IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図1
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図2
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図3
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図4
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図5
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図6
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図7
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図8
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図9
  • 特許-多層回路基板及びその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】多層回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230426BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230426BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H05K1/02 R
H05K3/00 J
H05K3/00 P
H05K3/46 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021525507
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2019023489
(87)【国際公開番号】W WO2020250381
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佑
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-072227(JP,A)
【文献】特開2015-135933(JP,A)
【文献】特開2013-162082(JP,A)
【文献】特開平10-213895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層され、各絶縁層の上面に配線パターンと基準マークが所定の位置関係で形成され、且つ、各層の基準マークが上方から見て重なる位置に形成された多層回路基板において、
前記各層の基準マークは、製造時の位置ずれを考慮して、画像処理により該基準マークの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分からその下の層の基準マークの特定のエッジ部分が食み出さないようにサイズ又は形状を変更して形成されている、多層回路基板であって、
前記各層の基準マークは、画像処理により該基準マークの中心座標を検出する際に前記特定のエッジ部分として内側のエッジ部分を認識する中空の形状に形成され、上の層の基準マークのサイズがその下の層の基準マークのサイズよりも製造時の最大位置ずれ量以上小さくなるように形成されている、多層回路基板。
【請求項2】
前記複数の絶縁層は、光透過性のある絶縁材料、もしくは光透過性が乏しくとも下層が透けて見えるほど極薄に設計された絶縁材料で形成されている、請求項1に記載の多層回路基板。
【請求項3】
前記各層の基準マークは、画像処理により該基準マークの中心座標を検出する際に前記特定のエッジ部分として外側のエッジ部分を認識する形状に形成され、上の層の基準マークのサイズがその下の層の基準マークのサイズよりも製造時の最大位置ずれ量以上大きくなるように形成されている、請求項1又は2に記載の多層回路基板。
【請求項4】
絶縁層の上面に配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成する工程と、
前記絶縁層の基準マークを上方からカメラで撮像してその画像を処理することで該基準マークの特定のエッジ部分を認識して該基準マークの中心座標を検出する工程と、
検出した前記基準マークの中心座標を基準にして前記絶縁層上に積層する絶縁層を位置決めして積層する工程と
を繰り返して多層回路基板を製造する方法において、
前記絶縁層の上面に配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成する工程で、基準マークの位置ずれを考慮して、上の層の基準マークの特定のエッジ部分からその下の層の基準マークの特定のエッジ部分が食み出さないように各層の基準マークのサイズ又は形状を変更して形成する、多層回路基板の製造方法であって、
配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成した下の絶縁層上に、検出した前記基準マークの中心座標を基準にして上の絶縁層を絶縁材料で形成すると共に、前記下の絶縁層直下に透過して見える基準マークの中心座標を基準にして前記上の絶縁層の上面に配線パターンと基準マークを位置決めして形成するという工程を繰り返して多層回路基板を製造する、多層回路基板の製造方法。
【請求項5】
絶縁層の上面に配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成する工程と、
前記絶縁層の基準マークを上方からカメラで撮像してその画像を処理することで該基準マークの特定のエッジ部分を認識して該基準マークの中心座標を検出する工程と、
検出した前記基準マークの中心座標を基準にして前記絶縁層上に積層する絶縁層を位置決めして積層する工程と
を繰り返して多層回路基板を製造する方法において、
前記絶縁層の上面に配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成する工程で、基準マークの位置ずれを考慮して、上の層の基準マークの特定のエッジ部分からその下の層の基準マークの特定のエッジ部分が食み出さないように各層の基準マークのサイズ又は形状を変更して形成する、多層回路基板の製造方法であって、
配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成した下の絶縁層上に、検出した前記基準マークの中心座標を基準にして上の絶縁層を絶縁材料で形成すると共に、同一ステージ上にてそのままワークの位置を保ったまま、絶縁層の上面に配線パターンと新たな基準マークを形成するという工程を繰り返して多層回路基板を製造する、多層回路基板の製造方法。
【請求項6】
3Dプリンタを使用して各層の絶縁層、配線パターン及び基準マークを形成する、請求項4又は5に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項7】
積層前の複数の絶縁層の上面に配線パターンと基準マークを所定の位置関係で形成した後に、各層の絶縁層を下の層の基準マークの中心座標を基準にして位置決めして積層するという工程を繰り返して多層回路基板を製造する、請求項4又は5に記載の多層回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数の絶縁層が積層され、各絶縁層の上面に配線パターンと基準マークが所定の位置関係で形成された多層回路基板及びその製造方法に関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、多層回路基板の製造方法は、様々な方法があり、例えば、積層前の複数の絶縁層の上面に配線パターンを形成した後に複数の絶縁層を積層する方法や、或は、配線パターンを形成した下の絶縁層上に、上の絶縁層を絶縁材料で形成し、当該上の絶縁層の上面に配線パターンを形成するという工程を繰り返して多層回路基板を製造する方法等が知られている。この多層回路基板の各層の配線パターンは、ビア等で層間接続する構造になっているため、層間の配線パターンの位置ずれ量が大きくなると、層間の接続不良や接続信頼性を低下させる原因となる。
【0003】
そこで、特許文献1(特開2018-1723号公報)に記載されているように、各層に基準マークを形成して、下の層上に上の層を積層する際に下の層の基準マークを上方からカメラで撮像してその画像を処理することで当該下の層の基準マークの位置を認識し、当該下の層の基準マークの位置を基準にして上の層を位置決めして下の層上に積層することで、層間の位置ずれ量を低減するようにしたものがある。
【0004】
この場合、各層の基準マークは各層の配線パターンの形成エリアの外側の余白の狭いスペースに形成されるため、各層の基準マークは上方から見て重なる位置に形成するのが一般的である。また、基準マークの位置は基準マークの中心座標で表され、積層時に上方から基準マークの特定のエッジ部分(例えば外側のエッジ部分等)を画像認識して、その特定のエッジ部分の位置から基準マークの中心座標を算出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-1723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の多層回路基板の薄型化の要求に応じて、各層の絶縁層が極限まで薄型化されているため、積層時に下の層の基準マークや配線パターンが透けて見えることがある。特に、各層の絶縁層を光透過性のある絶縁材料で形成した多層回路基板では、下の層の基準マークや配線パターンがより鮮明に透けて見える。このため、各層の同じ位置に同じ形状の基準マークを形成するように設計した場合でも、上の層の基準マークが製造公差による位置ずれにより下の層の基準マークと完全に重なって画像認識されることはなく、図10に示すように、各層の基準マークが製造時の位置ずれ量分だけ位置ずれして画像認識される。この画像認識では、透けて見える下の層の基準マークを上の層の基準マークと区別して認識することは困難であるため、画像認識する基準マークの形状は、位置ずれにより上の層の基準マークから食み出した下の層の基準マークの食み出し部分を含む1つの基準マークの形状として認識され、その形状の特定のエッジ部分の位置に基づいて基準マークの中心座標が検出されることになる。このため、画像処理による上の層の基準マークの中心座標の検出精度が製造時の各層の基準マークの位置ずれにより低下してしまう。この基準マークの中心座標の検出精度の低下は、製造する多層回路基板の層間の配線パターンの位置ずれ量を大きくして層間の接続信頼性を低下させる原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、複数の絶縁層が積層され、各絶縁層の上面に配線パターンと基準マークが所定の位置関係で形成され、且つ、各層の基準マークが上方から見て重なる位置に形成された多層回路基板において、前記各層の基準マークは、製造時の位置ずれを考慮して、画像処理により該基準マークの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分からその下の層の基準マークの特定のエッジ部分が食み出さないようにサイズ又は形状を変更して形成されている。換言すれば、上の層の基準マークの特定のエッジ部分がその下の層の基準マークの特定のエッジ部分を覆い隠すように各層の基準マークのサイズ又は形状を変更するようにしている。更に、前記各層の基準マークは、画像処理により該基準マークの中心座標を検出する際に前記特定のエッジ部分として内側のエッジ部分を認識する中空の形状に形成され、上の層の基準マークのサイズがその下の層の基準マークのサイズよりも製造時の最大位置ずれ量以上小さくなるように形成されている。
【0008】
この構成では、製造時の各層の基準マークの位置ずれを考慮して、画像処理により基準マークの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分からその下の層の基準マークの特定のエッジ部分が食み出さないように各層の基準マークがサイズ又は形状を変更して形成されているため、積層時に上方から画像認識される上の層の基準マークの特定のエッジ部分からその下の層の基準マークの特定のエッジ部分が食み出すことを防止できる。これにより、上の層の基準マークの特定のエッジ部分を精度良く画像認識して、その特定のエッジ部分の位置から上の層の基準マークの中心座標を精度良く検出することができ、製造する多層回路基板の各層の位置決め精度を向上して層間の接続信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は一実施例における多層回路基板の1層目と2層目を積層した構造を説明する図である。
図2図2は上の層の基準マークのサイズをその下の層の基準マークのサイズよりも大きくした第1例を示す上面図である。
図3図3図2のIII -III 線に沿って示す縦断面図である。
図4図4は上の層の基準マークの形状をその下の層の基準マーク全体を覆い隠すように変更した第2例を示す上面図である。
図5図5図4のIV-IV線に沿って示す縦断面図である。
図6図6は上の層の基準マークの形状をその下の層の基準マークの特定のエッジ部分である外周縁を覆い隠すように変更した第3例を示す上面図である。
図7図7図6のVII -VII 線に沿って示す縦断面図である。
図8図8は上の層の基準マークのサイズをその下の層の基準マークのサイズよりも小さくした第4例を示す上面図である。
図9図9図8のIX-IX線に沿って示す縦断面図である。
図10図10は従来の上の層の基準マークとその下の層の基準マークとの位置ずれを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書に開示した実施例を説明する。
【0011】
まず、図1に基づいて多層回路基板11の構成を説明する。
多層回路基板11は、複数の絶縁層12a,12bが積層され、各層の絶縁層12a,12bの上面に配線パターン13a,13bと基準マーク14a,14bが所定の位置関係で形成されている。各層の絶縁層12a,12bは、光透過性のある絶縁材料、もしくは、光透過性が乏しくとも下層が透けて見えるほど極薄に設計された絶縁材料で形成されている。絶縁材料としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス等を用いれば良い。各層の絶縁層12a,12bは、絶縁材料をシート状(フィルム状)に成形したものを積層しても良いし、或は、3Dプリンタを使用して絶縁材料のインクを吐出して1層目の絶縁層12aを形成し、その絶縁層12a上に順番に次の層の絶縁層12bを積み上げるように3次元的に積層造形するようにしても良い。
【0012】
各層の基準マーク14a,14bは、配線パターン13a,13bの形成エリアの外側の余白スペース(例えば各層の絶縁層12a,12bの4隅部又は4辺部等)に上方から見て重なる位置(同じ位置)に形成され、製造時の位置ずれが無ければ各層の基準マーク14a,14bの中心座標が一致するように設計されている。各基準マーク14a,14bの形状は、例えば十字形、円形、四角形、円環形等であり、要は、後述する特定のエッジ部分の位置から中心座標が一義的に定まる形状であれば良い。各層の基準マーク14a,14bの個数は4個に限定されず、2個以上であれば良い。
【0013】
各層の配線パターン13a,13bと基準マーク14a,14bは、両者間の位置関係を一定に維持するために各層の絶縁層12a,12bの上面に同じ導電材料で配線パターン形成技術により同時に形成されている。この配線パターン13a,13bと基準マーク14a,14bを形成する配線パターン形成技術は、例えば、プリント配線技術(エッチング法、メッキ法)、厚膜パターン形成法(スクリーン印刷法、描画法等)、薄膜パターン形成法(CVD法、PVD法等)のいずれかを使用しても良い。3Dプリンタを使用して多層回路基板11を造形する場合は、各層の絶縁層12a,12bを造形する毎にその絶縁層12a,12bの上面に導電材料である金属ナノ粒子のインクを吐出して各層の配線パターン13a,13bと基準マーク14a,14bを同時に印刷するようにすれば良い。
【0014】
前述したように、各層の配線パターン13a,13bは、ビア等で層間接続する構造になっているため、層間の配線パターン13a,13bの位置ずれ量が大きくなると、層間の接続不良や接続信頼性を低下させる原因となる。そこで、下の層上に上の層を積層する際に、下の層の基準マーク14aを上方からカメラ(図示せず)で撮像してその画像を処理することで当該下の層の基準マーク14aの位置を認識し、当該下の層の基準マーク14aの位置を基準にして上の層を位置決めして下の層上に積層することで、層間の位置ずれ量を低減するようにしている。この際、基準マーク14a,14bの位置は基準マーク14a,14bの中心座標で表され、積層時に上方から基準マーク14a,14bの特定のエッジ部分(例えば外側のエッジ部分等)を画像認識して、その特定のエッジ部分の位置から基準マーク14a,14bの中心座標を算出するようにしている。
【0015】
しかし、各層の基準マーク14a,14bは製造時の位置ずれ量分だけ位置ずれするため、従来のように、各層の同じ位置に同じ形状の基準マークを形成するように設計すると、画像認識する基準マークの形状は、位置ずれにより上の層の基準マークから食み出した下の層の基準マークの食み出し部分を含む1つの基準マークの形状として認識され、その形状の特定のエッジ部分の位置に基づいて基準マークの中心座標が検出されることになる。このため、画像処理による上の層の基準マークの中心座標の検出精度が製造時の各層の基準マークの位置ずれにより低下してしまい、それによって、製造する多層回路基板の層間の配線パターンの位置ずれ量が大きくなって層間の接続信頼性が低下してしまう。
【0016】
この対策として、本実施例では、各層の基準マーク14a,14bは、製造時の位置ずれを考慮して、画像処理により該基準マーク14a,14bの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分からその下の層の基準マーク14a,14bの特定のエッジ部分が食み出さないようにサイズ又は形状を変更して形成されている。換言すれば、上の層の基準マーク14a,14bの特定のエッジ部分がその下の層の基準マーク14a,14bの特定のエッジ部分を覆い隠すように各層の基準マーク14a,14bのサイズ又は形状を変更するようにしている。以下、各層の基準マーク14a,14bの形成方法について4つの例を用いて説明する。
【0017】
図2及び図3に示す第1例は、上の層の基準マーク14bのサイズをその下の層の基準マーク14aのサイズよりも大きくした例である。この例では、各層の基準マーク14a,14bを十字形に形成すると共に、上の層の基準マーク14bのサイズをその下の層の基準マーク14aのサイズよりも製造時の最大位置ずれ量以上大きくして、各層の位置ずれがあっても、上の層の基準マーク14bが下の層の基準マーク14a全体を覆い隠すように構成されている。これにより、画像認識の対象となる上の層の基準マーク14bの特定のエッジ部分からその下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分が食み出さないように構成されている。
【0018】
図4及び図5に示す第2例は、上の層の基準マーク14bの形状をその下の層の基準マーク14aの形状から変更した例である。この例では、下の層の基準マーク14aの形状を十字形に形成し、上の層の基準マーク14bの形状を円形に形成すると共に、上の層の円形の基準マーク14bの直径をその下の層の十字形の基準マーク14aの縦・横の長さ寸法よりも製造時の最大位置ずれ量以上大きくして、各層の位置ずれがあっても、上の層の円形の基準マーク14bがその下の層の十字形の基準マーク14a全体を覆い隠すように構成されている。これにより、画像認識の対象となる上の層の基準マーク14bの特定のエッジ部分からその下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分が食み出さないように構成されている。
【0019】
図6及び図7に示す第3例は、上の層の基準マーク14bの形状をその下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分である外周縁を覆い隠すように変更した第3例である。この例では、下の層の基準マーク14aの形状を円形に形成し、上の層の基準マーク14bの形状を円環形に形成し、上の層の円環形の基準マーク14bの外周の直径をその下の層の円形の基準マーク14aの直径よりも製造時の最大位置ずれ量以上大きくすると共に、上の層の円環形の基準マーク14bの内周縁の直径をその下の層の円形の基準マーク14aの直径よりも製造時の最大位置ずれ量以上小さくすることで、各層の位置ずれがあっても、上の層の円環形の基準マーク14bがその下の層の円形の基準マーク14aの特定のエッジ部分である外周縁を覆い隠すように構成されている。これにより、画像認識の対象となる上の層の円環形の基準マーク14の特定のエッジ部分(外周縁)からその下の層の円形の基準マーク14aの特定のエッジ部分(外周縁)が食み出さないように構成されている。この構成では、画像認識の際に上の層の円環形の基準マーク14bの内周側に下の層の円形の基準マーク14aの中心側の部分が透けて見えて、上の層の円環形の基準マーク14bの内周縁を下の層の円形の基準マーク14aと区別して認識できないが、円環形の基準マーク14bの内周縁は、当該基準マーク14bの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分ではないため、問題ない。基準マーク14bの特定のエッジ部分ではない内周縁は、円形でなくても良く、四角形等、どの様な形状であっても良い。
【0020】
図8及び図9に示す第4例は、上の層の基準マーク14bのサイズを下の層の基準マーク14aのサイズよりも小さくした第4例である。この例では、各層の基準マーク14a,14bを中空の形状である円環形に形成し、この円環形の基準マーク14a,14bの内側のエッジ部分(内周縁)を基準マーク14a,14bの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分としている。この例では、上の層の基準マーク14bの内周縁の直径をその下の層の基準マーク14aの内周縁の直径よりも製造時の最大位置ずれ量以上小さくすることで、上の層の円環形の基準マーク14bが下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分である内周縁を覆い隠して、各層の位置ずれがあっても、上の層の基準マーク14bの内周側にその下の層の基準マーク14aが食み出して透けて見えないようにしている。この場合も、基準マーク14a,14bの特定のエッジ部分ではない外周縁は、円形でなくても良く、四角形等、どの様な形状であっても良い。
【0021】
以上のように構成した多層回路基板11を製造する方法は、様々な方法がある。
【0022】
例えば、絶縁層12aの上面に配線パターン13aと基準マーク14aを所定の位置関係で形成する工程と、前記絶縁層12aの基準マーク14aを上方からカメラで撮像してその画像を処理することで該基準マーク14aの特定のエッジ部分を認識して該基準マーク14aの中心座標を検出する工程と、検出した基準マーク14aの中心座標を基準にして前記絶縁層12a上に積層する絶縁層12bを位置決めして積層する工程とを繰り返して多層回路基板11を製造する方法がある。この方法では、絶縁層12aの上面に配線パターン13aと基準マーク14aを所定の位置関係で形成する工程で、製造時の層間の基準マーク14aの最大位置ずれ量を考慮して、上の層の基準マーク14bの特定のエッジ部分からその下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分が食み出さないように、換言すれば、上の層の基準マーク14bの特定のエッジ部分がその下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分を覆い隠すように各層の基準マーク14a,14bのサイズ又は形状を変更して形成するようにすれば良い。ここで、製造時の層間の基準マーク14a,14bの最大位置ずれ量は、例えば、製造装置の位置決め性能等から設定しても良いし、或は、試作品を作製する過程で取得した試作データから設定しても良い。また、生産管理者が最初に基準マーク14a,14bの最大位置ずれ量を想定して暫定的に設定し、その後の生産で取得した生産実績データに基づいて不良発生率が少なくなるように最大位置ずれ量の設定値を随時修正するようにしても良い。
【0023】
また、例えば1つの加工ステージに対して樹脂インクと金属回路用インクの印刷ヘッドを備える形態をもった3Dプリンタを使用する場合は、絶縁材料のインクを吐出して1層目の絶縁層12aを形成して、1層目の絶縁層12aの上面に金属ナノ粒子のインクを吐出して配線パターン13aと基準マーク14aを所定の位置関係で形成して1層目の回路層を形成し、以後、同一ステージ上にてそのままワークの位置を保ったまま、前記絶縁層12aの基準マーク14aを上方からカメラで撮像してその画像を処理することで該基準マーク14aの特定のエッジ部分を認識して該基準マーク14aの中心座標を検出する工程と、検出した基準マーク14aの中心座標を基準にして、前記絶縁層12a上に積層する絶縁層12bとその表面に印刷する金属ナノ粒子の配線パターン13bを位置決めして形成する。その配線パターン13bとともに基準マーク14bを所定の位置関係で形成してn層目(n=2,3,…)の回路層を形成する工程を繰り返して多層回路基板11を製造するようにすれば良い。
【0024】
或は、配線パターン13aと基準マーク14aを所定の位置関係で形成した下の絶縁層12a上に、検出した前記基準マーク14aの中心座標を基準にして上の絶縁層12bを絶縁材料で形成すると共に、前記下の絶縁層12a直下に透過して見える基準マーク14aの中心座標を基準にして前記上の絶縁層12bの上面に配線パターン13bと基準マーク14bを位置決めして形成するという工程を繰り返して多層回路基板11を製造するようにしても良い。
【0025】
その他の製造方法として、積層前の複数の絶縁層12a,12bの上面にそれぞれ配線パターン13a,13bと基準マーク14a,14bを所定の位置関係で形成した後に、各層の絶縁層12a,12bを下の層の基準マーク14aの中心座標を基準にして位置決めして積層して多層回路基板11を製造するようにしても良い。
【0026】
以上説明した本実施例によれば、製造時の各層の基準マーク14a,14bの位置ずれを考慮して、画像処理により上の層の基準マーク14bの中心座標を検出する際に認識する特定のエッジ部分からその下の層の基準マーク14aの特定のエッジ部分が食み出さないように各基準マーク14a,14bがサイズ又は形状を変更して形成しているため、積層時に上方から画像認識される上の層の基準マーク14bの特定のエッジ部分から下の層の基準マーク14aが食み出すことを防止できる。これにより、上の層の基準マーク14bの特定のエッジ部分を精度良く画像認識して、その特定のエッジ部分の位置から上の層の基準マーク14bの中心座標を精度良く検出することができ、製造する多層回路基板11の各層の位置決め精度を向上して層間の接続信頼性を向上できる。
【0027】
尚、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、各層の絶縁層12a,12bに基準マーク14a,14bを形成する位置を変更したり、基準マーク14a,14bの形状を変更したり、絶縁層12a,12bの積層数を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
11…多層回路基板、12a,12b…絶縁層、13a,13b…配線パターン、14a,14b…基準マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10