(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/578 20210101AFI20230426BHJP
【FI】
H01M50/578
(21)【出願番号】P 2020198301
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 伸佳
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-087478(JP,A)
【文献】特開2015-220115(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2010-0020071(KR,A)
【文献】中国実用新案第2881974(CN,Y)
【文献】中国実用新案第210325874(CN,U)
【文献】特開平10-241654(JP,A)
【文献】特開2011-150966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/578
H01M 10/04-39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を収容する外装体および前記外装体を封口する封口板を含む電池ケースと、
前記封口板に取付けられた端子部と、
前記端子部に接続され、前記電極体側に開口部を有する導電部材と、
前記導電部材の前記開口部を封止する変形板と、
前記変形板と接合される集電体とを備え、
前記電極体は、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記端子部と電気的に接続され、
前記電池ケース内の圧力が所定値以上となったときに、前記変形板が変形することに伴い、前記電極体と前記端子部との間の電気的な接続が切断され、
前記変形板は、前記封口板側の第1表面と、前記電極体側の第2表面とを有し、前記変形板はさらに、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部を有し、
前記変形板の前記第1表面上において、前記厚肉部よりも外周側であり、かつ、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい領域に略環状の溝が形成され
、
前記溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、略V字状の断面形状を有し、
前記溝の開口を閉じる方向の応力が前記変形板に生じた状態で前記変形板が前記集電体に接合される、電池。
【請求項2】
電極体と、
前記電極体を収容する外装体および前記外装体を封口する封口板を含む電池ケースと、
前記封口板に取付けられた端子部と、
前記端子部に接続され、前記電極体側に開口部を有する導電部材と、
前記導電部材の前記開口部を封止する変形板と、
前記変形板と接合される集電体とを備え、
前記電極体は、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記端子部と電気的に接続され、
前記電池ケース内の圧力が所定値以上となったときに、前記変形板が変形することに伴い、前記電極体と前記端子部との間の電気的な接続が切断され、
前記変形板は、前記封口板側の第1表面と、前記電極体側の第2表面とを有し、
前記変形板の前記第2表面上において、前記変形板の中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい領域に略環状の溝が形成され
、
前記溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、略V字状の断面形状を有し、
前記溝の開口を閉じる方向の応力が前記変形板に生じた状態で前記変形板が前記集電体に接合される、電池。
【請求項3】
電極体と、
前記電極体を収容する外装体および前記外装体を封口する封口板を含む電池ケースと、
前記封口板に取付けられた端子部と、
前記端子部に接続され、前記電極体側に開口部を有する導電部材と、
前記導電部材の前記開口部を封止する変形板と、
前記変形板と接合される集電体とを備え、
前記電極体は、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記端子部と電気的に接続され、
前記電池ケース内の圧力が所定値以上となったときに、前記変形板が変形することに伴い、前記電極体と前記端子部との間の電気的な接続が切断され、
前記変形板は、前記封口板側の第1表面と、前記電極体側の第2表面とを有し、前記変形板はさらに、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部を有し、
前記変形板の前記第1表面上において、前記厚肉部よりも外周側であり、かつ、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい領域に略環状の溝が形成され、前記溝の断面全体が前記領域内にあり、
前記溝の開口を閉じる方向の応力が前記変形板に生じた状態で前記変形板が前記集電体に接合される、電池。
【請求項4】
前記溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、前記溝が形成された位置の前記変形板の全厚の1/3以上1/2以下の深さを有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
電極体と、
前記電極体を収容する外装体および前記外装体を封口する封口板を含む電池ケースと、
前記封口板に取付けられた端子部と、
前記端子部に接続され、前記電極体側に開口部を有する導電部材と、
前記導電部材の前記開口部を封止する変形板と、
前記変形板と接合される集電体とを備え、
前記電極体は、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記端子部と電気的に接続され、
前記電池ケース内の圧力が所定値以上となったときに、前記変形板が変形することに伴い、前記電極体と前記端子部との間の電気的な接続が切断され、
前記変形板は、前記封口板側の第1表面と、前記電極体側の第2表面とを有し、前記変形板はさらに、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部を有し、
前記変形板の前記第1表面上において、前記厚肉部よりも外周側であり、かつ、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい第1領域に略環状の第1溝が形成され、
前記変形板の前記第2表面上において、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい第2領域に略環状の第2溝が形成され、
前記第1溝および前記第2溝の開口を閉じる方向の応力が前記変形板に生じた状態で前記変形板が前記集電体に接合さ
れ、
前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、前記第1溝の開口の幅は前記第2溝の開口の幅よりも狭い、電池。
【請求項6】
前記第1溝および前記第2溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する
、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、前記第1溝の深さは前記第2溝の深さよりも小さい、
請求項5または請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記第1溝および前記第2溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、略V字状の断面形状を有する、請求項5から
請求項7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記変形板は、真円または正方形の平面形状を有する、請求項1から
請求項8のいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
電極体と集電体とを接続する工程と、
端子部および導電部材を電池ケースの封口板に取り付ける工程と、
第1表面および第2表面を有し、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部が形成された変形板を準備する工程と、
前記変形板の前記第1表面上において、前記厚肉部よりも外周側であり、かつ、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい領域
に略V字状の断面形状を有する略環状の溝を形成する工程と、
前記変形板の前記第1表面を前記封口板側に向け、前記変形板の前記第2表面を前記電極体側に向けた状態で、前記封口板に取付けられた前記導電部材の開口部を前記変形板により封止する工程と、
前記溝の開口を閉じる方向に前記変形板を変形させた状態で前記変形板と前記集電体とを接合することにより、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記電極体と前記端子部と電気的に接続する工程と、
前記電極体を外装体に収容し、前記外装体を前記封口板により封口する工程とを備えた、電池の製造方法。
【請求項11】
電極体と集電体とを接続する工程と、
端子部および導電部材を電池ケースの封口板に取り付ける工程と、
第1表面および第2表面を有し、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部が形成された変形板を準備する工程と、
前記変形板の前記第2表面上において、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい領域
に略V字状の断面形状を有する略環状の溝を形成する工程と、
前記変形板の前記第1表面を前記封口板側に向け、前記変形板の前記第2表面を前記電極体側に向けた状態で、前記封口板に取付けられた前記導電部材の開口部を前記変形板により封止する工程と、
前記溝の開口を閉じる方向に前記変形板を変形させた状態で前記変形板と前記集電体とを接合することにより、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記電極体と前記端子部と電気的に接続する工程と、
前記電極体を外装体に収容し、前記外装体を前記封口板により封口する工程とを備えた、電池の製造方法。
【請求項12】
電極体と集電体とを接続する工程と、
端子部および導電部材を電池ケースの封口板に取り付ける工程と、
第1表面および第2表面を有し、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部が形成された変形板を準備する工程と、
前記変形板の前記第1表面上において、前記厚肉部よりも外周側であり、かつ、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい領域に略環状の溝を前記溝の断面全体が前記領域内に位置するように形成する工程と、
前記変形板の前記第1表面を前記封口板側に向け、前記変形板の前記第2表面を前記電極体側に向けた状態で、前記封口板に取付けられた前記導電部材の開口部を前記変形板により封止する工程と、
前記溝の開口を閉じる方向に前記変形板を変形させた状態で前記変形板と前記集電体とを接合することにより、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記電極体と前記端子部と電気的に接続する工程と、
前記電極体を外装体に収容し、前記外装体を前記封口板により封口する工程とを備えた、電池の製造方法。
【請求項13】
前記溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、前記溝が形成された位置の前記変形板の全厚の1/3以上1/2以下の深さを有する、
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項14】
電極体と集電体とを接続する工程と、
端子部および導電部材を電池ケースの封口板に取り付ける工程と、
第1表面および第2表面を有し、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部が形成された変形板を準備する工程と、
前記変形板の前記第1表面上において、前記厚肉部よりも外周側であり、かつ、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい第1領域に略環状の第1溝を形成する工程と、
前記変形板の前記第2表面上において、前記変形板の前記中心からの距離が前記中心から前記変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい第2領域に略環状の第2溝を形成する工程と、
前記変形板の前記第1表面を前記封口板側に向け、前記変形板の前記第2表面を前記電極体側に向けた状態で、前記封口板に取付けられた前記導電部材の開口部を前記変形板により封止する工程と、
前記第1溝および前記第2溝の開口を閉じる方向に前記変形板を変形させた状態で前記変形板と前記集電体とを接合することにより、前記集電体、前記変形板、および前記導電部材を介して前記電極体と前記端子部と電気的に接続する工程と、
前記電極体を外装体に収容し、前記外装体を前記封口板により封口する工程とを備
え、
前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、前記第1溝の開口の幅は前記第2溝の開口の幅よりも狭い、電池の製造方法。
【請求項15】
前記第1溝および前記第2溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する、請求項14に記載の電池の製造方法。
【請求項16】
前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、前記第1溝の深さは前記第2溝の深さよりも小さい、
請求項14または請求項15に記載の電池の製造方法。
【請求項17】
前記第1溝および前記第2溝は、前記変形板を前記集電体から切り離した状態で、略V字状の断面形状を有する、
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項18】
前記変形板は、真円または正方形の平面形状を有する、
請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池ケース内の圧力が過度に上昇したときに作動して導電経路を遮断することが可能な電流遮断機構を備えた電池が従来から知られている。このような構造は、たとえば特開2010-212034号公報(特許文献1)および特開2019-87478号公報(特許文献2)に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-212034号公報
【文献】特開2019-87478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流遮断機構においては、電池ケース内の圧力が上昇したときに、変形板の中央部が封口板側に移動するように変形することにより、集電体と変形板との溶接接合部が破断する。これにより、電極端子と電極体との間の導電経路が切断される。
【0005】
変形板の中央部が封口板から離れる方向に変形板を撓ませた状態で変形板と集電体とが溶接接合される。このとき、変形板の撓み変形量が安定しないと、集電体と変形板との溶接接合部の破断荷重が安定せず、結果として、電流遮断機構の作動が安定しない。従来の電流遮断機構は、この観点から必ずしも十分なものとはいえない。
【0006】
本技術の目的は、電流遮断機構の作動が安定した電池およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術に係る電池は、電極体と、電極体を収容する外装体および外装体を封口する封口板を含む電池ケースと、封口板に取付けられた端子部と、端子部に接続され、電極体側に開口部を有する導電部材と、導電部材の開口部を封止する変形板と、変形板と接合される集電体とを備える。電極体は、集電体、変形板、および導電部材を介して端子部と電気的に接続される。電池ケース内の圧力が所定値以上となったときに、変形板が変形することに伴い、電極体と端子部との間の電気的な接続が切断される。変形板は、封口板側の第1表面と、電極体側の第2表面とを有する。変形板はさらに、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部を有し得る。
【0008】
1つの局面では、変形板の第1表面上において、厚肉部よりも外周側であり、かつ、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい領域に略環状の溝が形成される。ここで、溝の開口を閉じる方向の応力が変形板に生じた状態で変形板が集電体に接合される。
【0009】
他の局面では、変形板の第2表面上において、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい領域に略環状の溝が形成される。ここで、溝の開口を閉じる方向の応力が変形板に生じた状態で変形板が集電体に接合される。
【0010】
さらに他の局面では、変形板の第1表面上において、厚肉部よりも外周側であり、かつ、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい第1領域に略環状の第1溝が形成され、変形板の第2表面上において、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい第2領域に略環状の第2溝が形成される。
【0011】
ここで、第1溝および第2溝の開口を閉じる方向の応力が変形板に生じた状態で変形板が集電体に接合され得る。また、第1溝および第2溝は、変形板を集電体から切り離した状態で、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有し得る。
【0012】
本技術に係る電池の製造方法は、電極体と集電体とを接続する工程と、端子部および導電部材を電池ケースの封口板に取り付ける工程と、第1表面および第2表面を有し、その中心を含む領域に、周囲と比較して相対的に厚みが大きい厚肉部が形成された変形板を準備する工程と、変形板に略環状の溝を形成する工程と、変形板の第1表面を封口板側に向け、変形板の第2表面を電極体側に向けた状態で、封口板に取付けられた導電部材の開口部を変形板により封止する工程と、溝の開口を閉じる方向に変形板を変形させた状態で変形板と集電体とを接合することにより、集電体、変形板、および導電部材を介して電極体と端子部と電気的に接続する工程と、電極体を外装体に収容し、外装体を封口板により封口する工程とを備える。
【0013】
1つの局面では、変形板に略環状の溝を形成する工程は、変形板の第1表面上において、厚肉部よりも外周側であり、かつ、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい領域に略環状の溝を形成することを含む。
【0014】
他の局面では、変形板に略環状の溝を形成する工程は、変形板の第2表面上において、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい領域に略環状の溝を形成することを含む。
【0015】
さらに他の局面では、変形板に略環状の溝を形成する工程は、変形板の第1表面上において、厚肉部よりも外周側であり、かつ、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい第1領域に略環状の第1溝を形成することと、変形板の第2表面上において、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい第2領域に略環状の第2溝を形成することとを含む。
【0016】
さらに他の局面では、変形板に略環状の溝を形成する工程は、変形板の第1表面上において、厚肉部よりも外周側であり、かつ、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも小さい第1領域に、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する略環状の第1溝を形成することと、変形板の第2表面上において、変形板の中心からの距離が中心から変形板の外周縁までの距離の半分よりも大きい第2領域に、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する略環状の第2溝を形成することとを含む。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、電流遮断機構の作動が安定した電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】正極板および負極板からなる電極体を示す平面図である。
【
図6】電極体と正極集電部材および負極集電部材との接続構造を示す図である。
【
図7】封口板への正極集電部材および負極集電部材の取付構造を示す図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII断面図である。
【
図10】封口板と電極体とが接続された状態を示す図である。
【
図11】封口板と電極体とが接続された状態における正極集電部材周辺の拡大図である。
【
図18】変形板に形成される溝の形状の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0020】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0021】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0022】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0023】
図1は、角形二次電池1の斜視図である。
図2は、
図1におけるII-II断面図である。
【0024】
図1,
図2に示すように、角形二次電池1は、電池ケース100と、電極体200と、絶縁シート300と、正極端子400と、負極端子500と、正極集電部材600と、負極集電部材700と、電流遮断機構800と、カバー部材900とを含む。
【0025】
電池ケース100は、開口を有する有底角筒状の角形外装体110と、角形外装体110の開口を封口する封口板120とからなる。角形外装体110および封口板120は、それぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることが好ましい。
【0026】
封口板120には、電解液注液孔121が設けられる。電解液注液孔121から電池ケース100内に電解液が注液された後、電解液注液孔121は、封止部材122により封止される。封止部材122としては、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いることができる。
【0027】
封口板120には、ガス排出弁123が設けられる。ガス排出弁123は、電池ケース100内の圧力が所定値以上となった際に破断する。これにより、電池ケース100内のガスが電池ケース100外に排出される。
【0028】
電極体200は、電解液とともに電池ケース100内に収容されている。電極体200は、正極板と負極板がセパレータを介して積層されたものである。電極体200と角形外装体110の間には樹脂製の絶縁シート300が配置されている。
【0029】
電極体200の封口板120側の端部には、正極タブ210Aおよび負極タブ210Bが設けられている。
【0030】
正極タブ210Aと正極端子400とは、正極集電部材600を介して電気的に接続されている。正極集電部材600は、第1正極集電体610および第2正極集電体620を含む。なお、正極集電部材600は、1つの部品から構成されてもよい。正極集電部材600は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることがより好ましい。
【0031】
負極タブ210Bと負極端子500とは、負極集電部材700を介して電気的に接続されている。負極集電部材700は、第1負極集電体710および第2負極集電体720を含む。なお、負極集電部材700は、1つの部品から構成されてもよい。負極集電部材700は、金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。
【0032】
正極端子400は、樹脂製の外部側絶縁部材410を介して封口板120に固定されている。負極端子500は、樹脂製の外部側絶縁部材510を介して封口板120に固定されている。
【0033】
正極端子400は金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であることがより好ましい。負極端子500は金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。負極端子500が、電池ケース100の内部側に配置される銅または銅合金からなる領域と、電池ケース100の外部側に配置されるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる領域を有するようにしてもよい。
【0034】
電流遮断機構800は、正極タブ210A(正極板)と正極端子400の間の導電経路に設けられる。電流遮断機構800は、電池ケース100内の圧力が所定値以上となった際に作動し、導電経路を遮断することができる。ガス排出弁123の作動圧は、電流遮断機構800の作動圧よりも大きい値に設定される。電流遮断機構800は、負極タブ210Bと負極端子500の間の導電経路に設けることもできる。
【0035】
図3は、電極体200を構成する正極板200Aの平面図である。正極板200Aは、矩形状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質(たとえばリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)、結着材(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、および導電材(たとえば炭素材料等)を含む正極活物質合剤層が形成された本体部220Aを有する。本体部の端辺から正極芯体が突出しており、この突出した正極芯体が正極タブ210Aを構成する。正極タブ210Aにおける本体部の220Aと隣接する部分には、アルミナ粒子、結着材、および導電材を含む正極保護層230Aが設けられている。正極保護層230Aは、正極活物質合剤層の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。正極活物質合剤層は導電材を含まなくてもとい。正極保護層230Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0036】
図4は、電極体200を構成する負極板200Bの平面図である。負極板200Bは、矩形状の銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質層が形成された本体部220Bを有する。本体部220Bの端辺から負極芯体が突出しており、この突出した負極芯体が負極タブ210Bを構成する。
【0037】
図5は、正極板200Aおよび負極板200Bからなる電極体200を示す平面図である。
図5に示すように、電極体200は、一方の端部において各々の正極板200Aの正極タブ210Aが積層され、各々の負極板200Bの負極タブ210Bが積層されるように作製される。正極板200Aおよび負極板200Bは、たとえば各々50枚程度ずつ重ねられる。正極板200Aと負極板200Bとは、ポリオレフィン製の矩形状のセパレータを介して交互に積層される。なお、長尺のセパレータをつづら折りして用いてもよい。
【0038】
図6は、電極体200と正極集電部材600および負極集電部材700との接続構造を示す図である。
図6に示すように、電極体200は、第1電極体要素201(第1積層群)および第2電極体要素202(第2積層群)により構成される。第1電極体要素201および第2電極体要素202の外面にもセパレータが各々配置される。第1電極体要素201および第2電極体要素202は、たとえばテープ等により積層状態の状態で固定することができる。代替的に、各々の正極板200A、負極板200Bおよびセパレータに接着層を設け、セパレータと正極板200Aとが各々接着され、セパレータと負極板200Bとが各々接着されるようにしてもよい。
【0039】
第1電極体要素201の複数枚の正極タブ210Aが第1正極タブ群211Aを構成する。第1電極体要素201の複数枚の負極タブ210Bが第1負極タブ群211Bを構成する。第2電極体要素202の複数枚の正極タブ210Aが第2正極タブ群212Aを構成する。第2電極体要素202の複数枚の負極タブ210Bが第2負極タブ群212Bを構成する。
【0040】
第1電極体要素201と第2電極体要素202の間に、第2正極集電体620と第2負極集電体720とが配置される。第2正極集電体620は、第1開口620Aおよび第2開口620Bを有する。第1正極タブ群211Aおよび第2正極タブ群212Aが、第2正極集電体620上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。第1負極タブ群211Bおよび第2負極タブ群212Bが、第2負極集電体720上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。溶接接続部213は、たとえば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等により形成し得る。
【0041】
図7は、封口板120への正極集電部材600および負極集電部材700の取付構造を示す図である。
図8は、
図7におけるVIII-VIII断面を示す。
図9は、
図7におけるIX-IX断面を示す。
【0042】
まず、
図7,
図8を参照して、封口板120への正極集電部材600の取付について説明する。
【0043】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材410が配置される。封口板120の内面側に樹脂製の絶縁部材420および導電部材430が配置される。その後、正極端子400が、外部側絶縁部材410の貫通穴 、封口板120の正極端子取り付け孔、絶縁部材420の貫通穴、および導電部材430の貫通穴に挿入される。そして、正極端子400の先端が導電部材430上にカシメ接続される。これにより、正極端子400、外部側絶縁部材410、封口板120、絶縁部材420、および導電部材430が固定される。正極端子400および導電部材430のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接されることが好ましい。
【0044】
導電部材430は、導電部材ベース部431と、導電部材ベース部431の縁部から電極体200(図中下側)に向かって延びる管状部432とを有する。管状部432の電極体200側の端部には、開口部433が設けられている。なお、正極端子400と導電部材430とは一体の部材として設けられてもよい。
【0045】
変形板440は、導電部材430の開口部433を塞ぐように配置される。変形板440の周縁は、レーザ溶接等により導電部材430に溶接される。これにより、導電部材430の開口部433が変形板440により密閉される。なお、導電部材430および変形板440はそれぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることがより好ましい。
【0046】
第1正極集電体610に設けられた貫通穴に、樹脂製の絶縁部材630(正極集電体ホルダ)に設けられた突起が挿入され、当該突起の先端を熱カシメ等により拡径することにより、接続部631が形成され、第1正極集電体610と絶縁部材630とを接続することができる。また、第1正極集電体610に設けられた貫通穴に絶縁部材630に設けられた突起を挿入することにより、ズレ防止部632を形成することができる。
【0047】
第1正極集電体610に接続された絶縁部材630と、正極端子400側の絶縁部材420とは、嵌合により接続される。なお、絶縁部材630に爪部を設け、当該爪部を絶縁部材420に引っ掛け接続することもできる。
【0048】
その後、絶縁部材630に設けられた開口部において、正極集電部材600側の第1正極集電体610と、正極端子400側の変形板440の中央部とが、レーザ溶接等により接続される。第1正極集電体610に接続用孔を設け、接続用孔の縁部を変形板440に溶接接続することが好ましい。
【0049】
図8に示すように、絶縁部材630は、電極体200側に突出する筒状部630Aを有する。筒状部630Aは、第2正極集電体620の第2開口620Bを貫通し、電解液注液孔121と連通する孔部630Bを規定する。
【0050】
封口板120に正極集電部材600を取り付ける際は、まず、第1正極集電体610が封口板120上の絶縁部材630に接続される。続いて、電極体200に接続された第2正極集電体620が第1正極集電体610に取り付けられる。このとき、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。続いて、第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aの周囲が、レーザ溶接等により第1正極集電体610に溶接接続される。
【0051】
次に、
図7および
図9を参照して、封口板120への負極集電部材700の取付について説明する。
【0052】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材510が配置される。封口板120の内面側に第1負極集電体710、および樹脂製の絶縁部材730(負極集電体ホルダ)が配置される。次に、負極端子500が、外部側絶縁部材510の貫通孔、封口板120の負極端子取り付け孔、第1負極集電体710の貫通孔、および絶縁部材730の貫通孔に挿入される。そして、負極端子500の先端が第1負極集電体710上にカシメ接続される。これにより、負極端子500、外部側絶縁部材510、封口板120、第1負極集電体710、および絶縁部材730が固定される。なお、負極端子500および第1負極集電体710のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。
【0053】
さらに、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように、第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aにおいて、第2負極集電体720は第1負極集電体710にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0054】
封口板120に負極集電部材700を取り付ける際は、まず、第1負極集電体710が封口板120上の絶縁部材730に接続される。続いて、電極体200に接続された第2負極集電体720が第1負極集電体710に取り付けられる。このとき、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。続いて、第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aの周囲が、レーザ溶接等により第1負極集電体710に溶接接続される。
【0055】
図8に示される電流遮断機構800の動作について説明する。電池ケース100内の圧力が上昇することにより、変形板440の中央部が封口板120側に移動するように変形する。そして、電池ケース100内の圧力が所定値以上となったとき、変形板440の変形に伴い、第1正極集電体610と変形板440との溶接接合部が破断する。これにより、正極板200Aから正極端子400への導電経路が切断される。
【0056】
角形二次電池1が過充電状態となり電池ケース100内の圧力が上昇したとき、電流遮断機構800が作動し、正極板200Aから正極端子400への導電経路が切断されることにより、更なる過充電の進行が防止される。
【0057】
正極端子400には貫通孔400Aが形成されている。貫通孔400Aを通じて導電部材430の内部側にガスを送り込むことにより、導電部材430と変形板440との溶接接続部のリーク検査を行なうことができる。貫通孔400Aは、樹脂製ないし金属製の端子封止部材により封止される。
【0058】
図10は、封口板120と電極体200とが接続された状態を示す図である。
図11は、封口板120と電極体200とが接続された状態における正極集電部材600周辺の拡大図である。
【0059】
図7~
図9を用いて説明したように、正極集電部材600および負極集電部材700を介して第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に取り付けられる。これにより、
図10に示すように、第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に接続され、電極体200と正極端子400および負極端子500とが電気的に接続される。
【0060】
図11に示すように、第1正極集電体610上に樹脂製のカバー部材900が設けられる。カバー部材900は、第1正極集電体610と電極体200の間に位置する。カバー部材900は、負極集電体側に設けられてもよい。また、カバー部材900は必須の部材ではなく、適宜省略が可能である。
【0061】
図10に示す状態から、第1電極体要素201と第2電極体要素202とが1つに纏められる。このとき、第1正極タブ群211Aと第2正極タブ群212Aとが互いに異なる方向に湾曲させられる。第1負極タブ群211Bと第2負極タブ群212Bとが互いに異なる方向に湾曲させられる。
【0062】
第1電極体要素201と第2電極体要素202とは、テープ等により1つに纏められ得る。代替的に、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを、箱状ないし袋状に成形した絶縁シート内に配置することで1つに纏めることができる。さらに、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを接着により固定することができる。
【0063】
1つに纏められた第1電極体要素201と第2電極体要素202とが絶縁シートで包まれ、角形外装体110に挿入される。その後、封口板120が角形外装体110に溶接接続され、角形外装体110の開口が封口板120により封口され、密閉された電池ケース100が形成される。
【0064】
その後、封口板120に設けられた電解液注液孔121から非水電解液が電池ケース100に注液される。非水電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比(25℃)30:30:40の割合で混合した非水溶媒に、LiPF6を1.2モル/Lの濃度で溶解させたものを用いることができる。
【0065】
非水電解液が注液された後、電解液注液孔121は封止部材122により封止される。以上の工程の実施により、角形二次電池1は完成する。
【0066】
以上に述べたとおり、角形二次電池1の製造方法は、電極体200と第1正極集電体610とを接続する工程と、正極端子400(端子部)および導電部材430を電池ケース100の封口板120に取り付ける工程と、変形板440の上面を封口板120側に向け、変形板440の下面を電極体200側に向けた状態で、封口板120に取付けられた導電部材430の開口部433を変形板440により封止する工程と、変形板440と第1正極集電体610とを接合する工程と、電極体200を角形外装体110に収容し、角形外装体110を封口板120により封口する工程とを備える。
【0067】
このようにして製造された角形二次電池1は、電極体200と、電極体200を収容する角形外装体110および角形外装体110を封口する封口板120を含む電池ケース100と、封口板120に取付けられた正極端子400(端子部)と、正極端子400に接続され、電極体200側に開口部433を有する導電部材430と、導電部材430の開口部433を封止する変形板440と、変形板440と接合される第1正極集電体610とを備える。
【0068】
電極体200は、第1正極集電体610、変形板440、および導電部材430を介して正極端子400と電気的に接続される。電池ケース100内の圧力が所定値以上となったときに、変形板440が変形することに伴い、電極体200と正極端子400との間の電気的な接続が切断される。
【0069】
図12は、変形板440の断面図であり、
図13は、変形板440の上面図であり、
図14は、変形板440の下面図である。
【0070】
変形板440は、
図13に示す封口板120側の上面(第1表面)と、
図14に示す電極体200側の下面(第2表面)とを有する。変形板440は、厚肉部441と、薄肉部442とを有する。厚肉部441は、変形板440の中心を含む領域に設けられ、周囲と比較して相対的に厚みが大きい。薄肉部442は、厚肉部441の周囲に設けられ、厚肉部441と比較して相対的に厚みが小さい。
【0071】
変形板440の中央部に厚肉部441が設けられることにより、第1正極集電体610との溶接接合時の加工性が向上するとともに、変形板440の内周側の導電経路を大きくすることができる。この結果、意図しない大電流の通電時においても、変形板440上で溶断が生じることを防止し、異常時の気密性を確保することができる。
【0072】
図12、
図13に示すように、変形板440の上面において、厚肉部441よりも外周側であり、かつ、変形板440の中心からの距離が中心から変形板440の外周縁までの距離の半分よりも小さいA領域(第1領域)に環状の溝443A(第1溝)が形成される。
【0073】
図12、
図14に示すように、変形板440の下面において、変形板440の中心からの距離が中心から変形板440の外周縁までの距離の半分よりも大きいB領域(第2領域)に環状の溝443B(第2溝)が形成される。
【0074】
なお、溝443Aおよび溝443Bは、完全に環状でなくてもよく、部分的に溝が形成されない「略環状」のものであってもよい。「略環状」は、溝の周長に関して、完全な環状を100%としたとき、60%以上程度であることが好ましく、80%以上程度であることがより好ましく、90%以上程度であることがさらに好ましい。ただし、溝443Aおよび溝443Bが周方向に分割される場合、分割された各溝は、「環状」の中心に関して対称な形状を有することが好ましい。
【0075】
図17に示すように、変形板440は、溝443Aおよび溝443Bの開口を閉じる方向の応力が変形板に生じた状態で第1正極集電体610に接合される。また、溝443Aおよび溝443Bは、変形板440を第1正極集電体610から切り離した状態で、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する。
【0076】
図15は、
図12中のα部の周辺を示す拡大図であり、
図16は、
図12中のβ部の周辺を示す拡大図である。
図15、
図16に示すように、溝443Aおよび溝443Bは、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する。より具体的には、溝443Aおよび溝443Bは、略V字状の断面形状を有する。
【0077】
溝443Aおよび溝443Bは、変形板440を第1正極集電体610から切り離した状態で、溝443Aおよび溝443Bが形成された位置の変形板440の全厚(溝が形成されない場合の変形板440の厚み)の1/3以上1/2以下程度の深さを有することが好ましい。この程度の溝深さとすることで、変形板440の所望の変形を促進しながら、導電経路となる変形板440の断面積が過度に減少することを抑制することができる。
【0078】
なお、電池ケース100内の圧力が上昇したとき、電流遮断機構800においては、変形板440と第1正極集電体610との接合部が切断される。このとき、変形板440の溝443Aおよび溝443Bが形成された部分は切断されない。
【0079】
また、角形二次電池1に大電流が流れたときも、変形板440の溝443Aおよび溝443Bが形成された部分は溶断しない。このとき、他の脆弱部が溶断することにより、意図しない大電流は遮断される。
【0080】
変形板440を第1正極集電体610から切り離した状態で、溝443Aの開口の幅を溝443Bの開口の幅よりも狭く形成してもよい。また、変形板440を第1正極集電体610から切り離した状態で、溝443Aの深さを溝443Bの深さよりも小さく形成してもよい。
【0081】
変形板440の内周側に位置する溝443Aが形成された部分においては、外周側に位置する溝443Bが形成された部分よりも導電経路の断面積が小さくなり、通電による発熱は大きくなる傾向にある。溝443Bの開口の幅および深さを相対的に大きく、溝443Aの開口の幅および深さを相対的に小さくすることにより、変形板440の所望の変形を促進しながら、導電経路の断面積の縮小を抑制することができる。
【0082】
図17は、変形板440を変形させて第1正極集電体610と接合した状態を示す断面図である。
【0083】
図17に示すように、変形板440は、厚肉部441が
電極体200側(
図17中下側)に移動するように変形した状態で第1正極集電体610に接合される。この変形は、正極端子400に設けられた貫通孔400A(
図8参照)から導電部材430の内部に窒素ガスなどのガス圧が導入されることによって生じる。
【0084】
変形板440の上記変形により封口板120側に近づいた厚肉部441が第1正極集電体610に溶接される。すなわち、変形板440は、溝443Aおよび溝443Bの開口を閉じる方向の応力が変形板440に生じた状態で第1正極集電体610に接合される。
【0085】
溝443Aおよび溝443Bが変形板440に形成されない構造においても、変形板440の中央部に位置する厚肉部441が封口板120側に移動するように変形した状態で変形板440は第1正極集電体610に接合される。ただし、変形板440の変形状態(変形後の形状、変形量)のばらつきに起因して、変形板440と第1正極集電体610との接合強度にばらつきが生じ得る。この結果、電流遮断機構800の作動が不安定になり得る。
【0086】
これに対し、本実施の形態に係る変形板440においては、変形板440の中央側に位置するA領域の上面に溝443Aが形成され、変形板440の外周側に位置するB領域の下面に溝443Bが形成されているため、
図17に示す方向の変形が促進され、変形板440の変形後の形状が安定する。また、溝443Aおよび溝443Bの開口が閉じることにより、それ以上の変形が抑制されるため、変形板440の変形量が安定する。このように、本実施の形態に係る変形板440によれば、変形板440の変形状態(変形後の形状、変形量)のばらつきを抑制することができるので、変形板440と第1正極集電体610との接合強度を安定させることができる。この結果、電流遮断機構800の作動が安定する。
【0087】
溝443Aおよび溝443Bの一方のみを形成するようにしてもよい。その場合、外周側の溝443Bのみを形成することが好ましい。溝443Aおよび溝443Bの開口の幅および深さは、変形板440が所望の形状に変形したときに、各溝の隙間が埋まる(開口が閉じる)ように形成することが好ましい。変形板440が所望の形状に変形したときに、溝443Aおよび溝443Bの隙間が残る(開口が完全には閉じない)ように形成してもよい。
【0088】
図18は、変形板440に形成される溝の形状の変形例を示す図である。
図12~
図17に示す例では、略V字状の断面形状を示したが、略V字状の断面形状に代えて、
図18に示す略U字状の断面形状を有する溝443Cが用いられてもよい。溝443Cは、略V字状の場合と同様に、変形板440を第1正極集電体610から切り離した状態で、底部の幅よりも開口の幅が広い断面形状を有する。
【0089】
また、上述した真円形状に代えて、正方形の平面形状を有する変形板440が用いられてもよい。この場合、溝443Aおよび溝443Bも正方形状に延びる。
【0090】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 角形二次電池、100 電池ケース、110 角形外装体、120 封口板、121 電解液注液孔、122 封止部材、123 ガス排出弁、200 電極体、200A 正極板、200B 負極板、201 第1電極体要素、202 第2電極体要素、210A 正極タブ、210B 負極タブ、211A 第1正極タブ群、211B 第1負極タブ群、212A 第2正極タブ群、212B 第2負極タブ群、213 溶接接続部、220A 本体部、220B 本体部、230A 正極保護層、300 絶縁シート、400 正極端子、400A 貫通孔、410 外部側絶縁部材、420 絶縁部材、430 導電部材、431 導電部材ベース部、432 管状部、433 開口部、440 変形板、500 負極端子、510 外部側絶縁部材、600 正極集電部材、610 第1正極集電体、620 第2正極集電体、620A 第1開口、620B 第2開口、630 絶縁部材、630A 筒状部、630B 孔部、631 接続部、632 ズレ防止部、700 負極集電部材、710 第1負極集電体、720 第2負極集電体、720A 第1開口、730 絶縁部材、800 電流遮断機構、900 カバー部材。