(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】電池パックおよびその出力構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/296 20210101AFI20230426BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230426BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20230426BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20230426BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20230426BHJP
【FI】
H01M50/296
H01M50/284
H01M50/516
H01M50/519
H01M50/50 101
(21)【出願番号】P 2021512770
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2020097226
(87)【国際公開番号】W WO2020253848
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】201920951242.7
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514257398
【氏名又は名称】東莞新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】DONGGUAN AMPEREX TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.1 Industrial West Road,Songshan Lake High-tech Industrial Development Zone, Dongguan City, Guangdong Province, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 小平
(72)【発明者】
【氏名】陳 小明
(72)【発明者】
【氏名】李 理
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511384(JP,A)
【文献】特開2018-164008(JP,A)
【文献】特表2020-514988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子、回路基板、及び前記回路基板に電気的に接続される第1の端子を含む電池パックの出力構造であって、
前記出力構造は、前記回路基板と電気的に接続された導電部材をさらに含み、
前記第1の端子は、前記導電部材と溶接され、
前記出力端子は、前記導電部材または前記第1の端子と溶接され、
前記導電部材は、前記出力端子と前記第1の端子との間に設けられるか、又は、前記第1の端子は、前記導電部材と前記出力端子との間に設けられ、
前記導電部材は、第1の導電片を含み、
前記回路基板には、前記第1の端子が貫通する貫通孔が設けられており、前記出力端子と前記第1の端子と前記第1の導電片との3者が
重ね合わさるように貼り合わされていることを特徴とする電池パックの出力構造。
【請求項2】
前記導電部材と前記回路基板との間には、半田付け層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池パックの出力構造。
【請求項3】
前記導電部材は、前記第1の導電片と接続された第2の導電片を含み、
前記第1の導電片、前記出力端子及び前記第1の端子は、溶接で接続され、
前記第2の導電片は、前記回路基板に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電池パックの出力構造。
【請求項4】
前記第1の導電片は、前記第1の端子と前記出力端子との間に設けられ、または、前記第1の端子は、前記出力端子と前記第1の導電片との間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電池パックの出力構造。
【請求項5】
前記第2の導電片と前記回路基板との間には、半田付け層が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電池パックの出力構造。
【請求項6】
前記電池パックは、直列又は並列に接続された複数の電池セルを含み、前記回路基板には、前記電池セルの正極端子又は負極端子に対応して設けられた溶接パッドが複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池パックの出力構造。
【請求項7】
前記回路基板には、それぞれの前記溶接パッドを電気的に接続するための電圧検出回線が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電池パックの出力構造。
【請求項8】
前記出力端子は、接続部及び出力部を含み、前記接続部の第1の端部は、前記導電部材または前記第1の端子と電気的に接続され、前記接続部の第2の端部は、前記出力部と電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電池パックの出力構造。
【請求項9】
前記接続部は、シート状の構造であることを特徴とする請求項8に記載の電池パックの出力構造。
【請求項10】
前記出力構造は、電池の負極端子に電気的に接続された第2の端子をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の電池パックの出力構造。
【請求項11】
直列又は並列に接続された複数の電池セルと、請求項1~10のいずれか1項に記載の電池パックの出力構造とを備え、
前記出力構造の第1の端子は、前記複数の電池セルのうちの1つの正極端子で構成されるか、又は、前記第1の端子は、前記複数の電池セルの正極端子に電気的に接続されることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池の技術分野に関し、特に、電池パックの出力構造及びそれを含む電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電池パックの出力接続方式は、通常、タブにより導電板と溶接され、さらにねじロックにより導線と接続される。ねじロック工程が複雑であるため工程コストが高くなる。また、導線と導電板との接続が不安定であり、ねじロックの接触内部抵抗が保証されにくく、特に振動中にネジが緩みやすくなり、接続箇所が内部抵抗の増大に起因して発熱が激しく、電池の発火のリスクが増大し、且つ組立品質が管理されにくくなる。また、この方法によれば、大きなスペースを占有し、電池パックの組み立ての困難度を増加させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況に鑑み、構造が簡単で、接続が安定で、製造コストが低くて抜けにくい等の利点を有する出力構造、及び、当該出力構造を含む電池パックを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の一実施形態に係る電池パックの出力構造は、出力端子、回路基板、第1の端子及び導電部材を含み、前記第1の端子は、前記回路基板と電気的に接続され、前記導電部材は、前記回路基板に電気的に接続され、前記第1の端子は、前記導電部材と溶接され、前記出力端子は、前記導電部材または前記第1の端子と溶接される。
【0005】
また、本願の幾つかの実施例において、前記導電部材は、前記出力端子と前記第1の端子との間に設けられるか、又は、前記第1の端子は、前記導電部材と前記出力端子との間に設けられている。
【0006】
また、本願の幾つかの実施例において、前記導電部材と前記回路基板との間には、半田付け層が設けられている。
【0007】
また、本願の幾つかの実施例において、前記導電部材は、第1の導電片と、前記第1の導電片と接続された第2の導電片と、を含み、前記第1の導電片、前記出力端子及び前記第1の端子は、溶接で接続され、前記第2の導電片は、前記回路基板に電気的に接続されている。
【0008】
また、本願の幾つかの実施例において、前記第1の導電片は、前記第1の端子と前記出力端子との間に設けられ、または、前記第1の端子は、前記出力端子と前記第1の導電片との間に設けられている。
【0009】
また、本願の幾つかの実施例において、前記第2の導電片と前記回路基板との間には、半田付け層が設けられている。
【0010】
また、本願の幾つかの実施例において、前記電池パックは、直列又は並列に接続された複数の電池セルを含み、前記回路基板には、前記電池セルの正極端子又は負極端子に対応して設けられた溶接パッドが複数設けられている。
【0011】
また、本願の幾つかの実施例において、前記回路基板には、それぞれの前記溶接パッドを電気的に接続するための電圧検出回線が設けられている。
【0012】
また、本願の幾つかの実施例において、前記出力端子は、接続部及び出力部を含み、前記接続部の第1の端部は、前記導電部材または前記第1の端子と電気的に接続され、前記接続部の第2の端部は、前記出力部と電気的に接続される。
【0013】
また、本願の幾つかの実施例において、前記接続部は、シート状の構造である。
【0014】
また、本願の幾つかの実施例において、前記出力構造は、前記電池の負極端子に電気的に接続された第2の端子をさらに備える。
【0015】
本願に係る電池パックは、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、上記のいずれか1項に記載の出力構造とを備え、前記出力構造の第1の端子は、前記複数の電池セルのうちの1つの正極端子で構成されるか、又は、前記第1の端子は、前記複数の電池セルの正極端子を電気的に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の出力構造と電池パックとの接続構造を示す図である。
【
図3】
図1の出力構造における回路基板の構成図である。
【
図4】
図2の出力構造における導電部材と回路基板が結合される前の構成図である。
【
図5】
図4における導電部材と前記回路基板とが結合された後の構成図である。
【
図6】導線と
図1の出力構造における出力端子との接続方法を示す模式図である。
【
図7】出力構造の第1の端子、導電部材及び出力端子が本願の一実施形態での溶接方式を示す模式図である。
【
図8】出力構造の第1の端子、導電部材及び出力端子が本願のもう1つの一実施形態での溶接方式を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態の図面に関連して、本願の実施形態における技術的な態様を明確にし、完全に説明するが、説明した実施形態は、全ての実施形態ではなく、本願の一部の実施形態のみであることは明らかである。
【0018】
図1に示すように、電池パック6と導線5とを接続するための出力構造100は、出力端子1と、回路基板2と、第1の端子3と、導電部材4と、を備えている。第1の端子3は、回路基板2と電気的に接続されている。導電部材4は、回路基板2に電気的に接続される。第1の端子3と導電部材4とは、溶接されている。出力端子1は、導電部材4または第1の端子3と溶接されている。
【0019】
従来の技術に比べて、本願の実施形態で提供された出力構造100は、出力端子1、第1の端子3及び導電部材4を溶接の方法で接続固定している。当該出力構造100は、接続状態及び溶接品質が安定しており、且つ制御が容易であり、抜けにくいという利点があり、接続箇所がその内部抵抗の増大によって発熱問題が深刻になるのを回避することができる。さらに、この発熱による電池の発火などのリスクを避けることができる。さらに、この出力構造100は、電池パックの生産コストとその組立の難しさを低減することができる。
【0020】
具体的には、
図2に示すように、出力構造100は、電池パック6の負極端子に電気的に接続される第2の端子7をさらに備えてもよい。第1の端子3は、電池パック6の正極端子に電気的に接続される。幾つかの態様では、電池パック6は、複数の直列または並列接続された電池セル62を含むことができ、各電池セル62は、1つの正極端子と1つの負極端子とを含み、各電池セル62は、既存の組み合わせ方式により互いに直列または並列に接続されて電池パック6を構成するが、本願はこれに限定されない。なお、他の実施形態では、第1の端子3は、電池セル62の正極端子のうちの1つで構成されてもよく、前記第2の端子7は、電池セル62の負極端子のうちの1つで構成されてもよいことが理解できる。または、第1の端子3は、電池セル62の正極端子に電気的に接続され、第2の端子は、電池セル62の負極端子に電気的に接続される。
【0021】
複数の電池セル62同士は、複数の接続部材61を介して、異なる電池セル62の正極端子及び負極端子に電気的に接続されて、直列又は並列を実現している。複数の接続部材61は、回路基板2と電気的に接続されており、電池パック6と回路基板2との電気的な接続を実現している。なお、他の実施形態では、接続部材61を形成するために、異なる電池セル62の正極端子又は負極端子を接着や溶接等により接合してもよい。さらに、出力端子1は、導線5に接続されて、導線5を介して、電池パック6の電気エネルギーを出力したり、電池パック6に充電したり、または導線5を介して電気設備と電気的に接続する。
【0022】
引き続き
図3を参照すると、回路基板2には、電池セル62の正極端子又は負極端子に対応して配置された複数の溶接パッド21が設けられている。具体的には、複数の接続部材61は、対応する溶接パッド21に半田付けにより接続される。これにより、電池セル62の正極端子又は負極端子は、当該溶接パッド21に対応して電気的に接続される。電池セル62を対応マークの溶接パッド21に電気的に接続して、出力構造100の取り付けの難しさを低減するために、複数の溶接パッド21には、電池セル62に対応するためのマーク「B1~B9」が設けられている。この溶接パッド21の数とマークは、実際の状況に応じて増減されることが可能である。
図3における各溶接パッド21間の矢印は、電池パック6と回路基板2とが電気的に接続された後、回路基板2における電流が流れる方向に沿っている。
【0023】
幾つかの態様では、回路基板2の側辺に近い位置には、回路基板2と電気的に接続されたピンパッド22がさらに設けられている。導電部材4と回路基板2との間には、半田付け層が設けられている。即ち、当該半田付け層は、導電部材4とピンパッド22との間に設けられる。これは、ピンパッド22に対して表面実装技術等で導電部材4を接続することで、導電部材4を回路基板2に電気的に接続することに有利である。幾つかの態様では、ピンパッド22は、2つがあることが好ましく、且つ回路基板2の両側にそれぞれ設けられる。一方のピンパッド22の下端には、正極を示す「B+」が表記され、他方のピンパッド22の下端には、負極を示す「B-」が表記されている。「B+」が付されたピンパッド22の個所に設けられた導電部材4は、第1の端子3と固定され、「B-」が付されたピンパッド22の個所に設けられた導電部材4は、第2の端子7と固定されている。
【0024】
幾つかの態様では、回路基板2には、それぞれの溶接パッド21とピンパッド22とを電気的に接続する電圧検出回線23が設けられている。電圧検出回線23は、回路基板2の下端の縁に近い位置に集中部が形成されている。各溶接パッド21とピンパッド22に電気的に接続された回線の支線は、前記集中部に集めて順次に配列されている。前記集中部で各支線間の電圧を検出することにより、電池セル62の電圧または電池パック6の正負極電圧を判断することができる。実際の操作では、簡単で便利であり、電池セル62または電池パック6の動作状況を迅速に判断することに有利である。
【0025】
幾つかの態様では、
図4及び
図5に示すように、導電部材4は、第1の導電片41と、第2の導電片42と、を含み、第1の導電片41と第2の導電片42は、略直角を成して接続され、他の角度で接続されてもよい。両者は、一体成型構造であってもよい。第1の導電片41、出力端子1及び第1の端子3または第2の端子7は、溶接により接続される。溶接方式は、レーザ溶接であることが好ましい。第2の導電片42は、回路基板2のピンパッド22に電気的に接続される。第2の導電片42とピンパッド22との間には、鋼網で錫ペーストを塗ることにより形成された半田付け層が設けられている。導電部材4は、溶接位置を回路基板2に固定させるとともに、溶接位置のがたつきを回避し、溶接品質の安定性を向上させるために、一定の硬度を有する。
【0026】
図6に示すように、幾つかの態様では、出力端子1は、接続部11と出力部12とを含む。接続部11の第1の端部は、導電部材4または第1の端子3に電気的に接続され、接続部11の第2の端部は、出力部12に電気的に接続されている。出力部12は、導線5と電気的に接続される。接続部11は、形状及び大きさが第1の導電片41にマッチングしているシート状の構造をしている。出力部12は、略中空の円筒形であり、周側にはスリットが開いており、導線5の端部は、出力部12内に挿入されて、出力部12と機械圧着により一体に接続されている。なお、他の実施形態では、導線5は、溶接の方式で出力部12と接続されてよい。接続部11と出力部12は、一体成型された構成であってもよい。出力端子1は、銅端子であることが好ましい。銅端子は、紫銅の材質であり、優れた熱伝導性、導電性、延性及び耐食性を持っており、溶接性能が良い。導線5の型番は、電池パック6の過電流パラメータの要求に適合する。
【0027】
図7に示すように、導電部材4は、出力端子1及び第1の端子3(又は第2の端子7)とレーザ溶接で接続されている。導電部材4の第1の導電片41は、出力端子1と第1の端子3との間に設けられ、レーザエネルギー方向は、第1の端子3から出力端子1に向けられている。
【0028】
図8に示すように、もう1つの実施形態では、第1の端子3(又は第2の端子7)は、導電部材4の第1の導電片41と出力端子1との間に設けられ、レーザエネルギー方向は、導電部材4から出力端子1に向いている。好ましくは、出力端子1の位置は、レーザエネルギーの方向に依存して、レーザ溶接の効果を保証するために、レーザ方向の最も後側に常に設けられる。
【0029】
理解できるように、他の実施形態では、出力端子1は、第1の端子3と第1の導電片41との間に設けられてもよいし、レーザエネルギー方向は、第1の端子3から第1の導電片41に向いてもよく、第1の導電片41から第1の端子3に向いてもよい。出力端子1、第1の端子3、及び第1の導電片41の三者の重ね合わせの面積の大きさは、電池パック6の過電流パラメータの大小にマッチングしており、電池パック6の過電流パラメータが大きいほど、前記重ね合わせの面積が大きい。
【0030】
また、
図1に示すように、出力構造100に対する溶接が完了した後、第1の端子3(または第2の端子7)と出力端子1とを導電部材4で接続して固定し、電池パック6の出力電流が第1の端子3及び第2の端子7から回路基板2と導電部材4とに伝達し、さらに出力端子1に伝達し、最後に導線5に伝達することで、電池パック6と外部電気設備との電気的な接続が良好となる。
【0031】
また、本願発明は、直列接続又は並列に接続された複数の電池セル62と、上記いずれかの出力構造100とを備えた電池パックをさらに提供する。上記出力構造100の第1の端子3は、複数の電池セル62のうちの1つの正極端子で構成されるか、又は第1の端子3は複数の電池セル62の正極端子に電気的に接続される。
【0032】
以上の実施形態は、本願の技術案を説明するのみに用いられ、本願を制限するものではない。以上の好ましい実施形態を参照して本願を詳細に説明したが、当業者は、本願の技術案を修正又は均等に置換することで得られたものも、本願の技術案の精神と範囲から逸脱することがないと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0033】
100 出力構造
1 出力端子
2 回路基板
21 溶接パッド
22 ピンパッド
23 電圧検出回線
3 第1の端子
4 導電部材
41 第1の導電片
42 第2の導電片
5 導線
6 電池パック
61 接続部材
62 電池セル
7 第2の端子