり、
前記セキュリティ文書及び前記セキュリティ素子の少なくとも1つの真正性は、少なくとも前記第1データセット及び前記第2データセットに基づいて検査され、
前記セキュリティ文書の前記セキュリティ素子は、1つ以上のセキュリティ構造を有し、又は、
前記第1領域の前記セキュリティ文書は、1つ以上のセキュリティ構造を有し、
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、部分的に成形された金属層及び部分的に成形されたカラー層の少なくとも1つにより形成され、前記カラー層が、前記第1スペクトル帯域において略透明であり、
前記セキュリティ素子がカラー層を備えたセキュリティ構造を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
位置、色、インクの塗布範囲、反射、向き、サイズ、形状、個人化、色変化及び電磁的特性、から選択される前記カラー層の1つ以上のパラメータを決定すること、又は、
前記セキュリティ素子が金属層を備えたセキュリティ構造を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
位置、反射、方向、サイズ、形状、個人化、被覆範囲、から選択される前記金属層の1つ以上のパラメータを決定すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記読取装置により、第3スペクトル帯域又は第4スペクトル帯域で、前記セキュリティ文書の前記第1領域における第3及び第4透過・反射特性の少なくとも1つを検出し、そこから当該特性を示す第3データセット又は第4データセットを生成するものであって、
前記第3スペクトル帯域又は前記第4スペクトル帯域は、前記第1スペクトル帯域及び前記第2スペクトル帯域とは異なり、
前記セキュリティ文書及び前記セキュリティ素子の少なくとも1つの真正性は、検査されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記読取装置は、第1、第2、第3及び第4スペクトル帯域の少なくとも1つで、反射光により表側から、反射光及び透過光により裏側から、前記セキュリティ文書の前記第1領域における前記第1、第2、第3及び第4透過・反射特性の少なくとも1つを検出し、そこからこれらの特性を示す前記第1、第2、第3又は第4データセットを生成するものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のセキュリティ構造は、少なくともある領域において重なり合うこと、を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記セキュリティ文書の真正性検査のために、
少なくとも前記第1データセット及び前記第2データセットの比較により、セキュリティ素子及びセキュリティ文書の少なくとも1つに設けられた2つ以上のセキュリティ構造の1つ以上の相対値を判断し、
前記判断した、2つ以上のセキュリティ構造の1つ以上の相対値を、割り当てられた基準相対値と比較し、偏差が割り当てられた許容範囲外にある場合、上記真正性を否定する、あるいは、
前記第1データセットにより、前記セキュリティ素子の第1セキュリティ構造の配置及び形状の少なくとも1つを判断し、
前記第2データセットにより、前記セキュリティ素子及び前記セキュリティ文書の少なくとも1つの第2セキュリティ構造の配置及び形状の少なくとも1つを判断し、
前記判断した配置及び形状の少なくとも1つを互いに比較し、前記セキュリティ素子の2つ以上のセキュリティ構造あるいは2つ以上のセキュリティ構造の画像要素の相対位置、を判断すること、を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、1つ以上の画像要素と、当該画像要素を取り囲む背景領域とを有し、
反射光及び透過光の少なくとも1つの下、第1、第2、第3及び第4スペクトル帯域の少なくとも1つにおける前記画像要素と背景領域とのコントラストが、5%を超える、又は、反射率及び透過率の差が、5%を超える、
あるいは、
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、1つ以上の画像要素と、当該画像要素を取り囲む背景領域とを有し、
第1、第2、第3及び第4スペクトル帯域の少なくとも1つにおける反射光及び透過光の少なくとも1つの下、前記画像要素と前記背景領域とのコントラストが、95%未満であること、を特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、部分的に成形された金属反射層からなること、
を特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、レリーフ構造及び反射層により形成され、前記レリーフ構造は、入射光を所定の方法で偏向すること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1セキュリティ構造と前記第2セキュリティ構造との相対形状を判断するために、前記第1セキュリティ構造の1つ以上の画像要素及び前記第2セキュリティ構造の1つ以上の画像要素の形状を検査し、前記画像要素が互いに正確に配置されていること、を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
第1、第2、第3及び第4データセットの少なくとも1つは、複数の画像点データを介して前記第1領域を画像化するものであって、又は、
前記第1、第2、第3及び第4データセットの少なくとも1つは、それぞれカラーチャネル毎に1つの明度値を第1の領域の画像点に割り当て、又は、
前記第1、第2、第3及び第4データセットの少なくとも1つは、画像処理が施され、
又は、
前記第1、第2、第3及び第4データセットの少なくとも1つから、それぞれ閾値画像を算出し、
前記第1、第2、第3及び第4データセットの少なくとも1つから前記閾値画像を生成するために、
前記割り当てられたデータセットからエッジ画像を算出し、
前記割り当てられたデータセットから黒画像を算出し、
前記割り当てられたデータセットから白画像を算出し、
前記エッジ画像、前記黒画像、及び前記白画像を合成して閾値画像を算出すること、
を特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、1つ以上の画像要素からなる第1オブジェクトを備え、前記画像要素の領域に金属層の金属が設けられ、前記セキュリティ構造の前記金属層の前記金属は、前記画像要素を取り囲む背景領域には設けられず、
又は、
前記セキュリティ構造の少なくとも1つが、1つ以上の画像要素からなる第2オブジェクトを備え、前記セキュリティ構造のカラー層の染料及び顔料の少なくとも1つが前記画像要素の前記領域に設けられ、前記カラー層の前記染料及び顔料の少なくとも1つは、前記画像要素を取り囲む背景領域には設けられない、又は低濃度で設けられること、
を特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記1セキュリティ構造及び前記2セキュリティ構造は、少なくともいくつかの領域において重なり、前記セキュリティ素子の表側から見たとき、前記第1セキュリティ構造は前記第2セキュリティ構造の上に配置され、前記第1及び第2セキュリティ構造は、それぞれ1つ以上の画像要素及び背景領域を有し、前記第1セキュリティ構造の前記画像要素は、
前記第2スペクトル帯域において不透明又は大部分が不透明であり、又は、
前記1セキュリティ構造、前記2セキュリティ構造は、それぞれ、1つ以上の画像要素及び背景領域を有し、前記第2セキュリティ構造の画像要素は、前記第1スペクトル帯域において透明又は大部分が透明である一方、前記第2スペクトル帯域において前記第2セキュリティ構造の背景領域に対してコントラストを持つこと、
を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2セキュリティ構造の1つ以上の前記画像要素の前記位置及び形状は、前記第2データセットから判断され、
前記第1セキュリティ構造の1つ以上の画像要素の前記位置及び形状は、前記第1データセットから判断され、
前記第1セキュリティ構造及び前記第2セキュリティ構造の前記画像要素の端点といったキーポイントを決定すると共に、これに基づき、前記第1及び第2セキュリティ素子の画像要素の互いの位置、形状及び方向の少なくとも1つの見当精度を検査すること、を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1セキュリティ構造は、金属層と回折構造とを備え、前記第2セキュリティ構造はカラー層を備え、前記金属層又は前記カラー層の材料は、前記第1セキュリティ構造及び前記第2セキュリティ構造の1つ以上の画像要素に設けられ、当該画像要素を取り囲む背景領域には設けられず、前記金属層及び前記カラー層の前記画像要素は、互いに一致する形状を持ち、前記回折構造は、前記第2スペクトル帯域の放射線を前記読取装置のセンサに回折する一方、前記第1スペクトル帯域の放射線を前記読取装置の前記センサに回折しないように設計されること、又は、
前記第1セキュリティ構造は、金属層を備え、前記第2セキュリティ構造は、カラー層を備え、前記金属層又は前記カラー層の材料は、前記第1セキュリティ構造及び前記第2セキュリティ構造の1つ以上の画像要素に設けられ、当該画像要素を取り囲む背景領域には設けられず、前記カラー層の複数の画像要素が機械読取可能なコード状に成形され、前記金属層は、第1情報項目の形状に成形された第1マスク層と、前記カラー層により形成される第2マスク層と、を用いて非金属化され、よって前記金属層の画像要素は、もはや完全な前記第1情報項目を含まなくなること、
を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項15】
位置、色、インクの塗布範囲、反射、向き、サイズ、形状、個人化、色変化及び電磁的特性、から選択される前記カラー層の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットの1つ以上に基づいて決定し、又は、
位置、反射、方向、サイズ、形状、個人化、被覆範囲、から選択される前記金属層の1つ以上のパラメータを、特に前記第1、第2、第3及び第4データセットの1つ以上に基づいて決定し、又は、
前記セキュリティ素子がアンテナを備えたセキュリティ構造を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
位置、電磁的特性、デザイン、色、から選択される前記金属層の1つ以上のパラメータを決定し、又は、
前記セキュリティ素子の下の前記セキュリティ文書が、金属層及びカラー層の少なくとも1つを備える文書背景を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、
さらに、
位置、色、インクの塗布範囲、反射、向き、サイズ、形状、電磁的特性、個人化、及び被覆範囲、から選択される前記金属層及び前記カラー層の少なくとも1つの1つ以上のパラメータを決定し、又は、
前記セキュリティ素子がRFIDチップを備えたセキュリティ構造を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
前記RFIDチップに記憶された1つ以上の情報項目を読み取り、前記読み取った情報項目に基づき前記セキュリティ文書を検査する、又は、
前記セキュリティ素子が回折構造及び屈折構造の少なくとも1つを含むセキュリティ構造を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
位置、反射、散乱、光沢、前記回折構造及び屈折構造の少なくとも1つの設計要素の配置、から選択される前記回折構造及び屈折構造の少なくとも1つの1つ以上のパラメータを決定し、又は、
前記セキュリティ素子が自発光構造を含むセキュリティ構造を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
励起時の発光、励起時の色、当該自発光構造の要素の位置、から選択される前記自発光構造の1つ以上のパラメータを決定し、又は、
前記セキュリティ文書が複数の層、窓及び貫通孔領域の少なくとも1つ有する文書本体を有する場合、前記セキュリティ文書の前記真正性検査のため、さらに、
窓位置、窓の形状、及び相互の層の位置、から選択される前記文書本体の1つ以上のパラメータを決定すること、
を特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ文書の認証方法並びにセキュリティ文書、装置及びセキュリティ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動化された文書管理が普及しており、例えば、ePassportゲートや、自動国境管理(Automated Border Control (ABC))、自動パスポート管理(Automated Passport Control (APC))が知られている。ここでは、手動で文書を検査するのではなく、利用者がセルフサービス型の機器を利用する。即ち、利用者が自己の身分証明書や、旅券や航空券を当該機器に置くと、機器がその文書を読み取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動文書管理においては、照明機器及び表示機器を備えた標準的な検査用装置を用いるのが好ましい。航空券や身分証明書について、その真正性及び所有者が正当な所有者であるか否かを自動検査・認証する際には、当該文書中のチップに記憶された生体データや、機械で読取可能なデータが用いられる。そのような装置として、ドイツ特許公開公報10-2013-009474号公報が挙げられる。
【0004】
光学セキュリティ素子(特に、観察者の操作に対して認識可能な保護手段であるホログラムのような回折セキュリティ素子)は、通常機械検出では認識したり検出したりできない。さらに複雑なことに、回折セキュリティ素子があることで、照明の光がカメラ内に回折してしまって機械読取による認識率が低下したり、機械読取の長所が低下又は全体的に妨害されたりする。
【0005】
したがって、本発明の目的は、セキュリティ文書の機械認証を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1の方法、請求項62のセキュリティ文書、請求項63の装置、及び請求項67のセキュリティ素子により達成される。
【0007】
読取装置を用いたセキュリティ文書の認証方法は、以下の特徴を備える。前記読取装置により、第1スペクトル帯域で当該セキュリティ文書の第1領域における第1透過・反射特性が検出され、当該特性を示す第1データセットがそこから生成される。前記第1領域は、少なくともいくつかの領域において、文書上に配置された又は文書に埋め込まれた光学素子と重なる。また、前記読取装置により、第2スペクトル帯域で前記セキュリティ文書の第1領域の第2透過・反射特性が検出され、当該特性を示す第2データセットがそこから生成される。前記第1スペクトル帯域は前記第2スペクトル帯域とは異なる。セキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子の真正性は、少なくとも前記第1データセットと第2データセットとに基づいて検査される。
【0008】
セキュリティ文書の認証用装置、特に読取装置は、以下の特徴を備える。即ち当該装置は、第1スペクトル帯域におけるセキュリティ文書の第1領域の第1透過・反射特性を検出し、そこから当該特性を示す第1データセットを生成するように設計されたセンサ機器の一部を有する。前記第1領域は、少なくともいくつかの領域において、前記セキュリティ文書上に配置された又は当該セキュリティ文書内に埋め込まれた光学セキュリティ素子と重なる。さらに、センサ機器は、第2スペクトル帯域における前記セキュリティ文書の第1領域の第2透過・反射特性を検出し、そこから当該特性を示す第2データセットを生成するように設計される。前記第1スペクトル帯域は前記第2スペクトル帯域とは異なる領域である。また、当該装置は、少なくとも前記第1データセットと第2データセットとに基づき、前記セキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子の真正性を検査するように設計された解析機器の一部を有する。
【0009】
上記により、セキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子(特に、セキュリティ構造を有するセキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子のある領域の真正性を、自動文書管理により検査することができる。また、この結果、セキュリティ文書の偽造に対する保護も向上させることができる。なお、セキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子としては、あらゆる種類の身分証明書(特に、旅券、証券、紙幣、支払手段、証明書等)が挙げられる。
【0010】
本発明の有意な実施例は従属項に記載される。
【0011】
光学セキュリティ素子は、観察者に識別可能な光学情報項目(具体的には、光学的可変情報)を生成するセキュリティ素子である。このため、拡大鏡やUV(紫外線、紫外線光)ランプなどの補助器具を使用する必要もあり得る。光学セキュリティ素子は、好ましくは、特にセキュリティスレッド状の転写フィルムの転写プライ、ラミネートフィルム、又はフィルム要素からなる。なお、セキュリティ素子は、セキュリティ文書の表面に適用する、及び/又は部分的にセキュリティ文書に埋め込むのが好ましい。
【0012】
また、セキュリティ文書に付されるセキュリティ素子は1つである必要はなく、複数の光学セキュリティ素子であってもよい。セキュリティ素子が複数設けられる場合は、それぞれ異なる方法で形成される、及び/又は、異なるようにセキュリティ文書に導入される、及び/又は、異なるようにセキュリティ文書に適用されるのが好ましい。光学セキュリティ素子は、セキュリティ文書の上面側に全表面に亘って適用されたり、セキュリティ文書の層間に完全に埋め込まれたりしても良く、セキュリティ文書の上面側に部分的にのみ適用(具体的には、ストリップやスレッド状、又はパッチ状で適用)し、及び/又は、セキュリティ文書のある層に埋め込んでもよい。光学セキュリティ素子の領域内におけるセキュリティ文書の支持基盤は、貫通孔又は窓を有することが好ましい。この結果、当該セキュリティ素子を、セキュリティ文書の表面及び裏面の両方から反射光及び透過光によって光学的に観察できる。
【0013】
異なるスペクトル帯域において少なくとも部分的にセキュリティ素子を有するセキュリティ文書の、ある領域における透過・反射特性の検出は、その異なる外観により当該セキュリティ構造の真正性に関する特徴の機械検出を改善することができる。また、セキュリティ素子の光学的活性要素(即ち、光学的可変要素)が破壊される可能性を排除できる。そして、互いに異なるスペクトル帯域を、2つだけでなく、3つ、4つ又はそれ以上に増やし、読取装置を用いてセキュリティ文書の第1領域における上記透過・反射特性を検出することで、上記効果を更に高めることができる。
【0014】
また、読取装置は、セキュリティ素子又はセキュリティ文書の真正性に関する情報項目(具体的には、真正性に対する評価)を出力することができる。セキュリティ素子の真正性に対する評価は、これを定量化する確率及び/又は信頼度として、読取装置から出力することができる。
【0015】
したがって、セキュリティ文書の第1領域における第3及び/又は第4透過・反射特性は、読取装置によって第3スペクトル帯域又は第4スペクトル帯域で検出され、そこから当該特性を示す第3データセット又は第4データセットが生成される。第3又は第4スペクトル帯域は、第1及び第2スペクトル帯域とは異なる。これにより、セキュリティ文書の真正性を、少なくとも第1、第2、第3及び/又は第4データセットに基づいて検査することができる。
【0016】
3つ以上の異なるスペクトル帯域において透過・反射特性を検出することにより、確実にセキュリティ素子に内在する1つ以上の特別な特徴を確実に検出することができ、真正性の検査が改善する。即ち、特定のスペクトル帯域でのみ観察される外観を確実に検出し、これを真正性の検査に用いることができる。
【0017】
第1領域における透過・反射特性は、読取装置により、セキュリティ文書の表側からの反射光、セキュリティ文書の裏側からの反射光、及び/又は透過光で検出することが好ましい。なお、表側又は裏側からの反射光による検出においては、読取装置によりセキュリティ文書を表側又は裏側からそれぞれ照射するのが好ましく、反射像を、同様にセキュリティ素子の表側又は裏側に配置された1つ以上のセンサにより検出する。あるいは、一方の側面から第1の検出を実行した後に文書を裏返し、続いて他方の側面からの検出を実行してもよい。また、特定の特徴(例えば文書の外形や窓の形状)を利用し、検出された二つの側面又は表側と裏側は、電子的に結合される。透過光による第1領域の透過特性の検出にあっては、読取装置が備える光源と1つ以上のセンサは、セキュリティ文書の異なる面に配置されるのが好ましい。
【0018】
例えば、セキュリティ文書の第1領域における第1、第2、第3及び/又は第4透過・反射特性は、セキュリティ文書の表側からは反射光を利用して、セキュリティ文書の裏側からは反射光及び/又は透過光を利用して、読取装置により第1、第2、第3及び/又は第4スペクトル帯域で検出される。そして、読取装置により、これらの検出結果から当該特性を示す第1、第2、第3、又は第4特性が生成される。第1、第2、第3及び/又は第4データセットは、単一の照明/観察状況だけでなく、2つ以上の照明及び/又は観察状況における第1領域の透過・反射特性を含むことが好ましい。例えば、第1、第2、第3及び/又は第4データセットは、各スペクトル帯域において表面及び裏面からの反射光における第1領域の反射特性を特定し、各スペクトル帯域において表側又は裏側からの反射光における第1領域の反射特性さらには透過光における透過特性を特性し、かつ、各スペクトル帯域において表側及び裏側からの反射光における第1領域の反射特性さらには透過光における透過特性を特定する。
第1領域の透過・反射特性の検出と、これらのデータの使用及び/又は比較により、誤差範囲、具体的には真正性に対する誤差範囲(即ち、セキュリティ文書の摩耗及び/又はコンタミに対する誤差許容量)をさらに改善できる。加えて、偽造や改変の識別もさらに改善することができる。
【0019】
また、人の目では視認できない波長内のスペクトル帯域を利用することで、セキュリティ素子の光学的活性要素(具体的には、セキュリティ素子の光学的可変要素)に起因する機械検出の中断を、対応する比較を行うことで認識することができ、これにより当該機械検出を排除できる。したがって、誤差範囲及び検査結果がさらに向上する。
【0020】
表側に関連するデータセットは、裏側に関連するデータセットと比較するのが好ましい。なお、表側及び裏側の透過・反射特性を検出するために、読取装置内で文書を裏返す必要がある。
【0021】
第1、第2、第3及び/又は第4スペクトル帯域は、以下のグループから選択されるのが好ましい:電磁波のIR帯域(IR=赤外線)、具体的には、波長850nmから950nm。電磁波のVIS帯域(VIS=人の裸眼で確認できる光)、具体的には、波長400nmから700nm。電磁波のUV帯域、具体的には、波長1nmから400nm、好ましくは240nmから380nm、より好ましくは、300nmから380nm。
【0022】
セキュリティ文書のセキュリティ素子は、1つ以上のセキュリティ構造を有していることが好ましい。なお、第1領域は、セキュリティ素子の1つ以上のセキュリティ構造が少なくとも部分的に重なるように定義されることが好ましく、セキュリティ文書の少なくとも2つのセキュリティ構造が重なることが好ましい。また、セキュリティ文書がさらに別の1つ以上のセキュリティ構造を有していても良い。この場合、追加のセキュリティ構造は、第1領域と重なる又は部分的に重なるように配置される。セキュリティ文書におけるこのようなセキュリティ構造は、例えば着色繊維、下地プリント、又は金属製糸からなる。下地プリントの場合、さらなるセキュリティ構造を備えることができる。例えば、少なくとも部分的な領域において、紫外線下で蛍光を発するように設計したり、IRアップコンバータを備えるようにしたり、あるいは、IR帯域で一部透明又は不透明となるように設計したりしても良い。物理的なプロセスとして、IRアップコンバータは、光子(具体的には、可視光域の電磁波又はVIS光子)の放出において蓄積された吸収エネルギを再射出するために、少なくとも2つの光子(具体的には、IR光子又は赤外波長域の電磁波)の逐次吸収を利用する。放出された光子又は電磁波の波長は、少なくとも2つの吸収光子又は電磁波の対応する波長よりも短い。下地プリントは、機械読取可能なコード、例えばバーコードや機械読取可能な書き込みの形に成形することができる。
【0023】
複数のセキュリティ構造が第1領域内に存在する場合、これらは少なくともいくつかの領域において互いに重なりあうことが好ましい。しかし、これらのセキュリティ構造を第1領域で互いに離間して配置する、又は互いに隣接して配置させる(具体的には、反射光又は透過光で観察した場合に互いに直接接触した状態となるように配置させる)こともできる。
【0024】
第1と第2データセット、及び選択的に第3及び第4データセットを比較することで、セキュリティ素子の2つ以上のセキュリティ構造に関する1つ以上の相対値が定まる。
【0025】
したがって、例えば、相対位置(具体的には、セキュリティ素子及び/又はセキュリティ文書の2つ以上のセキュリティ構造の互いの間隔)は、これらデータセットから相対値として求められる。
【0026】
また、セキュリティ素子及び/又はセキュリティ文書の2つ以上のセキュリティ構造の相対的なサイズも相対値として求められる。
【0027】
また、セキュリティ素子及び/又はセキュリティ文書の2つ以上のセキュリティ構造の相対的形状も相対値として求められる。したがって、当該2つ以上のセキュリティ構造の向き及び画像要素の形状の見当精度は、データセットの比較により決まる。
【0028】
なお、見当又は見当精度とは、2つ以上の要素及び/又は層の互いの相対的な位置精度を意味する。見当精度は、予め定められた許容誤差の範囲内で変化するものであって、可能な限り小さくすべきである。同時に、複数の要素及び/又は層の相対的な見当精度は、プロセスの信頼性を上げるには重要な特徴である。正確な位置決めは、特に感覚的、好ましくは光学的に検出可能な見当マークを用いて行うことができる。これらの見当マークは、特別な別々の要素及び/又は領域及び/又は層を表すか、あるいは配置される要素及び/又は領域及び/又は層の一部であってもよい。
【0029】
また、セキュリティ素子及び/又はセキュリティ文書の、2つ以上のセキュリティ構造の相対的な重なり及び/又は相対的な向き及び/又は相対的なサイズは、データセットの比較により相対値として求められる。
【0030】
上記対比により求まる2つ以上のセキュリティ構造の相対値は、さらに、割り当てられた基準値と対比するのが好ましい。そして、偏差が割り当てられた許容範囲外にある場合、上記真正性は否定される。
【0031】
この処理を介して多くの利点を得ることができる。即ち、絶対値ではなく相対値を用いることにより、現実に生じる「理想的な」測定条件からの大きな乖離の影響をほとんど受けずに検査をすることができる。したがって、例えば、セキュリティ文書及び/又は読取装置のコンタミや摩耗や、読取装置の校正不良に起因する測定偏差を排除することができる。また、偽造の識別も確実に改善される。したがって、ここで用いられる生産方法の見当精度から、偽造者が、偽造品において異なるセキュリティ構造の見当精度が相応に高い配置や形状を達成することは困難である。また、対応する相対値を求めることで、絶対値を用いた比較に比して、特に許容範囲を明確に狭めることができると共に、僅かな偏差も確実に検出することができる。したがって、偽造の検出を明確に向上させることができる。
また、セキュリティ文書の真正性を検査するため、以下の処理が実行される。
【0032】
セキュリティ素子の第1セキュリティ構造の配置及び/又は形状は、第1データセットを用いて判断される。また、セキュリティ素子の第2セキュリティ構造の配置及び/又は形状は、第2データセットを用いて判断される。そして、前記判断された配置及び/又は形状は、セキュリティ素子の2つのセキュリティ構造における、相対的な配置(具体的には間隔)、相対的なサイズ、相対的な形状(具体的には、画像要素の向きや形状に対する見当精度)、カバリングや向き、を判断するために、互いに対比するのが好ましい。さらに、セキュリティ素子の第3及び/又は第4セキュリティ構造の配置や形状は、それぞれ第3又は第4データセットを用いることで判断できる。そして、これらをさらに先のステップで比較することもできる。
【0033】
それぞれ、セキュリティ構造は、1つ以上の画像要素又は画像領域(より理想的には、当該画像要素を囲む背景領域も)を有することが好ましい。セキュリティ構造は、平面要素及び/又は線要素として成形された1つ以上の異なる画像要素を備えることが好ましい。異なるセキュリティ素子の画像要素は、異なるスペクトル帯域の照明下で検出可能であったり検出不能であったりするのが好ましく、及び/又は、特に背景領域に対して所定のコントラストを生成する。
【0034】
セキュリティ構造は、読取装置によって検出される少なくとも1つのスペクトル帯域(具体的には、第1、第2、第3及び/又は第4スペクトル帯域)において、反射及び/又は透過で画像要素及び背景領域間のコントラストが生成されるように設計されることが好ましい。
【0035】
ここで、反射及び/又は透過のコントラストとは、具体的には、明るさの違い及び/又は色の違いを意味する。明るさの違いの場合、コントラストは、好ましくは以下の式によって定義される。
K=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin
なお、Lmax及びLminは、セキュリティ構造の明るさと背景の明るさのいずれがより明るいかに応じ、背景の明るさ又はセキュリティ構造の明るさが入力される。なお、コントラストの値は、0から1の間であることが好ましい。
【0036】
あるいは、明るさの違いに応じてコントラストを以下の式により定義しても良い。
K=(LBackground-LFeature)/(LBackground+LFeature
この場合の数値は、-1から+1の間であることが好ましい。当該定義を用いることの利点は、特に、“コントラスト反転”を符号を変えることで表すことができることにある。
【0037】
コントラストの差及び/又は色の差及び/又はインクを用いた場合の外観の差の評価においては、カラーデザインの作成について様々な可能性がある点に留意すべきである。印刷される材料の吸収力、及び/又はインクの屈折率に応じて多かれ少なかれ散乱が生じるインク中の充填材、及び/又はインクの裏若しくは前にある反射層の種類、は色の印象に影響を与える。また、照明の種類及び/又は方向もカラープリントの反射及び/又は透過の挙動に顕著な影響を与える。さらに、異なる照明角度で同じ印象を与えるインク、特に、照明や照明角度に応じて色の印象を変化させるインク(例えば、干渉顔料及び/又は液晶)も存在する。
【0038】
染料又は微細顔料により、カラー層はVIS帯域において略透明となり得る。即ち、カラー層は、特定帯域のスペクトルを様々な程度で吸収するが、散乱はより少ない方が好ましい。反射光の照明及び観察の場合、カラー層自身は反射しない又は非常に僅かしか反射しない。色の印象は、当該カラー層でフィルタ処理された文書基板によって散乱された放射によって生じる。
【0039】
ただし、カラー層に強く散乱する顔料を含有させても良い。このような顔料を不透明インクと呼ぶ。その場合、散乱された放射は、実質的に文書基材とは関係がない。
【0040】
混合形態を表すカラー層も可能であり、その場合は通常半透明と呼ぶ。
【0041】
インクは、一般的に色相、明るさ、及び彩度により表現される。彩度は、3次元色空間(例えば、RGB又はLab)の座標で表現される。Lab色空間を用いる場合、緑と赤はa軸上で互いに反対側にあり、黄及び青はb軸上、そしてLが0から100で表される明るさを示す。なお、これらの座標間距離は、カラーセンサが色距離又は色の相違(具体的には色のコントラスト)を認識可能なように、充分な広さを有していなければならない。なお、当該色距離はΔEで表され、ISO12647及びISO13655にしたがってユーグリッド距離として算出される:
【数1】
ここで、L,a,bはある色の色値を、L,a,bは別の色の色値を、示し、これらの値によって色距離ΔEを表す。色距離ΔEは、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上である。
【0042】
色空間は、例えば、Luv、HSVで表される。特徴認識や画像分割の分析にあっては、RGB色空間から派生したHSV色空間を用いるのが好ましい。なお、Hは色相(Hue)、Sは彩度(Saturation)、Vは明度(Value(強度:intensity))を意味し、これらが円柱座標系で配置される。即ち、色相は円形で表され、色相の位置は「度」で示される。例えば、緑色からの色ずれを認識するためには、色相Hは360°の色相環内の規定された設定値から少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°、より好ましくは少なくとも30°、ずれていなければならない。また、この場合の許容誤差範囲は、20°、好ましくは40°、より好ましくは60°である。彩度Sは、0から255の好ましい範囲において、少なくとも100、好ましくは少なくとも75、より好ましくは少なくとも50の値を有する。彩度Sは、好ましくは少なくとも39%、特には少なくとも29%、より好ましくは19.5%の値の範囲となる。明度(強度)Vは、0から25の好ましい範囲において、少なくとも70、好ましくは70から120、より好ましくは80から130、の間の値を有する。明度(強度)Vは、好ましくは少なくとも27%、特に27%から47%の間、より好ましくは31%から51%の間の値の範囲となる。
【0043】
また、スペクトル帯域の一番目では、セキュリティ構造の画像要素と背景領域との間のコントラスト及び/又は色距離(具体的には、色のコントラスト)は、該スペクトル帯域の二番目におけるコントラストや色距離と大きく異なる。具体的には、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、異なる。これにより、読取装置によるセキュリティ構造の別個の認識可能性が改善され、それによって偽造検出の改善が保証される。
【0044】
第1、第2、第3及び/又は第4のスペクトル帯域において、セキュリティ構造の画像要素の背景領域とは、好ましくはその反射率及び/又は透過率が5%を超える、好ましくは10%を超える、具体的には、15%から100%、好ましくは25%から100%の違いを有する。
【0045】
明るさの値の最大補足範囲は、256段階である。なお、解像度が高い場合は、利用可能な明るさの段階の数を変更しても良い。
【0046】
反射光及び/又は透過光における第1、第2、第3及び/又は第4のスペクトル帯域のうちの少なくとも1つにおける画像要素と背景領域との間のコントラスト、特に明るさ及び/又は色のコントラストは、5%を超える、好ましくは8%を超える、より好ましくは10%を超えることが有利である。但し、反射光及び/又は透過光における第1、第2、第3及び/又は第4のスペクトル帯域のうちの少なくとも1つにおける画像要素と背景領域との間のコントラスト(具体的には、明るさ及び/又は色のコントラスト)は、95%以下、好ましくは92%以下、さらに好ましくは90%以下となり得る。
【0047】
光学セキュリティ素子又は少なくとも画像要素のセキュリティ構造は、少なくとも一部が部分成形金属層(具体的には、金属反射層)で形成されるのが好ましい。部分成形金属層は、好ましくは、Al、Cu、Cr、Ag、Au又はそれらの合金からなる。かかる金属層は、印刷(例えば1つ以上の金属顔料を有する印刷物質)、及び/又はスパッタ蒸着、及び/又は熱蒸着によって塗布することができる。部分金属部は、部分印刷及び/又はエッチング及び/又はリフトオフ処理(具体的には、レジストとして可溶性ワニスを用いる処理)及び/又はフォトリソグラフィ法によって作成されるのが好ましい。但し、部分金属層は、特にレーザによる局所的除去処理によっても製造することができる。部分成形金属層は、例えば銅製のアンテナのような、RFID(Radio-Frequency Identification)部品の部分的要素とすることもできる。
【0048】
部分成形金属化部分は、IR照明の下で特に明確に認識可能であり、他の領域と相関させることができる。加えて、特定の構造(具体的には、HRI(High Refractive Index)層を有するマット構造)を背景に配置することもでき、これらの構造がIR照明やVIS照明下で認識可能となる。したがって、当該構造を、真正性の検査を実行する際の基準として利用することができる。なお、特定の構造を、金属化領域に配置してもよい。かかる場合も、当該構造は好ましくはIR照明又はVIS照明下で認識可能であり、したがって基準として利用することができる。
【0049】
同様に、金属反射層やHRI層を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
光学セキュリティ素子又は画像要素の少なくとも1つのセキュリティ構造は、カラー層によって有利に形成される。これにより、高い認識信頼性を達成することができる。
【0051】
第1スペクトル帯域のカラー層は、第1、第2、第3及び/又は第4スペクトル帯域において実質的に透明なものであることが好ましい。この場合、当該カラー層は、対応するスペクトル帯域において、少なくとも50%、好ましくは80%を超える、理想的には90%を超える透過率を有することが好ましい。
【0052】
第2スペクトル帯域のカラー層は、最大で50%、特には最大で25%の透過性を有しても良い。なお、これらの値は、第2スペクトル帯域の一部の帯域にのみ該当するものであっても良い。したがって、特に、VIS帯域は広帯域であり、カラーカメラによってRGB画像として検出されることが好ましい。
【0053】
また、カラー層は、発光するように形成される、又は発光するように見せることもできる。理想的には、カラー層は複数のインクで構成される。
【0054】
カラー層は、第2及び/又は第3スペクトル帯域の放射線(具体的には、UV照明及び/又はVIS照明)により励起されても良い。カラー層は、異なる照明(例えばVIS及び/又はUV)の下で色印象が認識可能となるように形成されることが好ましい。
【0055】
カラー層は、部分成形カラー層であっても良い。カラー層は、混合された染料及び/又は顔料を含むベースワニスからなることも考えられる。また、カラー層は、光学可変顔料及び/又は磁気検出顔料を有しても良い。カラー層は、溶媒ベース及び/又は熱で乾燥させられると共に、紫外線を用いた硬化及び/又は化学的な硬化がされ得る。
【0056】
カラー層は、エッチングレジストとして挿入されることが好ましい。この場合、当該カラー層は、特にPVC及び/又はPVAC(ポリ酢酸ビニル)コポリマーをベースとする。また、好ましくは染料及び/又は顔料、特に多色あるいは無彩色顔料及び/又は効果顔料を有する。
【0057】
カラー層は、通常の印刷方法により蒸着することができる。この際、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、パッド印刷、凹版印刷及び/又は凸版印刷を用いてインクを塗布することができる。また、デジタル印刷法(具体的には、インクジェット印刷やトナー及び/又は液体トナー)により塗布することもできる。
【0058】
少なくとも1つのセキュリティ構造として、特にUV帯域内、又はUV照明によって認識可能又は視認可能になる構造又は特性も有することが好ましい。このような特徴は、検査レベルを更に高めることができ、自動点検能力をより一層実現可能とする。
【0059】
セキュリティ素子のセキュリティ構造は、レリーフ構造及び反射層によって形成することができる。レリーフ構造は、特に少なくとも1つのスペクトル帯域において、所定の手法で入力放射線を偏向させる。反射層は、少なくとも1つのスペクトル帯域において透明であるか略透明に見える(即ち、透過率が50%以上、好ましくは70%以上、及び/又は、反射率が50%未満、好ましくは30%未満である)と有利である。反射層は、HRI層(具体的には、ZnS(亜硫酸亜鉛)及び/又はTiO(二酸化チタン)からなる層)で形成されることが好ましい。
【0060】
レリーフ構造は、好ましくは、光学的可変特性を有するレリーフ構造によって形成され、かつ/又は以下のレリーフ構造のうちの1つ以上を含む:回折格子、非対称回折構造、等方性マット構造、異方性マット構造、ブレーズド格子、ゼロ次回折構造、光屈折性及び/又は集束構造(具体的には、マイクロプリズム、マイクロレンズ)。これにより、セキュリティ構造、ひいてはセキュリティ文書の特に信頼性の高い認証を保証することができる。
【0061】
レリーフ構造は、有利には、入力電磁放射線を第1、第2、第3及び/又は第4のスペクトル帯域のうちの1つにおいて所定の方法で回折させ、放射線の一部が少なくとも1つの検出器に入射するようにする回折構造である。但し、電磁放射線は、第1、第2、第3及び/又は第4のスペクトル帯域のうちの別の帯域の少なくとも1つの検出器には入射しないか、又は実質的に入射しない。
【0062】
回折構造は、少なくとも1つのスペクトル帯域に対するゼロ次回折構造によって有利に形成される。回折構造の周期は、可視光領域の波長より短いことが好ましい。具体的には、500nm以下である。かかる回折構造は理想的には、可視光帯域において特有の色彩効果を有する。
【0063】
当該構造は、VIS照明下及びIR照明下の両方で少なくとも1つの検出器内に散乱又は回折することが好ましい。
【0064】
第1及び第2セキュリティ構造の相対形状を決定するために、第1及び第2セキュリティ構造の画像要素の形状に対し、画像要素が互いに見当精度良く(正確に)配置されているかどうかを検査することが好ましい。具体的には、線分として形成された画像要素が位置的に正確な状態で結合するか、及び/又は、それらの傾斜が一致するかどうか、を検査することが好ましい。
【0065】
本発明によれば、画像要素は、とりわけ、グラフィカルにデザインされたアウトライン、造形表現、画像、視覚的に認識可能なデザイン要素、シンボル、ロゴ、肖像画、パターン、英数字、テキスト、着色デザインなどであり得る。
【0066】
データセットは、好ましくは、第1の領域の生画像及び/又はセキュリティ素子及び/又はセキュリティ構造やこれらの画像要素である。読み取り装置は、これらのデータセットをそれぞれのスペクトル帯域で記録する。これらは、グレイスケール画像又はカラー画像であり得る。グレイスケール画像は、特に、1つ以上、好ましくは全てのカラーチャネル及び/又は画像の色相を含むことができる。
【0067】
第1、第2、第3及び/又は第4のデータセットは、画像処理を受けることが好ましい。
【0068】
以下、データセットの解析(具体的には、第1及び第2のデータセットに基づいてセキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子の真正性を検査すること)に使用されることが好ましい、異なる画像処理ステップについて説明する。これらのステップは、その用途に応じて組合せても良く、場合によっては別のステップが必要になることがある。
【0069】
画像分析の基本は、具体的には、画像を特徴認識及び画像分割するために調整及び前処理する画像準備ステップである。
【0070】
ここで、特徴とは、物体又は画像要素における際立った又は興味を惹く点、具体的には、角部やエッジを意味する。なお、ポイントについては、周辺を参照しながら説明することで、明確に認識し、再発見することができ得る。
【0071】
好ましいステップは、生画像を好ましくはグレイスケール画像に変換することである。グレイスケール画像の場合、各画素又は画像点は、黒色に割り当てられる0と、白色に割り当てられる255との間の明度値からなるのが好ましい。画像がわずかな範囲の明度値しか持たない場合、画像の明度は、例えば各ピクセルの明度値に係数を掛けることによって、又はヒストグラム比較を実行することによって変換することができる。カラー画像の処理において、各画像点のカラーチャネルは、最初にグレイスケール値又は明度値に変換されるのが好ましい。
【0072】
第1位置決定のために、利用可能なグレイスケール画像は、テンプレートマッチング(テンプレートマッチングステップ)によって分析されることが好ましい。
【0073】
テンプレートマッチングアプリケーションとは、具体的には、画像又はモチーフ(特に予め定義された画像又はモチーフに対応するセキュリティ構造の画像要素、即ちテンプレート)の部分を特定するアルゴリズムを意味する。テンプレートは、データベースに格納されるのが好ましい。画像要素又は画像オブジェクトは、基準画像又は基準モチーフとのマッチングのために画像点ごとに検査されることが好ましい。点の数(即ち、画像点及び/又は基準点の数)が非常に大きい場合、基準点の数を減らしても良い。具体的には、モチーフ又は画像の解像度を減らすことによって基準点の数を減らしても良い。当該アルゴリズムの目的は、それぞれのデータセット内で基準画像又は基準モチーフの最も高い一致点を見つけることにある。
【0074】
グレイスケール画像は、画像の前処理ステップにおいて閾値化処理をして2値化すると有利である。
【0075】
1つ以上の閾値は、アルゴリズム(特にk平均アルゴリズム)によって有利に決定される。k平均アルゴリズムの目的は、1つ以上の閾値を下回る明度値を有する画素を黒に設定し、他のすべての画素を白に設定するクラスタ分析である。黒画像判定は、具体的には以下のステップにより実行される:割り当てられたデータセットの画像点データの明度値を第1閾値と比較し、第1閾値を下回る全ての画像点に2進数値の0を割り当てる(即ち、当該画像点を黒に設定する)。閾値の定義は、特に認識された特徴又は文書の種類に関する情報に基づいて行われ、セキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子の第1領域に格納される。
【0076】
第1閾値は有利には、スペクトル帯域として割り当てられたUV帯域内の値の範囲の20%未満である。具体的には、明度値が0~255の範囲である場合、第1閾値は40未満となる。
【0077】
スペクトル帯域として割り当てられたIR帯域では、第1閾値は、当該範囲の25%未満であるのが好ましい。即ち、明度値が0~255の範囲である場合、第1閾値は60未満となる。
【0078】
白画像は、割り当てられたデータセットから定数二値化画像を算出することによって決定されることが好ましい。白画像判定は、具体的には以下のステップにより実行される:割り当てられたデータセットの画像点データの明度値を第2閾値と比較し、第2閾値を上回る全ての画像点に2進数値の1を割り当てる(即ち、白に設定される)。
【0079】
スペクトル帯域として割り当てられたUV帯域では、第2の閾値は、値の範囲の5%を超えるのが有利である。具体的には、明度値が0~255の範囲である場合、第2閾値は20を超える。
【0080】
スペクトル帯域として割り当てられたIR帯域では、第2の閾値は、当該範囲の30%を超える方が好ましい。具体的には、明度値が0~255の範囲である場合、第2閾値は80を超える。
【0081】
第1及び第2閾値は、互いに異なる値であることが好ましい。
【0082】
特に、IR画像の場合、明暗の差は、IR帯域において80を超えることが好ましい。また、特に、UV画像の場合、明暗の差は、UV帯域において20を超えることが好ましい。
【0083】
エッジ画像を算出するには、閾値アルゴリズム(具体的には、大きなブロックサイズを有する適応閾値アルゴリズム)を、割り当てられたデータセットに対して適用することができる。閾値アルゴリズムの適応性は、特に、画像の1つ以上の領域及び/又は画像の1つ以上の画素に関係する。これにより、背景の明るさの局所的な変化が演算に取り入れられる。それによって、存在するエッジを確実に正しく認識できる。
【0084】
閾値画像を生成するために、以下の演算が実行される:
・割り当てられたデータセットからエッジ画像を算出、
・割り当てられたデータセットから黒画像を算出、
・割り当てられたデータセットから白画像を算出。
【0085】
上記ステップは、示された順序で、又はそれから派生した順序で実行することができる。また、閾値画像の算出はエッジ画像、黒画像、及び白画像を合成して実行される。
【0086】
エッジ画像は、好ましくは、最初に画像点又は画素のレベルで黒画像と掛け合わされる(乗算される)。これにより、黒画像における全ての黒い領域はエッジ画像においても黒となり、黒エッジ画像が得られる。次のステップでは、白画像が当該黒エッジ画像に追加(加算)される。これにより、白画像において白である全ての画像点又は画素は、黒エッジ画像においても白となる。その結果、最終的な閾値画像が得られる。
【0087】
第1及び/又は第2の閾値は、認識された文書の種類、認識された照明、及び/又はスペクトル帯域、に応じて設定することができる。これにより、閾値を状況に応じて正確に適合させることができ、最良の検査が実行可能となる。同様に、逆手順も考えられる。カラーチャネルは、異なる色空間(例えば、RGB色空間又はHSV色空間)から生じることがある。
【0088】
閾値画像は、更なる画像処理ステップにおいて更に前処理及び/又は分割をし、異なるフィルタを用いて画像詳細の認識を図っても良い。
【0089】
フィルタを用いる場合、画像点は隣接画素に応じて操作される。フィルタは、好ましくはマスクのように作用し、特に、隣接画像点に応じた画像点の算出が示される。
【0090】
なお、ローパスフィルタを用いるのが有利である。ローパスフィルタは、画像ノイズやハードエッジなどの高周波又は高コントラスト値の変化を確実に抑制できる。それぞれのデータセットへのセキュリティ構造の結像は、遜色又はぼやけてしまい、鮮明さも低い。例えば、それぞれの場合において、局所的に大きなコントラスト差は局所的に小さなコントラスト差に返還される(白画素と黒画素が隣接していると、それぞれ2つの異なる灰色とされるか、同一のグレイ画素とされる)。
【0091】
また、バイラテラルフィルタ、即ち選択的ソフトフォーカスレンズ又はローパスフィルタを用いても良い。具体的には、平均的なコントラストを有するセキュリティ素子の平面領域がソフトフォーカスで示される一方、強いコントラストの領域又はモチーフエッジが得られる。選択的ソフトフォーカス画像においては、開始画像点近傍からの画像点の明度値は、その距離だけでなくコントラストにも依拠して計算に組み込まれるのが好ましい。メディアンフィルタは、ノイズ抑制のためのさらなる可能性を表す。また、このフィルタは、高周波ノイズを低減しつつ、隣接領域間のコントラスト差を取得する。
【0092】
また、ここで記載されたフィルタ以外にも、例えば、ソーベル演算子(Sobel operator)、ラプラスフィルタ、あるいは過去に画像変換された周波数領域内でのフィルタリングといった様々なフィルタがある。なお、周波数領域内でのフィルタリング(通常、変換はファストフーリエ変換により実行される)は、画像処理の効率上昇などの効果をもたらす。
【0093】
フィルタ及びフィルタ操作は、好ましくは、エッジ分析及びエッジ検出及び/又は画像干渉の除去及び/又は平滑化及び/又は信号ノイズの低減にも使用される。
【0094】
画像の詳細を認識し発見するには、前処理された画像を意味のある画像領域に分割(セグメント化)しなければならない。そのための手段としては様々なものがある。セグメント化の基本は、好ましくは、エッジ及びオブジェクト遷移を認識するアルゴリズムを用いたエッジ検出であり得る。コントラストの高いエッジは、異なるアルゴリズムを使用して画像内に配置できる。
【0095】
これらには、とりわけ、ソーベル演算子が含まれる。当該アルゴリズムは、元の画像から勾配画像を生成する畳み込み行列(フィルタカーネル;filter kernel)による畳み込みを利用する。これにより、画像内の高い周波数がグレイスケール値で表される。
【0096】
最大強度の領域は、元の画像の明度が最も強く変化する場所であり、最大エッジを表す。エッジの進行方向も本方法により判定できる。
【0097】
ソーベル演算子とは対照的に、プリューウィット演算子(Prewitt operator)は、観測画像の行又は列に対して重み付けをすることなく、同様に機能する。
【0098】
また、エッジ方向が関係ない場合には、ラプラス演算子に近似するラプラスフィルタを用いても良い。これは、ある信号の2つの純粋な又は部分的な2次導関数の合計を形成する。
【0099】
正確なピクセルエッジのみが求められ、エッジの強度が求められない場合は、輪郭をマークするキャニアルゴリズム(Canny algorithm)が便利である。
【0100】
また、特徴検出器又は特徴記述子によるさらなる分割(セグメント化)を施すのが好ましい。なお、Accelerated-KAZE(A-KAZE)アルゴリズムを適用する。A-KAZEは、特徴検出器及び特徴記述子を組み合わせたものである。
【0101】
好ましくは、第1のステップにおいて、データベース内に格納されている基準画像の画像要素又はオブジェクト及び認証対象の画像要素の際立った(特徴的な)点が、種々の異なる画像フィルタに基づき、A-KAZE検出器を用いて求められる。かかる特徴的な点は、その周辺を参照しつつA-KAZE記述子によって記述される。A-KAZE記述子により記述される特徴は、符号化されているが明確なデータ量(既定サイズ若しくは長さ及び/又は座標)から構成されるのが好ましい。
【0102】
次いで、特徴照合機、好ましくは総当たり照合機(Brute-Force matcher)により、2つのオブジェクト又は画像要素において比較されるべき特徴の記述を比較し、その記述がほぼ又は完全に一致する特徴のペアを形成する。この比較から、2つの特徴の一致度を表す結果値を算出することができる。結果値の大きさに応じて、2つの特徴が十分に類似しているかどうかの判断ができる。
【0103】
比較方法に応じ、上流での事前選択、あるいは(非常に時間はかかるが)二点間分析を行っても良い。2つの画像又は画像要素間の変換(即ち、スケーリング、シフト、伸張など)は、互換性のある特徴から計算することが好ましい。但し、原理的には、BRISK(Binary Robust Invariant Scalable Keypoints)又はSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)アルゴリズムが使用されても良い。
【0104】
オブジェクトの形状及び位置に近似する又は近づくために、好ましくは包囲体、具体的には包絡線、がさらなる画像処理ステップにおいて使用される。
【0105】
最も簡易な場合では、オブジェクトを囲む境界枠(バウンディングボックス)、即ち、軸平行矩形(特に、正方形)を用い得る。また、境界枠とは対照的に、軸平行である必要はないが回転する境界矩形を用いても良い。さらに、境界楕円を用いても良い。境界楕円は、矩形ではない丸いオブジェクト、特に曲率を有するオブジェクトを近似することができ、中心点、半径及び回転角度によって定義される。より複雑なオブジェクトは、凸包絡線又は包絡多角形によって近似することができる。ただし、これらのオブジェクトの処理は、単純な近時処理の場合よりもかなり多くの演算時間を必要とする。したがって、演算コストを考慮し、それぞれの場合において可能な限り単純なオブジェクトが用いられる。
【0106】
生成されたデータセット(具体的には、第1、第2、第3,及び/又は第4データセット)に基づき、セキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子の真正性検査のために、以下のステップのうち1つ以上を実行することが好ましい。
【0107】
1. 1つ以上の生画像を1つ以上のグレイスケール画像及び/又はカラー画像に変換すると共に、1つ以上の閾値画像への閾値化及び/又は色調処理
2. 認証、好ましくはテンプレートマッチングによる認証のため、各画像(具体的には、生の、グレイスケール、カラー及び/又は閾値画像)を1つ以上のテンプレートと比較
3. 各ケースにおいて、1つ以上の画像(具体的には、生の、グレイスケール・カラー及び/又は閾値画像)のエッジを検出
4. 各ケースにおいて、特徴検出器及び/又は特徴記述子を利用し、包囲体及び/又は1つ以上のオブジェクトの分割化及び/又は認識を通し、1つ以上の画像(具体的には、生の、グレイスケール、カラー及び/又は閾値画像)内の1つ以上のオブジェクトの位置を検出
5. 1つ以上の画像(具体的には、生の、グレイスケール、カラー及び/又は閾値画像)の各ケースにおいて、1つ以上のグレイスケール値及び/又は色値を、データベースに格納されたグレイスケール値及び/又は色値と比較
6. ステップ1~5の1つ以上、特に全てを実行した2つ以上の画像(具体的には、2つ以上の、生の、グレイスケール、カラー及び/又は閾値画像)を比較。各ケースにおいて、1つ以上の境界枠又は同様の方法により、各画像(具体的には、生の、グレイスケール、カラー及び/又は閾値画像)内の1つ以上のオブジェクトのずれを比較
7. 各ケースにおいて、1つ以上の重ね合わせ画像(具体的には、重ね合わせられた、生の、グレイスケール、カラー及び/又は閾値画像)の明度値を比較し、1つ以上の別の画像分析を実行
【0108】
有利には、セキュリティ構造、具体的には、第1セキュリティ構造は、1つ以上の画像要素を構成する第1オブジェクトを有する。
【0109】
第1セキュリティ構造は、好ましくは金属層を有する。当該金属層の金属は画像要素のある領域に設けられ、該画像要素を囲む背景領域には金属層は設けられない。高屈折率材料からなる透明反射層は、画像要素を囲む背景領域に設けるのが好ましい。
【0110】
セキュリティ構造、具体的には第2又は更なるセキュリティ構造は、1つ以上の画像要素からなる、更なる(具体的には第2の)オブジェクトを有する。
【0111】
第2セキュリティ構造は、カラー層を有するのが好ましい。当該カラー層の染料及び/又は顔料画像要素のある領域に設けられる。カラー層の染料及び/又は顔料は、画像要素を囲む背景領域には設けられない、あるいは低濃度で設けられる。カラー層は、好ましくはUV蛍光顔料を有する。
【0112】
第1セキュリティ構造は第1オブジェクトからなり、第2セキュリティ構造は、好ましくは部分的に重畳する第2オブジェクトからなる。
【0113】
検査の際には、第1オブジェクトは第1データセットを用いて検出される。具体的には、第1スペクトル帯域(特に、IR帯域)における金属表面の検出により第1オブジェクトが検出される。IR照明下において、セキュリティ文書の軽基板正面において、第1オブジェクトは原則暗く見える。第1オブジェクトとして利用可能な回折デザイン要素はコントラストに影響を及ぼすが、第1スペクトル帯域としてIR帯域を用いる場合には、その影響は僅かである。
【0114】
第1オブジェクトは、バイラテラルフィルタを用いてソフトフォーカスで示されるのが好ましい。バイラテラルフィルタは、特にハードエッジを損なわない選択的ローパスフィルタである。好ましくは、レコーディングからのオブジェクト又は第1データセットとデータベースに格納された基準画像とのデジタル比較(いわゆるテンプレートマッチング)により、金属領域は、以前に記憶されたテンプレート画像を使用することによって求められる。検査は、当該構造のデベロッパーにより記憶された異なる画像及び必要な検査が記述されているデータベースからの事前知識に基づいて行われる。
【0115】
次いで、第2データセットからの第2オブジェクトが検出され得る。具体的には、第2スペクトル帯域(特に、UV帯域又はVIS帯域)におけるカラー層の検出により第2オブジェクトが検出される。
【0116】
有利には、第1データセットから第1セキュリティ構造の第1オブジェクトが検出され、第1オブジェクトの基準点(具体的には、中心点)は、第2データセットから算出される。また、第2セキュリティ構造の第2オブジェクトが検出され、第2オブジェクトの基準点(具体的には、中心点)が算出される。1つ以上のオブジェクトにおける、1つ以上の中心点、交点、エッジの点、角の点、表面の点、立体の点、極小点及び/又は最小点及び/又は極大点及び/又は最大点、並びに上記点の数量(例えば、1つ以上のオブジェクトの直線、エッジ、分散領域、信頼区間及び/又は任意の表面)が基準点となり得る。かかる基準点の量は、上記基準点の異なる割合から集めることもできる。そして、対応するセキュリティ文書及び/又はセキュリティ素子の真正性の検査は、算出された基準点(具体的には、中心点)の間隔を比較して行われるのが好ましい。あるいは、第1、第2オブジェクトの他の種類の基準点を基準値と比較しても良い。更なる基準点を用いることで、相互に関連するオブジェクトの向きも判断することができる。また、かかる基準点の比較により、真正性の検査が可能となる。
【0117】
第1及び/又は第2オブジェクトの基準点(具体的には、中心点)を算出するには、第1又は第2オブジェクトの境界(具体的には、第1及び/又は第2オブジェクトの幾何学的形状に可能な限り密着した境界)となる矩形フレームを算出するのが好ましい。当該矩形フレームの基準点(具体的には、中心点)は、第1又は第2オブジェクトの基準点(中心点)として評価される。好ましくは、認識された最も大きいオブジェクトの周囲の矩形フレームが算出される。
【0118】
第1及び/又は第2オブジェクトの基準点(中心点)を算出するために、第1及び第2閾値画像が最初に算出され、次いでそれぞれ矩形フレームが算出又は生成される。フレームは、第1又は第2閾値画像のすべての画像点を2進数値の1で囲むことが好ましい。但し、当該フレームは、2進数値の0の第1又は第2閾値画像のあらゆる画像点の周りにもある。フレームの基準点(中心点)は、特に、第1又は第2オブジェクトの基準点(特に中心点)として評価される。オブジェクトの輪郭を完全に認識できない場合は、アルゴリズムの調整が必要であり、具体的には、特徴マッチング画像認識アルゴリズムがこれに適している。表面テンプレートの最適マッチング位置(具体的には、略最適位置、好ましくは最適位置)を用いることで、第1又は第2オブジェクトの仮想基準点(中心点)が定まる。
【0119】
製造公差のために偏差が生じる可能性もある。しかしながら、信頼性のある認証をする上で、矩形フレームや境界枠における互いの偏差が所定の偏差より大きくなくてはならない。具体的には、最大許容偏差は、縦横方向において、好ましくは±0.8mm未満、好ましくは±0.5mm未満、より好ましくは±0.2mm未満である。これらの値は、境界枠相互の偏差又は基準点からの偏差として許容される範囲を示す。
【0120】
第1セキュリティ構造及び第2セキュリティ構造は、少なくともいくつかの領域で重複することが好ましい。セキュリティ文書を前面から観察する場合、セキュリティ素子は第2セキュリティ構造の上方に配置されるのが好ましい。第1及び第2のセキュリティ構造は、それぞれ1つ以上の画像要素及び1つの背景領域を有する。第1セキュリティ素子の画像要素は、第2スペクトル帯域において不透明又は大部分不透明であり、特に金属層からなる。
【0121】
第2データセットの第2セキュリティ構造の画像要素又は1つ以上の画像要素が第1セキュリティ構造の背景領域のみで像を形成しているかを判断するために、第1データセット及び第2データセットを比較するのが好ましい。
【0122】
また、第1及び第2セキュリティ素子が、それぞれ1つ又は複数の画像要素及び背景領域を有することもできる。第2セキュリティ素子の画像要素は、第1スペクトル帯域において透明又は大部分が透明であるが、コントラストを持つ。具体的には、第2スペクトル帯域において、画像要素と背景要素の間の明るさや色のコントラストが5%を超え、好ましくは8%を超え、より好ましくは10%を超える。
【0123】
第2セキュリティ構造の1つ以上の画像要素の位置及び形状は、第2データセットから(具体的には、第2閾値画像の算出により)決定されることが好ましい。また、第1セキュリティ構造の1つ以上の画像要素の位置及び形状は、第1データセットから(具体的には、第1閾値画像の算出により)決定される。また、さらなるステップにおいて、第1及び第2セキュリティ構造の画像要素の端点などのキーポイントが決定され、決定されたキーポイントに基づき、所与の基準値に従って第1及び第2セキュリティ構造の画像要素が、互いに見当精度良く配置されているか、及び/又は互いに結合しているか、及び/又は傾斜と一致しているかが検査される。
【0124】
第1セキュリティ構造は、部分金属層及び回折構造を有するようにしても良い。第2セキュリティ構造は、部分カラー層を有する。金属層又はカラー層の材料は、第1及び第2セキュリティ素子の1つ以上の画像要素中に設けられるが、画像要素を囲む背景領域には設けられない。金属層又はカラー層の画像要素は、互いに一致する形状であることが好ましい。さらに好ましくは、回折構造は、第2スペクトル帯域(特に、VIS帯域)において、読取装置のセンサに向けて光を回折させるように設計される。但し、第1スペクトル帯域(特に、IR帯域)では、読取装置のセンサに向けて光を回折しない。
【0125】
第1又は第2セキュリティ構造の金属層及びカラー層の上記形成は、セキュリティ素子の製造時に、当該カラー層を金属層の部分的な金属除去のためのエッチレジストとして用いることが好ましい。より好ましい変形例では、対応する露光波長において不透明なカラー印刷(特に、吸光性及び/又は半透明インク)を、金属層のフォトリソグラフィ構造化用のマスクとして用いる。このようにして生成される2つの層からなる見当精度の良い構造は、上述した方法を用いて検出することができ、セキュリティ文書の真正性検査に用いることができる。
【0126】
セキュリティ文書の真正性(具体的には、セキュリティ文書の真正性に関する情報)を検査するために、以下の対策のうちの1つ又は複数を任意に組み合わせて実施することができる。
【0127】
第1セキュリティ構造は部分金属層を有し、第2セキュリティ構造は部分カラー層を有する。金属層又はカラー層の材料は、第1セキュリティ構造及び第2セキュリティ構造の1つ以上の画像要素に設けられ、背景領域には設けられない。カラー層のいくつかの画像要素は、機械読取可能な形状を有し、具体的にはQRコード(登録商標)である。金属層は、第1情報項目の形状に成形された第1マスク層及びカラー層で形成される第2マスク層を用いて脱金属化される。これにより、金属層の画像要素は、もはや完全な第1情報項目を含まなくなる。検査中、第1及び第2セキュリティ構造の画像要素は、第1及び第2のデータセットから決定されると共に、当該画像要素が比較され、第1及び第2セキュリティ構造からのそれぞれの画像要素の組み合わせに対する検査が完全な第1情報項目をもたらすかどうか判断される。
【0128】
上記と同様に、セキュリティ素子のセキュリティ構造、及び第1の領域に配置された(具体的には、互いに重ね合わされた)セキュリティ文書のセキュリティ構造も、生成されたデータセット(第1、第2、第3及び/又は第4データセット)から検出され得る。セキュリティ文書及び/又は基板のこれらのセキュリティ構造は、セキュリティ素子のセキュリティ構造に関する上記説明と同様に、セキュリティ素子のセキュリティ構造の対応する相対値を決定してセキュリティ文書の真正性を検査するのに利用することができる。
【0129】
また、セキュリティ素子及び/又はセキュリティ文書の1つ以上のセキュリティ構造に、(例えば、セキュリティ構造の金属層をレーザで部分除去したり、UV照射下で蛍光を発するインクを重ね刷りしたりすることで)個別化又は個人化された情報を含めることもできる。かかる個別化又は個人化は、検出したデータセット及び読取装置がアクセスするデータベース両方からの追加情報項目と比較することで、セキュリティ文書の真正性を検査する際に、追加的に利用することができる。
【0130】
セキュリティ素子がカラー層を含むセキュリティ構造を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
当該カラー層の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、位置、カラー、インクの適用範囲、反射、向き、サイズ、形状、個人化、色変化、及び電磁的特性、から選択される。決定された1つ以上のパラメータと割り当てられた所定の基準値との比較が行われることが好ましく、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0131】
セキュリティ素子が金属層を含むセキュリティ構造を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
当該金属層の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、位置、反射、カラー、向き、サイズ、形状、個人化、被膜領域、伝導性、から選択される。決定された1つ以上のパラメータと割り当てられた所定の基準値との比較が行われることが好ましく、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0132】
セキュリティ素子がアンテナを含むセキュリティ構造を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
金属層又はアンテナ構造の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、位置、電気的特性、デザイン、色、から選択される。決定された1つ以上のパラメータと割り当てられた所定の基準値との比較が行われることが好ましく、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0133】
セキュリティ素子下のセキュリティ文書が金属層及び/又はカラー層を含む文書背景を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
金属層及び/又はカラー層の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、位置、色、インクの塗布範囲、反射、向き、サイズ、形状、電磁的特性、個人化、及び被服範囲、から選択される。決定された1つ以上のパラメータと割り当てられた所定の基準値との比較が行われ、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0134】
セキュリティ素子がRFIDチップを含むセキュリティ構造を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
RFIDチップに記憶された1つ以上の情報項目の読み取りステップ。RFIDチップは、特に、セキュリティ素子の1つ以上のセキュリティ構造の仕様及び/又はこれらに記憶されたコードを含む;
読み取った情報項目に基づくセキュリティ文書の検査ステップ。具体的には、セキュリティ素子の1つ以上のセキュリティ構造が読み取った仕様に対応するか、及び/又は読み取ったコードを含むかを検査する。
【0135】
セキュリティ素子が少なくとも1つの回折構造及び/又は屈折構造を含むセキュリティ構造を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
当該回折構造及び/又は屈折構造の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、位置、反射、散乱、光沢、回折構造及び/又は屈折構造の設計要素の配意、から選択される;
決定された1つ以上のパラメータと、割り当てられた所定の基準値と比較し、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0136】
セキュリティ素子が、OLEDや発光層のような自発光構造を含むセキュリティ構造を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
当該自発光構造の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、励起時の発光、励起時の色、当該自発光構造の要素の位置、から選択される;
決定された1つ以上のパラメータと、割り当てられた所定の基準値と比較し、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0137】
セキュリティ文書がいくつかの層を有する文書本体及び/又は窓及び/又は貫通孔領域を有する場合、セキュリティ文書の真正性を検査するために以下のステップをさらに実行することが好ましい:
当該文書本体の1つ以上のパラメータを、第1、第2、第3及び第4データセットのうちの1つ以上に基づいて決定するステップ。当該パラメータは、窓位置、窓の形状、相対する層の位置、から選択される;
決定された1つ以上のパラメータと、割り当てられた所定の基準値と比較し、偏差が所定の許容範囲を超えると真正性が否定される。
【0138】
セキュリティ文書のセキュリティ構造のある領域における認証は、検査対象となる特徴が複数存在することで高い信用性を確保できる。これにより、文書の真正性に関して信頼できる結果をもたらすことができる。即ち、文書の真正性について高い確率又は信頼性を提供できる。個々の検査可能な構造は、原則として互いに組み合わせることができる。個々の特徴は、有利には互いに相関させることができる。例えば、第1画像要素の位置が第2画像要素の位置と相関していることが考えられる。あるいは、これらの向き又は大きさが互いに相関していることが考えられる。VIS照明下の第1画像要素又はオブジェクトの色も、IR照明下の第1画像要素の色又は明度と相関し得る。
【0139】
セキュリティ素子又はセキュリティ文書の真正性に関する情報項目が読取装置によって出力されると有利である。これは視覚的にも音響的にも及び/又は電子的にも達成することができる。
【0140】
当該文書は、身分証明書、旅行文書、身分証明書、パスポート、ビザ、証券、紙幣、証明書などであり得る。これらの文書又は少なくとも検査されるページ(例えば、パスポートのデータページやビザシールのあるページ)は、単層又は多層の基板を有することが好ましい。基板は、紙及び/又はプラスチック製のカードやデータページの形態で存在することが好ましい。具体的には、当該基板はプラスチック製であり、好ましくはPVC、ABS、PET、PC、テスリン(Teslin)又はこれらの組み合わせ(多層複合材料)からなる。また、基板は紙又は織物材料からなることも考えられる。基板は、透明領域及び/又は開口部を有しても良い。
【0141】
本発明に係る方法の実行はさらに、上記のように設計されたセキュリティ文書及び/又は上記のように設計されたセキュリティ素子の提供及び/又は製造を含むことができる。
【0142】
本装置のセンサ機器は、1つ以上のセンサ及び/又は1つ以上の放射線源を有することが好ましい。好ましくは、異なる放射線源及び/又はセンサが第1及び第2スペクトル帯域に割り当てられる。当該センサ機器は、理想的には、可視光、UV光及び/又は赤外線を放射または検出する1つ以上の放射線源を含む。
【0143】
センサ機器は、スペクトル帯域に加えて、照明方向及び/又は観察方向も変えることができるように設計できる。したがって、例えば、VIS帯域内の照明は、異なる方向又は方向範囲からもたらすことができ、その結果、同一スペクトル帯域について複数のデータセットを得られる。よって、例えば、乱数的な反射を回避することができる。
【0144】
また、本装置は少なくとも1つのレーザダイオード及び/又はLEDを有することも考えられる。好ましくは、ソフトウェアが装置によって得られた信号を評価する。かかるソフトウェアは、装置内に直接設けることも、接続されたPC又は他の外部装置、例えばスマートフォンやサーバなど設けることもできる。
【0145】
本発明のいくつかの実施例を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1a】セキュリティ文書を示す模式図である。
図1b】セキュリティ文書を示す模式図である。
図1c】読取装置を示す模式図である。
図1d】認証方法のフロー図である。
図2a】UV印刷及び部分金属部を、仮想境界枠と共に示す模式図である。
図2b】UV印刷及び部分金属部を、仮想境界枠と共に示す模式図である。
図3a】実施形態に係るセキュリティ構造を示す模式図である。
図3b】実施形態に係るセキュリティ構造を示す模式図である。
図3c】実施形態に係るセキュリティ構造を示す模式図である。
図3d】実施形態に係るセキュリティ構造を示す模式図である。
図4a】実施形態に係る他のセキュリティ構造を示す模式図である。
図4b】実施形態に係る他のセキュリティ構造を示す模式図である。
図4c】実施形態に係る他のセキュリティ構造を示す模式図である。
図5a図3図4に示すセキュリティ構造の重ね合わせを示す模式図である。
図5b図3図4に示すセキュリティ構造の重ね合わせを示す模式図である。
図5c図3図4に示すセキュリティ構造の重ね合わせを示す模式図である。
図6a】異なるスペクトル帯域で観察したセキュリティ構造を示す模式図である。
図6b】異なるスペクトル帯域で観察したセキュリティ構造を示す模式図である。
図6c】異なるスペクトル帯域で観察したセキュリティ構造を示す模式図である。
図6d】異なるスペクトル帯域で観察したセキュリティ構造を示す模式図である。
図7a】セキュリティ素子がいくつかの領域に設計されているセキュリティ文書を示す模式図である。
図7b】セキュリティ素子がいくつかの領域に設計されているセキュリティ文書を示す模式図である。
図7c】セキュリティ素子がいくつかの領域に設計されているセキュリティ文書を示す模式図である。
図8a】QRコードとして成形されたセキュリティ構造を異なるスペクトル帯域で観察した場合を示す模式図である。
図8b】QRコードとして成形されたセキュリティ構造を異なるスペクトル帯域で観察した場合を示す模式図である。
図8c】QRコードとして成形されたセキュリティ構造を異なるスペクトル帯域で観察した場合を示す模式図である。
図8d】QRコードとして成形されたセキュリティ構造を異なるスペクトル帯域で観察した場合を示す模式図である。
図8e】QRコードとして成形されたセキュリティ構造を異なるスペクトル帯域で観察した場合を示す模式図である。
図9】各マークが施されたセキュリティ構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
図1a及び図1bは、セキュリティ文書1の構造例を示す。
【0148】
図1aは、セキュリティ文書1の平面図、図1bは断面図である。
【0149】
セキュリティ文書1は、好ましくは身分証明書(例えば、パスポート、パスポートカード、アクセスカード)である。但し、紙幣、証券、証明書、又はクレジットカード若しくは銀行カード等、その他のセキュリティ文書1であっても良い。
【0150】
セキュリティ文書1は文書本体11と1つ以上のセキュリティ素子とを有し、図1a,1bには2つのセキュリティ素子1a,1bを示す。
【0151】
セキュリティ素子は、セキュリティ文書1の文書本体11に塗布される。あるいは、セキュリティ文書1の文書本体11に対し、完全に又は部分的に埋め込まれても良い。
【0152】
セキュリティ文書の文書本体11は、好ましくは多層に形成され、特に、紙基板及び/又はプラスチック基板で形成されるキャリア基板を備える。また、文書本体11は、1つ以上の保護層、1つ以上の装飾層及び/又は1つ以上のセキュリティ構造を備える。この点に関し、図1bは、セキュリティ文書1のセキュリティ構造15を例示する。セキュリティ構造15は、少なくともセキュリティ文書1の領域3と重なる、又は少なくともある部分がセキュリティ文書1の領域3と重なる。領域3には、セキュリティ素子1aが塗布される。ここで、文書本体11は、情報が格納される電子回路(特に、RFIDチップ)を有することが好ましい。
【0153】
1つ以上のセキュリティ素子(具体的には、セキュリティ素子1a,1b)は、好ましくは、それぞれ文書本体11の製造とは独立して製造される素子からなり、セキュリティ文書の製造時のみにおいて文書本体11に塗布又は埋め込まれる。セキュリティ素子1a,1bは、具体的には、転写フィルム、積層フィルム及び/又はフィルムエレメントの転写プライにより、特にセキュリティスレッドの形で、形成される。セキュリティ要素は、セキュリティ文書の表面全体を覆う、及び/又は、図1aのセキュリティ素子1a,1bのように、表面全体のうち一部のみを(例えば、スライプやパッチ形状で)覆うものであっても良い。
【0154】
セキュリティ素子、特にセキュリティ素子1a,1bは、保護層14、装飾層12及び接着剤あるいは接着促進層13を有するのが好ましい。したがって、例えば、セキュリティ素子1aは、保護層14、装飾層12、及び接着層13を備える転写フィルムの転写プライとして形成され、図1aに示すように文書本体11の前面に塗布される。
【0155】
セキュリティ素子1bは、2つの接着促進層13及び装飾層12を備えるフィルムエレメントとして形成され、パッチ形状を有する。セキュリティ素子1bは、図1bに示すように、文書本体11の製造時に文書本体11の内部に埋め込まれる。
【0156】
セキュリティ素子1a,1bの装飾層12は、それぞれ1つ以上のセキュリティ構造を形成する。当該セキュリティ構造は、観察者から光学的に視認可能であることが好ましい。図1aは、4つのセキュリティ構造10を例示する。当該4つのセキュリティ構造10は、セキュリティ素子1a,1bの装飾層12によりもたらされる。好ましくは、各セキュリティ構造10は、装飾層12の単一の又はいくつかの割り当てられた層によって形成または提供される。
【0157】
したがって、装飾層12は、例えば、下記の層を1つ以上有する。
【0158】
即ち、装飾層12は、それぞれセキュリティ素子に対して、表面全体ではなく部分的にのみ設けられる1つ以上の金属層を有することが好ましい。当該金属層は不透明、半透明、又は部分的に透明になるように形成される。金属層は、反射及び/又は透過スペクトルが大きく異なる別々の金属から形成されることが好ましい。例えば、当該金属層は、アルミニウム、銅、金、銀、クロム、錫、又はこれらの合金から形成される。また、金属領域は、ラスタライズ及び/又は局所的に異なる層厚で設計することができる。
【0159】
1つ以上の金属層は、当該金属層の金属が設けられた1つ以上の画像要素を備えるように構造パターン化されていることが好ましい。また、当該1つ以上の金属層は、当該金属層の金属が設けられない背景領域を備える。画像要素は、好ましくは英数字として形成され得るが、グラフィックス及びオブジェクトの複雑な表現としても形成され得る。
【0160】
また、画像要素の少なくとも1つの横方向の寸法を300μm未満、好ましくは200μm、より好ましくは50μm未満とすることもできる。これにより、それぞれの金属層の構造を人間の観察者から隠しつつ、機械による検出可能性を保証することができる。
【0161】
装飾層12は、さらに1つ以上のカラー層、特にインクを含むことができる。カラー層は印刷手段によって塗布されるものであって、バインダーマトリックスに組み込まれる1つ以上の染料及び/又は顔料を有することが好ましい。染料及び/又は顔料は、異なるスペクトル帯域において異なる(好ましくは、著しく異なる)吸収/反射スペクトル及び/又は吸収/反射特性を有し、読取装置により検出可能である。但し、当該染料及び/又は顔料は、同一スペクトル帯域内(例えばVIS帯域)において異なるものであっても良い。カラー層(具体的にはインク)は透明、クリア、部分散乱、半透明、又は不透明に形成され得る。
【0162】
染料や顔料としては、IR帯域(例えば、800nm~1000nmの近赤外帯域)で検出可能なものや、VIS帯域で検出可能な通常の印刷インク等や、UV光を吸収あるいはUV発行特性を持ちUV帯域で検出可能なものが用いられる。UV帯域で活性化され、次いでVIS帯域で可視となるフォトクロミック物質も染料及び/又は顔料として使用することができる。
【0163】
ここで、1つ以上のカラー層は、それぞれカラー層の染料/顔料が設けられている1つ以上の画像要素と、カラー層の染料/顔料が設けられていないか低濃度で設けられる背景領域と、を有する。
【0164】
装飾層12は、好ましくは2つ以上のカラー層を備える。当該カラー層において、画像要素は、それぞれ異なる形状を有し、及び/又は、カラー層の染料・顔料が、特に第1、第2、第3及び/又は第4スペクトル帯域において、異なる反射及び/又は吸収特性を持つ。
【0165】
装飾層12は、好ましくは1つ以上の光学活性レリーフ構造を有する。光学活性レリーフ構造は、それぞれ複製ワニス層の表面に塗布される。これらのレリーフ構造は、例えばホログラム、回折格子、対称又は非対称のプロファイル形状を持つ回折格子、ゼロ次回折構造のような回折レリーフ構造であることが好ましい。また、これらのレリーフ構造は、等方性及び/又は異方性散乱マット構造、ブレーズド格子、及び/又は実質的に反射及び/又は透過に作用するレリーフ構造、例えばマイクロレンズ、マイクロプリズム又はマイクロミラーであり得る。
【0166】
装飾層12はさらに好ましくは、入射光を波長選択的に反射又は透過させる1つ以上の干渉層を有する。これらの層は、例えば薄膜素子(具体的には、ファブリーペロー(Fabry-Perot)型薄膜素子)によって形成することができる。かかる薄膜素子は、入射光の半波長又はλ/2波長又はλ/4の範囲の光学的厚さを有する層の配置に基づいて、視野角に依存したカラーシフト効果を生じる(なお、λは光の波長又は電磁波の波長を意味する)。屈折率n及び厚さdを有する干渉層における構成的干渉は、以下の通り計算される:
2nd cos (θ) = mλ
ここで、θは照明方向と観察方向との間の角度、λは光の波長、mは整数である。これらの層は、特に吸収層と反射層との間に配置されたスペーサー層を含むか、または好ましくは薄膜顔料を含む層によって形成することができる。
【0167】
装飾層はさらに好ましくは1つ以上の液晶層を有することができる。液晶層は、一方では、入射光の偏光に依存して入射光の反射及び/又は透過を生じさせ、他方では、液晶の方向に応じて、入射光の波長選択反射及び/又は透過を生じさせる。
【0168】
図1aに示すように、少なくともある領域においてセキュリティ素子1aと重なるセキュリティ文書の第1領域3が読取装置2によって検出される。セキュリティ素子1aは、好ましくは図1aにおいて、第1領域3のセキュリティ構造10として形成される1つ以上のセキュリティ構造を有する。
【0169】
また、図1aにおいて例示するように、第1領域3が、セキュリティ文書の1つ以上のセキュリティ構造15と重なっても良い。ここで、セキュリティ文書のセキュリティ構造15は、セキュリティ素子のセキュリティ構造10に関して上述したように、対応して形成されるのが好ましい。
【0170】
また、セキュリティ文書1に、第1領域に加えて別途1つ以上の第2、第3領域を設けることもできる。第2、第3領域は、例えばセキュリティ素子1bと重なり、読取装置2に囲まれる。そして、文書の表面全体が検出される。
【0171】
図1cは、セキュリティ文書1の検査を行う読取装置2の構造を模式的に示す。読取装置2は、センサ機器21、分析機器22、及び出力機器23を有する。センサ機器は、好ましくは1つ以上の放射線源24と1つ以上のセンサ25を有する。
【0172】
好ましくは、センサ機器21は、それぞれ異なるスペクトル組成を持つ放射線を出射する3つ以上の放射線源24を有する。具体的には、放射線源24は、UV帯域、VIS帯域、IR帯域の光を出射する。センサ機器21は、好ましくは1つ以上のセンサ25を有する。センサ25は、(例えば、対応する帯域フィルタの上流側接続及び画像センサの選択により)異なるスペクトル帯域又は異なる波長帯域の放射線を検出するようにセットアップされる。1つ以上のセンサ25は、好ましくはそれぞれ1つ以上のスペクトル帯域を検出できることが好ましい。センサは、好ましくはイメージセンサ、より好ましくはカメラ、さらに好ましくは、水平軸及び/又は水力軸に沿った最低解像度が350ppi、特に400ppi、特に500ppiの画像を記録できる検出器である。
【0173】
センサ機器21は、例えば図1cに示すように、正面側及び背面側からの反射光により観察した場合及び透過光で観察した場合に、透過・反射スペクトルを検出するべく、セキュリティ文書供給装置の異なる側面に配置されるセンサ25を有するのが好ましい。
【0174】
分析機器22は、センサ機器21により生成されたデータセットを評価する。また、分析機器22は、後述する当該評価ステップを実行するためのハードウェア及び/ソフトウェア部品を備えるのが好ましい。なお、分析機器22は外部のデータベース26にアクセスすることもできる。
【0175】
読取装置2は、光学的、音響的、電子的、及び/又はそれ以外の手法を用いて、作業者に対して真正性検査結果を出力する出力機器23を備えることが好ましい。
【0176】
上記センサ25に加え、読取装置2は、セキュリティ文書のデータを機械検出するための別のセンサ25を備える。そのような読取装置の例としてはRFID読取装置がある。さらに、読取装置2は、セキュリティ文書の電気的及び/又は磁気的なセキュリティ構造を検出するためのセンサ25も備えていても良い。
【0177】
図1dは、セキュリティ文書1の検証方法のフロー図を示す。
【0178】
セキュリティ文書1はステップ101で供給されるのが好ましい。ステップ102では、第1スペクトル帯域における第1領域3の透過及び/又は反射特性が検出される。ステップ103では、第2スペクトル帯域における第1領域3の透過及び/又は反射特性が検出される。ステップ102及び103は並列に又は順次実行される。ステップ104では、第1透過及び/又は反射特性を示す第1データセットが生成される。ステップ105では、第2透過及び/又は反射特性を示す第2データセットが生成される。ステップ104及び105は並行して又は順次実行される。ステップ106では、第1データセット及び第2データセットに基づき、セキュリティ文書1又はセキュリティ素子1aの真正性が検査される。有利には、第3スペクトル帯域及び第4スペクトル帯域における第3及び第4透過及び/又は反射特性も読取装置2によって検出される。
【0179】
第1、第2、第3及び/又は第4スペクトル帯域は、以下の群から選択される:電磁波のIR帯域(具体的には、波長850nm~950nm)、電磁波のVIS帯域(具体的には、波長400nm~700nm)、及び電磁波のUV帯域(具体的には、1nm~395nm)。
【0180】
セキュリティ文書1の真正性検査のため、最初に、少なくとも第1データセットと第2データセットとの比較により、相対配置(具体的には、間隔、相対的なサイズ、相対的な形状(即ち、画像要素の方向及び形状の見当精度)、セキュリティ素子1aの2つ以上のセキュリティ構造10の相互の重なり及び/又は方向)が判断されるのが好ましい。続くステップでは、判断された2つ以上のセキュリティ構造10の相対値を所定の基準値と比較する。その結果、偏差が所定の許容範囲を超える場合は真正性が否定される。
【0181】
さらに、セキュリティ文書1の真正性検査を実行する上で、以下のステップを行っても良い:
第1データセットを用いた、セキュリティ素子1aの第1セキュリティ構造10aの配置及び/又は形状を判断するステップ、
第2データセットを用いた、セキュリティ素子1aの第2セキュリティ構造10bの配置及び/又は形状を判断するステップ、
判断した互いの配置及び/又は形状を比較して相対配置(具体的には、間隔、相対的なサイズ、相対的な形状(即ち、画像要素の方向及び形状の見当精度)、セキュリティ素子1aの2つ以上のセキュリティ構造10の相互の重なり及び/又は方向)を判断するステップ。
【0182】
図2aは、仮想境界枠201a,202aを表す模式図である。境界枠201a,202aは、好ましくは矩形フレーム形状であり、セキュリティ素子1aの1つ以上のオブジェクト9a,9b(具体的には、UV照明下で蛍光を発するプリント201を含むセキュリティ構造10aと部分金属部202とを有するセキュリティ構造10b)を囲んでいる。境界枠201a,202aは、それぞれのオブジェクト9a,9bとできるだけ密接していることが好ましい。第1、第2、第3及び/又は第4データセットは、画像処理にかけられるのが好ましく、これによって境界枠201a,202aが生成される。境界枠201a,202aは、セキュリティ構造201a,202bの中心点201b,202bを定めるのに用いられる。境界枠201a,202aの中心点は、オブジェクト9a,9b(即ち、UVプリント201及び部分金属部202)の中心点201b,202bに対応する。
【0183】
図2bは、2つの矢印で示す距離200を示す。当該距離200は、境界枠203a,304aの算出された中心点203b,204b間の距離を示す。真正性検査は、算出された中心点203b,204bの間隔200を基準値と比較することによって行われる。
【0184】
セキュリティ文書1のセキュリティ素子1aは、1つ以上のセキュリティ構造10を有することが好ましい。
【0185】
図3aは、UV蛍光プリント205の第1セキュリティ構造10aを示す模式図である。第1セキュリティ構造10aは、1つ以上の画像要素7aと、当該画像要素7aを取り囲む背景領域7bを有するのが好ましい。図3aに示す第1セキュリティ構造10aは、UV帯域でのみ視認可能なカラー層8b(UVプリント205)である。
【0186】
図3bは、第2セキュリティ構造10bを示す別の模式図である。第2セキュリティ構造10bは、部分金属部206としての部分成形金属層8a、具体的には、IR帯域で容易に認識可能なキネグラム(登録商標)の成形回折構造からなる。IR照明下において、金属層8aは主に背景領域7bに対して暗く現れる。
【0187】
図3bに示す第2セキュリティ構造10bの画像は、バイラテラルフィルタを用いてソフトフォーカスで示されるのが好ましい。バイラテラルフィルタとは、ハードエッジを損なうことのない選択的ローパスフィルタである。
【0188】
閾値画像は、図3a,3bにそれぞれ示す第1セキュリティ構造10aと第2セキュリティ構造10bの画像とから算出される。閾値画像を生成するために、以下の3つの算出ステップを、1つずつ実行するのが好ましい。
【0189】
第1のステップでは、適応的二値化閾値処理が行われる。以下の例では、グレイスケール画像256が、黒色の明度値を0、白色の明度値を255と割り当てられた明度値を有するものと仮定する。
【0190】
当該適応的二値化閾値処理では、画像の解像度に比して大きいフィルタカーネルを利用するのが好ましい。これにより、存在するあらゆるエッジが正確に認識される。この第1のステップは、本来のモチーフエッジとは異なる画像特徴、コンタミ、その他の物体の誤認識に対して有効である。本処理の結果物が「エッジ画像」である。
【0191】
続いて、定数二値化閾値処理が実行され、所定の明度値未満である全明度値の2進数値を、好ましくは黒色に割り当てられる0とする。なお、閾値の設定は、認識された文書の種類に関連する先行知識に基づいて行われる。この結果は「黒画像」とされる。明度に関する閾値の例は、IR画像の場合が明度値60未満、UV画像の場合が明度値40未満である。なお、これらの例は、明度範囲が256の値で示される画像に適用される。但し、明度範囲が512の値の場合や1024の値の場合であっても可能である。
【0192】
次いで、グレイスケール画像に対しても定数二値化閾値処理が実行され、所定値を超える全明度値の2進数値を、好ましくは白色に割り当てられる1とする。なお、閾値の設定は、認識された文書の種類に関連する先行知識に基づいて行われる。この結果は「白画像」とされる。明度に関する閾値の例は、IR画像の場合が明度値140を超え、UV画像の場合が明度値60を超える。
【0193】
理想的なケースにおいて、明暗の違い(即ち、光として知覚される明度と暗闇として知覚される明度の違い)は、IR画像であれば、隣接明度値の値間隔が80を超え、UV画像であれば、隣接明度値の値間隔が20を超える。
【0194】
そして、エッジ画像がピクセル単位で黒画像により乗算されるように3つの部分画像が組み合わされる。この結果、黒画像内の全ての黒領域がエッジ画像において黒く現れる。この結果物が黒エッジ画像である。
【0195】
次いで、白画像が黒エッジ画像に加算される。この結果、白画像内の全ての白色画素が黒エッジ画像において白く現れる。この結果物が閾値画像である。
【0196】
図3cは、図3a及び3bに示すセキュリティ素子1aのセキュリティ構造10a,10bを、IR帯域及びUV帯域の同時照射の下で重ね合わせたものを示す。
【0197】
図3dは、第2スペクトル帯域(具体的には、UV帯域)の照射下におけるセキュリティ素子1aを示す。図3dのセキュリティ素子1aは、第1セキュリティ構造10aと第2セキュリティ構造10bを重ね合わせたものとなる。UV蛍光インクからなるUV蛍光プリント205は、部分金属部206の金属層8aによって覆われていない領域においてのみ視認可できる。これは、金属層8aが、UV帯域の励起光及びプリント205の蛍光の両方に対して、略不透明、好ましくは完全に不透明であるためである。部分金属部206の金属層8aの内在的な光強度は、1.0を超える、好ましくは1.3を超える。背景領域7bは、ほとんど蛍光を発しない、あるいは、少なくとも非常に僅かしか蛍光を発しない、又はUV蛍光プリント205とは異なる色で蛍光を発する。
【0198】
セキュリティ素子1のより有利な変形例は、回折及び/又は確立構造(具体的には、散乱マット構造)の回折特性を利用する。かかる構造により、電磁波、特にIR及び/又はVIS範囲の電磁波を、1つ以上の読取装置2に向けて、より好ましくは読取装置2の1つ以上の検出器に向けて偏向(回折又は散乱)させる。これにより、IR画像において、回折又は散乱構造で設計されたセキュリティ素子1aの領域をIR帯域で照らす、好ましくは、より強く照らす(即ち、通常の金属表面よりも強く照らす)ことができる。あるいは、VIS画像において、回折又は散乱構造で設計されたセキュリティ素子1aの領域をVIS帯域で照らす、好ましくは、より強く照らす(即ち、通常の金属表面よりも強く照らす)ことができる。なお、セキュリティ文書1の真正性検査において、回折構造の成形に関する製造ばらつきは、製造公差として考慮される。
【0199】
図4aは、あるスペクトル帯域(具体的には、VIS帯域)による照射下でのセキュリティ素子1aの3つの部分領域70a,70b,70cを示す。部分領域70a,70bは、複雑な形状(幾何学的構造、好ましくは、曲線又はギロシェからなる英数字形状)を持つ部分金属部208を示し、部分領域70cは、一方ではカラープリント207を形成し他方では部分金属部208として形成される輪状線を有する画像要素7aを示す。部分領域70cにおいて任意に着色されたカラープリント207は、許容誤差なしで部分金属部208と結合する。
【0200】
検査方法における有利な実施形態では、1つ以上のスペクトル帯域(好ましくは第1スペクトル帯域及び第2スペクトル帯域、より好ましくはVIS帯域及びIR帯域)において図4aに示すセキュリティ文書1の真正性検査が実行される。対応するスペクトル帯域におけるセキュリティ素子1aの記録に基づき、第1スペクトル帯域(好ましくは、VIS帯域)に割り当てられた第1データセット、即ちVIS画像と、第2スペクトル帯域(好ましくは、IR帯域)に割り当てられた第2データセット、即ちIR画像とが読取装置2により生成される。図4bは、第2スペクトル帯域(好ましくはIR帯域)を照射した場合のセキュリティ素子1aの部分領域70a,70b,70cを示す。結果として、セキュリティ素子1aの3つの部分領域のうち、(カラープリント207ではなく)部分金属部202のみが読取装置2により検出可能である。なぜならば、この例におけるカラープリントはIR帯域の波長を全く吸収しないかほとんど吸収しないためである。
【0201】
第1ステップでは、妥当性検査又は真正性検査のフレームワークにおいて、IR画像がソフトウェア(好ましくは、アルゴリズムを含むソフトウェア)を用いてテンプレート(具体的には、テンプレートデータセット及び/又はテンプレート画像、より好ましくは、データベースより提供されるテンプレート、テンプレート画像及び/又はテンプレートデータセット)と比較される。種々のアルゴリズム(好ましくは、テンプレートマッチング、境界枠、及びA-KAZE)が並行して又は順次実行される。部分領域70aは、回折・反射構造として設計され、好ましくは、検査装置又は読取装置2によって観察されるとき、第1、第2及び第3スペクトル範囲において同一形状(外形)又は同一デザインを表示するキネグラム(登録商標)として設計される。部分領域70a,70b及び/又は70cの部分金属部208の位置及び/又は形状は、許容誤差の範囲内で変わり得る。
【0202】
部分領域70aと部分領域70cとは、部分領域70aの部分金属部208が任意の第2部分金属部によって変更されずに維持される限り、異なり得る。第1及び/又は第2部分金属部は、表面全体、又は表面の一部に亘り、好ましくは1つ以上キネグラム(登録商標)に亘って、部分金属部208に成形された回折・反射構造に対して常に完全な位置合わせがされる。
【0203】
セキュリティ素子1aの第1部分金属部208の後、部分領域70cをエッチングレジスト(特に、カラーエッチングレジスト、より好ましくは青色エッチングレジスト)により重ね印刷することができる。部分金属部208に対するエッチングレジストの位置、形状及び/又は見当精度の許容範囲は、真正性検査の際に考慮され得る。エッチングレジスト(特にカラーエッチングレジスト、より好ましくは青色エッチングレジスト)は、その色彩による効果と、エッチングレジストが更なる部分金属化処理においてエッチングマスクとして作用するという特徴を持つ。
【0204】
カラーエッチングレジスト、特に青色エッチングレジストでは、真正性検査においてVIS画像に対する検査が行われ、エッチングレジストのカラー(特に青色)線が、第1部分金属部208及び/又は第2部分金属部の金属線に対して、正確な位置合わせ及び/又は正確に見当合わせされた状態で結合しているか否か判断される。第1及び/又は第2部分金属部の金属線は、IR画像で視認可能、又は読取装置2によって検出可能である。なお、使用される青色染料が僅かに吸収作用を持つのみであるため(好ましくは、吸収作用を有しないため)、エッチングレジストのカラー(特に青色)線は、IR検査、特に真正性検査に用いられるIR帯域(特に近赤外帯域、より好ましくは、波長が800nm~1000nmの近赤外帯域)内において、IR画像で視認できない(即ち、読取装置2によって検出できない)ことが好ましい。
【0205】
さらなるステップでは、第3スペクトル帯域(具体的には、UV帯域)にて真正性検査が行われる。UV蛍光プリント207bの色及び/又は見当精度及び/又は形状は、読取装置2及び/又はカラー(特に青色)エッチングレジスト若しくはエッチングレジストプリントの検出方向からみて該UV蛍光プリント207bの前に位置する部分金属部との関係で検査される。図4cは、第3スペクトル帯域(特にUV帯域)の放射線で照射されたセキュリティ素子1aの部分領域70a,70b,70cを示す。この場合、画像要素7aのうち、部分金属部208で覆われていないUV蛍光プリント207bのみが対応する読取装置2によって検出可能である。また、検出されたUV蛍光プリント207bのみが第3データセット、即ちUV画像に変換される。カラープリントの下のUV蛍光プリント207bは、認識可能又は認識不能であり、あるいは、カラープリント207(具体的には、青色エッチングレジスト)の特性に応じてカラープリント207によって減衰される。妥当性検査のフレームワークでは、さらに、UV蛍光プリント207bから射出された光の色が特定の色(具体的には、黄色)か否か検査される。UV蛍光プリント207bは、放射線(特に、電磁波、具体的には、紫外線)によって励起され得る。
【0206】
また、異なるオブジェクトの特徴に対する許容誤差として典型的な値は、それぞれ±0.8mm、特に±0.5mm、より好ましくは、0.2mm未満かつ-0.2mmを超える。このようなオブジェクトとしては、セキュリティ素子1aの部分領域70cの1つ以上のデザインに対する、部分領域70aの1つ以上のデザインのうちの位置、色、インクの塗布範囲、方向、サイズ、形状、電気的特性、反射、個人化及び被服範囲から選択される。なお、それぞれの場合において、デザインは、UV蛍光プリント207b、カラー(特に青色)エッチングレジスト、及び/又は部分金属物208から選択される。より具体的には、部分領域70aの部分金属部208に対する、部分領域70cのカラー(特に青色)エッチングレジスト及びUV蛍光プリント207bの許容誤差は、±0.8mm、特に±0.5mm、好ましくは0.2mm未満かつ-0.2mmを超える。これらの許容誤差は、互いに対して見当合わせされた印刷処理における典型的な変動から生じ、機械及び制御に応じて、はるかに小さくても大きくてもよい。
【0207】
セキュリティ構造10の特性(具体的には、幾何学的及び/又は光学的特性)と対応するテンプレートの特性又は基準画像との対比は、当該セキュリティ構造10の、特に、位置合わせの正確性に対する第1妥当性検査となる(即ち、セキュリティ構造10の位置判断となる)。
【0208】
真正性検査は、カラープリント207(具体的には、エッチングレジスト)及び/又はUV蛍光プリント207b(具体的には、UV蛍光エッチングレジスト)及び/又はIR活性プリントと、部分金属部208を有する領域との公差のない転写、即ち、両者の間の見当精度に関するものであることが好ましい。
【0209】
さらに好適な方法では、検査されるセキュリティ構造10は、読取装置2によって部分領域70cに配置され、少なくとも2つのスペクトル帯域で観察したときに少なくとも2つの領域に分割される。分割された領域は、UV蛍光プリント207b並びに/又はカラーレジスト(特に、青色エッチングレジスト)及び部分金属部208を有する。アルゴリズム(好ましくは、Accelerated KAZE(A-KAZE)特性検出器/記述子)は、例えば、印刷線207,207b(特に輪状線)の端点や金属部208の金属線といったキーポイントの認識又は判断のために実行される。そして、当該アルゴリズム又はさらなる別のアルゴリズムは、データセット(特に、VIS画像及びIR画像)内でキーポイントの座標の対比を行い、印刷構造物207,207b及び金属構造物208又はラインの遷移領域における見当精度を検査する。また、特に遷移領域における印刷構造物207,207b及び金属構造物208の形状及び/又は傾きが検査される。この処理は、セキュリティ素子の固有の又は内在的特性が使用される場合に有利である。なぜなら、セキュリティ構造はその存在について高い確率又は信頼性で検査されるためである。当該検査方法は、生じ得る適用公差(即ち、セキュリティ構造を基板に塗布する際の公差)や歪み(セキュリティ構造の歪み)とは無関係である。なぜなら、これらの公差や歪みは上記した局所的特性に対して影響を及ばさないためである。同様に、当該検査方法も、検査されるセキュリティ構造10に関する小さな欠落領域及び/又は捩れなどによる損傷によって著しく損なわれることはない。
【0210】
また、セキュリティ素子1a,1bが(特に、凸版印刷、オフセット印刷または凹版印刷によって)部分的に重ね刷りされている場合には、上記検査方法の処理のあらゆる場面において、セキュリティ素子の損傷に対する配慮がされる。なぜならば、部分金属部(特に回折構造及び/又は反射構造、さらに好ましくはキネグラム(登録商標))の検査すべき特性が著しく損なわれる可能性があるためである。同様のことは、例えばセキュリティスタンプやブラインドエンボス加工などのセキュリティ素子の機械的修正についても妥当する。但し、対応アルゴリズム(具体的には、形状認識アルゴリズム、より好ましくは特徴マッチング)において、対比されるべき1つ以上の画像の歪みを考慮に入れてそれらを補償することが可能である。また、許容範囲内の予想画像誤差を考慮に入れるために、補償係数を当該アルゴリズムに取り込むことができる。なお、予想画像誤差としては、例えば、アルゴリズムを用いてデータセットや画像の評価中における、塗布処理や経年によるセキュリティ文書の変更に起因するセキュリティ素子幅の変動がある。したがって、製造中及び使用中の歪みを補償するために、10%未満、好ましくは5%未満の補償が想定され得る。
【0211】
原則として、検査されるセキュリティ素子1a,1bの1つ以上のセキュリティ構造10のそれぞれにおいて、許容レベルが事前に決定されていると有利である。なお、許容レベルとは、セキュリティ文書1の真正性検査の結果を許可又は不許可に分けるものである。
【0212】
セキュリティ文書1の真正性検査に用いられるより好適な方法は、図5a~5cに示すように、セキュリティ素子1aを備える。セキュリティ素子1aの画像要素7aは、観察者から見たとき(即ち、読取装置2の検出方向からみたとき)、部分金属部210と完全に見当合わせがされて配置されたカラー印刷209(より好ましくは、追加のUV蛍光印刷)によりデザインされる。図5aに例示する如く、当該部分金属部には、表面全体に亘り、第1スペクトル帯域(即ちVIS帯域)において少なくとも部分的に入射光を読取装置2のカメラ又はセンサ25に向けて回折する回折及び/又は反射及び/又は散乱構造が成形されている。なお、図5bに例示する如く、当該構造は、第2スペクトル帯域(IR帯域)の赤外線は読取装置2のカメラに向かって回折しない、又は僅かにしか回折しない。
【0213】
読取装置2のセンサ25(具体的にはカメラ、好ましくは検出器)によって記録された記録又はデータセットは、セキュリティ素子1のカラープリント209を含むカラー部分領域7aを示す。当該カラープリント209は、部分金属部210を含む部分領域7aの全表面又は一部に亘って適用される。しかし、第2スペクトル帯域(特にIR帯域)では、部分領域7aは、多層セキュリティ素子1aの基板のより明るい背景領域7bの前面で、暗く現れる。また、カラープリント209のインク(好ましくは赤インク)は、少なくとも、UV照射下で蛍光を発する少なくとも1つの顔料(好ましくは、黄色に発行する顔料)を含む。この結果、図5cに例示する如く、カラープリント209を含む部分領域7aは、第3スペクトル帯域(好ましくは、UV帯域)において、着色された(具体的には、黄色の)光を出射する。
【0214】
セキュリティ素子1aの真正性検査は、VIS帯域に割り当てられた第1データセット、IR帯域に割り当てられた第2データセット、UV帯域に割り当てられた第3データセット、及び1つ以上のスペクトル帯域に割り当てられた更なるデータセットの、ソフトウェア(具体的には、アルゴリズムを含むソフトウェア)を用いた比較からなる。但し、データセットは、相互間の位置、形状及び要求される色、見当精度、並びに/又は強度変調の精度に関連して、少なくとも3つのスペクトル帯域に割り当てられる。妥当性検査の間、第1、第2及び第3データセットとテンプレート(具体的には、テンプレートデータセット、より好ましくは、データベースを有するテンプレートデータセット)との比較が行われる。また、真正性検査では、セキュリティ素子1aの固有の又は内在的な特性が検査される。真正性検査の間には、データセットと基準画像(即ち、テンプレート)との正確な比較は行われないことが好ましいが、固有の特性の検出は行われる。これにより、例えば、製造公差に起因する偏差が真正性検査に決定的な影響を与えることはなくなる。
【0215】
したがって、例えばセキュリティ文書1のカラー画像要素7aが、英数字、特に“K”として図5aに具体化され得る。画像要素7aには、観察方向又は読取装置2のセンサの方向から見て、部分金属部210、特に、金属反射層が背後に見当精度良く設けられたカラープリント209(好ましくはUV蛍光プリント)が設けられる。また、画像要素7aにおいて、セキュリティ素子1aへの入射光を回折及び/又は散乱する、回折及び/又はマクロ及び/又は散乱構造が表面の一部又は表面全体に対して成形される。好適な実施形態において、この回折及び/又はマクロな構造210は、正弦波、長方形及び/又は非対象のレリーフを持つ1つ以上の一次元若しくは二次元の格子構造、及び/又はマット構造から選択される構造として設計される。
【0216】
有利には、セキュリティ素子1aは1つ以上の複製層を含む。当該複製層は、光学可変要素として、その表面全体又は該表面の一部に亘って形成される1つ以上の表面レリーフを含む。光学可変要素は、具体的には、ホログラム、キネグラム(登録商標)、及び/又はトラストシール(登録商標)、好ましくは正弦波回折格子、非対称レリーフ構造、ブレーズド格子、好ましくは等方性又は異方性マット構造、光回折及び/又は光屈折及び/又は集光する微細構造若しくはナノ構造、バイナリ若しくは連続フレネルレンズ、マイクロプリズム構造、マイクロレンズ構造、あるいはこれらの組み合わせからなる構造から選択される。
【0217】
より好適な実施形態では、カラープリント209(特に、部分透明プリント、より好ましくはUV蛍光プリント)の背後に配置されたセキュリティ素子1aの層の上に、マット構造が少なくとも部分的に形成される。セキュリティ素子1aの検査の間、当該マット構造が入射光を散乱させ、散乱光の大部分が読取装置2のセンサに入射するようになっている。カラープリント209のインク、特に赤色インクは、ここでは入射光に対するフィルタ(特にスペクトルフィルタ)として作用する。この結果、観察者及び/又は読取装置2から見て散乱光が赤く現れると共に、対応して着色された英数字形状(具体的には、画像要素7aの形状により「K」)として現れる。また、図5aに例示する如く、部分領域7aにデザインされたプリント209に対し、水平・垂直方向で許容誤差±0.5mm(特に、±0.2mm、好ましくは、0.2mm未満から-0.2mmを超える範囲)で、異なる回折光学構造を線形状、平面状、あるいは英数字の形式、線及び/又はテキストとして画像要素7aに成形することができる。なお、図5aに示す例では、好ましくは、1mm当たり2000本を越える数の線を有し、もはや光が読取装置2のカメラに向かって回折することはないため、対応する領域又は対応する部分領域は暗くなる。図5a,5b,5cでは、更なるプリント209を有する基板は示されていない。
【0218】
図5bは、IR帯域の放射線の照射下における部分領域7aを示す。部分金属部210(即ち、金属領域)は、背景領域7bよりも明るい基板の部分領域に対して暗く現れる。マット構造のデザイン及び読取装置の照明配置に応じ、マット領域も照射することができる。蛍光染料をプリント209のインクに添加すると、UV帯域の照射の下で画像要素7aが所定の色(特に黄色)に光る。
【0219】
有利な検査方法では、ソフトウェア(特にアルゴリズムを含むソフトウェア)により、少なくとも3つの記録(即ち、VIS帯域、IR帯域、及びUV帯域からの画像又はデータセット)が互いに相関する。真正性検査は、個別の画像毎(即ち、個別のデータセット毎)に実行される。なお、検査は、真正性検査のためのこれら異なるデータセット間の特徴に内在する関係性を用いるものが有利である。
【0220】
より好適な検査方法では、セキュリティ文書1の第1領域3(好ましくは窓要素、より好ましくは窓構造)の透過特性及び/又は反射特性が、1つ以上のスペクトル帯域において、当該文書の表側6a及び裏側6bから、読取装置2によって、検出される。そのため、それぞれのスペクトル帯域に割り当てられた1つ以上のデータセットが生成される。当該データセットは、それぞれ、1つ以上のセキュリティ素子1aの表側6aで検出可能な当該表側6aに関する第1情報項目と、1つ以上のセキュリティ素子1aの裏側6bで検出可能な当該裏側6bに関する第2情報項目とを含む。セキュリティ文書1の真正性検査は、ソフトウェア(特にアルゴリズムを含むソフトウェア)によるデータセットの分析、及び/又は、分析結果(具体的には閾値画像)とテンプレート(具体的には閾値画像テンプレート、より好ましくはデータベース内の閾値画像テンプレート)との比較を利用しながら実行される。また、セキュリティ文書1の裏側6bの全面又は一部に亘り設計された回折光学構造及び/又はインクは、真正性検査の意味の範囲内において、当該セキュリティ文書1の表側6aの全面又は一部に亘り設計されたインク及び/又は構造から有利に異なる、あるいは、当該構造及び/又はインクは、一方の面(即ち、表側6a又は裏側6b)にのみ現れ、更なる検査用の特徴として利用される。表側6aのインクの配置及び/又は表側6aの構造は、裏側6bのインクの配置及び/又は表側6aの構造に対して見当精度良く(特に、見当公差が±0.5mm、具体的には±0.2mm、好ましくは0.2mm未満かつ-0.2mmを超える)設けられる。さらに、カラー及び/又は構造領域の位置、色、インク塗布領域、反射、方向、サイズ、形状、電磁的特性、個人化、及び被服範囲、から選択される1つ以上の特性が、データセットの提供を受けたソフトウェアにより認識され、真正性検査のために基準データセット(即ち、テンプレート)と比較される。正確な見当精度を持つ構造が特に好ましい。したがって、例えば、部分金属化セキュリティ構造は表側を金属とし、当該金属領域と同一箇所の背後に、裏側から見て正確に位置決めして(即ち、公差ゼロで)カラー部を設けることができる。
【0221】
さらに好適な方法では、重ね合わせた1つ以上の第1領域(セキュリティ文書1の1つ以上のセキュリティ素子1aの1つ以上のセキュリティ構造10を部分的又は完全に備える領域)が、1つ以上のスペクトル帯域(即ち、VIS帯域、IR帯域及びUV帯域から選択される帯域)において読取装置2によって読み取られる。また、1つ以上のデータセット5が、それぞれスペクトル帯域に割り当てられる。ソフトウェア、特に1つ以上のアルゴリズム(具体的には、テンプレートマッチング、境界枠、A-KAZE)を有するソフトウェアは、データセットの評価を通してセキュリティ文書1を、種類、又はモデル(好ましくは、データベースに含まれる種類又は好み)に割り当てる。データベースは、セキュリティ構造10のカラープリント209及び/又は部分金属部210の、種類、デザイン、位置、見当精度、見当位置、カラー、インク塗布領域、反射、方向、サイズ、形状、電磁的特性、個人化、及び被服範囲、から選択される1つ以上の特性を提供する。部分金属部は、具体的にはキネグラム(登録商標)としてデザインできる。また、分析やデータセットと基準データセット(特にテンプレート、好ましくはデータベースに記憶されたテンプレート)との比較を行う際に、型番に基づく照明のバラツキ、センサ状態、センサ設定、あるいはカメラ状態やセンサ状態、の影響を考慮するため、セキュリティ文書1の真正性検査における割当基準は、読取装置2や検査装置の型番、モデル及び/又は製造業者に応じて作成される。さらに、部分金属部210の製造時及び/又は部分金属部の塗布時や部分金属部210をセキュリティ文書1に埋め込む際の歪みにより発生する、プラスチック製文書(特にポリカーボネート製文書)の製造公差も、セキュリティ文書1の真正性検査のフレームワークにおいて考慮される。
【0222】
さらに好適な実施形態において、セキュリティ文書1の第1割当ては、セキュリティ文書1自身に含まれる情報(例えば、機械読取領域におけるバーコードや、チップ等の電子部品)に基づいて実行される。当該情報により、さらなる分析とデータベースとの比較が効果的になる。
【0223】
真正性検査のためのさらに好適な検査方法では、セキュリティ文書1の、HRI層を持つレリーフ構造を有する領域が検査される。HRI層は、観察者から見て、当該構造領域の背面又は前面に配置される。また、HRI層にはカラー層が設けられても良い。当該カラー層に含まれるカラーデザインは、マット構造を持つ領域に対し、見当精度±0.5mmで(特に±0.2mmで、好ましくは0.2mm未満かつ-0.2mmを超える)印刷される。当該マット構造は構造領域に成形され、その間隙(即ち、カラーデザインもマット構造も存在しない領域)には、HRI層は存在しない。反射層が形成されない場合も、レリーフ構造を成形するマット構造(例えば複製層)を設けても良い。但し、反射層がないため、当該マット構造は認知不能な程度又は光学的に検出不能な程度にのみ存在し得る。また、カラーデザインのインクはVIS帯域でのみ観察可能、及び/又は、IR帯域でのみ検出可能である。なお、カラーデザインのインクは、UV蛍光顔料を用いて部分的に又は完全にデザインすることができる。この結果、UV帯域で蛍光を発する部分領域の位置は、VIS帯域で視認可能な部分領域、及び、IR帯域やVIS帯域で検出可能なマット構造に対して、完全に一致して配置される。
【0224】
図6aは、VIS帯域の照射下における放射線状のデザイン要素又はセキュリティ素子1aであって、中央領域70eにマット構造を有するものを示す。当該マット構造は、VIS帯域の照明及びIR帯域の照明下で、入射光を読取装置2のカメラに向けて散乱させる。マット構造の散乱効果は、HRI層で設定されたデザインエレメントの中央領域70eでのみ観察可能である。この結果、VIS帯域での観察に比して、マット構造への遷移時に、明確に認識できるコントラストの変化又はカメラで評価可能なコントラストの変化を検出することができる。
【0225】
図6bは、IR帯域の照射下における放射線状のデザイン要素を示す。当該カラーデザインのインクは、IR帯域の照射下において吸収効果を一切有しないものが選択される。この結果、図6bでは、マット構造でデザインされたデザイン要素の部分領域70eとHRI層のみが示される。なお、デザイン要素の部分領域は、図6aの中央領域70eと正確に一致していなければならない。
【0226】
有利には、UV蛍光顔料をカラーワニス又はデザイン要素のインクと混ぜ合わせても良い。この結果、図6cに示すように、UV帯域からの照射下においてデザイン要素の全体領域70fが発光する。
【0227】
したがって、デザイン要素の異なる部分領域は、3つの異なる照射の下で視認することができる。但し、当該異なる部分領域は、お互いに見当精度良く配置されていなければならない。これら部分領域の特性はセキュリティ文書1の真正性検査のフレームワークにおいてソフトウェアを用いて検査される。なお、デザイン要素のカラー印刷における、マット構造を含む当該デザイン要素の中央領域に対する許容印刷公差は、上記した固有又は内在的な、あるいは自己参照的な特性の検査とは関連性がない。
【0228】
図6dはセキュリティ文書1、特に、セキュリティ素子1aを備えるパスポートのデータページを示す。当該セキュリティ素子1aは、セキュリティ文書1の表側6aの部分領域に成形された放射線状のデザイン要素600である。少なくともセキュリティ素子1aの周辺領域7bにはHRI層が設けられていない。
【0229】
図7aはさらに有利な実施例を示す。本例では、セキュリティ文書1の表側6aの改竄に対する保護を目的として、キネグラム(登録商標)TKO(Transparent KINEGRAM Overlay)を有する透明層が用いられている。表側6aには、読取装置2により読取可能で、セキュリティ文書1の真正性検査や妥当性検査に用いられるデータが含まれる。HRI層は反射層として用いられる。表側6aのうちの構造化された背景領域700aにおいて、好ましくは1mm辺り2000本以上の線を有する格子構造が表面全体又は表面の一部に成形されている。よって、第1スペクトル帯域(具体的には、VIS帯域)及び第2スペクトル帯域(具体的には、IR帯域)の照明の場合、回折次数からの光は読取装置2のセンサ(カメラ)へと反射されない。格子構造は、その下に、表側6aから観察されるHRI構造を有する。格子構造は、波長に依拠してどの程度の光がHRI層を通過できるかという点に影響するため、HRI層を持つ格子構造はフィルタ効果を持つ。なお、HRI層を通過した光は、セキュリティ文書1の表側によって、さらに再反射又は再散乱する。
【0230】
より好ましくは、構造化された背景領域700aにおいて、その表面の一部に部分金属部が設けられる。当該部分金属部は1つ以上の英数字であることが好ましく、ここでは、3つの文字“UTO”の形状のオブジェクト9bとされる。オブジェクト9bの位置は、構造化された背景領域700aの1つ以上のエッジに対して正確である。用途の違いから、基板に対するTKOの許容差は、最大で±2mm、特に最大±0.8mm、好ましくは最大±0.2mmとされる。
【0231】
特に好ましくは、セキュリティ文書1は、いくつかの領域において読取装置2により検査される。具体的には、所定の事前選択、又は検査される領域の読取装置2による事前選択が行われる。さらに好ましくは、検査される領域は、データセット、具体的にはアルゴリズムによって選択される。
【0232】
また、構造化された背景領域700aと、1つ以上の構造又はミラー領域を有するTKOの背景領域700bとのコントラスト差は、セキュリティ文書1の照明(具体的には、IR帯域からの照明)の下で観察可能である。セキュリティ文書1の表面に亘るコントラスト差の形成は、テンプレート(具体的にはテンプレートデータセット、より好ましくはデータベースに記憶されたテンプレートデータセット)と比較されてセキュリティ文書1の真正性が判断される。
【0233】
さらに好適な方法では、図7cに示すように、IR帯域の照明によってオブジェクト9bの領域(連続した3つの文字のある領域)における部分金属部の位置を判断し、これを真正性検査のさらなる検査ステップとして用いても良い。セキュリティ文書1の固有又は内在的な特性としての部分金属部は、1つ以上のセキュリティ素子1aやデザイン要素のエッジ及び/又はセキュリティ文書1のエッジに対して完全な見当合わせがされる。
【0234】
好適には、さらに別のスペクトル帯域、好ましくはVIS帯域において、TKOの構造化された背景領域700aにおける格子構造の回折領域と、当該TKOの残余の背景領域との間で、色のコントラスト及び/又は明るさのコントラストが生じる。なお、図7aに示すように、二つの領域はコントラストエッジ700で区別される。かかるコントラストの違いは、入射光の1つ以上のスペクトル帯域における特定の波長帯域や特定の周波数帯域が、それぞれ別々に散乱及び/又は反射及び/又は透過することに起因する、各回折構造のフィルタ効果によるものである。
【0235】
より好ましくは、セキュリティ文書は、構造化された背景領域700a及び/又は残余の背景領域700bにおいて、印刷(具体的にはUV蛍光印刷)を含む。なお、当該印刷は、セキュリティ文書1のフィルム層及び/又は基板に施される。
【0236】
図7aはVIS照明下でのセキュリティ文書1を、図7bはUV照明下でのセキュリティ文書1を、図7cはIR照明下でのセキュリティ文書を示す。
【0237】
オブジェクト9bの領域内においてUV帯域で検出されるUVプリント(図7bに示す、連続する3つの文字“UTO”の形状)は、オブジェクト9bの領域内においてIR帯域で検出される部分金属部(図7cに示す、同様に連続する3つの文字“UTO”の形状)及び表面に構造化されたRICSの輪郭に対して、許容誤差±0.5mmの(好ましくは±0.2mmの、より好ましくは0.2mm未満かつ-0.2を超える)見当精度で設けられる。なお、RICS(回転による色の変化(Rotation Induced Color Shift))構造は、特に背後にHRI層が設けられたゼロ次回折構造、具体的には、可視光波長よりも短い(具体的には可視光の波長の半分の)間隔のゼロ次回折格子を有する。RICS構造は、特定の波長帯域の光を、当該RICS構造の向きに応じてミラー反射する。RICS構造は、IR帯域の照明下では、観察角度に応じてRICS効果のない構造とのコントラストも実現する。また、IR帯域の照明下で検出可能な少なくとも2つの画像要素は、構造化された背景領域700a及び/又は残余の背景領域700bの位置及び/又は形状について、VIS帯域の照明下で検出可能な2つのオブジェクト9a,9bと比較されると共に、その比較結果は、セキュリティ文書1の真実性検査のフレームワークの中で更なる検査ステップに適用される。
【0238】
セキュリティ素子1a及び検査方法に係るさらに好適な実施形態において、セキュリティ素子1aは、QRコードとして、以下のステップを用いて設計・検査される。
【0239】
第1のステップにおいて、回折/反射レリーフ構造(好ましくは、キネグラム(登録商標))、及び/又はゼロ次回折構造、及び/又はキネグラムゼロ・ゼロ(Kinegram zero.zero)が、部分金属層8aを有する第1セキュリティ構造10として実現される。図8aにおいて、部分金属部214又はキネグラム(登録商標)が閉じたロゼットパターンとして例示される。金属層8aの材料は、特に、第1セキュリティ構造10aの画像要素7aの領域に設けられ、画像要素7aを囲む背景領域7bには設けられない。
【0240】
第2のステップでは、(可視帯域又はVIS帯域において視認されない)UV蛍光インクからなるプリント213が、図8aに示す第1セキュリティ素子上に重ね刷りされる。プリント213は、画像要素7aの領域において、QRコードの形状で第2セキュリティ構造10bとして成形される。プリント213は、第1情報項目であって画像要素7aの影部分(好ましくは、UV蛍光プリント213)を構成する。カラー層8bの材料は、特に、第1セキュリティ構造10aの画像要素7aの領域に設けられ、画像要素7aを囲む背景領域7bには設けられない。
【0241】
第3のステップにおいて、プリント213は、第1のステップで実行された部分金属部214に基づく更なる部分金属部214bに対し、特にエッチングレジストマスクとして作用する。この結果、部分金属部214の領域のうちプリント213で重ね刷りされない領域が非金属化される。図8cは、好ましくは第1スペクトル帯域(より好ましくは、IR帯域)の赤外線で照らされた、非金属化処理後に残った部分金属部214bのIR画像を示す。第1データセットは、QRコードの部分画像として、少なくともIR画像を含む。なお、当該部分画像は、もはや第1情報項目の全てを有しないが、第2セキュリティ構造10bの完全な第1情報を構成する2つの部分のうちの第1の部分を有する。
【0242】
図8dは、特に第2スペクトル帯域(より好ましくは、UV帯域)の紫外線が照射されたUV蛍光プリント213の領域におけるUV画像を示す。当該UV画像は、プリント213のうち部分金属部214bで覆われていない部分に設けられる。第2データセットは、QRコードの部分画像として、少なくともUV画像を含む。なお、当該部分画像は、もはや第情報項目の全てを有しないが、第2セキュリティ構造10bの完全な第1情報を構成する2つの部分のうちの第2の部分を有する。
【0243】
アルゴリズムを有するソフトウェアによりもたらされる、完全なQRコードを形成する全体画像を図8eに示す。当該全体画像は、第1データセット及び第2データセットの完全な第1情報項目を構成する2つの部分のうちの、第1の部分及び第2の部分を組み合わせてなるデータセットである。
【0244】
より好ましい実施形態では、第1セキュリティ構造10a及び第2セキュリティ構造10bは、意図的に見当合わせされずに配置される。むしろ、第1セキュリティ構造10a及び第2セキュリティ構造10bは、セキュリティ文書1において間隔を空けた領域に配置されるのが好ましい。また、対応するデータセットは、ソフトウェア(好ましくは、アルゴリズムを有するソフトウェア)によって組み合わされた全体画像を形成する。
【0245】
読取装置2(特に、文書検査装置)による、第1スペクトル帯域(具体的には、IR帯域)のみ、第2スペクトル帯域(具体的には、UV帯域)のみ、第3スペクトル帯域(具体的には、VIS帯域)のみ、又は第4スペクトル帯域のみでのQRコードの記録は、第2セキュリティ構造10bに完全なQRコードとして含まれている第1情報項目全体のうちの一部のみを含む。このため、当該QRコードからは完全な第1情報項目を取得することはできない。しかしながら、第1スペクトル帯域(具体的には、IR帯域)において生成される第1データセットと、第2スペクトル帯域(具体的には、UV帯域)において生成される第2データセットと、の組合せにより、アルゴリズムを有するソフトウェアを用いることで、第2セキュリティ構造10bにQRコードとして含まれる、完全な第1情報項目を再構築することが可能となる。
【0246】
画像処理の際には、UV画像をフィルタ処理することが好ましい。この際、適当な黄色画素又は画像点(具体的には、画像点データ)のみが考慮され、当該UV画像からアルゴリズムを有するソフトウェアによって生成されるUV二値化画像において黒く表現される。なお、かかるアルゴリズムとしては、好ましくは画像認識アルゴリズム及びパターン認識アルゴリズムが挙げられる。さらに好ましくは、画像処理の際に、IR照射下で記録されたIR画像をフィルタ処理することが好ましい。この際、暗く表示される部分金属部214bの金属領域が考慮され、これらは、当該IR画像からソフトウェアによって生成されるIR二値化画像において黒く表現される。上記UV二値化画像とIR二値化画像とを見当精度よく重ね合わせることにより、完全なQRコードが更なる二値化画像として開示される。この結果得られるQRコードから、完全な第1情報項目を読み取ることが可能になる。
【0247】
セキュリティ素子1aの真正性に関するさらなる検査ステップとして、UV二値化画像とIR二値化画像との見当精度を検査することができる。UV二値化画像及びIR二値化画像からなるQRコードの領域において、遷移の公差はほとんどない、好ましくは、公差がない。
【0248】
図9に、セキュリティ素子1aの好適な実施形態を示す。当該実施形態は、更なる個人化及び/又は個別の特徴として、部分金属部216における1つ以上の平面部分領域70において、レーザ(好ましくはレーザダイオード)を用いて任意の形状に成形された個別マーク(好ましくはアルファベット文字)を含む。特に好適な実施形態では、部分金属部216を生成するために、カラープリント215がカラーエッチングレジストワニスとして作用する。金属層がレーザによって除去されると、その下に設けられたカラー層が再度出現する。読取装置2による読取処理中、部分領域70b内のカラープリント215(特に好ましくはUV蛍光UVプリント)は、第1スペクトル帯域(好ましくは、IR帯域)及び/又は第2スペクトル帯域(好ましくは、UV帯域)及び/又は第3スペクトル帯域(特に好ましくは、VIS帯域)において検出可能である。
【0249】
本方法のより好適な実施形態は、第1スペクトル帯域(好ましくは、IR帯域)及び/又は第2スペクトル帯域(好ましくは、UV帯域)において読取装置2によって検出されたセキュリティ素子1aと、データセット(具体的には、第1データセット)として検出されたIR画像、及び/又はデータセット(具体的には、第2データセット)として検出されたUV画像からアルゴリズム(具体的には、テンプレートマッチングアルゴリズム)を有するソフトウェアによって生成された閾値画像とを、テンプレート(好ましくは、データベースを有するテンプレート)と比較する処理を有し、これにより真正性の検査がなされる。また、検出されたセキュリティ素子1aの真正性を検査するために、第1スペクトル帯域及び第2スペクトル帯域において、それぞれ部分金属部216の形状を画像化する第1データセット及び第2データセットは、直接対応するテンプレート(好ましくは、データベースに含まれるテンプレート)と比較されても良い。
【0250】
また、セキュリティ素子1aの部分金属部216の平面部分領域70は、レーザによって読取可能コード(好ましくは、機械による読み取りが可能なコード)として成形される。平面部分領域70は、記憶されたコード(具体的には、データベースに記憶されたコード、より具体的にはかかるコードに対する命令)との比較においてセキュリティ素子1aの真正性検査に利用される。
【0251】
また、さらに好適な方法では、セキュリティ素子1aの部分金属部216の部分領域70cにおいてレーザによって露光されカラープリント215(具体的には、UVプリント、より好ましくは、UV蛍光UVプリント)には、カラーパターンが設けられる。当該カラーパターンは、部分領域70のエッジと完全に一致して、特に見当通りに配置されなければならない。また、セキュリティ素子1aの真正性検査のために、カラーパターンは、記憶されたカラーパターン(具体的には、当該カラーパターンを画像化したデータセット、より好ましくは、データベースに含まれた当該カラーパターを画像化したデータセット)と比較される。
【0252】
さらに好適な方法では、好ましくはレーザによって(特にレーザダイオードによって)セキュリティ素子1aの部分金属部216の部分領域70の形状に成形された個別マークは、アルファベット文字からなるのが好ましい。個別マークは、読取装置2により、1つ以上のスペクトル帯域において検出される。また、生成されてスペクトル帯域に割り当てられたデータセットが、自己学習アルゴリズム(具体的には、教師あり又は教師なし自己学習アルゴリズム、より好ましくは、監視又は非監視の自己学習型画像認識アルゴリズム及び/又はパターン認識アルゴリズム)によって分析されることにより、真正性のチェックが行われても良い。
【符号の説明】
【0253】
1 セキュリティ文書
1a,1b セキュリティ素子
10 セキュリティ構造
10a 第1セキュリティ構造
10b 第2セキュリティ構造
11 文書本体
12 装飾層
13 接着層
14 保護層
15 セキュリティ文書のセキュリティ構造
101,102,103,104,105,106 ステップ
2 読取装置
21 センサ機器
22 分析機器
23 出力機器
24 放射線源
25 センサ
26 データベース
200 中心点間距離
201,203,205,207,207b、209,213,215 プリント
201a,203a プリントの境界枠
201b,203b プリントの境界枠の中心点
202,204,206,208,210,214,214b,216 部分金属部
202a,204a 部分金属部の境界枠
202b,204b 部分金属部の境界枠の中心点
3 第1領域
6a 表側
6b 裏側
600 デザインエレメント
7a 画像要素
7b 背景領域
70 部分
70a,70d 第1部分領域
70b,70e 第2部分領域
70c,70f 第3部分領域
700 コントラストエッジ
700a 構造化された背景領域
700b 構造化されていない部分領域
8a 金属層
8b カラー層
9a 第1オブジェクト
9b 第2オブジェクト
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9