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特許7269230吸入器用の液体タンク、特に電子たばこ製品用の液体タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】吸入器用の液体タンク、特に電子たばこ製品用の液体タンク
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20230426BHJP
   A24F 40/48 20200101ALI20230426BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20230426BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20230426BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/48
A24F40/10
A24F47/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020520574
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077601
(87)【国際公開番号】W WO2019072915
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102017123870.0
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595112018
【氏名又は名称】ケルバー・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・レーネ
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー・マルク
(72)【発明者】
【氏名】ニーブーア・グンナー
【審査官】武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/096780(WO,A1)
【文献】特表2017-506509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 40/48
A24F 40/10
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの流入面(61)と1つの流出面(64)とを有する電気操作可能な1つのヒーター(60)と、このヒーターを支持するための1つのキャリア(23)と、前記ヒーター(60)を貫通して前記流入面(61)から前記流出面(64)までそれぞれ延在する複数の微細流路(62)とを備える吸入器用の気化器ユニット又は電子たばこ製品用の気化器ユニットであって、
前記ヒーター(60)は、加熱電圧を印加することによって前記複数の微細流路(62)を通じて移送された液体を気化させるように適合されている当該気化器ユニットにおいて、
1つの液体タンク(18)に直接に、又は1つの液体インターフェース及び/又は複数の液体管路を介して接合されているか又は接合可能である多孔性及び/又は毛細管状の1つの芯組織(19)が、前記ヒーター(60)の前記流入面(61)に配置されていて、
前記芯組織(19)が、前記キャリア(23)の1つの貫通開口部(25)を貫通して延在する1つの軸と、前記キャリア(23)と前記ヒーター(60)との間に配置された円板状の1つのカラー(28)とを有し、
前記カラー(28)の直径は、前記キャリア(23)の貫通開口部(25)の直径よりも大きいことを特徴とする気化器ユニット。
【請求項2】
前記気化器ユニット(20)は、前記ヒーター(60)及び前記カラー(28)を前記キャリア(23)上に挟持するように配置されていて且つ適合されている、プレストレスを発生させる少なくとも1つの挟持要素(37)を有することを特徴とする請求項1に記載の気化器ユニット。
【請求項3】
少なくとも2つの挟持要素(37)が、前記ヒーター(60)の相対向する両側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の気化器ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの挟持要素(37)は、前記ヒーター(60)に線状に接触する1つの挟持クランプ(38)を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の気化器ユニット。
【請求項5】
前記少なくとも1つの挟持要素(37)は、前記流出面に対して平行に横方向に、及び/又は流出面(64)に向かって直角方向に、及び/又は前記キャリア(23)の溝又は段差内で前記ヒーター(60)を挟持することを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項6】
前記少なくとも1つの挟持要素(37)は、前記ヒーター(60)に電気接触し給電するための電極として使用されることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項7】
前記キャリア(23)の孔(45)を貫通して延在する少なくとも1つの導電体(12)が、前記挟持要素(37)に接触するために設けられていることを特徴とする請求項6に記載の気化器ユニット。
【請求項8】
前記少なくとも1つの導電体(12)は、前記キャリア(23)の、前記ヒーター(60)に面しない側に離間して配置されている1つのプリント基板(26)に接触することを特徴とする請求項7に記載の気化器ユニット。
【請求項9】
前記キャリア(23)は、プリント基板として形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項10】
前記カラー(28)は、その全周にわたって前記キャリア(23)の前記貫通開口部(25)から張り出していることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項11】
前記キャリア(23)の前記貫通開口部(25)にわたる前記カラー(28)の全方向の余長部分kは、少なくとも0.1mmであることを特徴とする請求項10に記載の気化器ユニット。
【請求項12】
前記芯組織(19)の移送速度は、前記ヒーター(60)の最大気化速度と少なくとも同じ速度であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項13】
前記芯組織(19)は、材料である綿、セルロース、アセテート、ガラス繊維織物、ガラス繊維セラミック、焼結セラミック、セラミックペーパー、アルミノシリケートペーパー、発泡金属及び海綿状金属のうちの1つ以上の材料、又は前述の材料のうちの2つ以上の材料から成る複合構造から構成されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項14】
前記芯組織(19)はマイクロガラス繊維から成るフィルター層(55)を有することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項15】
前記芯組織(19)は、グラファイトペーパー層及び/又はセラミックペーパー層(35;56)を有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項16】
前記芯組織(19)は、多孔性のセラミック層(36;57)を有することを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【請求項17】
前記芯組織(19)は、油灯用芯層(58)を有することを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の気化器ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気操作可能な、特に扁平な、1つの流入面と1つの流出面とを有する1つのヒーターと、このヒーターを支持するための1つのキャリアと、当該ヒーターを貫通して当該流入面から当該流出面までそれぞれ延在する複数の微細流路とを備える吸入器用の気化器ユニット、特に電子たばこ製品用の気化器ユニットに関する。この場合、当該ヒーターは、加熱電圧を印加することによって当該複数の微細流路を通じて移送された液体を気化させるように適合されている。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、一般に、当該液体は、芯を用いて毛細管現象によりヒーターに供給される。当該使用された芯は、移送方向に沿って理想的には一定の気化速度を呈する。当該移送速度が、要求された気化速度よりも小さいと、当該芯は、当該ヒーターのすぐ近くで乾燥する。空焚き吸引(いわゆる、ドライパフ)が発生し、有害物質が放出される。
【0003】
扁平なヒーターの場合、当該ヒーターの表面にわたる一定の温度分布、すなわち均一で、有害物質を放出しない気化を保証するため、当該ヒーターは、それぞれの時間とそれぞれの場所とに対して芯によって可能な限り均一に湿潤されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、液体の気化時の有害物質の発生が回避される、高い熱的電気機械的安定性を呈する機能的に常に安定な気化器ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。
【0006】
本発明によれば、多孔性及び/又は毛細管状の1つの芯組織が、1つの液体タンクに液体透過性に接合されているか又は接合可能である、当該ヒーターの当該流入面に配置されている。当該芯組織が、当該キャリアの1つの貫通開口部を貫通して延在する1つの軸と、当該キャリアと当該ヒーターとの間に配置された円板状の1つのカラーとを有する。当該カラーの直径は、当該キャリアの貫通開口部の直径よりも大きい。それ故に、当該カラーは、当該貫通開口部を形成する当該キャリアの一部に当接し得て、こうして当該芯組織を保持できる。何故なら、当該カラーは、本発明によるその寸法に起因して、当該貫通開口部を通じて液体タンクの方向に移動(当該移動は、気化器ユニットの機能を損ない得る)できないからである。
【0007】
当該気化器ユニット、当該ヒーター及び当該カラーを当該キャリア上に挟持するように配置されていて且つ適合されている、プレストレスを発生させる少なくとも1つの挟持要素が設けられている。当該挟持要素を使用することで、芯組織のカラーが、当該ヒーターと当該キャリアとの間に挟持され、こうして当該芯組織が、当該気化器ユニット内に確実に且つ移動不可能に保持され得る。この場合、当該カラーは、その全周にわたって当該キャリアの当該貫通開口部から、特に少なくとも0.1mm以上の余長部分だけ張り出していることが特に有益である。当該全方向の余長部分によって、均一な挟持が達成され、漏洩が回避される。
【0008】
特に好適な実施の形態では、当該少なくとも1つの挟持要素は同時に、当該ヒーターに電気接触し、給電するために使用される。この場合、当該ヒーターに電気接触するための独立した電極は不要である。
【0009】
特に、少なくとも2つの挟持要素が、当該ヒーターの相対向する両側に設けられている。その結果、非常に高い機械的安定性が、比較的少ないコストで可能になる。好適な実施の形態では、少なくとも1つの挟持要素が、当該ヒーターに線状に接触する1つの挟持クランプを有する。当該挟持クランプと当該ヒーターとの間の線接触に起因して、当該挟持要素と当該ヒーターとが、良好に電気接続すると同時に、面接触がない故に、当該挟持要素と当該ヒーターとが、理想的に熱絶縁される。
【0010】
当該挟持要素は、当該流出面に対して平行に横方向に、及び/又は当該流出面に向かって直角方向に、及び/又は当該キャリアの溝又は段差内で当該ヒーターを挟持できる。最後に言及した可能性は、2つの接触線を当該挟持クランプと当該ヒーターとの間に含む。その結果、当該電気接触はさらに改善される。1つの挟持要素が、1つよりも多い挟持クランプを有してもよく、特に、これらの挟持クランプのうちの任意の2つの挟持クランプ又は全ての3つの挟持クランプを有してもよい。
【0011】
好適な実施の形態では、当該キャリアの孔を貫通して延在する少なくとも1つの導電体が、当該挟持要素に接触するために設けられ得る。当該導電体は、特に1つのプリント基板に接触する。当該プリント基板は、当該キャリアの、当該ヒーターに面しない側に離間して配置されている。しかし、好ましくは、当該キャリア自体が、プリント基板として形成されていることも可能である。その結果、部品の数が減少し、したがって製造コストが削減される。
【0012】
それにもかかわらず、好ましくは、芯組織が、機械式に固定されていて、ヒーターと液体貯蔵部とが、より確実に、空気不透過性に水力学的に結合され、同時に当該ヒーターの電気接続が保証されるように、当該芯組織をキャリア上に挟持する特に扁平なシリコンヒーターが提供される。ヒーターと貯蔵部とが、当該芯の相対向する両側に存在する。
【0013】
当該カラーは、好ましくは円板、フランジ又は別の平面内の円盤状のカラーでもよい。したがって、円板の場合、当該芯組織は、きのこ状に形成されている。本発明のカラーは、当該キャリアの貫通開口部を通じて液体を透過させると同時に、当該芯組織を当該キャリアと当該ヒーターとの間に挟持することを可能にする。当該ヒーターは、当該芯組織によって当該キャリアから熱絶縁されていると同時に、当該挟持は、導電体を通じて電流を当該ヒーターに供給する役割もする。当該電気接続は、気化中の熱的な圧力に対抗する、ヒーターと芯組織とに対する押圧力をもたらす。
【0014】
芯の表面とヒーターの表面との間の液体透過性の接触が重要である。当該液体透過性の接触はカラーを有してもよいが、当該カラーは必ずしも必要ではない。例えば、キャリアは、液体貯蔵部の場合によっては拡張されたハウジング壁から形成されてもよい。この場合、独立したキャリアにできる。
【0015】
ヒーターの流入領域内での蒸気気泡の発生(Blasenbildung)が、芯組織によって阻止され得る。当該領域内では、当該ヒーターの微細流路内で発生する蒸気粒子(Blaeschen)が、流入面から上流に向かって拡散できず、当該ヒーターの流入領域の乾燥が進行せず、したがって気化器の機能が損なわれない。当該芯組織の領域内で発生し得る蒸気粒子が、この芯組織の孔又は毛細管内で捕捉されていて、大きい蒸気気泡に成長し得ない。この場合、当該芯組織が、当該ヒーターの流入面に平面状に且つ接触して密接し、全ての微細流路を当該流入面で覆い、したがって当該微細流路内で発生する個々の蒸気粒子が、間違った方向に、すなわち当該微細流路の流入面から液体タンクに向かって流出できないことが重要である。むしろ、本発明の芯組織による流入面の遮断は、当該微細流路内で発生する当該微細流路内の蒸気粒子が、流出面に向かって移動することに寄与する。当該蒸気粒子は、この流出面で当該微細流路から流出され、したがって問題はもはや発生し得ない。
【0016】
ステップごとの気化が、喫煙者によって監視されないにもかかわらず、エアロゾルが、ほぼ均一に、心地よい風味で、繰り返し可能に、正確に生成されることが保証されるように、液体の個々の部分の個々の成分の温度及び/又は気化が異なる場合でも、個々の気化ステップの期間が、短く保持され得て、及び/又は、当該個々の気化ステップが、1つの制御周波数によって制御され得る。特に、好ましくは最初に、液体のより容易に沸騰する成分が、第1気化期間中に第1温度Aで気化され、次いで、当該液体のより高温で沸騰する成分が、第2気化期間中に温度Aを超える第2温度Bで気化される。
【0017】
好ましくは、当該芯組織の移送速度は、当該ヒーターの最大気化速度と少なくとも同じ速度である。したがって、常に、液体の十分な移送が保証される。その結果、当該ヒーターが、不利に空になることが阻止される。この場合、当該気化速度は、当該ヒーターの幾何構造(容積対表面)と気化器の出力とによって決定される。
【0018】
したがって、毛細管状の芯組織の全体の容積を通じて液体をヒーターに均一に移送するように、当該芯組織は適合されている。当該芯組織の移送速度が、少なくとも当該ヒーターの気化速度を制御できるように、当該移送速度と当該気化速度とが互いに調整されている。こうして、非常に少ない液体が、気化工程中に当該ヒーターに流入することによって、このヒーターが乾燥することが阻止される。
【0019】
当該芯組織は、十分に耐熱性で、多孔性及び/又は毛細管状の、適切な移送速度を呈するあらゆる物質から成り得る。好ましくは、当該芯組織の全部又は一部が、綿、セルロース、アセテート、ガラス繊維織物、ガラス繊維セラミック、焼結セラミック、セラミックペーパー、アルミノシリケートペーパー、発泡金属、海綿状金属、及び/又は前述の材料のうちの2つ以上の材料から成る複合構造から構成され得る。
【0020】
以下に、本発明を好適な実施の形態に基づいて添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電子たばこ製品の概略図である。
図2】気化器ユニットの投影横断面図である。
図3】本発明の実施の形態における気化器ユニットの概略横断面図である。
図4】気化器ユニットのキャリアのヒーター側の図である。
図5】気化器ユニットのキャリアの液体を移送する反対側の図である。
図6】本発明の別の実施の形態における気化器ユニットの横断面である。
図7】キャリアの貫通開口部にわたる芯カラーの余長部分の領域内の図6による断面図である。
図8】本発明の別の実施の形態における気化器ユニットの横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
吸入器10、ここでは電子たばこ製品は、空気通路30が少なくとも1つの空気流入口31とたばこ製品10のマウスエンド32にある空気流出口24との間に設けられているハウジング11を有する。この場合、たばこ製品10のマウスエンド32は、喫煙者が喫煙の目的で吸引し、これによりたばこ製品10が負圧にされ、気流34が空気通路30内で発生する端部を意味する。
【0023】
たばこ製品10は、好ましくは基幹部16と消耗ユニット17とから成る。この消耗ユニット17は、気化器ユニット20と液体タンク18とを有し、特に交換可能なカートリッジとして構成されている。流入口31を通じて吸引された空気が、空気通路30内で少なくとも1つの気化器ユニット20に向けて又は当該気化器ユニット20に沿って送られる。気化器ユニット20は、少なくとも1つの液体50が貯蔵されている少なくとも1つの液体タンク18に接続されているか又は接続可能である。気化器ユニット20は、この気化器ユニット20の液体タンク18から供給される液体50を気化させ、当該気化した液体をエアロゾル/蒸気として流出面64で気流34中に混入する。液体タンク18の有益な容積は、0.1ml~5ml、特に0.5ml~3ml、さらに特に0.7ml~2mlの範囲内にあるか又は1.5mlである。
【0024】
さらに、電子たばこ10は、蓄電部14と電子制御機構部15とを有する。一般に、蓄電部14は、基幹部16内に配置されていて、特に、使い捨ての電気化学電池又は再使用可能な電気化学電池、例えばリチウムイオン電池でもよい。電子制御機構部15は、デジタルデータ処理装置、特にマイクロプロセッサ及び/又はマイクロコントローラを(図1に示されたような)基幹部16及び/又は消耗ユニット17内に有する。
【0025】
好ましくはセンサ、例えば圧力スイッチ又は流れスイッチが、ハウジング11内に配置されている。この場合、制御機構部15は、当該センサから出力されるセンサ信号に基づいて、喫煙者が喫煙するためにたばこ製品10のマウスエンド32で吸引することを確認できる。この場合、液体タンク18からの液体50をエアロゾル/蒸気として気流34中に混入するため、制御機構部15は、気化器ユニット20を制御する。
【0026】
液体タンク18内に貯蔵された配量すべき液体50は、例えば、1,2-プロピレングリコール、グリセリン、水、少なくとも1つのアロマ(フレーバー)及び/又は少なくとも1つの作用物質、特にニコチンから成る混合物である。
【0027】
消耗ユニット又はカートリッジ17は、当該消耗ユニット又はカートリッジ17に関する情報又はパラメータを記憶するために、好ましくは不揮発性のデータメモリを有する。当該データメモリは、電子制御機構部15の一部でもよい。当該データメモリ内には、好ましくは、液体タンク18内に貯蔵された液体の組成に関する情報、プロセスプロファイル、特に出力制御/温度制御に関する情報、状態監視又はシステム検査、例えば漏れ試験に関するデータ、コピープロテクション及び改竄保護に関するデータ、消耗ユニット又はカートリッジ17を一義的に識別するためのID(識別情報)、シリアルナンバー、製造年月日及び/又は使用期限、及び/又は、吸引回数(喫煙者による喫煙の回数)若しくは使用期間が記憶されている。当該データメモリは、好ましくは、接触子及び/又は導線を介して制御機構部15に接続されているか又は接続可能である。
【0028】
本発明の好適な実施の形態が、図2に示されている。気化器ユニット20は、ブロック状の、好ましくは一体構造の、導電材料、好ましくはシリコン、ドープされたセラミック、金属セラミック、フィルタセラミック、半導体、特にゲルマニウム、グラファイト、半金属及び/又は金属から成るヒーター60を有する。ヒーター60の全体が、導電材料から成る必要はない。例えば、ヒーター60の表面が、導電性に、例えば金属で被覆されていることで十分である。この場合、全ての表面が被覆される必要はなく、例えば、導電路が、非導電性の基体上に設けられてもよい。
【0029】
ヒーター60は、液体を導くようにこのヒーター60の流入面61を流出面64に接続する複数の微細流路62を有する。流入面61は、液体を導くように芯組織19を介して液体タンク18に接続されている。芯組織19は、毛細管力によって液体を液体タンク18からヒーター60に受動的に送る役割をする。ヒーター60から芯組織19及び/又は液体タンク18内への気泡を含む液体の望ましくない逆流を回避するため、ヒーター60に対する接触領域61内の芯組織19は、液体を均一に分散させ、断熱効果を奏させ、この芯組織19の比較的小さい複数の孔及び/又は薄い毛細管によって或る種の逆止弁を構成する役割をする。
【0030】
微細流路62の平均直径は、特に5μm~200μmの範囲内にあり、さらに好ましくは30μm~150μmの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは50μm~100μmの範囲内にある。これらの寸法に起因して、毛細管作用が有益に発生する。その結果、微細流路62が、液体で充填されるまで、流入面61から微細流路62内に浸入する液体が、微細流路62を通じて上に向かって上昇する。ヒーター60の多孔率と呼ばれ得るヒーター60に対する微細流路62の体積比は、例えば、10%~50%の範囲内にあり、好ましくは15%~40%の範囲内にあり、さらに好ましくは20%~30%の範囲内にあり、例えば25%である。
【0031】
微細流路62を有するヒーター60の面の流路長さは、例えば0.5mm~3mmの範囲内にある。微細流路62を有するヒーター60の面の寸法は、例えば、0.95mm×1.75mm、又は1.9mm×1.75mm又は1.9mm×0.75mmであり得る。ヒーター60の辺の長さは、例えば0.5mm~5mmの範囲内にあり、好ましくは0.75mm~4mmの範囲内にあり、さらに好ましくは1mm~3mmの範囲内にあり得る。ヒーター60の面積(チップサイズ)は、例えば1mm×3mm又は2mm×3mmであり得る。
【0032】
ヒーター60の幅b(図2参照)は、好ましくは1mm~5mmの範囲内にあり、さらに好ましくは2mm~4mmの範囲内にあり、例えば3mmである。ヒーター60の高さh(図2参照)は、好ましくは0.05mm~1mmの範囲内にあり、さらに好ましくは0.1mm~0.75mmの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは0.2mm~0.5mmの範囲内にあり、例えば0.3mmである。
【0033】
微細流路62の数は、好ましくは4~1000の範囲内にある。こうして、微細流路62内への熱入力が最適化され得て、保証された高い気化出力と十分に大きい蒸気流出面とが実現され得る。
【0034】
複数の微細流路62が、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形又はその他の別の形のアレイを成して配置されている。当該アレイは、s個の列とz個の行とを有するマトリクスとして構成され得る。この場合、sは、好ましくは2~50の範囲内にあり、さらに好ましくは3~30の範囲内にあり、及び/又は、zは、好ましくは2~50の範囲内にあり、さらに好ましくは3~30の範囲内にある。こうして、保証された高い気化出力を有する効率的に且つ簡単に製造可能な複数の微細流路62の配置が実現され得る。
【0035】
これらの微細流路62の横断面は、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形又はその他の別の形でもよく、及び/又は長手方向に部分的に変化してもよく、特に大きくしてもよく、小さくしてもよく又は一定のままでもよい。
【0036】
1つ又はそれぞれの微細流路62の長さは、好ましくは100μm~1000μmの範囲内にあり、さらに好ましくは150μm~750μmの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは180μm~500μmの範囲内にあり、例えば300μmである。こうして、最適な液体吸収及び配分(Portionsbildung)が、ヒーター60から微細流路62内への十分に良好な熱入力で実現され得る。
【0037】
2つの微細流路62の間隔は、特に1つの微細流路62の細径の1.3倍である。この場合、当該間隔は、2つの微細流路62の中心軸線同士の間隔である。当該間隔は、1つの微細流路62の細径の好ましくは1.5~5倍でもよく、さらに好ましくは2~4倍でもよい。こうして、当該複数の微細流路内への最適な熱入力と、当該複数の微細流路の十分に安定な配置及び壁厚とが保証され得る。
【0038】
気化器ユニット20は、特に制御機構部15によって制御可能な加熱電圧源71を有する。当該加熱電圧源71は、ヒーター60の対向する両面の複数の電極72を介してこのヒーター60に接続されている。その結果、加熱電圧源71から発生した電圧Uhが、電流をヒーター60に通電させる。導電性のヒーター60のオーミック抵抗に起因して、当該通電は、ヒーター60を加熱し、それ故に複数の微細流路62内に含まれている液体を気化させる。したがって、ヒーター60は、気化器として作用する。こうして発生した蒸気/エアロゾルが、これらの微細流路62から流出面64に向かって放出し、気流34が混入される(図1参照)。喫煙者の吸引によって引き起こされた空気通路30を通じた気流34の確認時に、制御機構部15が、加熱電圧源71をより正確に制御する。この場合、自動的な加熱によって、これらの微細流路62内に存在する液体が、蒸気/エアロゾルとしてこれらの微細流路62から放出される。
【0039】
特に、使用される液体混合物に適合された電圧曲線Uh(t)が、吸入器10のデータメモリ内に記憶されている。当該記憶は、電圧曲線Uh(t)を使用される液体に適合されるように予め設定することを可能にする。その結果、ヒーター60の加熱温度と、毛細管状の微細流路62の温度とが、それぞれの液体の既知の気化特性にしたがって気化工程にわたって時間制御され得る。これにより、最適な気化結果が入手可能である。気化温度は、特に100℃~400℃、さらに好ましくは150℃~350℃、いっそうさらに好ましくは190℃~290℃の範囲内にある。
【0040】
好ましくは1000μm未満、さらに好ましくは750μm、さらにいっそう好ましくは500μm未満の層厚を有するヒーター60が、薄膜技術によって、好ましくは1つのウェハの複数の部分から製造され得る。ヒーター60の表面は、好ましくは親水性でもよい。ヒーター60の流出面64は、好ましくは微細構造化されてもよく、又は複数の微細溝を有してもよい。
【0041】
液体が、好ましくは1μl~10μl、さらに好ましくは2μl~10μl、さらにいっそう好ましくは3μl~5μlの範囲内で、一般には4μlで喫煙者の吸引ごとに添加されるように、気化器ユニット20は調整されている。好ましくは、気化器ユニット20は、吸引ごとの液体量/蒸気量に関して調整可能でもよい。
【0042】
多孔性で及び/又は毛細管状で液体透過性の芯組織19が、ヒーター60の流入面61に配置されている。図2、3、6及び8で分かるように、芯組織19は、ヒーター60の流入面61に平面状に接触し、流入面側で全ての微細流路62を覆う。当該芯組織は、ヒーター60に対向する面で液体タンク18に液体透過性に接合されている。図1~3に示された芯組織19に対する液体タンク18の直接の接合は、一例に過ぎない。特に、1つの液体インターフェース及び/又は複数の液体管路が、液体タンク18と芯組織19との間に設けられてもよい。それ故に、液体タンク18は、芯組織19から離間して配置されてもよい。液体タンク18の寸法が、芯組織19よりも大きくできる(例えば、図3参照)。芯組織19は、例えば、液体タンク18のハウジングの開口部内に嵌入されてもよい。複数の気化器ユニット20が、1つの液体タンク18に割り当てられてもよい。
【0043】
微細流路62の無流通と、このことから発生する問題とを阻止するため、芯組織19は、多孔性及び/又は毛細管状の材料から成る。当該材料は、ヒーター60から気化する液体を、毛細管作用によって液体タンク18からヒーター60に十分な量で受動的に送ることができる。
【0044】
芯組織19に通流する液体の望ましくない加熱を回避するため、芯組織19は、好ましくは絶縁性材料から成る。芯組織19が、芯組織19が、伝導性材料から成る場合(このことは排除されない)、好ましくは、電気絶縁性材料及び/又は熱絶縁性材料から成る絶縁層を貫通して延在し、複数の微細流路62に対応する複数の貫通開口部を有する当該絶縁層、例えばガラス、セラミック又は合成樹脂が、芯組織19とヒーター60との間に設けられている。
【0045】
芯組織19は、好ましくは、材料である綿、セルロース、アセテート、ガラス繊維織物、ガラス繊維セラミック、焼結セラミック、セラミックペーパー、アルミノシリケートペーパー、発泡金属、海綿状金属、適切な移送速度を呈するその他の耐熱性の材料、多孔性の材料及び/又は毛細管状の材料のうちの1つ以上の材料、又は前述の材料のうちの2つ以上の材料から成る複合構造から構成される。実際の好適な実施の形態では、芯組織19は、少なくとも1つのセラミックペーパー及び/又は多孔性セラミックを含み得る。芯組織19の体積は、好ましくは1mm3~10mm3の範囲内にあり、さらに好ましくは2mm3~8mm3の範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは3mm3~7mm3の範囲内にあり、例えば5mm3である。
【0046】
気化器ユニット20の好適な実施の形態が、図3~8に示されている。一般に、芯組織19は、1つの部材から成ってもよく(図8)、又は複数の部材から成ってもよい(図3及び6)。
【0047】
図6による実施の形態では、芯組織19は、例えば、ヒーター60の流入面61に平面状に接触して密接する芯層35とこの芯層35に密接する別の芯層36とを有する2つの層から成る。この芯層35は、好ましくは、ガラスフィルタを有するか又は有しないグラファイトペーパー層又はセラミックペーパー層でもよい。芯層36は、好ましくは多孔性のセラミックでもよい。
【0048】
図3による実施の形態では、芯組織19は、例えば2つよりも多い、4つよりも多い複数の層を有する。特に1つ以上のマイクロガラス繊維層から成り得るフィルター層55が、ヒーター60に直接に密接して且つこのヒーター60に平面状に接触して配置されている。グラファイトペーパー層56が、当該フィルター層55に平面状に密接して配置されてもよい。好ましくは、複数の芯層57,58、例えばセラミック芯層57及び油灯用芯層58、すなわち従来では油灯の芯用に使用されるガラス繊維の芯材料が、当該グラファイトペーパー層56に平面状に密接して設けられている。
【0049】
液体タンク18からヒーター60への液体の毛細管現象による移送のための毛細管力は、主に又は完全に芯層57,58によって提供され得る。通常は、芯組織19の全ての層が、当該液体の毛細管現象による移送のための毛細管力を提供する必要はない。芯組織19のただ1つの層が、当該液体の毛細管現象による移送のための毛細管力を提供するだけで十分である。
【0050】
図3~8に示されているように、気化器ユニット20は、ヒーター60及び/又は芯組織19を保持するために、特に板状キャリア23を有する。このキャリア23は、適切な材料、例えばセラミック、ガラス及び/又は繊維強化プラスチック、例えばプリント基板材料を含む合成樹脂から成り得て、芯組織19が貫通して延在し且つこの芯組織19が保持されている1つの貫通開口部25を有する。
【0051】
キャリア23の厚さD(図6参照)は、好ましくは0.5mm~4mmの範囲内にあり、さらに好ましくは1mm~3mmの範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは1mm~2mmの範囲内にあり、例えば1.6mm又は2mmでもよい。キャリア23の貫通開口部25内に配置された芯層57の厚さは、キャリア23の厚さに適合に適合されてもよく、又はこの厚さに相当してもよく、それ故に例えば、同様に1.6mm又は2mmでもよい。
【0052】
貫通開口部25は、好ましくは、製造しやすい円形を成す。貫通開口部25の直径d又は場合によっては平均直径(図6参照)は、好ましくは0.5mm~4mmの範囲内にあり、好ましくは1mm~3mmの範囲内にあり、さらに好ましくは1.5mm~2.5mmの範囲内にあり、例えば2mmである。
【0053】
貫通開口部25の直径dは、好ましくは、ヒーター60の幅b以下又は未満である(図6参照)。貫通開口部25の容積又は貫通開口部25内の芯の容積は、好ましくは1mm3~8mm3の範囲内にあり、2mm3~6.5mm3の範囲内にあり、さらに好ましくは2.5mm3~5mm3の範囲内にある。
【0054】
芯組織19は、カラー状部又はカラー28と、軸部又は軸29とを有するか、又はこれらの構成要素28,29から成る。
【0055】
カラー28は、ヒーター60とキャリア23との間に配置されていて、ヒーター60の流入面61に平面状に接触して密接し、このときに全ての微細流路62を覆う。当該カラーの厚さs(図8参照)は、好ましくは0.05mm~1mmの範囲内にあり、好ましくは最大で0.8mmであり、さらに好ましくは最大で0.6mmであり、さらにいっそう好ましくは最大で0.4mmであり、例えば0.2mmである。
【0056】
軸部29は、ヒーター60に面しないカラー28の面でこのカラー28に密接する。カラー28と軸部29との間の実際又は仮想の分離面が、ヒーター60に面したキャリア23の表面と同一平面上にあってもよい。軸部29は、カラー28から見て芯部分19の特に残りの部分を意味し得る。貫通開口部25内での軸29の追加の保持力を発生させるため、軸部29は、取り付ける前の自由な状態で余裕寸法(Uebermass)、すなわち貫通開口部25よりも大きい直径を有してもよい。
【0057】
カラー28及び軸29は、1つの部材から形成されてもよい(図8参照)。カラー28及び軸29はそれぞれ、固有の部品でもよく、対応する複数の芯部分35,36から形成されてもよい(図6参照)。図3は、カラー28及び/又は軸29がそれぞれ、複数の部材から形成され得て、対応するそれぞれの芯部分55,56又は57,58から形成され得ることを示す。
【0058】
カラー28の直径(図6参照)は、貫通開口部25、したがって貫通開口部25の領域内の軸29の直径dよりも大きい。特に、カラー28は、その全周にわたって貫通開口部25から余長部分kだけ張り出している。貫通開口部25にわたるカラー28の余長部分kは、好ましくは少なくとも0.1mmであり、さらに好ましくは少なくとも0.2mmであり、さらにいっそう好ましくは少なくとも0.3mmであり、特に好ましくは少なくとも0.4mmである。
【0059】
カラー28が、貫通開口部25から全方向に張り出しているので、当該カラー28、すなわち芯組織19の全体が、キャリア23上へのヒーター60の挟持時に気化器ユニット20内に確実に保持される。
【0060】
ヒーター60は、このヒーター60の相対向する両側でこのヒーター60を把持する少なくとも2つの挟持要素37によってキャリア23上に挟持される(特に図4参照)。それぞれの挟持要素37は、好ましくは挟持クランプ38を有する。当該挟持クランプ38は、互いに離間した2つの固定点39でキャリア23に弾性固定されていて、プレストレスを発生させる。ヒーター60及びカラー28が、キャリア23上に固定挟持される。
【0061】
1つの挟持クランプ38の2つの固定点39同士の間隔aは、好ましくは4mm~10mmの範囲内にあり、さらに好ましくは5mm~8mmの範囲内にあり、例えば6mmである。2つの挟持クランプ38の複数の固定点39同士の間隔cは、好ましくは5mm~12mmの範囲内にあり、さらに好ましくは6mm~10mmの範囲内にあり、例えば8mmである。例えば長方形のキャリア23の寸法は、好ましくは6mm~20mmの範囲内にあり、さらに好ましくは8mm~17mmの範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは10mm~14mmの範囲内にある。
【0062】
特に好ましくは、これらの挟持要素37は同時に、ヒーター60に接触し、このヒーター60に加熱電流を供給するために使用される。このため、これらの挟持要素37又は挟持クランプ38は、好ましくは、導電性の材料から成り、例えば金属線でもよく、例えば黄銅線でもよい。挟持クランプ38とヒーター60との間の線接触に起因して、挟持要素37とヒーター60とが、良好に電気接続すると同時に、面接触がない故に、挟持要素37とヒーター60とが、理想的に熱絶縁される。ヒーター60から挟持要素37への熱放出が僅かであるので、電極38は、ヒーター60よりも著しく冷たいままである。
【0063】
挟持クランプ38は、流出面64に対して平行に横方向にヒーター60を挟持してもよく(図6の位置38A)、及び/又は流出面64に向かって直角方向にヒーター60を挟持してもよく(図6の位置38B)、及び/又は溝又は段差内で、例えば30°~60°の中間角度を成してヒーター60を挟持してもよく、流出面64に向かって横方向にヒーター60を挟持してもよく、流出面64に向かって直角方向にヒーター60を挟持してもよい(図6の位置38C)。最後に言及した可能性は、2つの接触線を挟持クランプ38とヒーター60との間に含む。その結果、当該電気接触はさらに改善される。1つの挟持要素37が、1つよりも多い挟持クランプ38を有してもよく、特に、これらの挟持クランプ38A,38B,38Cのうちの任意の2つの挟持クランプ又は全ての3つの挟持クランプを有してもよい。
【0064】
電子制御機構部15とヒーター60に電力を供給するための電源46とに電気接続するため、挟持要素37が、導電体12によって、好ましくは消耗ユニット17内に設けられているプリント基板26(PCB)に接続されている。好ましくは、消耗ユニット17の電子部品が、プリント基板26上に配置されている。
【0065】
図3による実施の形態では、プリント基板26は、独立した部品であり、キャリア23から離間した、ヒーター60に面しない下面43に配置されている。プリント基板26は、芯組織19が貫通して延在し、この芯組織19が保持され得る1つ貫通開口部27を有する。ここでは、複数の導電体12が、例えば4つの金属ピン44を有する。これらの金属ピン44は、キャリア23の上面33の複数の固定点39内で複数の挟持要素37に接続されていて、それぞれ1つの貫通孔45を通じてキャリア23を貫通されていて、反対側の下面43でキャリア23とプリント基板26との間の間隔をブリッジする。
【0066】
別の実施の形態では、キャリア23は、プリント基板26を形成する。このとき、導電体12は省略できる。気化器ユニット20自体が、プリント基板を有しないで、挟持クランプ38が、例えばフレキシブルに絶縁された導電体12を介して、又は別の適切な方法で、例えば基幹部16内に配置されたプリント基板に接続されていることも可能である。
【0067】
カラー28の最適な取り付け位置を規定するため、カラー28に適合された凹部74が、キャリア23の上面33に設けられてもよい。
【0068】
キャリア23を液体タンク18又はキャリア23の下に配置された別の構成要素のハウジングに対して密封するため、密封要素73、例えば密封リングが、キャリア23の下面43に配置されてもよい(図6及び8参照)。
【0069】
加熱電圧源71によって生成されたヒーター60の制御周波数は、好ましくは1Hz~50Hzの範囲内にあり、好ましくは30Hz~30kHzの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは100Hz~25kHzの範囲内にある。
【0070】
以下に、気化工程のシーケンスを説明する。
【0071】
初期状態では、加熱工程用の電圧源71は停止されている。
【0072】
液体50を気化させるため、ヒーター60用の電圧源71が起動される。この場合、ヒーター60内と微細流路82内との気化温度が、使用される液体混合物の個々の気化挙動に適合されているように、電圧Uhが調整される。その結果、局所的な過熱の危険と、当該加熱による有害物質の発生とが阻止される。
【0073】
微細流路62の容積に相当するか又は当該容積に関連する液体量が気化した直後に、加熱電圧源71が停止される。好ましくは、液体特性及び液体量が、正確に既知であるので、この時点は、非常に正確に制御され得る。それ故に、気化器ユニット20のエネルギー消費が、公知の装置に比べて減少され得る。何故なら、必要な気化エネルギーが、配量され得て、したがってより正確に生成され得るからである。ヒーター60の当該構成に起因して、このヒーター60は、従来の平面状の気化器(Flaechenverdampfer)とは違って容量式の気化器(Volumenverdampfer)とも呼ばれ得る。
【0074】
当該加熱工程の終了後に、微細流路62が、ほぼ又は完全に空にされる。このとき、当該微細流路82が、芯組織19を通じた液体の供給によって再び充填されるまで、加熱電圧源71が停止されたままである。当該微細流路82が、芯組織19を通じた液体の供給によって再び充填されると、その次の加熱サイクルが、加熱電圧源71を起動することによって開始され得る。
【0075】
気化器ユニット20は、特に微小電気機械システム技術に基づいて、特にシリコンから製造されていて、それ故に、好ましくは微小電気機械システムである。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る:
1.
電気操作可能な、特に扁平な、1つの流入面(61)と1つの流出面(64)とを有する1つのヒーター(60)と、このヒーターを支持するための1つのキャリア(23)と、前記ヒーター(60)を貫通して前記流入面(61)から前記流出面(64)までそれぞれ延在する複数の微細流路(62)とを備える吸入器用の気化器ユニット、特に電子たばこ製品用の気化器ユニットであって、
前記ヒーター(60)は、加熱電圧を印加することによって前記複数の微細流路(62)を通じて移送された液体を気化させるように適合されている当該気化器ユニットにおいて、
1つの液体タンク(18)に液体透過性に接合されているか又は接合可能である多孔性及び/又は毛細管状の1つの芯組織(19)が、前記ヒーター(60)の前記流入面(61)に配置されていて、
前記芯組織(19)が、前記キャリア(23)の1つの貫通開口部(25)を貫通して延在する1つの軸と、前記キャリア(23)と前記ヒーター(60)との間に配置された円板状の1つのカラー(28)とを有し、
前記カラー(28)の直径は、前記キャリア(23)の貫通開口部(25)の直径よりも大きい当該気化器ユニット。
2.
前記気化器ユニット(20)は、前記ヒーター(60)及び前記カラー(28)を前記キャリア(23)上に挟持するように配置されていて且つ適合されている、プレストレスを発生させる少なくとも1つの挟持要素(37)を有する上記1に記載の気化器ユニット。
3.
少なくとも2つの挟持要素(37)が、前記ヒーター(60)の相対向する両側に設けられている上記2に記載の気化器ユニット。
4.
前記少なくとも1つの挟持要素(37)は、前記ヒーター(60)に線状に接触する1つの挟持クランプ(38)を有する上記2又は3に記載の気化器ユニット。
5.
前記少なくとも1つの挟持要素(37)は、前記流出面に対して平行に横方向に、及び/又は流出面(64)に向かって直角方向に、及び/又は前記キャリア(23)の溝又は段差内で前記ヒーター(60)を挟持する上記2~4のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
6.
前記少なくとも1つの挟持要素(37)は、前記ヒーター(60)に電気接触し給電するための電極として使用される上記2~5のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
7.
前記キャリア(23)の孔(45)を貫通して延在する少なくとも1つの導電体(12)が、前記挟持要素(37)に接触するために設けられている上記6に記載の気化器ユニット。
8.
前記少なくとも1つの導電体(12)は、前記キャリア(23)の、前記ヒーター(60)に面しない側に離間して配置されている1つのプリント基板(26)に接触する上記7に記載の気化器ユニット。
9.
前記キャリア(23)は、プリント基板として形成されている上記1~8のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
10.
前記カラー(28)は、その全周にわたって前記キャリア(23)の前記貫通開口部(25)から張り出している上記1~9のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
11.
前記キャリア(23)の前記貫通開口部(25)にわたる前記カラー(28)の全方向の余長部分kは、少なくとも0.1mmである上記10に記載の気化器ユニット。
12.
前記芯組織(19)の移送速度は、前記ヒーター(60)の最大気化速度と少なくとも同じ速度である上記1~11のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
13.
前記芯組織(19)は、材料である綿、セルロース、アセテート、ガラス繊維織物、ガラス繊維セラミック、焼結セラミック、セラミックペーパー、アルミノシリケートペーパー、発泡金属、海綿状金属、適切な移送速度を呈するその他の耐熱性の材料、多孔性の材料及び/又は毛細管状の材料のうちの1つ以上の材料、又は前述の材料のうちの2つ以上の材料から成る複合構造から構成される上記1~12のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
14.
前記芯組織(19)は、特にマイクロガラス繊維から成るフィルター層(55)を有する上記1~13のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
15.
前記芯組織(19)は、グラファイトペーパー層及び/又はセラミックペーパー層(35;56)を有する上記1~14のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
16.
前記芯組織(19)は、多孔性のセラミック層(36;57)を有する上記1~15のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
17.
前記芯組織(19)は、油灯用芯層(58)を有する上記1~16のいずれか1つに記載の気化器ユニット。
【符号の説明】
【0076】
10 吸入器、たばこ製品、電子たばこ
11 ハウジング
12 導電体
14 蓄電部、エネルギー源
15 電子制御機構部
16 基幹部
17 消耗ユニット、カートリッジ
18 液体タンク
19 芯組織、芯、芯部分
20 気化器ユニット
23 板状キャリア、キャリア
24 空気流出口
25 貫通開口部
26 プリント基板
27 貫通開口部
28 カラー状部、カラー、芯カラー
29 軸部、軸
30 空気通路
31 空気流入口、流入口
32 マウスエンド
33 キャリアの上面
34 気流
35 芯層、芯部分、グラファイトペーパー層、セラミックペーパー層
36 芯層、芯部分、セラミック層
37 挟持要素
38 挟持クランプ、電極
38A 挟持クランプ
38B 挟持クランプ
38C 挟持クランプ
39 固定点
43 キャリアの下面
44 金属ピン
45 貫通孔、孔
46 電源
50 液体
55 フィルター層、芯部分
56 グラファイトペーパー層、芯部分、セラミックペーパー層
57 芯層、セラミック芯層、芯部分、セラミック層
58 芯層、油灯用芯層、芯部分
60 ヒーター
61 流入面
62 微細流路
64 流出面
71 加熱電圧源
72 電極
73 密封要素、密封リング
74 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8