(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】接着剤塗布装置及び積層鉄心の製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20230426BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230426BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20230426BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20230426BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230426BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230426BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230426BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H02K15/02 F
B05C11/10
B05C5/02
B05C13/02
B05D7/00 K
B05D7/14 H
B05D1/26 Z
B05D7/24 301P
(21)【出願番号】P 2020503454
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2019006615
(87)【国際公開番号】W WO2019167803
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2018035336
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 洋平
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-033711(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B05C 11/10
B05C 5/02
B05C 13/02
B05D 7/00
B05D 7/14
B05D 1/26
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有する接着剤貯留部と、
前記接着剤貯留部に対して電磁鋼板を接離移動させると共に、前記接着剤貯留部に接近させた前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる鋼板移動部と、
前記吐出口に対する前記電磁鋼板の密着状態で前記接着剤貯留部内に接着剤を供給すると共に、前記接着剤貯留部からの前記電磁鋼板の離間前に前記供給を停止して前記接着剤貯留部の内圧を低減させる接着剤供給部と、
を備え
、
前記接着剤供給部は、
接着剤が充填された内部が連通部を介して前記接着剤貯留部内と連通された控貯留部と、
前記控貯留部内に一定圧力で接着剤を供給する定圧供給装置と、
前記連通部を開閉する開閉弁と、
前記密着状態で前記開閉弁を開き、前記離間前に前記開閉弁を閉じる弁駆動手段と、
を有する接着剤塗布装置。
【請求項2】
前記
開閉弁は、ポペット弁であり、
前記弁駆動手段は、前記ポペット弁を閉方向へ付勢する付勢部材と、前記鋼板移動部に設けられ、前記鋼板移動部が前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる動作によって前記ポペット弁を開方向へ押圧する押圧部と、を有する請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
前記開閉弁は、ポペット弁であり、
前記弁駆動手段は、前記ポペット弁を
直線移動させる直動アクチュエータを有する請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項4】
前記開閉弁は、
回転弁であり、
前記弁駆動手段は、前記
回転弁を回転させる回転アクチュエータを有する請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項5】
前記
接着剤供給部は、前記接着剤貯留部内に接着剤を供給可能で且つ前記接着剤貯留部内の接着剤を吸引可能とされた接着剤供給装置を有する請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項6】
前記
吐出口内に侵入した空気を前記吐出口から排出する空気排出部を有する請求項1~請求項5の何れか1項に記載の接着剤塗布装置。
【請求項7】
前記
接着剤供給部は、前記接着剤貯留部内を大気に連通させる大気解放弁を有し、少なくとも前記接着剤貯留部内への接着剤の供給時に前記大気解放弁を閉じ、前記停止後に前記大気解放弁を開く請求項1~請求項4の何れか1項又は請求項6に記載の接着剤塗布装置。
【請求項8】
内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有する接着剤貯留部と、
前記接着剤貯留部に対して電磁鋼板を接離移動させると共に、前記接着剤貯留部に接近させた前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる鋼板移動部と、
前記吐出口に対する前記電磁鋼板の密着状態で前記接着剤貯留部内に接着剤を供給すると共に、前記接着剤貯留部からの前記電磁鋼板の離間前に前記供給を停止して前記接着剤貯留部の内圧を低減させる接着剤供給部と、
を備え、
前記接着剤供給部は、
接着剤が充填された内部が連通部を介して前記接着剤貯留部内と連通された控貯留部と、
前記控貯留部内に一定圧力で接着剤を供給する定圧供給装置と、
前記連通部を開閉する開閉弁と、
前記密着状態で前記開閉弁を開き、前記離間前に前記開閉弁を閉じる弁駆動手段と、
を有し、
前記開閉弁は、ポペット弁であり、
前記弁駆動手段は、
前記ポペット弁を閉方向へ付勢する付勢部材と、
前記鋼板移動部に設けられ、前記鋼板移動部が前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる動作によって前記ポペット弁を開方向へ押圧する押圧部と、
を有する接着剤塗布装置。
【請求項9】
内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有する接着剤貯留部と、
前記接着剤貯留部に対して電磁鋼板を接離移動させると共に、前記接着剤貯留部に接近させた前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる鋼板移動部と、
前記吐出口に対する前記電磁鋼板の密着状態で前記接着剤貯留部内に接着剤を供給すると共に、前記接着剤貯留部からの前記電磁鋼板の離間前に前記供給を停止して前記接着剤貯留部の内圧を低減させる接着剤供給部と、
を備え、
前記接着剤供給部は、
接着剤が充填された内部が連通部を介して前記接着剤貯留部内と連通された控貯留部と、
前記控貯留部内に一定圧力で接着剤を供給する定圧供給装置と、
前記連通部を開閉する開閉弁と、
前記密着状態で前記開閉弁を開き、前記離間前に前記開閉弁を閉じる弁駆動手段と、
前記接着剤貯留部内を大気に連通させる大気解放弁と、
を有し、少なくとも前記接着剤貯留部内への接着剤の供給時に前記大気解放弁を閉じ、前記停止後に前記大気解放弁を開く接着剤塗布装置。
【請求項10】
内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有する接着剤貯留部と、
前記接着剤貯留部に対して電磁鋼板を接離移動させると共に、前記接着剤貯留部に接近させた前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる鋼板移動部と、
前記吐出口に対する前記電磁鋼板の密着状態で前記接着剤貯留部内に接着剤を供給すると共に、前記接着剤貯留部からの前記電磁鋼板の離間前に前記供給を停止して前記接着剤貯留部の内圧を低減させる接着剤供給部と、
前記吐出口内に侵入した空気を前記吐出口から排出する空気排出部と、
を備え、
前記接着剤供給部は、前記接着剤貯留部内を大気に連通させる大気解放弁を有し、少なくとも前記接着剤貯留部内への接着剤の供給時に前記大気解放弁を閉じ、前記停止後に前記大気解放弁を開く接着剤塗布装置。
【請求項11】
電磁鋼板が打抜かれて形成された複数の鉄心鋼板が積層接着されて構成される積層鉄心の製造装置であって、
ストリッパ付きの上型、及び下型を有し、間欠移送される電磁鋼板から鉄心鋼板を順次打抜いて積層する順送金型と、
前記ストリッパ付きの上型が前記鋼板移動部とされ、前記接着剤貯留部が前記下型に設けられた請求項1~請求項10の何れか1項に記載の接着剤塗布装置と、
を備えた積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板からなる複数の鉄心鋼板が積層接着されて構成され、モータの固定子や回転子に用いられる積層鉄心の製造装置及び製造方法、並びに電磁鋼板に接着剤を塗布する接着剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの積層鉄心を製造する際には、例えば電磁鋼板をプレスで打抜いて複数の鉄心鋼板を形成すると共に、最終の打抜き加工後に鉄心鋼板を積層して結合させる。この結合方法には、かしめ用の凹凸を鉄心鋼板に形成し、その凹凸を積層時に圧着させてかしめ結合させる方法や、レーザ等による溶接で結合する方法がある。かしめや溶接では結合部位が加工されるため、磁気特性の低下が生じる。
【0003】
そのため、磁気特性の低下を抑制する結合方法として、電磁鋼板を打抜く順送金型内でキャリア付きの鉄心鋼板に接着剤を塗布し、最終の打抜き加工直後に鉄心鋼板を積層して接着させる方法がある(例えば、特開2003-33711号公報、特許第5160862号公報、及び特許第5576460号公報参照)。接着結合の場合、結合部位が加工されないため、磁気特性の低下を抑制できる。
【0004】
特開2003-33711号公報に記載された先行技術では、金型に固定されたピストンが金型上下動との共動により接着液貯留室内の接着液を押圧して電磁鋼板に塗布するようにしている。
【0005】
一方、特許第5160862号公報、及び特許第5576460号公報に記載された先行技術では、接着剤溜まりから接着剤が常時吐出している複数の吐出部に電磁鋼板が接近することで、各吐出部から盛り上がった接着剤が電磁鋼板に転写される構成になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2003-33711号公報に記載された先行技術では、接着液貯留室内から接着剤を吐出させるためのシリンダ及びピストンの相対移動がプレス機の金型の上下動によって実現されるため、プレス動作の速度を増大させた場合、転写用ノズルからの電磁鋼板に向けて吐出される接着液の速度も増大することとなる。このため、プレス動作速度が一定の限界を超えると、転写用ノズルから接着剤が過大に吐出されて接着強度にばらつきが生じる上、接着剤が周囲に飛散して金型等に悪影響を及ぼす虞がある。
【0007】
一方、特許第5160862号公報、及び特許第5576460号公報に記載された先行技術では、接着剤の転写時に各吐出部と電磁鋼板との間に隙間を設けることで、接着剤の拡散を防止するようにしている。また、接着剤溜まりを設けることで、各吐出部から定量の接着剤を安定的に吐出させるようにしている。
【0008】
しかしながら、実際には接着剤溜まりの内圧は不均一となり、各吐出部からの接着剤吐出量に差異が生じる虞がある。また、接着剤の転写時に各吐出部と電磁鋼板との間に隙間を設ける構成では、各吐出部から隙間に吐出される接着剤の吐出量の差異によって、電磁鋼板への接着剤の転写量に差異が生じる虞がある。さらに、金型で打抜き加工される電磁鋼板は帯状に連続しているため、打抜き加工と同時に接着剤が電磁鋼板に転写される際に、電磁鋼板の全体が振動する。その結果、上記の隙間が微小に変化して、接着剤の転写量が不均一になる虞がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、電磁鋼板への接着剤の転写量を均一にすることができる接着剤塗布装置、積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様の接着剤塗布装置は、内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有する接着剤貯留部と、前記接着剤貯留部に対して電磁鋼板を接離移動させると共に、前記接着剤貯留部に接近させた前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる鋼板移動部と、前記吐出口に対する前記電磁鋼板の密着状態で前記接着剤貯留部内に接着剤を供給すると共に、前記接着剤貯留部からの前記電磁鋼板の離間前に前記供給を停止して前記接着剤貯留部の内圧を低減させる接着剤供給部と、を備えている。
【0011】
第1の態様の接着剤塗布装置によれば、接着剤貯留部は、内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有しており、鋼板移動部は、電磁鋼板を接着剤貯留部に接近させて吐出口に密着される。この密着状態で、接着剤供給部が接着剤貯留部内に接着剤を供給する。これにより、吐出口から吐出しようとする接着剤が、吐出口に密着した電磁鋼板に接触する。次いで、接着剤供給部は、接着剤貯留部内への接着剤の供給を停止させ、接着剤貯留部の内圧を低減させる。その後、鋼板移動部が電磁鋼板を接着剤貯留部から離間させる。この際には、電磁鋼板に接触した接着剤の粘着力によって接着剤が電磁鋼板に転写される。この転写量は、吐出口の面積と接着剤の粘度に依存するため、接着剤の転写量が均一になる。しかも、電磁鋼板が接着剤貯留部(吐出口)から離間するタイミングは、接着剤供給部の内圧が低減された後であるため、接着剤が吐出口から不用意に吐出することを防止又は抑制できる。
【0012】
本発明の第2の態様の接着剤塗布装置は、第1の態様の接着剤塗布装置において、前記接着剤供給部は、接着剤が充填された内部が連通部を介して前記接着剤貯留部内と連通された控貯留部と、前記控貯留部内に一定圧力で接着剤を供給する定圧供給装置と、前記連通部を開閉する開閉弁と、前記密着状態で前記開閉弁を開き、前記離間前に前記開閉弁を閉じる弁駆動手段と、を有している。
【0013】
第2の態様の接着剤塗布装置では、各々に接着剤が充填された接着剤貯留部内と控貯留部内とが、開閉弁によって開閉される連通部を介して連通されている。控貯留部内には、定圧供給装置が一定圧力で接着剤を供給しており、電磁鋼板が吐出口に密着されている状態では、弁駆動部によって上記の開閉弁が開かれる。これにより、控貯留部内の接着剤の圧力が接着剤貯留部内の接着剤に加わり、接着剤貯留部の吐出口から吐出しようとする接着剤が電磁鋼板に接触する。上記の開閉弁は、電磁鋼板が接着剤貯留部から離間される前に弁駆動手段によって閉じられる。これにより、接着剤貯留部内への接着剤の供給が停止される。この発明では、定圧供給装置が控貯留部内に一定圧力で接着剤を供給するため、定圧供給装置の構成を簡素化することができる。
【0014】
本発明の第3の態様の接着剤塗布装置は、第2の態様の接着剤塗布装置において、前記開閉弁は、ポペット弁であり、前記弁駆動手段は、前記ポペット弁を閉方向へ付勢する付勢部材と、前記鋼板移動部に設けられ、前記鋼板移動部が前記電磁鋼板を前記吐出口に密着させる動作によって前記ポペット弁を開方向へ押圧する押圧部と、を有している。
【0015】
第3の態様の接着剤塗布装置では、接着剤貯留部内と控貯留部内とを連通させた連通部がポペット弁によって開閉される。このポペット弁は、付勢部材の付勢力によって閉方向へ付勢されることで連通部を閉じているが、鋼板移動部が電磁鋼板を吐出口に密着させる際には、鋼板移動部に設けられた押圧部が鋼板移動部の動作によってポペット弁を開方向へ押圧する。これにより、連通部が開かれる。このように、鋼板移動部及び付勢部材がポペット弁の駆動源とされているため、弁駆動手段の構成を簡素化することができる。
【0016】
本発明の第4の態様の接着剤塗布装置は、第2の態様の接着剤塗布装置において、前記開閉弁は、ポペット弁であり、前記弁駆動手段は、前記ポペット弁を直線移動させる直動アクチュエータを有している。
【0017】
第4の態様の接着剤塗布装置では、接着剤貯留部内と控貯留部内とを連通させた連通部を開閉するポペット弁が、直動アクチュエータによって直線移動されるので、連通部の開閉タイミングの設定自由度が高くなる。
【0018】
本発明の第5の態様の接着剤塗布装置は、第2の態様の接着剤塗布装置において、前記開閉弁は、回転弁であり、前記弁駆動手段は、前記回転弁を回転させる回転アクチュエータを有している。
【0019】
第5の態様の接着剤塗布装置では、接着剤貯留部内と控貯留部内とを連通させた連通部を開閉する回転弁が、回転アクチュエータによって直線移動されるので、連通部の開閉タイミングの設定自由度が高くなる。
【0020】
本発明の第6の態様の接着剤塗布装置は、第1の態様の接着剤塗布装置において、前記接着剤供給部は、前記接着剤貯留部内に接着剤を供給可能で且つ前記接着剤貯留部内の接着剤を吸引可能とされた接着剤供給装置を有している。
【0021】
第6の態様の接着剤塗布装置では、接着剤供給部が有する接着剤供給装置が、接着剤貯留部内に接着剤を供給すると、接着剤貯留部の内圧が上昇する。一方、接着剤供給装置が、接着剤貯留部内の接着剤を吸引すると、接着剤貯留部の内圧が低減される。この発明では、請求項2に記載の発明における控貯留部、開閉弁及び弁駆動手段などが不要になる。
【0022】
本発明の第7の態様の接着剤塗布装置は、第1~第6の態様の何れか1つの態様の接着剤塗布装置において、前記吐出口内に侵入した空気を前記吐出口から排出する空気排出部を有している。
【0023】
第7の態様の接着剤塗布装置では、接着剤貯留部の吐出口内に侵入した空気が、空気排出部によって吐出口から排出される。これにより、電磁鋼板が吐出口に密着された状態で吐出口内の空気が電磁鋼板と接触すること、すなわち、電磁鋼板において空気が接触した部分に接着剤が転写されなくなることを防止できる。
【0024】
本発明の第8の態様の接着剤塗布装置は、第2~第5の態様の何れか1つの態様又は第7の態様の接着剤塗布装置において、前記接着剤供給部は、前記接着剤貯留部内を大気に連通させる大気解放弁を有し、少なくとも前記接着剤貯留部内への接着剤の供給時に前記大気解放弁を閉じ、前記停止後に前記大気解放弁を開く。
【0025】
第8の態様の接着剤塗布装置では、接着剤供給部は、前記接着剤貯留部内を大気に連通させる大気解放弁を有しており、少なくとも前記接着剤貯留部内への接着剤の供給時に前記大気解放弁を閉じ、接着剤の供給停止後に大気解放弁を開く。これにより、接着剤貯留部内が大気に開放されるので、接着剤貯留部の内圧を大きく低減することができる。
【0026】
本発明の第9の態様の積層鉄心の製造装置は、電磁鋼板が打抜かれて形成された複数の鉄心鋼板が積層接着されて構成される積層鉄心の製造装置であって、ストリッパ付きの上型、及び下型を有し、間欠移送される電磁鋼板から鉄心鋼板を順次打抜いて積層する順送金型と、前記ストリッパ付きの上型が前記鋼板移動部とされ、前記接着剤貯留部が前記下型に設けられた第1~第8の態様の何れか1つの態様の接着剤塗布装置と、を備えている。
【0027】
第9の態様の積層鉄心の製造装置では、ストリッパ付きの上型、及び下型を有する順送金型が、間欠移送される電磁鋼板から鉄心鋼板を順次打抜いて積層する。この順送金型では、ストリッパ付きの上型が、第1~第8の態様の何れか1つの態様の接着剤塗布装置の鋼板移動部とされ、同接着剤塗布装置の接着剤貯留部が下型に設けられている。これにより、順送金型による順送プレスの工程において、複数の鉄心鋼板を積層接着するための接着剤を電磁鋼板に塗布(転写)することができる。この態様は、第1~第8の態様の何れか1つの態様の接着剤塗布装置を備えているので、第1~第8の態様の何れか1つの態様と同様の作用効果が得られる。
【0028】
本発明の第10の態様の積層鉄心の製造方法は、電磁鋼板を打抜いて形成した複数の鉄心鋼板を積層接着して積層鉄心を製造する積層鉄心の製造方法であって、前記電磁鋼板に接着剤を塗布する接着剤塗布工程を有し、前記接着剤塗布工程は、内部に充填された接着剤を吐出する吐出口を有する接着剤貯留部に対して電磁鋼板を接近させて前記吐出口に密着させる密着工程と、前記吐出口に対する前記電磁鋼板の密着状態で前記接着剤貯留部内に接着剤を供給し、しかる後に前記供給を停止して前記接着剤貯留部の内圧を低減させる供給工程と、前記低減後に前記電磁鋼板を前記接着剤貯留部から離間させる離間工程と、を有している。
【0029】
第10の態様の積層鉄心の製造方法では、電磁鋼板を打抜いて形成した複数の鉄心鋼板を積層接着して積層鉄心を製造する。この製造方法は、電磁鋼板に接着剤を塗布する接着剤塗布工程を有している。この接着剤塗布工程では、先ず密着工程において、接着剤貯留部に対して電磁鋼板が接近され、接着剤貯留部の吐出口に電磁鋼板が密着される。次いで供給工程では、吐出口に対する電磁鋼板の密着状態で接着剤貯留部内に接着剤が供給される。これにより、吐出口から吐出しようとする接着剤が電磁鋼板に接触する。その後、接着剤の供給が停止され、接着剤貯留部の内圧が低減される。次いで離間工程では、電磁鋼板が接着剤貯留部から離間される。この際には、電磁鋼板に接触した接着剤の粘着力によって接着剤が電磁鋼板に転写される。この転写量は、吐出口の面積と接着剤の粘度に依存するため、接着剤の転写量が均一になる。しかも、電磁鋼板が接着剤貯留部(吐出口)から離間されるタイミングは、接着剤供給部の内圧が低減された後であるため、接着剤が吐出口から不用意に吐出することを防止又は抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る接着剤塗布装置、積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法では、電磁鋼板への接着剤の転写量を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層鉄心の製造装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図1における接着剤塗布装置周辺の構成を示す断面図である。
【
図4】電磁鋼板が接着剤貯留部の吐出口に密着された状態を示す
図3に対応した断面図である。
【
図5】ポペット弁が開かれた状態を示す
図3に対応した断面図である。
【
図6】大気解放弁が開かれた状態を示す
図3に対応した断面図である。
【
図7】電磁鋼板が接着剤貯留部から離間された状態を示す
図3に対応した断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る積層鉄心の製造装置が備える接着剤塗布装置周辺の構成を示す
図3に対応した断面図である。
【
図9】電磁鋼板が接着剤貯留部の吐出口に密着された状態を示す
図8に対応した断面図である。
【
図10】ポペット弁が開かれた状態を示す
図8に対応した断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る積層鉄心の製造装置が備える接着剤塗布装置周辺の構成を示す
図3に対応した断面図である。
【
図12】電磁鋼板が接着剤貯留部の吐出口に密着された状態を示す
図11に対応した断面図である。
【
図13】回転弁が開かれた状態を示す
図11に対応した断面図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る積層鉄心の製造装置が備える接着剤塗布装置周辺の構成を示す
図3に対応した断面図である。
【
図15】電磁鋼板が接着剤貯留部の吐出口に密着され、接着剤貯留部への接着剤の供給圧力が負圧にされた状態を示す
図14に対応した断面図である。
【
図16】接着剤貯留部への接着剤の供給圧力が正圧にされた状態を示す
図1514に対応した断面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係る積層鉄心の製造装置が備える接着剤塗布装置における接着剤貯留部の吐出口周辺の構成を示す平面図である。
【
図18】
図17のF18-F18線に沿った切断面を示す断面図であり、電磁鋼板が接着剤貯留部の吐出口に密着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図7を用いて本発明の第1実施形態に係る接着剤塗布装置40、積層鉄心の製造装置10、及び積層鉄心の製造方法について説明する。本実施形態に係る積層鉄心の製造装置10は、自動車、家電、その他の産業分野向けモータの積層鉄心を製造するための装置であり、
図1に示されるように、順送金型12と、接着剤塗布装置40とを備えている。この積層鉄心の製造装置10によって、本実施形態に係る積層鉄心の製造方法が実施される。本実施形態に係る積層鉄心の製造方法は、電磁鋼板ES(
図1参照)を打抜いて形成した複数の鉄心鋼板CS(
図2参照)を積層接着して積層鉄心LC(
図1参照)を製造する方法であり、前半打抜き工程と、接着剤塗布工程と、外形打抜き工程と、積層工程と、加熱工程とによって構成されている。
【0033】
前半打抜き工程では、帯状の電磁鋼板(フープ材)ESに対して、各種の打抜き加工が順次施されて、外形を除く鉄心鋼板CSの基本形状が形成される。このとき、電磁鋼板ESは、順送金型12内で間欠移送されながら、上下方向に移動する上型14に取り付けられたパンチ16、18、20、22、24によって順次打抜き加工が実施される。打抜き加工の際には、上型14に取り付けられたストリッパ(ストリッパプレート)14Aが下降して電磁鋼板ESを下型26の上面に押し当てる。なお、
図1、
図3~
図7に示される矢印Tは、電磁鋼板ESの送り方向を示している。
【0034】
前半打抜き工程が完了すると、接着剤塗布工程が実施される。このとき、電磁鋼板ESへの接着剤の塗布は、順送金型12に設けられた接着剤塗布装置40によって実施される。接着剤は、
図2に示される鉄心鋼板CSのスロット部S間の磁極部Pおよびヨーク部Yに相当する複数の転写部位(
図2に示される転写部位G1及びG2参照)にスポット状に塗布(転写)される。なお、積層時に最下部となる鉄心鋼板CSに対しては接着剤の塗布は行われない構成になっている。
【0035】
接着剤塗布工程が完了すると、外形打抜き工程が実施される。このとき、順送金型12の上型14に取り付けられた外形打抜きパンチ30によって、鉄心鋼板CSの外形が打抜かれて鉄心鋼板CSが完成する。
【0036】
外形打抜き工程により鉄心鋼板CSが得られると、積層工程が実施される。積層工程では、外形打抜き工程により打抜かれた鉄心鋼板CSが、外形打抜きパンチ30の下方で下型26に設けられたスクイズリング32内で順次積層される。
【0037】
積層工程が完了すると、加熱工程が実施される。加熱工程では、スクイズリング32内に設けられた図示しない加熱装置によって、各鉄心鋼板CSに塗布された接着剤が加熱されて硬化される。これにより、各鉄心鋼板CS間の接着強度が高められ、積層鉄心LCが完成する。完成した積層鉄心LCは、スクイズリング32の下方に配置された排出コンベア34上に載置され、次工程に搬送される。なお、加熱工程は積層工程と同時に実施してもよいし、省略してもよい。
【0038】
次に、
図3~
図7を用いて、本実施形態に係る接着剤塗布装置40の構成、及び当該接着剤塗布装置40によって実施される接着剤塗布工程の詳細について説明する。接着剤塗布装置40は、接着剤貯留部(接着剤第2貯留部)42と、前述したストリッパ14A付きの上型14と、接着剤供給部44とによって構成されており、ストリッパ14A付きの上型14が鋼板移動部とされている。接着剤供給部44は、控貯留部(接着剤第1貯留部)50と、定圧供給装置52と、ポペット弁56と、付勢部材としてのばね60(ここでは圧縮コイルスプリング)と、上記の上型14に設けられた押圧部15と、大気解放弁48とによって構成されている。
【0039】
接着剤貯留部42は、中空の箱状に形成されており、下型26に固定されている。接着剤貯留部42の上面は、下型26の上面と同一面上に配置されている。接着剤貯留部42の内部には、図示しない接着剤が充填されている。接着剤貯留部42の上壁には、接着剤貯留部42内に充填された接着剤を吐出する複数の吐出口(接着剤転写部)46が形成されている。複数の吐出口46は、鉄心鋼板CSにおける接着剤の転写部位(
図2に示される転写部位G1及びG2)に対応して形成されている。また、接着剤貯留部42の側壁には、大気解放弁48が取り付けられている。この大気解放弁48は、例えば電磁弁とされており、作動することで接着剤貯留部42内を大気に解放する構成になっている。この接着剤貯留部42の下方には、控貯留部50が配置されている。
【0040】
控貯留部50は、例えば上端に開口部を有する箱状に形成されており、接着剤貯留部42の底壁との間がシールされた状態で接着剤貯留部42の底壁に固定されている。この控貯留部50内には、図示しない接着剤が充填されている。この控貯留部50内には、周知の接着剤供給装置である定圧供給装置52によって一定圧力で接着剤が供給される構成になっている(
図3~
図7の矢印S1参照)。
【0041】
接着剤貯留部42の底壁には、連通部としての連通孔54が形成されており、当該連通孔54を介して接着剤貯留部42内と控貯留部50内とが相互に連通されている。この連通孔54には、ポペット弁56が挿通されている。
【0042】
ポペット弁56は、ここでは順送金型12の上下方向を軸方向とする円柱状に形成されている。ポペット弁56の下部は、ポペット弁本体部56Aとされており、ポペット弁56の上部は、ポペット弁駆動用ロッド部56Bとされている。ポペット弁駆動用ロッド部56Bの上端部は、接着剤貯留部42の上壁に形成された円形の貫通孔57(
図3及び
図7以外では符号省略)に挿入されており、ポペット弁本体部56Aの下端部は、控貯留部50の底壁に形成された円形の有底孔58に挿入されている。これにより、ポペット弁56は、接着剤貯留部42及び控貯留部50に対して上下にスライド可能に支持されている。なお、ポペット弁本体部56Aとポペット弁駆動用ロッド部56Bとが別体に形成された構成にしてもよい。
【0043】
ポペット弁本体部56Aの上端部には、連通孔54を開閉するためのフランジ状の弁部56A1が形成されている。弁部56A1は、控貯留部50内の上端部に配置されており、連通孔54に対して下方側から対向している。ポペット弁56の下端面と有底孔58の底面との間には、ばね60が配設されている。このばね60によってポペット弁56が上方(弁部56A1が連通孔54を閉じる方向;閉方向)へ付勢されている。これにより、通常は、連通孔54が弁部56A1によって閉じられて(塞がれて)おり、控貯留部50内の接着剤が接着剤貯留部42内に供給されないようになっている。
【0044】
このポペット弁56に対応して順送金型12の上型14には、押圧部15が設けられている。押圧部15は、上型14から下方へ向けて突出している。この押圧部15は、例えば円柱状に形成されており、ポペット弁56と同軸上に配置されている。この押圧部15は、ストリッパ14Aに形成された円形の貫通孔(符号省略)内に挿入されており、上型14が下降した際にポペット弁56を下方(弁部56A1が連通孔54を開く方向;開方向)へ押圧する構成になっている。
【0045】
上記構成の接着剤塗布装置40では、
図3に示されるように上型14が上昇している状態では、ポペット弁56によって控貯留部50と接着剤貯留部42とが隔たれている。この状態では、控貯留部50内に定圧供給されている接着剤が接着剤貯留部42内に流れ込まない状態となっている(
図3の矢印C参照)。
【0046】
一方、順送金型12が駆動すると、電磁鋼板ESは順送金型12に設置された図示しない送り装置によって間欠で順送され、それに連動して上型14の上下動が開始する。この上型14の上下動によって、電磁鋼板ESの打抜き加工が実施されると共に、接着剤塗布工程が実施される。この接着剤塗布工程は、接着剤貯留部42に対して電磁鋼板ESを接近させて吐出口46に密着させる密着工程と、当該密着状態で接着剤貯留部42内に接着剤を供給し、しかる後に前記供給を停止して接着剤貯留部42の内圧を低減させる供給工程と、前記低減後に電磁鋼板ESを接着剤貯留部42から離間させる離間工程と、によって構成されている。
【0047】
具体的には、間欠で順送される電磁鋼板ESが停止すると、上型14及びストリッパ14Aが下降し、電磁鋼板ESがストリッパ14Aに押されて下型26及び接着剤貯留部42に接近する。この際、ストリッパ14Aは、電磁鋼板ESを下型26に押し付けて、電磁鋼板ESと吐出口46とを密着させる(
図4参照)。この密着状態では、吐出口46が電磁鋼板ESによって塞がれた状態となる。
【0048】
上型14は更に下降し、押圧部15がポペット弁56を下方へ押し下げる(
図5参照)。これにより、連通孔54が開放され、控貯留部50内の接着剤が接着剤貯留部42内に供給される(
図5の矢印S2参照)。その結果、接着剤貯留部42内の接着剤に圧力が加わり、接着剤貯留部42内の接着剤が吐出口46から吐出しようとする。これにより、吐出口46に密着している電磁鋼板ESに接着剤が接触する。
【0049】
上型14が上昇し始めると、ポペット弁56がばね60の付勢力によって上方へ押し戻され、再び連通孔54を閉塞する(
図6参照)。これにより、控貯留部50から接着剤貯留部42内への接着剤の供給が停止される。この供給停止と同時又は略同時に大気解放弁48が作動され、接着剤貯留部42の内圧(残圧)が大気に解放される(
図6の矢印R参照)。これにより接着剤貯留部42の内圧が大気圧と同等に低減される。
【0050】
上型14が更に上昇すると、ストリッパ14Aの上昇が開始され、電磁鋼板ESが下型26及び接着剤貯留部42から上方に離間される(
図7参照)。この際には、電磁鋼板ESに接触した接着剤の粘着力によって接着剤が電磁鋼板ESに転写される構成になっている(
図7の接着剤G参照)。
【0051】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
上記構成の接着剤塗布装置40では、順送金型12のストリッパ14Aが電磁鋼板ESを接着剤貯留部42の各吐出口46に密着させた状態で接着剤貯留部42内に接着剤が供給される。これにより、各吐出口46から吐出しようとする接着剤が電磁鋼板ESに接触する。その後、電磁鋼板ESがストリッパ14Aによって接着剤貯留部42から離間される際には、電磁鋼板ESに接触した接着剤の粘着力によって接着剤が電磁鋼板ESに転写される。この転写量は、各吐出口46の面積と接着剤の粘度に依存するため、電磁鋼板ESの接着剤転写箇所(
図2のG1、G2参照)における接着剤の転写量が均一となり、各転写箇所G1、G2における接着剤の厚さも均一となる。これにより、電磁鋼板ESへの接着剤塗布量の制御精度が向上し、接着剤塗布量の管理が容易になる。また、電磁鋼板ESの打抜き時の上型14の上下動速度に同期せずに接着剤が安定的に電磁鋼板SEに塗布されるので、鉄心鋼板CS同士の接着強度が安定する。
【0053】
しかも、電磁鋼板ESが接着剤貯留部42(各吐出口46)から離間される前に大気解放弁48が作動され、接着剤貯留部42の内圧が大気圧と同等に低減される。このため、電磁鋼板ESが各吐出口46から離間される際に、接着剤が吐出口から不用意に吐出することを防止できる。つまり、背景技術の欄で説明した特許文献2、3に記載の先行技術のように、各吐出部から盛り上がった接着剤が電磁鋼板に転写される構成の場合、盛り上がった接着剤が周囲に拡散(飛散)して金型等に悪影響を及ぼす虞があるが、本実施形態ではこれを回避することができる。また、金型表面の清掃の手間を削減できるため、メンテナンスの時間を短縮可能になる。
【0054】
また、本実施形態では、各々に接着剤が充填された接着剤貯留部42内と控貯留部50内とが、ポペット弁56によって開閉される連通孔54を介して連通されている。控貯留部50内には、定圧供給装置52が一定圧力で接着剤を供給しており、電磁鋼板ESが吐出口46に密着されている状態では、上型14の押圧部15によってポペット弁56が開かれる。これにより、控貯留部50内の接着剤の圧力が接着剤貯留部42内の接着剤に加わり、接着剤貯留部42の吐出口46から吐出しようとする接着剤が電磁鋼板ESに接触する。
【0055】
上記のポペット弁56は、電磁鋼板ESが接着剤貯留部42から離間される前にばね60によって閉じられる。これにより、接着剤貯留部42内への接着剤の供給が停止される。このように、接着剤供給装置である定圧供給装置52が控貯留部50内に一定圧力で接着剤を供給する構成であるため、接着剤供給装置の構成を簡素化することができる。また、吐出口46の解放時に吐出口46から接着剤が吐出される圧力での接着剤の供給を維持したまま、順送速度の変化に追従して接着剤を電磁鋼板SEに塗布することができる。
【0056】
しかも、本実施形態では、ポペット弁56を駆動する弁駆動手段が、上型14及びばね60とされているため、アクチュエータによってポペット弁56を駆動する場合と比較して、弁駆動手段の構成を簡素化することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、順送金型12に設けられたストリッパ14A付きの上型14が、電磁鋼板ESを接着剤貯留部42に対して接離移動させる鋼板移動部とされており、順送金型12の下型26に接着剤貯留部42が設けられている。これにより、順送金型12による順送プレスの工程において、複数の鉄心鋼板CSを積層接着するための接着剤を電磁鋼板ESに塗布(転写)することができる。
【0058】
なお、上記第1実施形態では、接着剤塗布装置10が大気解放弁48を備えた構成にしたが、これに限らず、大気解放弁48が省略された構成にしてもよい。その場合でも、電磁鋼板ESが接着剤貯留部42から離間される前にポペット弁56が閉じられることで、接着剤貯留部42の内圧が低減される。このため、電磁鋼板ESが各吐出口46から離間される際に接着剤が吐出口46から吐出することを、接着剤の流動摩擦によって防止することも可能となる。この点は、以下に説明する第2及び第3の実施形態においても同様である。
【0059】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0060】
<第2の実施形態>
図8~
図10には、本発明の第2実施形態に係る積層鉄心の製造装置10が備える接着剤塗布装置70の周辺の構成が断面図にて示されている。この実施形態では、ポペット弁56が第1実施形態に係るポペット弁本体部56Aのみによって構成されており、第1実施形態に係るポペット弁駆動用ロッド部56B、貫通孔57及び押圧部15が省略されている。また、この実施形態では、ポペット弁56を上下に直線移動させる直動アクチュエータ72が弁駆動手段とされている。この直動アクチュエータ72は、例えば油圧シリンダ、エアシリンダ又はソレノイドとされている。
【0061】
この接着剤塗布装置70では、
図8に示されるように上型14が上昇している状態では、直動アクチュエータ72によってポペット弁56が連通孔54を閉じる位置に保持されることにより、控貯留部50と接着剤貯留部42とが隔たれている。この状態では、控貯留部50内に定圧供給されている接着剤が接着剤貯留部42内に流れ込まない状態となる(
図8の矢印C参照)。
【0062】
上型14及びストリッパ14Aが下降すると、第1実施形態と同様に、電磁鋼板ESが吐出口46と密着される(
図9参照)。そして、上型14が更に下降すると、直動アクチュエータ72が作動されてポペット弁56が下方へ移動される(
図10参照)。これにより、連通孔54が開放され、控貯留部50内の接着剤が接着剤貯留部42内に供給される(
図10の矢印S2参照)。その結果、接着剤貯留部42内の接着剤に圧力が加わり、接着剤貯留部42内の接着剤が吐出口46から吐出しようとする。これにより、吐出口46に密着している電磁鋼板ESに接着剤が接触する。
【0063】
その後、第1実施形態と同様に上型14が上昇される。この際には、図示は省略するが、直動アクチュエータ72が作動されてポペット弁56が上方へ移動され、連通孔54が閉じられると共に、第1実施形態と同様のタイミングで大気解放弁48が作動されて接着剤貯留部42の内圧が低減され、その後に電磁鋼板ESが接着剤貯留部42から離間される。これにより、第1実施形態と同様に電磁鋼板ESに接着剤が転写される。
【0064】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に電磁鋼板ESへの接着剤の転写量が均一になると共に、接着剤が各吐出口46から不用意に吐出することを防止又は抑制できる。しかも、この実施形態では、ポペット弁56が直動アクチュエータ72によって移動されるので、連通孔54の開閉タイミングの設定自由度が高くなる。
【0065】
<第3の実施形態>
図11~
図13には、本発明の第3実施形態に係る積層鉄心の製造装置10が備える接着剤塗布装置80の周辺の構成が断面図にて示されている。この実施形態は、第2実施形態に類似しているが、ポペット弁56の代わりに回転弁(ゲート弁)82が設けられ、直動アクチュエータ72の代わりに回転アクチュエータ84が設けられている。回転弁82は、ポペット弁本体部56Aと同様に、上下方向を軸方向とする円柱状に形成されており、控貯留部50に対して回転可能に支持されている。回転弁82の上端部には、フランジ状の弁部82Aが形成されている。この弁部82Aには、複数の貫通孔86(
図13参照)が周方向に並んで形成されている。
【0066】
上記複数の貫通孔86に対応して接着剤貯留部42の底壁には、連通部としての複数の連通孔88が形成されている。回転弁82が特定の回転位置(
図13に示される開位置)に位置する状態では、複数の連通孔88及び複数の貫通孔86を介して控貯留部50内と接着剤貯留部42内とが相互に連通される構成になっている。また、上記の回転アクチュエータ84は、例えばサーボモータとされており、回転弁82を回転可能とされている。
【0067】
この接着剤塗布装置80では、
図11に示されるように上型14が上昇している状態では、回転アクチュエータ84が上記の開位置とは異なる回転位置(
図11及び
図12に示される閉位置)に回転弁82を保持するにより、各連通孔88が回転弁82によって閉じられており、控貯留部50と接着剤貯留部42とが隔たれている。この状態では、控貯留部50内に定圧供給されている接着剤が接着剤貯留部42内に流れ込まない状態となる(
図11の矢印C参照)。
【0068】
上型14及びストリッパ14Aが下降すると、第1実施形態と同様に、電磁鋼板ESが吐出口46と密着される(
図12参照)。そして、上型14が更に下降すると、回転アクチュエータ84が作動されて回転弁82が開位置へ回転される(
図13参照)。これにより、各連通孔88が開放され、控貯留部50内の接着剤が接着剤貯留部42内に供給される(
図13の矢印S2参照)。その結果、接着剤貯留部42内の接着剤に圧力が加わり、接着剤貯留部42内の接着剤が吐出口46から吐出しようとする。これにより、吐出口46に密着している電磁鋼板ESに接着剤が接触する。
【0069】
その後、第1実施形態と同様に上型14が上昇される。この際には、図示は省略するが、回転アクチュエータ84が作動されて回転弁82が閉位置へ回転され、各連通孔88が閉じられると共に、第1実施形態と同様のタイミングで大気解放弁48が作動されて接着剤貯留部42の内圧が低減され、その後に電磁鋼板ESが接着剤貯留部42から離間される。これにより、第1実施形態と同様に電磁鋼板ESに接着剤が転写される。
【0070】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に電磁鋼板ESへの接着剤の転写量が均一になると共に、接着剤が各吐出口46から不用意に吐出することを防止又は抑制できる。しかも、この実施形態では、回転弁82が回転アクチュエータ84によって回転されるので、連通孔88の開閉タイミングの設定自由度が高くなる。
【0071】
<第4の実施形態>
図14~
図16には、本発明の第4実施形態に係る積層鉄心の製造装置10が備える接着剤塗布装置90の周辺の構成が断面図にて示されている。この実施形態では、接着剤貯留部42内に接着剤を供給可能で且つ接着剤貯留部42内の接着剤を吸引可能とされた接着剤供給装置92によって接着剤供給部44が構成されている。接着剤供給装置92は、その本体部である供給装置本体94と、供給装置本体94の作動を制御する制御部96とによって構成されている。
【0072】
この接着剤塗布装置90では、
図14に示されるように上型14が上昇している状態では、制御部96が供給装置本体94を停止させる。この状態では、接着剤貯留部42内に接着剤が供給されないため、各吐出口46から接着剤が吐出しない。
【0073】
上型14及びストリッパ14Aが下降すると、第1実施形態と同様に、電磁鋼板ESが吐出口46と密着される(
図15参照)。そして、上型14が更に下降すると、制御部96が供給装置本体94を作動させて接着剤貯留部42内に接着剤を供給する。これにより、接着剤貯留部42の内圧が上昇し、接着剤貯留部42内の接着剤が吐出口46から吐出しようとする。これにより、吐出口46に密着している電磁鋼板ESに接着剤が接触する。
【0074】
その後、第1実施形態と同様に上型14が上昇される。この際には、第1実施形態において大気解放弁48が作動されるのと同様のタイミングで、制御部96が供給装置本体94を作動させて接着剤貯留部42内の接着剤を吸引する。これにより、接着剤貯留部42の内圧が低減される。その後、電磁鋼板ESが接着剤貯留部42から離間され、第1実施形態と同様に電磁鋼板ESに接着剤が転写される。
【0075】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に電磁鋼板ESへの接着剤の転写量が均一になると共に、接着剤が各吐出口46から不用意に吐出することを防止又は抑制できる。しかも、この実施形態では、第1~第3実施形態に係る控貯留部50、大気解放弁48、開閉弁(ポペット弁56又は回転弁82)及び弁駆動手段が不要になる。
【0076】
なお、上記第4実施形態では、接着剤供給装置92が接着剤貯留部42内の接着剤を吸引可能とされた構成にしたが、これに限らず、接着剤供給装置92が接着剤貯留部42内の接着剤を吸引不能とされた構成にしてもよい。その場合でも、電磁鋼板ESが接着剤貯留部42から離間される前に供給装置本体94が停止されることで、接着剤貯留部42の内圧が低減される。このため、電磁鋼板ESが各吐出口46から離間される際に接着剤が吐出口46から吐出することを、接着剤の流動摩擦によって防止することも可能となる。
【0077】
<第5の実施形態>
図17には、本発明の第4実施形態に係る積層鉄心の製造装置10が備える接着剤塗布装置100における接着剤貯留部42の吐出口46周辺の構成が平面図にて示されている。また、
図18には、
図17のF18-F18線に沿った切断面が断面図にて示されている。この実施形態は、第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、接着剤貯留部42の上壁には、吐出口46内に侵入した空気Aを吐出口46から排出する空気排出孔(空気排出部)102が形成されている。空気排出孔102は、ここでは水平方向に延びており、一端部が吐出口46内に連通されている。空気排出孔102の他端部は、配管を介して接着剤回収容器(何れも図示省略)に接続されている。なお、
図17及び
図18においては、吐出口46と接着剤貯留部42内とを連通させた孔に符号47を付している。
【0078】
この接着剤塗布装置100では、供給工程において接着剤貯留部42内に接着剤が供給され、接着剤貯留部42の内圧が高まると、吐出口46内の接着剤が空気排出孔102を通って上記の接着剤回収容器側へ流れる(
図18の矢印GF参照)。このため、吐出口46内に空気Aが侵入した場合、上記のように接着剤回収容器側へ流れる接着剤と一緒に空気Aが吐出口46から排出される。これにより、接着剤が確実に電磁鋼板ESに転写されるようになる。
【0079】
つまり、
図19及び
図20に示されるように空気排出孔102を有しない構成では、吐出口46内に侵入した空気Aが電磁鋼板ESに接触する可能性がある。その場合、空気Aが接触した箇所では、接着剤が電磁鋼板ESに転写されなくなるため、設定された転写領域に適切に接着剤を転写させることができなくなるが、本実施形態ではこれを回避することができる。なお、接着剤回収容器へ流れた接着剤は、再利用することができる。
【0080】
以上、幾つかの実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【0081】
なお、2018年2月28日に出願された日本国特許出願2018-035336号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。