(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】セルフレームおよびレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20230426BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20230426BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230426BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0273
H01M8/04 J
(21)【出願番号】P 2020553146
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2019040191
(87)【国際公開番号】W WO2020080278
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018196652
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中尾 公人
(72)【発明者】
【氏名】ティーダ ウマ ジャヤ ラワリ
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-269866(JP,A)
【文献】特開昭62-108465(JP,A)
【文献】特開昭63-040267(JP,A)
【文献】実開昭61-201270(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308856(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0351926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/0273
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた枠体であって、前記開口部の周囲で前記枠体を一方の面から他方の面まで貫通し、活物質を含む流体が流通する貫通孔と、前記一方の面または前記他方の面に形成され、前記貫通孔と前記開口部とを接続する溝状のスリットと、を有する枠体と、
絶縁材料からなり、前記スリット内に収容され、前記貫通孔と前記開口部との間で前記スリット内を流れる前記流体によって回転する回転体と、を有するセルフレーム。
【請求項2】
前記回転体は、前記スリットのうち他の部分よりも幅が広い部分である回転体収容部に収容され、前記スリットの深さ方向に垂直な面内で回転する、請求項1に記載のセルフレーム。
【請求項3】
前記回転体は、前記回転体収容部を画定する内壁面のうち該回転体収容部の流体入口と流体出口とによって分離される2つの部分にそれぞれ少なくとも1箇所で実質的に接触しながら回転する、請求項2に記載のセルフレーム。
【請求項4】
前記回転体が、前記回転体収容部の底面から突出する軸部に対して前記面内でスライドしながら回転する十字型回転体である、請求項3に記載のセルフレーム。
【請求項5】
前記十字型回転体が、細長いベース部であって、前記ベース部の長手方向に延びる長孔を有し、前記長孔に挿入された前記軸部によって長手方向にスライド可能かつ回転可能に支持されたベース部と、前記ベース部の長手方向の両端から互いに反対方向に延びる一対の主翼部と、前記ベース部の長手方向の中央部に設けられた一対の補助翼部であって、前記ベース部の短手方向の両側から前記一対の主翼部に垂直な方向に沿って互いに反対方向に延びる一対の補助翼部とを有する、請求項4に記載のセルフレーム。
【請求項6】
前記回転体が、互いに接触しながら回転する一対のルーツロータからなる、請求項3に記載のセルフレーム。
【請求項7】
前記回転体が、互いに接触しながら回転する一対のオーバル歯車からなる、請求項3に記載のセルフレーム。
【請求項8】
前記枠体が、前記開口部の周囲で前記枠体を前記一方の面から前記他方の面まで貫通し、活物質を含む流体が流通する他の貫通孔と、前記スリットが形成された面と反対側の面に形成され、前記他の貫通孔と前記開口部とを接続する溝状の他のスリットと、を有し、
絶縁材料からなり、前記他のスリット内に収容され、前記他の貫通孔と前記開口部との間で前記他のスリット内を流れる前記流体によって回転する、前記回転体と同じ構成の他の回転体を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のセルフレーム。
【請求項9】
前記回転体と前記他の回転体は、平面視で同じ位置に設けられ、互いに機械的または磁気的に連結されて同期して回転する、請求項8に記載のセルフレーム。
【請求項10】
積層された複数の電池セルを有するセルスタックを備え、前記複数の電池セルを構成する複数のセルフレームの少なくとも1つが、請求項1から7のいずれか1項に記載のセルフレームである、レドックスフロー電池。
【請求項11】
前記複数のセルフレームが複数の前記回転体を有する、請求項10に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記複数の回転体は、前記セルスタックの積層方向から見て同じ位置に設けられ、互いに機械的または磁気的に連結されて同期して回転する、請求項11に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
積層された複数の電池セルを有するセルスタックを備え、前記複数の電池セルを構成する複数のセルフレームの少なくとも1つが、請求項8に記載のセルフレームである、レドックスフロー電池。
【請求項14】
前記複数のセルフレームが、複数の前記回転体と複数の前記他の回転体とを有する、請求項13に記載のレドックスフロー電池。
【請求項15】
前記複数の回転体と前記複数の他の回転体は、前記セルスタックの積層方向から見て同じ位置に設けられ、互いに機械的または磁気的に連結されて同期して回転する、請求項14に記載のレドックスフロー電池。
【請求項16】
前記セルスタックの前記複数の電池セルは、前記流体が前記複数の電池セルを並列に流れるように互いに接続されている、請求項
10から15のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項17】
前記セルスタックの前記複数の電池セルは、前記流体が前記複数の電池セルを直列に流れるように互いに接続されている、請求項
10から15のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項18】
前記セルスタックは、それぞれが前記複数の電池セルからなる複数のセルグループに分割され、前記複数のセルグループは、前記流体が前記複数のセルグループを並列で流れるように互いに接続され、前記各セルグループの前記複数の電池セルは、前記流体が前記複数の電池セルを直列または並列に流れるように互いに接続されている、請求項
10から15のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項19】
前記複数のセルグループにそれぞれ接続された複数の流路の少なくとも1つに収容された別の回転体であって、絶縁材料からなり、前記少なくとも1つの流路内を流れる前記流体によって回転する別の回転体を有する、請求項18に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフレームおよびレドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力貯蔵用の二次電池として、電解液に含まれる活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行うレドックスフロー電池が知られている。レドックスフロー電池は、大容量化が容易、長寿命、電池の充電状態が正確に監視可能であるなどの特徴を有している。このような特徴から、近年では、特に発電量の変動が大きい再生可能エネルギーの出力安定化や電力負荷平準化の用途としてレドックスフロー電池は大きな注目を集めている。
【0003】
一方で、レドックスフロー電池は、所定の電圧を得るために、複数の電池セルが積層されたセルスタックを有する構成が一般的であるが、そのような構成には、電解液を通じて電流損失(シャントカレントロス)が生じるという課題がある。このシャントカレントロスを低減する方法の1つとして、電池セルを構成するセルフレームに設けられたスリット(流路)内の電解液の電気抵抗を大きくする方法が知られており、これを利用した数多くの提案がなされている。特許文献1には、セルスタックの積層方向の中心部から端部に向かうにつれて電解液の電気抵抗が大きくなるように、セルフレームごとに流路構造を変化させ、シャントカレントロスを低減する方法が提案されている。また、特許文献2には、セルフレームの流路内に電解液を滴下する構成を採用し、空気による絶縁空間を介在させることで電解液の電気抵抗を大きくし、シャントカレントロスを低減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-80611号公報
【文献】特開2017-134919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、異なる流路構造のセルフレームを用意し、それらを適切な順番に積層してセルスタックを構成する必要があるため、製造工程が煩雑になる。また、この方法では、セルフレームごとにスリットの長さを変化させることで電解液の電気抵抗を変化させている。そのため、セルフレーム(電池セル)間で電解液の流量に大きな差が生じる可能性があり、このことは、安定的な運転(充放電)を行う上で好ましくないと考えられる。一方、特許文献2に記載の方法では、電解液を滴下するための流路構造が複雑になり、電解液の滴下量を適切に管理するなど、空気による絶縁空間を確実に形成するために複雑な運転制御も必要になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成でシャントカレントロスを低減することができるセルフレームおよびレドックスフロー電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明のセルフレームは、開口部を備えた枠体であって、開口部の周囲で枠体を一方の面から他方の面まで貫通し、活物質を含む流体が流通する貫通孔と、一方の面または他方の面に形成され、貫通孔と開口部とを接続する溝状のスリットと、を有する枠体と、絶縁材料からなり、スリット内に収容され、貫通孔と開口部との間でスリット内を流れる流体によって回転する回転体と、を有している。
【0008】
また、本発明の一態様によるレドックスフロー電池は、積層された複数の電池セルを有するセルスタックを備え、複数の電池セルを構成する複数のセルフレームの少なくとも1つが、上記したセルフレームである。
【0010】
このようなセルフレームおよびレドックスフロー電池によれば、スリット(流路)内を流れる流体(電解液)の流量に大きな影響を与えることなく、スリット(流路)内の流体(電解液)の電気抵抗を大きくすることができる。また、スリット(流路)内に回転体を設置するだけでよいため、流路構造が複雑になることはなく、複雑な運転制御が必要になることもない。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、簡単な構成でシャントカレントロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】第1の実施形態に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【
図1B】第1の実施形態に係るレドックスフロー電池を構成するセルスタックの概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係るセルフレームの概略平面図である。
【
図3A】特定の回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図3B】
図3Aに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図3C】
図3Bに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図3D】
図3Cに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図3E】
図3Dに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図3F】
図3Eに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図4A】
図3Fに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図4B】
図4Aに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図4C】
図4Bに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図4D】
図4Cに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図4E】
図4Dに示す回転位置に続く回転位置にある十字型回転体を示す概略平面図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例に係るセルフレームの概略平面図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例に係るセルフレームの概略平面図である。
【
図7A】第1の実施形態の変形例に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【
図7B】第1の実施形態の変形例に係るレドックスフロー電池を構成するセルグループの概略構成図である。
【
図8】第2の実施形態に係るセルフレームの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
図1Bは、本実施形態のレドックスフロー電池を構成するセルスタックの概略構成図である。
【0015】
レドックスフロー電池1は、電池セル10内での正極活物質および負極活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行うものであり、積層された複数の電池セル10を有するセルスタック2を備えている。セルスタック2は、正極側往路配管L1および正極側復路配管L2を介して、正極電解液を貯留する正極側タンク3に接続されている。正極側往路配管L1には、正極側タンク3とセルスタック2との間で正極電解液を循環させる正極側ポンプ4が設けられている。また、セルスタック2は、負極側往路配管L3および負極側復路配管L4を介して、負極電解液を貯留する負極側タンク5に接続されている。負極側往路配管L3には、負極側タンク5とセルスタック2との間で負極電解液を循環させる負極側ポンプ6が設けられている。なお、電解液としては、液相中に粒状の活物質を懸濁・分散させて形成されたスラリーや、液状になった活物質そのものなど、活物質を含むあらゆる流体を用いることができる。したがって、ここでいう電解液は、活物質の溶液に限定されるものではない。
【0016】
複数の電池セル10は、後述するセルフレームによって互いに区画されている。セルフレームの詳細な構成については後述する。
図1Bには、4つの電池セル10が示されているが、セルスタック2を構成する電池セル10の個数はこれに限定されるものではない。
【0017】
各電池セル10は、正極電極11aを収容する正極セル11と、負極電極12aを収容する負極セル12と、正極セル11と負極セル12とを分離する隔膜13とを有している。正極セル11は、個別供給流路P1および共通供給流路C1を介して、正極側往路配管L1に接続され、個別回収流路P2および共通回収流路C2を介して、正極側復路配管L2に接続されている。これにより、正極セル11には、正極側タンク3から正極活物質を含む正極電解液が供給される。こうして、正極セル11では、充電動作時に還元状態の正極活物質が酸化状態に変化する酸化反応が起こり、放電動作時に酸化状態の正極活物質が還元状態に変化する還元反応が起こる。一方、負極セル12は、個別供給流路P3および共通供給流路C3を介して、負極側往路配管L3に接続され、個別回収流路P4および共通回収流路C4を介して、負極側復路配管L4に接続されている。これにより、負極セル12には、負極側タンク5から負極活物質を含む負極電解液が供給される。こうして、負極セル12では、充電動作時に酸化状態の負極活物質が還元状態に変化する還元反応が起こり、放電動作時に還元状態の負極活物質が酸化状態に変化する酸化反応が起こる。
【0018】
図2は、本実施形態の電池セルを構成するセルフレームの概略平面図であり、セルスタックの積層方向から見た平面を示している。
【0019】
セルフレーム20は、上述したように、隣接する電池セル10を互いに区画するものであり、枠体21と、枠体21の開口部22に装着された双極板23とを有している。開口部22の内側の空間は、双極板23によって2つの部分に分けられ、一方の部分(紙面表側の部分)に正極電極11aが収容され、他方の部分(紙面裏側の部分)に負極電極12aが収容される。すなわち、双極板23の一方の面と隔膜13との間に、正極電極11aを収容する正極セル11が形成され、双極板23の他方の面と隔膜13との間に、負極電極12aを収容する負極セル12が形成される。
【0020】
枠体21は、開口部22の周囲の4つの角部付近に形成され、それぞれ枠体21を一方の面から他方の面まで厚み方向に貫通する貫通孔31~34を有している。貫通孔31~34は、複数のセルフレーム20が積層されてセルスタック2を構成したときに上述した共通流路C1~C4を構成し、それぞれ電解液を流通させる。具体的には、左下の貫通孔31および右上の貫通孔32は、それぞれ正極電解液用の共通供給流路C1および共通回収流路C2を構成し、右下の貫通孔33および左上の貫通孔34は、それぞれ負極電解液用の共通供給流路C3および共通回収流路C4を構成する。
【0021】
枠体21は、一方の面(紙面表側の面)に形成され、貫通孔31,32と開口部22のうち正極電極11aを収容する部分とを接続する溝状のスリット35,36を有している。スリット35,36は、複数のセルフレーム20が積層されてセルスタック2を構成したときに、上述した正極電解液用の個別流路P1,P2を構成する。したがって、正極電解液は、貫通孔31(共通供給流路C1)からスリット35(個別供給流路P1)を介して、開口部22のうち正極電極11aを収容する部分(正極セル11)に供給され、スリット36(個別回収流路P2)を介して、貫通孔32(共通回収流路C2)へと回収される。
【0022】
また、枠体21は、他方の面(紙面裏側の面)に形成され、貫通孔33,34と開口部22のうち負極電極12aを収容する部分とを接続する溝状のスリット37,38を有している。スリット37,38は、複数のセルフレーム20が積層されてセルスタック2を構成したときに、上述した負極電解液用の個別流路P3,P4を構成する。したがって、負極電解液は、貫通孔33(共通供給流路C3)からスリット37(個別供給流路P3)を介して、開口部22のうち負極電極12aを収容する部分(負極セル12)に供給され、スリット38(個別回収流路P4)を介して、貫通孔34(共通回収流路C4)へと回収される。
【0023】
さらに、セルフレーム20は、スリット35内に収容された絶縁材料からなる十字型回転体40を有している。十字型回転体40は、詳細は後述するように、貫通孔31と開口部22との間でスリット35内を流れる電解液によって回転することができる。なお、説明および図示は省略するが、4つのスリット35~38のうち残りのスリット36~38にも同様の十字型回転体40(後述の変形例を含む)が設けられている。
【0024】
十字型回転体40は、スリット35のうち他の部分よりも幅が広い部分である回転体収容部50に収容され、回転体収容部50の深さに対応する一定の幅(紙面に垂直な枠体21の厚み方向に沿った長さ)を有している。なお、回転体収容部50の深さは、スリット35の深さと同じであっても同じでなくてもよいが、電解液が回転体収容部50を通過する際の不要な圧力損失を抑える観点から、スリット35の深さと同じかそれよりも大きいことが好ましい。
【0025】
十字型回転体40は、細長いベース部41と、一対の主翼部42,43と、一対の補助翼部44,45とを有している。ベース部41は、ベース部41の長手方向に延びる長孔41aを有している。長孔41aは、回転体収容部50の底面から枠体21の厚み方向に突出する軸部51を収容し、これにより、軸部51は、長孔41aに対して相対移動可能である。こうして、ベース部41は、長孔41aに挿入された軸部51によって長手方向にスライド可能かつ回転可能に支持されている。一対の主翼部42,43は、ベース部41の長手方向の両端から互いに反対方向に延びている。一対の補助翼部44,45は、ベース部41の長手方向の中央部に設けられ、ベース部41の短手方向の両側から一対の主翼部42,43に垂直な方向に沿って互いに反対方向に延びている。
【0026】
このような構成により、十字型回転体40は、スリット35内を流れる電解液の流れを受けて、スリット35の深さ方向に垂直な面内(紙面に平行な面内)で軸部51に対してスライドしながら回転する。以下、
図3Aから
図4Eを参照しながら、十字型回転体40の回転動作について説明する。
図3Aから
図4Eはそれぞれ、十字型回転体が半回転する間の異なる回転位置を示す概略平面図である。なお、十字型回転体は点対称な平面形状を有しており、
図3Aに示す回転位置と
図4Eに示す回転位置は実質的には同じ回転位置に対応する。そのため、以下の説明では、これら2つの回転位置を区別しない場合もある。
【0027】
十字型回転体40は、
図3Aに示す回転位置において電解液入口53から回転体収容部50に流入した電解液から力を受けると、軸部51を中心として反時計方向に回転し、
図3Bに示す回転位置まで到達する。そして、十字型回転体が
図3Bに示す回転位置から
図3Cに示す回転位置まで回転する間の所定の回転位置を起点として、十字型回転体40の軸部51に対するスライドが開始される。換言すると、一対の主翼部のうち第2の主翼部43の先端が電解液出口(流体出口)54を横切る間の所定の回転位置を起点として、十字型回転体40の中心(回転面内での重心)が軸部51からずれ始める。この
図3Aに示す回転位置から
図3Cに示す回転位置までの間、一対の主翼部のうち少なくとも第1の主翼部42の先端と一対の補助翼部のうち第1の補助翼部44の先端がそれぞれ回転体収容部50の内壁面52に実質的に接触している。これにより、回転体収容部50の電解液入口53と電解液出口54との間の電解液による導通は実質的に遮断される。
【0028】
さらに、十字型回転体40は電解液の流れを受け、
図3Dから
図4Bに示すように、軸部51に対してスライドしながら反時計方向に回転する。この間は、両方の主翼部43,44の先端が回転体収容部50の内壁面52に実質的に接触し、これにより、電解液入口53と電解液出口54との間の電解液による導通が実質的に遮断される。なお、
図3Dに示す回転位置から
図4Bに示す回転位置までの間、より正確には、
図3Cに示す回転位置の直後から
図4Cに示す回転位置の直前までの間、一対の補助翼部44,45はどちらも回転体収容部50の内壁面52に接触していない。
【0029】
その後、十字型回転体40は
図4Cに示す回転位置まで到達する。そして、十字型回転体が
図4Cに示す回転位置から
図4Dに示す回転位置まで回転する間の所定の回転位置を終点として、十字型回転体40の軸部51に対するスライドが停止される。換言すると、一対の主翼部のうち第2の主翼部43の先端が電解液入口(流体入口)53を横切る間の所定の回転位置を起点として、十字型回転体40の中心が軸部51に一致し始める。こうして、十字型回転体40は軸部51を中心として反時計方向に回転し、
図4Eに示す回転位置(すなわち
図3Aに示す回転位置)まで到達する。この
図4Cに示す回転位置から
図4Eに示す回転位置までの間は、一対の主翼部のうち少なくとも第1の主翼部42の先端と一対の補助翼部のうち第2の補助翼部45の先端がそれぞれ回転体収容部50の内壁面52に実質的に接触している。これにより、回転体収容部50の電解液入口53と電解液出口54との間の電解液による導通は実質的に遮断される。
【0030】
十字型回転体40の上述した一連の回転動作は、十字型回転体40が電解液入口53から回転体収容部50に流入する電解液から力を受け続ける限り継続される。そして、一連の回転動作に伴い、電解液入口53から流入した流体は電解液出口54から流出する。
【0031】
このように、セルフレーム20のスリット35内には、電解液の流れを受けて回転する絶縁材料からなる十字型回転体40が収容されている。これにより、スリット35内の電解液の電気抵抗を大きくすることができ、シャントカレントロスを低減することができる。また、電解液の電気抵抗を大きくするためにスリット35内に十字型回転体40を設置するだけでよいため、セルフレーム20の流路構造が複雑になることはない。さらに、十字型回転体40を回転させるために複雑な機構が必要になることはなく、そのため、複雑な運転制御が必要になることもない。例えば、スリット内の電解液の電気抵抗を大きくするためには、スリットの幅を狭くしたり長さを長くしたりすることも考えられるが、このことは、スリット35内を流れる電解液の流量に大きな影響を与えてしまう。十字型回転体40の設置は、そのような悪影響がない点でも有利である。
【0032】
十字型回転体40の絶縁材料は、十字型回転体40としての機能を損なわないような十分な強度を有するものであれば、特定のものに限定されるものではなく、例えば、枠体21と同じ絶縁材料であってもよい。枠体21の絶縁材料としては、適度な剛性を有するとともに、電解液と反応せず、電解液に対する耐性(耐薬品性、耐酸性など)を有するものを用いることができる。そのような材料としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0033】
軸部51に対する十字型回転体40の動きは、
図3Aから
図4Eからも明らかなように、回転体収容部50の形状(内壁面52の輪郭)に規定される。しかしながら、このことは、軸部51に対する十字型回転体40の所望の動きに応じて、回転体収容部50の形状が任意に設定可能であること意味する。すなわち、回転体収容部50は、電解液入口53から回転体収容部50に流入する電解液によって十字型回転体40の回転方向が一意に定まる限り、かつ十字型回転体40が回転体収容部50の電解液入口53と電解液出口54との間の電解液による導通を常時実質的に遮断する限り、任意の形状を有していてよい。十字型回転体40の回転方向が一意に定まるには、十字型回転体40の中心(回転面内での重心)が、十字型回転体40が半回転する間の所定の回転範囲内において軸部51に一致し、その他の回転範囲では軸部51からずれていることが必要になる。加えて、十字型回転体40の中心が軸部51に一致している間は、少なくとも補助翼部44,45のどちらかの先端が回転体収容部50の内壁面52に接触していることが必要になる。この所定の回転範囲は、一対の主翼部42,43の一方の先端が電解液入口53を横切る途中の所定の回転位置から他方の先端が電解液出口54を横切る途中の所定の回転位置までの範囲である。
図3Aから
図4Eに図示した例では、この所定の回転範囲は、
図4Dに示す回転位置から、
図4Eに示す回転位置すなわち
図3Aに示す回転位置を経由して、
図3Bに示す回転位置までの範囲である。また、電解液による導通を実質的に常時遮断するには、十字型回転体40が、回転体収容部50を画定する内壁面52のうち電解液入口53と電解液出口54とによって分離される2つの部分52a,52bにそれぞれ少なくとも1箇所で実質的に接触しながら回転することが必要になる。なお、ここでいう「実質的に接触」とは、その隙間から電解液による導通が発生してもそれが無視できる程度であれば、十字型回転体40と回転体収容部50の内壁面52との間にわずかな隙間があってもよいことを意味する。
【0034】
したがって、図示した回転体収容部50の形状は、単なる一例であり、上述した2つの要求(十字型回転体40の回転方向に関する要求と導通遮断に関する要求)を満たす範囲で任意に変更可能である。例えば、軸部51はベース部41に対して相対的にスライドしてベース部41の端部まで到達するが(
図3F参照)、上述した2つの要求を満たす限り、ベース部41に対する軸部51の相対的なスライド範囲に特に制限はない。換言すると、このような相対的なスライド範囲が任意に設定されると、そうして設定された範囲に基づいて、上述した2つの要求を満たすように回転体収容部50の形状を設定することができる。また、補助翼部44,45が回転体収容部50の内壁面52に接触する範囲も、上述した2つの要求を満たしていれば、図示した範囲に限定されず、任意に設定可能である。しかしながら、例えば、図示したよりも広い回転範囲で補助翼部44,45と内壁面52とを接触させようとすると、十字型回転体40の回転条件などから、回転体収容部50の設計がより複雑になる。そのため、補助翼部44,45と内壁面52との接触は、図示したのと同様に、主翼部42,43の一方の先端が電解液入口53を横切る直前(
図4C参照)に開始され、他方の先端が電解液出口54を横切った直後(
図3C参照)に解除されることが好ましい。
【0035】
なお、回転体収容部50の形状は、十字型回転体40の形状とスリット35に対する軸部51の位置にも依存する。換言すると、十字型回転体40の形状が決定され、スリット35に対する軸部51の位置が決定されると、それらに基づいて、上述した2つの要求を満たすように回転体収容部50の形状を設定することができる。したがって、十字型回転体40の形状は、それがベース部41と一対の主翼部42,43と一対の補助翼部44,45とを有する限り、特定の形状に限定されるものではない。例えば、図示した回転体収容部50の形状は、主翼部43,44の長さと補助翼部44,45の長さが同じであることを前提としているが、それらは異なっていてもよい。また、スリット35に対する軸部51の位置も、電解液入口53と電解液出口54とを結ぶ直線からずれた位置であれば、特定の位置に限定されるものではない。
【0036】
上述した実施形態では、十字型回転体40は、スリット35の水平部分に設けられているが、十字型回転体40の設置位置はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、十字型回転体40はスリット35の屈曲部分に設けられていてもよく、あるいは、垂直部分に設けられていてもよい。なお、すべてのスリット35~38において必ずしも同じ位置(例えば水平部分)に十字型回転体40が設置されている必要はない。例えば、供給側のスリット35,37と回収側のスリット36,38とで十字型回転体40の設置位置が異なっていてもよい。あるいは、正極側のスリット35,36と負極側のスリット37,38とで十字型回転体40の設置位置が異なっていてもよい。
【0037】
また、複数のセルフレーム20が積層されてセルスタック2を構成したときに、同じスリット35に対応する複数の十字型回転体40が、積層方向から見て同じ位置に設けられていてもよい。この場合、複数の十字型回転体40は、互いに同期して回転するように構成されていることが好ましく、それにより、セルフレーム20(電池セル10)の位置によらずに電解液を均等に流すことができ、安定的な運転(充放電)を行うことができる。複数の十字型回転体40を同期させる方法としては、十字型回転体40の一部を磁性材料で形成するなどして複数の十字型回転体40を磁気的に連結する方法を用いることができる。
【0038】
図示したスリット35~38の形状はあくまで一例であり、これ以外にも様々な形状のスリット35~38が考えられるが、十字型回転体40の設置位置は、そのようなスリット35~38の形状に応じて様々に変更可能であることに留意されたい。例えば、
図6には、垂直部分が平面視で互いに重なり合うスリット35~38の構成例が示されている。このような構成例では、図示したように、1つのセルフレーム20において、正極側(枠体21の一方の面側)のスリット35の十字型回転体40と負極側(枠体21の他方の面側)のスリット37の十字型回転体40を平面視で同じ位置に設けることもできる。この場合、これらの十字型回転体40は、上述したように互いに同期して回転するようになっていてもよい。さらには、このようなセルフレーム20がセルスタック2を構成したときに、隣接するセルフレーム20の十字型回転体40も互いに同期して回転するようになっていてもよい。すなわち、正極側のスリット35に対応する複数の十字型回転体40と負極側のスリット37に対応する複数の十字型回転体40とが、互いに同期して回転するようになっていてもよい。このことは、上述したように安定的な運転を行う上で有利であるだけでなく、例えば正極側の十字型回転体40だけを磁気的に連結して同期させる場合に比べて、十字型回転体40同士の距離が短くなり磁気的な連結が容易になる点でも有利である。
【0039】
上述した実施形態では、正極電解液が左下の貫通孔31から供給されて開口部22内を上向きに流れ、右上の貫通孔32へと回収されるようになっているが、正極電解液の流れる向きはこれに限定されるものではない。同様に、上述した実施形態では、負極電解液が右下の貫通孔33から供給されて開口部22内を上向きに流れ、左上の貫通孔34へと回収されるようになっているが、負極電解液の流れる向きはこれに限定されるものではない。例えば、正極電解液および負極電解液の一方が開口部22内を下向きに流れるようになっていてもよい。あるいは、正極電解液および負極電解液の両方が開口部22内を下向きに流れるようになっていてもよい。いずれの場合にも、各スリット35~38に上述した十字型回転体40を設置することができる。
【0040】
また、上述した実施形態では、複数の電池セル10は、各電解液が複数の電池セル10を並列に流れるように互いに接続されているが、複数の電気セル10の接続形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の電池セル10は、各電解液が複数の電池セル10を直列に流れるように互いに接続されていてもよく、このような構成においても、セルフレーム20の各スリット35~38に上述した十字型回転体40を設置することができる。あるいは、レドックスフロー電池1は、並列流路と直列流路が組み合わされた階層的な流路構成を有していてもよい。
図7Aおよび
図7Bは、このような変形例に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【0041】
図7Aおよび
図7Bに示す変形例では、セルスタック2は、それぞれが複数の電池セル10からなる複数のセルグループ7に分割されている。複数のセルグループ7は、
図7Aに示すように、正極側往路配管L1および正極側復路配管L2を介して正極側タンク3に接続され、負極側往路配管L3および負極側復路配管L4を介して負極側タンク5に接続されている。換言すると、複数のセルグループ7は、各電解液が複数のセルグループ7を並列で流れるように互いに接続されている。これに対し、各セルグループ7の複数の電池セル10は、
図7Bに示すように、各電解液が複数の電池セル10を直列に流れるように互いに接続されている。すなわち、各セルグループ7では、各電解液が複数の電池セル10を積層方向に順次流れるように、隣接する2つのセルフレーム20の2つの貫通孔31~34のみが互いに連通している。具体的には、隣接する2つの左下の貫通孔31とこれらに接続する2つのスリット35が、正極電解液用の直列流路S1を構成し、隣接する2つの右上の貫通孔32とこれらに接続する2つのスリット36が、正極電解液用の直列流路S2を構成する。また、隣接する2つの右下の貫通孔33とこれらに接続する2つのスリット37が、負極電解液用の直列流路S3を構成し、隣接する2つの左上の貫通孔34とこれらに接続する2つのスリット38が、負極電解液用の直列流路S4を構成する。このような構成においても、セルフレーム20の各スリット35~38に上述した十字型回転体40を設置することができる。
【0042】
また、セルフレーム20内の十字型回転体40に加えて、あるいはその代わりに、セルグループ7と配管L1~L4とをそれぞれ接続する接続配管L11~L14に、これら接続配管L11~L14内を流れる電解液によって回転する回転体が収容されていてもよい。これによっても、レドックスフロー電池1全体として、電解液の電気抵抗を大きくすることができ、シャントカレントロスを低減することができる。このような回転体としては、上述した十字型回転体が挙げられる他、後述する一対のルーツロータや、これらルーツロータと実質的に同じ原理で動作する一対のオーバル歯車が挙げられる。
【0043】
レドックスフロー電池1の階層的な流路構成は、上述のような複数の直列流路が並列に接続された流路構成に限定されず、例えば、複数の並列流路が並列に接続された流路構成であってもよい。すなわち、各セルグループ7の複数の電池セル10が、
図1Bに示す複数の電池セル10と同様の並列流路を構成し、それらが並列に接続されてセルスタック2を構成していてもよい。
【0044】
なお、
図7Aおよび
図7Bに示す変形例では、正極側タンク3を2つ(正極側往路配管L1に接続されたタンクと正極側復路配管L2に接続されたタンク)に分け、これら2つのタンクに、還元状態の活物質濃度と酸化状態の活物質濃度の割合が異なる2種類の正極電解液を別々に貯留してもよい。同様に、負極側タンク5を2つ(負極側往路配管L3に接続されたタンクと負極側復路配管L4に接続されたタンク)に分け、これら2つのタンクに、還元状態の活物質濃度と酸化状態の活物質濃度の割合が異なる2種類の負極電解液を別々に貯留してもよい。例えば、配管L1に接続されたタンクに、還元状態の正極活物質を相対的に多く含む正極電解液を貯留し、配管L2に接続されたタンクに、酸化状態の正極活物質を相対的に多く含む正極電解液を貯留してもよい。また、配管L3に接続されたタンクに、酸化状態の負極活物質を相対的に多く含む負極電解液を貯留し、配管L4に接続されたタンクに、還元状態の負極活物質を相対的に多く含む負極電解液を貯留してもよい。
【0045】
このような場合、充電動作時には、配管L1に接続されたタンクから、還元状態の正極活物質を相対的に多く含む正極電解液が正極セル11に供給され、配管L3に接続されたタンクから、酸化状態の負極活物質を相対的に多く含む負極電解液が負極セル12に供給される。正極セル11内では酸化反応が連続的に進行し、酸化状態に変化した正極活物質を含む正極電解液は、配管L2に接続されたタンクに回収される。負極セル12内では還元反応が連続的に進行し、還元状態に変化した負極活物質を含む負極電解液は、配管L4に接続されたタンクに回収される。一方、放電動作時には、配管L2に接続されたタンクから、酸化状態の正極活物質を相対的に多く含む正極電解液が正極セル11に供給され、配管L4に接続されたタンクから、還元状態の負極活物質を相対的に多く含む負極電解液が負極セル12に供給される。正極セル11内では還元反応が連続的に進行し、還元状態に変化した正極活物質を含む正極電解液は、配管L1に接続されたタンクに回収される。負極セル12内では酸化反応が連続的に進行し、酸化状態に変化した負極活物質を含む負極電解液は、配管L3に接続されたタンクに回収される。
【0046】
図7Aおよび
図7Bに示す変形例を含む上述した実施形態では、セルスタック2を構成するすべてのセルフレーム20に十字型回転体40が設けられていなくてもよい。例えば、シャントカレントロスが相対的に発生しにくい領域のセルフレーム20には、十字型回転体40が設けられていなくてもよい。同様に、
図7Aおよび
図7Bに示す変形例では、複数のセルグループ7と配管L1~L4とを接続するすべての接続配管(流路)のうち、シャントカレントロスが相対的に発生しにくい領域の接続配管には、回転体が設けられていなくてもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るセルフレームの概略平面図であり、
図2に対応する図である。
【0048】
本実施形態は、スリットに設置される回転体(およびこれに伴う回転体収容部)の構成が第1の実施形態と異なっており、これ以外の構成は第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付して説明は省略し、第1の実施形態と異なる構成のみ説明する。なお、第1の実施形態に対する上述したいくつかの変形例は、本実施形態に対しても同様に適用可能である。
【0049】
本実施形態では、スリット35内に一対のルーツロータ61,62が収容されている。各ルーツロータ61,62は、スリット35の深さ方向(枠体21の厚み方向)に平行な回転軸55,56に固定され、各回転軸55,56は、枠体21に対して回転可能に設けられている。なお、回転軸55,56が枠体21に固定され、各ルーツロータ61,62が回転軸55,56に対して回転可能に取り付けられていてもよい。
【0050】
一対のルーツロータ61,62は、電解液入口53から回転体収容部50に流入する電解液の流れを受けると、それぞれ回転軸55,56を中心として外側に回転し、したがって反対方向に回転する。このとき、一対のルーツロータ61,62は、互いに実質的に接触しながら回転する。さらに、一方のルーツロータ61は、回転体収容部50の内壁面52のうち一方の部分52aに実質的に接触しながら回転し、他方のルーツロータ62は、他方の部分52bに実質的に接触しながら回転する。こうして、一対のルーツロータ61,62は、回転体収容部50の電解液入口53と電解液出口54との間の電解液による導通を常時実質的に遮断することができる。なお、ここでいう「実質的に接触」とは、上述した通り、その隙間から電解液による導通が発生してもそれが無視できる程度であれば、各ルーツロータ61,62と回転体収容部50の内壁面52との間にわずかな隙間があったり、一対のルーツロータ61,62の間にわずかな隙間があったりしてもよいことを意味する。回転体収容部50に流入した電解液は、各ルーツロータ61,62と回転体収容部50の内壁面52との間に形成される空間を通り、電解液出口54を通じて回転体収容部50から流出する。
【0051】
図示した実施形態では、ルーツロータ61,62は二葉式のものであるが、三葉式のものであってもよい。また、第1の実施形態の十字型回転体40と同様に、複数のセルフレーム20が積層されてセルスタック2を構成したときに、複数対のルーツロータ61,62が、積層方向から見て同じ位置に設けられ、互いに同期して回転するようになっていてもよい。複数対のルーツロータ61,62を同期させる方法としては、上述した磁気的な連結手段を用いる方法の他、複数のルーツロータ61,62を共通の回転軸55,56に固定するなど、機械的な連結手段を用いることもできる。
【0052】
なお、一対のルーツロータ61,62の代わりに、これらルーツロータと実質的に同じ原理で動作する一対のオーバル歯車を用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 レドックスフロー電池
2 セルスタック
3 正極側タンク
4 正極側ポンプ
5 負極側タンク
6 負極側ポンプ
7 セルグループ
10 電池セル
11 正極セル
11a 正極電極
12 負極セル
12a 負極電極
13 隔膜
20 セルフレーム
21 枠体
22 開口部
23 双極板
31~34 貫通孔
35~38 スリット
40 十字型回転体
41 ベース部
41a 長孔
42,43 主翼部
44,45 補助翼部
50 回転体収容部
51 軸部
52 内壁面
52a (内壁面の)一方の部分
52b (内壁面の)他方の部分
53 電解液入口(流体入口)
54 電解液出口(流体出口)
55,56 回転軸
61,62 ルーツロータ
L1 正極側往路配管
L2 正極側復路配管
L3 負極側往路配管
L4 負極側復路配管
L11~L14 接続配管
C1,C3 共通供給流路
C2,C4 共通回収流路
P1,P3 個別供給流路
P2,P4 個別回収流路
S1~S4 直列流路