(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ソケット本体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20230426BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01R13/11 301A
H01R13/11 301C
H01R13/11 301D
H01R43/16
(21)【出願番号】P 2020558899
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2019060024
(87)【国際公開番号】W WO2019206784
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517369346
【氏名又は名称】ストーブリ エレクトリカル コネクターズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラース ボリガー
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02280027(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第02596588(FR,A1)
【文献】米国特許第03081528(US,A)
【文献】特公昭38-001684(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット壁(2)で囲まれるとともに中心軸(M)に沿って延在してプラグピンを受容するソケット空間(3)を含むソケット本体(1)であって、
前記ソケット空間(3)は、前面(6)によって縁取られたソケット開口部(22)を有し、該ソケット開口部(22)を通って前記プラグピンが前記ソケット空間(3)内に押し込むことが可能とされ、
少なくとも1つの切込み(4)は、前記ソケット空間(3)へ曲がる少なくとも1つのスプリングタブ(5)を形成するように
、前記中心軸(M)に対して角度(α)で傾斜して、前記ソケット壁(2)に延在し、
前記ソケット本体(1)の外側からの前記少なくとも1つの切込み(4)の上部切込み面(16)は、前記ソケット壁(2)
のシェル表面(11)のみと交差して、前面(6)とは交差して
おらず、
前記ソケット本体(1)は、前記少なくとも1つのスプリングタブ(5)の領域に、前記シェル表面(11)から前記ソケット本体(1)内に延在する外側凹部(12)を有し、前記凹部(12)は、前記スプリングタブ(5)の可撓性が増加するように形成されることを特徴とする、ソケット本体(1)。
【請求項2】
正確に1つの切込み(4)又は2つの切込み(4)又は3つの切込み(4)又は4つの切込み(4)が配置され、かつ/又は複数の切込み(4)がある場合、前記切込み(4)は、前記ソケット本体(1)の周囲に等間隔で分散され、かつ/又は複数の切込み(4)は、前記中心軸(M)方向に互いに間をおいて配置されることを特徴とする、請求項1に記載のソケット本体(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの切込み(4)は、前記ソケット本体(1)の前記前面(6)から前記プラグピンを受容するための前記ソケット空間(3)内に延在する円筒形ガイドセクション(9)を形成するように構成され、前記円筒形ガイドセクション(9)は、前記中心軸(M)を完全に取り囲む内壁(10)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のソケット本体(1)。
【請求項4】
前記ガイドセクション(9)は、前記ソケット本体(1)の前記前面(6)から、前記ソケット空間(3)の直径(D)の5%~100%、又は前記ソケット空間(3)の直径(D)の20%~50%となるガイド長(L)を有することを特徴とする、請求項3に記載のソケット本体(1)。
【請求項5】
前記外側凹部(12)は、横断面で見て、前記中心軸(M)に対して角度(β)で傾斜して配向された平坦な凹部面(13)を有することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項6】
前記凹部面(13)が前記ソケット空間(3)内へ部分的に延在し、特に以下であることを特徴とする、請求項
5に記載のソケット本体(1):
前記ソケット空間(3)内への機能的開口部(23)が形成され、かつ/又は
前記凹部面(13)の前記端部領域(14)が、前記凹部(12)の最下部で丸み部(15)により丸みを帯びて形成され、かつ/又は
前記凹部面(13)は、前記前面(6)から見て、前記少なくとも1つの切込み(4)の切込み深さ(C)と同じ深さ(A)まで延在し、又は前記凹部面(13)は、前記前面から見て、前記少なくとも1つの切込み(4)の切込み深さ(C)よりも浅いか又は深い深さ(A)まで延在する。
【請求項7】
前記外側凹部(12)は端部側面を有し、前記端部側面(27)は、好ましくは前記凹部面(13)に対して実質的に90°の角度であることを特徴とする、請求項
1~6のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの切込み(4)は、上側は前記上部切込み面(16)によって、下側は下部切込み面(17)によって境界が定められており、前記切込み面(16、17)は、好ましくはスプリングタブ(5)が曲げられていない場合に互いに平行に延在することを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項9】
前記スプリングタブ(5)は変形状態において、前記上部切込み面(16)がその自由端部(26)により、好ましくは前記下部切込み面(17)と接触するか、又は前記上部切込み面(16)がその自由端部(26)により、好ましくは前記下部切込み面(17)と接触しないことを特徴とする、請求項
8に記載のソケット本体(1)。
【請求項10】
前記凹部面(13)は、切込み(4)の前記切込み面(16、17)、特に前記上部切込み面に対して、平行に広がり、前記スプリングタブ(5)が、前記凹部面(13)の領域において、前記凹部面(13)に対して直角に見て一定の厚み(T)を有することを特徴とする、請求項
5~7のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項11】
前記凹部面(13)は、前記切込み面(16、17)、特に前記上部切込み面に対して、ある角度で傾斜して広がり、前記スプリングタブ(5)が、前記凹部面(13)の領域において、前記凹部面(13)に対して直角に見て変化する厚み(T)を有することを特徴とする、請求項
5~7のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項12】
前記下部切込み面(17)は前記ソケット本体(1)の前記前面(6)から前記ソケット本体(1)内に延在するか、又は前記下部切込み面(17)は前記ソケット本体(1)の前記シェル表面(11)から前記ソケット本体(1)内に延在することを特徴とする、請求項
8又は9に記載のソケット本体(1)。
【請求項13】
前記切込み(4)は、断面で見て、前記中心軸(M)と交差し、前記中心軸(M)の下に延在し、かつ/又は
前記非変形状態では、前記切込み(4)は一定のクリアランスを有し、かつ/又は
前記切込み(4)は前記中心軸(M)を横切り、その切込み面(16、17)に平行に、前記ソケット本体(1)を貫通して延在し、かつ/又は
前記切込み(4)は、前記中心軸(M)方向に見て、最大切込み深さ(C)の10%未満である切込み幅(B)を有し、かつ/又は
前記切込み(4)は、横断面で見て、前記中心軸(M)に対して2°~45°の角度(α)、特に10°~30°の角度であることを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項14】
前記切込み(4)は、前記2つの切込み面(16、17)を互いに接続する丸み部(19)により丸みを帯びて形成されている切込み底部(18)を有し、右部分(7)及び左部分(8)の前記丸み部(19)の中心点(X)は、前記中心軸(M)を通って前記2つの部分(7、8)間の中心に延在する前記中心面(ME)に対して直角である共通の面(E)にあることを特徴とする、請求項1~
13のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項15】
前記切込み(4)は、前記ソケット本体(1)の前記前面(6)から見て右部分(7)及び左部分(8)を有し、
中心面(ME)は、前記中心軸(M)を通ってこれらの2つの部分(7、8)間の中心
に延在し、
前記切込み(4)は、前記中心面(ME)に直角であるとともに前記中心軸(M)を通って延在する投影面(PE)において、楕円の一部分の形状を有する側縁部(20)を有し、かつ/又は
前記凹部(12)は、前記中心面(ME)に直角であるとともに前記中心軸(A)を通って延在する投影面(PE)において、楕円の一部分の形状を有する側縁部(21)を有することを特徴とする、請求項1~
14のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項16】
前記切込み面(16、17)は、平坦な円筒切断面の面の一部であり、前記円筒切断面は、前記中心軸(M)に対してある角度で傾斜して広
がることを特徴とする、請求項1~
15のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項17】
前記凹部面(13)は平坦な円筒切断面の面の一部であり、前記円筒切断面は、前記中心軸(M)に対してある角度で傾斜して広がることを特徴とする、請求項
5~7のいずれか一項に記載のソケット本体(1)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のソケット本体(1)の製造方法であって、第1の工程において、前記ソケット本体(1)を製造し、次の第2の工程において、前記切込み(4)をフライス加工ツールによって、特にフライス盤ツールによって製造することを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記凹部(12)はフライス加工ツールによって、特にフライス盤ツールによって、製造し、かつ/又は前記凹み(12)製造用のフライス盤ツール(S12)は、好ましくは前記切込み(4)製造用の前記フライス盤ツール(S4)と同じフライスアーバ(FD)に配置されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のソケット本体と、請求項15において特許請求される対応するソケット本体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気プラグ接続用のソケット本体は先行技術により公知である。このようなソケット本体は、その中にプラグピンを押し込むことができるソケット開口部を有する。電気的接触は、プラグピンの外部とソケット開口部の内部との間で確立される。
【0003】
特許文献1は、このようなソケット本体の一例を示す。ソケット本体は、前側からソケット本体内に延在する切込みを有する。その結果、ソケット開口部に向かって湾曲するタブが作り出され、ソケット開口部の断面のサイズが小さくなる。タブはわずかに弾性がありプラグピンと接触する。切込み形成の1つの不利な点は、プラグピンが押し込まれたときに、タブが押し込み軸から離れるようにプラグピンを押す可能性があることである。その結果、ソケット本体とプラグピンとの間の電気プラグ接続を生み出すために差し込む力の増加が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この先行技術より、本発明の1つの目的は、先行技術の不利な点を克服するソケット本体の提供にある。より詳細には、本発明の目的は、プラグピンに改善された接触特性を生み出すタブを有するソケット本体を提供することである。
【0006】
この目的は請求項1の主題によって達成される。したがって、ソケット本体は、ソケット壁で囲まれるとともに中心軸に沿って延在してプラグピンを受容するソケット空間を含む。ソケット空間へ曲がる少なくとも1つのスプリングタブが形成されるように、少なくとも1つの切込みは、中心軸Mを横切る断面で見て、中心軸に対してある角度で傾斜して、前記ソケット壁(2)に延在する。ソケット本体の前面から見て、この少なくとも1つの切込みは、右部分及び左部分を有し、中心面は、中心軸を通ってこれらの2つの部分間の中心に延在する。この少なくとも1つの切込みの上部切込み面は、ソケット壁のシェル表面のみと交差して、ソケット本体の前面とは交差していない。
【0007】
上部切込み面が、シェル表面のみと交差して、ソケット本体の前面とは交差していないという事実により、スプリングタブのスプリング特性を改善する切込みを設けることができる。より詳細には、スプリング特性は、スプリングタブをソケット開口部内へと湾曲させるのにより大きな力が必要とされ、またソケット開口部内のプラグにより大きな接触力を付与できるように改善できる。
【0008】
さらに、スプリングタブが比較的短くなるように形成できるため、スプリングタブの剛性を増加できる。その結果、同じスプリング特性及び同じ接触特性でより多くのプラグサイクルが可能になる。
【0009】
切込みは、好ましくは機械加工によって、特にフライス加工ツールを用いてフライス加工することによって設けられる。
【0010】
角度は、切込みの全体的な傾斜角として定義される。より詳細には、スプリングタブの非変形状態においてである。したがって、スプリングタブが非変形状態であれば、上部切込み面及び下部切込み面は前記角度で広がる。変形状態では、角度は下部切込み面において決定でき、上部切込み面は中心軸に対して下部切込み面よりもわずかに平坦に広がる。
【0011】
スプリングタブの形成及び数に応じて、電気的接触が、
- ソケット空間内に押し込まれたプラグピンの間及びソケット空間の面とスプリングタブとの間、又は
- ソケット空間内に押し込まれたプラグピンとスプリングタブの間
のいずれかに与えられる。
【0012】
スプリングタブは、その自由端部がソケット開口部の方に向けられている。これは、ソケット空間内に押し込まれる間、比較的小さな押し込み深さの場合でもソケット本体が既にスプリングタブと接触していることを意味する。その結果、必要とされる差し込み力は急速に増加し、その結果、既定の押し込み手順が可能となる。
【0013】
切込みの数は実施形態に応じて変動してよいが、これによりスプリングタブの数が変動する。スプリングタブは各切込みに対して形成される。正確に1つの切込みを配置することが可能である。他の変形形態では、2つ又は3つ又は4つ又はそれよりも多くの切込みと、対応する数のスプリングタブとが考えられる。切込みは、好ましくはソケット本体の周囲に分散して配置し、切込み間の距離はどの場合も同じであるように形成される。複数の切込みは、中心軸方向に互いに間をおいて配置することも可能である。
【0014】
切込みは、好ましくはソケット本体の前面から、プラグピンを受容するためのソケット空間内に延在する円筒形ガイドセクションを形成するように構成される。この円筒形ガイドセクションは、中心軸を完全に取り囲む内壁を有する。押し込み方向に見て、最初に円筒形ガイドセクションはソケット開口部に隣接し、その後スプリングタブはソケット空間内への深さをさらに増加させながらソケット空間内へと突出する。換言すると、これは、円筒形ガイドセクションがソケット開口部に隣接しているので、ソケット開口部内への押し込み中、この円筒形ガイドセクションはその内壁によってプラグピンをガイドすることを意味する。これは、プラグピンがスプリングタブに当たる前に、プラグピンの中心軸が、ソケット空間の中心軸と同一直線上に並ぶという利点を有する。
【0015】
ソケット本体の前面から見て、ガイドセクションは、好ましくはソケット空間の直径の5%~100%又は20%~50%のガイド長を有する。この長さの範囲でガイディングの観点から良好な結果が得られた。
【0016】
ソケット本体は、好ましくはスプリングタブの領域に、シェル表面からソケット本体内に延在する外側凹部を有し、凹部は、スプリングタブの可撓性が増加するように形成される。凹部は、特に好ましくは切込みの最下部である領域とは反対側のシェル表面の外側に配置される。外側凹部は、好ましくは機械加工によって、特にフライス加工ツールを用いてフライス加工することによって設ける。
【0017】
凹部はスプリングタブ全体を弱めるが、スプリングタブのスプリング特性が、適用分野に応じて、凹部のサイズ及び/又は形状によって変えられるという利点を有する。より詳細には、1つの変化はスプリングタブの剛性の低下であり得る。
【0018】
外側凹部は、好ましくは横断面で見て、中心軸に対してある角度で傾斜して配向された平坦な凹部面を有する。平坦な凹部面はしたがって、平坦な面であり、円筒切断面を形成する。
【0019】
凹部面は、好ましくは部分的にソケット空間内に延在する。凹部面は、特に好ましくは機能的開口部が形成されるようにソケット空間内に延在する。機能的開口部は、例えば、検査用開口部として機能し得る。プラグピンの完全な、かつ/又は正確な押し込みは、この検査用開口部を介して確認できる。あるいは、機能的開口部は、検査用開口部を通じて差し込み処理の間に生じる埃を追い出すように機能できる。
【0020】
凹部面は好ましくは、前面から見て、この少なくとも1つの切込みと同じ切込み深さまで延在する。あるいは、凹部面は、前面から見て、この少なくとも1つの切込みの切込み深さよりも浅いか又は深い深さまで延在する。スプリング特性及び/又は可撓性は、切込み面の深さの変化により変えられる。
【0021】
「凹部面の深さ」という表現は、中心軸の方向における前面からの凹部面の最大の広がりを意味する。
【0022】
凹部面の端部領域は、好ましくは凹部の最下部で丸み部により丸みを帯びて形成される。次に、移行面は丸み部に隣接しており、移行面はシェル表面への移行を形成する。端部領域における切込みの影響は、丸み部によって最小限にすることができ、その結果、スプリングタブは破損を起こしにくくなる。
【0023】
外側凹部は、好ましくは端部側面を有し、端部側面は好ましくは、凹部面に対して実質的に90°の角度である。端部側面は、凹部面に直接隣接し得るか、又は凹部面の丸み部を介して間接的に隣接している。
【0024】
切込みは、好ましくは上側は上部切込み面によって、下側は下部切込み面によって境界が定められ、これらの切込み面は、スプリングタブが曲げられていない場合に好ましくは互いに平行に延在する。スプリングタブは、好ましくは、変形状態において、上部の切込み面がその自由端部により、下部切込み面と接触するようになっている。この接触の結果、ソケット本体の製造中、スプリングタブの単純だが特殊な変形が可能になる。あるいは、スプリングタブは、好ましくは、変形状態において、上部切込み面がその自由端部により、下部切込み面と接触しないようになっている。
【0025】
したがって、切込みは、実質的に上部切込み面及び下部切込み面により境界を定められる。「上部」及び「下部」という表現は、横断面で見て、下部切込み面が上部切込み面よりもソケット空間の近くにあるように、切込み面との関連で理解されるべきである。
【0026】
スプリングタブが、凹部面の領域において、凹部面に対して直角に見て一定の厚みを有するように、凹部面は、好ましくは切込みの切込み面に対して平行に広がる。あるいは、スプリングタブが、凹部面の領域において、凹部面に対して直角に見て変化する厚みを有するように、凹部面は、切込みの切込み面、特に上部切込み面に対してある角度で傾斜して広がる。
【0027】
下部切込み面は、好ましくはソケット本体の前面からソケット本体内に延在する。これは、切込みがシェル表面及び前面からソケット本体内に延在することを意味する。あるいは、下部切込み面は、ソケット本体のシェル表面からソケット本体内に延在してもよい。
【0028】
切込みは、好ましくは横断面で見て中心軸と交差し、したがって中心軸の下まで延在する。これは、スプリングタブの厚みを増やせるという利点を有する。あるいは、しかしながら、切込みはまた中心軸の上にしか延在できなくてもよい。
【0029】
さらなる有利な実施形態は、切込みが中心軸を横切って、切込み面に平行となるように、ソケット本体を貫通して延在し、
かつ/又は
切込みは、中心軸方向に見て、最大切込み深さの10%未満である切込み幅を有し、
かつ/又は
横断面で見て、切込みは中心軸に対して2°~45°の角度、特に10°~30°の角度であることを特徴とする。
【0030】
より直径が大きなソケット本体の場合の切込み幅は、好ましくは、より直径が小さなソケット本体の場合よりも大きい。これは、直径が大きいソケット本体の場合、より切込み幅が大きな切込みが提供されるのに対し、直径が小さなソケット本体の場合、より切込み幅が小さな切込みが提供されることを意味する。
【0031】
これらのさらなる有利な実施形態は、特に、スプリングタブのスプリング特性がさらに最適化され、その用途に適合できるという利点を有する。
【0032】
切込みは、2つの切込み面を互いに接続する丸み部により丸みを帯びて形成されている切込み底部を有する。右部分の丸み部の中心点及び左部分の丸み部の中心点は、好ましくは中心面に対して直角である共通の平面にある。
【0033】
切込みは、好ましくは、前記中心面に直角であるとともに中心軸を通って延在する投影面において、楕円の一部分の形状を有する側縁部を有する。
【0034】
凹部は、好ましくは、前記中心面に直角であるとともに中心軸を通って延在する投影面において、楕円の一部分の形状を有する側縁部を有する。
【0035】
前記切込み面は、好ましくは、平坦な円筒切断面の面の一部であり、円筒切断面は、中心軸に対してある角度で傾斜して広がる。
【0036】
前述の凹部面は、好ましくは、平坦な円筒切断面の面の一部であり、この円筒切断面は、中心軸に対してある角度で傾斜して広がる。
【0037】
凹部面及び前記切込み面は、好ましくは平坦な面である。「平坦な面」という表現は、平面状に広がる面を意味する。
【0038】
上記記述によるソケット本体の製造方法の場合、第1の工程において、ソケット本体が製造され、次の第2の工程において、切込みはフライス加工ツールによって、特にフライス盤ツールによって製造される。その結果、ソケット本体の製造は非常に容易である。特に、フライス加工ツールによる切込みの製造は有利である。
【0039】
凹部もまた、好ましくは、フライス加工ツールによって、特にフライス盤ツールによって製造される。
【0040】
特に好ましくは、凹部製造用のフライス盤ツールは、好ましくは、切込み製造用のフライス盤ツールと同じフライスアーバに配置されている。その結果、切込みと、さらに凹部とは、1回のフライス加工プロセスにより製造できる。
【0041】
さらなる実施形態は、従属請求項に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の好ましい実施形態は、図面に基づいて以下に記述されるが、これらの図面は、単に説明目的に使用され、限定として解釈されるべきではない。
【0043】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態によるソケット本体の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図3による断面線A-Aに沿った断面図を示す。
【
図5】
図5は、フライス加工ツールと先の図面によるソケット本体の詳細図を示す。
【
図6a】
図6aは、本発明によるソケット本体の第2の実施形態の図を示す。
【
図6b】
図6bは、本発明によるソケット本体の第2の実施形態の図を示す。
【
図7a】
図7aは、本発明によるソケット本体の第3の実施形態の図を示す。
【
図7b】
図7bは、本発明によるソケット本体の第3の実施形態の図を示す。
【
図8a】
図8aは、本発明によるソケット本体の第4の実施形態の図を示す。
【
図8b】
図8bは、本発明によるソケット本体の第4の実施形態の図を示す。
【
図9a】
図9aは、本発明によるソケット本体の第5の実施形態の図を示す。
【
図9b】
図9bは、本発明によるソケット本体の第5の実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明によるソケット本体1の一実施形態が図に示されている。ソケット本体1は、図中には示されないプラグピンを受容するように機能し、ソケット本体1とプラグピンとの間に電気的接触を確立することができる。ソケット本体1は通常、図中には示されていない電気的に絶縁されたハウジング内に設置される。
【0045】
ソケット本体1は、プラグピンを受容するために、ソケット壁2で囲まれるとともに中心軸Mに沿って延在するソケット空間3を含む。プラグピンはソケット空間3内に押し込まれ、ソケット本体1とプラグピンとの間で電気的接触が生じる。ソケット空間3は前側に前面6を有する。前面6は、そこを通ってプラグピンをソケット空間3内に押し込むことができるソケット開口部22を縁取っている。ソケット本体はここで、前面6の反対側に、開口部25を有する接触部分24を含む。開口部25を有する接触部分24は、例えばケーブルなどのさらなる電気素子に接続するように機能する。
【0046】
切込み4は、中心軸Mを横切る断面で見て、中心軸Mに対して角度αで傾斜して、ソケット壁2に延在する。角度αは
図2、
図4及び
図5にプロットされる。
【0047】
切込みは、スプリングタブ5が形成されるようにソケット壁2に延在する。切込み4の作成後、スプリングタブ5はソケット開口部3へ曲げられるか、又はソケット開口部3に接触して恒久的に変形する。
【0048】
スプリングタブ5は、ソケット空間3内に押し込まれるプラグピンに作用するスプリング要素として実質的に機能し、その結果、ソケット空間3の内壁10とプラグピンの外側との間に電気的接触を確立することができる。
図4及び他の実施形態の図面に、スプリングタブ5がソケット空間内へと突出していることが示されている。
【0049】
角度αは、非変形状態における切込み4の一般的な傾斜角度として定義される。スプリングタブ5が非変形状態であれば、上部切込み面16及び下部切込み面17は前記角度αで広がる。下部切込み面17の角度αは、変形状態において確認できる。スプリングタブ5の変形の結果、上部切込み面16は、角度αよりもわずかにより平坦にソケット空間3の方へと広がる。下部切込み面17は角度αで広がる。横断面で見て、切込み4は中心軸Mに対して2°~45°、特に10°~30°の角度αになる。これは、下部切込み面17が中心軸Mに対して2°~45°、特に10°~30°の角度であることを意味する。
【0050】
ソケット本体1の前面6から見て、切込み4は右部分7及び左部分8を有して延在する。両方の部分7、8は
図1の斜視図及び
図3の平面図に相応に示されている。中心面MEは、中心軸Mを通って2つの部分7、8間の中心に延在する。中心面MEはソケット本体1の対称面を形成する。
【0051】
切込み4の上部切込み面16は、ソケット本体1の外側から見て、ソケット壁2のシェル表面11のみと交差し、前面6とは交差しない。その結果、上記で説明したように、改良されたスプリングタブ5を製造できる。
【0052】
図示した実施形態では、上部切込み面16は平坦な円筒切断面を構成する。「平坦な円筒切断面」という表現は、円筒軸、ここでは中心軸M、に対してある角度で傾斜した断面平面上で、円筒、ここではソケット本体1、と交差する切断面を意味する。これは、上部切込み面16が、ソケット本体1を部分的に通る平坦な面として延在することを意味する。
【0053】
切込み4は、ソケット本体1の前面6からソケット空間3内に延在するガイドセクション9が形成されるように構成される。ガイドセクション9は、ここでは円筒形であり、プラグピンをソケット空間3内に押し込む間プラグピンを受容するように機能する。その結果、それに対応して、プラグピンは、プラグピンを完全に囲む円筒形ガイドセクション9を介してソケット空間3内への入口の領域でガイドされる。円筒形ガイドセクションは、中心軸Mの周囲全体に延在する内壁10を有する。内壁10はソケット空間3の内壁10である。ガイドセクション9は、前面6から見て、ソケット空間3の直径Dの5%~10%のガイド長Lを有する。通常、大きなガイド長ほど好ましい。しかし、これは空間上の理由から必ずしも可能とは限らない。
【0054】
ガイドセクションは、プラグピンのより簡単な押し込みのために前面の領域において円錐形であるか又は丸みを帯びるように形成され得る。
【0055】
さらに、ソケット本体1は、シェル表面11からソケット本体1内に延在する外側凹部12をスプリングタブ5の領域に有する。外側凹部12は、スプリングタブ5の可撓性及び/又はスプリング力が増加するように形成される。この増加は、凹部12のないソケット本体と比較して、可撓性又はスプリング力が増加するという事実から理解できる。さらに、この凹部の構造を変えることにより、スプリング力及び/又は可撓性の程度を変えることができる。凹部12は、横断面において、中心軸Mに対してある角度で傾斜して角度βに配向された平坦な凹部面13を有する。角度βは切込み4の角度αにほぼ対応するが、角度βは角度αよりも急であっても平坦であってもよい。
【0056】
図1及び
図3から確認できるように、凹部面13は、部分的にソケット空間3内に延在する。特に、凹部面13は、ソケット空間3内への機能的開口部23が形成されるようにソケット空間3内に延在する。機能的開口部は検査用開口部であってよく、プラグピンが完全にソケット空間3内にあるかどうかは検査用開口部23を介して確認できる。しかし、機能的開口部は、プラグ接続がなされるときに生じ得る埃をソケット空間3から追い出すようにも機能する。
【0057】
凹部面13の端部領域14は、凹部12の最下部に丸み部15を有する。これは、凹部面13の端部領域14は、丸み部15により丸みを帯びて形成されていることを意味する。後部で凹部12の境界を定める端部側面27はここで丸み部15に隣接している。
【0058】
切込み4は、上側は上部切込み面16によって、下側は下部切込み面17によって境界が定められている。スプリングタブ5が曲げられていない状態では、2つの切込み面16、17は互いに平行に広がる。変形状態では、2つの切込み面16、17は互いに平行ではなくなり、これは
図2及び
図4により明確に示されている。
【0059】
変形状態では、スプリングタブ5は、上部切込み面16がその自由端部で、好ましくは下部切込み面17と接触するように存在する。これは、変形する場合、スプリングタブ5が、下部切込み面17と接触する程度まで変形し得るという利点を有する。これには決められた変形プロセスが関わる。しかし、他の実施形態の場合、上部切込み面16と下部切込み面17とが接触しないことも考えられる。
【0060】
図に示す実施形態では、凹部面13は上部切込み面16に対して平行である。したがって、スプリングタブ5は、凹部面13の領域において、凹部面13に対して直角に見て、一定の厚みTを有する。あるいは、凹部面13は上部切込み面16と平行に広がっていなくてもよい。凹部面13が凹部面13と平行に広がらない場合、凹部面13は中心軸Mに対してより急な、又はより平坦な角度で広がる。この場合、スプリングタブ5は一定の厚みTを有しない。
【0061】
図1~
図4により示されているように、下部切込み面17は、ソケット本体1の前面6からソケット本体1内に部分的に延在する。これは、このことに応じて前面6が切込み面17と交差することを意味する。ただし、下部切込み面17は、下部切込み面17によって円筒形ガイドセクション9の機能が損なわれないように、前面6に近い領域において、下部切込み面17がソケット空間3内に入り込まないように構成される。
【0062】
図2及び
図4から確認できるように、切込み4は、横断面で見て中心軸Mと交差するように構成される。切込み4は部分的に中心軸Mの下に延在する。非変形状態では、切込み4は好ましくは一定のクリアランスを有する。変形状態では、切込み4のクリアランスは、中心軸Mの横断面で見て、前面6からの距離が大きくなるにつれて小さくなる。他の変形形態では、切込み4は中心軸Mの上で終端していてもよい。
【0063】
図2及び
図4に表されるように、切込み4は中心軸Mを横切って、ソケット本体1を貫通して切込み面16、17に平行に延在する。切込み4は、最大切込み深さCの20%未満である切込み幅Bを有する。切込み深さとは、前面6から見て、切込みの最大の奥行である。
【0064】
凹部面13は好ましくは、中心軸M方向に見て、少なくとも1つの切込み4の切込み深さCと同じ深さAまで延在する。あるいは、凹部面13の深さAは、中心軸M方向に見て、切込み深さCよりも深くても、又は浅くてもよい。
【0065】
切込み4は切込み底部18を有する。切込み底部18は、シェル表面又は前面内への切込み面16、17の入口とは反対側の部分4の端部を形成する。切込み底部18は、2つの切込み面16、17を互いに接続する丸み部19により丸みを帯びて形成されている。右部分7の丸み部19の中心点Xと左部分8の丸み部19の中心点Xとは、共通の面Eにあり、この平面は前記中心面MEに対して直角である。
【0066】
切込み4は、前述の中心面MEに直角であるとともに中心軸Mを通って延在する投影面PEにおいて、楕円の一部分の形状を有する側縁部20を有する。凹部12も同様に側縁部21を有し、これも同様に、前述の投影面において楕円形状を有する。2つの側縁部20、21は、その面上に対応する楕円を同じように形成する。
【0067】
対応するツールとともにソケット本体1が
図5に示されている。ここでツールはフライス盤の構成を有している。切込み4は、フライス盤S4を用いて容易に製造でき、凹部12はフライス盤S12を用いて容易に製造できる。特に、本文脈中、切込み製造用のフライス盤ツールS4は、凹部12製造用のフライス盤ツールS12と同じフライスアーバFDに配置されていれば好ましい。
【0068】
図6a及び
図6bはソケット本体1の第2の実施形態を示す。同じ部品には同一の参照番号が付与され、上記説明を参照する。第1の実施形態と対照的に、切込みはここではより大きな厚さで形成されており、下部切込み面17は前面6と交差してないが、シェル表面11からソケット本体1内に延在している。側方から見て、上部切込み面16はさらに中心軸Mの下に延在する。平坦な凹部面13はここでは上部切込み面16と平行ではない。
【0069】
図7a及び
図7bはソケット本体1の第2の実施形態を示す。同じ部品には同一の参照番号が付与され、上記説明を参照する。前の実施形態と対照的に、角度αがより鋭く選択される。
【0070】
図8a及び
図8bはソケット本体1の第3の実施形態を示す。同じ部品には同一の参照番号が付与され、上記説明を参照する。前の実施形態と対照的に、外側凹部12はより大きくなるように形成されている。
【0071】
図9a及び
図9bはソケット本体1の第4の実施形態を示す。同じ部品には同一の参照番号が付与され、上記説明を参照する。前の実施形態と対照的に、ここでは2つの切込み4が配置されており、2つの切込み4はさらに2つのスプリングタブ5を形成している。本実施形態では、下部切込み面17は前面6と交差しない。
【0072】
ソケット本体とプラグとの接触は、
図1~
図8bによる実施形態においてスプリングタブ5及びソケット空間2の内壁10により起こる。この接触は、
図9a~
図9cの実施形態においては、両方のスプリングタブ5によって実行される。
【符号の説明】
【0073】
1 ソケット本体
2 ソケット壁
3 ソケット空間
4 切込み
5 スプリングタブ
6 前面
7 右部分
8 左部分
9 円筒形ガイドセクション
10 内壁
11 シェル表面
12 外側凹部
13 平坦な凹部面
14 端部領域
15 丸み部
16 上部切込み面
17 下部切込み面
18 切込み底部
19 丸み部
20 側縁部
21 側縁部
22 ソケット開口部
23 検査用開口部
24 接触部分
25 開口部
26 自由端部
27 端部側面
A 深さ
B 切込み幅
C 切込み深さ
D 直径
L ガイド長
T 厚み
PE 投影面
M 中心軸
ME 中心面
X 中心点
α 角度
β 角度
S4、S12 フライス加工ツール
FD フライスアーバ