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特許7269280心臓ペースメーカー及び心臓ペーシングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】心臓ペースメーカー及び心臓ペーシングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20230426BHJP
   A61N 1/372 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61N1/362
A61N1/372
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021086943
(22)【出願日】2021-05-24
(62)【分割の表示】P 2019047839の分割
【原出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2021130022
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】107111438
(32)【優先日】2018-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】107132242
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518429414
【氏名又は名称】長庚醫療財團法人林口長庚紀念醫院
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲チュー▼ 柏顯
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0018413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0234407(US,A1)
【文献】特表2017-525415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0283585(US,A1)
【文献】特表2017-505200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310723(US,A1)
【文献】国際公開第2017/178851(WO,A2)
【文献】特表2016-501116(JP,A)
【文献】特表2005-508208(JP,A)
【文献】特開2019-181177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36- 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓内において、心房及び該心房から突出する心耳の間に設置することができる心臓ペースメーカーであって、
前記心房及び前記心耳を連通している連通口を閉塞することができる閉塞手段と、
前記閉塞手段に設けられていて、心臓ペースを調整することができる調整手段と、を備え、
前記調整手段は、
正常な心臓ペースに対応する所定の心拍数を記憶することができる記憶モジュールと、
心臓ペースを感知することができる感知モジュールと、
前記記憶モジュールと前記感知モジュールとに電気的に接続されていると共に、前記感知モジュールが感知した実際の心臓ペースを前記記憶モジュールが記憶した前記所定の心拍数と比較分析することができる分析モジュールと、
前記分析モジュールに電気的に接続されていると共に、前記心房の内周壁に接触していて心臓ペースを調整することができる駆動モジュールと、を具えており、
記分析モジュールは、前記感知モジュールが感知した心臓ペースと前記所定の心拍数との差が閾値を超えると、前記駆動モジュールを駆動させ、心臓ペースが前記所定の心拍数と一致するように前記心房に刺激を与えることができ、
前記閉塞手段は、
前記心耳の内において前記心耳を閉塞するように設けることができる第1の閉塞ユニットと、
前記第1の閉塞ユニットに連接されていると共に、前記調整手段が設けられていて、前記心房の内周壁に前記心房と前記心耳との間にある前記連通口を閉塞するよう設けられることにより、前記調整手段が前記心房の内周壁に接触するように構成された第2の閉塞ユニットと、を具えている、
ことを特徴とする心臓ペースメーカー。
【請求項2】
前記第1の閉塞ユニットは、
弾性を具えた本体部と、前記本体部を前記心耳の内壁面に引っ掛けることができるように前記本体部の周面部に設けられている複数のフック部と、を具えている
ことを特徴とする請求項に記載の心臓ペースメーカー。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記記憶モジュールに電気的に接続されていると共に、前記記憶モジュールに記憶された前記所定の心拍数を更新するための外部指令を受信することができる送受信モジュールを更に具えている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の心臓ペースメーカー。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記記憶モジュール及び前記分析モジュールに電力を供給することができるように設けられている電源モジュールを更に具えている
ことを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の心臓ペースメーカー。
【請求項5】
前記心臓ペースメーカーは、左心房及び左心房から突出する左心耳の間に設置するために構成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の心臓ペースメーカー。
【請求項6】
前記心臓ペースメーカーは、右心房及び右心房から突出する右心耳の間に設置するために構成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の心臓ペースメーカー。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の心臓ペースメーカーと、心臓ペーシング装置と、制御装置とを具え、患者の心臓ペースを調整する心臓ペーシングシステムであって、
前記心臓ペースメーカーは、心臓内において左心房及び左心房から突出する左心耳の間に設置されており、
前記心臓ペーシング装置は、右心室の内に設置され、心臓ペースを感知して心臓ペースの調整を実行することができ、
前記制御装置は、前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置と通信可能であり、前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つにより測定された心臓ペースに従って、前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つを駆動することができ、
それにより、前記心臓ペースメーカーに対応する左心房、又は、前記心臓ペーシング装置に対応する右心室、又は、前記左心房と前記右心室との両方にも対して心臓ペースの調整を実行することができる
ことを特徴とする心臓ペーシングシステム。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の心臓ペースメーカーと、心臓ペーシング装置と、制御装置とを具え、患者の心臓ペースを調整する心臓ペーシングシステムであって、
前記心臓ペースメーカーは、心臓内において右心房及び右心房から突出する右心耳の間に設置されており、
前記心臓ペーシング装置は、右心室の内に設置され、心臓ペースを感知して心臓ペースの調整を実行することができ、
前記制御装置は、前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置と通信可能であり、前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つにより測定された心臓ペースに従って、前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つを駆動することができ、
それにより、前記心臓ペースメーカーに対応する右心房、又は、前記心臓ペーシング装置に対応する右心室、又は、前記右心房と前記右心室との両方にも対して心臓ペースの調整を実行することができる
ことを特徴とする心臓ペーシングシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、
無線技術によって前記心臓ペースメーカーと通信し、
ワイヤー及び無線技術のいずれか1つによって前記心臓ペーシング装置と通信することができる
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載の心臓ペーシングシステム。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記心臓ペースメーカー及び前記心臓ペーシング装置のいずれか1つと一体化され、
また、前記心臓ペースメーカーと、前記心臓ペーシング装置とが無線通信により互いに通信し、それぞれ互いに心臓ペースの調整を制御することができる
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載の心臓ペーシングシステム。
【請求項11】
前記心臓ペーシング装置は、パルス生成器と、前記パルス生成器と電気的に接続されていると共に、右心室と接触する電極と、を具え、前記パルス生成器が前記電極を経由して心臓ペースを調整することができる
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載の心臓ペーシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心臓ペースメーカー及び心臓ペーシングシステムに関し、特には心房と該心房から突出する心耳の間に設置することができる心臓ペースメーカー、及び、該心臓ペースメーカーを利用する心臓ペーシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心拍数はおおよそ1分間で70回程度である。しかし、心拍数は、加齢、内分泌障害、冠動脈心疾患などの原因で下がる恐れがある。重度の場合には、心拍数が1分間で40回を下回り、或いは、3~6秒間の心停止が起こる可能性がある。そうなると、血液が人体の各部位に十分な酸素を供給することができなくなってしまうことで、眩暈、呼吸促迫、疲労、足浮腫、卒倒といった症状を引き起こしやすい。
【0003】
医師は、一般的には、上記のような症状を有する患者に対して、適切な心臓ペースを調整することができる心臓ペースメーカー(即ち、人工ペースメーカー)を人体に埋設することをアドバイスする。
【0004】
従来の人工ペースメーカーは、内に電池及び電気回路を具えた金属製ボックスのような電子医療装置であるパルス発生装置と、心臓と接触する電極と、両端がそれぞれパルス発生装置と電極とに電気的に接続されているリードと、から構成されているものである。
【0005】
以下、従来の人工ペースメーカーの人体への設置及び操作について説明する。まず、手術により患者の鎖骨下において、パルス発生装置を設置する。次に、リードを用いて静脈系を通して電極を心房又は心室の内に進入させる。そして、電極を心房又は心室の内壁面と接触させる。
【0006】
パルス発生装置は、従来の人工ペースメーカーを装着した患者の心臓の不整脈を検出しながら、電極がリードを経由して心臓に対して電気的なパルスを発射し、心筋に刺激を与えることによって心臓ペーシングを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国実用新案第2451139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の人工ペースメーカーは、設置の自由度、及び機能の多様性において尚も改善の余地がある。
【0009】
したがって、本発明は、設置方式についても使用についても更に改善され、且つ、心臓ペーシングだけでなく、他の機能をも具えている心臓ペースメーカー及び心臓ペーシングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は以下の心臓ペースメーカーを提供する。
【0011】
即ち、心臓内において、心房と該心房から突出する心耳の間に設置することができる心臓ペースメーカーであって、
心房と心耳を連通している連通口を閉塞することができる閉塞手段と、
閉塞手段に設けられていて、心臓ペースを調整することができる調整手段と、を備えている心臓ペースメーカーを提供する。
【0012】
また、本発明は、上記の心臓ペースメーカーと、心臓ペーシング装置と、制御装置とを具え、患者の心臓ペースを調整する心臓ペーシングシステムであって、
心臓ペースメーカーは、心臓内において左心房と左心房から突出する左心耳の間に設置されており、
心臓ペーシング装置は、右心室の内に設置し、心臓ペースを感知して心臓ペースの調整を実行することができ、
制御装置は、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置と通信可能であり、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つにより測定された心臓ペースに従って、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つを駆動することができ、
それにより、心臓ペースメーカーに対応する左心房、又は、心臓ペーシング装置に対応する右心室、又は、左心房と右心室との両方にも対して心臓ペースの調整を実行することができる心臓ペーシングシステムをも提供する。
【0013】
また、本発明は、上記の心臓ペースメーカーと、心臓ペーシング装置と、制御装置とを具え、患者の心臓ペースを調整する心臓ペーシングシステムであって、
心臓ペースメーカーは、心臓内において右心房と右心房から突出する右心耳の間に設置されており、
心臓ペーシング装置は、右心室の内に設置し、心臓ペースを感知して心臓ペースの調整を実行することができ、
制御装置は、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置と通信可能であり、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つにより測定された心臓ペースに従って、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置の少なくともいずれか1つを駆動することができ、
それにより、心臓ペースメーカーに対応する右心房、又は、心臓ペーシング装置に対応する右心室、又は、右心房と前記右心室との両方にも対して心臓ペースの調整を実行することができる心臓ペーシングシステムをも提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記手段によれば、本発明の心臓ペースメーカーは、心臓内において、左心房と左心房から突出する左心耳の間、或いは、右心房と右心房から突出する右心耳の間に設置することによって、心室の内に設置される従来の人工ペースメーカーにより引き起こされる異物感を解消することができ、且つ、心房と心耳を連通している連通口を閉塞することで、心房から心耳に血液が逆流することを防止することができる。
【0015】
また、本発明の心臓ペーシングシステムは、心房と該心房から突出する心耳の間に設置する心臓ペースメーカー、及び、右心室の内に設置された心臓ペーシング装置に対して制御装置により個別または同時に駆動することができることで、患者の症状に応じて、心房のみ、又は、心室のみ、又は、心房及び心室の両方に対して心臓ペーシングを行うことを実現させることができる。
【0016】
そのため、本発明に係る心臓ペースメーカー、及び、該心臓ペースメーカーを利用する心臓ペーシングシステムは、例えば、洞不全症候群、徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、心房細動といった症状に対して治療手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1の実施形態の心臓ペースメーカーが左心房と左心耳との間に設置された態様が示される模式図である。
図2】該第1の実施形態の心臓ペースメーカーが右心房と右心耳の間に設置された態様が示される模式図である。
図3】該第1の実施形態の心臓ペースメーカーの構成を説明するブロック図である。
図4】本発明に係る心臓ペーシングシステムの一実施形態において、心臓ペースメーカーが左心房と左心耳の間に設置され、且つ、心臓ペーシング装置が右心室の内に設置された態様が示される模式図である。
図5】上記実施形態において、心臓ペースメーカーが右心房と右心耳の間に設置され、且つ、心臓ペーシング装置が右心室の内に設置された態様が示される模式図である。
図6】本発明に係る心臓ペーシングシステムにおいて、心臓ペースメーカーと、心臓ペーシング装置と、制御装置とを具えていることを説明するブロック図である。
図7】本発明に係る第2の実施形態の心臓ペースメーカーが左心房と左心耳との間に設置された態様が示される模式図である。
図8】該第2の実施形態の心臓ペースメーカーが右心房と右心耳の間に設置された態様が示される模式図である。
図9】該第2の実施形態の心臓ペースメーカーの構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシングシステム100について実施例を挙げて図面を参照して説明する。
【0019】
(心臓ペースメーカー10)
図1図3を参照して本発明に係る心臓ペースメーカー10の第1の実施形態を説明する。ここで、図1は本発明に係る第1の実施形態の心臓ペースメーカー10が左心房4と左心耳5との間に設置された態様が示される模式図であり、図2は該第1の実施形態の心臓ペースメーカー10が右心房7と右心耳8の間に設置された態様が示される模式図であり、図3は該第1の実施形態の心臓ペースメーカー10の構成を説明するブロック図である。
【0020】
図1及び図2に示されるように、本発明に係る心臓ペースメーカー10は、心臓内において、心房と該心房から突出する心耳の間(即ち、左心房4と左心房4から突出する左心耳5の間、又は、右心房7と右心房7から突出する右心耳8の間)に設置することができ、且つ、閉塞手段1と、調整手段2と、を備えているものである。
【0021】
閉塞手段1は、左心房4と左心耳5の間、又は、右心房7と右心耳8の間を連通している連通口52を閉塞することができる。
【0022】
また、該閉塞手段1は、図1及び図2に示されるように、心耳の内において心耳を閉塞するように設けることができる第1の閉塞ユニット11と、第1の閉塞ユニット11に連接されていると共に、調整手段2が設けられていて、心房の内周壁に心房と心耳との間にある連通口52を閉塞するよう設けられることにより、調整手段2を心房の内周壁と接触するようにすることができる第2の閉塞ユニット12と、を具えている。
【0023】
なお、本実施形態では、閉塞手段1は、セント・ジュード・メディカル株式会社(St. Jude Medical, Inc.)製の左心耳閉鎖器(LAA閉鎖器)である。勿論、ここで上記の左心耳閉鎖器に限定されず、上記の閉塞手段1と共通している構造及び機能を具えた心耳閉鎖器を採用することもできる。
【0024】
また、該第1の閉塞ユニット11は、図1及び図2に示されるように、弾性を具えた本体部111と、本体部111を心耳の内壁面51に引っ掛けることができるように本体部111の周面部に設けられている複数のフック部112と、を具えている。
【0025】
本実施形態では、本体部111は、ニッケル-チタン(nickel-titanium、Nitinol)合金線材、或いは、生体適合性ポリマー(biocompatible polymer)線材により編まれた自己膨張可能な構造であり、且つ、外側がポリマーフィルムで覆われている。よって、図1及び図2に示されるように、血液が該本体部111により右心房7から右心耳8に、又は、左心房4から左心耳5に流入することを遮断することができることで、血栓の発生を防止することができる。また、本体部111の表面に抗凝固剤(例えば、ヘパリン)、或いは、抗血栓性組成物を塗布することによって、本体部111が抗血栓の特性を有するようにすることもできる。
【0026】
該第2の閉塞ユニット12は、図1及び図2に示されるように、心耳の延伸方向に垂直な仮想平面上の投影面積が第1の閉塞ユニット11の本体部111の投影面積より大きく形成されている。
【0027】
調整手段2は、図1及び図2に示されるように、一部(後述する駆動モジュール126)が心房の内周壁に接触して心臓ペースを調整することができるように閉塞手段1に設けられていて、且つ、制御モジュール120と、駆動モジュール126と、を具えている。
【0028】
該制御モジュール120は、本発明に係る心臓ペースメーカー10を装着した患者のリアルタイムの生体データ(例えば、心拍数、血圧など)を連続的に監視することができ、心臓の異常が発生する際に、心臓ペースを調整することができるように設けられている上、図3に示されるように、記憶モジュール123と、感知モジュール124と、分析モジュール125と、送受信モジュール127と、電源モジュール128と、を具えている。
【0029】
記憶モジュール123は、例えば、不揮発性メモリセルであることができ、正常な心臓ペースに対応する所定の心拍数を記憶することができる。
【0030】
感知モジュール124は、心臓ペースメーカー10を装着した患者の心臓ペースを感知することができる。
【0031】
分析モジュール125は、マイクロコントローラユニット(microcontroller unit、略称:MCU)であることができ、且つ、記憶モジュール123と感知モジュール124とに電気的に接続されていると共に、感知モジュール124が感知した実際の心臓ペースを記憶モジュール123が記憶した所定の心拍数と比較分析することができる。
【0032】
送受信モジュール127は、記憶モジュール123に電気的に接続されていると共に、外部指令(例えば、正常な心拍数信号)を受信してから、該外部指令に従って記憶モジュール123に記憶された所定の心拍数を更新することができる。また、該外部指令は、医者等の判断に従って、例えば、携帯型通信装置、コンピューター(図示せず)を用いて送信されたものである。
【0033】
即ち、本実施形態では、該送受信モジュール127は、無線技術(例えば、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)など)を介して、外部指令を受信したり、記憶モジュール123に記憶されているデータを外部に送信したりすることができるように構成されている。
【0034】
電源モジュール128は、電池又はコンデンサであることができ、且つ、記憶モジュール123、感知モジュール124、分析モジュール125、送受信モジュール127等に電力を供給することができるように設けられている。
【0035】
該駆動モジュール126は、図1及び図2に示されるように、第2の閉塞ユニット12の外周縁に突出された円盤状または柱状の電極であり、且つ、分析モジュール125に電気的に接続されていると共に、心房の内周壁に接触していて、心房に電気的刺激を与えることで心臓ペースを調整することができる。
【0036】
また、分析モジュール125は、感知モジュール124が感知した心臓ペースと所定の心拍数との差が閾値を超えると、駆動モジュール126を駆動させ、心臓ペースが所定の心拍数と一致するように心房に刺激を与える。
【0037】
以下、患者の心臓に本発明に係る心臓ペースメーカー10を装着することについて説明する。
【0038】
まず、本発明に係る心臓ペースメーカー10をカテーテル(図示せず)に搭載する。
【0039】
次に、本発明に係る心臓ペースメーカー10を具えたカテーテルを利用して、心臓ペースメーカー10を患者の心臓において心房と該心房から突出する心耳の間を連通している連通口52に近い箇所まで輸送する。
【0040】
そして、第1の閉塞ユニット11を心耳の内に押し込むと共に、本体部111が自己膨張の特性により心耳を閉塞し、本体部111の周囲に設けられた複数のフック部112により第1の閉塞ユニット11を心耳の内壁面51に挿入固定することに加え、第2の閉塞ユニット12は、心房と心耳との間にある連通口52を閉塞するように心房の内周壁に設けられる。
【0041】
即ち、第1の閉塞ユニット11は、弾性を具えた本体部111から心耳の内壁に与える圧力と、複数のフック部112による保持力との両方によって心耳の内にしっかりと固定される。さらに、第2の閉塞ユニット12は、大部分の心耳に流れる血流を遮断することができる。それにより、心耳の内に血液の凝固が発生しにくくなる。
【0042】
(心臓ペーシングシステム100)
図4図6を参照して本発明に係る心臓ペーシングシステム100の一実施形態を説明する。ここで、図4は上記第1の実施形態における心臓ペースメーカー10が左心房4と左心耳5の間に設置され、且つ、心臓ペーシング装置20が右心室6の内に設置される態様が示される模式図であり、図5は上記実施形態において、心臓ペースメーカー10が右心房7と右心耳8の間に設置され、且つ、心臓ペーシング装置20が右心室6の内に設置された態様が示される模式図であり、また、図6は本発明に係る心臓ペーシングシステム100において、心臓ペースメーカー10と、心臓ペーシング装置20と、制御装置30と、を具えていることを説明するブロック図である。
【0043】
図4及び図5に示されるように、本発明に係る心臓ペーシングシステム100は、上記に記載された心臓ペースメーカー10と、心臓ペーシング装置20と、制御装置30と、を具え、患者の心臓ペースを調整する。
【0044】
本実施形態では、心臓ペースメーカー10は、図4に示されるように、心臓内における左心房4と左心房4から突出する左心耳5の間に、左心房4から左心耳5への血流を遮断して血栓を防止することができるように、且つ左心房4に対して心臓ペーシングを行うことができるように設置されている。
【0045】
心臓ペーシング装置20は、図4に示されるように、右心室6の内に設置し、心臓ペースを感知して心臓ペースの調整を実行することができる。また、該心臓ペーシング装置20は、パルス生成器21と、パルス生成器21と電気的に接続されていると共に、右心室6と接触する電極22と、を具えている。本実施形態では、該心臓ペーシング装置20は、既存の人工ペースメーカーを採用している。
【0046】
また、パルス生成器21は、右心室6の正常な心臓ペースに対応する所定の心拍数を記憶することができることに加え、心臓ペーシング装置20を装着した患者の右心室6の心臓ペースを感知することができる。そして、パルス生成器21により該心臓ペース及び該所定の心拍数との差が閾値を超えると判定されると、電極22を経由して右心室6に対してパルスを発して刺激を与えて、右心室6の心臓ペースを調整することができる(VVIモード)。
【0047】
即ち、心臓ペーシング装置20のパルス生成器21は、心臓ペースメーカー10における調整手段2の記憶モジュール123と同様に正常な心臓ペースに対応する所定の心拍数を記憶する機能を具えている。
【0048】
制御装置30は、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20と通信可能であり、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20の少なくともいずれか1つにより測定された心臓ペースに従って、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20の少なくともいずれか1つを駆動することができる。それにより、心臓ペースメーカー10に対応する左心房4、又は、心臓ペーシング装置20に対応する右心室6、又は、左心房4と右心室6との両方に対して心臓ペースの調整を実行することができる。
【0049】
また、該制御装置30は、一般的には、患者の鎖骨下に設置され、且つ、図6に示されるように、無線技術によって心臓ペースメーカー10と通信し、ワイヤー及び無線技術のいずれか1つによって心臓ペーシング装置20と通信することができる。
【0050】
さらに、該制御装置30は、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20のいずれか1つと一体化されてもよく、そして心臓ペースメーカー10と心臓ペーシング装置20とが無線通信により互いに通信し、それぞれ互いに心臓ペースの調整を制御することができるように構成することもできる。
【0051】
なお、本発明に係る心臓ペーシングシステム100において、該制御装置30は、図4に示されるように、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20を駆動することができることによって、左心房4に対しても右心室6に対しても心臓ペースを調整させることができる(DDDモード)。
【0052】
より具体的に言うと、本発明に係る心臓ペーシングシステム100を使用している患者の心臓ペーシング装置20のパルス生成器21により感知された心臓ペースが、心臓ペーシング装置20に記憶された所定の心拍数より遅くなって、右心室6の伝導障害が発生してしまうと、該制御装置30は、パルス生成器21により感知されたP波に従って、電極22により右心室6に対して心臓ペーシングを行う(VDDモード)。
【0053】
さらに、該制御装置30は、心臓ペースメーカー10の調整手段2における感知モジュール124により感知された心臓ペースによって、房室伝導は正常であるが左心房4の心拍数が正常より遅くなっていると判断した場合、該制御装置30が調整手段2の記憶モジュール123に記憶された所定の心拍数に従って、駆動モジュール126を経由して左心房4に対して心臓ペーシングを行って、そして右心室6まで伝導する(AAIモード)。
【0054】
そのため、心臓ペースメーカー10の調整手段2で心臓ペーシングを行うことによって、左心房4の収縮数及び右心室6の収縮数を同調させることができる。
【0055】
また、本発明に係る心臓ペーシングシステム100における他の実施形態では、心臓ペースメーカー10は、図5に示されるように、心臓内において右心房7と右心房7から突出する右心耳8の間に、右心房7から右心耳8への血流を遮断することができ、血栓を防止することができるように設置されていると共に、右心房7に対して心臓ペーシングを行うことができる。
【0056】
即ち、右心房7と右心耳8の間に設置された心臓ペースメーカー10は、図5に示されるように、右心室6の内に設置され、心臓ペースを感知して心臓ペースの調整を実行することができる心臓ペーシング装置20と共に、本発明に係る心臓ペーシングシステム100を構成することができる。
【0057】
ここで、制御装置30は、同じく心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20と通信可能であり、そして心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20の少なくともいずれか1つにより測定された心臓ペースに従って、心臓ペースメーカー10、及び心臓ペーシング装置20の少なくともいずれか1つを駆動することができる。それにより、心臓ペースメーカー10に対応する右心房7、又は、心臓ペーシング装置20に対応する右心室6、又は、右心房7と右心室6との両方に対して心臓ペースの調整を実行することができる。
【0058】
また、該制御装置30は、一般的には、患者の鎖骨下に設置され、且つ、図6に示されるように、無線技術によって心臓ペースメーカー10と通信し、ワイヤー及び無線技術のいずれか1つによって心臓ペーシング装置20と通信することができる。
【0059】
さらに、該制御装置30は、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20のいずれか1つと一体化されてもよく、そして心臓ペースメーカー10と心臓ペーシング装置20とが無線通信により互いに通信し、それぞれ互いに心臓ペースの調整を制御することができるように構成することもできる。
【0060】
なお、本発明に係る心臓ペーシングシステム100において、該制御装置30は、図5及び図6に示されるように、心臓ペースメーカー10及び心臓ペーシング装置20を駆動することができることによって、右心房7に対しても右心室6に対しても心臓ペースを調整することができる(DDDモード)。
【0061】
より具体的に言うと、本発明に係る心臓ペーシングシステム100を使用している患者の心臓ペーシング装置20のパルス生成器21により感知された心臓ペースが、心臓ペーシング装置20に記憶された所定の心拍数より遅くなって、右心室6の伝導障害が発生してしまうと、該制御装置30は、パルス生成器21により感知されたP波に従って、電極22により右心室6に対して心臓ペーシングを行う(VDDモード)。
【0062】
さらに、該制御装置30は、心臓ペースメーカー10の調整手段2における感知モジュール124により感知された心臓ペースによって、房室伝導は正常であるが右心房7の心拍数が正常より遅くなっていると判断した場合、該制御装置30が調整手段2の記憶モジュール123に記憶された所定の心拍数に従って、駆動モジュール126により右心房7に対して心臓ペーシングを行って、そして右心室6まで伝導する(AAIモード)。
【0063】
そのため、心臓ペースメーカー10の調整手段2で心臓ペーシングを行うことによって、右心房7の収縮数及び右心室6の収縮数を同調させることができる。
【0064】
図7図9を参照して本発明に係る心臓ペースメーカー10の第2の実施形態を説明する。ここで、図7は本発明に係る第2の実施形態の心臓ペースメーカー10が左心房4と左心耳5との間に設置された態様が示される模式図であり、図8は該第2の実施形態の心臓ペースメーカー10が右心房7と右心耳8の間に設置された態様が示される模式図であり、図9は該第2の実施形態の心臓ペースメーカー10の構成を説明するブロック図である。
【0065】
図7及び図8に示されるように、本発明に係る第2の実施形態の心臓ペースメーカー10は、第1の実施形態の心臓ペースメーカー10と同じく心臓内において、心房と該心房から突出する心耳の間(即ち、左心房4と左心耳5の間、又は、右心房7と右心耳8の間)に設置することができ、且つ、左心耳5または右心耳8の内に血液の凝固を防止することができる閉塞手段1と、第2の実施形態の心臓ペースメーカー10を装着した患者の心臓ペースを連続的に監視することができ、心臓の異常が発生する際に、心臓ペーシングを実行させることができる調整手段2と、を備えているものである。
【0066】
本実施形態では、閉塞手段1は、図7及び図8に示されるように、連通口52を閉塞することができるように設置されていると共に、心耳(左心耳5、又は、右心耳8)の内壁面51に引っ掛けることができるように周面部に設けられている複数のバーブ413を有している金属製の自己拡張型ステント411と、自己拡張型ステント411の外表面を覆っている篩網412と、を具えている。
【0067】
該自己拡張型ステント411は、例えば、ニッケル-チタン合金からなる自己膨張可能な構造である。該篩網412は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン製の浸透性を有する自己膨張可能な多孔フィルムである。
【0068】
なお、本実施形態では、閉塞手段1は、ボストン・サイエンティフィック社(Boston Scientific)製の左心耳閉鎖器(LAA閉鎖器)である。勿論、ここで上記の左心耳閉鎖器に限定されず、上記の閉塞手段1と共通している構造及び機能を具えた心耳閉鎖器を採用することができる。
【0069】
本発明に係る心臓ペースメーカー10の第2の実施形態における調整手段2は、図9に示されるように、第1の実施形態の調整手段2と多くの構成及び機能が共通する。本実施形態では、該調整手段2は、自己拡張型ステント411の内に設けられ、且つ、調整手段2の駆動モジュール126が自己拡張型ステント411に電気的に接続されていることで、自己拡張型ステント411を経由して心臓ペースを調整することができる。
【0070】
そのため、調整手段2の分析モジュール125は、感知モジュール124が感知した心臓ペースと記憶モジュール123が記憶した所定の心拍数との差が閾値を超えると、駆動モジュール126を駆動させ、自己拡張型ステント411を経由して心臓ペースが所定の心拍数と一致するように左心房4又は右心房7に対して刺激を与えて、心臓ペースを調整する目的を達成させることができる。
【0071】
総括すると、本発明に係る心臓ペースメーカー10は、左心房4と左心耳5の間、或いは、右心房7と右心耳8の間に設置することによって、心室の内に設置される従来の人工ペースメーカーにより引き起こされる異物感を解消することができることに加え、心房と心耳を連通している連通口52を閉塞することで、心房から心耳に流入する血流を遮断することができ、心耳の内において血液の凝固が発生する可能性を大いに低くさせることができる。
【0072】
さらに、本発明の心臓ペーシングシステム100は、制御装置30により心房と該心房から突出する心耳の間に設置する心臓ペースメーカー10、及び、右心室6の内に設置された心臓ペーシング装置20に対して個別または同時に駆動することができることで、患者の症状に応じて、心房のみ、又は、心室のみ、又は、心房及び心室の両方に対して心臓ペーシング(即ち、単腔ペーシング、二腔ペーシング)を行うことを実現させることができる。そのため、例えば、洞不全症候群、徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、心房細動といった症状に対して治療を提供することができる。
【0073】
上記においては、本発明の全体的な理解を促すべく、多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、上記のように記載された心臓ペースメーカーによって、心臓ペースをも調整することができるだけでなく、心房から心耳に流入する血流を遮断することができ、心耳の内において血液の凝固が発生しにくくなる。
【0076】
また、上記のように記載された心臓ペーシングシステムによって、心臓ペースメーカーで心耳の内に血液の凝固を防止すると共に、心臓ペースメーカー及び心臓ペーシング装置で単腔ペーシングでも二腔ペーシングでも行うことができ、従来の人工ペースメーカーよりも多くの機能を具えている。
【0077】
そのため、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0078】
100 心臓ペーシングシステム
1 閉塞手段
10 心臓ペースメーカー
11 第1の閉塞ユニット
111 本体部
112 フック部
12 第2の閉塞ユニット
120 制御モジュール
123 記憶モジュール
124 感知モジュール
125 分析モジュール
126 駆動モジュール
127 送受信モジュール
128 電源モジュール
2 調整手段
20 心臓ペーシング装置
21 パルス生成器
22 電極
30 制御装置
4 左心房
411 自己拡張型ステント
412 篩網
413 バーブ
5 左心耳
51 内壁面
52 連通口
6 右心室
7 右心房
8 右心耳
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9