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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び宇宙航行体
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/19 20060101AFI20230426BHJP
   B64G 1/66 20060101ALI20230426BHJP
   H01Q 15/20 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01Q19/19
B64G1/66 C
H01Q15/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021514752
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016673
(87)【国際公開番号】W WO2020213135
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】506097081
【氏名又は名称】株式会社QPS研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】八坂 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】久能 和夫
(72)【発明者】
【氏名】上津原 正彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎二
(72)【発明者】
【氏名】一木 要之介
(72)【発明者】
【氏名】木曽 一雄
(72)【発明者】
【氏名】當房 睦仁
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0352022(US,A1)
【文献】特開平03-145306(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/19
B64G 1/66
H01Q 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を反射して外部に放射するように構成された主反射器と、
前記主反射器に対向して配置するように構成された副反射器と、
前記副反射器に対向して配置され前記電波を前記副反射器の方向に輻射するように構成された輻射器と、
前記副反射器の少なくとも一部を内部に収容可能に構成された本体と、
前記副反射器に接続され、前記本体に少なくとも一部が収容された前記副反射器を前記輻射器から輻射された前記電波を前記主反射器に反射して前記主反射器から外部へ放射可能な位置になるまで送出させるように構成された送出装置と、
を含み、
前記主反射器が、前記本体の外部に位置するように該本体に固定されたハブに巻き付けられることにより、該本体の外部に配置される、宇宙航行体。
【請求項2】
前記副反射器は、
前記主反射器に対向して配置され、前記輻射器から輻射された電波を前記主反射器に反射するための副リフレクタと、
一端が前記副リフレクタに接続され他端が前記送出装置に接続された、前記副リフレクタを支持するための一又は複数の支持ロッドと、
を含む、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項3】
前記送出装置は、
モーターと、
前記本体に固定され、前記モーターによって前記モーターの回転軸の周りに回動可能に構成された回動機構と、
を含み、
前記副反射器の前記支持ロッドは、
前記回動機構の回動によって前記副反射器が送出される方向に移動可能に構成された可動軸と、
を含む、請求項2に記載の宇宙航行体。
【請求項4】
前記回動機構はラックギアを含み、
前記可動軸は前記ラックギアに接する面に該ラックギアに噛み合うピニオンギアを含む、
請求項3に記載の宇宙航行体。
【請求項5】
前記送出装置は、ボールねじを用いた送出機構を有する、請求項3に記載の宇宙航行体。
【請求項6】
前記支持ロッドは、前記副反射器の送出を前記位置で停止させるための送出終了検出機構を含む、請求項2から請求項5のいずれかに記載の宇宙航行体。
【請求項7】
前記送出装置は、前記副反射器の送出が前記位置に達したことを検出するための第1センサを含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の宇宙航行体。
【請求項8】
前記副反射器が前記送出装置によって送出されるのをロックするためのロック装置を含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の宇宙航行体。
【請求項9】
前記ロック装置は、前記ロックが解除されたことを検出するための第2センサを含む、請求項8に記載の宇宙航行体。
【請求項10】
電波を反射して外部に放射するように構成された主反射器と、
前記主反射器に対向して配置され、少なくとも一部が宇宙航行体本体の内部に収容可能に構成された副反射器と、
前記副反射器に対向して配置され前記電波を前記副反射器の方向に輻射するように構成された輻射器と、
前記副反射器に接続され、前記宇宙航行体本体に少なくとも一部が収容された前記副反射器を前記輻射器から輻射された前記電波を前記主反射器に反射して前記主反射器から外部へ放射可能な位置になるまで送出させるように構成された送出装置と、
を含み、
前記主反射器が、前記宇宙航行体本体の外部に位置するように該宇宙航行体本体に固定されたハブに巻き付けられることにより、該宇宙航行体本体の外部に配置される、アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輻射器、主反射器及び副反射器を含むアンテナ装置及び宇宙航行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工衛星等の宇宙航行体に搭載されるアンテナ装置として、輻射器から輻射された電波を副リフレクタで反射し、その反射した電波を再度主リフレクタで反射して、例えば地球の地上局に向けて電波を放射するアンテナ装置が知られていた(特許文献1)。そして、副リフレクタに対して形状が大きい主リフレクタについては、可搬型アンテナ用や衛星搭載アンテナ用のリフレクタに代表されるように、移動中や未使用時にはコンパクトに収納され、使用時に展開して通信に用いられる。例えば、特許文献2には、アンテナ反射面として機能するケーブルネットワークを展開トラスで支持する展開アンテナにおいて、スライドヒンジを用いて、展開トラスを収納・展開できるようにしたことが記載されている。
【0003】
しかし、移動中や未使用時に主リフレクタを折り畳むことでコンパクトに収納することができたとしても、主リフレクタから一定距離だけ離して配置するために支持機構で支持される副リフレクタは折り畳むことができず、アンテナ装置全体をコンパクトに収納するのには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-266408号公報
【文献】特開2005-086698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、様々な実施形態により、よりコンパクトに収納された状態から展開することが可能なアンテナ装置及び宇宙航行体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、「電波を反射して外部に放射するように構成された主反射器と、前記主反射器に対向して配置するように構成された副反射器と、前記副反射器に対向して配置され前記電波を前記副反射器の方向に輻射するように構成された輻射器と、前記副反射器の少なくとも一部を内部に収容可能に構成された本体と、前記副反射器に接続され、前記本体に少なくとも一部が収容された前記副反射器を前記輻射器から輻射された前記電波を前記主反射器に反射して前記主反射器から外部へ放射可能な位置になるまで送出させるように構成された送出装置と、を含む宇宙航行体」が提供される。
【0007】
本開示の一態様によれば、「電波を反射して外部に放射するように構成された主反射器と、前記主反射器に対向して配置され、少なくとも一部が宇宙航行体本体の内部に収容可能に構成された副反射器と、前記副反射器に対向して配置され前記電波を前記副反射器の方向に輻射するように構成された輻射器と、前記副反射器に接続され、前記宇宙航行体本体に少なくとも一部が収容された前記副反射器を前記輻射器から輻射された前記電波を前記主反射器に反射して前記主反射器から外部へ放射可能な位置になるまで送出させるように構成された送出装置と、を含むアンテナ装置」が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の様々な実施形態によれば、よりコンパクトに収納された状態から展開することが可能なアンテナ装置及び宇宙航行体を提供することができる。
【0009】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、または上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成を示す図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の反射器120を展開時の構成を示す図である。
図3B図3Bは、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の反射器120を収納時の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の反射器120を収納時の副反射器122及び本体300の断面の構成を示す図である。
図5図5は、本開示の第1実施形態に係る送出装置150及びロック装置160の構成を示す図である。
図6図6は、本開示の第1実施形態に係るロック装置160の構成を示す図である。
図7A図7Aは、本開示の第1実施形態に係る送出装置150の動作を概念的に示す図である。
図7B図7Bは、本開示の第1実施形態に係る送出装置150の動作を概念的に示す図である。
図7C図7Cは、本開示の第1実施形態に係る送出装置150の動作を概念的に示す図である。
図8図8は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1が行う各装置の処理シーケンスを示す図である。
図9図9は、本開示の第1実施形態に係る副反射器122の配置位置を概念的に示す図である。
図10図10は、本開示の第2実施形態に係る送出装置250の動作を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0012】
<第1実施形態>
1.宇宙航行体1の構成
図1は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成を示す図である。図1によると、宇宙航行体1は、宇宙空間において宇宙航行体1そのものの航行の制御や宇宙航行体1の動作や姿勢の制御を行う制御ユニット等が搭載された本体300と、宇宙空間において本体300や輻射器110を含む様々な構成要素を駆動するための電力を供給する電源ユニット200と、宇宙航行体1と地上又は他の宇宙航行体との間で情報の送受信を行ったり観測用のレーダーの送受信を行ったりするための通信ユニット100とを含む。
【0013】
図2は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成を示すブロック図である。宇宙航行体1は、図2に示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成をとることも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。例えば、宇宙航行体1は、複数の電源ユニット200及び/又は複数の通信ユニット100を搭載することも可能である。
【0014】
図2によると、宇宙航行体1は、メモリ310とプロセッサ320とを含むコンピュータ301及びセンサ330を含む本体300と、電源制御回路210、バッテリ220及びソーラーパネル230を含む電源ユニット200と、通信制御回路170、送信器171、受信器172、輻射器110、反射器120を含む通信ユニット100とを含む。これらの各構成要素は、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。
【0015】
本体300には、コンピュータ301、各種センサを含む宇宙航行体1の飛行や通信等に関する制御を行うために様々な構成要素・部品が搭載されている。そのうち、コンピュータ301は、他の構成要素・部品を制御するための制御部として機能するもので、一例としてはオンボードコンピュータが用いられる。当該オンボードコンピュータには、メモリ310、プロセッサ320が搭載される。なお、オンボードコンピュータはコンピュータ301の一例であり、プロセッサやマイコンなど、他の構成要素・部品を制御可能なものであればいずれでもよい。
【0016】
メモリ310は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ310は、本実施形態に係る宇宙航行体1の様々な制御のための指示命令をプログラムとして記憶する。メモリ310は、一例として、カメラ(図示しない)で撮像された宇宙航行体1の外部の画像、通信ユニット100をレーダーとして用いて得られた観測値、地上局から通信ユニット100を介して受信した情報又は地上局へ通信ユニット100を介して送信する情報、宇宙航行体1の姿勢・進行制御のために必要なセンサ330等の検出情報、通信ユニット100の反射器120を展開するためのプログラムなどが適宜記憶される。
【0017】
プロセッサ320は、メモリ310に記憶されたプログラムに基づいて宇宙航行体1の制御を行う制御部として機能する。具体的には、メモリ310に記憶されたプログラムに基づいて、電源ユニット200、通信ユニット100、センサ330等の制御を行う。一例としては、通信ユニット100を介して地上局や他の宇宙航行体に送信するための情報の生成、通信ユニット100をレーダーとして用いて行う観測に係る制御、及び通信ユニット100の反射器120を展開するための制御を行う。
【0018】
センサ330は、一例として、宇宙航行体1の進行や姿勢の制御に必要なジャイロセンサ、加速度センサ、位置センサ、速度センサ、恒星センサ等、宇宙航行体1の外部環境を観測するための温度センサ、照度センサ、赤外線センサ等、宇宙航行体1の内部環境を計測するための温度センサ、照度センサ等を含みうる。検出された情報・データは適宜メモリ310に記憶され、プロセッサ320による制御に用いられたり、通信ユニット100を介して地上の基地に送信される。
【0019】
電源ユニット200は、電源制御回路210、バッテリ220、及びソーラーパネル230を含み、電源部として機能する。電源制御回路210は、バッテリ220に接続されバッテリ220からの電力の充放電を制御する。バッテリ220は、電源制御回路210からの制御を受けて、ソーラーパネル230で生成された電力を充電するとともに、本体300内のコンピュータ301、通信ユニット100等の各駆動系に対して供給する電力を蓄積する。
【0020】
通信ユニット100は、通信制御回路170、送信器171、受信器172、輻射器110及び反射器120を含み、通信部として機能する。通信制御回路170は、接続された輻射器110を介して、地上局や他の宇宙航行体に対して情報を送受信するために、変調や復調などの処理を行う。変調された信号は、送信器171において高周波の無線周波数に変換されたのち増幅され、輻射器110を介して反射器120の反射面に放射される。本実施形態においては、輻射器110から放射された高周波信号は副反射器122の副リフレクタ131で一旦反射され、主反射器121の主リフレクタによって外部へ放射される。一方、外部から受信した高周波信号は、逆の経路を通じて受信器172で受信され、通信制御回路170において復調される。なお、反射器120は、移動時や未使用時にはコンパクトに収納される一方で、使用時に展開される。
【0021】
本実施形態においては、通信ユニット100として、一対の副反射器122及び主反射器121を有するもののみを記載する。当該通信ユニット100は、8GHz以下の周波数帯域、8~12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)の通信周波数、12GHz~18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)の通信周波数、30GHz以上のミリ波帯域の通信周波数、300GHz以上のサブミリ波帯域の通信周波数など、所望に応じて調整することが可能である。当該通信ユニット100は、例えば気象、降雨、軍事用途などの観測用レーダーとして、地上局又は他の宇宙航行体との通信用途などの通信用アンテナとして利用することが可能であり、その用途は問わない。
【0022】
2.アンテナ装置10の展開時の構成
本実施形態において、反射器120は、移動や打ち上げ時の未使用時にはコンパクトに収納されて、宇宙空間において使用される場合に展開される。図3Aは、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の反射器120を展開時の構成を示す図である。
【0023】
(全体構成)
まず、図3Aによると、本実施形態に係る宇宙航行体1は、主反射器121及び副反射器122を含む反射器120、輻射器110、送出装置150を少なくとも含むアンテナ装置10を有する。具体的には、当該アンテナ装置10は、輻射器110と、輻射器110に対して所定の角度をもって対向するように配置され、輻射器110から放射される電波を主反射器121の主リフレクタに反射するための副反射器122と、副反射器122の副リフレクタ131に対向するように配置され、副リフレクタ131により反射された電波をさらに反射して外部へ電波を放射する主反射器121の主リフレクタと、副リフレクタ131を支持するための支持ロッド132と、主リフレクタの展開にともなって副リフレクタ131を送出するための送出装置150と、を含む。アンテナ装置10は、ハブ143が宇宙航行体1の台座315に固定されることにより、宇宙航行体1に設置される。
【0024】
(主反射器121)
主反射器121を構成する主リフレクタは、複数のリブ141、面状体146等を含む。主反射器121は、上記のとおり主反射鏡として機能するために、その反射面がパラボラ(放物)形状に形成されている。
【0025】
ハブ143は、アンテナ装置10の中心部のアンテナ軸X(ハブ143の中心軸Xともいう)に設けられる。ハブ143は、一例としては、プラスチック等の誘電体や、チタン、ステンレス等の金属により円柱状に形成される。ハブ143は、その外周面上にリブ取付部が設けられ、複数のリブ141が所定の間隔で放射状に配設される。
【0026】
リブ141は、複数のリブ141-1~141-nを含む。各リブ141は、ハブ143を中心として所定の間隔で、ハブ143の外周に放射状に配設される。各リブ141の反射鏡面となる側の上面はパラボラ形状に形成される。そして、パラボラ形状に形成された上面上に面状体146が架設される。リブ141は、一例としては、ステンレスバネ鋼や、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料により形成されるバネ材であり、弾性を有する。
【0027】
なお、リブ141は、本実施形態においては、全部で24本のリブにより構成されている。しかし、リブ141は、展開アンテナの展開時の面積、用いるリブの材質・強度等に応じて、偶数や奇数に関係なくその本数を変更することが可能である。また、本実施形態においては、リブ141は所定の間隔で配設したが、当該間隔は、すべてのリブ141において一定の間隔としてもよいし、一部のみ間隔を密にしてもよいし、非規則的であってもよい。
【0028】
リブ141とともに主リフレクタを構成する面状体146は、互いに隣接する一対のリブ141間に架設される。面状体146は、電波を反射可能な材料により、全体としてパラボラ形状になるように形成される。面状体146は、一例としては、モリブデン、金、又はそれらの組み合わせにより形成される金属の網状体(金属メッシュ)により形成される。本実施形態においては、面状体146は略三角形状の金属メッシュをリブ141の数に応じて用意し、各金属メッシュを縫合し、リブ141のパラボラ形状に形成された上面に架設される。
【0029】
ここで、本実施形態においては、面状体146は、ハブ143の中心軸Xに向かう方向に対してはそれほど大きな張力を有していないものの、当該方向に垂直な方向に対しては一定の張力を有する。したがって、リブ141が展開して主反射器121の主リフレクタが完全に開いた状態となった場合には、その張力によって隣接するリブ141が互いに引っ張り合うことで、隣接するリブ141の間隔を保持することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態においては、面状体146は、互いに隣接する一対のリブ141間に、一つの面状体146が架設されている。しかし、一つの面状体146が、必ずしも一対のリブ141間に架設される必要はなく、連続する3つ以上のリブ141に渡って架設されるようにしてもよい。また、面状体146には、折り畳み形状の再現性をより確実にするために、予め所定の折り目を付けるようにしてもよい。
【0031】
(副反射器122)
副反射器122は、主反射器121の主リフレクタに対向して配置される副リフレクタ131と、当該副リフレクタ131を輻射器110から所定距離だけ離隔して配置するための支持ロッド132を含む。
【0032】
副リフレクタ131は、主反射器121の主リフレクタの面状体146と同様に、電波を反射可能な材料により、全体として主反射器121の主リフレクタの面に向かって二次曲面形状をしている。そして、副リフレクタ131は、輻射器110から輻射された電波を主反射器121の主リフレクタに向けて反射する。したがって、副リフレクタ131は、輻射器110及び主リフレクタから、所定の距離だけ離隔して配置される。
【0033】
ここで、図9は、本開示の第1実施形態に係る副反射器122の配置位置を概念的に示す図である。具体的には、副反射器122の配置位置をカセグレン型パラボラの例に当てはめた場合の図である。この図からも明らかなとおり、副反射器122は、輻射された電波を主リフレクタに反射して当該主リフレクタから外部へ放射可能となる距離だけ、輻射器110及び主リフレクタから離して配置される。具体的には、主反射器121の主リフレクタには焦点をTとする回転放物面が形成され、副反射器122の副リフレクタ131には焦点をTとT’とする回転双曲面が形成されている。このように焦点Tを共有さるために、輻射器110をT’に設置することで、カセグレンアンテナを形成する。すなわち、焦点Tの回転放物面を有する主リフレクタに対して、焦点Tが共焦点となる位置に副リフレクタ131が配置される。また、副リフレクタ131は、焦点をT及びT’とする回転双曲面であるが、当該焦点T’の位置に輻射器110を配置する。なお、主リフレクタから外部に平行波を放射したい場合には、上記のとおりであるが、主リフレクタから楕円波を放射するなど、所望の角度だけ歪んだ電波を放射したい場合には、主リフレクタの曲面の中心と副リフレクタ131の曲面の中心とを結ぶ線上で、共焦点Tからの位置、輻射器110からの位置を適宜ずらした位置に副リフレクタ131の位置を配置することが可能である。
【0034】
支持ロッド132は、輻射器110及び主反射器121の主リフレクターから副反射器122の副リフレクタ131を所定距離だけ離して配置するために配置される。支持ロッド132は、一端が副リフレクタ131に他端がジョイント135に接続された第1支持ロッド133と、一端がジョイント135に接続され他端が解放された第2支持ロッド134とを含む。第1支持ロッド133及び第2支持ロッド134によって、第1支持ロッド133の一端に接続された副リフレクタ131を支持する。支持ロッド132は、副リフレクタ131を支持するために、1又は複数のロッドから構成される。図3Aの例においては、3対の支持ロッド132(1個は背面に被覆されており図示していない)が等間隔に配置されている。なお、図3Aの例では、第1支持ロッド133及び第2支持ロッド134とが一対のペアとなるように説明した。しかし、これに限らず、第1支持ロッド133に対して第2支持ロッド134の本数を少なくしてもよいし、多くしてもよい。なお、第2支持ロッド134の送出については、図7A図7C等において詳細に説明する。
【0035】
本実施形態においては、アンテナ装置10を展開するときに送出装置150によって支持ロッド132があらかじめ決められた距離だけ送出される。これによって、支持ロッド132によって支持される副リフレクタ131の配置位置があらかじめ決められた所定の位置に配置されるようになる。したがって、収納時にはその一部が本体300の内部に収納されていた副反射器122が、送出装置150の駆動によって徐々に本体300の外部に露出するように構成されている。
【0036】
(送出装置150)
送出装置150は、本体300の内部に配置され、副反射器122の第2支持ロッド134を移動可能に支持する。送出装置150は、副反射器122を移動可能に支持することによって、少なくとも一部が内部に収納された副反射器122の位置を、輻射器110から輻射された電波を主反射器121に反射して主反射器121から外部へ放射可能な位置になるまで、移動させる。本実施形態では、第2支持ロッド134に設けられたラックギアと、それに噛み合うように送出装置150に設けられたピニオンギアとによって、送出装置150が上記位置まで副反射器122を送出するが、図7A図7C等において詳細に説明する。
【0037】
3.アンテナ装置10の収納時の構成
図3Bは、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の反射器120を収納時の構成を示す図である。なお、本実施形態では本体300はその外面が電源ユニット200のソーラーパネル230によって被覆されているが、図3Bは本体300の内部の説明のために、その一部を省略する。また、本実施形態では、複数のリブ141がハブ143を中心に折り畳まれているが、図3Bではリブ141は省略する。
【0038】
本実施形態において、移動時や打ち上げ時などの収納時は、副反射器122の少なくとも一部が本体300の内部に収容されて配置される。これにより、副反射器122そのものもコンパクトに収容することが可能となり、アンテナ装置10全体として、よりコンパクトに収納することが可能となる。
【0039】
具体的には、第1支持ロッド133と第2支持ロッド134とを接続するジョイント135が本体300の台座315に固定されたハブ143に略接する位置になるように、副反射器122が配置される。したがって、ジョイント135の下部に一端が接続された第2支持ロッド134は、本体300の内部に収容された状態になる。また、副リフレクタ131及び第1支持ロッド133は、使用時の所定の位置とは異なり、本体300側により近い位置に配置されることとなる。
【0040】
なお、本実施形態において、収納状態においても、輻射器110は、ジョイント135等の副反射器122とは接続されていないため、その位置は展開時と同じである。ただし、輻射器110と副リフレクタ131との間隔は、高い位置精度が求められる。本体300の内部の輻射器110を収容する十分な空間があるような場合には、輻射器110を副反射器122と一緒に移動するようにして、収納時には本体300の内部に輻射器110を収容できるようにしてもよい。
【0041】
4.アンテナ装置10の収納時の断面構成
図4は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の反射器120を収納時の副反射器122及び本体300の断面の構成を示す図である。本実施形態では、複数のリブ141がハブ143を中心に折り畳まれているが、図4ではリブ141は省略する。図4によると、副リフレクタ131の曲面内部には、その曲面を維持するための複数のリブ131aが設けられている。また、副リフレクタ131の曲面と各第1支持ロッド133の一端とが、ジョイント138によって固定されている。ジョイント138はネジとネジ穴など、公知のものを利用することが可能である。
【0042】
また、第1支持ロッド133及び第2支持ロッド134は、互いにジョイント135を介して固定されている。ジョイント135は如何なる形状であってもよいが、支持ロッド132の位置精度をより正確にするために、一枚の平板又はドーナツ状の平板により構成するのが望ましい。そして、収納状態においては、ジョイント135はハブ143と同じ高さとなる位置、すなわち本体300の上面に設けられた台座315に接する位置に配置される。
【0043】
また、ハブ143の内部には、第2支持ロッド134を含む副反射器122の送出・移動をロックするためのロック装置160が固定されている。当該ロック装置160は、たとえば宇宙航行体1の移動時や打ち上げ時の振動によって第2支持ロッド134を含む副反射器122が、第2支持ロッド134の送出方向に沿った方向に振動し、破損するのを防止することが可能となる。
【0044】
図4は、収納時の本体300の断面を示す。したがって、副反射器122の第2支持ロッド134は、本体300の天板311に形成された貫通孔313、及び本体300の中板312に形成された貫通孔314に挿入されている。
【0045】
また、本体300の天板311には、第2支持ロッド134を本体300の外部に送出するための送出装置150が固定されている。さらに、本体300の天板311には、送出装置150による第2支持ロッド134の送出の開始と終了を検出するための第1センサ装置156が固定されている。
【0046】
5.送出装置150及びロック装置160の構成
図5は、本開示の第1実施形態に係る送出装置150及びロック装置160の構成を示す図である。図5によると、長軸状に形成された第2支持ロッド134の長辺側の一辺にピニオンギア137が形成されている。これによって、第2支持ロッド134は、別途設けられたラックギアの回動によって副反射器122全体を本体300の外部に送出するための可動軸として機能する。第2支持ロッド134の一端はジョイント135によって第1支持ロッド133と接続されている。第2支持ロッド134の他端は、他の構成要素等に直接固設されることはなく、開放端となっている。ただし、アンテナ装置10の収納状態における副反射器122の振動を抑制するために、第2支持ロッド134の他端には第1ストッパ136dが配置される。第1ストッパ136dは、一例としては第2支持ロッド134の他端から凸状に形成され、本体300の底板316にビス318で固定され凹状に形成された第2ストッパ317に嵌合する。これによって、振動等によって第2支持ロッド134が左右に揺さぶられるのを防止する。なお、第1ストッパ136d及び第2ストッパ317の形状を凸状又は凹状に形成したが、それぞれ逆の形状であってもよい。また、それに限らず、マグネットなど他の位置決め方法により位置決めするようにしてもよい。
【0047】
図5によると、第2支持ロッド134を本体300の外部に送出するための送出装置150は、第2支持ロッド134のピニオンギア137に嵌合するラックギアを備える回動機構151と、回動機構151を回転軸153を中心に回動させるためのモーター152と、第2支持ロッド134の送出位置を検出するための第1センサ装置156とを少なくとも含む。回動機構151の駆動部として機能するモーター152は、本体300の天板311に固定される。そして、モーター152の回転軸153が回転することで、回転軸153に固定された回動機構151を回転させる。回動機構151にはその外周にラックギアが形成されており、当該ギアの凹凸と第2支持ロッド134のピニオンギアの凹凸と嵌合する。
【0048】
また、送出装置150の第1センサ装置156は、第2支持ロッド134の長辺のうちピニオンギアが設けられていない側に配置され、本体300の天板311に固定される。第1センサ装置156は、第2支持ロッド134に対して垂直な方向に常に付勢され、当該方向に摺動可能に形成される突起155を有する。突起155は、副反射器122の送出開始前は、第2支持ロッド134の凹溝136aに当接する。一方、副反射器122が送出されると、第2支持ロッド134が移動するために、突起155は第2支持ロッド134のピニオンギアが設けられていない側の長辺に当接する。そして、副反射器122が所定の位置に到達すると、突起155は第2支持ロッド134の凹溝136bに当接する。この突起155の状態の変化を、内部に配置されたスイッチ154で検出することにより、第1センサ装置156は副反射器122の送出の開始と終了を検出する。なお、凹溝136a及び凹溝136bは、それぞれ送出開始/終了検出機構として機能する。
【0049】
図5によると、収納状態において副反射器122が送出するのをロックするためのロック装置160は、ロックピン163と、ロックピン163を摺動させるためのソレノイド164と、ロックピン163とソレノイド164とを接続するためのワイヤ162と、当該ワイヤが摺動するのを補助するためのプーリー161と、ロックピンが解放されたことを検出するための第2センサ装置165とを含む。
【0050】
ロックピン163の一端はワイヤ162に接続されるが、他端は収納時は第2支持ロッド134の挿入孔139に挿入されている。そして、ソレノイド164の駆動により、ワイヤ162が摺動するのに追従して、ロックピン163が挿入孔139から導出されることで、副反射器122のロックを解除する。
【0051】
ソレノイド164は、本体300の天板311に固定され、挿入孔139に挿入されたロックピン163を挿入孔139の反対方向に導出させるために、ワイヤ162の一端が接続されている。そして、ソレノイド164の駆動によって、ワイヤ162が移動することにより第2センサ装置165のスイッチがオンされ、ロックが解放されたことが検出される。
【0052】
6.ロック装置160の構成の詳細及び動作
図6は、本開示の第1実施形態に係るロック装置160の構成を示す図である。図6によると、一端がロックピン163に接続されたワイヤ162の他端が、ソレノイド164に接続されている。したがって、ソレノイド164の駆動により、ワイヤ162が矢印Cの方向、すなわちソレノイド164の方向に引っ張られる。そして、それに伴い、第2支持ロッド134の挿入孔139に先端が挿入されたロックピン163が矢印Bの方向、すなわち挿入孔139の反対方向に引っ張られて、副反射器122のロックが解除される。このとき、プーリー161は、その回転軸を中心に矢印Aの方向に回転し、ワイヤ162の摺動を補助する。
【0053】
また、ワイヤ162の他端には押下部材(図示しない)が設けられ、当該押下部材を介してソレノイド164にワイヤが接続さる。そして、ソレノイド164は、その駆動により、押下部材を押し下げることで、第2センサ装置165に設けられたスイッチ(図示しない)をオンにする。このオン信号を受信することにより、第2センサ装置165は、ソレノイド164によってワイヤ162が摺動され、ロックピン163が挿入孔139から導出されたことを検出する。
【0054】
なお、本実施形態においては、ロック装置160は、ワイヤ162及びプーリー161を用いて、ソレノイド164の駆動によりワイヤ162の摺動する方向が、矢印Cの方向から矢印Bの方向に変化させた。しかし、これに限らず、ワイヤ162に代えて剛性を有するシャフト状の部材を用いて、当該部材を摺動方向を変化させることなく、ロックピン163の移動方向に沿った方向にそのまま摺動させてもよい。
【0055】
7.送出装置150の構成の詳細及び動作
図7A図7Cは、本開示の第1実施形態に係る送出装置150の動作を概念的に示す図である。具体的には、図7Aは、アンテナ装置10が収納状態であって、副反射器122の送出が開始される前の状態を示す。また、図7Bは、アンテナ装置10が展開され、副反射器122が送出されている途中の状態を示す。また、図7Cは、アンテナ装置10の展開が完了し、副反射器122の送出が完了するときの状態を示す。
【0056】
図7Aによると、副反射器122の送出開始前は、回動機構151は回転されておらず、第2支持ロッド134も初期位置のままである。第1センサ装置156の突起155は、常に第2支持ロッド134の方向に付勢されているが、この付勢によって突起155は第2支持ロッド134の凹溝136aに当接している。したがって、スイッチ154はオフの状態が維持されている。
【0057】
次に、図7Bによると、アンテナ装置10の展開のために、回動機構151が第2支持ロッド134の送出方向、つまりは矢印Dの方向に沿って回転軸153を中心に回転を開始する。すると、回動機構151の表面に形成されたラックギアと、第2支持ロッド134に形成されたピニオンギア137とが互いに嵌合し、回動機構151の回転に伴って第2支持ロッド134が矢印Fの方向に送出される。このとき、第2支持ロッド134の方向に付勢され、凹溝136aに当接していた突起155は、第2支持ロッド134の凹溝136aが備えられた側の辺136cによって、第1センサ装置156の内部に向かう方向、すなわち矢印Eの方向に押し下げられる。これによって、スイッチ154がオンの状態に切り替わり、第2支持ロッド134の送出が開始されたことが検出される。なお、本実施形態においては、送出されている間は、常にスイッチ154がオンの状態になっている。
【0058】
次に、図7Cによると、回動機構151の回動によって、第2支持ロッド134が送出され、それに接続された副リフレクタ131が所定の位置にまで到達すると、あらかじめその位置に対応して形成された凹溝136bに、第1センサ装置156の突起155が当接する。そして、第2支持ロッド134の方向に付勢された突起155は、第2支持ロッド134の方向、すなわち矢印Gの方向に移動する。これによって、第1センサ装置156のスイッチ154はオフに切り替わり、第2支持ロッド134の送出の終了が検出される。第1センサ装置156で第2支持ロッド134の送出の終了が検出されると、プロセッサ320が回動機構151を駆動するモーター152に回動終了の信号を送信する。これにより、回動機構151の回動が停止され、第2支持ロッド134の送出も終了する。
【0059】
8.宇宙航行体1の各装置間の処理シーケンス
図8は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1が行う各装置の処理シーケンスを示す図である。具体的には、主にコンピュータ301内に設けられたプロセッサ320がメモリ310に記憶されたプログラムを実行することによって、ロック装置160及び送出装置150を制御して、第2支持ロッド134を送出し、副リフレクタ131を所定位置まで送出するときの処理フローを示す。
【0060】
まず、宇宙航行体1に設けられた通信ユニットによって、地上局から第2支持ロッド134に挿入されたロックピン163を導出してロックを解除するためのロック解除信号を受信する。なお、通信ユニット100は、このときまだアンテナ装置10が展開していないため利用することはできない。したがって、当該信号は通信ユニット100以外の通信ユニットを利用して受信する(S11)。ロック解除信号を通信ユニットが受信すると、プロセッサ320は、ロック装置160に対してロック解除指示信号T11を送信する。
【0061】
ロック解除指示信号T11をロック装置160が受信すると、ロック装置160がロック装置160のソレノイド164の電源をオンにし、その駆動を開始する(S12)。すると、この駆動に伴って、ソレノイド164に接続されたワイヤ162が摺動し、それに追従してワイヤ162の一端に接続されたロックピン163が第2支持ロッド134の挿入孔139の反対方向に導出される。これによって、第2支持ロッドのロックが解除される(S13)。また、このとき、ワイヤ162の他端に設けられた押下部材が第2センサ装置165のスイッチをオンにする。ここReaderによって第2センサ装置165において、ロック解除されたことが検出され(S14)、ロック解除完了信号T12がロック装置160からコンピュータ301に送信される。
【0062】
コンピュータ301は、ロック解除完了信号T12を受信すると(S15)、第2支持ロッド134を送出するために、送出装置150に送出指示信号T13を送信する。
【0063】
送出装置150が送出指示信号T13を受信すると、送出装置150がモーター152の電源をオンにし、その駆動を開始する(S16)。すると、その駆動に伴って、モーター152の回転軸153に回転可能に接続された回動機構151が回転する。回動機構151の外周に設けられたラックギアによって、それに嵌合するピニオンギアを有する第2支持ロッド134が本体300の外部方向に送出される(S17)。このとき、第2支持ロッド134に接続されたジョイント135、第1支持ロッド133及び副リフレクタ131も一緒に押し上げられる。なお、本実施形態では特に詳しくは説明しないが、この第2支持ロッド134が送出される際に、その送出に応じて、ハブ143の周囲に折り畳まれて収納されていた主反射器121の主リフレクタのロックを解除する(S18)。このロック解除によって、剛性を有するリブ141で形成された主リフレクタは、リブ141自身が有する弾性によって、展開を開始する。
【0064】
第2支持ロッド134の送出がなされ、第2支持ロッド134及び第1支持ロッド133によって支持された副リフレクタ131が所定の位置に達すると、第2支持ロッド134の凹溝136bに第1センサ装置156の突起155が当接する。これによって、副リフレクタ131が当該位置に達し第2支持ロッド134の送出を終了することが検出される(S19)。送出装置150は、この検出を受けて、コンピュータ301に送出完了信号T14を送信する。
【0065】
コンピュータ301は、送出完了信号T14を受信すると(S20)、送出装置150に対してモーター駆動終了指示信号T15を送信する。当該信号を受信した送出装置150は、モーター152の電源をオフにし、回動機構151の回転を停止させる(S21)。これにより、第2支持ロッド134の送出が終了し、副リフレクタ131があらかじめ決められた所定位置に配置されることとなる。
【0066】
以上、本実施形態においては、アンテナ装置10が収納されている状態において、副反射器122の少なくとも一部が本体300の内部に収容され、展開時に本体300の外部に収容された部分が送出され、副リフレクタ131を所定の位置に配置させる。これにより、従来、副反射器122の高さ分だけコンパクトに収納することが困難であったが、よりコンパクトに収納することが可能となる。
【0067】
<第2実施形態>
第1実施形態では、副リフレクタ131の移動のために、送出装置150及び第2支持ロッド134にラックギア及びピニオンギアを用いる場合について説明した。第2実施形態においては、ラックギア及びピニオンギアに代えて、ボールねじを用いる場合について説明する。なお、本実施形態は、以下で具体的に説明する点を除いて、第1実施形態における構成と同様である。したがって、それらの事項の詳細な説明は省略する。
【0068】
図10は、本開示の第2実施形態に係る送出装置250の動作を概念的に示す図である。図10によると、副反射器122の第2支持ロッド231には、第1実施形態と同様に、一端がジョイント135(図示しない)を介して第1支持ロッド133(図示しない)に接続されている。一方、第2支持ロッド231の他端は、その端部にナット232が接続される。また、第2支持ロッド231は、その内部にネジ軸255を挿入するために中空状に形成される。
【0069】
ナット232は、第2支持ロッド231の先端に固定されており、内部にネジ軸255を陥入するための孔を有するドーナツ形状をしている。ナット232の内面には、ネジ軸255表面に形成されたネジ山に嵌合するように、溝233が形成されている。
【0070】
送出装置250は、モーター253、モーター253の回転軸254、及びネジ軸255を含む。送出装置250は、本体300の底板316に固定される。モーター253の回転軸254には、ネジ軸255の一端が固定されている。したがって、モーター253が駆動されて回転軸254が回転すると、それに伴ってネジ軸255も同じ方向に回転する。ネジ軸255は、長軸円柱状に形成され、アンテナ装置10の収納状態では中空円筒形状に形成された第2支持ロッド231の内部に挿入されている。また、ネジ軸255は、その外周面の略全面に、ナット232の溝233に嵌合するようにネジ山が形成されている。
【0071】
アンテナ装置10の収納状態においては、上記のとおり、第2支持ロッド231の内部にネジ軸255が挿入されている。その後、送出装置250のモーター253の駆動に伴って、回転軸254を中心にネジ軸255が回転する。第2支持ロッド231は、ネジ軸255の回転に伴って、ナット232とともに、ネジ軸255に沿って本体300の天板311の外部方向に送出される。これによって、第2支持ロッド231が送出され、それに接続された第1支持ロッド133及び副リフレクタ131が所定位置になるように移動される。
【0072】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第2支持ロッド231は、ロック装置160のロックピン163を挿入するための挿入孔234を有する。したがって、収納時において、第2支持ロッド231が上下方向に振動するのを防止することが可能である。また、第2支持ロッド231は、第1センサ装置156の突起155が当接する凹溝235a及び凹溝235bを含む。したがって、第1実施形態と同様に、凹溝235aによって第2支持ロッド231の送出の開始を検出でき、凹溝235bによって第2支持ロッド231の送出を終了させることを検出することができる。
【0073】
以上、本実施形態においては、アンテナ装置10が収納されている状態において、副反射器122の少なくとも一部が本体300の内部に収容され、展開時に本体300の外部に収容された部分が送出され、副リフレクタ131を所定の位置に配置させる。これにより、従来、副反射器122の高さ分だけコンパクトに収納することが困難であったが、よりコンパクトに収納することが可能となる。
【0074】
<その他>
第1実施形態及び第2実施形態においては、凹溝136a及び136c、又は凹溝235a及び235bを利用した。しかし、凹状に限定する必要はなく、他の形状によって突起155の当接状態を変化させるようにしてもよい。また、凹溝と突起によって状態を検出するのではなく、他の方法を利用して第2支持ロッド231の送出状態を検出してもよい。
【0075】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、主リフレクタがパラボラ形状に形成されたアンテナ装置10を例に説明したが、副リフレクタ131を介して電波を送出する方式をとるアンテナ装置であれば、いずれにも適用が可能である。また、第1実施形態及び第2実施形態においては、カセグレンアンテナの場合について説明したが、グレゴリアンアンテナなど、副反射器122と主反射器121及び輻射器110とが互いに一定距離離隔して配置されるようなアンテナであれば好適に適用することが可能である。
【0076】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、例えば小型衛星などの宇宙航行体1の場合について説明したが、アンテナ装置10は、他の用途に用いることも可能である。例えば、航空機や自動車に設置して、移動式の通信装置として利用することも可能である。
【0077】
各実施形態で説明した各要素を適宜組み合わせるか、それらを置き換えて構成することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 宇宙航行体
10 アンテナ装置
100 通信ユニット
120 反射器
121 主反射器
122 副反射器
150 送出装置
160 ロック装置
200 電源ユニット
300 本体
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10