(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】撮像装置、システム、像ぶれ補正方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G03B 5/08 20210101AFI20230426BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20230426BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230426BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20230426BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230426BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20230426BHJP
【FI】
G03B5/08
G03B17/18
G03B15/00 U
H04N23/68
H04N23/60
G03B5/00 G
(21)【出願番号】P 2021543894
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019035004
(87)【国際公開番号】W WO2021044585
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】321001056
【氏名又は名称】OMデジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 仁司
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230316(WO,A1)
【文献】特開2016-5160(JP,A)
【文献】特開2015-215427(JP,A)
【文献】特開2015-181266(JP,A)
【文献】特開2013-5244(JP,A)
【文献】特開2012-89960(JP,A)
【文献】特開2012-10327(JP,A)
【文献】特開2011-114357(JP,A)
【文献】特開2014-209795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
G03B 17/18
G03B 15/00
H04N 23/68
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
被写体像を結像する光学系と、
前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像装置の複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、
前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記複数の回転方向の角速度を第1基準値として保持する第1メモリと、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度から、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる自転角速度の成分を取り除くことに依り取得された、前記複数の回転方向の角速度を第2基準値として保持する第2メモリと、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置の動作モードに応じて、前記第1メモリに保持された第1基準値又は前記第2メモリに保持された第2基準値を減算する減算回路と、
前記減算回路の減算結果に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、
前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置であって、
前記撮像装置の複数方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記複数方向の加速度に基づいて、前記撮像装置の仰角及び前記光学系の光軸回りの傾きを前記撮像装置の姿勢として判定する姿勢判定回路と、
前記撮像装置の少なくとも緯度を含む位置を検出する位置センサと、
前記撮像装置の撮像方向の方位を検出する方位センサと、
前記静止状態である時の前記加速度センサに依り検出された前記複数方向の加速度に基づいて前記姿勢判定回路に依り判定された姿勢と、前記静止状態である時の前記位置センサに依り検出された位置に含まれる緯度と、前記静止状態である時の前記方位センサに依り検出された方位とに基づいて、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度を算出し、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記第1基準値から前記自転角速度を減算することに依り、前記第2基準値を算出する第2基準値算出回路と、
を更に備えることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置であって、
前記減算回路は、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合に前記第1基準値を減算し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合に前記第2基準値を減算する、
ことを特徴とする。
【請求項4】
請求項2又は3記載の撮像装置であって、
表示又は音声に依りユーザに通知を行う通知装置、
を更に備え、
前記通知装置は、少なくとも前記第2基準値の算出が行われる際に、前記撮像装置を静止状態にさせることをユーザに促すための通知を行う、
ことを特徴とする。
【請求項5】
請求項1記載の撮像装置であって、
前記角速度センサの温度を検出する温度センサと、
前記角速度センサを加熱又は冷却する調温回路と、
前記角速度センサの温度を、前記第2基準値の取得に使用された前記角速度が検出された時の前記角速度センサの温度に保つべく、前記温度センサに依り検出された温度に基づいて前記調温回路を制御する調温制御回路と、
を更に備えることを特徴とする。
【請求項6】
請求項5記載の撮像装置であって、
前記減算回路は、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合に前記第1基準値を減算し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合に前記第2基準値を減算し、
前記調温制御回路は、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合に動作する、
ことを特徴とする。
【請求項7】
撮像装置であって、
被写体像を結像する光学系と、
前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像装置の第1回転方向、第2回転方向、及び第3回転方向の角速度を検出する角速度センサと、
前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第1回転方向、前記第2回転方向、及び前記第3回転方向の角速度を第1基準値として保持する第1メモリと、
前記撮像装置が地面に対して第1姿勢で静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第1回転方向の角速度と、前記撮像装置が地面に対して第2姿勢で静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第2回転方向の角速度と、前記撮像装置が地面に対して第3姿勢で静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第3回転方向の角速度とを第2基準値として保持する第2メモリと、
前記第1回転方向、前記第2回転方向、及び前記第3回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置の動作モードに応じて、前記第1メモリに保持された第1基準値又は前記第2メモリに保持された第2基準値を減算する減算回路と、
前記減算回路の減算結果に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、
前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【請求項8】
請求項7記載の撮像装置であって、
前記減算回路は、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合に前記第1基準値を減算し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合に前記第2基準値を減算する、
ことを特徴とする。
【請求項9】
請求項7又は8記載の撮像装置であって、
表示又は音声に依りユーザに通知を行う通知装置、
を更に備え、
前記通知装置は、
前記第2基準値としての前記第1回転方向の角速度の検出が行われる際に、前記撮像装置を前記第1姿勢で静止状態にさせることをユーザに促すための通知を行い、
前記第2基準値としての前記第2回転方向の角速度の検出が行われる際に、前記撮像装置を前記第2姿勢で静止状態にさせることをユーザに促すための通知を行い、
前記第2基準値としての前記第3回転方向の角速度の検出が行われる際に、前記撮像装置を前記第3姿勢で静止状態にさせることをユーザに促すための通知を行う、
ことを特徴とする。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか1項に記載の撮像装置であって、
前記第1回転方向は、前記撮像装置のPitch方向であり、
前記第2回転方向は、前記撮像装置のYaw方向であり、
前記第3回転方向は、前記撮像装置のRoll方向であり、
前記第1姿勢は、前記撮像装置の撮像方向の方位が北方位であって前記Pitch方向の回転軸が水平になる姿勢であり、
前記第2姿勢は、前記撮像装置の撮像方向の方位が北方位であって前記Yaw方向の回転軸が水平になる姿勢であり、
前記第3姿勢は、前記撮像装置の撮像方向の方位が東方位であって前記Roll方向の回転軸が水平になる姿勢である、
ことを特徴とする。
【請求項11】
請求項7乃至10の何れか1項に記載の撮像装置であって、
前記減算回路の減算結果に対して、高周波数成分を遮断するフィルタ処理を行うフィルタ回路と、
前記減算回路の減算結果に基づいて、前記撮像装置が固定されているか否かを判定する固定判定回路と、
を更に備え、
前記像ぶれ補正量算出回路は、前記撮像装置が固定されていると前記固定判定回路に依り判定された場合に、前記フィルタ回路の処理結果に基づいて前記像ぶれ補正量を算出する、
ことを特徴とする。
【請求項12】
請求項7乃至10の何れか1項に記載の撮像装置であって、
前記角速度センサに依り検出された前記第1回転方向、前記第2回転方向、及び前記第3回転方向の角速度の振幅が所定の振幅以下であるか否かを判定する振幅判定回路と、
前記第1回転方向、前記第2回転方向、及び前記第3回転方向の各回転方向毎に、所定期間の間に前記減算回路で得られた減算結果の平均値を算出する平均値算出回路と、
を更に備え、
前記像ぶれ補正量算出回路は、前記所定の振幅以下であると前記振幅判定回路に依り判定された場合に、前記平均値算出回路の算出結果に基づいて前記像ぶれ補正量を算出する、
ことを特徴とする。
【請求項13】
撮像装置であって、
被写体像を結像する光学系と、
前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像装置の複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、
前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記複数の回転方向の角速度を基準値として保持する第1メモリと、
地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度を保持する第2メモリと、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から前記第1メモリに保持された基準値を減算する減算回路と、
前記撮像装置の動作モードに応じて、前記減算回路の減算結果、又は、前記第2メモリに保持された前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、
前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【請求項14】
請求項13記載の撮像装置であって、
前記像ぶれ補正量算出回路は、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合に前記減算回路の減算結果に基づいて前記像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合に前記第2メモリに保持された前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記像ぶれ補正量を算出する、
ことを特徴とする。
【請求項15】
請求項13又は14記載の撮像装置であって、
前記撮像装置の複数方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記複数方向の加速度に基づいて、前記撮像装置の仰角及び前記光学系の光軸回りの傾きを前記撮像装置の姿勢として判定する姿勢判定回路と、
前記撮像装置の少なくとも緯度を含む位置を検出する位置センサと、
前記撮像装置の撮像方向の方位を検出する方位センサと、
前記姿勢、前記緯度、及び前記方位に基づいて、前記第2メモリに保持される前記複数の回転方向の自転角速度を算出する自転角速度算出回路と、
を更に備えることを特徴とする。
【請求項16】
請求項13又は14記載の撮像装置であって、
外部装置と通信を行う通信インタフェース、
を更に備え、
前記通信インタフェースは、前記第2メモリに保持される前記複数の回転方向の自転角速度を外部装置から受信する、
ことを特徴とする。
【請求項17】
請求項16記載の撮像装置であって、
前記撮像装置の複数方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記複数方向の加速度に基づいて、前記撮像装置の仰角及び前記光学系の光軸回りの傾きを前記撮像装置の姿勢として判定する姿勢判定回路と、
を更に備え、
前記第2メモリに保持された自転角速度を、前記姿勢判定回路の判定結果に基づいて補正する、
ことを特徴とする。
【請求項18】
情報処理端末と撮像装置を含むシステムであって、
前記情報処理端末は、
星図データを保持するメモリと、
現在日時を取得する日時取得回路と、
前記情報処理端末の少なくとも緯度を含む位置を検出する位置センサと、
前記現在日時及び前記緯度に基づいて、前記星図データに応じた星図における地平線上の部分を少なくとも含む部分星図を表示エリアとして決定する表示エリア決定回路と、
前記表示エリアとして決定された部分星図を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイに表示された部分星図において撮影対象として指示された天体の地平座標を取得する地平座標取得回路と、
前記緯度と、前記天体の地平座標から取得される方位及び仰角とに基づいて、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる複数の回転方向の自転角速度を算出する自転角速度算出回路と、
前記自転角速度算出回路に依り算出された前記複数の回転方向の自転角速度を前記撮像装置に送信する通信インタフェースと、
を備え、
前記撮像装置は、
被写体像を結像する光学系と、
前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、
前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記複数の回転方向の角速度を基準値として保持する第1メモリと、
前記情報処理端末から送信された前記複数の回転方向の自転角速度を受信する通信インタフェースと、
前記通信インタフェースに依り受信された前記複数の回転方向の自転角速度を保持する第2メモリと、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から前記第1メモリに保持された基準値を減算する減算回路と、
前記撮像装置の動作モードに応じて、前記減算回路の減算結果、又は、前記第2メモリに保持された前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、
前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、
を備える、
ことを特徴とする。
【請求項19】
請求項18記載のシステムであって、
前記像ぶれ補正量算出回路は、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合に前記減算回路の減算結果に基づいて前記像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合に前記第2メモリに保持された前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記像ぶれ補正量を算出する、
ことを特徴とする。
【請求項20】
請求項18又は19記載のシステムであって、
前記撮像装置は、
前記撮像装置の複数方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記複数方向の加速度に基づいて、前記撮像装置の仰角及び前記光学系の光軸回りの傾きを前記撮像装置の姿勢として判定する姿勢判定回路と、
を更に備え、
前記撮像装置は、前記第2メモリに保持された自転角速度を、前記姿勢判定回路の判定結果に基づいて補正する、
ことを特徴とする。
【請求項21】
複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子とを備える撮像装置が行う像ぶれ補正方法であって、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度を減算し、
前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合は、前記減算の結果に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合は、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、
前記像ぶれ補正量に基づいて、前記撮像素子、又は、前記光学系の一部及び前記撮像素子を移動させる、
ことを特徴とする。
【請求項22】
複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子とを備える撮像装置に、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度を減算し、
前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合は、前記減算の結果に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合は、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、
前記像ぶれ補正量に基づいて、前記撮像素子、又は、前記光学系の一部及び前記撮像素子を移動させる、
という処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項23】
複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子とを備える撮像装置に、
前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度を減算し、
前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合は、前記減算の結果に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合は、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、
前記像ぶれ補正量に基づいて、前記撮像素子、又は、前記光学系の一部及び前記撮像素子を移動させる、
という処理を実行させるプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日周運動に追従して天体を撮影する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
目視では見ることができない天体をカメラで撮影する場合は、数秒以上の長時間露光が必要であるものの、カメラを三脚等に固定して撮影したとしても露光中に日周運動の影響に依り星が流れてしまう。こういった日周運動の影響は、カメラの焦点距離が長くなるほど大きくなり、星が流れずに撮影できる露光時間も短くなる。
【0003】
例えば、焦点距離1000mmのカメラで星雲を撮影する場合を考える。
地球の自転の回転速度(自転角速度)が約0.004167dps(degree per second)であることから、1秒間に生じる像移動量(カメラの撮像素子に結像される被写体像の移動量)は約73μmになり、特定のカメラシステムのマウント規格に依れば1600万画素のイメージセンサで約20ピクセルに相当する。
【0004】
これに依る撮影画像への影響は、カメラの緯度や向き(撮影方向の方位、仰角)に依り変化するものの、上述の撮影条件下では、カメラを静止させた状態で撮影したとしても星が流れてしまう。
【0005】
星が流れずに撮影できる方法の1つとして、赤道儀を使う方法がある。赤道儀は、回転軸を地軸と合わせて地球の自転を打ち消すべく回転することに依り、赤道儀に設置されたカメラの光軸が天体を追従できる構成を有する。
【0006】
しかしながら、赤道儀はコストや機材の設置の手間等を考慮すると、手軽に使用できる方法ではない。また、子午線を超えて撮影しようとする場合は、撮影中に設定の変更が必要になる等、様々な問題が生じる。
【0007】
一方で、カメラ単体で天体撮影を可能にする技術が知られている。例えば、特許文献1には、撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、撮影装置の姿勢情報、及び撮影光学系の焦点距離情報を入力し、その全情報を用いて、天体像を撮像素子の所定の撮像領域に対して固定するための撮影装置に対する相対移動量を算出し、その相対移動量に基づき、所定の撮像領域と天体像の少なくとも一方を移動させて撮影することで、天体に追従した撮影を可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示の技術では、撮影の度に、撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、撮影装置の姿勢情報、及び撮影光学系の焦点距離情報が入力され、その全情報を用いて相対移動量の算出が行われる。即ち、撮影の度に、こういった複雑な計算が必要になる。また、特許文献1に開示の相対移動量の算出方法では、天頂付近の撮影を行う場合に、算出誤差が大きくなるという問題がある。
【0010】
一方で、センサの検出精度は日夜向上しており、特に角速度センサにおいては地球の自転(約0.004167dps)を検出可能な感度を持つものも登場してきている。
本発明は、上記実情に鑑み、複雑な計算を必要とせず、天頂付近でも精度を低下させることなく天体追従撮影を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、撮像装置であって、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像装置の複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記複数の回転方向の角速度を第1基準値として保持する第1メモリと、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度から、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる自転角速度の成分を取り除くことに依り取得された、前記複数の回転方向の角速度を第2基準値として保持する第2メモリと、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置の動作モードに応じて、前記第1メモリに保持された第1基準値又は前記第2メモリに保持された第2基準値を減算する減算回路と、前記減算回路の減算結果に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、を備える。
【0012】
本発明の他の一態様は、撮像装置であって、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像装置の第1回転方向、第2回転方向、及び第3回転方向の角速度を検出する角速度センサと、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第1回転方向、前記第2回転方向、及び前記第3回転方向の角速度を第1基準値として保持する第1メモリと、前記撮像装置が地面に対して第1姿勢で静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第1回転方向の角速度と、前記撮像装置が地面に対して第2姿勢で静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第2回転方向の角速度と、前記撮像装置が地面に対して第3姿勢で静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記第3回転方向の角速度とを第2基準値として保持する第2メモリと、前記第1回転方向、前記第2回転方向、及び前記第3回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置の動作モードに応じて、前記第1メモリに保持された第1基準値又は前記第2メモリに保持された第2基準値を減算する減算回路と、前記減算回路の減算結果に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、を備える。
【0013】
本発明の更に他の一態様は、撮像装置であって、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像装置の複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記複数の回転方向の角速度を基準値として保持する第1メモリと、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度を保持する第2メモリと、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から前記第1メモリに保持された基準値を減算する減算回路と、前記撮像装置の動作モードに応じて、前記減算回路の減算結果、又は、前記第2メモリに保持された前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、を備える。
【0014】
本発明の更に他の一態様は、情報処理端末と撮像装置を含むシステムであって、前記情報処理端末は、星図データを保持するメモリと、現在日時を取得する日時取得回路と、前記情報処理端末の少なくとも緯度を含む位置を検出する位置センサと、前記現在日時及び前記緯度に基づいて、前記星図データに応じた星図における地平線上の部分を少なくとも含む部分星図を表示エリアとして決定する表示エリア決定回路と、前記表示エリアとして決定された部分星図を表示するディスプレイと、前記ディスプレイに表示された部分星図において撮影対象として指示された天体の地平座標を取得する地平座標取得回路と、前記緯度と、前記天体の地平座標から取得される方位及び仰角とに基づいて、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる複数の回転方向の自転角速度を算出する自転角速度算出回路と、前記自転角速度算出回路に依り算出された前記複数の回転方向の自転角速度を前記撮像装置に送信する通信インタフェースと、を備え、前記撮像装置は、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、前記複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された前記複数の回転方向の角速度を基準値として保持する第1メモリと、前記情報処理端末から送信された前記複数の回転方向の自転角速度を受信する通信インタフェースと、前記通信インタフェースに依り受信された前記複数の回転方向の自転角速度を保持する第2メモリと、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から前記第1メモリに保持された基準値を減算する減算回路と、前記撮像装置の動作モードに応じて、前記減算回路の減算結果、又は、前記第2メモリに保持された前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて、前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出する像ぶれ補正量算出回路と、前記撮像素子を移動させる第1駆動機構、又は、前記光学系の一部を移動させる第2駆動機構及び前記第1駆動機構を、前記像ぶれ補正量に基づいて駆動する駆動制御回路と、を備える。
【0015】
本発明の更に他の一態様は、複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子とを備える撮像装置が行う像ぶれ補正方法であって、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度を減算し、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合は、前記減算の結果に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合は、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記像ぶれ補正量に基づいて、前記撮像素子、又は、前記光学系の一部及び前記撮像素子を移動させる。
【0016】
本発明の更に他の一態様は、複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子とを備える撮像装置に、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度を減算し、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合は、前記減算の結果に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合は、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記像ぶれ補正量に基づいて、前記撮像素子、又は、前記光学系の一部及び前記撮像素子を移動させる、という処理を実行させるプログラムである。
【0017】
本発明の更に他の一態様は、複数の回転方向の角速度を検出する角速度センサと、被写体像を結像する光学系と、前記光学系に依り結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子とを備える撮像装置に、前記複数の回転方向の各回転方向毎に、前記角速度センサに依り検出された角速度から、前記撮像装置が地面に対して静止状態である時の前記角速度センサに依り検出された角速度を減算し、前記撮像装置の動作モードが第1モードである場合は、前記減算の結果に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記撮像装置の動作モードが第2モードである場合は、地球の自転に依り前記撮像装置に生じる前記複数の回転方向の自転角速度に基づいて前記撮像素子に結像された被写体像のぶれを打ち消すための像ぶれ補正量を算出し、前記像ぶれ補正量に基づいて、前記撮像素子、又は、前記光学系の一部及び前記撮像素子を移動させる、という処理を実行させるプログラムを記録した記録媒体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に依れば、複雑な計算を必要とせず、天頂付近でも精度を低下させることなく天体追従撮影が可能になる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る撮像装置であるカメラの軸と回転を定義する図である。
【
図2】地球上の位置での自転の影響を示す図である。
【
図3】正姿勢であるカメラの光軸の方位に依る自転の影響を示す図である。
【
図4】更にカメラの姿勢(仰角)に依る自転の影響を示す図である。
【
図5】更にカメラの姿勢(光軸回りの傾き)に依る自転の影響を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【
図8】第1の実施形態に係るぶれ補正マイコンが行うセンサ基準値算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
【
図11】第2の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【
図12】第3の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
【
図13】第3の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【
図14】キャリブレーション処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】EVFに表示される画面例を示す図である。
【
図16】第3の実施形態の変形例に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【
図17】第4の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【
図18】第4の実施形態に係るシステムコントローラが行う撮影に係る制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】第4の実施形態に係る撮像素子とぶれ補正マイコンと駆動部の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図20】第5の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【
図21】第6の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
【
図22】情報処理端末の構成を示すブロック図である。
【
図23】情報処理端末のシステムコントローラが行う撮影に係る制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図24】第6の実施形態に係るぶれ補正マイコンの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
はじめに、実施の形態に係る撮像装置であるカメラに対して地球の自転が及ぼす影響について、
図1乃至
図5を用いて説明する。
【0021】
図1は、実施の形態に係る撮像装置であるカメラの軸と回転を定義する図である。
図1に示したとおり、実施の形態に係る撮像装置であるカメラ1において、X軸、Y軸、Z軸、Pitch回転、Yaw回転、及びRoll回転を、次のとおりに定義する。
【0022】
ユーザがカメラ1を水平に構えた状態を正姿勢とし、その時の左右方向、上下方向となるカメラ1の方向をカメラ1のX軸、Y軸とし、カメラ1の光軸方向をカメラ1のZ軸とする。また、カメラ1のX軸回りの回転をPitch回転とし、カメラ1のY軸回りの回転をYaw回転とし、カメラ1のZ軸回りの回転をRoll回転とする。これに伴い、カメラ1のX軸回りの回転方向をPitch方向といい、カメラ1のY軸回りの回転方向をYaw方向といい、カメラ1のZ軸回りの回転方向をRoll方向という。
【0023】
図2は、地球上の位置での自転の影響を示す図である。
図2に示したとおり、地球上の緯度θ
latの位置では、自転の回転軸(地軸)は、水平に対してθ
lat度の傾きを有する。このため、自転の回転ベクトル(ω
rot)は、下記式(1)、(2)に示すとおり、水平軸の回転ベクトル(ω
h)と垂直軸の回転ベクトル(ω
v)に分解することができる。
ω
v=ω
rot×SINθ
lat 式(1)
ω
h=ω
rot×COSθ
lat 式(2)
【0024】
図3は、正姿勢であるカメラ1の光軸の方位に依る自転の影響を示す図である。
図3に示したとおり、カメラ1の光軸の方位に依り、上述の回転ベクトル(ω
h)は、更に、下記式(3)、(4)に示すとおり、カメラ1のZ軸回りの回転ベクトル(ω
hz)とX軸回りの回転ベクトル(ω
hx)とに分解することができる。
ω
hz=ω
h×COSθ
direction=ω
rot×COSθ
lat×COSθ
direction 式(3)
ω
hx=ω
h×SINθ
direction=ω
rot×COSθ
lat×SINθ
direction 式(4)
【0025】
図4は、更にカメラ1の姿勢(仰角)に依る自転の影響を示す図である。
図4に示したとおり、更にカメラ1の仰角θ
eleに依り、上述の回転ベクトル(ω
v)と回転ベクトル(ω
hz)から、下記式(5)、(6)に示すとおり、カメラ1のZ軸回りの回転ベクトル(ω
z)とY軸回りの回転ベクトル(ω
y‘)とが得られる。
ω
z=ω
hzz+ω
vz=ω
hz×COSθ
ele+ω
v×SINθ
ele 式(5)
ω
y‘=ω
vy-ω
hzy
=ω
v×COSθ
ele―ω
hz×SINθ
ele
=ω
rot×SINθ
lat×COSθ
ele-ω
rot×COSθ
lat×COSθ
direction×SINθ
ele 式(6)
【0026】
図5は、更にカメラ1の姿勢(光軸回りの傾き)に依る自転の影響を示す図である。
図5に示したとおり、更にカメラ1の光軸回りの傾きθ
slopeに依り、上述の回転ベクトル(ω
hx)と回転ベクトル(ω
y‘)から、下記式(7)、(8)に示すとおり、カメラ1のX軸回りの回転ベクトル(ω
x)とY軸回りの回転ベクトル(ω
y)とが得られる。
ω
x=ω
hxx-ω
y‘x=ω
hx×COSθ
slope-ω
y‘×SINθ
slope 式(7)
ω
y=ωhxy+ω
y‘y=ω
hx×SINθ
slope+ω
y‘×COSθ
slope 式(8)
【0027】
以上に依り、カメラ1のX軸、Y軸、及びZ軸の各軸回り(Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向)への自転の影響は、下記式(9)、(10)、(11)に依り算出することができる。
ωx=ωrot×COSθlat×SINθdirection×COSθslope
―(ωrot×SINθlat×COSθele―ωrot×COSθlat×COSθdirection×SINθele)×SINθslope 式(9)
ωy=ωrot×COSθlat×SINθdirection×SINθslope
+(ωrot×SINθlat×COSθele―ωrot×COSθlat×COSθdirection×SINθele)×COSθslope 式(10)
ωz=ωrot×COSθlat×COSθdirection×COSθele+ωrot×SINθlat×SINθele
式(11)
【0028】
以上のとおり、地球の自転がカメラ1の各軸回りに与える影響は、カメラ1の緯度、姿勢(仰角、光軸回りの傾き)、向いている方位に依って変化する。なお、カメラ1が向いている方位は、カメラ1の撮影方位、撮像方位、及び光軸の方位でもある。
【0029】
カメラ1が備える角速度センサの基準値(無回転時の角速度センサの出力値)を地球上で求める場合、自転の影響を含んだ基準値が得られてしまう。この基準値を、以下では静止時基準と呼ぶことにする。これに対して、自転の影響も排除して完全な静止時の角速度センサの出力値を、以下ではセンサ基準値と呼ぶことにする。
【0030】
例えば、センサ基準値を算出し、角速度センサの出力値から減算することで、自転を含めた角速度(回転速度)を求めることができる。この角速度に基づいて手ぶれ補正機構で像ぶれ補正を行うことに依り、地球外の被写体である星雲や星を、日周運動の影響を受けずに撮影することが可能になる。
【0031】
以上を踏まえて、以下、各実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図6は、第1の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
図6に示したとおり、カメラ1は、光学系2、撮像素子3、駆動部4、システムコントローラ5、ぶれ補正マイコン6、角速度センサ7、加速度センサ8、方位センサ9、位置センサ10、EVF(Electronic View Finder)11、及び操作スイッチ部(操作SW部)12を含む。
【0032】
光学系2は、被写体からの光束を被写体像として撮像素子3の撮像面に結像する。光学系2は、例えば、フォーカスレンズやズームレンズを含む複数のレンズから構成される。この場合、フォーカスレンズ等の移動は、システムコントローラ5の制御の下、図示しないレンズ駆動機構の駆動に依り行われる。
【0033】
撮像素子3は、光学系2に依り撮像面に結像された被写体像を、画素信号となる電気信号に変換する。撮像素子3は、例えば、CCD(charge coupled device)又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のイメージセンサである。
【0034】
駆動部4は、撮像素子3を撮像面に平行な方向(光学系2の光軸に対して垂直な方向でもある)へ移動させる駆動機構であり、撮像素子3を並進移動させたり回転移動させたりすることが可能である。駆動部4は、撮像素子3を移動させるための複数のアクチュエータを含んで構成される。複数のアクチュエータは、例えばVCM(Voice Coil Motor)である。
【0035】
システムコントローラ5は、撮像素子3に依り変換された電気信号を画像データとして読み出し、読み出した画像データに対して様々な画像処理を行う。また、画像処理した画像データをEVF11に表示させたり、図示しないメモリ(例えば、メモリカード等の着脱自在の記録媒体)に記録させたりする。また、システムコントローラ5は、方位センサ9や位置センサ10からの検出結果の読み出しや、ぶれ補正マイコン6とのデータ通信をはじめとしたカメラ全体の制御を行う。
【0036】
角速度センサ7は、カメラ1のPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の角速度(カメラ1のX軸回り、Y軸回り、及びZ軸回りに加わる回転運動)を検出する。
加速度センサ8は、カメラ1のX方向、Y方向、及びZ方向に生じる加速度(カメラ1のX軸、Y軸、及びZ軸に平行に加わる加速度)を検出する。
【0037】
ぶれ補正マイコン6は、角速度センサ7の検出結果に基づいて、撮像素子3の撮像面に生じる像移動量を算出し、その像移動量分の像移動を打ち消す方向に撮像素子3を移動させるために駆動部4を制御する。また、ぶれ補正マイコン6は、加速度センサ8の検出結果に基づいて、カメラ1の姿勢判定も行う。
【0038】
方位センサ9は、カメラ1の撮影方向(撮像方向)の方位(方位角)を検出する。方位センサ9は、例えば、地磁気センサである。
位置センサ10は、カメラ1の位置(少なくとも緯度を含む)を検出する。位置センサ10は、例えば、GPS(Global Positioning System)センサである。GPSセンサは、複数の衛星からの電波を受信することで位置(緯度、経度等)を検出する。
【0039】
EVF11は、画像データに応じた画像や、ユーザに依るカメラ1に対する各種設定を可能にするメニュー画面等を表示する。
操作スイッチ部12は、撮影開始指示であるレリーズ操作を行うためのスイッチや、EVF11に表示されるメニュー画面に従った操作を行うためのスイッチ等の各種スイッチを含む。ユーザは、操作スイッチ部12に含まれるスイッチを操作することに依り、例えば、撮影モードを通常撮影モード(以下「通常モード」という)に設定したり、天体追従撮影を可能にする天体撮影モード(以下「天体モード」という)に設定したりすることができる。なお、撮影モードは動作モードの一例であり、通常モードは第1モードの一例であり、天体モードは第2モードの一例である。また、操作スイッチ部12は、撮影モードを通常モードや天体モードに切り替え可能なモードダイヤルを含んでもよい。
【0040】
カメラ1において、システムコントローラ5やぶれ補正マイコン6は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用回路に依り構成されてもよい。あるいは、システムコントローラ5やぶれ補正マイコン6は、例えば、CPU等のプロセッサとメモリを含み、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することに依りシステムコントローラ5やぶれ補正マイコン6の機能が実現されてもよい。
【0041】
図7は、ぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
図7に示したとおり、ぶれ補正マイコン6は、SIO(Serial Input/Output)601、通信部602、基準値減算部603、補正量算出部604、駆動制御部605、SIO606、姿勢判定部607、センサ基準値算出部608、静止時基準値保持部609、センサ基準値保持部610、及び切替部611を含む。
【0042】
SIO601は、デジタルのシリアルインタフェースであり、角速度センサ7から一定の周期で、検出結果であるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の角速度を読み出す。
【0043】
通信部602は、システムコントローラ5と通信を行い、焦点距離602a、方位センサ9の検出結果である方位(方位角)602b、位置センサ10の検出結果である緯度602c等の情報を取得すると共に、手ぶれ補正の開始や終了等の指示を受ける。なお、手ぶれ補正の開始、終了の指示は、ぶれ補正マイコン6の動作を開始、終了させる指示でもある。
【0044】
基準値減算部603は、撮影モードとして通常モードが設定されている場合に、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、SIO601に依り読み出された角速度から、静止時基準値保持部609に保持された静止時基準値を減算し、オフセットノイズを除去する。なお、静止時基準値保持部609は、カメラ1が静止状態(詳しくは地面に対して静止状態)である時の角速度センサ7の検出結果であるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の角速度である静止時基準値を保持するメモリであり、その静止時基準値は、自転に依る角速度成分が含まれた値となる。
【0045】
また、基準値減算部603は、撮影モードとして天体モードが設定されている場合に、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、SIO601に依り読み出された角速度から、後述のセンサ基準値保持部610に保持されたセンサ基準値を減算する。
【0046】
補正量算出部604は、基準値減算部603の減算結果であるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の角速度に基づいて、撮像面における像移動量を算出し、その像移動量分の像移動を打ち消すための補正量(像ぶれ補正量)を算出する。詳しくは、基準値減算部603の減算結果であるPitch方向の角速度に対しては、焦点距離602aを乗算して撮像面における像移動速度を算出し、時間積分することでY軸方向の像移動量を算出し、その像移動量分の像移動を打ち消すための補正量を算出する。また、基準値減算部603の減算結果であるYaw方向の角速度に対しても同様に、焦点距離602aを乗算して撮像面における像移動速度を算出し、時間積分することでX軸方向の像移動量を算出し、その像移動量分の像移動を打ち消すための補正量を算出する。一方、基準値減算部603の減算結果であるRoll方向の角速度に対しては、焦点距離602aの乗算を行わずに、時間積分することで像回転移動量(被写体像の回転移動量)を算出し、その像回転移動量分の像回転移動を打ち消すための補正量を算出する。ここで、焦点距離602aを乗算しない理由は、Roll方向の角速度を時間積分して求められる像回転移動量が、光軸回りの被写体像の回転移動量になるからである。
【0047】
駆動制御部605は、補正量算出部604の算出結果である補正量に基づいて駆動部4の駆動を制御して撮像素子3を移動させる。これに依り、例えば通常モードである場合の手持ち撮影に依り撮影画像に生じ得るぶれの発生を防止することができる。
【0048】
切替部611は、設定されている撮影モードに応じて、入力を切り替えて出力する。詳しくは、通常モードが設定されている場合は静止時基準値保持部609に保持された静止時基準値を入力とし、天体モードが設定されている場合はセンサ基準値保持部610に保持されたセンサ基準値を入力として、出力する。
【0049】
SIO606は、デジタルのシリアルインタフェースであり、加速度センサ8から、検出結果であるX軸、Y軸、及びZ軸の3軸の方向に加わる加速度を読み出す。なお、この加速度には重力成分が含まれる。
【0050】
姿勢判定部607は、SIO606に依り読み出された3軸の方向に加わる加速度から重力方向を検出し、カメラ1の姿勢を判定する。ここで判定される姿勢は、カメラ1の少なくとも仰角(
図4のθ
ele参照)と光軸回りの傾き(
図5のθ
slope参照)である。
【0051】
センサ基準値算出部608は、上述の式(9)、(10)、(11)を用いて、姿勢判定部607に依り判定されたカメラ1の姿勢(仰角、光軸回りの傾き)と、方位602bと、緯度602cとから、自転に依りカメラ1に生じるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の自転角速度を算出する。そして、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、算出した自転角速度を、静止時基準値保持部609に保持された静止時基準値から減算することでセンサ基準値を算出する。
【0052】
センサ基準値保持部610は、センサ基準値算出部608の算出結果であるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向のセンサ基準値を保持するメモリである。
図8は、ぶれ補正マイコン6が行うセンサ基準値算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0053】
図8に示したとおり、処理が開始すると、まず、姿勢判定部607は、加速度センサ8から取得したX軸、Y軸、及びZ軸の3軸の方向に加わる加速度から重力方向を検出し、その重力方向に基づいてカメラ1の姿勢(仰角、光軸回りの傾き)を判定する(S11)。
【0054】
次に、センサ基準値算出部608は、上述の式(9)、(10)、(11)を用いて、姿勢判定部607に依り判定されたカメラ1の姿勢(仰角、光軸回りの傾き)と、方位602bと、緯度602cとから、自転に依りカメラ1に生じるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向の自転角速度を算出する(S12)。ここで、カメラ1の仰角、光軸回りの傾き、方位602b、緯度602cは、θele、θslope、θdirection、θlatに対応し、自転に依りカメラ1に生じるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の自転角速度は、ωx、ωy、ωzに対応する。
【0055】
次に、センサ基準値算出部608は、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、S12で算出した自転角速度(自転成分)を、静止時基準値保持部609に保持された静止時基準値から減算し(S13)、処理が終了する。これに依り、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向のセンサ基準値が算出され、そして、センサ基準値保持部610に保持される。
【0056】
こういったセンサ基準値の算出処理は、撮影モードとして天体モードが設定された場合に、最初にキャリブレーション処理として行われる。キャリブレーション処理は、カメラ1を静止させた状態で行われる必要があるため、この処理に先立って、カメラ1を静止状態にさせることをユーザに促す通知を行ってもよい。この通知は、例えば、表示や音声に依り行われてもよい。この通知を表示に依り行う場合は、例えば、
図9に示す画面をEVF11に表示させてもよい。或いは、この通知を音声に依り行う場合は、カメラ1がスピーカー等を含む音声出力装置を更に備えて、その音声出力装置に音声に依る通知を行わせてもよい。この場合、EVF11や音声出力装置は、ユーザに通知を行う通知装置の一例である。
【0057】
以上のとおり、第1の実施形態に依れば、天体モードが設定されている場合は、自転の影響も含めてカメラ1の揺れとして像ぶれ補正が行われるので、カメラ1を手持ちで天体撮影したとしても、日周運動に追従した天体撮影が可能になり、星が流れて撮影されてしまうことはない。また、従来技術に比べて、天体撮影のための複雑な計算を必要とせず、天頂付近でも精度を低下させることなく天体追従撮影が可能になる。
【0058】
なお、本実施形態において、カメラ1は、緯度を外部装置から取得してもよい。例えば、カメラ1は、ユーザが所持するスマートフォン等の携帯情報端末と通信を行って、携帯情報端末が備える位置センサ(例えばGPSセンサ)が検出した緯度をカメラ1の緯度として取得してもよい。この場合、カメラ1は、位置センサ10を備える必要がない。
【0059】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の説明では、第1の実施形態に対して異なる点を中心に説明する。また、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
図10は、第2の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
第2の実施形態に係るカメラ1は、センサ基準値の算出を行わないので、カメラ1の姿勢(仰角、光軸回りの傾き)、方位、緯度に関する情報が不要である。従って、第2の実施形態に係るカメラ1は、
図10に示したとおり、加速度センサ8、方位センサ9、位置センサ10を備えていない。代わりに、調温部13及び温度センサ14を備える。
【0061】
調温部13は、角速度センサ7を加熱又は冷却するデバイスであり、例えば、ペルチェ素子である。ペルチェ素子は、電流を流す方向に依って加熱、冷却を自在に行うことができるデバイスである。
【0062】
温度センサ14は、角速度センサ7(詳しくは角速度センサ7のセンサ素子)の温度を検出する。温度センサ14は、より正確な温度を検出するために、角速度センサ7と一体で構成されることが望ましい。
【0063】
また、本実施形態に係るぶれ補正マイコン6は、天体モードが設定されている場合に、更に、角速度センサ7の温度を、センサ基準値保持部610に保持されたセンサ基準値が取得された時の角速度センサ7の温度に保つべく、温度センサ14の検出結果に基づいて調温部13を制御する。
【0064】
なお、本実施形態では、カメラ1の製造時の調整工程にて取得されたセンサ基準値と、その取得時の角速度センサ7の温度とがセンサ基準値保持部610に保持されている。センサ基準値は、その調整工程において、例えば、カメラ1のPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、カメラ1が静止状態である時の角速度センサ7に依り検出された角速度から、自転に依りカメラ1に生じる自転角速度成分を取り除くことに依って取得される。自転角速度成分は、例えば、第1の実施形態と同様に、上述の式(9)、(10)、(11)を用いて算出されてもよい。
【0065】
図11は、第2の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
図11に示したとおり、第1の実施形態と異なる点は、センサ基準値の算出に関係する構成を備えない代わりに、温度取得部612及び温度制御部613を備えると共に、SIO601が更に温度センサ14から検出値を読み出す点である。
【0066】
温度取得部612は、SIO601に依り温度センサ14から読み出された検出値を温度(温度値)に変換する。
温度制御部613は、角速度センサ7の温度を、センサ基準値保持部610に保持されている、センサ基準値取得時の角速度センサ7の温度に保つべく、温度取得部612に依り変換された温度値に基づいて、調温部13を制御する。具体的には、温度取得部612に依り変換された温度(温度値)と、センサ基準値保持部610に保持されている、センサ基準値取得時の角速度センサ7の温度とを比較し、前者の温度の方が低い場合は調温部13を制御して角速度センサ7を加熱し、逆に高い場合は調温部13を制御して角速度センサ7を冷却する。この場合に、前者と後者の温度差が所定の範囲内である場合は、調温部13の制御を停止してもよい。
【0067】
以上のとおり、第2の実施形態に依れば、角速度センサ7の温度を一定(センサ基準値取得時の温度)に保つことで、角速度センサ7の温度ドリフトを抑制することができるので、より高精度に自転に依りカメラ1に生じる自転角速度の検出が可能になる。また、本実施形態では、加速度センサ8、方位センサ9、及び位置センサ10等といったセンサ基準値の算出に関係する構成を備える必要が無いので、カメラ1の製品コストを抑制することもできる。
【0068】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の説明では、第1の実施形態に対して異なる点を中心に説明する。また、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図12は、第3の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。
図12に示したとおり、第1の実施形態と異なる点は、加速度センサ8と、方位センサ9と、位置センサ10を備えない点である。代わりに、第3の実施形態に係るカメラ1は、動作モードとしてキャリブレーションモードを有し、キャリブレーションモードが設定された場合は、カメラ1の姿勢の切り替えを順次ユーザに促しながら、自転の影響を受けない回転方向の基準値をセンサ基準値として順次取得するものである。これに依り、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向のセンサ基準値が取得される。
【0070】
図13は、第3の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
図13に示したとおり、第1の実施形態と異なる点は、センサ基準値の算出に関係する構成を備えない点である。代わりに、第3の実施形態では、キャリブレーションモード設定時に取得された静止時基準値を、そのままセンサ基準値としてセンサ基準値保持部610に保持される。
【0071】
図14は、キャリブレーション処理の流れを示すフローチャートである。
図15は、キャリブレーション処理の実行中にEVF11に表示される画面例である。
キャリブレーション処理は、キャリブレーションモードが設定されると開始する。キャリブレーションモードは、例えば、ユーザに依る操作スイッチ部12の操作に応じて設定される。
【0072】
図14に示したとおり、処理が開始すると、まず、カメラ1は、
図15に示した画面11aをEVF11に表示させ、カメラ1を北向き正姿勢で静止させることをユーザに促す(S21)。なお、カメラ1が北向き正姿勢で静止した状態では、自転の影響がカメラ1のPitch方向に生じない。
【0073】
ユーザが、カメラ1を画面11aに従った姿勢にして操作スイッチ部12に含まれる所定のスイッチ(姿勢操作完了を通知するためのスイッチ)を操作すると、カメラ1は、そのスイッチ操作を検出した後、角速度センサ7に依り検出されたPitch方向の角速度を取得し、Pitch方向のセンサ基準値としてセンサ基準値保持部610に保持する(S22)。
【0074】
次に、カメラ1は、
図15に示した画面11bをEVF11に表示させ、カメラ1を北向きの縦姿勢で静止させることをユーザに促す(S23)。なお、カメラ1が北向き縦姿勢で静止した状態では、自転の影響がカメラ1のYaw方向に生じない。ここで、縦姿勢とは、水平面に対してカメラ1のX軸を垂直にさせる姿勢である。
【0075】
ユーザが、カメラ1を画面11bに従った姿勢にして操作スイッチ部12に含まれる所定のスイッチを操作すると、カメラ1は、そのスイッチ操作を検出した後、角速度センサ7に依り検出されたYaw方向の角速度を取得し、Yaw方向のセンサ基準値としてセンサ基準値保持部610に保持する(S24)。なお、カメラ1が北向き縦姿勢で静止した状態では、カメラ1のYaw方向に自転の影響が生じない。
【0076】
次に、カメラ1は、
図15に示した画面11cをEVF11に表示させ、カメラ1を東向きの正姿勢で静止させることをユーザに促す(S25)。なお、カメラ1が東向き正姿勢で静止した状態では、自転の影響がカメラ1のRoll方向に生じない。
【0077】
ユーザが、カメラ1を画面11cに従った姿勢にして操作スイッチ部12に含まれる所定のスイッチを操作すると、カメラ1は、そのスイッチ操作を検出した後、角速度センサ7に依り検出されたRoll方向の角速度を取得し、Roll方向のセンサ基準値としてセンサ基準値保持部610に保持し(S26)、処理が終了する。
【0078】
これに依り、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向のセンサ基準値がセンサ基準値保持部610に保持される。
以上のとおり、第3の実施形態に依れば、加速度センサ8、方位センサ9、位置センサ10等のセンサ基準値算出のための構成を備えることなく、高精度なセンサ基準値を取得することができる。また、ユーザがカメラ1を運用する状態においてセンサ基準値を更新できるので、角速度センサ7の経年劣化に対応したセンサ基準値をセンサ基準値保持部610に保持させることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、カメラ1が加速度センサ8や方位センサ9を備えて、上述のキャリブレーション処理において、カメラ1が表示画面に従った姿勢にされたことを自動で判定してもよい。
【0080】
また、上述のキャリブレーション処理は、天体モードが設定される度に、最初に行われるものであってもよい。また、キャリブレーション処理が終了すると、キャリブレーションモードから別のモード(例えば天体モード)に自動で切り替わるものであってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、EVF11の表示に依りカメラ1の姿勢をユーザに促す通知をしたが、これに限らず、例えば、カメラ1がスピーカー等を含む音声出力装置を更に備えて、音声に依りカメラ1の姿勢を促す通知を行ってもよい。この場合、EVF11や音声出力装置は、ユーザに通知を行う通知装置の一例である。
【0082】
また、本実施形態に係るぶれ補正マイコン6は、次のとおり変形してもよい。
図16は、第3の実施形態の変形例に係るぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
【0083】
図16に示したとおり、変形例に係るぶれ補正マイコン6は、更に、切替部616、三脚判定部617、及びLPF(Low Pass Filter)618を含む。
三脚判定部617は、基準値減算部603の減算結果である角速度の振幅に基づいて、カメラ1が三脚に設置された状態であるか否かを判定する。具体的には、その角速度の振幅が所定の振幅以下である場合に三脚に設置された状態であると判定し、そうでない場合に三脚に設置された状態でないと判定する。なお、三脚判定部617が行う判定は、カメラ1が固定されているか否かを判定することでもある。
【0084】
LPF618は、基準値減算部603の減算結果である、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の角速度に対してLPF処理を行う。これに依り、周波数の高いノイズ成分を遮断することができる。なお、LPF618は、高周波数成分を遮断するフィルタ処理を行うフィルタ回路の一例である。
【0085】
切替部616は、三脚判定部617の判定結果に応じて、入力を切り替えて出力する。詳しくは、カメラ1が三脚に設置された状態であると三脚判定部617に依り判定された場合は、LPF618の処理結果を入力とし、カメラ1が三脚に設置された状態でないと三脚判定部617に依り判定された場合は、基準値減算部603の減算結果を入力として、出力する。こういった入力の切り替えを行う理由は、カメラ1が三脚に設置された状態(即ち固定された状態)では、カメラ1に生じる角速度が自転に依る角速度(自転角速度)のみになり、この自転角速度は一定であるため、この場合は、LPF処理を行って、読み出しノイズ等のランダムなノイズの影響に依り精度が低下した像ぶれ補正が行われるのを防止するためである。
【0086】
以上のとおり、本変形例に依れば、カメラ1を三脚に設置して天体撮影を行う場合、手持ち撮影に比べて高精度な天体追従が可能になる。
【0087】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の説明では、第3の実施形態に対して異なる点を中心に説明する。また、第3の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
第4の実施形態は、カメラ1が三脚に設置されて撮影が行われることが前提であり、角速度センサ7の検出結果にノイズが多い場合に適用される。
図17は、第4の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
【0089】
図17に示したとおり、第3の実施形態(
図13に示したぶれ補正マイコン6)と異なる点は、更に、切替部616、自転算出部619、及び振幅判定部620を備える点である。
【0090】
切替部616は、設定されている撮影モードに応じて、入力を切り替えて出力する。詳しくは、通常モードが設定されている場合は、基準値減算部603の減算結果を入力とし、天体モードが設定されている場合は、自転算出部619の算出結果(自転算出部619に保持された算出結果)を入力として、出力する。
【0091】
自転算出部619は、撮影が開始されると、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、所定期間(例えば1秒以上)の間に基準値減算部603に依りセンサ基準値が減算された角速度の平均値を算出し、保持する。
【0092】
なお、カメラ1は三脚に設置されて静止状態であるので、基準値減算部603に依りセンサ基準値が減算された角速度は、自転に依りカメラ1に生じる自転角速度のみとなる。そして、所定時間の間に基準値減算部603に依りセンサ基準値が減算された角速度の平均値を求めることで、角速度センサ7が、S/N(Signal/Noise)比が小さい(即ちノイズが多い)センサであっても、誤差の少ない値を得ることができる。特に、その所定時間を長くすることで、より誤差の少ない値を得ることができる。
【0093】
振幅判定部620は、角速度センサ7の検出結果である角速度の振幅が所定の振幅以下であるか否かを判定する。振幅判定部620の判定結果は、通信部602に依り、システムコントローラ5に通知される。振幅判定部620の判定結果は、撮影開始時のユーザのレリーズ操作に依りカメラ1に生じる振動が収まったか否かを判定する際に使用される。
【0094】
図18は、第4の実施形態に係るシステムコントローラ5が行う撮影に係る制御処理の流れを示すフローチャートである。この制御処理は、操作スイッチ部12に対するユーザのレリーズ操作に依り撮影開始指示が行われることに依って開始する。ここでは、静止画の撮影開始指示が行われたとする。また、撮影モードとして天体モードが設定されているとする。
【0095】
図18に示したとおり、処理が開始すると、まず、システムコントローラ5は、レリーズ操作に伴う振動が収束したか否かをぶれ補正マイコン6に問い合わせ、その振動が収束するまで待機する(S31)。なお、レリーズ操作がリモートで行われる場合等は振動が発生しないので、S31の処理を省略してもよい。
【0096】
ぶれ補正マイコン6では、その問い合わせに対し、振幅判定部620が、角速度センサ7の検出結果である角速度が所定の振幅以下であるか否かを判定する。そして、所定の振幅以下であるという振幅判定部620に依る判定結果がぶれ補正マイコン6から通知されると、システムコントローラ5は、ぶれ補正マイコン6に自転速度算出を指示する(S32)。
【0097】
ぶれ補正マイコン6では、その指示に応じて、自転算出部619が、所定期間の間に基準値減算部603に依りセンサ基準値が減算された角速度の平均値を算出し保持する。
次に、システムコントローラ5は、ぶれ補正マイコン6に自転補正開始を指示する(S33)。
【0098】
ぶれ補正マイコン6では、その指示に応じて、切替部616が、入力を自転算出部619の算出結果(自転算出部619に保持された算出結果)とする入力切替を行う。そして、補正量算出部604は、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、自転算出部619で算出、保持された自転角速度の平均値から同様にして補正量を算出し、その補正量に基づいて駆動制御部605が駆動部4を駆動する、といった自転に係る像ぶれ補正をぶれ補正マイコン6が開始する。
【0099】
次に、システムコントローラ5は、静止画の露光を行い(S34)、露光が終了すると、撮像素子3に依り変換された電気信号を画像データとして読み出して撮影画像を取得し(S35)、ぶれ補正マイコン6に自転補正終了を指示し(S36)、処理が終了する。
【0100】
図19は、第4の実施形態に係る撮像素子3とぶれ補正マイコン6と駆動部4の動作例を示すタイミングチャートである。
図19に示した動作例では、撮影待機中(例えば撮影開始指示前)において、撮像素子3では、ライブビューのための露光が行われている。ぶれ補正マイコン6では、ライブビューに適した補正量を算出して駆動部4の駆動を制御するといった手ぶれ補正動作が行われている。駆動部4では、ライブビューに適した手ぶれ補正動作に依って補正位置が移動している。但し、ここでは、カメラ1が三脚に設置された状態であるのが前提であるため、駆動部4の補正位置はほとんど移動しない。なお、
図19では、駆動部4の動作として駆動部4の補正位置の変化を示している。
【0101】
その後、ユーザのレリーズ操作に依り撮影開始指示が行われると、撮像素子3は図示しないシャッタの先幕に依り遮光される。なお、この時に撮像素子3の暗電流を取得しておき、その暗電流分を後に差し引く処理を行ってもよい。また、先幕を備えていない構成である場合は、撮像素子3がリセット状態に維持されてもよい。
【0102】
これに並行して、ぶれ補正マイコン6では、振幅判定部620に依る判定が行われて、所定の振幅以下であるか否か(レリーズ操作に依る振動が収束したか否か)が判定される。そして、振動が収束したと判定されると、自転速度算出が指示され、ぶれ補正マイコン6では、自転算出部619に依る平均値の算出(自転算出)が行われる。駆動部4では、補正位置の停止状態が維持される。或いは、補正位置を初期位置に戻してもよい。
【0103】
自転算出部619に依る平均値算出(自転算出)が終了すると、撮像素子3では、静止画露光が開始される。静止画露光中、ぶれ補正マイコン6では、自転算出部619に依り算出された平均値(自転角速度)から補正量算出部604に依る積算等に依り補正量(自転補正量)が算出される。これに依り、駆動部4では、自転補正量に基づいて補正位置が一定速度で移動することとなり、撮像素子3に結像された天体像の日周運動に依る移動が打ち消されて撮像素子3への被写体像の結像位置が維持される。
【0104】
そして、撮影が終了すると、撮像素子3は図示しないシャッタの後幕で遮光され、撮像素子3からの画像データの読み出しが行われる。この時、ぶれ補正マイコン6では、補正量がクリアされ、駆動部4の補正位置が初期位置に移動する。
【0105】
その後は、撮影待機状態に戻り、ライブビューに係る動作が再開される。
以上のとおり、第4の実施形態に依れば、撮影開始指示が行われると自転角速度の平均値を算出し、その算出結果に基づいて露光中に補正が行われるので、角速度センサ7として比較的に精度が低い角速度センサが使用された場合でも天体追従撮影が可能になる。
なお、本実施形態において、自転算出部619に依る算出は、撮影待機中に行われてもよい。
【0106】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の説明では、第1の実施形態に対して異なる点を中心に説明する。また、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
本実施形態も、カメラ1が三脚に設置された状態で撮影が行われることが前提である。
図20は、第5の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
【0108】
図20に示したとおり、第1の実施形態と異なる点は、センサ基準値算出部608及びセンサ基準値保持部610を備えない代わりに、自転角速度算出部621を備える点である。
【0109】
自転角速度算出部621は、上述の式(9)、(10)、(11)を用いて、姿勢判定部607に依り判定されたカメラ1の姿勢(仰角、光軸回りの傾き)と、方位602bと、緯度602cとから、自転に依りカメラ1に生じるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向の自転角速度を算出する。なお、自転角速度算出部621は、算出した各回転方向の自転角速度を保持するメモリを含む。
【0110】
また、本実施形態において、基準値減算部603は、Pitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向毎に、SIO601に依り読み出された角速度から、静止時基準値保持部609に保持された静止時基準値を減算する。
【0111】
切替部611は、設定されている撮影モードに応じて、入力を切り替えて出力する。詳しくは、通常モードが設定されている場合は基準値減算部603の減算結果を入力とし、天体モードが設定されている場合は自転角速度算出部621の算出結果を入力として、出力する。これに依り、天体モードが設定されている場合は、自転に依りカメラ1に生じる自転角速度に基づいて像ぶれ補正が行われる。
【0112】
以上のとおり、第5の実施形態に依れば、角速度センサ7が、自転角速度を検出可能な感度を有していない場合であっても、天体に追従した撮影を行うことができる。また、従来技術に比べて演算負荷が小さく、天頂付近でも精度を低下させることなく天体追従撮影が可能になる。
【0113】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について説明する。
第6の実施形態は、スマートフォンやタブレット等の情報処理端末とカメラとを含むカメラシステムであって、ユーザは、情報処理端末を使ってカメラを操作することで天体撮影が可能である。詳しくは、ユーザが情報処理端末に表示された星図から撮影対象とする天体を指定すると、情報処理端末は、指定された天体の座標、現在日時、情報処理端末の現在位置の緯度から、指定された天体の方位及び高度(仰角)を算出し、更に、自転に依りカメラに生じるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向の自転角速度を算出する。そして、情報処理端末は、算出した各回転方向の自転角速度を三脚等に設置されたカメラに通知し、カメラは、通知された各回転方向の自転角速度に基づいて像ぶれ補正を行う。これに依り、天体に追従した撮影を行うことができる。
【0114】
図21は、第6の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成を示すブロック図である。なお、第6の実施形態に係るカメラの説明では、他の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0115】
図21に示したとおり、第6の実施形態に係るカメラ1は、光学系2、撮像素子3、駆動部4、システムコントローラ5、ぶれ補正マイコン6、角速度センサ7、加速度センサ8、及び外部通信部15を含む。
【0116】
外部通信部15は、情報処理端末等の外部装置との間で、Wifi(登録商標)やブルートゥース(登録商標)等に依る無線通信を行う通信インタフェースである。例えば、外部通信部15は、情報処理端末から撮影指示等の各種指示を受信したり、撮影画像や撮影映像を情報処理端末に送信したりする。
【0117】
第6の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の詳細については、
図24を用いて後述する。
図22は、情報処理端末の構成を示すブロック図である。
図22に示したとおり、情報処理端末16は、システムコントローラ161、時計部162、位置センサ163、星図データ保持部164、操作部165、表示パネル166、及び通信部167を含む。
【0118】
システムコントローラ161は、情報処理端末16の全体を制御する。
時計部162は、カレンダー機能及び時計機能を有し、現在日時を取得する。時計部162は、現在日時を取得する日時取得回路の一例である。
【0119】
位置センサ163は、情報処理端末16の現在位置(少なくとも緯度を含む)を検出する。位置センサ163は、例えばGPSセンサである。
星図データ保持部164は、赤道座標系の星図データを保持するメモリである。
【0120】
操作部165は、カメラ1に対する指示等の各種指示を行うための操作を受け付ける。本実施形態では、操作部165が、表示パネル166の前面に設けられたタッチパネルであるとする。
【0121】
表示パネル166は、カメラ1の操作画面や星図データに応じた星図等を表示する。表示パネルは、例えばLCD(liquid crystal display)である。
通信部167は、カメラ1等の外部装置の間で、Wifi(登録商標)やブルートゥース(登録商標)等に依る無線通信を行う通信インタフェースである。例えば、通信部167は、カメラ1に撮影指示等の各種指示を送信したり、撮影画像や撮影映像をカメラ1から受信したりする。
【0122】
なお、情報処理端末16において、システムコントローラ161は、例えば、ASIC又はFPGA等の専用回路に依って構成されてもよい。あるいは、システムコントローラ161は、例えば、CPU等のプロセッサとメモリを含み、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することに依って、システムコントローラ161の機能が実現されてもよい。
【0123】
図23は、情報処理端末16のシステムコントローラ161が行う撮影に係る制御処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、情報処理端末16からカメラ1に対して撮影指示が行われる場合に行われる処理である。
【0124】
図23に示したとおり、処理が開始すると、システムコントローラ161は、まず、時計部162に依り取得された日時と位置センサ163に依り検出された緯度に基づいて、星図データ保持部164に保持されている赤道座標系の星図データを、地平座標系の星図データに変換する(S41)。
【0125】
次に、システムコントローラ161は、地平座標系の星図データに応じた星図における地平線上の部分を少なくとも含む部分星図を表示エリアとして決定し、その表示エリアとして決定した部分星図を表示パネル166に表示する(S42)。
【0126】
次に、表示パネル166に表示された部分星図において、撮影対象とする天体の位置がユーザに依りタッチされて撮影位置が指定されると(S43)、そのタッチ位置が表示パネル166の前面に設けられたタッチパネル(操作部)165に依って検出され、システムコントローラ161に通知される。
【0127】
システムコントローラ161は、表示パネル166に表示された地平座標系の部分星図と、タッチパネル(操作部)165から通知されたタッチ位置の座標とから、撮影対象とする天体の地平座標を取得する(S44)。
【0128】
次に、システムコントローラ161は、取得した地平座標から、撮影対象とする天体の方位及び高度(仰角)を取得する(S45)。
次に、システムコントローラ161は、取得した方位及び高度(仰角)と、位置センサ163に依り検出された緯度とに基づいて、自転の影響を算出する(S46)。ここで、自転の影響とは、カメラ1のPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向の自転角速度のことであり、上述の式(9)、(10)、(11)を用いて算出することができる。この場合、例えば、カメラ1の光軸回りの傾きが無い状態で撮影が行われることが前提であれば、θslopeが0とされて、自転角速度の算出が行われてもよい。
【0129】
次に、システムコントローラ161は、算出した自転の影響と共に、撮影開始指示をカメラ1に通知する(S47)。
次に、システムコントローラ161は、露光時間が経過したか否かを判定し(S48)、露光時間が経過するまで待機する。なお、撮影がバルブ撮影である場合は、ユーザに依る撮影終了指示の操作を受け付けたか否かを判定し、その操作を受け付けるまで待機する。
【0130】
そして、露光時間が経過すると(或いは撮影終了指示の操作を受け付けると)、システムコントローラ161は、撮影終了指示をカメラ1に通知し(S49)、処理が終了する。
【0131】
図24は、第6の実施形態に係るぶれ補正マイコン6の機能構成を示すブロック図である。
図24に示したとおり、本実施形態に係るぶれ補正マイコン6は、自転角速度をカメラ1内部で算出しない代わりに、情報処理端末16から通知された自転角速度(上述の自転の影響)を保持するメモリを備えた自転角速度保持部622を備える。これに依り、天体モードである場合は、切替部611に依る入力切替に依り、自転角速度保持部622に保持された自転角速度が、補正量算出部604に出力される。
【0132】
また、自転角速度保持部622は、姿勢判定部607に依り判定された姿勢から、光軸回りの傾きが有る場合は、保持された自転角速度を、その光軸回りの傾きに基づいて補正する。これは、例えば、上述のとおり、カメラ1の光軸回りの傾きが無い状態で撮影が行われることが前提とされていても、実際には、カメラ1の光軸回りの傾きが無い状態になっていない場合があるからである。
【0133】
以上のとおり、第6の実施形態に依れば、自転の影響が外部の情報処理端末16に依り算出されるので、カメラ1内で複雑な計算を行う必要が無い。また、星図から撮影対象とする天体が指定されるので、撮影対象とする天体の方位や仰角(高度)を正確に取得することができる。
【0134】
なお、本実施形態において、情報処理端末16のシステムコントローラ161が自転の影響を算出する際に用いるカメラ1の光軸回りの傾きを、カメラ1から取得してもよい。この場合は、情報処理端末16がカメラ1と通信を行って、カメラ1の姿勢判定部607に依り判定されたカメラ1の姿勢(光軸回りの傾き)がカメラ1から取得される。
【0135】
以上に述べた各実施形態は、様々な変形や組み合わせが可能である。
例えば、各実施形態では、駆動制御部605が駆動部4を駆動制御して撮像素子3を移動させることに依り像ぶれ補正が行われたが、カメラ1に光学系2の一部のレンズを光軸に対して直交する方向に移動させるための駆動機構を更に設け、その駆動機構及び駆動部4を駆動制御部605が駆動制御して、その一部のレンズと撮像素子3を移動させることに依り像ぶれ補正を行ってもよい。この場合、例えば、その一部のレンズを並進移動させると共に撮像素子3を回転移動させてもよいし、その一部のレンズを並進移動させると共に撮像素子3を並進移動及び回転移動させてもよい。
【0136】
また、例えば、第1又は第2の実施形態を第3の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、撮影時の直前にキャリブレーションが行われていれば第3の実施形態に基づいて制御を行い、そうでなければ第1又は第2の実施形態に基づいて制御を行ってもよい。また、第2の実施形態では、センサ基準値が製造時の調整工程において取得されたが、第3の実施形態で説明した方法に依り取得されたセンサ基準値とその時の角速度センサ7の温度がセンサ基準値保持部に610に保持されて使用されてもよい。
【0137】
また、第1の実施形態のセンサ基準値算出部608の入力として、方位602b、緯度602cの代わりに、第6の実施形態の通信部602の出力である自転角速度を入力させてもよい。すなわち、第1の実施形態のセンサ基準値算出部608では、姿勢判定部607に依り判定されたカメラ1の姿勢(仰角、光軸回りの傾き)と、方位602bと、緯度602cとから、自転に依りカメラ1に生じるPitch方向、Yaw方向、及びRoll方向の各回転方向の自転角速度を算出する。これに対して、センサ基準値算出部608は、自転角速度を算出することなく、通信部602の出力である自転角速度を使用してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 カメラ
2 光学系
3 撮像素子
4 駆動部
5 システムコントローラ
6 ぶれ補正マイコン
7 角速度センサ
8 加速度センサ
9 方位センサ
10 位置センサ
11 EVF
11a、11b、11c 画面
12 操作スイッチ部
13 調温部
14 温度センサ
15 外部通信部
16 情報処理端末
161 システムコントローラ
162 時計部
163 位置センサ
164 星図データ保持部
165 操作部
166 表示パネル
167 通信部
601 SIO
602 通信部
602a 焦点距離
602b 方位
602c 緯度
603 基準値減算部
604 補正量算出部
605 駆動制御部
606 SIO
607 姿勢判定部
608 センサ基準値算出部
609 静止時基準値保持部
610 センサ基準値保持部
611 切替部
612 温度取得部
613 温度制御部
616 切替部
617 三脚判定部
618 LPF
619 自転算出部
620 振幅判定部
621 自転角速度算出部
622 自転角速度保持部