(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】廃水処理用のバイポーラ電極を備えた電解セル
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20230426BHJP
【FI】
C02F1/461 101Z
(21)【出願番号】P 2020549749
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 US2019023229
(87)【国際公開番号】W WO2019183260
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513305179
【氏名又は名称】アクシン ウォーター テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Axine Water Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ブレンダン
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-086786(JP,A)
【文献】特開2006-289304(JP,A)
【文献】特開平06-192869(JP,A)
【文献】登録実用新案第3126163(JP,U)
【文献】特開2012-111990(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008597(WO,A1)
【文献】米国特許第03819503(US,A)
【文献】米国特許第03759815(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46-1/48
C25B 1/00-9/77、13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理用の電解セルであって、
a.複数のアノードを含むアノードアセンブリであって、複数のアノードが、導電性材料からなるネジ付きボルトに沿って、間隔を空けて向かい合う関係で並べられ、アノードの端部が、予め設定された部分にわたって重なり合い、かつアノードを互いから予め設定された距離
Bで維持する導電性材料からなるスペーサによって分離されている、アノードアセンブリと、
b.複数のカソードを含むカソードアセンブリであって、複数のカソードが、導電性材料からなるネジ付きボルトに沿って、間隔を空けて向かい合う関係で並べられ、カソードの端部が、予め設定された部分にわたって重なり合い、かつカソードを互いから予め設定された距離
Aで維持する導電性材料からなるスペーサによって分離されている、カソードアセンブリと、
c.少なくとも1のバイポーラ電極アセンブリであって、
別個のプレートとして形成された、アノードとして動作する一連のバイポーラ電極と、カソードとして動作する一連のバイポーラ電極と含み、それらバイポーラ電極が、導電性材料からなるネジ付きボルトに沿って交互に並べられ、それらバイポーラ電極の端部が、予め設定された部分にわたって重なり合い、かつアノードとして動作するバイポーラ電極を互いに予め設定された距離Cで維持するとともに、カソードとして動作するバイポーラ電極を互いに予め設定された距離Dで維持する導電性材料からなるスペーサによって分離されている、バイポーラ電極アセンブリとを備え、
各バイポーラ電極アセンブリのアノードとして動作するバイポーラ電極が、カソードとして動作するバイポーラ電極とは反対方向に向けられており、アノードとして動作するバイポーラ電極が、隣接するバイポーラ電極アセンブリのカソードとして動作するバイポーラ電極またはカソードアセンブリのカソードと交互に配置され、カソードとして動作するバイポーラ電極が、アノードアセンブリのアノードまたは隣接するバイポーラ電極アセンブリのアノードとして動作するバイポーラ電極と交互に配置されて
おり、
バイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極間に配置されバイポーラ電極と接触している各導電性スペーサの表面積は、アノードアセンブリのアノード間に配置されアノードと接触している各導電性スペーサの表面積よりも小さく、カソードアセンブリのカソード間に配置されカソードと接触している各導電性スペーサの表面積よりも小さいことを特徴とする電解セル。
【請求項2】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードアセンブリのアノード、カソードアセンブリのカソードまたはバイポーラ電極が、固体プレート、多孔質プレート、オリフィスを有するプレートまたはメッシュの形状であることを特徴とする電解セル。
【請求項3】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードアセンブリのアノードおよびアノードとして動作するバイポーラ電極のみが触媒で被覆されていることを特徴とする電解セル。
【請求項4】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードアセンブリのアノード、カソードアセンブリのカソードまたはバイポーラ電極が、長方形であり、かつネジ付きボルトを通すことができる少なくとも1のオリフィスを備えることを特徴とする電解セル。
【請求項5】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードアセンブリのアノード、カソードアセンブリのカソードまたはバイポーラ電極が、多角形であり、かつ長方形の活性領域と、長方形の活性領域からの多角形の延長部とを含み、この延長部が、ネジ付きボルトを通すことができるオリフィスが設けられた組立領域を形成することを特徴とする電解セル。
【請求項6】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードの表面全体およびアノードとして機能するバイポーラ電極の表面全体が、触媒で被覆されていることを特徴とする電解セル。
【請求項7】
請求項1の電解セルにおいて、
アノード電極アセンブリが、ネジ付きボルトを介して、電源の正側に接続された導電性プレートに接続され、カソード電極アセンブリが、ネジ付きボルトを介して、電源の負側に接続された導電性プレートに接続されていることを特徴とする電解セル。
【請求項8】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードアセンブリのアノードの自由端、カソードアセンブリのカソードの自由端およびバイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極の自由端は、それらが交互に配置されるアノード、カソードまたはバイポーラ電極から予め設定された距離に、電極間に配置された非導電性材料のスペーサと、非導電性材料で作られたネジ付きボルトとナットのアセンブリとによって保持され、ネジ付きボルトが、スペーサに設けられた穴と、アノード、カソードおよびバイポーラ電極の自由端に設けられた穴とを通って突出することを特徴とする電解セル。
【請求項9】
請求項1の電解セルにおいて、
アノードアセンブリのアノードまたはバイポーラ電極アセンブリのアノードとして動作するバイポーラ電極は、各アノードまたはアノードとして動作するバイポーラ電極の両面がカソードまたはカソードとして動作するバイポーラ電極と対向するように、カソードアセンブリのカソードまたはバイポーラ電極アセンブリのカソードとして動作するバイポーラ電極と交互に配置されて
おり、カソードアセンブリのカソードの数およびカソードとして動作するバイポーラ電極の数がそれぞれ、アノードとして動作するバイポーラ電極の数およびアノードの数よりも1つ多いことを特徴とする電解セル。
【請求項10】
請求項1の電解セルにおいて、
距離A、B、C、Dが互いに等しいことを特徴とする電解セル。
【請求項11】
請求項1の電解セルを収容するリアクタであって、
各端部にエンドプレートアセンブリが接続された管状ケーシングを備え、各エンドプレートアセンブリが、2つのカバープレートと、それら2つのカバープレートの間に介装された導電性プレートとを含み、第1のエンドプレートアセンブリの導電性プレートが、アノードアセンブリと電源の正側とに接続され、第2のエンドプレートアセンブリの導電性プレートが、カソードアセンブリと電源の負側とに接続されていることを特徴とするリアクタ。
【請求項12】
請求項11のリアクタにおいて、
各エンドプレートアセンブリのカバープレートが、処理される廃水を電解セルに供給するための開口部を有することを特徴とするリアクタ。
【請求項13】
請求項11のリアクタにおいて、
非導電性材料で作られたバッフルであって、バイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極の位置を固定するネジ付きボルトとナットのアセンブリの近傍で、リアクタの管状ケーシング内に配置されるバッフルをさらに含み、このバッフルが、適切な許容誤差でリアクタのケーシングの内部寸法に一致するサイズであり、かつバイポーラ電極が貫通するとともに、リアクタを循環する廃水の流れを可能にする開口部を備えていることを特徴とするリアクタ。
【請求項14】
請求項11のリアクタにおいて、
アノードアセンブリ、カソードアセンブリおよび少なくとも1のバイポーラ電極アセンブリのうちの少なくとも1つの各側にスペーシングプレートをさらに備え、このスペーシングプレートが、それぞれのアセンブリとリアクタの内壁との間に配置され、かつチャネルを有し、このチャネルに、それぞれのアセンブリのアノード、カソードまたはバイポーラ電極のそれぞれの端部が、それらの間で一定の距離を維持するように取り付けられていることを特徴とするリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバイポーラ電極アセンブリを有する廃水処理用の電解セルに関する。
【背景技術】
【0002】
排出前に厄介な水質汚染物質を除去することを産業施設に要求する廃水処分規制の強化と、現在の世界的な清浄水の不足によって、廃水処理システムに対する高い需要がある。このため、化学物質の追加を必要とせず、二次汚染を発生させず、かつ運転および保守要件を最小限に抑えた、費用対効果の高い持続可能な廃水処理システムに対する需要が高まっている。
【0003】
厄介な廃水を処理するための好ましいアプローチは、電気化学的酸化によるものであり、これは、難分解性有機汚染物質、ダイオキシン、窒素種(例えば、アンモニア)、医薬品、病原体、微生物などの多種多様な汚染物質を除去するための、持続可能で安全かつ高効率な処理ソリューションである。廃水を処理する方法の一つは、有機および/または無機汚染物質の直接電気化学的酸化によりそれら汚染物質をアノード表面で直接酸化するものである。別の方法は、化学的酸化種(例えば、ヒドロキシル、塩素、酸素または過塩素酸塩ラジカル、または次亜塩素酸塩、オゾン、過酸化水素などの化合物)をその場で生成することによる有機および/または無機汚染物質の間接電気化学的酸化である。これらの化学的酸化種は、アノード表面で直接生成され、その後、廃水溶液内の汚染物質を酸化する。
【0004】
廃水を処理するために電気化学的酸化を採用するシステムにおいて、アノード触媒は、白金、酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、ニオブドープ酸化アンチモンスズ、黒鉛、酸化マンガンを含む群のなかから選択されるか、またはダイヤモンドまたはホウ素ドープダイヤモンドなどの、より高価ではあるが高効率の触媒があり得る。また、アノード触媒は、鉄、フッ素、白金およびニッケルを含む群から選択されるドーパントをさらに含むニオブドープ酸化アンチモンスズ、またはモリブデン、クロム、ビスマス、タングステン、コバルト、ニッケル、パラジウム、ニオブ、タンタル、白金、パラジウム、バナジウム、レニウムおよびそのようなドーパントの混合物でドープした酸化スズ、またはニオブ、パラジウム、炭化物、窒化物、ホウ化物、耐食性金属、合金、およびニオブ、五酸化ニオブ、酸化亜鉛または炭化ニオブなどの金属酸化物上に分散された酸化アンチモンスズがあり得る。カソード触媒は、白金、酸化マンガン、黒鉛、炭素、パラジウム、ロジウム、ニッケルおよびそれらの酸化物があり得るが、好ましくは、カソードは、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、ニッケルコバルトランタン酸化物(NiCoLaOx)などで作られた非被覆基板である。これは、廃水処理のためにカソードにそのような触媒が必要とされない場合に、アノードとカソードの両方を高価な触媒で被覆するよりも経済的な代替例を示している。
【0005】
バイポーラ電極は、オキシハロゲン溶液の製造または他の電解プロセスのために電解セルで使用されてきた。バイポーラセルは、(同じ反応面積を有し、同じ電流密度で動作する)モノポーラセルよりも高い電圧および低い電流で動作し、これは、電源のコストと、セルに電気エネルギーを供給するための導体のサイズを低減するのに役立つ。
【0006】
オキシハロゲンの製造に使用されるバイポーラ電解セルの例は、例えば、米国特許第3,819,503号に開示されており、同文献には、ある端子コンパートメント内に間隔をおいて配置された複数の寸法安定アノードと、別の端子コンパートメント内に間隔をおいて配置された複数のカソードと、2つの端子コンパートメント間に延びる複数のバイポーラ電極アセンブリであって、バイポーラカソード部分の一部が、一方の端子コンパートメント内の寸法安定アノード間の空間に延び、バイポーラアノード部分の一部が他方の端子コンパートメント内のカソード間の空間に延びる、バイポーラ電極アセンブリとを備えた電解セルであって、端部コンパートメント間に配置されたバイポーラ電極アセンブリのバイポーラアノード部分が、その隣に配置されたバイポーラ電極アセンブリのバイポーラカソード部分と交互に配置された、電解セルが開示されている。この電解セルにおいて、各バイポーラプレートアセンブリのバイポーラプレートは、半分がアノードとして動作し、他の半分がカソードとして動作するようになっており、絶縁性の仕切りの間に僅かな間隔をおいて対向するように配置されている。その結果、電極は、間隔を空けて互いに実質的に可能な限り接近して配置され、電極の開口部を介して織り込まれた又は電極の開口部内に配置された非導電性のセパレータによって電気的接触がないように維持されている。この特許では、バイポーラ電極の各々がプレートであり、その半分がアノードとして機能し、残りの半分がカソードとして機能する。このようなバイポーラ構成は、たとえその半分だけがアノードとして機能し触媒層の被覆を必要とする場合でも、バイポーラ電極の半分を触媒で覆わないままにしておくと、アノードとして動作する電極の部分で触媒層の層間剥離が発生し、早期の故障が発生する可能性があることから、電極の表面全体を触媒で被覆する必要があるという欠点を有している。その結果、触媒の利用率が低くなり、例えばダイヤモンド等の高価な触媒の場合には、そのような解決策は非常に費用がかかる可能性がある。
【0007】
米国特許第3,759,815号に記載されている別の例では、塩化ナトリウムの電気分解用のセルで使用されるバイポーラ電極アセンブリが、二面ベースプレートを備え、このベースプレートのチタン側から複数のアノードプレートが延び、このベースプレートの鉄側から複数のカソードプレートが延び、アノードプレートおよびカソードプレートが、対応するベースプレートと同じ材料から形成されている。代替的には、バイポーラ電極アセンブリは、電極ユニットからなり、各電極ユニットが、例えばチタン製のアノードと鉄製のカソードとを備え、それらが(本特許の
図5に示されているような)二重フランジで互いに接合されており、電極ユニットが、セルボックスの側壁に接続されたいくつかのサイド部材によって電気接続に押し込まれている。アノードとカソードの外端は、絶縁材料からなるスペーサによって互いに一定の間隔をおいて固定されている。二面ベースプレートまたは二重フランジを含むそのようなバイポーラ電極アセンブリは、製造が困難である。
【0008】
このため、廃水処理用のバイポーラ電極を有する電解セルにおいて、低電流で電解セルの効率的な動作を実現すべく、アノードとして動作するバイポーラ電極のみにダイヤモンドや白金などの触媒を採用し、そのようなバイポーラ電極を簡単な方法で接続することにより、全体的なコストを低減し、製造が容易な構成要素を含む簡素で組み立てが容易な電解セルを実現するための、設計の更なる改良が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、廃水処理用の電解セルを開示し、この電解セルが、
a.複数のアノードを含むアノードアセンブリであって、複数のアノードが、導電性材料からなるネジ付きボルトに沿って、間隔を空けて向かい合う関係で並べられ、アノードの端部が、予め設定された部分にわたって重なり合い、かつアノードを互いに予め設定された距離Bで維持する導電性材料からなるスペーサによって分離されている、アノードアセンブリと、
b.複数のカソードを含むカソードアセンブリであって、複数のカソードが、導電性材料からなるネジ付きボルトに沿って、間隔を空けて向かい合う関係で並べられ、カソードの端部が、予め設定された部分にわたって重なり合い、かつカソードを互いに予め設定された距離Aで維持する導電性材料からなるスペーサによって分離されている、カソードアセンブリと、
c.少なくとも1のバイポーラ電極アセンブリであって、アノードとして動作する一連のバイポーラ電極と、カソードとして動作する一連のバイポーラ電極と含み、それらバイポーラ電極が、導電性材料からなるネジ付きボルトに沿って交互に並べられ、それらバイポーラ電極の端部が、予め設定された部分にわたって重なり合い、かつアノードとして動作するバイポーラ電極を互いに予め設定された距離Cで維持するとともに、カソードとして動作するバイポーラ電極を互いに予め設定された距離Dで維持する導電性材料からなるスペーサによって分離されている、バイポーラ電極アセンブリとを備え、
各バイポーラ電極アセンブリにおいてアノードとして動作するバイポーラ電極が、カソードとして動作するバイポーラ電極とは反対方向に向けられており、アノードとして動作するバイポーラ電極が、隣接するバイポーラ電極アセンブリのカソードとして動作するバイポーラ電極またはカソードアセンブリのカソードと交互に配置され、カソードとして動作するバイポーラ電極が、アノードアセンブリのアノードまたは隣接するバイポーラ電極アセンブリのアノードとして動作するバイポーラ電極と交互に配置されている。
【0010】
好ましい実施形態では、アノード間の距離Bが、カソード間の距離Aと等しく、さらに、アノードとして動作するバイポーラ電極間の距離Cと、カソードとして動作するバイポーラ電極間の距離Dと等しくすることができる。
【0011】
アノードアセンブリのアノード、カソードアセンブリのカソードおよびバイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極は、固体プレート、多孔質プレート、オリフィスを有するプレート、またはメッシュの形状にすることができる。
【0012】
好ましい実施形態では、アノードアセンブリのアノードおよびアノードとして動作するバイポーラ電極が、触媒で被覆された唯一の電極である。他の実施形態では、カソードアセンブリのカソードおよびカソードとして動作するバイポーラ電極も、触媒で被覆することができる。
【0013】
アノードアセンブリのアノード、カソードアセンブリのカソードおよびバイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極は、長方形の形状を有することができ、ネジ付きボルトを通すことができる少なくとも1のオリフィスを備えている。
【0014】
いくつかの実施形態では、アノードアセンブリのアノード、カソードアセンブリのカソードおよびバイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極が、長方形の活性領域と、長方形の活性領域からの多角形の延長部とを含む多角形の形状を有し、延長部が組立領域を形成し、ネジ付きボルトを通すオリフィスを備えている。好ましい実施形態では、多角形の形状(長方形の活性領域および組立領域を含む)を有するアノードの表面全体およびアノードとして動作するバイポーラ電極の表面全体が、触媒の層間剥離を防止するために、触媒で被覆されている。
【0015】
アノード電極アセンブリは、ネジ付きボルトを介して、電源の正側に接続された導電性プレートに接続され、カソード電極アセンブリは、ネジ付きボルトを介して、電源の負側に接続された別の導電性プレートに接続されている。
【0016】
アノードアセンブリのアノードの自由端、カソードアセンブリのカソードの自由端およびバイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極の自由端は、電極間に配置された非導電性材料のスペーサと、非導電性材料で作られたネジ付きボルトとナットのアセンブリとによって、それらが交互に配置されるアノード、カソードまたはバイポーラ電極から予め設定された距離に保持され、ネジ付きボルトが、スペーサに設けられた穴と、アノード、カソードおよびバイポーラ電極の自由端に設けられた穴とを通って突出している。
【0017】
アノードアセンブリのアノードまたはバイポーラ電極アセンブリのアノードとして動作するバイポーラ電極は、各アノードの両面またはアノードとして動作する各バイポーラ電極の両面がカソードまたはカソードとして動作するバイポーラ電極と対向するように、カソードアセンブリのカソードまたはバイポーラ電極アセンブリのカソードとして動作するバイポーラ電極と交互に配置されている。これは、カソードアセンブリのカソードの数またはカソードとして動作するバイポーラ電極の数を、アノードの数またはアノードとして動作するバイポーラ電極の数よりも1つ多くすることによって達成する。
【0018】
好ましい実施形態では、バイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極間に配置された導電性スペーサが、アノードアセンブリのアノード間に配置された導電性スペーサ、またはカソードアセンブリのカソード間に配置された導電性スペーサよりもサイズ(例えば、表面積、厚さ)が小さい。
【0019】
本発明はさらに、リアクタを開示し、このリアクタが、各端部にエンドプレートアセンブリが接続された管状ケーシングを備え、各エンドプレートアセンブリが、2つのカバープレートと、それら2つのカバープレートの間に介装された導電性プレートとを含み、第1のエンドプレートアセンブリの導電性プレートが、アノードアセンブリと電源の正側とに接続され、第2のエンドプレートアセンブリの導電性プレートが、カソードアセンブリと電源の負側とに接続されている。リアクタは、本発明に記載の電解セルを収容する。
【0020】
各エンドプレートアセンブリのカバープレートは、リアクタ内に収容された電解セルに処理される廃水を供給するための開口部を備える。リアクタは、非導電性材料で作られたバッフルであって、バイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極の位置を固定するネジ付きボルトとナットのアセンブリの近傍で、リアクタの管状ケーシング内に配置されたバッフルをさらに含み、このバッフルが、バイポーラ電極が貫通するとともに、リアクタを循環する廃水の流れを可能にする開口部を備えている。バッフルは、リアクタ内での電極の位置を固定するために、適切な許容誤差でリアクタのケーシングの内部寸法に一致するサイズとなっている。
【0021】
いくつかの実施形態では、リアクタが、アノードアセンブリ、カソードアセンブリおよび少なくとも1のバイポーラ電極アセンブリのうちの少なくとも1つの各側にスペーシングプレートをさらに備え、このスペーシングプレートが、それぞれのアセンブリとリアクタの内壁との間に配置され、かつチャネルを備え、このチャネルに、それぞれのアセンブリのアノード、カソードまたはバイポーラ電極のそれぞれの端部が、それらの間で一定の距離を維持するように取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面は、本発明の特定の好ましい実施形態を例示しているが、本発明の趣旨または範囲を如何なる形でも限定するものとして見なされるべきではない。
【
図1】
図1は、本発明に係る廃水処理用の電解セルの断面図を示している。
【
図2】
図2は、処理リアクタ内に配置された本発明の電解セルの三次元図を示している。
【
図3】
図3は、バイポーラ電極とモノポーラ電極の相対位置を維持するためのスペーサが設けられたネジ付きボルト/ナットアセンブリを含む電解セルの一実施形態の断面図を示している。
【
図4】
図4は、バイポーラ電極とモノポーラ電極の自由端の相対位置を維持するためのスペーサが設けられたネジ付きボルト/ナットアセンブリと、リアクタ内でバイポーラプレートアセンブリを位置決めするためのバッフルとを備えた電解セルの断面図を示している。
【
図5】
図5は、
図4に示す実施形態の一セクションの三次元図を示している。
【
図6】
図6は、
図1~
図5に示す実施形態で電極として使用することができるプレートを示している。
【
図7】
図7は、
図4に示す電解セルのA-A断面図を概念化した形態で示したものであり、全長に沿って電極間の距離を維持するために、リアクタ内で電極アセンブリの各側に配置されたスペーシングプレートをより詳細に示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では特定の用語が使用されるが、それらは以下に与えられる定義に従って解釈されることを意図している。また、「a」や「comprises」などの用語は、オープンエンドと見なされるべきである。さらに、本明細書で引用したすべての米国特許公報および他の文献は、その全体が引用により援用されることが意図されている。
【0024】
図1には、本発明に係る例示的な電解セルが示されている。
【0025】
電解セル100は、カソードアセンブリ102と、アノードアセンブリ104と、アノードアセンブリとカソードアセンブリとの間に配置された複数のバイポーラ電極アセンブリ106A、106Bとを備える。
【0026】
カソードアセンブリ102は、向かい合う関係で、ネジ付きボルト110に沿って並べられた複数のカソード108を備える。導電性材料からなるスペーサ112は、カソード間の距離「A」を維持するために、ネジ付きボルト110に沿ってカソード108間に挿入されており、それにより、組み立てた電解セルにおいて、いくつかのバイポーラ電極を、
図1に示しかつ後述するように、カソードと交互に配置することができるようになっている。カソード108およびスペーサ112によって形成されたアセンブリは、ネジ付きボルト110とナット114によって一緒に組み立てられた状態に保持されるとともに、そのネジ付きボルトを介して、電源の負側に接続された導電性プレート117に接続された状態に保持されている。また、ネジ付きボルト110は、導電性材料で形成されている。
【0027】
同様に、アノードアセンブリ104は、向かい合う関係で、ネジ付きボルト118に沿って並べられた複数のアノード116を備え、それらアノードが、ネジ付きボルト118とナット115を介して互いに接続されている。スペーサ120は、いくつかのバイポーラ電極をアノードと交互に配置することができるように、アノード116間の距離「B」を維持するために、ネジ付きボルト118に沿ってアノード116間に挿入されている。アノード116とスペーサ120によって形成されたアセンブリは、ネジ付きボルト118を介して、電源の正側に接続された導電性プレート119に接続された状態に維持されている。スペーサ120およびネジ付きボルト118は、導電性材料で形成されている。カソードアセンブリ102のカソード108およびアノードアセンブリ104のアノード116は、モノポーラ電極である。
【0028】
図1に示す実施形態では、複数のスペーサ112、120が、隣接するカソード108間および隣接するアノード116間にそれぞれ配置され、上述したように、それぞれの電極間の適切な距離を維持している。他の実施形態では、距離A、Bにそれぞれ等しい予め設定された厚さの1種類のスペーサのみを、それぞれの隣接する電極間に配置することができる。
【0029】
バイポーラ電極アセンブリ106A、106Bは、複数のバイポーラ電極122および複数のバイポーラ電極124を備え、それらバイポーラ電極が、スペーサ126によって分離され、ネジ付きボルト128によって接続されている。各バイポーラ電極アセンブリ106A、106Bでは、バイポーラ電極122およびバイポーラ電極124が、ネジ付きボルト128に沿って交互に並べられており、バイポーラ電極122が、それらを連結するネジ付きボルト128に対して、バイポーラ電極124とは反対方向に向けられている。ネジ付きボルト128とナット130によって形成されたアセンブリ131は、バイポーラ電極アセンブリ全体を一緒に保持し、スペーサ126は、電極間の必要な距離を確保する。スペーサ126およびネジ付きボルト128は、導電性材料で形成されている。
【0030】
カソードアセンブリ102に隣接して配置されたバイポーラ電極アセンブリ106Aのバイポーラ電極122は、カソード108間に交互に配置されて、アノードとして動作し、同じアセンブリ106Aの他のバイポーラ電極124は、カソードとして動作して、バイポーラ電極アセンブリ106Bのバイポーラ電極122と交互に配置されている。同様に、アノードアセンブリ104に隣接して配置されたバイポーラ電極アセンブリ106Bのバイポーラ電極124は、アノード116間に交互に配置されて、カソードとして動作し、同じアセンブリ106Bの他のバイポーラ電極122がアノードとして動作する。
【0031】
各バイポーラ電極アセンブリ106A、106Bにおいて、バイポーラ電極122の端部が、バイポーラ電極124の端部と重なり合うように配置され、スペーサ126が、バイポーラ電極の重なり合う端部を接続する。ネジ付きボルト128に沿って各バイポーラ電極アセンブリの電極間に配置されたスペーサ126は、バイポーラ電極122間の特定の距離「C」を維持し、バイポーラ電極124間の距離「D」を維持する。通常は、より均一な電流密度分布のために、アノードとして動作するバイポーラ電極122間の距離「C」は、アノード116間の距離「B」に等しく、カソードとして動作するバイポーラ電極124間の距離「D」は、好ましくは、カソード108間の距離「A」に等しい。さらに、カソード間の距離「A」は、好ましくは、アノード間の距離「B」に等しい。
【0032】
好ましい実施形態では、電極間の距離「A」、「B」、「C」、「D」の値は、電極間の電気抵抗を最小にするように、かつ、それらの間を流れる流体(廃液)の速度が、汚染物質を除去するための電極表面での電気化学反応を促進し、そのような反応を促進するのに十分な乱流を電極表面で生成するように計算される。電極間の距離がより小さい場合、電気伝導率が低い廃水に対して良好な汚染物質除去結果を得ることができ、これは、電気化学反応を助けるために追加される電解質がより少なくて済むことを意味している。
【0033】
スペーサ112、120、126は、サイズ(例えば、表面積、厚さ)を等しくすることができる。好ましい実施形態では、バイポーラプレートアセンブリのスペーサが伝達する電流がより少ないため、バイポーラ電極間に配置されるスペーサが、アノードアセンブリのアノード間に配置されるスペーサより小さく、またカソードアセンブリのカソード間に配置されるスペーサよりも小さい。各タイプのスペーサのサイズ、より具体的にはスペーサの表面積は、スペーサを介して伝達する必要がある電流と、その材料の導電性とに基づいて計算される。バイポーラ電極間に配置されるスペーサを、アノードアセンブリのアノード間に配置されるスペーサまたはカソードアセンブリのカソード間に配置されるスペーサよりも小さくすることにより、アノードとして機能するバイポーラ電極122とカソードとして機能するバイポーラ電極124との重なり合う面積が減少する。これにより、触媒で被覆されたバイポーラ電極122のより多くの面積を活性領域として使用することができる。「活性領域」とは、触媒が塗布された電極の領域であって、電解セルを循環する廃液と接触して、廃液を処理するための電気化学的酸化反応を生じる領域を意味する。したがって、バイポーラ電極間のスペーサ126の表面積は、予め設定された電流値および予め設定された材料導電率に必要な最小表面積となるように算出される。
【0034】
本発明において、アノード116およびアノードとして動作するバイポーラ電極122は、アノード触媒で被覆されたプレートである。例えば、そのプレートは、チタン、ニオブ、タンタル等で構成することができ、アノード触媒は、好ましくは、ホウ素をドープしたダイヤモンドであるが、ダイヤモンド、白金、酸化イリジウム、酸化イリジウムルテニウム、酸化イリジウムタンタル、酸化イリジウムチタン、酸化ルテニウム、酸化スズ/アンチモン、金、インジウム、パラジウム、カーボン、黒鉛等であってもよい。カソード108およびカソードとして動作するバイポーラ電極124は、好ましくは、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、黒鉛、グラッシーカーボン、ホウ素をドープしたダイヤモンド、ニッケルコバルトランタン酸化物(NiCoLaOx)または鋼で作られており、好ましくは、触媒で被覆されていない。いくつかの実施形態では、電解セルが反転モードで動作するように意図されている場合、アノードとカソードの両方、およびすべてのバイポーラ電極122、124が、アノードおよびカソードの動作モードの両方を維持できる触媒、例えば、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化イリジウムタンタル、酸化イリジウムルテニウムタンタルなどで被覆されている。本発明のモノポーラ電極またはバイポーラ電極のすべてにおいて、電極基板として、固体プレートの代わりに、メッシュ、穴あきプレートまたは多孔質プレートを用いることができる。
【0035】
アノードは、一般的に触媒に起因してカソードよりも高価であるため、バイポーラ電極アセンブリおよびアノードおよびカソードアセンブリは、アノードの全表面が電解セルの近傍を循環する廃水の処理に十分に利用されるように設計される。電極108、116、122、124の数は、アノードとして動作するバイポーラ電極122およびアノードアセンブリ104のアノード116が、カソードアセンブリの2つのカソード108間の空間、またはカソードとして動作する隣接するバイポーラ電極アセンブリの2つのバイポーラ電極124間の空間に配置されるように選択される。このため、バイポーラ電極アセンブリのカソードとして動作するバイポーラ電極の数「n」およびカソードの数は、それぞれ、アノードとして動作するバイポーラ電極の数「m」およびアノードの数よりも1つ大きい(n=m+1)。
【0036】
図1は、アノードアセンブリ
104とカソードアセンブリ
102との間に直列に配置された2つのバイポーラ電極アセンブリ106A、106Bを示している。当業者であれば、電解セルが、アノードアセンブリ
104とカソードアセンブリ
102との間に、1つのバイポーラ電極アセンブリのみを含むことができ、あるいは、好ましい実施形態では、3以上のバイポーラ電極アセンブリを含むことができることを理解するであろう。
【0037】
図2は、流通式リアクタ210内に配置された本発明の電解セル200を示している。この電解セルは、アノードアセンブリ204とカソードアセンブリ202との間に配置された複数のバイポーラ電極アセンブリ206を含む。
図2に示す流通式リアクタは、電解セルを取り囲む管状ケーシング230と、2つのエンドプレートアセンブリ232A、232Bとを有する。流通式リアクタの管状ケーシング230は、説明のためだけに、シースルーコンポーネントとして示されている。第1のエンドプレートアセンブリ232Aは、電源の負側に接続された導電性プレート217を含み、第2のエンドプレートアセンブリ232Bは、電源の正側に接続された導電性プレート219を含み、2つのエンドプレートアセンブリの各々が、2つのカバープレート236、238をさらに含み、各々が導電性プレートの各側に配置されている。
図2では、導電性プレート217を含むエンドプレートアセンブリ232Aのカバープレートの1つが、説明のために取り除かれている。導電性プレート217、219は、同様の構造を有し、各導電性プレートが、アノードまたはカソードアセンブリのネジ付きボルトが突出するいくつかの穴240と、アノードおよびカソードアセンブリを収容することができ、かつ廃水がリアクタに流出入することを可能にするいくつかの開口部242とを有する。また、カソードアセンブリ202の電極およびアノードアセンブリ204の電極を一緒に保持するネジ付きボルトとナットのアセンブリは、リアクタ210内のエンドプレートアセンブリ232A、232Bに対して固定位置に電解セルを保持する。導電性プレート217、219の各々は、導電性プレートおよび電解セルを電源/電荷(図示省略)に接続する端子部分244を有する。
【0038】
図3は、本発明の別の実施形態に係る電解セル300の一部の断面図を示している。この実施形態では、アノードアセンブリ304のアノード316の自由端が、電極間に挿入されるスペーサ356を備えたネジ付きボルト/ナットアセンブリ350によって、バイポーラ電極アセンブリ306のバイポーラ電極324から距離「E」に保たれ、ネジ付きボルトが、アノードの自由端に設けられた穴を通って突出している。同様に、バイポーラプレートアセンブリ306のバイポーラ電極324の自由端は、別のネジ付きボルト/ナットアセンブリ350のスペーサによって、アノードアセンブリ304のアノード316からの距離「E」に保たれている。同様のネジ付きボルト/ナットアセンブリ350は、
図3に示すように、隣接するバイポーラ電極アセンブリのバイポーラ電極324の自由端の近傍と、バイポーラ電極322の自由端の近傍と、カソードアセンブリ(図示省略)のカソードの自由端の近傍に、それぞれ配置されており、それにより、短絡を防止し、電極表面の電流密度を均一にすることができる。
【0039】
各ネジ付きボルトナットアセンブリ350は、ネジ付きボルト352と、ナット354と、電極間に配置される非導電性スペーサ356とを備える。また、ネジ付きボルト352およびナット354も、非導電性材料で形成されている。
【0040】
図1に示す実施形態と同様に、電解セル300は、バイポーラ電極アセンブリ306のバイポーラ電極を一緒に保持するネジ付きボルト/ナットアセンブリ331と、アノードアセンブリ304を導電性プレート319と接続するネジ付きボルト318およびナット315とを備える。
【0041】
図4および
図5は、本発明の別の実施形態を示している。電解セル300は、アノードアセンブリ304と、カソードアセンブリ(この断面図には示されていない)と、アノードアセンブリとカソードアセンブリとの間に介在する少なくとも1のバイポーラ電極アセンブリ306とを含む、
図3に示したものと同じ構造を有する。電解セル300は、2つのエンドプレートアセンブリ332を有するリアクタ310内に配置されている。アノードアセンブリに接続されたエンドプレートアセンブリ332のみが
図4に示されている。エンドプレートアセンブリ332は、導電性プレート319と、2つのカバープレート336、338とを備え、カバープレートが導電性プレート319の両側に1つずつ配置されている。この実施形態では、バイポーラ電極の位置およびリアクタのケーシング330に対する電解セル300の絶対的な位置が、
図4および
図5に示すように、バイポーラ電極アセンブリ306のバイポーラ電極322の貫通を可能にする開口部362を備えたバッフル360によって維持され、また、開口部により、バッフルの一方の側から反対側へとリアクタを通る廃水の流れが可能になり、それにより廃水が電解セルの電極の表面上を流れることができる。バッフル360は、適切な許容誤差でリアクタのケーシング330の内部寸法に一致するサイズを有し、それにより、リアクタ内への設置が可能になると同時に、リアクタ内での電極および電解セルのそれぞれの所望の位置決めが可能になる。バッフル360は、非導電性材料で作られており、よって、隣接する電極アセンブリ間のシャント電流を防止することができる。
図5に示すように、バッフル360は、リアクタおよびそのケーシング330の管状形状に一致するように円形であり、2つの部分360A、360Bからなり、それにより、その開口部362を介して電極322をより容易に取り付けることができる。
図4および
図5に示すバッフル360は、バイポーラ電極アセンブリ306と隣接する電極アセンブリとの間、より具体的には、ネジ付きボルト/ナットアセンブリ331と隣接する電極アセンブリの電極324の自由端との間の空間に設けられている。
【0042】
好ましい実施形態では、ケーシング330に対する電解セル300の相対的な位置を維持するために、複数のバッフルが設けられ、好ましくは、バイポーラ電極アセンブリを保持する各ネジ付きボルト/ナットアセンブリと、隣接するバイポーラ電極アセンブリの電極の端部、またはアノードアセンブリのアノードの端部およびカソードアセンブリのカソードの端部との間に、それぞれ設けられている。
【0043】
図5に示すように、電解セルには、各バイポーラ電極アセンブリに対して、2つのネジ付きボルト/ナットアセンブリ331と、ネジ付きボルト/ナットアセンブリ350とが設けられており、ネジ付きボルト/ナットアセンブリ331は、
図1のネジ付きボルト/ナットアセンブリ131と構造が類似で、バイポーラ電極322、324を一緒に保持する目的を果たし、ネジ付きボルト/ナットアセンブリ350は、
図3に示すネジ付きボルト/ナットアセンブリ350と構造が類似で、同じ目的を果たし、より具体的には、電極の自由端を隣接する電極から一定の距離に保持して、それにより短絡を避けるとともに、電極表面上の均一な電流密度を維持するものである。隣接する電極間の表面全体にわたる均等な間隔によって、電極の表面上の電流密度を均一にすることができる。
【0044】
本発明の別の実施形態では、
図7により詳細に示して後述する複数のスペーシングプレート370、371を使用することにより、電極の全長に沿って隣接する電極間の距離をさらに一定に保つことができる。
【0045】
本発明のアノード、カソードおよびバイポーラ電極は、例えば
図2に示すような長方形、または円形を有することができ、あるいは他の実施形態では、例えば
図6に示すような多角形の形状を有することができる。バイポーラ電極、アノードまたはカソードとして動作することができる電極422は、2つの領域を形成する多角形の形状を有し、すなわち、処理される廃水に曝される、電極の活性領域を表す長方形の領域Fと、電極の組立領域である領域Gによって表される多角形の延長部とを有し、電極の組立領域が、組立後のセルにおいて、それが属する電極アセンブリの隣接する電極の組立領域と重なり合うこととなる。組立領域Gには、電極アセンブリを一緒に保持するネジ付きボルトの貫通を可能にする穴423が設けられている。この実施形態では、電極が完全な長方形の形状を有する実施形態と比較して、電極の組立領域が減少する。好ましい実施形態では、触媒の層間剥離の問題を防ぐために、アノードまたはアノードとして動作するバイポーラ電極を形成するプレート全体が触媒で被覆されるため、使用されない触媒層(組立領域G)の面積は、電極が完全に長方形の形状を有する前の実施形態の場合よりも小さくなり、電解セルのコストを削減するのに役立つ。
【0046】
図7は、本発明の別の実施形態を示しており、この実施形態では、スペーシングプレート370が、リアクタ330内において、アノードアセンブリのアノード316および隣接するバイポーラ電極アセンブリのカソード324として動作するバイポーラ電極の両側の各々に1つずつ配置され、それらをその全長に沿って予め設定された距離で固定された相対位置に保持している。そのような実施形態では、電極間の距離を最小化して、電極間の電流の流れを高めることができ、また、スペーシングプレートは、より良好な電気化学反応のために、電極の表面に沿って廃水の流れを導くのを助ける。このような電極間の間隔の減少は、廃水の流速を高め、電極間の電気抵抗を最小化し、廃水の導電性要件を低減することに関して、上述した利点を有する。スペーシングプレート370は、流通式リアクタの内部に支持されており、電極およびリアクタに対して相対的に固定された位置に維持されるような許容差で構成されている。そのようなスペーシングプレートは、隣接するバイポーラアセンブリの電極(例えば、
図4に示すスペーシングプレート371)およびカソードアセンブリのカソードを、隣接するバイポーラ電極(図示省略)に対して相対的に位置決めするために使用することもできる。
【0047】
当業者であれば、代替的な実施形態において、本発明に係る電解セルを、流通式リアクタに配置する代わりに、処理される廃水を含むタンク内に浸すこともできることを理解するであろう。
【0048】
当業者であれば分かるように、本発明に係る電解セルのアノード、カソードおよびバイポーラ電極は、固体プレート基板、メッシュ基板を含むことができ、あるいは多孔質プレートまたはオリフィスを有するプレートであってもよい。
【0049】
本発明の特定の要素、実施形態および用途を示して説明してきたが、当業者であれば、特に上述した教示に鑑みて、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく修正を加えることができることから、当然のことながら、本発明はそれらに限定されるものではないことを理解されたい。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に包含されると見なされるべきである。
【0050】
2018年3月21日に出願された米国仮特許出願第62/646,168号の開示は、その全体が本明細書に援用されるものとする。
【0051】
上述の様々な実施形態を組合せて、更なる実施形態を提供することも可能である。本明細書で引用し、かつ/または出願データシートに記載した米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許文献はすべて、その全体が引用により本明細書に援用されるものとする。