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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】鋼管杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20230426BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20230426BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D5/56
E02D7/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021073159
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167394
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2021-04-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513017799
【氏名又は名称】有限会社勝実建設
(73)【特許権者】
【識別番号】500121883
【氏名又は名称】株式会社第一工業
(73)【特許権者】
【識別番号】500558780
【氏名又は名称】マナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518345918
【氏名又は名称】株式会社明建
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】片岡 正史
(72)【発明者】
【氏名】河邊 勝実
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和幸
(72)【発明者】
【氏名】野上 昌範
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-282161(JP,A)
【文献】特開2019-044475(JP,A)
【文献】特開2006-009354(JP,A)
【文献】特開2002-309577(JP,A)
【文献】特開2000-034725(JP,A)
【文献】特開2005-133289(JP,A)
【文献】特開2018-066246(JP,A)
【文献】特開2005-155284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0258602(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭本体の下端を塞ぐ前記鋼管杭本体よりも大径の端板を備え、回転圧入工法により地盤に設置される鋼管杭において、
前記端板は、中央に形成された排土口と、周縁部に前記鋼管杭本体を挟んで対称配置された一対の切り欠き部とを備え、該両切り欠き部の周方向端縁に前記端板とは別個に前記端板と同じ曲率半径の円弧板状に形成された前記地盤の障害となる個所を掘削可能な高剛性の掘削用ビットが、周方向基端が前記切り欠き部の周方向端縁に固定され、先端部を同一周方向の斜め下側に向けて支持されていることを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
前記端板は、前記排土口を挟んで対称配置に支持された一対の掘削刃を備えている請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
前記端板は、前記掘削刃と周方向に間隔をおいて一対の排土用チップを対称配置に備えている請求項2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
前記掘削用ビットは、基端が前記切り欠き部の周方向端縁に溶接されている請求項1~3の何れか一に記載の鋼管杭。
【請求項5】
前記掘削用ビットは、前記端板の下面に固定された補強部材に側部が支持されている請求項4に記載の鋼管杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂回転貫入工法に使用される鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭の下端に円形の拡径円盤を溶接で固定し、鋼管杭を回転させつつ地盤に貫入する鋼管杭の回転貫入工法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種の鋼管杭には、拡径円盤の周縁部に沿って一端側をそれぞれ下方および上方に向けて立ち上げた切起こし羽根部を設けるとともに、切起こし羽根部を切起こしたことによって拡径円盤の周縁部に切り欠き部が形成されている。
【0004】
また、この鋼管杭は、拡径円盤の下面中央に掘削ビットを備え、地盤に対し鋼管を回転させつつ下向きに圧入することによって、上下逆向きに傾斜した切起こし羽根部が推進力を発揮しつつ、下向きの切起こし羽根部と掘削ビットによって掘削した土砂を切り欠き部より上方に移動させ、圧密させることによって、排土せずに鋼管杭を地盤に貫入できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-281205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、地中に礫やその他の地中障害(以下、礫等という)が存在する場合、排土開口部へ礫等が絡み掘進が難航するという問題があった。
【0007】
また、従来の技術では、拡径円盤の周縁部の一方に掘削用ビットを備える構造であるため、芯だしを正確に行う必要があり、その分、準備に時間を要するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、礫層等でも効率よく掘削することができ、製作が容易な鋼管杭の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、鋼管杭本体の下端を塞ぐ前記鋼管杭本体よりも大径の端板を備え、回転圧入工法により地盤に設置される鋼管杭において、前記端板は、中央に形成された排土口と、周縁部に前記鋼管杭本体を挟んで対称配置された一対の切り欠き部とを備え、該両切り欠き部の周方向端縁に前記端板とは別個に前記端板と同じ曲率半径の円弧板状に形成された前記地盤の障害となる個所を掘削可能な高剛性の掘削用ビットが、周方向基端が前記切り欠き部の周方向端縁に固定され、先端部を同一周方向の斜め下側に向けて支持されていることにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記端板は、前記排土口を挟んで対称配置に支持された一対の掘削刃を備えていることにある。
【0011】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記端板は、前記掘削刃と周方向に間隔をおいて一対の排土用チップを対称配置に備えていることにある。
【0012】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1~3の何れか一の構成に加え、前記掘削用ビットは、基端が前記切り欠き部の周方向端縁に溶接されていることにある。
【0013】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記掘削用ビットは、前記端板の下面に固定された補強部材に側部が支持されていることにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼管杭は、請求項1に記載の構成を具備することによって、礫層等の硬い地盤においても掘削効率が損なわれず、少ない回転数で効率よく掘削することができる。
【0015】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、効率よく地盤を掘削することができる。
【0016】
また、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、掘削した土砂を端板の外側に押しやり、切り欠き部を通して効率よく土砂を上方に移動させることができる。
【0017】
さらに、請求項4乃至5の構成を具備することによって、掘削用ビットが強固に支持され、礫層等の堅固な地盤に対応する場合にも掘削用ビットの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る鋼管杭の実施態様の一例を示す正面図である。
図2】同上の鋼管杭の下部を示す部分拡大正面図である。
図3】同上の部分拡大側面図である。
図4】同上の部分拡大平面図である。
図5】同上の部分拡大底面図である。
図6】同上の掘削用ビット部分を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る鋼管杭の実施態様を図1図6に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は鋼管杭である。
【0020】
この鋼管杭1は、図1に示すように、鋼管からなる鋼管杭本体2と、鋼管杭本体2の下端を塞ぐ端板3とを備え、鋼管杭1を回転させつつ地盤4に貫入するようになっている。
【0021】
端板3は、一定の厚みを有する鋼管杭本体2より大径の円盤状に形成され、鋼管杭本体2の下端に溶接等によって同軸配置に固定されている。
【0022】
この端板3には、中央に形成された排土口5と、周縁部に対称配置された一対の切り欠き部6,6とを備えている。
【0023】
また、この端板3には、排土口5を挟んで対称配置に支持された一対の掘削刃7,7と、掘削刃7,7と間隔をおいて対称配置された一対の排土用チップ8,8と、両切り欠き部6,6の周方向端縁に同一周方向の斜め下側に向けて支持された掘削用ビット9,9とを備えている。
【0024】
排土口5は、鋼管杭本体2の内径よりも小さい丸孔状に形成され、端板3の厚み方向に貫通し鋼管杭本体2と連通している。
【0025】
切り欠き部6,6は、端板3の周縁部に沿って上下及び外周側が開口した扇形凹状に形成され、両切り欠き部6,6の回転方向後方側の周方向端縁に掘削用ビット9,9が同一周方向の斜め下側に向けて支持されている。
【0026】
掘削用ビット9,9は、端板3の半径と略同じ曲率半径の円弧板状に形成され、基端が切り欠き部6,6の周方向端縁に溶接9aによって所定の角度で固定され、螺旋状を成し、且つ、先端側が端板3の下面より螺旋状斜め下向きに突出している。
【0027】
尚、この掘削用ビット9,9は、端板3とは別個に鋳造等によって一定の厚みを有する円弧板状に形成され、高い剛性を備えている。
【0028】
この掘削用ビット9,9には、周方向の先端部に刃部9bが一体に形成され、鋼管杭本体2の回転に伴い、刃部9bで土砂を掘削するとともに、推進力が得られるようになっている。
【0029】
また、掘削用ビット9,9は、端板3の下面に固定された補強部材10に側部が支持され、補強部材10を介して端板3に強固に固定されている。
【0030】
補強部材10は、円弧状の斜面10aを有するブロック状に形成され、端板3の下面に切り欠き部6,6の内側縁部に沿って溶接等によって固定され、その側面に掘削用ビット9,9の先端部側面が溶接等によって固定されている。
【0031】
尚、補強部材10は、斜面10aが掘削用ビット9,9の刃部9bの向きと周方向の反対側に向けて端板3に固定されている。
【0032】
掘削刃7,7は、先端のエッジ7aより傾斜した刃を有し、エッジ7a側を外側に向けて直径方向に対称配置に固定されている。
【0033】
排土用チップ8,8は、下面部に傾斜部8aを有する平板状に形成され、傾斜部8aは、外側が端板3下面からの距離が低くなるように形成されている。
【0034】
各排土用チップ8,8は、掘削刃7,7に対し、掘削用ビット9,9の刃部9bの向きと同じ側、即ち、鋼管杭1の回転方向と反対側に所定の間隔をおいて配置されている。
【0035】
尚、排土用チップ8の態様は、上述の如き実施例に限定されず、例えば、排土用チップ8を角棒状に形成してもよい。
【0036】
このように構成された鋼管杭1は、鋼管杭本体2及び端板3を所定の方向、即ち、掘削用ビット9,9の刃部側を回転方向前方として回転させることにより、螺旋状を成す掘削用ビット9,9によって推進力を得て、掘削用ビット9,9及び掘削刃7,7によって地盤4を掘削し、掘削孔4aを形成しつつ地盤4下方に向けて圧入される。
【0037】
その際、掘削刃7,7及び掘削用ビット9,9によって掘削された土砂11aは、掘削刃7,7周辺の土砂が排土口5を通して鋼管杭本体2内に導入されるとともに、その他の部分の土砂11bが排土用チップ8,8によって掘削用ビット9,9側に押しやられ、螺旋状を成す掘削用ビット9,9の上面に誘導され、切り欠き部6,6を通して鋼管杭本体2の外周側方、即ち掘削孔4a内に強制的に排出させて圧密され、無排出土、低振動、低騒音で鋼管杭1を地盤4に埋設することができる。
【0038】
また、地盤4の途中に礫層等の障害となる箇所が存在している場合においても、切り欠き部6,6の端縁に強固な掘削用ビット9,9を支持させた構造であるので、掘削用ビット9,9によって礫層等を少ない回転数で効率よく掘削できるようになっている。
【0039】
また、掘削用ビット9は、補強部材10によって強固に支持されているので、堅い礫等に対して好適に刃が入り、破損を防止できるようになっている。
【0040】
さらに、このように構成された鋼管杭1は、掘削用ビット9,9が直径方向に対称配置されているので、芯だしが容易で容易に製作することができる。
【0041】
尚、上述の実施例では、端板3の下面に排土用チップ8,8を設けた場合について説明したが、必要に応じて排土用チップ8,8を省略してもよい。
【0042】
また、上述の実施例では、端板3の下面に掘削刃7,7を設けた場合について説明したが、必要に応じて掘削刃7,7を省略してもよい。
【0043】
また、上述の実施例では、端板3を鋼管杭本体2に直接固定した場合について説明したが、端板をアタッチメント化してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 鋼管杭
2 鋼管杭本体
3 端板
4 地盤
5 排土口
6 切り欠き部
7 掘削刃
8 排土用チップ
9 掘削用ビット
10 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6