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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】果実のコーティング
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230426BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20230426BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230426BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230426BHJP
   A23B 7/154 20060101ALI20230426BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A23L5/00 F
C09D129/04
C09D5/02
C09D7/63
A23B7/154
B05D7/24 303A
B05D7/24 301E
B05D7/24 302H
B05D7/24 302M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020555306
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2018097040
(87)【国際公開番号】W WO2019129822
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】17211161.9
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520232758
【氏名又は名称】リクイッドシール ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】LIQUIDSEAL HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】Schuttersveld 9, 2316 XG LEIDEN, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンヴェルゼン、ディック
(72)【発明者】
【氏名】モンスター、ヴィクター スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ファンデンベルク、ユージーン ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】フルーネヴェーヘン、グレン ギャレス
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-201620(JP,A)
【文献】特表2007-513617(JP,A)
【文献】特表2009-527357(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126956(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/064917(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/166389(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第01500534(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含む、食用果実をコーティングするための組成物であって、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、並びに任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
を含む、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~0.9重量%の量で存在し、かつ、前記スペーシング剤はポリオールである、前記スペーシング剤
を含む、組成物。
【請求項2】
ビニルアルコールのポリマーが、ポリビニルアルコールホモポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ビニルアルコールのポリマーがポリビニルアルコールホモポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビニルアルコールのホモポリマー及び/又はコポリマーが、85%から100%の間加水分解度を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリビニルアルコールホモポリマーは、11.5mPasより低い粘度と95~100%の加水分解度を有し、かつ/又は
エチレンビニルアルコールコポリマーは、30mPasより低い粘度と95~100%の加水分解度を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記スペーシング剤が、組成物中のポリマーの重量に基づいて、0.1~0.5重量%の量で組成物中に存在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記スペーシング剤が、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はそれらの混合物の群から選択されるポリオールであ、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビニルアルコールのポリマーが、分散したポリマー物質の総重量基づいて、少なくとも50重量%を構成する、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
分散したポリマー物質の総重量の少なくとも55重量%割合でビニルアルコールポリマーを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が、A1)及びA2)で定義されたポリマー以外の更なるポリマーを、組成物中のポリマーとして1重量%未満含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の体積に基づいて、10重量%未満の更なる分散物質を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、ポリビニルアルコールホモポリマー及びグリセロールの分散物であり、水中の更なる分散物質が10重量%未満である、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
収穫後の食用果実に、分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含む組成物を塗布する、前記果実をコーティングする方法であって、前記組成物は、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、並びに任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
を含む、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在し、かつ、前記スペーシング剤はポリオールである、前記スペーシング剤
を含む、方法。
【請求項14】
食用果実品目の果実の皮にコーティングを有する食用果実品目であって
前記コーティングが、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、並びに任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
を含む、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在し、かつ、前記スペーシング剤はポリオールである、前記スペーシング剤
を含む、食用果実品目
【請求項15】
分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含む組成物の使用であって、前記組成物は、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、並びに任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
を含む、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在し、かつ、前記スペーシング剤はポリオールである、前記スペーシング剤
を含み、前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して前記組成物でコーティングされた場合に光沢が向上し、及び/又は前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して重量減少が遅い、収穫後の食用果実品目の調製のための、組成物の使用。
【請求項16】
前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して、光沢が向上し、かつ、重量減少が遅いという特徴の組み合わせを有する、収穫後の食用果実品目の調製のための、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物は、請求項2から12のいずれか1項に定義された組成物である、請求項13に記載の方法又は請求項15若しくは16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実をコーティングするための組成物に関する。本発明はまた、収穫後の果実にコーティング組成物を塗布することを含む、果実をコーティングする方法に関する。本発明はまた、前記方法に従ってコーティングされた果実品目に関する。本発明はまた、前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して前記組成物でコーティングされた場合に光沢が向上し、及び/又は前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して重量減少が遅い、収穫後の果実品目の調製のためのコーティング組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
果実は、消費地とは異なる場所で生産及び収穫されることがしばしばある。したがって、果実の輸送は、かなりの時間の経過を伴う長距離輸送を含むことが多い。さらに、多くの生産国、特に発展途上国の場合、収穫と最終的な冷蔵及び/又は消費との間に長期間が経過する可能性がある。
【0003】
数ある問題の中でも特に、果実は長期間の保管及び/又は輸送中に重量が減少する傾向がある。これは、そのような遅延の対象となる果実の市場価値に悪影響を及ぼし、実質的な経済的損失をもたらす可能性がある。
【0004】
輸送中の重量減少を最小限に抑えるための果実のコーティングとして、これまで数多くのコーティングが提案されてきた。そのようなコーティングには、多種多様なプラスチック組成物、ワックス、脂肪などが利用されていた。
【0005】
輸送中のコーティングされた果実の過度の重量の減少を防ぎ、逆効果となる度合までその呼吸を損なうことのないような、果実のコーティングを得ることには大きな困難が存在する。
【0006】
輸送中のコーティングされた果実の重量の過度の減少を防ぎ、果実品目の呼吸を損なわないコーティング組成物は、本出願人の国際公開2017/126956号に記載されている。それにもかかわらず、本発明者らは、長期間にわたるコーティングされた果実の品質及び外観に関して、依然として改善の余地があることを観測した。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含む、果実をコーティングするための組成物であって、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、及び任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
を含む、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在する、前記スペーシング剤を含む、組成物に関する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含む組成物を塗布する、果実をコーティングする方法であって、前記組成物は、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、及び任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
を含む、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在する、前記スペーシング剤を含む、方法に関する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、第2の態様に係る方法に従ってコーティングされた果実品目に関する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含む組成物の使用であって、前記組成物は、
A)ポリマー又はポリマーの混合物であって、
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、ビニルアルコールの前記ポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;又は
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン、及び任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;
である、前記ポリマー又はポリマーの混合物;並びに
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在する、前記スペーシング剤
を含み、前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して前記組成物でコーティングされた場合に光沢が向上し、及び/又は前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して重量減少が遅い、収穫後の果実品目の調製のための、組成物の使用に関する。
【0011】
本発明によるコーティング組成物を塗布することにより、輸送及び/又は保管によって引き起こされる遅延全体を通して、果実の重量減少が最小限に抑えられ、一方でコーティングされた果実品目に光沢のある外観が与えられる。したがって本発明に係るコーティング組成物は、販売が遅れた場合に、コーティングされた果実の長期間の品質及び外観に関して重要な改善を提供する。これは果実の市場価値に有利な影響を与える。
【0012】
同時に、果実品目に塗布されたときに前記組成物から得られるコーティングは、コーティング内の果実品目の最小限の継続的な代謝及び成熟/熟成を可能にし、果実の味が悪影響を受けないようにする。
【0013】
果実へのコーティング組成物の塗布により、乾燥後のコーティング組成物は完全に生分解性であり、かつ必要に応じて水で容易に洗い落とすことができるものとなり、コーティングは事実上果実の除去可能なパッケージとして機能する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】30日間のインキュベーション後のオレンジの重量減少の図を示す。横軸:処理;縦軸:処理前の重量に基づく重量減少のパーセンテージ。
図2】30日間のインキュベーション後のオレンジの光沢の図を示す。横軸:処理;縦軸:1~7のスコアに基づく光沢の平均。
図3】9日間のインキュベーション後のマンゴーの重量減少の図を示す。横軸:処理;縦軸:処理前の重量に基づく重量減少のパーセンテージ。
図4】9日間のインキュベーション後のマンゴーの光沢の図を示す。横軸:処理;縦軸:1~7のスコアに基づく光沢の平均。
図5】13日間のインキュベーション後のパパイヤの重量減少の図を示す。横軸:処理;縦軸:処理前の重量に基づく重量減少のパーセンテージ。
図6】果実のコーティング後1日目のパパイヤの光沢の図を示す。横軸:処理;縦軸:1~7のスコアに基づく光沢の平均。
図7】9日間のインキュベーション後のアボカドの重量減少の図を示す。横軸:処理;縦軸:処理前の重量に基づく重量減少のパーセンテージ。
図8】果実のコーティング後9日目のアボカドの光沢の図を示す。横軸:処理;縦軸:1~8のスコアに基づく光沢の平均。
図9】果実のコーティング後13日目のパパイヤのBRIX値の図を示す。横軸:処理;縦軸:Brix°でのBRIX値の平均。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、コーティングされた果実品目が光沢のある外観を有する一方で、果実の重量減少を最小限にするための、収穫後の果実に塗布することができるコーティング組成物を提供する。
【0016】
コーティング組成物は、分散剤として水を含む分散液の形態であり、かつ、複数の分散物質を含む。この複数の分散物質は、ポリマー及び/又はポリマーの混合物の少なくとも一部、並びにスペーシング剤の一部を含む。
【0017】
組成物は、少なくともビニルアルコールの線状ホモポリマー又はコポリマーを含む。本発明者らは、驚くべきことに、線状ビニルアルコールポリマーの使用が、販売の遅れの間に、前記組成物でコーティングされた果実の光沢の増加及び重量減少の低減をもたらすことを発見した。
【0018】
組成物に使用されるビニルアルコールポリマーは、好ましくは少なくとも10,000Daの分子量を有する。このようなポリマーは、果実の消費者の消化管の膜を通過することができない。この方法では、コーティングされた果実の洗浄は必要ない。
【0019】
本発明者らは、光沢の増加及び重量減少の低減という有利な効果を与えるのはビニルアルコールポリマーの存在であることを発見したことから、組成物は、分散したポリマー物質の総重量、好ましくは、すべての分散物質の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の割合でビニルアルコールポリマーを含んでもよい。
【0020】
したがって、一実施形態では、組成物は、分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含み:
A1)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせであって、前記ビニルアルコールのポリマーは、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも50重量%を構成する、前記ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ;及び
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%の量で存在する、前記スペーシング剤を含む。
【0021】
したがって、別の実施形態では、組成物は、分散剤として水を含む分散液の形態で、かつ、複数の分散物質を含み:
A2)75~100%の加水分解度を有するビニルアルコールの線形ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、並びにモノマーの酢酸ビニル及びエチレン及び任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルから生成されるポリマー;及び
B)スペーシング剤であって、前記スペーシング剤は、組成物内のポリマーの重量に基づいて、0.001~1.0重量%の量で存在する、前記スペーシング剤を含む。
【0022】
モノマーの酢酸ビニル及びエチレンから生成されるポリマー並びに任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルと組み合わせて使用される場合、組成物が分散液中に分散した高分子物質の50重量%未満の割合、及び/又は分散液中のすべての分散物質の50重量%未満の割合でビニルアルコールポリマーを含むことも可能である。
【0023】
しかしながら、ビニルアルコールポリマーが単独のポリマー種として使用されるか、又は他のポリマー種と組み合わせて使用されるかにかかわらず、組成物が分散液中に分散した高分子物質の総量の50重量%を超える割合でビニルアルコールポリマーを含むことが好ましい。
【0024】
したがって組成物は、分散したポリマー物質の総重量の少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、若しくは分散したポリマー物質の総重量の少なくとも99重量%の割合、又はこれらのパーセンテージのいずれか2つの間の範囲などでビニルアルコールポリマーを適切に含み得る。
【0025】
一実施形態では、組成物は、上記のポリビニルアルコールポリマー以外のポリマーを本質的に含まない。本質的に更なるポリマーを含まないとは、好ましくは該ポリマーが1重量%未満であることを意味する。このような組成物は、光沢の増加及び重量減少の低減に関して特に良好に機能する。
【0026】
組成物は、分散液中のすべての分散物質の総量の50重量%(w/w)を超える割合でビニルアルコールポリマーを含む。組成物は、すべての分散物質の総重量の少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、若しくはすべての分散物質の総重量の少なくとも99重量%の割合、又はこれらのパーセンテージのいずれか2つの間の範囲などでビニルアルコールポリマーを適切に含み得る。
【0027】
ビニルアルコールポリマーは、好ましくは、ポリビニルアルコールホモポリマー(PVOH)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)又はそれらの組み合わせである。非常に好ましい実施形態では、ビニルアルコールポリマーはポリビニルアルコールホモポリマーである。本発明者らは、これらのポリマーに基づく組成物でコーティングされた果実の光沢の増加及び重量減少の低減に関して高い性能を観測した。
【0028】
組成物において、前記ポリビニルアルコールホモポリマー又はエチレンビニルアルコールコポリマーなどのビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーは、好ましくは水溶性、すなわち、冷水可溶性ビニルアルコールポリマーのように、通常の標準温度の20℃、1barの絶対圧力で、少なくとも組成物中のそれらの濃度の程度まで水溶性である。そのようなポリマーで得られたコーティングは、冷水不溶性ポリビニルアルコールポリマーなどの非溶解性ポリマーのコーティングよりも、果実のより良い結果とより均一な被覆を示す。
【0029】
加水分解度の高いビニルアルコールポリマーは、特に適している。したがって、組成物において、前記ポリビニルアルコールホモポリマー又はエチレンビニルアルコールコポリマーなどのビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーは、適切には75~100%、好ましくは80~100%、より好ましくは85~98%、より好ましくは87~98%、88~98%などの加水分解度を有する。非常に適切な加水分解度は85~100%、好ましくは85~99.9%、より好ましくは7~99.9%、更に好ましくは87~99.9%、88~99.9%などである。ポリビニルアルコールホモポリマー及びエチレンビニルアルコールコポリマーは、95~100%や95~99.9%、97~99.5%などの加水分解度を有することが好ましい。加水分解は、当技術分野で知られている一般的な意味、すなわちモル加水分解度も指し、モル%としても示される。本発明者らは、これらのかなり高い加水分解度のポリマーを使用すると、果実に塗布したときにコーティングの粘着性が低下することを観測した。粘着性が低いコーティングは、コーティングの品質、外観、保護パッケージ機能に優れるため、好ましい。
【0030】
組成物中のポリマー部分は、ビニルアルコールの線状ホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせ、及び酢酸ビニルとエチレンのモノマーから製造されたポリマー(VAE-コポリマー)、及び任意で高度に分岐したカルボン酸のビニルエステル(VAE-ターポリマー)であるポリマーの混合物であってよい。このような組成物はまた、以下の実施例で証明されるように、光沢の増加及び重量減少の低減に関しても良好に機能する。前記VAEポリマーに対するビニルアルコールポリマーの適切な比率は、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、100:0などの10:90~100:0の範囲であってよく、好ましくは、ビニルアルコールポリマーは、ビニルアルコールポリマーとVAEポリマーの重量の合計に基づいて50%以上の比率で存在する。
【0031】
VAEポリマーが酢酸ビニルとエチレンのモノマーから製造される場合、ポリマーはコポリマーである。VAEポリマーが酢酸ビニル、エチレン及び高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルのモノマーから製造される場合、ポリマーはターポリマーである。高度に分岐したカルボン酸にはカルボン酸基が、R1、R2及びR3がアルキル基である4級炭素原子に結合している、高度に分岐した構造を示すネオ酸(ネオアルカン酸)を含む、3級カルボン酸が含まれる。ネオ酸はトリアルキル酢酸で、四置換α炭素を含む。ネオ酸及びその製造は、例えば、M.フェファー、ジャーナル・オブ・アメリカン・オイル・ケミスツ・ソサエティーの1978年4月、第55巻、第4号、A342-A348ページに記載されている。そのような酸の例は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ又はヘキシオンのバーサチック酸などのネオペンタン酸及びネオデカン酸である。例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ又はヘキシオンのバーサチック酸(9又は10)を使用できる。高度に分岐したカルボン酸のビニルエステルは、酢酸エステルが鹸化し、結果としてターポリマー分子を安定化する速度に影響を及ぼすように選択される。
【0032】
本発明によれば、コーティング組成物はまた、スペーシング剤の一部を含む。スペーシング剤は、組成物内のポリマーの重量に基づいて、0.001~1.0重量%の量で存在する。このスペーシング剤の存在は、代謝ガスの拡散のためのチャネル(空間)を提供するために必要であり、コーティング内の果実の継続的な代謝と成熟を最小限に抑え、果実品目の味に悪影響を与えないようにする。
【0033】
スペーシング剤は、組成物内のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%、例えば組成物内のポリマーの重量に基づいて0.005~0.9重量%などの量で存在する。適切なスペーシング剤の量は、組成物内のポリマーの重量に基づいて、0.005~0.75重量%、0.005~0.5重量%、0.01~0.9重量%、0.01%~0.75重量%、又は0.01~0.5重量%の範囲であってよい。特に有用な組成物は、組成物内のポリマーの重量に基づいて、0.1~0.5重量%のスペーシング剤を含み得る。これらの濃度では、コーティング内の果実品目の継続的な代謝と成熟が最小限に抑えられ、果実の味に悪影響を与えない一方で、光沢の増加と重量減少の低減が達成される。これらの濃度で組成物中にスペーシング剤を有することの更なる利点は、高い相対湿度の領域においてさえもコーティングが無傷のままであることである。これらの低濃度のスペーシング剤はまた、果実に塗布されたときのコーティングの粘着性の低下に寄与する。
【0034】
前記スペーシング剤は、ジオール又はトリオールなどのポリオールであることが好ましい。組成物にポリオールを含めると、デンプンなどの当技術分野で記載されている他のスペーシング剤と比較して、コーティングの粘着性が低下する。実質的な量のデンプンは加えて、重量減少が低下しないように透過性を増加させる。したがって、組成物がデンプンを本質的に含まないことが好ましく、デンプンが存在する場合、デンプンは組成物中に存在するポリオールの量よりも少なくとも10倍、好ましくは100倍、好ましくは1000倍少ない量で存在する。適切なポリオールには、グリコール及びポリエーテルが含まれる。適切なポリオールは、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)又はそれらの混合物の群から選択され得る。好ましくは、前記スペーシング剤はグリセロールである。グリセロールは組成物内のポリマーの重量に基づいて0.001~1.0重量%、例えば組成物内のポリマーの重量に基づいて0.005~0.9重量%などの量で存在し得る。適切なグリセロール量は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.005~0.75重量%、0.005~0.5重量%、0.01~0.9重量%、0.01~0.75重量%、又は0.01~0.5重量%の範囲であり得る。特に有用な組成物は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.1~0.5重量%の量のグリセロールを含み得る。最良の結果は、組成物中のポリマーの重量に基づいてのグリセロール重量が0.01~1.0重量%、例えば0.01~0.9重量%などのグリセロール濃度で得られる。これらの濃度により、コーティング内の果実品目の継続的な代謝と成熟が最小限に抑えられ、果実の味に悪影響を与えない。一方で、光沢の増加と重量減少の低減が達成される。これらの濃度で組成物中にグリセロールを有することの更なる利点は、コーティングが高い相対湿度でさえも無傷のままであることである。これらの低濃度のグリセロールはまた、果実に塗布されたときのコーティングの粘着性の低減に寄与する。
【0035】
コーティング組成物は、上記のポリマー部及びスペーシング剤部に加えて、同様に更なる分散物質も含み得る。そのような更なる分散物質には、生物活性剤、栄養素、肥料、微量元素、乳化剤、界面活性剤、消泡剤、天然樹脂、天然高分子、生体高分子、糖、脂肪酸、脂肪酸エステル、モノ/ジ/トリグリセリド、スクロースエステル、ワックス、pH調整剤、抗酸化剤、スクラブ剤などが含まれる。組成物は、組成物の(乾燥)重量に基づいて50重量%未満の、好ましくは10重量%未満の、又は5重量%未満、例えば1、2、3若しくは4重量%未満などの更なる分散物質を含むことが好ましい。組成物は、組成物の重量(分散液の重量)に基づいて50重量%未満の、好ましくは10%重量未満の、又は5重量%未満、例えば、1、2、3若しくは4重量%未満の、更なる分散物質を含むことが更に好ましい。
【0036】
非常に好ましい実施形態では、組成物は、ポリビニルアルコールホモポリマー及びグリセロール、並びに水中に分散液の10重量%未満で分散した更なる分散物質、の分散液である。好ましくは、この組成物は、好ましくは5%未満、例えば1、2、3又は4重量%未満などの分散物質を含む。好ましくは、更なる分散物質の重量は、ポリビニルアルコールポリマーの重量よりも少ない。
【0037】
生物活性剤は、エチレンオキシダント又は中和剤、抗生物質、殺菌剤、安定剤、抗寄生虫剤、抗感染手段、その他の生物活性化合物、生物活性分子を制御する化合物、有用な細菌、有用な真菌、有用な酵素、UV安定剤、UVブロッカーなどの群から選択され得る。そのような生物活性剤は、入手可能で適切な生物活性剤の任意の群から選択することができる。そのような生物活性剤は、収穫された果実の貯蔵中の状態を更に改善し、衛生、外観、すなわち商業的使用の後の段階での商業的価値を更に維持するために使用され得る。好ましくは、生物活性剤は健康又は環境上のリスクを形成しない。好ましくは、1つ以上の生物活性剤は、コーティング組成物中のポリマーの5重量%未満の量で使用される。実用的な目的のために、生物活性剤は好ましくは水溶性であるが、担体又はカプセル化を使用することなどによって水溶性にすることができる、他の生物活性剤も適用可能である。他の場合には、乳化剤を加えてもよい。1種以上の作物保護剤がコーティング組成物に含まれる場合、コーティングは、コーティングを塗布する前にすでに存在する胞子の発生を遅くすることにより、感染のリスクの低減をもたらす。封入された作物保護剤がゆっくりと持続的に放出されるため、コーティングは、新しく堆積する可能性のある有害な微生物に対するバリアを長期間にわたって形成する。
【0038】
分散組成物の粘度の典型的な値は、DIN 53015/JIS K 6726に準拠して3~55mPas(20℃の4重量%溶液で、ヘプラー落球法に従って測定)であるが、この範囲外の粘度の値も適用される場合がある。本発明に従って使用される組成物の取り扱いを容易にすることから、粘度値は高すぎないことが好ましく、すなわち、好ましくは30未満である。本出願における粘度値は、DIN 53015/JIS K 6726に従って、20℃のポリマー4%水溶液について測定された粘度を指す。
【0039】
ポリビニルアルコールホモポリマーの場合、粘度は11.5より低い、例えば3.0~9.0であることが好ましい。適切な例示的なポリビニルアルコールホモポリマーは、例えば3.2~3.8、又は9.0~11.0の粘度を有し得る。
【0040】
エチレンビニルアルコールコポリマーの場合、粘度は30より低い、例えば3~30であることが好ましい。適切な例示的なポリビニルアルコールホモポリマーは、例えば、25~30、又は12.0~16.0、又は3.6~4.4の粘度を有し得る。
【0041】
ポリビニルアルコールホモポリマーは、11.5より低い、例えば3.0~9.0の粘度、及び95~100%、例えば95~99.9%、例えば97~99.5%などの加水分解度を有することが好ましい。ポリビニルアルコールホモポリマーの適切な例は、3.2~3.8の粘度と98.0~99.0の加水分解度、又は9.0~11.0の粘度と98.0~98.8の加水分解度を有する。
【0042】
エチレンビニルアルコールコポリマーは、30より低い、例えば3~30の粘度、及び95~100%、例えば95~99.9%、例えば97~99.5%などの加水分解度を有することが好ましい。エチレンビニルアルコールコポリマーの適切な例は、25~30の粘度と97.0~99.0の加水分解度、又は12.0~16.0の粘度と99.0~99.5の加水分解度、又は3.6~4.4の粘度と98.0~99.0の加水分解度を有する。粘度と加水分解度のこれらの組み合わせにより、果実に塗布したときのコーティングの粘着性の低減、簡単な処理、及びコーティングされた果実品目の重量減少の最小化の間の最適なバランスが得られる。
【0043】
本発明に従って使用されるコーティング組成物は、組成物の体積の0.3~25重量%の量のポリマー部を含み得る。好ましくは本発明の組成物は、組成物の体積の1.5~20重量%、例えば、組成物の体積の3.0~20重量%の量、より好ましくは組成物の体積の5~15重量%の量のポリマーを含む。
【0044】
第2の態様では、本発明は、収穫後の果実に上述のコーティング組成物を塗布することを含む、果実をコーティングする方法に関する。この点で、本発明は、第3の態様において、この方法に従ってコーティングされた果実品目にも関する。
【0045】
前記果実品目は好ましくは、バナナ、マンゴー、メロン、柑橘類、パパイヤ、ライチ、オレンジ、リンゴ、アプリコット、アボカド、バナナ、カンタロープ、イチジク、グアバ、キウイ、ネクタリン、桃、梨、柿、プラム、及びトマトの群から選択される。
【0046】
低含水量の濃縮組成物の場合、組成物は使用前に希釈される。
【0047】
本発明の方法は、コーティングの厚さを0.3~25μm、好ましくは1.5~20μmにすることができる。これは、単一のコーティング工程で実現できる。そのような厚さは、ポリマー濃度がそれぞれ0.3~25又は1.5~20重量%の組成物に果実を浸すことによって達成することができる。果実品目が光沢のある外観を有する一方で、コーティングされた果実品目に最小の重量減少をもたらすことから、1.5~10μmのコーティングが特に好ましい。非常に驚くべきことに、先行技術のコーティングは非常に艶がない外観となるのを防ぐために厚いコーティング厚を必要とすることが多いが、本発明のコーティング組成物では、15μm以下の厚さの薄いコーティングで非常に光沢のある果実が得られる。これにより、材料が節約され、複数の層を塗布する必要なく、適切なコーティングを1つの工程で塗布できる。
【0048】
複数のコーティング工程、例えば2工程を適用することも可能である。この場合、最初のコーティング工程はプライマー層となり、2番目の工程は「仕上げ」層となる。しかしながら、効率のために、コーティングは単一工程で行われることが好ましい。
【0049】
本発明によるコーティング組成物の分散液は、果実品目に直接1回以上塗布することができる。好ましくは、分散液は1回塗布される。コーティング分散液は、いくつかの技術によって、好ましくはブラッシングではなく噴霧又は浸漬によって塗布することができる。使用されるコーティング分散液が高粘度を有する場合、好ましくは分散液を塗布するために分散液の希釈液が用いられるが、一方で低粘度を有するポリマー分散液では、好ましくは噴霧/浸漬技術が使用される。コーティングは、塗布した後、乾燥させる。コーティング形成の処理の間に、コーティング組成物のポリマーの捕捉、架橋及び他のネットワーク化が起こる。
【0050】
本発明によるコーティング組成物の分散液は、果実品目に直接塗布される。したがって、果実に施されたコーティングは、果実の皮に直接施された包装材料と見なすことができる。組成物は、少なくとも果実皮に塗布されるが、組成物を果実の茎及び/又はその傷ついた表面にも塗布することは、光沢及び重量安定性に有害ではない。
【0051】
環境問題を考慮すると、コーティングは、たとえ非常に遅い速度であっても、水溶性であることが好ましい。したがって、コーティングは実際には果実の取り外し可能なパッケージとして機能する。さらに、それによって例えば、バクテリアは、コーティングを無害な生産物、つまり二酸化炭素と水のために使用した後、より迅速かつ容易に分解する。本発明の組成物中のスペーシング剤対ポリマーの比は、高い相対湿度の場合の耐水性と、水中へのより長い直接浸漬の場合の水溶性との間のバランスを確実にする。
【0052】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1及び第2の態様について上述の組成物でコーティングした場合に、前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して光沢が向上し、かつ/又は、前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較してより重量減少が遅い、収穫後の果実品目の調製のためであって、好ましくは、前記組成物でコーティングされていない果実品目と比較して光沢が向上し、かつ、より遅い重量減少の特徴の組み合わせを有する、収穫後の果実品目の調製のための、上記組成物の使用に関する。
【0053】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、限定することは意図していない。
【実施例
【0054】
実施例1:オレンジ
本発明による様々な組成物を用いた収穫後のオレンジのコーティングの効果を試験するために、果実を以下の組成物でコーティングした:
1)ポリマーの重量に基づいてグリセロールが0.01、0.1、及び1重量%の濃度で添加されたエチレンと酢酸ビニルのコポリマー(VAE)の体積に対して5重量%の溶液。これらの組成物は、以下の表1~4に、VAE、0.01%グリセロール、VAE、0.1%グリセロール、VAE、1%グリセロールとして示されている。
2)ポリマーの重量に基づいて、グリセロールが0.01、0.1、1重量%の濃度で添加されたポリビニルアルコール(PVOH)ホモポリマーの体積に対して7.5重量%の溶液。これらの組成物は、以下の表1~4において、PVOH、0.01%グリセロール、PVOH、0.1%グリセロール、PVOH、1%グリセロールとして示されている。
3)組成物中のポリマーの重量に基づいて、グリセロールが0.01、0.1、及び1重量%の濃度で添加された、ポリビニルアルコール(PVOH)ホモポリマーの体積に対して3.75重量%、及びエチレンと酢酸ビニルのコポリマー(VAE)の体積に対して2.5重量%の溶液。これらの組成物は、以下の表1~4において、PVOH、0.01%グリセロール、PVOH、0.1%グリセロール、PVOH、1%グリセロールとして示されている。この例では、クラレのPOVAL 6-88((POVAL(登録商標))、粘度~6、加水分解度~88モル%)をPVOHとして使用した。コーティングは、上記の組成物の1つに既知の重量のオレンジを浸漬することにより塗布し、5~7.5ミクロンの層厚を生じた。対照のオレンジはコーティングしなかった。
【0055】
インキュベーションの30日後、オレンジの重量を再度測定し、同じ処理を施した13個一組のオレンジより、コーティングの塗布から30日後のオレンジあたりの平均重量減少を計算した。
【0056】
果実は室温で相対湿度40~50%でインキュベートした。
【0057】
また、光沢を決定した。これはテストパネルによって行われた。光沢は1~7のスコアに基づいて評価された。信頼性の目的で、オレンジは無作為化され、テストパネルのボランティアはオレンジが受けた処理について知らされなかった。
【0058】
結果を表1に示す。
【表1】
【0059】
表1の結果は、図1図2の図表に視覚化される。図1は、本発明によるPVOH含有組成物がオレンジに塗布される場合、無処理のオレンジ及びPVOHを含まないポリマー組成物で処理されたオレンジと比較して、オレンジの重量減少の顕著な低減が達成されることを示す。果実品目は一般に重量に基づいて取引され、重量減少の低減は輸送及び保管中の果実の市場価値の「騰貴」の減少を意味するため、低い重量減少が望ましい。
【0060】
さらに、図2は、本発明によるPVOH含有組成物がオレンジに塗布されると、無処理のオレンジ及びPVOHを含まないポリマー組成物で処理されたオレンジと比較して、オレンジの光沢の顕著な増加が達成されることを示す。この光沢の増加は、PVOHとグリセロールをベースとする組成物が、追加のポリマーなしで使用される場合に最も顕著になる(PVOH、0.01%グリセロール;PVOH、0.1%グリセロール;PVOH、1%グリセロール)。最高の光沢結果は、少量のグリセロール(0.01%)で得られる。
【0061】
実施例2:マンゴー
実施例1に記載された試験をマンゴーに対しても行い、実施例1に記載された上記の組成物の1つに既知の重量のマンゴーを浸漬することにより、5~7.5ミクロンの層厚を生じた。対照のマンゴーはコーティングしなかった。明示された場合を除いて、実施例1と同じ条件を用いた。
【0062】
9日間のインキュベーション後、マンゴーの重量を再度測定し、コーティングを施してから9日後のマンゴーあたりの平均重量減少を、同じ処理を施した6個一組のマンゴーから計算した。光沢も実施例1に記載したように評価した。結果を表2に示す。
【表2】
【0063】
表2の結果は、図3図4の図表に視覚化される。
【0064】
図3は、本発明によるPVOH含有組成物がマンゴーに塗布される場合、無処理のマンゴー及びPVOHを含有しないポリマー組成物で処理されたマンゴーと比較して、マンゴーの重量減少の顕著な低減が達成されることを示す。
【0065】
さらに、図4は、本発明によるPVOH含有組成物がマンゴーに塗布されると、無処理のマンゴー及びPVOHを含有しないポリマー組成物で処理されたマンゴーと比較して、マンゴーの光沢の顕著な増加が達成されることを示す。この光沢の増加は、PVOHとグリセロールをベースとする組成物が、追加のポリマーなしで使用される場合に最も顕著になる(PVOH、0.01%グリセロール;PVOH、0.1%グリセロール;PVOH、1%グリセロール)。最高の光沢結果は、少量のグリセロール(0.01%)で得られる。
【0066】
実施例3:パパイヤ
実施例1に記載された試験をパパイヤに対しても行い、実施例1に記載された上記の組成物の1つに既知の重量のパパイヤを浸漬することにより、5~7.5ミクロンの層厚を生じた。対照のパパイヤはコーティングしなかった。明示された場合を除いて、実施例1と同じ条件を用いた。
【0067】
13日間のインキュベーション後、パパイヤの重量を再度測定し、コーティングを塗布してから13日後のパパイヤあたりの平均重量減少を、同じ処理を施した6個一組のパパイヤから計算した。光沢もまた、この場合はコーティングの塗布後の初日に、実施例1に記載されたように評価した。結果を表3に示す。
【表3】
【0068】
表3の結果は、図5図6の図表に視覚化される。
【0069】
図5は、本発明によるPVOH含有組成物がパパイヤに塗布されると、無処理のパパイヤ及びPVOHを含まないポリマー組成物で処理されたパパイヤと比較して、パパイヤの重量減少の顕著な低減が達成されることを示す。この重量減少の低減は、PVOHとグリセロールをベースにした組成物が、追加のポリマーなしで使用される場合に最も顕著になる(PVOH、0.01%グリセロール;PVOH、0.1%グリセロール;PVOH、1%グリセロール)。
【0070】
さらに、図6は、本発明によるPVOH含有組成物がパパイヤに塗布されると、無処理パパイヤ及びPVOHを含まないポリマー組成物で処理されたパパイヤと比較して、パパイヤの光沢の顕著な増加が達成されることを示す。この光沢の増加は、PVOHとグリセロールをベースとする組成物が、追加のポリマーなしで使用される場合に最も顕著になる(PVOH、0.01%グリセロール;PVOH、0.1%グリセロール;PVOH、1%グリセロール)。
【0071】
実施例4:アボカド
実施例1に記載された試験をアボカドに対しても行い、実施例1に記載された上記の組成物の1つに既知の重量のアボカドを浸漬することにより、5~7.5ミクロンの層厚を生じた。対照のアボカドはコーティングしなかった。明示された場合を除いて、実施例1と同じ条件を用いた。
【0072】
9日間のインキュベーション後、アボカドの重量を再度測定し、コーティングを塗布してから9日後のアボカドあたりの平均重量減少を、同じ処理を施した6個一組のアボカドから計算した。光沢もまた、この場合はコーティングの塗布後9日目に、実施例1に記載されたように評価した。結果を表4に示す。
【表4】
【0073】
表4の結果は、図7図8の図表に視覚化される。
【0074】
図7は、本発明によるPVOH含有組成物がアボカドに塗布されると、無処理のアボカド及びPVOHを含まないポリマー組成物で処理されたアボカドと比較して、アボカドの重量減少の顕著な低減が達成されることを示す。
【0075】
さらに、図8は、本発明によるPVOH含有組成物がアボカドに塗布されると、無処理のアボカド及びPVOHを含まないポリマー組成物で処理されたアボカドと比較して、アボカドの光沢の顕著な増加が達成されることを示す。この光沢の増加は、PVOHとグリセロールをベースとする組成物が、追加のポリマーなしで使用される場合に最も顕著になる(PVOH、0.01%グリセロール;PVOH、0.1%グリセロール;PVOH、1%グリセロール)。
【0076】
実施例5
果実はまた、BRIX試験にも供した。BRIXスケールは、果実の糖度の測定値である。これは、砂糖、有用なミネラル、微量のミネラルを含む樹液中の固形物の量を反映する。BRIXが高いほど、風味と栄養価が高いことを示す。BRIX値は、屈折計で測定した。
【0077】
実施例3のパパイヤをBRIX試験に供し、その結果を図9に示す。図9の「開始時」、すなわち処理前で見られるように、パパイヤの平均BRIXは11Brix°をわずかに超えていた。BRIX値は、実施例1及び3で上述した、様々な処理を受けたパパイヤについて13日後に決定した。図9から明らかなように、処理に関係なく、Brix値は時間とともに増加しており、インキュベーション期間中の熟成と味及びフレーバーの発達を示す。
【0078】
実施例6
表5に列挙されているポリマーを使用して、マンゴーの重量減少に対する粘度と加水分解度の影響を試験した。粘度は、DIN 53015/JIS K 6726に従って、20℃のポリマー4%水溶液について測定した粘度を示す。ポリマー(POVAL(登録商標))はクラレから入手した。
【表5】
【0079】
表5に列挙されたポリマーは、3つのコーティング組成物において、組成物の重量に基づいて3.5重量%のポリマー濃度で用いた。スペーシング剤としてグリセロールは、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.1重量%の濃度で用いた。ポリマーIを含む組成物は組成物Aと呼び、ポリマーIIを含む組成物は組成物Bと呼び、ポリマーIIIを含む組成物は組成物Cと呼ぶ。各組成物について、実施例1に記載の方法に従って8個のマンゴーをコーティングし、室温での25日間のインキュベーション後に、試験条件あたり8個のマンゴーの平均重量減少を測定した。インキュベーション初日のマンゴーの平均重量を参考とした。表6は、相対的な重量減少を示す。最も高い平均重量減少は1に正規化されている。
【表6】
【0080】
表6は、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.1重量%のグリセロール濃度で、重量減少の最も顕著な低減が、低粘度と非常に高い加水分解度を組み合わせたポリマーを含む組成物において得られることを示す。
【0081】
実施例7
本発明による様々な組成物を用いて収穫後のマンゴーをコーティングする効果を試験するために、マンゴーを、表7に列挙されるエチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーをベースとする組成物でコーティングした。粘度は、DIN 53015 / JIS K 6726に従って20℃のポリマー4%水溶液について測定した粘度を示す。ポリマー(EXCEVAL(商標))はクラレから入手した。
【表7】
【0082】
組成は以下の通りである。第1の組成物(組成物D)では、ポリマーIVは、組成物の重量に基づいて1重量%の濃度で用いた。第2の組成物(組成物E)では、ポリマーVは、組成物の重量に基づいて3重量%の濃度で用いた。第3の組成物(組成物F)では、ポリマーVIは、組成物の重量に基づいて5重量%の濃度で用いた。すべての組成物はまた、組成物中のポリマーの重量に基づいて0.01重量%の濃度でグリセロールの形態のスペーシング剤を含んでいた。マンゴーを実施例1に記載された方法に従ってコーティングし、室温での14日間のインキュベーション後に重量減少を決定した。コーティングされていないマンゴーを対照とした。室温での14日間のインキュベーション後に、試験条件ごとに7個のマンゴーの平均体重減少を測定した。インキュベーション初日のマンゴーの平均重量を参考とした。結果を表8に示す。
【表8】
【0083】
表8は、本発明によるEVOH含有組成物をマンゴーに塗布した場合、無処理のマンゴーと比較して、マンゴーの重量減少の低減が達成されることを示す。
【0084】
実施例8
本発明による様々な組成物で収穫後のオレンジをコーティングする効果を試験するために、果実を実施例7に記載された組成物D、E及びFでコーティングした。オレンジを実施例1に記載された方法に従ってコーティングし、室温での21日間のインキュベーション後に、重量減少を測定した。コーティングされていないマンゴーを対照とした。室温での21日間のインキュベーション後に、試験条件ごとに9個のマンゴーの平均体重減少を測定した。インキュベーション初日のマンゴーの平均重量を参考とした。結果を表9に示す。
【表9】
【0085】
表9は、本発明によるEVOH含有組成物がオレンジに塗布される場合、無処理のオレンジと比較して、オレンジの重量減少の低減が達成されることを示す。
【0086】
実施例9
マンゴーの重量減少の影響について、いくつかのスペーシング剤を試験した。この目的のために、組成物は、組成物の重量に基づいて3.5重量%の濃度のPVOH(クラレのPOVAL6-88(POVAL(登録商標))、粘度~6、加水分解度~88モル%)で調製した。スペーシング剤は、組成物中のポリマーの重量に基づいて、0.01重量%及び0.1重量%の濃度で用いた。対照として、スペーシング剤が添加されていない組成物の重量に基づいて3.5重量%のPOVAL6-88を含む組成物を用いた。マンゴーは、実施例1に記載された方法に従ってコーティングし、室温での9日間のインキュベーション後に、試験条件当たり7個のマンゴーの平均重量減少のパーセンテージを決定した。結果として、7個のマンゴーの平均重量に基づく、9日間のインキュベーション後の重量減少のパーセンテージを、下の表10に示す。
【表10】
【0087】
表10は、コーティング中のスペーシング剤であるグリセロール、ソルビトール又はプロピレングリコールの存在が、スペーシング剤なしの組成物でコーティングされたマンゴーと比較して、マンゴーの重量減少に対して有利な効果を有することを示す。これらのスペーシング剤のいずれかを含めると、スペーシング剤を含まない組成物でコーティングされたマンゴー(7.27%)と比較して、マンゴーの重量減少が低減した(6.00~7.22%)。
【0088】
上記の実施例は、本発明に従って、果実が請求項で定義される組成物でコーティングされている場合、果実品目の顕著な重量減少の低減が、光沢の向上と組み合わせて達成されることを示す。ポリビニルアルコールホモポリマー及びスペーシング剤の水性分散物であり、更なる分散物質を必要としない組成物が組成物として使用される場合、光沢の向上に関して最良の結果が得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9