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特許7269270スガマデクスおよびその中間体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】スガマデクスおよびその中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20230426BHJP
   A61K 31/724 20060101ALN20230426BHJP
   A61P 39/02 20060101ALN20230426BHJP
【FI】
C08B37/16
A61K31/724
A61P39/02
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021038504
(22)【出願日】2021-03-10
(62)【分割の表示】P 2018513943の分割
【原出願日】2016-05-27
(65)【公開番号】P2021101021
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】2089/MUM/2015
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201621008861
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】517416134
【氏名又は名称】ラクシュミ・プラサド・アラパルティ
【氏名又は名称原語表記】Lakshmi Prasad ALAPARTHI
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ラクシュミ・プラサド・アラパルティ
(72)【発明者】
【氏名】パラシュ・パル
(72)【発明者】
【氏名】サダシヴァ・ラオ・ギンジュパリ
(72)【発明者】
【氏名】ウダイ・シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】タルリ・ブシャイアー・チョウダリー
(72)【発明者】
【氏名】アナンド・ヴィジャイクマール・マントゥリ
(72)【発明者】
【氏名】バーラト・レディ・ゲイド
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラヴ・クルカルニ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-515623(JP,A)
【文献】特表2013-543915(JP,A)
【文献】国際公開第2012/025937(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221641(US,A1)
【文献】国際公開第2014/125501(WO,A1)
【文献】IDRISS, H. et al.,Effect of the second coordination sphere on new contrast agents based on cyclodextrin scaffolds for MRI signals,RSC Adv.,2013年,Vol. 3,pp. 4531-4534
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/16
A61K 31/724
A61P 39/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スガマデクスの酸/式(IV):
【化1】
の化合物の製造方法であって、
a)ジメチルホルムアミドの存在下、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の透明溶液を得ること;
b)ステップa)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンで処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること;
c)ステップb)の化合物を酸で処理することによって、スガマデクスの酸/式(IV)の化合物を得ること、
を含む、該製造方法。
【請求項2】
酸が塩酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
スガマデクスの酸/式(IV):
【化2】
の化合物の製造方法であって、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を酸で処理することによって、式(IV)のスガマデクスの酸を得ることを含み、
該スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物は、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩をパーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンで処理することによって製造する、
該製造方法。
【請求項4】
酸が塩酸である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
スガマデクスの酸/式(IV)の化合物、のカリウム塩の製造方法であって、
【化3】
a)ジメチルホルムアミドの存在下、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の透明溶液を得ること;
b)ステップa)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンで処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること、
を含む、該製造方法。
【請求項6】
該パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンが、式(III):
【化4】
のパーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
該得られた式(IV)のスガマデクスの酸が少なくとも95%の純度を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
スガマデクスの酸/式(IV)の化合物の製造方法であって、
a)ガンマ-シクロデキストリン(II):
【化5】
を、ジメチルホルムアミドの存在下で、トリホスゲンまたはオキサリルクロリドと反応させて、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン(式IIIの化合物):
【化6】
を得ること;および、b)パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン/式(III)の化合物をスガマデクスの酸/式(IV)の化合物に変換することを含む、
【化7】
前記パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの、スガマデクスの酸/式(IV)の化合物への変換が、以下を含む:
(i)3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを、ジメチルホルムアミドの存在下で反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の透明溶液を得ること;
(ii)ステップi)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン(III)で処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること;
(iii)スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を酸で処理して、スガマデクスの酸/式(IV)の化合物を得ること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スガマデクスナトリウムの合成に有用な、重要な中間体である、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの製造方法に関する。本発明はまた、前記の中間体からのスガマデクスナトリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スガマデクス(Org 25969、Bridion)は、シクロオクタキス-(1-→4)-[6-S-(2-カルボキシエチル)-6-チオ-α-D-グルコピラノシル]として化学的に知られている。スガマデクスは、全身麻酔において、神経筋遮断剤(NMBA)ロクロニウム、ベクロニウム、パンクロニウムによる神経筋遮断を回復させるための薬剤である。これは最初の選択的弛緩薬結合剤(SRBA)である。SRBAは、NMBAを選択的に封入し、結合する、新たな種類の薬物である。用語「スガマデクス」は、Su=糖、およびGamma cyclodex=シクロデキストリンに由来する。スガマデクスは化学的に不活性であり、いずれの受容体にも結合しない。これは、ステロイド性のNMBDを迅速に封入することによって作用し、1:1の比で安定な複合体を形成し、それによって、血漿からの遊離薬物の濃度を減少させる。これによって、残存するロクロニウム分子が、神経筋接合部から血漿へ戻る動きを助ける濃度勾配が生じ、そこで遊離のスガマデクス分子によって封入される。後者の分子はまた、組織に導入され、ロクロニウムと複合体を形成する。そのため、ロクロニウムの神経筋遮断は、神経筋接合部から血漿へ、ロクロニウムが拡散することによって迅速に終了する。
【0003】
NMBDは、少なくとも1個の帯電した窒素原子を有する4級アンモニウム化合物である。シクロデキストリンは親油性中心を有するが、表面で負に帯電したイオンに起因する親水性の外側コアを有する。スガマデクスの表面における、これらの負に帯電したイオンは、4級アンモニウム弛緩剤の陽電荷を引きつけ、薬物をシクロデキストリンの中核に引きつける。ゲスト分子の、ホストシクロデキストリンへの結合は、ファンデルワールス力、疎水性および静電相互作用によって生じる。シクロデキストリンの構造は、ステロイド性弛緩薬の4つ全ての疎水性の環が、ドーナツ型の同心円にしっかりとはまり、包接複合体を形成したものである。これは、熱量測定およびX線結晶解析によって確認した。このような反応は、神経筋接合部ではなく、血漿中で起こり、血漿中の遊離のロクロニウムの濃度は、スガマデクスの投与の後に急速に減少する。
【0004】
US6670340は、スガマデクスナトリウムの製造方法を開示する。本特許の実施例4において開示される方法は、水素化ナトリウムおよびDMFの存在下で、ヨードγ-シクロデキストリン中間体を3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、6-パー-デオキシ-6-パー-(3-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリン、ナトリウム塩(スガマデクスナトリウム)を得ることに関する。ヨード中間体、6-パー-デオキシ-6-パー-ヨード-γ-シクロデキストリンの合成は、トリフェニルホスフィン(PPh3)およびDMFの存在下、γ-シクロデキストリンとヨウ素との反応に関する、実施例3において提示される通りである。実際には、および、ラボスケールから製造スケールに用いられる方法を開発するために、純度は最も重要な基準の1つである。この方法は、トリフェニルホスフィン試薬の使用に関するので、副生成物としてトリフェニルホスフィンオキシドの形成がある。反応塊からのトリフェニルホスフィンオキシドの除去は、溶媒による洗浄を繰り返す必要があるため、とても難しく、最終生成物のスガマデクスナトリウムの収率の不一致が生じる。さらに、生成物を36時間透析して、純粋な化合物を得た。透析精製は、高価であり、生成物を低収率で生じるため、このような方法は、製造スケールでは実現可能ではなく、経済的ではない。
【0005】
WO2012025937において開示される、中間体化合物、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを製造するための別の方法は、リンハライド、特に、リンペンタクロライドの使用に関する。WO2012025937はまた、a)ガンマ-シクロデキストリンをリンペンタクロライドおよびジメチルホルムアミドと反応させて、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること、並びにb)6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを、アルカリ金属ハイドライドおよび有機溶媒の存在下で、3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ることに関する、この中間体を用いたスガマデクスナトリウムの製造方法を開示する。リンペンタクロライドを用いた、クロロガンマシクロデキストリン中間体の製造は、反応中、除去するのが困難で、面倒な処理手順を伴うリン不純物の形成に関する。
【0006】
WO2014125501は、リンペンタクロライドを用いた6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの製造を開示する(実施例1を参照されたい)。本特許出願の実施例1において提示される方法を、本発明者は繰り返した。第一ステップは、粉末形態でなく、流動性のない、黄色から褐色の塊を生じた。塊は時にペースト状であり、濾過することが困難であった。このように、方法は不純物を含み、面倒であった。全体として、一貫した生成物は得られなかった。WO2014125501はまた、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、および有機溶媒の存在下、6-パーデオキシ-6-パー-ハロ-ガンマ-シクロデキストリンと、3-メルカプトプロピオン酸との反応に関する、この中間体を用いたスガマデクスナトリウムの製造を開示し、この反応の欠点は、反応を完了させるために無水条件が必要なことである。
【0007】
不純物の生成および、純粋な化合物の少量の生成は、スガマデクスの主要な欠点であることが報告されている。出願人Nippon Organon K.Kが、厚生労働省医薬品食品安全局評価・許認可課に提出した「審議結果報告書」では、以下のように述べられている:
関連物質について、14の異なる関連物質(関連物質A、組織48301、関連物質B、関連物質D、関連物質E、関連物質F、関連物質G、関連物質H、関連物質I、関連物質J、関連物質K、関連物質L、関連物質M、関連物質N)、他の個別の関連物質、および全ての関連物質についての明細書が提出される。規制審査の過程で、バッチ分析の結果に基づいて、4つの異なる関連物質(関連物質A、関連物質D、関連物質F、関連物質G)に限定する明細書を変更した。関連物質(分解産物)について、関連物質E、関連物質I、関連物質C、関連物質G、関連物質D、関連物質K、他の個別の分解産物、および全ての分解産物についての明細書が定められた。規制審査の過程で、***(隠された部分)工程で生じる、不純物Aについての明細書が新たに提出され、バッチ分析および安定性試験の結果に基づいて、個別の分解生成物を限定する明細書が変更された。
薬物生成物の色の変化(淡黄褐色が暗くなった)の原因を、液体クロマトグラフィー-紫外-可視吸光度測定(LC-UV/VIS)および液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を用いて調査したところ、単一の分解産物ではなく、微量の様々な不特定の分解産物(同定されていない)が含まれており、製剤開発において調査した***に加えて、***および***の原薬の内容物、薬物生成物の製造の間の***および***、並びに***が、薬物生成物の色に影響すると考えられることが示唆された。そのため、***および***は原薬の明細書に含まれ、関連する製造方法のステップが改善された。
【0008】
前記を考慮して、スガマデクスが分解する傾向にあるだけでなく、微量の分解不純物が影響して色が黄褐色に変化し、品質が許容できなくなることは明らかである。そのため、純粋なスガマデクスナトリウムの製造方法を慎重に選択することが重要である。
【0009】
報告されたスガマデクスナトリウムの精製技術は、大規模操作では高価で不便なカラムクロマトグラフィーおよび膜透析を用いる。そのため、本明細書で論じられるような、報告されたスガマデクスナトリウムの製造方法は、時間がかかり、非経済的であり、工業的に実行可能でない。
そのため、単純で、便利で、簡単な処理手順を含み、経済的に効率が良いスガマデクスナトリウムの製造方法であって、スガマデクスナトリウムを高収率および高純度で生じる方法が提示される必要がある。
【0010】
本発明の対象
本発明の目的は、スガマデクスナトリウムの製造に用いられる重要な中間体である6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの製造方法を提示することである。
本発明の他の目的は、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示することである。
本発明の他の目的は、スガマデクスナトリウムを高収率および高純度で製造するための新規な方法を提示することである。
本発明の他の目的は、工業規模で便利に用いられる試薬の使用に関する、簡易なスガマデクスナトリウムの製造方法を提示することである。
【発明の概要】
【0011】
ある局面において、本発明は、スガマデクスナトリウムの製造に用いる重要な中間体である、6-パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンの製造方法を提示する。
【0012】
別の局面において、本発明は、ジメチルホルムアミドの存在下、ガンマシクロデキストリンをトリホスゲンと反応させることを含む、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの製造方法を提示する。
【0013】
別の局面において、本発明は、ジメチルホルムアミドの存在下、オキサリルクロリドおよびオキサリルブロミドなどのオキサリルハライドを用いた、6-パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリン、以下スガマデクスのハロ中間体の製造方法を提示する。好ましくは、ハロ中間体はパーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン、以下スガマデクスのクロロ中間体である。
【0014】
別の局面において、本発明は、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンをメルカプトプロパン酸およびソーダアミドと反応させることを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する。
【0015】
別の局面において、本発明は、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンをメルカプトプロパン酸および水酸化ナトリウムなどの無機塩基と反応させることを含む、スガマデクスの製造方法を提示する。
【0016】
別の局面において、本発明は、a)ジメチルホルムアミドの存在下で、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の溶液を得ること、b)ステップa)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンで処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること、c)スガマデクスのカリウム塩を酸で処理して、対応するスガマデクスの酸を得て、これを水酸化ナトリウムなどの無機塩基で処理して、スガマデクスナトリウムを得ることを含む、スガマデクスの製造方法を提示する。
【0017】
別の局面において、本発明は、対応する酸のカリウム塩を製造するステップを含む、そのような酸からスガマデクスを製造する方法を提示する。
【0018】
別の局面において、本発明はスガマデクスナトリウムの製造方法を提示する。
【0019】
別の局面において、本発明は純粋なスガマデクスを、90%より高い純度、好ましくは95%より高い純度で提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンのHPLCプロファイルである。
図2図2は6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの1HNMRである。
図3図3は99%より高い純度を有するスガマデクスナトリウムのHPLCプロファイルである。
図4図4は実施例5に従って合成したスガマデクスナトリウムのHPLCプロファイルである。
図5図5は実施例6に従って合成したスガマデクスナトリウムのHPLCプロファイルである。
図6図6は実施例6に従って合成したスガマデクスの1HNMRである。
図7図7は実施例6に従って合成したスガマデクスの13CNMRである。
図8図8はスガマデクス酸(式IVの化合物)のHPLCプロファイルである。
図9図9は式IVの化合物の1HNMRである。
図10図10は式IVの化合物の13CNMRである。
図11図11は実施例8に従って合成したスガマデクスのHPLCプロファイルである。
図12図12は実施例8に従って合成したスガマデクスの1HNMRである。
図13図13はWO2014125501の実施例1の方法に従って合成したスガマデクスのHPLCプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、スガマデクスの製造において有用な、重要な中間体であるスガマデクスのハロ中間体、好ましくはスガマデクスのクロロ中間体の製造方法を提示する。さらに、本発明は、この中間体を用いたスガマデクスの製造方法を提示する。
【0022】
ハロ中間体の製造方法
第一の局面において、本発明は、ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマシクロデキストリンをトリホスゲンと反応させて、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ることを含む、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの製造方法を提示する。
【0023】
本発明の実施態様において、ガンマシクロデキストリンとトリホスゲンとの反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下、60-80℃の範囲の温度で行われる。反応は12から18時間にわたって行われる。このプロセスを以下のスキーム1に描写する。
【化1】
【0024】
第二の局面において、本発明は、ジメチルホルムアミドの存在下で、式IIのガンマ-シクロデキストリンを、オキサリルクロリドまたはオキサリルブロミド、好ましくはオキサリルクロリドなどのオキサリルハライドと反応させて、スガマデクスのハロ中間体、好ましくはスガマデクス(III)のクロロ中間体を得ることを含む、スガマデクスのハロ中間体の製造方法が提示される。
【0025】
ある実施態様において、ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で、式(II)のガンマ-シクロデキストリンをオキサリルクロリドと反応させて、スガマデクスのクロロ中間体を得て、適宜スガマデクスのクロロ中間体を精製する。反応は、60-80℃の範囲の温度で行われる。反応は12-18時間にわたって行われる。
パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの精製は、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンをメタノールなどのアルコール性溶媒中に懸濁させて、懸濁液を攪拌し、濾過して、純粋なパーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ることに関する。
本発明によって得られた純粋なパーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンは、98%より高い純度を有する。
この方法を、以下のスキーム2に描写する。
【化2】
【0026】
スガマデクスナトリウムの製造方法
第三の局面において、本発明はスガマデクスナトリウムの製造方法を提示する。
【0027】
本発明において、純粋なスガマデクスナトリウムは、単純な処理手順を伴う簡単で便利な方法を用いて、着色不純物並びに、報告される方法において用いられるようなカラムクロマトグラフィーおよび透析などの精製技術を回避して、製造される。
【0028】
ある実施態様において、リチウムアミド、ナトリウムアミド(ソーダアミド)またはカリウムアミドから選択されるアルカリ金属アミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン(式II)を3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ることを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法。
【化3】
【0029】
ある実施態様において、ソーダアミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ることを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法。
【0030】
別の実施態様において、スガマデクスナトリウムの製造方法は、以下を含む:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマシクロデキストリンをトリホスゲンと反応させて、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること;
b)リチウムアミド、ナトリウムアミド(ソーダアミド)またはカリウムアミドから選択されるアルカリ金属アミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ること。
【0031】
ある実施態様において、スガマデクスナトリウムの製造方法のステップa)は、60-80℃の範囲の温度で行われる。
【0032】
別の実施態様において、当該方法のステップa)は、ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で行われる。別の実施態様において、当該方法のステップa)の反応は、12から18時間にわたって行われる。
【0033】
ある実施態様において、スガマデクスの製造方法のステップb)は、60-100℃の範囲の温度で行われる。別の実施態様において、当該方法のステップb)の反応は、9から18時間にわたって行われる。別の実施態様において、当該方法のステップb)は、DMF、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)から成る群から選択される適切な有機溶媒の存在下で行われる。
【0034】
スガマデクスナトリウムの製造方法は、本明細書に記載の2ステップ反応である。
【0035】
第一ステップにおいて、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンは、ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマシクロデキストリンをトリホスゲンと反応させることによって製造される。トリホスゲンは、本発明の方法において以下の利点を有する。
1.リンハライドよりも扱いが便利である。
2.トリフェニルホスフィンの使用および、それによる副生成物としてのトリフェニルホスフィンオキシドの形成が回避され、それにより当該方法が工業的に実行可能になる。
3.面倒な処理手順を必要としない。
4.報告された方法で得られる黄褐色化合物と比較して、白色の化合物として6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを生じる。
5.6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンは、先行技術のペースト状の塊(褐色)と比較して、流動性粉末である。
【0036】
第二ステップにおいて、リチウムアミド、ナトリウムアミド(ソーダアミド)またはカリウムアミドから選択されるアルカリ金属アミド、好ましくはナトリウムアミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンは、3-メルカプトプロピオン酸と反応して、スガマデクスナトリウムを生じる。
【0037】
別の実施態様において、スガマデクスナトリウムの製造方法は、リチウムアミドまたはカリウムアミドから選択されるアルカリ金属アミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、対応するスガマデクスの塩を得ることを含む。対応するスガマデクスの塩は、塩酸などの酸を用いて、スガマデクスの酸に変換される。スガマデクスの酸は、水酸化ナトリウムなどのアルカリヒドロキシドと処理することで、スガマデクスナトリウムを生じる。
【0038】
別の実施態様において、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンと3-メルカプトプロピオン酸との反応は、ナトリウムアミド(ソーダアミド)およびジメチルホルムアミドの存在下で行われる。
【0039】
本発明の方法においてソーダアミドを用いる主な利点は、反応で形成される不純物の形成が抑制され、ナトリウムメトキシドおよび水素化ナトリウムなどの塩基を用いて合成するよりも少ないことである。目的の生成物のスガマデクスナトリウムは、高収率および、少なくとも90%の高純度で得られた。スガマデクスナトリウムは、例えば分取HPLCによって精製して、99%より高い純度の純粋なスガマデクスナトリウムを得ることができる。
【0040】
別の実施態様において、スガマデクスナトリウムの製造方法は、以下のステップを含む:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマシクロデキストリンをトリホスゲンと反応させて、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること;
b)リチウムアミド、ナトリウムアミド(ソーダアミド)またはカリウムアミドおよびジメチルホルムアミドから選択されるアルカリ金属アミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ること;
c)適宜、スガマデクスナトリウムを精製して、純粋なスガマデクスナトリウムを得ること。
【0041】
別の実施態様において、本発明は、以下のステップを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマ-シクロデキストリンをトリホスゲンと反応させて、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること;
b)水酸化ナトリウムの存在下で、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを生成すること;
c)適宜、スガマデクスナトリウムを精製すること。
【0042】
別の実施態様において、本発明は、以下のステップを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマ-シクロデキストリンをトリホスゲンと反応させて、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること;
b)ジメチルホルムアミドの存在下で、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の溶液を得ること;
c)ステップb)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、スガマデクスのハロ中間体、好ましくは、式IIIのスガマデクスのクロロ中間体で処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること;
d)ステップc)の化合物を酸で処理して、式(IV)の化合物を得ること;
e)式(IV)の化合物を水酸化ナトリウムと反応させて、スガマデクスナトリウムを得ること;
f)適宜、スガマデクスナトリウムを精製すること。
【0043】
別の実施態様において、スガマデクスの製造方法は、スガマデクスのハロ中間体、好ましくは6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化ナトリウムと反応させて、式(I)のスガマデクスを得ることを含む。
【0044】
反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される溶媒から成る群から選択される有機溶媒の存在下で行われる。反応は、70-90℃の範囲の温度で16-20時間行われる。この方法を、以下のスキーム4に描写する。
【化4】
【0045】
別の実施態様において、本発明は、以下を含む、式(IV)のスガマデクスの酸の製造方法を提示する:
a)スガマデクスのハロ中間体、好ましくは式IIIのスガマデクスのクロロ中間体を、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムと反応させて、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること
b)ステップa)で得られた化合物を酸で処理して、式(IV)の化合物を生成すること;
【化5】
【0046】
別の実施態様において、本発明は以下を含む、式(IV)のスガマデクスの酸の製造方法を提示する:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の溶液を得ること
b)ステップa)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、スガマデクスのハロ中間体、好ましくは式IIIのスガマデクスのクロロ中間体で処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること
c)ステップb)で得られた化合物を、酸で処理して、式(IV)の化合物を得ること。
【0047】
別の実施態様において、本発明は式(IV)のスガマデクスの酸を、水酸化ナトリウムと反応させて、式(I)のスガマデクスナトリウムを生成することを含む、スガマデクスの製造方法を提示する。
【化6】
【0048】
用語「式(I)の化合物」および「スガマデクス」および「スガマデクスナトリウム」は、本明細書で同義に用いられ、用語「式(IV)の化合物」および「スガマデクス酸」およびスガマデクスの酸は本明細書で同義に用いられる。
化合物、6-パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンおよびスガマデクスのハロ中間体は、本明細書で同義に用いられる。
6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンおよびスガマデクスのクロロ中間体は、本明細書で同義に用いられる。
【0049】
別の実施態様において、スガマデクスナトリウムの製造方法は以下を含む:
a)ガンマ-シクロデキストリンを、トリホスゲンまたはオキサリルクロリドと、DMFの存在下、60-80℃の温度で、12-18時間にわたって反応させて、スガマデクスのクロロ中間体を得ること;
b)スガマデクスのクロロ中間体を、スガマデクスナトリウムに変換すること。
【0050】
本発明の別の実施態様において、スガマデクスのクロロ中間体、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの、スガマデクスナトリウムへの変換は、以下を含む:
水酸化ナトリウムの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを、3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ること;
あるいは
リチウムアミド、ナトリウムアミド(ソーダアミド)またはカリウムアミドから選択されるアルカリ金属アミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスを得ること
あるいは
(a)ジメチルホルムアミドの存在下で、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の溶液を得ること
(b)ステップa)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、スガマデクスのハロ中間体、好ましくは式IIIのスガマデクスのクロロ中間体で処理して、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること
(c)ステップb)で得られた生成物を、酸で処理して、式(IV)の化合物を得ること;
(d)式(IV)の化合物を、水酸化ナトリウムと反応させて、式(I)のスガマデクスナトリウムを得ること。
【0051】
別の実施態様において、スガマデクスナトリウムの製造方法は、以下を含む:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマシクロデキストリンをオキサリルクロリドと反応させて、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること;
b)リチウムアミド、ナトリウムアミド(ソーダアミド)またはカリウムアミドから選択されるアルカリ金属アミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ること。
【0052】
ある実施態様において、当該方法のステップa)は、60-80℃の範囲の温度で行われる。別の実施態様において、当該方法のステップa)は、12から18時間にわたって行われる。ある実施態様において、当該方法のステップb)は、60-100℃の範囲の温度で行われる。別の実施態様において、当該方法のステップb)の反応は、9から18時間にわたって行われる。別の実施態様において、当該方法のステップb)は、DMF、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)から成る群から選択される適切な有機溶媒の存在下で行われる。
【0053】
ある実施態様において、当該方法のステップb)は、ナトリウムアミド(ソーダアミド)の存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを得ることを含む。
【0054】
ある実施態様において、当該方法のステップb)は、リチウムアミドまたはカリウムアミドの存在下で、6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、対応するスガマデクスの塩を得て、塩酸などの酸を用いて得られたスガマデクスの酸の塩を変換し、得られたスガマデクスの酸を水酸化ナトリウムなどのアルカリヒドロキシドで処理し、スガマデクスナトリウムを得ることを含む。
【0055】
別の実施態様において、本発明は以下のステップを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマ-シクロデキストリンをトリホスゲンまたはオキサリルクロリドと反応させて、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを得ること;
b)水酸化ナトリウムの存在下で、パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスナトリウムを生成すること;
c)適宜スガマデクスナトリウムを精製すること。
ステップa)の反応は、60-80℃の範囲の温度で行われる。
ステップa)の反応は、12-18時間にわたって行われる。
ステップb)の反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)から成る群から選択される有機溶媒の存在下で行われる。
ステップb)の反応は、70-90℃の範囲の温度で行われる。
ステップb)の反応は、16-20時間にわたって行われる。
ステップc)におけるスガマデクスの精製は、以下のステップを含む;
1)スガマデクスナトリウムを第一溶媒に溶解させて、溶液を得ること
2)得られた溶液を活性化炭素で処理すること
3)ステップii)の溶液を濾過して、濾液を分離すること、および
4)ステップiii)の濾液に第二溶媒を加え、純粋なスガマデクスナトリウムを得ること。
精製方法において用いられる第一溶媒は、水、アセトン、DMF、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール、並びに/またはそれらの混合物から成る群から選択される。
精製方法において用いられる第二溶媒は、アセトン、メタノール、アセトニトリルまたはそれらの混合物から選択される。
精製ステップは、50-80℃の範囲の温度で行われる。この精製によって得られるスガマデクスナトリウムは、90%より高い純度を有する。
【0056】
別の方法において、スガマデクスは分取HPLC法によって精製される。ある実施態様において、分取HPLC法によるスガマデクスの精製は、スガマデクスの精製のための、スガマデクスの酸の使用を含む。
【0057】
スガマデクスナトリウムの精製のための当該方法は、以下の反応スキーム7によって描写する。
【化7】
【0058】
別の実施態様において、本発明は、以下のステップを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する:
a)ジメチルホルムアミドの存在下で、ガンマ-シクロデキストリンをオキサリルクロリドと反応させて、式(III)のスガマデクスのクロロ誘導体を得ること;
b)ジメチルホルムアミドの存在下で、3-メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムを反応させて、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の溶液を得ること
c)ステップb)で得られた3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を、スガマデクスのハロ中間体、好ましくは式IIIのスガマデクスのクロロ中間体で処理して、スガマデクス酸のカリウム塩を含む生成物を得ること
d)ステップc)の生成物を酸で処理して、式(IV)の化合物を得ること;
e)式(IV)の化合物を水酸化ナトリウムで処理して、スガマデクスナトリウムを得ること。
ステップa)の反応は、60-80℃の範囲の温度で行われる。ステップa)の反応は、12-18時間にわたって行われる。
ステップb)の反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される有機溶媒の存在下で行うことができる。
ステップb)の反応は、0-10℃、好ましくは0-5℃で行われる。
【0059】
ステップb)およびc)の反応において、ハロ中間体化合物およびメルカプトプロピオン酸、並びにハロ中間体化合物および水酸化カリウムは、それぞれ、少なくとも1:15および少なくとも1:30、好ましくは、それぞれ少なくとも1:20および1:40、最も好ましくは、それぞれ少なくとも1:25および少なくとも1:50のモル比で用いられる。メルカプトプロピオン酸および水酸化カリウムの比は約x:y、好ましくは1:2である。
ステップc)の反応は、80-140℃の範囲の温度、好ましくは110-120℃の温度で行われる。ステップc)の反応は、2から6時間、好ましくは1.5-2時間にわたって行われる。
ステップd)で用いられる酸は塩酸である。ステップc)の反応は、25-35℃の温度で行われる。ステップd)の反応は、1.5-2時間にわたって行われる。
ステップe)の反応は、25-35℃の範囲の温度で行われる。ステップe)の反応は、0.5-2時間にわたって行われる。当該方法を、スキーム8に描写する。
【化8】

前記のスキーム8による、スガマデクスナトリウムの合成方法は、以下のステップを含む;
【0060】
ステップ1:
このステップにおいて、無水ジメチルホルムアミド(DMF)およびオキサリルクロリドの混合物を、1時間、5℃以下の温度で攪拌し、DMF中に溶解した乾燥ガンマ-シクロデキストリンの溶液をゆっくりとこの混合物に加える。溶液を65-70℃で16時間加熱する。反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却し、ジイソプロピルエーテルなどの溶媒を、攪拌しながら反応混合物に加える。溶媒を除去し、得られた析出したゴム状の固形物を0から5℃に冷却し、水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと加えて、約pH8に中和する。反応物質を0から5℃の温度で1時間攪拌し、析出した物質を濾過し、水で洗浄する。残留物を次いで、メタノールなどの溶液中に懸濁させ、攪拌し、濾過し、ジイソプロピルエーテルなどの溶媒で洗浄し、乾燥させて、6-デオキシ-6-クロロガンマシクロデキストリンを得る。
【0061】
ステップ2:
このステップにおいて、水酸化カリウムのDMFなどの溶媒中の溶液を、0-5℃に冷却し、これに、3-メルカプトプロピオン酸のDMFなどの溶媒中の溶液を加え、反応混合物の温度を0-5℃の間の温度で維持する。反応混合物を、次いで、この温度で約60分間攪拌し、3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩の透明な溶液を得る。3-メルカプトプロピオン酸のカリウム塩を含む透明な溶液を、DMF中の6-デオキシ-6-クロロガンマシクロデキストリンの溶液で処理する。混合物を約110-120℃で、約2時間加熱する。反応が完了した後、反応混合物を約40-50℃に冷却し、メタノールなどの溶媒で希釈する。得られた析出物を20-25℃で1時間攪拌し、真空で濾過する。湿った固体を次いで、激しく攪拌しながら水に溶解し、濃縮塩酸(HCl)などの酸で酸性化する。スガマデクス酸の析出した固形物を濾過し、酢酸エチルなどの溶媒中に懸濁させ、30分攪拌し、濾過し、乾燥する。得られたスガマデクス酸は、HPLCによって測定したところ、95%より高い純度を有する。
【0062】
ステップ3
このステップにおいて、化合物、スガマデクス酸は、好ましくは水およびメタノールの溶媒の混合物中の水酸化ナトリウム溶液中に溶解する。反応混合物のpHを8-10の間に保ち、メタノールなどの貧溶媒を混合物に加える。析出したスガマデクスナトリウムの固形物を濾過して、メタノールなどの溶媒で洗浄し、真空オーブンで50℃で乾燥させる。
【0063】
別の実施態様において、本発明は、以下のステップを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する:
a)式(III)のスガマデクスのクロロ誘導体を、水酸化カリウムの存在下で、3-メルカプトプロピオン酸と反応させて、スガマデクスの酸のカリウム塩を含む生成物を得ること;
b)ステップb)の化合物を酸で処理して、式(IV)の化合物を得ること;
c)式(IV)の化合物を水酸化ナトリウムと反応させて、スガマデクスナトリウムを得ること。
【0064】
別の実施態様において、本発明は、式(IV)の化合物を25-35℃の温度で水酸化ナトリウムの溶液で処理して、溶液および有機溶媒を用いて析出した純粋なスガマデクスナトリウムを得ることを含む、スガマデクスナトリウムの製造方法を提示する。水酸化ナトリウムの溶液は、水酸化ナトリウムを溶媒の混合物中に溶解させることによって生成する。用いられる溶媒の混合物は、水およびメタノールである。水酸化ナトリウムの溶液を、反応液のpHを8-10の間に維持する分量において加える。スガマデクスのナトリウム塩の析出のために用いられる有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど、またはこれらの混合物から選択される。この方法を、以下のスキーム9に描写する。
【化9】

本発明によって製造したスガマデクスナトリウムは、HPLCプロファイルによって特徴付けられ、90%より高い、好ましくは95%より高い純度を示す。
本発明において、純粋なスガマデクスナトリウムは、単純な処理手順を伴う簡単で便利な方法を用いて、副生成物/不純物の生成並びに、報告された方法において用いられるようなカラムクロマトグラフィーおよび透析などの精製技術を回避して、製造される。
【0065】
議論されているように、出願人Nippon Organon K.Kは、AからNの、スガマデクスについての14個の異なる関連物質を報告した。また、生成物中に、痕跡量の不純物が残り、黄色から褐色に着色した生成物を生じうることが述べられている。着色した不純物は、簡単な洗浄によって洗い出すことはできない。それには、カラムクロマトグラフィーまたは透析またはいくつかの面倒な処理手順による精製などの特別な技術が必要である。本発明の発明者は報告された方法に従い、目的の生成物を高い純度で得ることができないことを発見した。実際に、純粋な白色の目的の生成物を得ることは非常に難しい。
【0066】
本発明の発明者は、オキサリルクロリドおよびオキサリルブロミドなどのオキサリルハライドを用いて、ハロ中間体であるパーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリン、好ましくはパーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンを製造し、水酸化ナトリウムを用いて、6-パーデオキシ-6-パー-ハロガンマシクロデキストリンからスガマデクスを製造した場合に、大規模での操作が容易であることを発見した。このような反応において、得られた反応混合物は、反応が完了した後の作業が簡単であった。
【0067】
報告されている五塩化リン(PCl)、トリフェニルホスフィン(PPh3)の代わりに塩化オキサリルを用い、本発明の著者がWO2014125501において開示される方法を繰り返した場合に得られた、黄色から褐色のペースト状化合物と比較して、白色の自由流動物質を乾燥によって生じる、白色の純粋な固形物を生じるため、本発明の方法は便利である。
【0068】
本発明の方法は、スガマデクスナトリウムの製造のために用いる水素化ナトリウムおよびナトリウムメトキシドなどの報告された塩基よりも、水酸化ナトリウムを用いて純粋なスガマデクスナトリウムを生じる。
興味深いことに、WO2014125501およびWO2012025937のいずれも、それぞれの方法で製造される最終生成物のスガマデクスナトリウム中に存在する異なる不純物について言及していない。
【0069】
スガマデクスナトリウムの精製
本発明に従って製造したスガマデクスナトリウムは、HPLCプロファイルを用いて特徴付けられ、95%より高い純度を示す。
反応生成物の生成はHPLCによってモニターする。本発明に従って製造したスガマデクスナトリウムは、好ましくは分取HPLCによって精製され、95%より高い、好ましくは98%より高いHPLC純度を有する、純粋なスガマデクスナトリウムを得る。
先行技術における精製技術は、大規模操作において高価で不便である、カラムクロマトグラフィー/膜透析技術を用いる。本発明の方法はさらに、スガマデクスナトリウムを高純度で生じる。
【0070】
ある局面において、本発明はスガマデクスナトリウムの精製方法を提示する。
【0071】
ある実施態様において、スガマデクスナトリウムを、アセトニトリルおよび水の混合物中のギ酸緩衝液を用いた、分取HPLC法によって精製する。最終的に、目的の画分を凍結乾燥して、99%より高い純度のスガマデクスナトリウムを得た。
【0072】
別の実施態様において、スガマデクスナトリウムは、粗製生成物を、水、アセトン、DMF、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール、並びに/またはそれらの混合物から成る群から選択される適切な溶媒中に溶解させて、次いで活性炭を加えることによって精製する。得られた溶液を約30分間攪拌して、濾過した。生成物を、アセトン、メタノール、アセトニトリルまたはそれらの混合物から選択される適切な溶媒を用いて、濾液から析出させて、90%より高い、好ましくは95%より高い純度を有するスガマデクスナトリウムを得る。
【0073】
別の実施態様において、スガマデクスを分取HPLC法によって精製する。有利には、スガマデクスはスガマデクスナトリウムの酸を分取HPLC法にかけることによって精製されることが本発明者らによって発見された。当該方法の利点は、分取HPLCによって得られるスガマデクスが、95%より高い、好ましくは99%より高い純度を有することである。そのようなある実施態様において、図3に示されるように、純度は99.36%である。
【0074】
あるいは、本発明によって得られるスガマデクスナトリウムは、分取HPLC法を行うことで、99%より高い純度を有するスガマデクスの酸を生じ、これをさらに、水酸化ナトリウムを用いてスガマデクスナトリウムに変換して、99%より高い純度を有する純粋なスガマデクスナトリウムを生じる。
【0075】
HPLC法の一般的な条件:
基本的な分取のクロマトグラフィー分離の条件は、
試薬:(1)アセトニトリル(HPLCグレード)、(2)メタノール(HPLCグレード)、(3)ミリQ水、(4)ギ酸
希釈剤:ジメチルホルムアミド
粗製溶液:
適切な分量のスガマデクスの酸を取り、DMF中に溶解させ、5分間超音波破砕し、必要に応じて濾過することによって、500mg/mLのスガマデクスの酸またはスガマデクスの溶液を調製する。
移動相-A
2.0mLのギ酸を、1000mlのミリQ水に移し、よく攪拌し、超音波破砕によって脱気して用いる。
移動相-B
それぞれ、アセトニトリル、メタノール(70:30)の混合物。
クロマトグラフィー条件:
カラム:Luna C18(3)、10μm粒子径。50mm内径のステンレススチールの分取カラムに充填されている。
流速:35ml/分。
検出:210nmのUV
注入量:20ml(注入濃度に応じて、~10.0gms/注入)
運転時間:115分
勾配プログラム:
【表1】



スガマデクスのピークの保持時間(RT)は約85分である。
核磁気共鳴分光法(NMR)は、Avance III 400MHz NMRスペクトロメーターを用いて行われ(100MHzにおいて取得した13C NMRスペクトルについて)、化学シフトはδ(ppm)において報告した。
【0076】
本発明の方法は、少なくとも90%、好ましくは95%より高い、最も好ましくは99%より高い純度を有する、純粋なスガマデクスを生じる。
【0077】
本発明の方法の利点:
1)当該方法において、ハロシクロデキストリン中間体の製造のために、オキサリルハライドを用いることによって、副生成物が生成されないため、処理手順が著しく単純になり、得られる化合物は98%より高い純度を有する。この方法は、リン不純物を生成し、反応混合物から除去することが困難な、PPh3、PCl5などのリン試薬を回避する。さらに、これらの試薬を用いることは、大規模な商業的プロセスにおいては望ましくない。
2)水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)などの無機塩基が、反応を効率的で清潔にするために、当該方法において用いられる。報告されている水酸化ナトリウムおよびナトリウムメトキシドの使用には、無水反応条件が必要である。さらに、無水グレードの溶媒/試薬は非常に高価である。当該方法は経済的であり、反応の進行に厳密な無水条件を必要としない。
3)反応の終了に有する反応時間を大幅に減少する。
4)単純な酸塩基の処理手順によって、目的の化合物を、95%より高い純度で生じる。
【0078】
本発明の局面および実施態様は、以下の実施例によって説明される。しかし、当然のことながら、本発明の局面および実施態様は、それらの他のバリエーションが当業者にとって既知であり、本開示に照らして明らかであるように、これらの実施例の特定の詳細に限定されない。
【実施例
【0079】
実施例1
6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリンの製造
メカニカルスターラー、容器中の温度計ポケットを備えた4つ口丸底フラスコ(2L)に、窒素雰囲気下で無水DMF(250mL)を加えた。トリホスゲン(36.5g、0.123mol)をフラスコに0-15℃で加え、混合物を1時間攪拌した。乾燥ガンマシクロデキストリン(20g、0.015mol)を、得られたスラリーに加えて、30分攪拌し、次いで、DMF(50mL)を加えた。反応混合物を65-70℃で16時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を冷却し、ジイソプロピルエーテル(800ml)を混合物に加えて、物質を析出させた。DMFおよびジイソプロピルエーテルの混合溶媒を、反応混合物からデカントして除き、褐色のゴム状物質を得た。反応塊を飽和重炭酸ナトリウム溶液(800ml)で処理して、固体の析出物を生じさせた。析出した固形物を濾過し、水(250×3ml)で洗浄して、乾燥させた。この化合物を精製することなく、次のステップで用いた。
収率:95%、HPLC純度:99%
【0080】
実施例2
6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマ-シクロデキストリンの製造
スターラー、滴下漏斗、窒素導入口、およびポケットと共に温度計を備えた、5Lの4つ口フラスコにおいて、オキサリルクロリド(293.8g、198.5ml、2315mmol)をDMF(1200ml)に加え、混合物を窒素下で0-5℃で維持し、次いで、20-25℃で1時間攪拌した。DMF(500mL)中のガンマ-シクロデキストリン(100g、77.16mmol)の溶液を、前記の混合物に、窒素下、5-10℃で加えた。混合物を65-70℃で、14-16時間攪拌した。反応が完了した後、反応混合物を20-25℃に冷却し、ジイソプロピルエーテル(1.2L)で希釈した。有機層をデカントし、粘性の残留物を、pH=8まで、5-10℃で、10%NaOH溶液で処理した。得られたスラリーを、1時間、20-25℃で攪拌した。スラリーを真空で濾過し、固形物を水(3×500mL)で洗浄し、真空で乾燥させた。粗製物質をメタノール(750ml)中に懸濁させ、30分間攪拌し、真空で濾過し、ジイソプロピルエーテル(500mL)で洗浄した。得られた固形物をオーブンにおいて55-60℃で、12-16時間乾燥させ、表題の化合物(95g)を得た。
収率:85%、純度:98%、融点:226-228℃
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 6.0 (br s., 16 H), 4.99 (m, 8 H), 4.04 (d, J = 10 Hz, 8 H), 3.87 - 3.78 (m, 16H), 3.64 - 3.56 (m, 8 H), 3.46 - 3.34 (m, 16 H) ppm.
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 101.98, 82.93, 72.30, 72.16, 71.11, 44.92 ppm.
質量: m/z (M+Na)+ C48H72Cl8O32Naの計算値: 1463.14; 実測値: 1463.06.
【0081】
実施例3
6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマ-シクロデキストリン
スターラー、滴下漏斗、窒素導入口およびポケット付き温度計を備えた、清潔で乾燥した50Lのガラス反応容器に、無水ジメチルホルムアミド(15mL、含水量NMT 0.4%)を加えて、(ドライアイスアセトン浴を用いて)温度を0-5℃に維持した。オキサリルクロリド(2L、23635mmol、30等量)をゆっくりと、4-5時間にわたって加え(温度は5℃以下に維持しながら)、攪拌を同じ温度で1時間継続した。ジメチルホルムアミド(5L)中に溶解した、乾燥ガンマ-シクロデキストリン(1.0kg、770.94mmol)の溶液を、前記の反応混合物にゆっくりと加えた。溶液を65-70℃で16時間加熱した。反応を、一定の間隔でTLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却し、ジイソプロピルエーテル(10L)を攪拌しながら反応混合物に加えた。ゴム状の固形物が析出した。上層の溶媒をデカントし、ゴム状の褐色物質を0から5℃に冷却し、水酸化ナトリウム水溶液(20%、5L)を攪拌しながらゆっくりと加えて中和した(pH8.0)。得られたスラリーを1時間、0から5℃の温度で攪拌した。析出物を濾過し、水で洗浄し(3×2L)、真空で乾燥させた。湿ったケーキをメタノール(10L)中に懸濁し、攪拌し、濾過し、ジイソプロピルエーテル(2L)で洗浄し、60℃のオーブンで14-16時間乾燥させて、表題の化合物(980g)を得た。
収率:87.9%、純度:HPLCで測定して98.1%。
【0082】
実施例4
スガマデクスナトリウムの製造
メカニカルスターラー、容器中の温度計ポケットを備えた4つ口丸底フラスコ(3L)に、窒素雰囲気下で、無水DMF(300ml)および3-メルカプトプロピオン酸(18.3g、0.172mol)を0-5℃で加え、次いで、ソーダアミド(20g、0.38mol)を加えた。反応混合物を同じ温度で1時間攪拌した。6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン(25g、0.017mol、実施例1において得られたもの)をゆっくりと加えた。反応混合物を90-95℃で16時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール(300ml)を加えた。混合物を攪拌し、析出した物質を濾過した。析出した物質を、メタノール(50ml)および水(50ml)の混合物中に溶解し、過剰量のメタノール(450ml)を加えて析出させた。固形物を濾過して、乾燥させた。収率:76%
乾燥した固形物を、アセトニトリルおよび水(80:20%)の混合物中のギ酸緩衝液を用いた、分取HPLC法によって精製し、次いで、凍結乾燥によってスガマデクスの酸を得て、これをさらに水酸化ナトリウムを用いてスガマデクスナトリウムに変換する。
【0083】
実施例5
スガマデクスナトリウムの製造
メカニカルスターラー、容器中の温度計ポケットを備えた4つ口丸底フラスコ(5L)中に、窒素雰囲気下で、無水DMF(1500ml)および3-メルカプトプロピオン酸(110g、1038mmol)を、0-5℃で加えて、次いで、ソーダアミド(81g、2077mmol)を加えた。混合物を同じ温度で1時間攪拌した。6-パーデオキシ-6-パー-クロロガンマシクロデキストリン(100g、69.25mmol、実施例1で得られたもの)をゆっくりと加えた。過剰のDMF(500ml)を混合物に加えた。混合物の温度を80-85℃に上昇させ、16時間維持した。反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール(1500ml)を加えた。混合物を攪拌し、析出した物質を濾過して除いた。析出した物質(湿ったケーキ)を、メタノール(800ml)および水(800ml)の混合物中に溶解した。炭(50g)を加えて、混合物を50-55℃で30分間攪拌した。溶液をセライトパッドを介して濾過した。メタノール(2500ml)を溶液に加えて、析出した固形物を濾過し、乾燥させて、表題の化合物(105g)を得た。収率:69.6%、純度:85.3%。
【0084】
実施例6
スガマデクスナトリウムの製造
スターラー、滴下漏斗、窒素導入口、およびポケット付き温度計を備えた、清潔で乾燥した10Lの4つ口フラスコに、窒素を用いた不活性雰囲気を維持しながら、水(100ml)中に溶解した水酸化ナトリウム(83g、2077mmol)の溶液を加えて、次いで、無水DMF(2L)を加えた。DMF(1L)中の3-メルカプトプロピオン酸(110g、1037mmol)の溶液を、0-5℃の温度を維持した窒素下で、ゆっくりと加えた。混合物をさらに1時間、この温度で攪拌した。DMF(1L)中の6-デオキシ-6-クロロガンマシクロデキストリン(100g、69mmol)の混合物を、5-10℃でゆっくりと加えた。得られた混合物を75-80℃で16-20時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を25-30℃に冷却し、メタノール(1.5L)を反応混合物に加えて、得られた析出物を20-25℃で攪拌し、濾過し、真空で乾燥させた。乾燥した固形物を水(1L)中に溶解させ、50℃で活性化炭素(50g、5%)で処理し、攪拌して、セライトで濾過した。濾液を60℃で攪拌し、過剰のメタノール(2.5L)をゆっくりと濾液に加えて、析出物を得た。析出した物質を真空で濾過して、白色の固形物として得て、メタノール(500ml)で洗浄し、オーブンで乾燥させて、純粋なスガマデクスナトリウム(90g)を得た。
収率:90g、純度:91.2%。
1H NMR (400 MHz, D2O): δ 5.09 (m, 8H); 3.98-3.94 (m, 8H); 3.88-3.83 (m, 8H); 3.58-3.52 (m, 16H); 3.07-3.01 (m, 8H); 2.92-2.87 (m, 8H); 2.78-2.74 (m, 16H); 2.34-2.47 (m, 16H) ppm.
13C NMR (100 MHz、D2O):δ 180.18, 100.60, 81.96, 72.14, 71.84, 70.72, 37.24, 32.83, 29.06 ppm. 質量: m/z (M-Na7+H6)+ C72H110NaO48S8の計算値: 2023.12; 実測値: 2023.39.
【0085】
実施例7
スガマデクス酸(式IVの化合物)の製造
スターラー、滴下漏斗、窒素導入口、およびポケット付き温度計を備えた、清潔な、乾燥した5Lの4つ口フラスコに、ジメチルホルムアミド(1500ml)を加え、次いで、水酸化カリウム(194.0g、3464mmol)を加えて、混合物を0-5℃で維持した。DMF(500ml)中の3-メルカプトプロピオン酸(186.35g、153.0ml、1756mmol)の溶液を、窒素下で、0-5℃の温度を維持しながら、30分かけて反応容器に加えた。得られた混合物をこの温度で60分間攪拌した。DMF(500ml)中の6-デオキシ-6-クロロガンマシクロデキストリン(100g、69.22mmol)の溶液をフラスコに加えた。得られた混合物を110-120℃で1.5-2時間加熱し、反応の進行をHPLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物の温度を40-50℃にして、メタノール(1000ml)を混合物に加えた。生じた析出物を20-25℃で1時間攪拌し、真空で濾過し、メタノール(500ml)で洗浄した。湿った固形物を、激しく攪拌しながら、水(2000ml)中に溶解させ、溶液を濃縮塩酸で酸性にし、白色の固体の析出物を得た。析出した固形物を濾過して、酢酸エチル(500ml)中に懸濁し、30分間攪拌して濾過した。固形物を乾燥させて、表題の化合物(75g)を得た。
収率:55%、純度:HPLCで測定して95.8%。
1H NMR (400 MHz、DMSO-d6): δ 5.94 (br. s, 16H), 3.82-3.73 (m, 8H), 3.63-3.54 (m, 8H), 3.43-3.32 (m, 16H), 3.08-3.02 (m, 8H), 2.89-2.81 (m, 8H), 2.78-2.72 (m, 16H), 2.55-2.43 (m, 16H) ppm.
13C NMR (100 MHz、DMSO-d6):δ 173.00, 102.01, 83.94, 72.45, 72.33, 71.36, 34.53, 33.08, 27.87 ppm.
質量: m/z (M-H2+K)+ C72H110O48S8Kの計算値: 2039.24; 観測値: 2039.26.
【0086】
実施例8
スガマデクスナトリウムの製造
スターラー、滴下漏斗、窒素導入口、およびポケット付き温度計を備えた、清潔な、乾燥した3Lの4つ口フラスコに、実施例4で得られた化合物(75g)を、水(100ml)およびメタノール(100ml)中の水酸化ナトリウム(37.5g、0.937mol)溶液中に溶解した。生じた混合物のpHを8-10の間に維持した。この混合物に、メタノール(1.5L)をゆっくりと室温で加え、混合物をさらに30分間攪拌した。析出した白色の固形物を、真空で濾過して、メタノール(500ml)で完全に洗浄した。固形物を真空下、50℃で24時間乾燥させて、スガマデクスナトリウム(79g)を得た。収率:96.9%、純度:HPLCで測定して95.5%。
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