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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】視機能検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/032 20060101AFI20230426BHJP
   A61B 3/06 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61B3/032
A61B3/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021545206
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032331
(87)【国際公開番号】W WO2021049308
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019166297
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-167230(JP,A)
【文献】特開2005-073924(JP,A)
【文献】特開2008-284264(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012334(WO,A1)
【文献】米国特許第08038297(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/032
A61B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の視機能を検査する視機能検査装置であって、
第1領域に前記被験者に注目させる視標画像を表示する視標表示ユニットと、
前記第1領域の周囲に位置する第2領域から妨害光を発する発光ユニットと、を備え、
前記発光ユニットは、前記視標表示ユニットの前面側に配設され、前記第1領域に開口を有する反射板と、前記反射板の前記第2領域に対して前方側かつ前記第2領域の径方向外側から光を照射し、その反射光により前記妨害光を発生させる光源と、を有し、前記反射板は、前記開口から前記被験者側に露出する前記視標表示ユニットの露出部分が前記光源からの光に対する前記反射板の影となるよう、前記視標表示ユニットと近接して配置される、
視機能検査装置。
【請求項2】
前記視標表示ユニットは、第1輝度の前記視標画像を表示し、
前記発光ユニットは、前記第1輝度よりも高い第2輝度の前記妨害光を発する、
請求項1に記載の視機能検査装置。
【請求項3】
前記発光ユニットは、前記被験者が前記開口を通して前記視標画像を視認した際の両眼視差が実質的になくなるように、前記視標表示ユニットと近接して配設される、
請求項1又は2に記載の視機能検査装置。
【請求項4】
前記発光ユニットは、前記光源が出射する光の分光特性を変化させるフィルタを有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項5】
前記発光ユニットは、前記妨害光の輝度及び/又は分光分布を可変に構成されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項6】
前記視標表示ユニットは、前記視標画像の輝度及び/又は分光分布を可変に構成されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項7】
前記視標表示ユニットは、表示内容を電気的に変更する電気制御式ディスプレイである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項8】
前記視標表示ユニットは、前記視標画像に対応するパターンが前面に形成された視標表示板と、当該視標表示板の前面側から光を照射する光源と、を含んで構成される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項9】
前記視標表示ユニットは、前記視標画像に対応するパターンが透過部材で形成された視標表示板と、当該視標表示板の裏面側から光を照射する光源と、を含んで構成される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項10】
前記視標表示板に形成された複数の前記視標画像に対応するパターンのうちのいずれか一つのパターンが、前記開口から前記被験者側に露出するように、前記視標表示ユニット又は前記発光ユニットを移動させる駆動部を有する、
請求項8又は9に記載の視機能検査装置。
【請求項11】
前記視標表示ユニットに表示させる前記視標画像の輝度及び/又は分光分布を順次変更して、前記被験者の視機能を検査する、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項12】
前記発光ユニットが発させる前記妨害光の輝度及び/又は分光分布を順次変更して、前記被験者の視機能を検査する、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項13】
前記被験者と前記発光ユニットとの間に配設され、前記被験者が前記視標画像を視認した際に、前記視標画像及び前記妨害光の周囲から前記被験者の眼球に入り込む第2妨害光を発する第2発光ユニット、を更に備える、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の視機能検査装置。
【請求項14】
前記第2発光ユニットは、前記被験者とは反対側に膨出し、且つ、前記被験者とは反対側の頂部に第2開口が形成されたドーム状の第2反射板と、前記第2反射板の内面に対して光を照射し、その反射光により前記第2妨害光を発生させる第2光源と、有し、
前記被験者の位置を基準として、前記第2開口から、前記視標表示ユニットの前記第1領域及び前記発光ユニットの前記第2領域が視認され、前記第2開口の周囲に、前記第2反射板の内面が視認される、
請求項13に記載の視機能検査装置。
【請求項15】
前記第2発光ユニットは、前記第2光源が前記第2反射板の内面に対して光を照射した際に発生する反射光の一部を、前記第2反射板に再反射する反射鏡を更に有する、
請求項14に記載の視機能検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視機能検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズやフィルタなどの光学部材は、分光透過率、色収差 又は屈折率等の光学特性を有している。このような光学部材で人の視機能を補正するためのもの(例えば、メガネ)は、各個人の視機能に適した光学特性を有するものが選択される必要がある。
【0003】
近年、多様な光環境を考慮して、被験者の視機能を検査するべく、減能グレアを想定した視機能検査が注目されている(例えば、特許文献1を参照)。減能グレアとは、視対象の近くに高輝度の光源(グレア光源)が存在するときに、視対象を見るときの視覚系の視認能力を低下させる現象である。
【0004】
図1は、減能グレアを想定した視機能検査において表示される視標画像の一態様を示す図である。
【0005】
この種の視機能検査は、被験者に注目させる視標画像Bに近接して、同一視野内に入る位置に面状の妨害光Cを発生させた状態で実施される。尚、図1では、視標画像Bとして、ランドルト環の画像が用いられ、視標画像Bは、当該視標画像Bの輝度とは異なる輝度の背景B’(例えば、黒色領域)に重畳して呈示され、妨害光Cの光源として、視標画像Bの周囲を囲繞するリング状の発光部(以下、「グレア部分」とも称する)が用いられた態様を示している。
【0006】
視機能検査は、例えば、図1のような妨害光Cが存在する状態で、背景B’の輝度又は色を一定とし、輝度又は色が異なる視標画像Bを被験者に順次表示することにより行われる。又、この際、妨害光Cの態様に応じた視機能を検査するため、妨害光Cの輝度又は色刺激の刺激値も順次変化させられる。この態様において、視認能力は、視標画像Bの背景B’に対するコントラストの弁別閾値として評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2018/012334号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種の視機能検査を行うための視機能検査装置としては、従来、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)の同一画面上に、視標画像と背景光と妨害光とを発生するグレア部分を表示するものが検討されている。
【0009】
しかしながら、従来技術に係る視機能検査装置では、発生可能な妨害光の輝度が小さく、また、視角が限定されており、屋外の太陽光下にある視対象を見る等の実生活の光環境における減能グレアを想定した視機能検査を適切に実施できないという課題があった。
【0010】
又、かかる視機能検査装置では、視標画像及び妨害光の分光分布が、ディスプレイの表現可能な分光分布に制約され、視標画像と妨害光とで分光分布を異ならせたり、いずれか一方又は両方の分光分布を変化させたりすることが困難であった。
【0011】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、より適切に、減能グレアを想定した視機能検査を実施することを可能とする視機能検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
被験者の視機能を検査する視機能検査装置であって、
第1領域に前記被験者に注目させる視標画像を表示する視標表示ユニットと、
前記第1領域の周囲に位置する第2領域から妨害光を発する発光ユニットと、を備え、
前記発光ユニットは、前記視標表示ユニットの前面側に配設され、前記第1領域に開口を有する反射板と、前記反射板の前記第2領域に対して前方側かつ前記第2領域の径方向外側から光を照射し、その反射光により前記妨害光を発生させる光源と、を有し、前記反射板は、前記開口から前記被験者側に露出する前記視標表示ユニットの露出部分が前記光源からの光に対する前記反射板の影となるよう、前記視標表示ユニットと近接して配置される。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る視機能検査装置によれば、より適切に、減能グレアを想定した視機能検査を実施することを可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】減能グレアを想定した視機能検査において表示する視標画像の態様の一例を示す図
図2】第1の実施形態に係る視機能検査装置の全体構成を示す図
図3】第1の実施形態に係る視機能検査装置が表示する視標画像の一例を示す図
図4図4A図4Dは、第1の実施形態に係る発光ユニットから発せられる妨害光の分光分布の一例を示す図
図5】第1の実施形態に係る視機能検査装置において、視標画像の輝度を変化させた各状態の一例を示す図
図6】第1の実施形態に係る視機能検査装置において、視標画像及び妨害光の色を変化させた各状態の一例を示す図
図7】第2の実施形態に係る視機能検査装置の全体構成を示す図
図8】第2の実施形態に係る視標表示板の構成を示す図
図9】第3の実施形態に係る視機能検査装置の全体構成を示す図
図10】第3の実施形態に係る視機能検査装置において、被験者が視標画像を視認する際の第1妨害光及び第2妨害光の見え方の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図2図4を参照して、本実施形態に係る視機能検査装置の構成の一例について説明する。
【0017】
本実施形態に係る視機能検査装置1は、典型的には、減能グレアを想定した視機能検査を実施する用途に用いられる。本実施形態に係る視機能検査は、例えば、被験者の視機能を補正する光学部材(例えば、光学レンズ又は光学フィルタ)の設計に資する情報を取得するために実施される。
【0018】
(視機能検査装置の全体構成)
図2は、本実施形態に係る視機能検査装置1の全体構成を示す図である。図3は、本実施形態に係る視機能検査装置1が表示する視標画像Bの一例を示す図である。
【0019】
視機能検査装置1は、例えば、視標表示ユニット100及び発光ユニット200を備えている。
【0020】
視標表示ユニット100は、所定領域(図3の一点鎖線で囲繞する円領域。以下、「視標領域」又は「第1領域」と称する)Baに、被験者Pに注目させる視標画像Bを表示する。視標表示ユニット100は、例えば、被験者Pが着席した位置から、1m程度の距離で、被験者Pが着席した際の視線(例えば、地上1.2m)程度の高さに設置される。
【0021】
視標表示ユニット100は、例えば、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、プロジェクターディスプレイ、レーザーディスプレイ、又は電子ペーパー等、表示内容を電気的に変更する電気制御式ディスプレイである(ここでは、液晶ディスプレイ)。
【0022】
視標表示ユニット100は、典型的には、所定の輝度及び色の背景B’の中に、背景B’とは輝度及び/又は色が異なる視標画像Bを表示する。視標表示ユニット100は、背景B’及び視標画像Bの輝度及び/又は分光分布を可変に構成されている。
【0023】
ここでは、視標画像Bとして、例えば、ランドルト環が用いられている。視認能力検査では、被験者Pは、例えば、ランドルト環Bの欠けた方向を見分けることができるか否かで、弁別の視認能力を判定する。尚、見分ける能力(=視認能力)として、ランドルト環の切り欠きの方向を答えさせる場合には、「弁別」の視認能力という。
【0024】
尚、視標画像Bとしては、その他、正弦波縞、ガボール視標画像、円視標画像、楕円視標画像、四角視標画像、アルファベット視標画像、スネルレン視標画像、ひらがな視標画像、数字視標画像、動物視標画像、Teller Acuity Cards(乳幼児の縞を好んで見るという性質から作られた乳幼児用の視標画像)等が用いられてもよい。
【0025】
発光ユニット200は、被験者Pに注目させる視標画像Bに近接して、同一視野内に入る位置に面状の妨害光Cを発生する。発光ユニット200は、視標表示ユニット100の視標領域Baが被験者P側に露出するように、視標表示ユニット100の前面側に配設され、視標領域Baの周囲に位置して、且つ、当該視標領域Baを囲繞する領域(図3の点線で囲繞するリング領域。以下、「グレア部分」又は「第2領域」と称する)Caから面状の妨害光Cを発する。視機能検査では、かかる妨害光Cにより、被験者Pに対して、減能グレアの状態を生じさせる。
【0026】
グレア部分Caは、例えば、視標画像Bの周囲を囲繞するリング形状の白色領域である。グレア部分Caは、例えば、視標画像Bから所定距離離間して、背景B’領域を挟んで視標画像Bに近接する位置に設定される。尚、グレア部分Caとしては、その他、視標画像Bの周囲に複数個に分割された形とされてもよい。但し、グレア部分Caは、視標画像Bに対して左右対称且つ上下対称に配置した形で整列させてもよい。
【0027】
発光ユニット200は、例えば、視標表示ユニット100の前面側に配設され、視標領域Baに対応する領域に開口201aを有する反射板201と、反射板201に形成されたグレア部分Caに対して前方側(即ち、被験者P側)から光を照射し、その反射光により妨害光Cを発生させる光源202(以下、「妨害光光源202」と称する)と、妨害光光源202が出射する光の分光特性を変化させ、妨害光Cの分光特性を変化させるフィルタ203と、を含んで構成される。
【0028】
反射板201は、例えば、黒色の板部材で形成され、グレア部分Caのみが妨害光光源202からの光を反射し得るように構成されている。なお、反射とは、鏡面反射及び拡散反射を含む広義の概念である。
【0029】
又、反射板201は、被験者Pが開口201aを通して視標画像Bを視認した際の両眼視差が実質的になくなるように、視標表示ユニット100と近接して配設されている。反射板201と視標表示ユニット100との間の距離L1は、例えば、開口201aのサイズと、視標表示ユニット100から検査時の被験者Pまでの基準距離と、被験者Pの両眼の間の距離と、視標表示ユニット100の露出部分が妨害光光源からの光に対する開口201aの影となる配置条件とを最適化することで最小化される。尚、開口201aは、例えば、当該開口201aの開口縁が、グレア部分Caの内径の位置にくるように形成される(図3を参照)。
【0030】
尚、反射板201は、例えば、グレア部分Caが平面となった形状を呈する。但し、反射板201の表面(グレア部分Caを含む)には、凹凸形状を形成してもよい。例えば、反射板201のグレア部分Caの一部に、妨害光光源202から照射される光を被験者Pに集光するように形成された凹部が形成されてもよい。これによって、グレア部分Caから発生する妨害光Cに発生位置に応じた輝度分布を持たせることもでき、又、極めて高輝度の点状のグレア光源を形成することもできる。
【0031】
又、反射板201の開口201aの位置には、ガラス板等の透過性部材が嵌め込まれていてもよい。また、透過性部材は分光特性を有する光学フィルタであってもよく、透過率を減じる光学フィルタであってもよい。更には、磨りガラスであってもよく、乳白色の半透明性樹脂でもよい。
【0032】
妨害光光源202は、可視領域の各波長の光を含む光源であることが望ましく、ここでは、白色LEDランプが用いられている。妨害光光源202は、被験者Pの視点を基準として、視標画像Bの輝度よりも高い輝度の妨害光Cを発生可能に構成されている。
【0033】
発光ユニット200は、妨害光Cの輝度及び/又は分光分布を可変に構成されている。妨害光Cの輝度調整は、典型的には、妨害光光源202から出射する光束の実効値の増減により行われる。又、妨害光Cの分光分布の調整は、典型的には、妨害光光源202の出射窓に配設されるフィルタ203の種類を変更することにより行われる。
【0034】
尚、本実施形態では、被験者Pの視点を基準として、視標画像Bの輝度が例えば5~300cd/mの間で可変とされ、妨害光Cの輝度が例えば0~6000cd/mの間で可変とされ、背景B’(視標画像Bと妨害光Cとの間の領域、及び、妨害光Cの外側の領域)の輝度が例えば0~300cd/mとなっている。
【0035】
図4は、発光ユニット200から発せられる妨害光Cの分光分布の一例を示す図である。
【0036】
図4Aは白色の妨害光Cの分光分布、図4Bはマゼンダの妨害光Cの分光分布、図4Cはシアンの妨害光Cの分光分布、図4Dはイエローの妨害光Cの分光分布を示している。尚、図4Aの白色の妨害光Cは、フィルタ203を用いない妨害光光源202が発する光の分光分布であり、図4B図4C図4Dの各色の妨害光Cは、各色のフィルタ203を介して妨害光光源202が発する光の分光分布が変換されたものである。
【0037】
視機能検査では、例えば、視標表示ユニット100に表示される視標画像Bを被験者Pが目視し、被験者Pによる視標画像Bの視認能力(例えば、視標画像Bが見える/見えない、又は、眩しさを感じる/感じない等)が検査される。このときの光環境は、例えば、室内において、暗幕により外光を遮断し、室内照明を点灯或いは消灯した環境であり、検査者等により光の分光分布と強度等が管理された所定の光環境である。
【0038】
減能グレアを確認する検査は、典型的には、妨害光Cが存在しない状態で、被験者Pがどの程度のサイズの視標画像Bまで視認し得るかを確認する検査が実施された後に、実施される。
【0039】
そして、減能グレアを確認する検査では、発光ユニット200にて妨害光Cを発生させた状態で、視標表示ユニット100にて輝度又は色が異なる視標画像Bを被験者Pに順次提示し、被験者Pに、各状態において視標画像Bを視認し得るか否かを回答してもらう。又、この際、妨害光Cの態様に応じた視機能を検査するため、妨害光Cの輝度又は色も順次変更してもよい。
【0040】
尚、視機能検査は、例えば、被験者Pのランドルト環の弁別に対する回答に基づいて、コンピュータ制御(図示せず)によって実施され、視標表示ユニット100及び発光ユニット200は、当該コンピュータによって制御される。
【0041】
図5は、視標画像Bの輝度を変化させた各状態の一例を示す図である。図5は、所定の輝度の背景B’で、且つ、所定の輝度の妨害光Cを発生させた状態で、視標画像Bの輝度を、a-02、b-02、c-02、d-02の順に順次低い値へ変化させた態様を示している。尚、このとき用いられる視標画像Bは、例えば、事前検査で確認した被験者Pの視認限界サイズのものである。又、このとき用いられる視標画像Bは、背景B’よりも高い輝度を有する画像である。
【0042】
一般に、視認能力は、妨害光Cが追加されることで減能グレアに起因して低下する。この視機能検査では、例えば、被験者Pが「視認できない」と回答した視標画像Bの輝度を検査結果として記憶する。
【0043】
図6は、視標画像B及び妨害光Cの色を変化させた各状態の一例を示す図である。図6は、妨害光Cの色を、図4に示した各色に設定した場合の4つの態様を示す。視標画像Bの色は妨害光Cと同じに色になるように調整、制御される。
【0044】
かかる検査により、例えば、被験者Pの各色に対する視認能力を確認する。この視機能検査では、例えば、被験者Pが「視認できない」と回答した視標画像Bの輝度を色毎に検査結果として記録する。
【0045】
尚、視機能検査の詳細については、例えば、特許文献1を参照されたい。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る視機能検査装置1は、視標領域Baに被験者Pに注目させる視標画像Bを表示する視標表示ユニット100と、視標表示ユニット100の第1領域Ba(視標領域)が被験者P側に露出するように、視標表示ユニット100の前面側に配設され、第1領域Baの周囲を囲繞する第2領域Caから面状の妨害光Cを発する発光ユニット200と、を備え、視標表示ユニット100は、背景の輝度よりも高い第1輝度で視標画像Bを表示し、発光ユニット200は、第1輝度よりも高い第2輝度の妨害光Cを発する。
【0047】
従って、本実施形態に係る視機能検査装置1によれば、視標画像Bの輝度よりも高い輝度を有する妨害光Cを発生させた状態で、視機能検査を実行することが可能となる。又、これによって、視標画像Bと妨害光Cそれぞれの輝度及び/又は分光分布を独立に調節することが可能となる。これによって、より適切に、減能グレアを想定した視機能検査を実施することが可能となる。
【0048】
又、本実施形態に係る視機能検査装置1においては、妨害光Cを生成する発光ユニット200(反射板201)を、視標画像Bを生成する視標表示ユニット100と別体で構成するため、多様な光環境を再現することも可能である。例えば、反射板201の表面の一部に凹凸形状を形成して、グレア部分Caから発生する妨害光Cに発生位置に応じた輝度分布を持たせることもできる。
【0049】
尚、上記実施形態では、視機能検査装置1の一例として、視標表示ユニット100及び発光ユニット200が輝度及び色の両方を可変とする態様を示した。しかしながら、視標表示ユニット100及び発光ユニット200は、輝度のみを可変とするものであってもよいし、色のみを可変とするものであってもよい。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、図7図8を参照して、第2の実施形態に係る視機能検査装置1について説明する。
【0051】
本実施形態に係る視機能検査装置1は、視標表示ユニット100の構成の点で、第1の実施形態と相違する。尚、第1の実施形態と共通する構成については、説明を省略する。
【0052】
図7は、本実施形態に係る視機能検査装置1の全体構成を示す図である。図8は、本実施形態に係る視標表示板101の構成を示す図である。
【0053】
本実施形態に係る視標表示ユニット100は、予め視標画像Bに対応するパターンBtが前面に印刷された視標表示板101、光源102(以下、「視標光源102」と称する)、視標光源102から出射される光を視標表示板101の前面側に導く光学系103、及び、視標表示板101を移動させる駆動部104を含んで構成される。
【0054】
視標表示板101は、例えば、平面視で円形の板状部材である(図8を参照)。視標表示板101の前面側には、灰色の背景の中に、灰色~白色で視標画像Bに対応するパターンBtが複数個形成されている。尚、視標画像Bに対応するパターンBtは、例えば、印刷法により、塗布形成されている。
【0055】
図8では、複数個のパターンBtが放射状に形成された態様を示している。尚、視標表示板101に形成された複数個のパターンBtは、例えば、視標光源102から照射された光に対する反射率が互いに異なるパターンBtを含む。これによって、複数個のパターンBtのうち、使用するパターンBtにより、輝度の異なる視標画像Bを実現可能としている。
【0056】
視標表示板101は、これらの複数個のパターンBtのうちのいずれか一つが開口201aから外部に露出するように、発光ユニット200に被覆される。そして、視標表示板101は、視標光源102から照射された光を反射して、開口201aを介して、視標画像Bを、被験者Pに視認させる。
【0057】
視標光源102は、例えば、白色LEDランプである。
【0058】
光学系103は、視標光源102から出射された光を所望の分光分布の光に変換するフィルタ103a、視標光源102から出射された拡散光を平行光に変換するレンズ103b、レンズ103bから送出される光の進行方向を変更するプリズム103c、及び、プリズム103cから送出される光を、視標表示板101の前面まで導く導光板103dを含む。尚、導光板103dは、プリズム103cから送出される光を、開口201aから外部に露出する視標画像Bの位置に導く。
【0059】
視標光源102から出射された光は、フィルタ103a、レンズ103b、プリズム103c、導光板103dを経由して、視標表示板101に印刷された視標画像Bに対応するパターンBtに対して照射される。これにより、視標光源102から出射された光は、視標表示板101で反射して、その反射光により被験者Pに視標画像Bを視認させる。
【0060】
駆動部104は、視標表示板101の位置を反射板201に対して移動させる。具体的には、駆動部104は、視標表示板101の板面と反射板201の板面とを平行にした状態で、視標表示板101を発光ユニット200に対して左右方向に移動させる直動ステージ104aと、視標表示板101の板面と反射板201の板面とを平行にした状態で、視標表示板101を発光ユニット200に対して回転移動させる回転ステージ104bとを有する。これによって、視標表示板101に形成された複数の視標画像BのパターンBtのうちから、いずれか一つの視標画像BのパターンBtを、選択的に開口201aから外部に露出させる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る視機能検査装置1によれば、既存のディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)では実現することが困難な高い輝度の視標画像Bを表示することが可能である。
【0062】
上記実施形態では、視標表示ユニット100の一例として、反射光により被験者Pに視標画像Bを視認させる態様を示したが、これに代えて、透過光により被験者Pに視標画像Bを視認させる態様としてもよい。この場合、予め視標画像Bに対応するパターンBtが透過部材で形成された視標表示板101と、当該視標表示板101の裏面側から光を照射する光源202と、によって、視標表示ユニット100を構成すればよい。
【0063】
又、上記実施形態では、駆動部104の一例として、視標表示板101の位置を反射板201に対して移動させる態様を示したが、これに代えて、反射板201の位置に対して視標表示板101を移動させる態様としてもよい。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、図9図10を参照して、第3の実施形態に係る視機能検査装置1について説明する。
【0065】
本実施形態に係る視機能検査装置1は、更に、第2発光ユニット300を有している点で、第1の実施形態と相違する。尚、ここでは、説明の便宜として、第1の実施形態で説明した発光ユニット200を「第1発光ユニット200」と称し、当該第1発光ユニット200が発生する妨害光Cを「第1妨害光C」と称する。
【0066】
図9は、本実施形態に係る視機能検査装置1の全体構成を示す側面図である。図10は、本実施形態に係る視機能検査装置1において、被験者Pが視標画像Bを視認する際の第1妨害光C及び第2妨害光Dの見え方の一例を示す図である。
【0067】
第2発光ユニット300は、視標表示ユニット100が視標画像Bを表示する第1領域Ba及び発光ユニット200が第1妨害光Cを発生する第2領域Caが外部に露出するように、第1発光ユニット200の前方に配設され、第2領域Caの外周領域(図10にDaで表す二点鎖線で囲むリング領域)から被験者P側に向けて第2妨害光Dを発する。
【0068】
第1発光ユニット200が発生する第1妨害光Cは、高輝度の光が、人の中心視野に入り込む状況を想定したものである。しかしながら、実生活においては、中心視野のみならず、周辺視野にも光が入り込む状況が存在する。第2発光ユニット300は、かかる周辺視野に入り込む光を、第2妨害光Dとして再現或いは模擬する。尚、かかる周辺視野に入り込む光としては、例えば、人が屋外にいる際に、眼球内に入る太陽光や、屋外に存在する物体からの反射光等が挙げられる。
【0069】
第2発光ユニット300は、第2反射板301、第2光源302、及び反射鏡303を備えている。
【0070】
第2反射板301は、被験者Pとは反対側に膨出したドーム形状(椀形状とも称される)を呈している。第2反射板301は、被験者Pの眼前に配設され、被験者Pから見て、第2反射板301の内面(ドーム形状の内面を表す。以下同じ)Daを視認し得る状態となっている。尚、第2反射板301の内面Daは、第2光源302からの光を均一な分光特性で反射し得るように、典型的には、白色となっており、また、反射率を高くするために高反射性の材質からなっている。
【0071】
第2反射板301は、ドーム形状の頂部に開口301aを有し、当該開口301aから、視標表示ユニット100の第1領域Ba及び発光ユニット200の第2領域Caが外部に露出する構成となっている。つまり、被験者Pの位置を基準として、第2反射板301の開口301a越しに、視標表示ユニット100の第1領域Ba及び発光ユニット200の第2領域Caが視認され、開口301aの周囲に、第2反射板301の内面Daが視認される状態となる。尚、第2反射板301は、典型的には、被験者Pの眼前に配設される。
【0072】
第2光源302は、第2反射板301の前方(即ち、被験者P側)に配設され、第2反射板301に対して前方側から光を照射し、その反射光により、第2反射板301の内面から第2妨害光Dを発生させる。第2光源302は、例えば、第2反射板301の内面Da全体に光を照射し、第2反射板301の内面Da全体からの反射によって、面状の第2妨害光Dを発生する。かかる第2妨害光Dは、中心視野で第1領域Ba(即ち、視標画像B)を視認している被験者Pにとっては、周辺視野に入り込む妨害光となる。
【0073】
反射鏡303は、第2反射板301の前方(即ち、被験者P側)に、当該第2反射板301と対向するように、配設されている。反射鏡303は、第2光源302が第2反射板301の内面に対して前方側から光を照射した際に発生する反射光の一部を、第2反射板301に再反射する。これにより、第2反射板301と反射鏡303との間の多重反射を利用して、第2反射板301の内面全体から被験者P側に向かう第2妨害光Dを、第2反射板301の内面の位置によらず、高輝度且つ均一に発生させることができる。
【0074】
尚、本実施形態では、被験者Pの視点を基準として、視標画像Bの輝度が例えば30~3000cd/mの間で可変とされ、例えば妨害光Cの輝度が0~10000cd/mの間で可変とされ、背景B’(視標画像Bと妨害光Cとの間の領域、及び、妨害光Cの外側の領域)の輝度が例えば30~3000cd/mとなっている。又、第2発光ユニット300は、被験者Pの視点を基準として、輝度が例えば0~10000cd/mの間で可変な第2妨害光Dを発生することができる。
【0075】
以上、本実施形態に係る視機能検査装置1においては、被験者Pの周辺視野に入り込む妨害光Dを発生することができる。これによって、より多様な光環境を考慮して、視機能検査を実施することができる。
【0076】
尚、上記実施形態では、視機能検査装置1の一例として、第1発光ユニット200と第2発光ユニット300とが別体として実現される態様を示した。しかしながら、第2発光ユニット300の機能は、第1発光ユニット200によって実現されてもよい。その場合、第1反射板201をドーム形状で構成すると共に、第1反射板201に、第1妨害光Cと第2妨害光Dの両方を発生させる機能を保有させればよい。
【0077】
又、上記実施形態では、第2発光ユニット300の一例として、第2反射板301の内面Da全体から第2妨害光Dを発生する構成を示したが、第2反射板301の内面Daの一部領域のみから第2妨害光Dを発生する構成としてもよい。
【0078】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0079】
2019年9月12日出願の特願2019-166297の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示に係る視機能検査装置によれば、より適切に、減能グレアを想定した視機能検査を実施することを可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 視機能検査装置
100 視標表示ユニット
101 視標表示板
102 光源
103 光学系
103a フィルタ
103b レンズ
103c プリズム
103d 導光板
104 駆動部
104a 直動ステージ
104b 回転ステージ
106 導光板
200 発光ユニット
201 反射板
201a 開口
202 光源
203 フィルタ
300 第2発光ユニット
301 第2反射板
301a 開口(第2開口)
302 第2光源
303 反射鏡
P 被験者
B 視標画像
B’背景
C 妨害光
Ba 第1領域(視標領域)
Ca 第2領域(グレア部分)
Bt 視標画像のパターン
D 第2妨害光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10