(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】電子制御スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
F02D9/02 361A
(21)【出願番号】P 2020565090
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2019000418
(87)【国際公開番号】W WO2020144788
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 大輔
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-248774(JP,A)
【文献】特開2012-7608(JP,A)
【文献】特開2016-109080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00-11/00
F02D 13/00-29/06
F02D 41/00-45/00
B62M 1/00-29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスロットルボアが
それぞれ形成され
た一対の領域を一体化してなり、前記各第1のスロットルボアの内部に
それぞれ第1のスロットル弁が配設され、気筒列設方向の一側及び他側に隣り合ってそれぞれ配設された一対のスロットル軸に前記各第1のスロットル弁が個別に固定されて開閉される第1のスロットルボディと、
気筒列設方向において前記一対の第1のスロットルボアとそれぞれ重なる位置に配設された一対のモータと、
気筒列設方向において前記第1のスロットルボディの両側に配設され、それぞれ前記一対のモータの回転を前記一対のスロットル軸に伝達する一対のギヤユニットと、
前記第1のスロットルボディの一側に隣り合って配設され、第2のスロットルボアが形成されてその内部に第2のスロットル弁が配設され、前記一側に配設された前記スロットル軸に前記第2のスロットル弁が固定されて開閉される第2のスロットルボディと
を備え
、
前記第1のスロットルボディの両側に、それぞれモータ収容部を有する一対の第1のケース部材が一体形成され、前記モータ収容部内に前記モータが収容されている
ことを特徴とする電子制御スロットル装置。
【請求項2】
前記一対の第1のケース部材にそれぞれ結合され、内部にギヤ列を収容して前記ギヤユニットを構成する一対の第2のケース部材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の電子制御スロットル装置。
【請求項3】
前記第1のスロットルボディの他側に隣り合って配設され、第3のスロットルボアが形成されてその内部に第3のスロットル弁が配設され、前記他側に配設された前記スロットル軸に前記第3のスロットル弁が固定されて開閉される第3のスロットルボディをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の電子制御スロットル装置。
【請求項4】
前記第1のスロットルボディは、前記両モータ収容部を互いに連結する中空断面部が一体形成されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の電子制御スロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車やATV(All Terrain Vehicle)等の運転者がシートに跨った状態で運転する鞍乗型乗り物は、四輪車に比較して良好なスロットル応答性が重視されている。そこで、エンジンの各気筒に対応してスロットルボディにスロットルボアを形成し、各スロットルボア内に配設したスロットル弁を、スロットル軸及びギヤユニットを介してモータで開閉駆動する多連式の電子制御スロットル装置(以下、単に電子制御スロットル装置と称する)が実用化されている。
【0003】
さらに、例えば特許文献1の
図3,5に記載のように、スロットルボアを2群に分別してギヤユニットを介して個別にモータで開閉駆動する電子制御スロットル装置も提案されている。この電子制御スロットル装置では、例えば走行中の鞍乗型乗り物が加速に移行する際に、2群のスロットル弁を時間差をもって開制御して吸気量を円滑に増加させることで、エンジン全体としての出力の微調整を容易に実施できるように配慮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子制御スロットル装置は、車体フレームとの干渉防止及びスロットルボアの適正配置に関して改良の余地があった。
特許文献1の
図3,5に記載された電子制御スロットル装置は4気筒エンジンを対象としたものであり、一方のスロットルボディに#1,#2気筒のスロットルボアを形成し、他方のスロットルボディに#3,#4気筒のスロットルボアを形成している。そして、#1,#2気筒のスロットル弁と#3,#4気筒のスロットル弁とを、一対のモータによりギヤユニットを介して個別に開閉駆動している。各ギヤユニット及びモータは、
図3では両スロットルボディの外側に配置され、
図5では両スロットルボディの間に配置されている。
【0006】
特許文献1の
図3に示す構成では、両スロットルボディの外側にギヤユニット及びモータが配置されているため、左右両側に架設された車体フレームに対して左右にはみ出したギヤユニット及びモータが干渉してしまう。従って、干渉防止のために車体フレーム32の形状を変更する必要が生じ、適切なフレーム形状を保てなくなるという問題が生じる。
【0007】
また特許文献1の
図5に示す構成では、両スロットルボディの間に一対のギヤユニットが配設されることにより、#2,#3気筒のスロットルボアが大きく離間している。例えばエンジンの各気筒が列設された気筒列設方向において、#1~#4の各シリンダの軸線が等間隔で配置されている場合、#1,#4気筒のスロットルボアの軸線がそれぞれ#1,#4気筒のシリンダの軸線と一致していたとしても、#2気筒のスロットルボアの軸線は#2気筒のシリンダの軸線と一致する位置から#1側にオフセット配置され、逆に#3気筒のスロットルボアの軸線は#3気筒のシリンダの軸線と一致する位置から#4側にオフセット配置されてしまう。
【0008】
電子制御スロットル装置の多連化は、例えば吸気抵抗の低減によるエンジン性能の向上を目的としたものであるが、上記のようにスロットルボアがオフセット配置されると吸気抵抗が増加してしまい、多連化によるエンジン性能の向上を妨げる要因になってしまう。
なお以下の説明では、気筒列設方向でのシリンダの軸線とスロットルボアの軸線との位置関係を説明する場合に、「軸線」の記載を省略して、単にシリンダとスロットルボアとの位置関係として表現するものとする。従って、例えば「シリンダとスロットルボアとが一致している」とは、シリンダの軸線とスロットルボアの軸線とが一致していることを意味する。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、無理な車体フレームの形状変更をせずとも車体フレームとの干渉を防止できると共に、エンジン側の各シリンダに対してスロットルボアを適切な位置に配置することができる電子制御スロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の電子制御スロットル装置は、第1のスロットルボアがそれぞれ形成された一対の領域を一体化してなり、各第1のスロットルボアの内部にそれぞれ第1のスロットル弁が配設され、気筒列設方向の一側及び他側に隣り合って配設された一対のスロットル軸に各第1のスロットル弁が個別に固定されて開閉される第1のスロットルボディと、気筒列設方向において一対の第1のスロットルボアとそれぞれ重なる位置に配設された一対のモータと、気筒列設方向において第1のスロットルボディの両側に配設され、それぞれ一対のモータの回転を一対のスロットル軸に伝達する一対のギヤユニットと、第1のスロットルボディの一側に隣り合って配設され、第2のスロットルボアが形成されてその内部に第2のスロットル弁が配設され、一側に配設されたスロットル軸に第2のスロットル弁が固定されて開閉される第2のスロットルボディとを備え、第1のスロットルボディの両側に、それぞれモータ収容部を有する一対の第1のケース部材が一体形成され、モータ収容部内にモータが収容されていることを特徴とする。
【0011】
その他の態様として、一対の第1のケース部材にそれぞれ結合され、内部にギヤ列を収容してギヤユニットを構成する一対の第2のケース部材をさらに備えてもよい。
【0013】
その他の態様として、第1のスロットルボディの他側に隣り合って配設され、第3のスロットルボアが形成されてその内部に第3のスロットル弁が配設され、他側に配設されたスロットル軸に第3のスロットル弁が固定されて開閉される第3のスロットルボディをさらに備えてもよい。
【0014】
その他の態様として、第1のスロットルボディに、両モータ収容部を互いに連結する中空断面部を一体形成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子制御スロットル装置によれば、無理な車体フレームの形状変更をせずとも車体フレームとの干渉を防止できると共に、エンジン側の各シリンダに対してスロットルボアを適切な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の電子制御スロットル装置をエアクリーナ側から見た正面図である。
【
図2】#2・#3スロットルボディ、#1スロットルボディ、ギヤユニット及びモータ収容部を示す分解斜視図である。
【
図3】自動二輪に搭載されたエンジンに装着したときの電子制御スロットル装置を示す模式的な側面図である。
【
図5】第2実施形態の電子制御スロットル装置をエアクリーナ側から見た正面図である。
【
図6】#2・#3スロットルボディ、#1スロットルボディ、ギヤユニット及びモータ収容部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動二輪に搭載される4気筒エンジン用の電子制御スロットル装置に具体化した第1実施形態を説明する。
図1は第1実施形態の電子制御スロットル装置をエアクリーナ側から見た正面図、
図2は#2・#3スロットルボディ、#1スロットルボディ、ギヤユニット及びモータ収容部を示す分解斜視図である。以下の説明では、各図に倣って左右を表現するものとし、図中の左側は本発明の一側または他側の何れか一方に相当し、右側は本発明の一側または他側の何れか他方に相当する。また、左右方向はエンジンの各気筒が列設された方向でもあるため、気筒列設方向と称する場合もある。
【0018】
全体として電子制御スロットル装置1は、#2,#3気筒のスロットルボディが一体化されることにより、気筒列設方向に並設された3つのスロットルボディ2~4を有する。以下、#2,#3気筒に対応するものを#2・#3スロットルボディ2と称し、#1気筒に対応するものを#1スロットルボディ3と称し、#4気筒に対応するものを#4スロットルボディ4と称する。
【0019】
#2・#3スロットルボディ2は、本発明の第1のスロットルボディに相当し、#1スロットルボディ3は、本発明の第2のスロットルボディまたは第3のスロットルボディの何れか一方に相当し、#4スロットルボディ4は、本発明の第2のスロットルボディまたは第3のスロットルボディの何れか他方に相当する。
【0020】
#2・#3スロットルボディ2に対して#1スロットルボディ3は左側に隣り合って配設され、同じく#2・#3スロットルボディ2に対して#4スロットルボディ4は右側に隣り合って配設されている。
【0021】
#2・#3スロットルボディ2には、エンジンの#2,#3気筒のシリンダとそれぞれ連通する#2スロットルボア2a及び#3スロットルボア2bが形成されている。以下、#2・#3スロットルボディ2のうち、気筒列設方向において#2スロットルボア2aが形成された箇所を#2領域2cと称し、#3スロットルボア2bが形成された箇所を#3領域2dと称する。
#1スロットルボディ3には、エンジンの#1気筒のシリンダと連通する単一の#1スロットルボア3aが形成されている。#4スロットルボディ4には、エンジンの#4気筒のシリンダと連通する単一の#4スロットルボア4aが形成されている。
【0022】
#2スロットルボア2a及び#3スロットルボア2bは、本発明の一対の第1のスロットルボアに相当し、#1スロットルボア3aは、本発明の第2のスロットルボアまたは第3のスロットルボアの何れか一方に相当し、#4スロットルボア4aは、本発明の第2のスロットルボアまたは第3のスロットルボアの何れか他方に相当する。
【0023】
#2・#3スロットルボディ2の#2領域2cの左側面には、左方に向けて開口する第1のケース部材2eが一体形成され、この第1のケース部材2eには、後述するモータ14が収容される円筒状のモータ収容部2fが右方に膨出して一体形成されている。#2・#3スロットルボディ2と#1スロットルボディ3との間には右方に向けて開口する第2のケース部材5が配設され、ビス6により第1のケース部材2eに締結されている。詳細は後述するが、両ケース部材2e,5の内部にはギヤ列19が収容され、これらのケース部材2e,5及びギヤ列19によりギヤユニット7が構成されている。
【0024】
そして、第2のケース部材5に#1スロットルボディ3がボルト13により締結され、結果として#2・#3スロットルボディ2に対して第2のケース部材5及び#1スロットルボディ3が一体化されている。
【0025】
また、#2・#3スロットルボディ2の#3領域2dの右側面には、右側に向けて開口する第1のケース部材2eが一体形成され、この第1のケース部材2eには、後述するモータ14が収容される円筒状のモータ収容部2fが左方に膨出して一体形成されている。#2・#3スロットルボディ2と#4スロットルボディ4との間には左方に向けて開口する第2のケース部材5が配設され、ビス6により第1のケース部材2eに締結されている。詳細は後述するが、両ケース部材2e,5の内部にはギヤ列19が収容され、これらのケース部材2e,5及びギヤ列19によりギヤユニット7が構成されている。
【0026】
そして、第2のケース部材5に#4スロットルボディ4がボルト13により締結され、結果として#2・#3スロットルボディ2に対して第2のケース部材5及び#4スロットルボディ4が一体化されている。
【0027】
#2・#3スロットルボディ2の#2領域2cには、#2スロットルボア2aを貫通した状態でスロットル軸8が配設され、同じく#3領域2dには、#3スロットルボア2bを貫通した状態でスロットル軸8が配設されている。
結果として両スロットル軸8は、気筒列設方向に隣り合って同一軸線上に配設されているため、気筒列設方向はスロットル軸方向と換言することもできる。#2スロットルボア2a内には#2スロットル弁9が配設され、#3スロットルボア2b内には#3スロットル弁10が配設され、それぞれ対応するスロットル軸8に対しビス21で固定されている。
【0028】
#2領域2c側のスロットル軸8は左方に延設されて、第2のケース部材5の軸孔5aを介して#1スロットルボディ3の#1スロットルボア3aを貫通し、スロットル軸8の両端のそれぞれは#1スロットルボディ3及び#2・#3スロットルボディ2に回転可能に支持されている。#1スロットルボア3a内には#1スロットル弁11が配設され、スロットル軸8に対してビス21で固定されている。これにより#2領域2c側のスロットル軸8の回転に伴って、#2スロットル弁9と#1スロットル弁11とが開閉されるようになっている。
【0029】
#3領域2d側のスロットル軸8は右方に延設されて、第2のケース部材5の軸孔5aを介して#4スロットルボディ4の#4スロットルボア4aを貫通し、スロットル軸8の両端のそれぞれは#4スロットルボディ4及び#2・#3スロットルボディ2に回転可能に支持されている。#4スロットルボア4a内には#4スロットル弁12が配設され、スロットル軸8に対してビス21で固定されている。これにより#3領域2d側のスロットル軸8の回転に伴って、#3スロットル弁10と#4スロットル弁12とが開閉されるようになっている。
【0030】
#2スロットル弁9及び#3スロットル弁10のそれぞれは、本発明の第1のスロットル弁に相当し、#1スロットル弁11は、本発明の第2のスロットル弁または第3のスロットル弁の何れか一方に相当し、#4スロットル弁12は、本発明の第2のスロットル弁または第3のスロットル弁の何れか他方に相当する。
【0031】
図2に示すように、左側の第1のケース部材2eに形成されたモータ収容部2f内にはモータ14が収容されている。上記のようにモータ収容部2fが右方に膨出する形状をなすため、内部のモータ14は、気筒列設方向において#2スロットルボア2aと重なる位置に配設されている。
【0032】
モータ14の出力軸14aは、第1及び第2のケース部材2e,5の内部に突出して駆動ギヤ15が固定されている。駆動ギヤ15は、ギヤ軸16により回転可能に支持された中間ギヤ17の大径の入力ギヤ17aと噛合し、中間ギヤ17の小径の出力ギヤ17bは、スロットル軸8が貫通固定された扇状をなす被動ギヤ18と噛合している。これらの駆動ギヤ15、中間ギヤ17及び被動ギヤ18により上記したギヤユニット7のギヤ列19が構成されている。
【0033】
モータ14の回転はギヤ列19により減速されて#2領域2c側のスロットル軸8に伝達され、被動ギヤ18に巻回された捩りバネ20に抗して、#2スロットル弁9と#1スロットル弁11とがモータ14の回転方向に応じて開閉駆動される。
【0034】
また、右側の第1のケース部材2eに形成されたモータ収容部2f内にはモータ14が収容されている。上記のようにモータ収容部2fが左方に膨出する形状をなすため、内部のモータ14は、気筒列設方向において#3スロットルボア2bと重なる位置に配設されている。
【0035】
以下、左側の第1及び第2のケース部材2e,5と同一の内部構造のため、同一部材番号を付して説明すると、モータ14の出力軸14aは、第1及び第2のケース部材2e,5の内部に突出して駆動ギヤ15が固定されている。駆動ギヤ15は、ギヤ軸16により回転可能に支持された中間ギヤ17の大径の入力ギヤ17aと噛合し、中間ギヤ17の小径の出力ギヤ17bは、スロットル軸8が貫通固定された扇状をなす被動ギヤ18と噛合している。これらの駆動ギヤ15、中間ギヤ17及び被動ギヤ18により上記したギヤユニット7のギヤ列19が構成されている。
【0036】
モータ14の回転はギヤ列19により減速されて#3領域2d側のスロットル軸8に伝達され、被動ギヤ18に巻回された捩りバネ20に抗して、#3スロットル弁10と#4スロットル弁12とがモータ14の回転方向に応じて開閉駆動される。
【0037】
ここで、本実施形態ではエンジン側の各シリンダが等間隔で配置されており、各シリンダと同一間隔でスロットルボア2a,2b,3a,4aを配置した場合には、各スロットルボア2a,2b,3a,4aの間にそれぞれ同一寸法の間隙Sが形成される。そして、一方の第1のケース部材2eの#1スロットルボア3aと#2スロットルボア2aとの間に挟まれた部位は、間隙Sよりも若干小さく設定されている。このため、#1スロットルボア3aと#2スロットルボア2aとの間に一方のギヤユニット7を配置した上で、気筒列設方向において#1スロットルボア3aが#1気筒のシリンダと一致し(上記のようにスロットルボアの軸線とシリンダの軸線との一致を意味し、以降も同様)、#2スロットルボア2aが#2気筒のシリンダと一致している。
【0038】
同様に、他方の第1のケース部材2eの#4スロットルボア4aと#3スロットルボア2bとの間に挟まれた部位は、間隙Sよりも若干小さく設定されている。このため、#4スロットルボア4aと#3スロットルボア2bとの間に他方のギヤユニット7を配置した上で、気筒列設方向において#3スロットルボア2bが#3気筒のシリンダと一致し、#4スロットルボア4aが#4気筒のシリンダと一致している。
【0039】
#2スロットルボア2aと#3スロットルボア2bとの間にはギヤユニット7が配置されていないため、気筒列設方向にスペース的な余裕が生じている。このため#2領域2cと#3領域2dとが連結領域2gを介して連結されることにより、#2スロットルボア2aと#3スロットルボア2bとの間の間隙Sが、#1スロットルボア3aと#2スロットルボア2aとの間の間隙S、及び#3スロットルボア2bと#4スロットルボア4aとの間の間隙Sと同一に保たれている。また、#2領域2cのモータ収容部2fと#3領域2dのモータ収容部2fは気筒列設方向に離間しているが、連結領域2gに一体形成された気筒列設方向に延びる円筒状をなす中空断面部22を介して互いに連結されている。
【0040】
スロットルボディ2~4のスロットルボア2a,2b,3a,4aにはそれぞれインジェクタ23が装着され、各インジェクタ23の先端は各スロットルボア2a,2b,3a,4a内に挿入されてエンジン側に指向している。各スロットルボディ2~4からブラケット24を介してデリバリパイプ25が支持され、デリバリパイプ25は気筒列設方向に延びて各インジェクタ23に接続されている。
【0041】
図3は自動二輪に搭載されたエンジンに装着したときの電子制御スロットル装置1を示す模式的な側面図、
図4は
図3のA矢視図である。
エンジン31は自動二輪に前傾姿勢で搭載され、その上方には、
図4に示すように左右一対の車体フレーム32が前後方向に架設され、これらの車体フレーム32上に図示しない燃料タンクが配設されている。エンジン31の各気筒の吸気ポート31aには、電子制御スロットル装置1の各スロットルボア2a,2b,3a,4aの一端がそれぞれ接続され、各スロットルボア2a,2b,3a,4aの他端には共通のエアクリーナ33が接続されている。
【0042】
図示はしないが、車体側からの配線の各モータ14及び各インジェクタ23への接続、及び車体側からの燃料ホースのデリバリパイプ25への接続もなされている。そしてエンジン31が始動操作されると、図示しない制御装置により各インジェクタ23の駆動が開始されて、スタータによりエンジン31が始動される。そして、エンジン始動後にはスロットル操作に応じて制御装置によりモータ14が駆動され、各スロットル弁9~12が開閉されてエンジン31への吸気量が調整される。
【0043】
次に、以上のように構成された電子制御スロットル装置1による作用を説明する。
エンジン31側の等間隔で配置された各シリンダに対して、電子制御スロットル装置1の各スロットルボア2a,2b,3a,4aを一致させた場合、隣接するスロットルボア2a,2b,3a,4aの間にはそれぞれ間隙Sが形成される。そして、上記のように一方の第1のケース部材2eの#1スロットルボア3aと#2スロットルボア2aとの間に挟まれた部位、及び他方の第1のケース部材2eの#4スロットルボア4aと#3スロットルボア2bとの間に挟まれた部位は、それぞれ間隙Sよりも若干小さい。
【0044】
この条件の下で、特許文献1の
図5に示す電子制御スロットル装置のように、一対のギヤユニットを#2,#3気筒のスロットルボアの間に配置した場合、元々の間隙S内に一対のギヤユニットが収まらない。このため間隙Sを拡大する必要が生じ、結果として#2,#3気筒のスロットルボアが大きく離間し、対応するシリンダに合わせてオフセット配置されてしまう。
【0045】
本実施形態では、#1スロットルボア3aと#2スロットルボア2aとの間、及び#3スロットルボア2bと#4スロットルボア4aとの間に、それぞれ単一のギヤユニット7を個別に配置している。このため、隣り合うスロットルボア3a,2a,2b,4aの間隔を拡大することなく配置可能となる。
【0046】
しかも、各スロットルボア3a,2a,2b,4aの間に形成されている間隙Sはデッドスペースと見なせるため、ギヤユニット7を配置しても何ら弊害は生じない。結果として、#1~#4気筒の全てのスロットルボア3a,2a,2b,4aをエンジン31側のシリンダに一致させて配置でき、例えば、吸気抵抗の低減によりエンジン性能を高めることができる。
【0047】
また、このようなギヤユニット7の配置の結果、#2スロットルボア2aと#3スロットルボア2bとの間にはギヤユニット7を配置する必要がなくなる。スロットルボア2a,2aの間にギヤユニット7を配置すると個別にスロットルボディを設ける必要が生じるが、その配置の必要がなくなることから、一対の気筒のスロットルボア2a,2bを有する#2・#3スロットルボディ2として一体化できる。結果として計3つの金型で第1~3のスロットルボディ2~4を製作でき、その製造コストを低減できるという効果も得られる。
また、第2及び第3のスロットルボディ3,4については個別に製作する必要はあるものの、気筒列設方向と直交する平面を基準として面対称の同一構造の関係となることから設計時の労力を低減でき、この点も製造コストに大きく貢献する。
【0048】
付言すると、一般的な電子制御スロットル装置では、特許文献1の
図3~5に示すように、独立したスロットルボディ毎に個別にスロットル軸を支持している。これに対して本実施形態では、共通の#2・#3スロットルボディ2に設けた#2及び#3スロットル弁9,10を、敢えて別々のスロットル軸8に固定して個別に開閉可能にすると共に、各スロットル軸8を左右側方に延設してそれぞれ別のスロットルボディ3,4に設けた#1及び#4スロットル弁11,12の開閉にも利用している。このような変則的な構造を採用しているが故に、上記のようなスロットルボア3a,2a,2b,4aの適切な配置及びコスト低減の効果を達成できるのである。
【0049】
一方、#2・#3スロットルボディ2の#2領域2c及び#3領域2dには、それぞれ第1のケース部材2eの一部としてモータ収容部2fが一体形成され、これらのモータ収容部2fは気筒列設方向に離間している。しかしながら、両モータ収容部2fは連結領域2gに形成された中空断面部22を介して互いに連結されて一体化されているため、その剛性が向上している。#2及び#3スロットル弁9,10を開閉駆動する際にモータ14が反力を受けて位置変位するとスロットル開度の誤差に直結するが、モータ収容部2fによりモータ14が定位置に保たれることから、そのような事態を防止してスロットル開度制御の精度を向上することができる。
【0050】
また、上記のようにモータ収容部2f内の各モータ14は、気筒列設方向においてそれぞれ#2スロットルボア2a及び#3スロットルボア2bと重なる位置に配置されている。換言すると
図1から判るように、#2・#3スロットルボディ2及び両側のギヤユニット7から左右にはみ出すことなく左右幅内に収められている。
【0051】
図4に示す自動二輪への搭載状態において、電子制御スロットル装置1の左右両側には車体フレーム32が前後方向に架設されており、仮想線で示す特許文献1の
図3のものでは、左右にはみ出したモータ及びギヤユニットが車体フレーム32と干渉してしまう。これに対して本実施形態では、上記のような各ギヤユニット7及び各モータ14の配置により車体フレーム32との干渉が防止されるため、無理な車体フレーム32の形状変更を回避して適切なフレーム形状を保つことができる。
【0052】
ところで、以上のような気筒列設方向においてエンジン31側の各シリンダに対してスロットルボア3a,2a,2b,4aを一致させた配置は、エンジン性能の向上を目的としたものであるが、これとは別に、気筒列設方向の省スペース化という要望もある。電子制御スロットル装置1が気筒列設方向に長くなると、運転者が自動二輪のシートに跨り難くなるためである。
このような要望を満足するために、#2・#3スロットルボディ2の連結領域2gを狭めて#2スロットルボア2aと#3スロットルボア2bとを互いに接近させてもよい。また、各間隙S内にギヤユニット7を配置可能な範囲内で、#2・#3スロットルボディ2に対して#1及び#4スロットルボディ3,4を接近させてもよい。
【0053】
この場合には、エンジン31側の各シリンダに対してスロットルボア3a,2a,2b,4aが気筒列設方向に完全一致しなくなる。しかし、各スロットルボア3a,2a,2b,4aの間に形成されたデッドスペースの間隙Sにギヤユニット7を配置した点は同様であるため、各シリンダに対するスロットルボア2a,2b,3a,4aのオフセット配置は軽微なものとなる。そして、気筒列設方向における電子制御スロットル装置1の寸法を縮小できるため、運転者がシートに跨り易くなると共に、自動二輪を設計する際の自由度を向上させることができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明を別の電子制御スロットル装置41に具体化した第2実施形態を説明する。
第1実施形態の電子制御スロットル装置1との相違点は、ギヤユニット7及びモータ収容部43aを各スロットルボディ42,3,4に対して脱着可能とした点にあり、その他の構成は第1実施形態と共通する。そのため、共通する構成の箇所は同一の部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に説明する。
【0055】
図5は第2実施形態の電子制御スロットル装置41をエアクリーナ33側から見た正面図、
図6は#2・#3スロットルボディ、#1スロットルボディ、ギヤユニット7及びモータ収容部2fを示す分解斜視図である。
#2・#3スロットルボディ42の#2領域42c及び#3領域42dは、基本的にそれぞれの#2スロットルボア42a及び#3スロットルボア42bに対応する円筒状をなしている。また、#2領域42cと#3領域42dを連結する連結領域42eは、スロットル軸8を内包する板形状をなしている。なお、各#2スロットルボア42a及び#3スロットルボア42bにスロットル軸8が個別に貫通されて、#2及び#3スロットル弁9,10のそれぞれが固定されている点は、第1実施形態と同様である。
【0056】
このような#2・#3スロットルボディ42の左右両側に、別部材として第1のケース部材43がそれぞれ配設されている。基本的に第1のケース部材43の形状は第1実施形態のものと同様であり、それぞれ対応する第2のケース部材5側に向けて開口する形状をなすと共に、円筒状のモータ収容部43aが一体形成されている。各第1のケース部材43にはスロットル軸8が挿通される軸孔43bが貫設され、#2・#3スロットルボディ42の左右両側にはスロットル軸8を中心としたボス部42fが一体形成されている。各第1のケース部材43は、軸孔43bを#2・#3スロットルボディ42のボス部42fに嵌合させて位置決めされ、それぞれ#2・#3スロットルボディ42に対してビス44で締結されている。
【0057】
各第1のケース部材43にはそれぞれ第2のケース部材5が締結される。さらに左側の第2のケース部材5には#1スロットルボディ3が締結されており、右側の第2のケース部材5には#4スロットルボディ4が締結されている。第1及び第2のケース部材43,5の内部にはギヤ列19が収容されてギヤユニット7が構成されると共に、モータ収容部43aにはモータ14が収容されている。
なお、#2・#3スロットルボディ42から左に延設されたスロットル軸8が、#1スロットルボディ3の#1スロットルボア3aを貫通して、#1スロットル弁11の開閉に利用され、#2・#3スロットルボディ42から右に延設されたスロットル軸8が、#4スロットルボディ4の#4スロットルボア4aを貫通して、#4スロットル弁12の開閉に利用されている点は、第1実施形態と同様である。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の電子制御スロットル装置41は、各部材のレイアウトに関して第1実施形態のものと同様である。よって重複する説明はしないが、気筒列設方向において各スロットルボア3a,42a,42b,4aをエンジン31側のシリンダに一致させてエンジン性能を向上できると共に、#2・#3スロットルボディ42を一体化して製造コストを低減でき、さらに各ギヤユニット7及び各モータ14と車体フレーム32との干渉を防止して適切なフレーム形状を実現することができる。
【0059】
そして、第1実施形態とは異なる特徴として、#2・#3スロットルボディ42に対し各第1のケース部材43が別部材として形成されてビス44の締結により脱着可能となっている。また第1実施形態と同じく、各第2のケース部材5についても#1、#4スロットルボディ3,4のそれぞれに対して脱着可能となっている。結果として本実施形態では、第1及び第2のケース部材43,5と内部のギヤ列19とから構成されるギヤユニット7、及びモータ14を収容したモータ収容部43aを、各スロットルボディ42,3,4に対して任意に脱着することができる。
【0060】
電子制御スロットル装置の仕様、例えばスロットルボアの口径やボアピッチ等は、装着されるエンジン31の種別に応じて決定される。このため、従来はエンジン毎に対応する仕様の電子制御スロットル装置を用意しているが、その中にはスロットルボディ側の仕様だけが相違し、ギヤユニット及びモータ収容部が同一仕様のものも存在する。
【0061】
本実施形態では、スロットルボディ42,3,4側だけをエンジン31に応じた仕様毎に用意し、ギヤユニット7及びモータ収容部43aについては共用できる。このため、複数のスロットルボディ42,3,4の中からエンジン31に対応する仕様のものを選択した上で、それらに共用部品として用意したギヤユニット7及びモータ収容部43aを組み付ければ、エンジン31側からの要求を全て満たした電子制御スロットル装置41が完成する。この点も製造コストの低減に大きく貢献できると共に、生産現場での部品管理の面でも大きな利点が得られる。
【0062】
また第1実施形態に比較すると、#2・#3スロットルボディ42と各第1のケース部材43とが別部材になるため、成型に要する金型数は増加する。その反面、#2・#3スロットルボディ42が単純な形状になることから、金型を容易に製作できるという別の利点が得られる。
【0063】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、4気筒エンジン用の電子制御スロットル装置1,41に具体化したが、例えば
図2中に示す第1実施形態の#1スロットルボディ3に関わる構成を省略して、3気筒エンジン用の電子制御スロットル装置として具体化してもよい。
【0064】
具体的に述べると、
図2中の#1スロットルボディ3を省略すると共に、スロットル軸8を延設することなく#2・#3スロットルボディ2内にとどめ、さらに第2のケース部材5の軸孔5aを塞ぐ。これにより、3気筒分のスロットルボアを備えた電子制御スロットル装置としてもよい。無論、これに代えて第1実施形態の#4スロットルボディ4に関わる構成を省略してもよいし、
図6中に示す第2実施形態の構成を3気筒化してもよい。
【0065】
また上記各実施形態では、第1及び第2のケース部材2e,43,5内にモータ14及びギヤ列19を収容したが、第1及び第2のケース部材2e,43,5を省略してもよい。この場合にはモータ14及びギヤ列19が外部に露出するがレイアウト自体は変わらないため、各実施形態で説明した作用効果が何ら問題なく得られる。
【符号の説明】
【0066】
1,41 電子制御スロットル装置
2,42 #2・#3スロットルボディ(第1のスロットルボディ)
2a,42a #2スロットルボア(第1のスロットルボア)
2b,42b #3スロットルボア(第1のスロットルボア)
2e,43 第1のケース部材
2f,43a モータ収容部
3 #1スロットルボディ(第2または第3のスロットルボディ)
3a #1スロットルボア(第2または第3のスロットルボア)
4 #4スロットルボディ(第2または第3のスロットルボディ)
4a #4スロットルボア(第2または第3のスロットルボア)
5 第2のケース部材
7 ギヤユニット
8 スロットル軸
9 #2スロットル弁(第1のスロットル弁)
10 #3スロットル弁(第1のスロットル弁)
11 #1のスロットル弁(第2または第3のスロットル弁)
12 #4スロットル弁(第2または第3のスロットル弁)
14 モータ
19 ギヤ列
22 中空断面部