(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】手掌参抽出方法及び関連する手掌参抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/898 20060101AFI20230426BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230426BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20230426BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K36/898
A61P17/02
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P37/08
A61K8/9794
A61Q19/00
A61P17/16
(21)【出願番号】P 2021560582
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 CN2020082792
(87)【国際公開番号】W WO2020207313
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】201910274935.1
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521443760
【氏名又は名称】シャンハイ ホープ-テック バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ シン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハイフア
(72)【発明者】
【氏名】ディン ズオクン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チュアンハオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジウェン
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2009/139231(JP,A1)
【文献】中国特許出願公開第103535731(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101647958(CN,A)
【文献】楊明明,手参多糖的特性研究,天津科技大学 2010年修士論文,Database CNKI [online], [2022.11.16検索],2010年,<URL:https://cdmd.cnki.com.cn/Article/CDMD-10057-1012400121.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/
A61K 8/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手掌参の塊茎を
温度が40℃~60℃に保たれる水に入れて
8時間以上浸漬させ、前記手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に前記手掌参の塊茎に白い芯がなくなるまで十分に浸潤させるステップ(1)と、
前記手掌参の塊茎を湿式超微粉砕して、分散スラリーを得るステップ(2)と、
前記分散スラリーに別途の前記水を追加して希釈分散液を得て、前記希釈分散液を加熱して
40℃~60℃に昇温させてから、前記希釈分散液に中性プロテアーゼを添加し、さらに均質化ポンプで循環均質化して
1時間~6時間抽出を行い、抽出材料液を得るステップ(3)と、
前記抽出材料液に対して、保温による酵素失活をするステップ(4)と、
前記抽出材料液を粗濾過して、粗濾液を得るステップ(5)と、
前記粗濾液を精濾過して、精濾液を得るステップ(6)と、を含む
ことを特徴とする手掌参抽出方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)において、前記水のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍~60倍であ
る
ことを特徴とする請求項1に記載の手掌参抽出方法。
【請求項3】
前記ステップ(2)において、漢方薬湿式超微粉砕機を使用して前記湿式超微粉砕が行われるか、又は、前記分散スラリーの粒度が60メッシュ~100メッシュである
ことを特徴とする請求項1に記載の手掌参抽出方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)において、前記希釈分散液に含まれた前記水のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍~100倍であるか
、又は、前記中性プロテアーゼの添加量が前記手掌参の塊茎の0.01重量%~1.0重量%であるか、又は、前記抽出材料液の粒度が100メッシュ~500メッシュであ
る
ことを特徴とする請求項1に記載の手掌参抽出方法。
【請求項5】
前記ステップ(4)において、前記保温による酵素失活の温度が75℃~90℃であり、前記保温による酵素失活の時間が15分間~30分間であるか、又は、前記ステップ(5)において、前記粗濾過が、400メッシュ~1000メッシュの濾布及び中速濾紙を使用した加圧濾過であるか、又は、前記ステップ(6)において、前記精濾過が、0.2μm~0.45μmのフィルタエレメントに通過させることである
ことを特徴とする請求項1に記載の手掌参抽出方法。
【請求項6】
前記手掌参抽出方法が、前記ステップ(6)の後に、
前記精濾液を濃縮して、濃縮液を得るステップ(71)と、
前記濃縮液にエタノールを加えて沈殿させ、沈殿物及び上澄液を得るステップ(72)と、
前記エタノールで前記沈殿物を洗浄して洗浄液を得て、前記沈殿物を乾燥させて手掌参多糖を得るステップ(73)と、
前記上澄液と前記洗浄液とを混合した後、減圧下で回収して脱アルコールし、ブタンジオールを添加して手掌参抽出液を得るステップ(74)と、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の手掌参抽出方法。
【請求項7】
前記ステップ(71)において、前記濃縮液のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍~40倍であるか、又は、前記ステップ(72)において、前記エタノールの濃度が70%(v/v)以上であるか、又は、前記ステップ(73)において、前記乾燥が凍結乾燥、真空乾燥又は熱風循環乾燥であるか、又は、前記ステップ(74)において、前記ブタンジオールの添加量が5重量%~50重量%である
ことを特徴とする請求項6に記載の手掌参抽出方法。
【請求項8】
前記手掌参抽出方法が、前記ステップ(6)の後に、
前記精濾液を濃縮して、濃縮液を得るステップ(81)と、
前記濃縮液を保温滅菌してから、2回目の精濾過を行い、二次精濾液を得るステップ(82)と、
前記二次精濾液に有機酸及び/又はグリコール類物質を添加して、防腐剤を含まない手掌参多糖複合体抽出液を得るステップ(83)と、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の手掌参抽出方法。
【請求項9】
前記ステップ(81)において、前記濃縮液のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍~40倍であるか、又は、前記ステップ(82)において、前記保温滅菌の温度が80℃~100℃であり、前記保温滅菌の時間が15分間~30分間であるか、又は、前記2回目の精濾過が、0.2μm~0.45μmのフィルタエレメントに通過させることであるか、又は、前記ステップ(83)において、前記有機酸がp-アニス酸であり、前記有機酸の添加量が0.05重量%~0.4重量%であり、前記グリコール類物質がプロピレングリコールであり、前記グリコール類物質の添加量が5重量%~30重量%である
ことを特徴とする請求項8に記載の手掌参抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出の技術分野、特に手掌参抽出の技術分野に関し、具体的に、手掌参抽出方法及び関連する手掌参抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
手掌参(シュショウジン;Gymnadenia conopsea(L.)R.Br.)は、手参、掌参、手児参、仏手参とも呼ばれ、ラン科植物である手参(シュジン、和名:テガタチドリ)又は粗脈手参(Gymnadenia crassinervis Finet)の塊茎である。
【0003】
手掌参は、中国の東北、華北、西北、四川、雲南、青海、チベットなどに分布しており、なかでも、チベット産の手掌参の品質は最高である。チベット手掌参はチベット人やチベット医師からWangla(ワングラ)と呼ばれ、その薬用価値は非常に高い。青海チベット高原地域の人々は、昔から、チベット・Wanglaを、神から世間に与えられた長寿の草と見なしている。
【0004】
中国の多くの古代の医学古典には、手掌参の関連記載がある。チベット族の「本草綱目」と呼ばれる「晶珠本草」(薬王である帝瑪爾・丹増彭措(1673~1743))に「仏手参は、精血を生み出し、陽気を強め、体力を高め、活力を補給し、神経を落ち着かせ、知恵を増し、寿命を延ばす。少量で入手しにくく、薬性がマイルドであるが薬力が長持ちする」と記載されている。
【0005】
手掌参には、さまざまな生理活性物質が豊富に含まれている。文献によると、手掌参には、約30重量%の手掌参多糖、約27重量%のデンプン、約20重量%のタンパク質、約5重量%の還元糖、及び、シュウ酸カルシウム、グリコシド類化合物、微量元素、ミネラルなどが含まれており、食用価値及び薬用価値が高い。手掌参は、病気の治療において、咳を止めて喘息を和らげ、腎を益して脾を健やかにし、気と血を調節し、痛みを止め、気と血液を補給し、津液を生じ止渇する効果を有し、肺虚咳喘、虚労削痩、神経衰弱、久瀉、失血、帯下、乳少、慢性肝炎の治療に用いられ、中毒及び瀉下にも用いられ、お酒に浸されて強壮剤、強精剤になる。食事療法、健康促進の面では、手掌参は、滋養益精、壮陽の作用を有し、遺精、滑精、陰萎、削痩無力、長期の病気による体の弱化、感情鈍麻に活用され、そのままスープを作ったり、鶏肉を煮込んだり、酒を浸したり、牛乳と一緒に服用したりすることができる。
【0006】
現在、手掌参を原料とする製品の形態は、主に、手掌参の塊茎を熱湯で湯煎した後に干して得られた原薬材、加工して作られた漢方薬の切片、又は、直接に内服する漢方薬の粉末などであり、他には、複方薬に加工された漢方薬の炮製飲片、漢方薬の丸薬、散剤、カプセルなどもあり、また、標準的な比率の植物抽出物の粉末に調製されたものも、いくつかある。しかし、手掌参の主な機能性成分である手掌参多糖、手掌参多糖抽出物及び手掌参多糖複合体抽出物の調製及び応用については、めったに報道されていない。
【0007】
中国特許出願CN106692687Aは、手参を牛乳と混ぜてミルク手参又はミルク手参粉末に調製することを特徴とするモンゴル医学の手掌参抽出プロセスに関する。これは、従来の熱湯で湯煎することに代わって、牛乳で茹で、最後に干してミルク手参の乾燥製品を得ることに相当する。
【0008】
中国特許出願CN103120759Aは、CO2超臨界法により仏手参から植物エッセンス物質を抽出することを特徴とする仏手参素の抽出方法に関する。
【0009】
中国特許出願CN103535731Aは、手掌参のエッセンス物質の抽出方法に関するものであり、具体的には、純水抽出、微孔性膜濾過、逆浸透膜濃縮、及び濃縮液乾燥の4ステップを含む。
【0010】
上記の特許出願における生産プロセスは、すべて、異なる溶剤又は担体(牛乳、CO2、水)に関わっているが、いずれも、手掌参内の最も効果的な成分である手掌参多糖、手掌参多糖複合体をターゲットとして抽出及び/又は精製を行ったことがなく、また、手掌参多糖、手掌参多糖複合体の特徴的な機能性成分の含有量制限値及び品質特徴を明らかにしたこともなく、そして化粧品への手掌参多糖、手掌参多糖複合体の応用研究にも及んでいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記先行技術における欠点を解消するために、本発明の一つの目的は、手掌参抽出方法であって、その生産プロセス方法が独特で斬新であり、抽出された手掌参抽出物が、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて独自の応用価値を有し、化粧品分野で良好な応用の見通しがあり、大規模な普及び応用に適する手掌参抽出方法を提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、手掌参抽出方法であって、その考案が巧妙で、操作が簡単かつ便利であり、コストが低く、大規模な普及び応用に適する手掌参抽出方法を提供することにある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、手掌参抽出物であって、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて独自の応用価値を有し、化粧品分野で良好な応用の見通しがあり、大規模な普及び応用に適する手掌参抽出物を提供することにある。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、手掌参抽出物であって、その抽出方法の考案が巧妙で、操作が簡単かつ便利であり、コストが低く、大規模な普及び応用に適する手掌参抽出物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一つの局面では、
手掌参の塊茎を水に入れて浸漬させ、前記手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に前記手掌参の塊茎に白い芯がなくなるまで十分に浸潤させるステップ(1)と、
前記手掌参の塊茎を湿式超微粉砕して、分散スラリーを得るステップ(2)と、
前記分散スラリーに別途の前記水を追加して希釈分散液を得て、前記希釈分散液を加熱して昇温させてから、前記希釈分散液に中性プロテアーゼを添加し、さらに均質化ポンプで循環均質化して抽出を行い、抽出材料液を得るステップ(3)と、
前記抽出材料液に対して、保温による酵素失活をするステップ(4)と、
前記抽出材料液を粗濾過して、粗濾液を得るステップ(5)と、
前記粗濾液を精濾過して、精濾液を得るステップ(6)と、を含む
ことを特徴とする手掌参抽出方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記ステップ(1)において、前記水のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍~60倍であるか、又は、前記水の温度が40℃~60℃に保たれる。
【0017】
好ましくは、前記ステップ(2)において、漢方薬湿式超微粉砕機を使用して前記湿式超微粉砕が行われるか、又は、前記分散スラリーの粒度が60メッシュ~100メッシュである。
【0018】
好ましくは、前記ステップ(3)において、前記希釈分散液に含まれた前記水のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍~100倍であるか、又は、前記希釈分散液が加熱されて40℃~60℃に昇温されるか、又は、前記中性プロテアーゼの添加量が前記手掌参の塊茎の0.01重量%~1.0重量%であるか、又は、前記抽出材料液の粒度が100メッシュ~500メッシュであるか、又は、前記抽出の時間が1時間~6時間である。
【0019】
好ましくは、前記ステップ(4)において、前記保温による酵素失活の温度が75℃~90℃であり、前記保温による酵素失活の時間が15分間~30分間であるか、又は、前記ステップ(5)において、前記粗濾過が、400メッシュ~1000メッシュの濾布及び中速濾紙を使用した加圧濾過であるか、又は、前記ステップ(6)において、前記精濾過が、0.2μm~0.45μmのフィルタエレメントに通過させることである。
【0020】
好ましくは、前記手掌参抽出方法は、前記ステップ(6)の後に、
前記精濾液を濃縮して、濃縮液を得るステップ(71)と、
前記濃縮液にエタノールを加えて沈殿させ、沈殿物及び上澄液を得るステップ(72)と、
前記エタノールで前記沈殿物を洗浄して洗浄液を得て、前記沈殿物を乾燥させて手掌参多糖を得るステップ(73)と、
前記上澄液と前記洗浄液とを混合した後、減圧下で回収して脱アルコールし、ブタンジオールを添加して手掌参抽出液を得るステップ(74)と、をさらに含む。
【0021】
より好ましくは、前記ステップ(71)において、前記濃縮液のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍~40倍であるか、又は、前記ステップ(72)において、前記エタノールの濃度が70%(v/v)以上であるか、又は、前記ステップ(73)において、前記乾燥が凍結乾燥、真空乾燥又は熱風循環乾燥であるか、又は、前記ステップ(74)において、前記ブタンジオールの添加量が5重量%~50重量%である。
【0022】
好ましくは、前記手掌参抽出方法は、前記ステップ(6)の後に、
前記精濾液を濃縮して、濃縮液を得るステップ(81)と、
前記濃縮液を保温滅菌してから、2回目の精濾過を行い、二次精濾液を得るステップ(82)と、
前記二次精濾液に有機酸及び/又はグリコール類物質を添加して、防腐剤を含まない手掌参多糖複合体抽出液を得るステップ(83)と、をさらに含む。
【0023】
より好ましくは、前記ステップ(81)において、前記濃縮液のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍~40倍であるか、又は、前記ステップ(82)において、前記保温滅菌の温度が80℃~100℃であり、前記保温滅菌の時間が15分間~30分間であるか、又は、前記2回目の精濾過が、0.2μm~0.45μmのフィルタエレメントに通過させることであるか、又は、前記ステップ(83)において、前記有機酸がp-アニス酸であり、前記有機酸の添加量が0.05重量%~0.4重量%であり、前記グリコール類物質がプロピレングリコールであり、前記グリコール類物質の添加量が5重量%~30重量%である。
【0024】
本発明のもう一つの局面では、前記手掌参抽出方法によって調製されたことを特徴とする手掌参抽出物を提供する。
【0025】
本発明の有益な効果は、主に以下にある。
1、本発明の手掌参抽出方法は、手掌参の塊茎を水に入れて浸漬させ、手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に手掌参の塊茎白い芯がなくなるまで十分に浸潤させるステップ(1)と、手掌参の塊茎を湿式超微粉砕して、分散スラリーを得るステップ(2)と、分散スラリーに別途の水を追加して希釈分散液を得て、希釈分散液を加熱して昇温させてから、希釈分散液に中性プロテアーゼを添加し、さらに均質化ポンプで循環均質化して抽出を行い、抽出材料液を得るステップ(3)と、抽出材料液に対して、保温による酵素失活をするステップ(4)と、抽出材料液を粗濾過して、粗濾液を得るステップ(5)と、粗濾液を精濾過して、精濾液を得るステップ(6)と、を含むため、その生産プロセス方法が独特で斬新であり、抽出された手掌参抽出物が、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて独自の応用価値を有し、化粧品分野で良好な応用の見通しがあり、大規模な普及び応用に適する。
【0026】
2、本発明の手掌参抽出方法は、手掌参の塊茎を水に入れて浸漬させ、手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に手掌参の塊茎白い芯がなくなるまで十分に浸潤させるステップ(1)と、手掌参の塊茎を湿式超微粉砕して、分散スラリーを得るステップ(2)と、分散スラリーに別途の水を追加して希釈分散液を得て、希釈分散液を加熱して昇温させてから、希釈分散液に中性プロテアーゼを添加し、さらに均質化ポンプで循環均質化して抽出を行い、抽出材料液を得るステップ(3)と、抽出材料液に対して、保温による酵素失活をするステップ(4)と、抽出材料液を粗濾過して、粗濾液を得るステップ(5)と、粗濾液を精濾過して、精濾液を得るステップ(6)と、を含むため、その考案が巧妙で、操作が簡単かつ便利であり、コストが低く、大規模な普及び応用に適する。
【0027】
3、本発明の手掌参抽出物は、前記手掌参抽出方法によって調製されたため、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて独自の応用価値を有し、化粧品分野で良好な応用の見通しがあり、大規模な普及び応用に適する。
【0028】
4、本発明の手掌参抽出物は、前記手掌参抽出方法によって調製されたため、その抽出方法の考案が巧妙で、操作が簡単かつ便利であり、コストが低く、大規模な普及び応用に適する。
【0029】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲によって十分に具現化され、添付の特許請求の範囲に記載した特定の手段、装置及びそれらの組み合わせによって実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に係る手掌参多糖の使用効果のスコアリング統計結果である。
【
図2】
図2は、本発明に係る手掌参多糖抽出液の使用効果のスコアリング統計結果である。
【
図3】
図3は、本発明に係る手掌参多糖複合体抽出液の使用効果のスコアリング統計結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
手掌参内の最も効果的な成分である手掌参多糖、手掌参多糖複合体をターゲットとして抽出及び/又は精製を行うために、本願の発明者らは、下記の手掌参抽出方法を提案する。
【0032】
当該手掌参抽出方法は、
手掌参の塊茎を水に入れて浸漬させ、前記手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に前記手掌参の塊茎に白い芯がなくなるまで十分に浸潤させるステップ(1)と、
前記手掌参の塊茎を湿式超微粉砕して、分散スラリーを得るステップ(2)と、
前記分散スラリーに別途の前記水を追加して希釈分散液を得て、前記希釈分散液を加熱して昇温させてから、前記希釈分散液に中性プロテアーゼを添加し、さらに均質化ポンプで循環均質化して抽出を行い、抽出材料液を得るステップ(3)と、
前記抽出材料液に対して、保温による酵素失活をするステップ(4)と、
前記抽出材料液を粗濾過して、粗濾液を得るステップ(5)と、
前記粗濾液を精濾過して、精濾液を得るステップ(6)と、を含む。
【0033】
不純物を低減するために、好ましくは、前記手掌参抽出方法が、前記ステップ(1)の前に、前記手掌参の塊茎を洗浄するステップ(a)をさらに含む。
【0034】
前記洗浄は、任意の適切な方法を用いてもよいが、より好ましくは、前記洗浄が、純水で緩速攪拌する洗浄である。
【0035】
前記ステップ(1)において、前記水のリットル単位での体積は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(1)において、前記水のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍~60倍である。
【0036】
前記ステップ(1)において、前記水の温度は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(1)において、前記水の温度が40℃~60℃に保たれる。
【0037】
前記ステップ(2)において、前記湿式超微粉砕は、任意の適切な機器で行ってもよいが、好ましくは、前記ステップ(2)において、漢方薬湿式超微粉砕機を使用して前記湿式超微粉砕が行われる。
【0038】
前記ステップ(2)において、前記分散スラリーの粒度は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(2)において、前記分散スラリーの粒度が60メッシュ~100メッシュである。
【0039】
前記ステップ(3)において、前記希釈分散液に含まれた前記水のリットル単位での体積は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(3)において、前記希釈分散液に含まれた前記水のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍~100倍である。
【0040】
前記ステップ(3)において、前記希釈分散液が加熱されて任意の適切な温度に昇温されてもよいが、好ましくは、前記ステップ(3)において、前記希釈分散液が加熱されて40℃~60℃に昇温される。
【0041】
前記ステップ(3)において、前記中性プロテアーゼの添加量は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(3)において、前記中性プロテアーゼの添加量が前記手掌参の塊茎の0.01重量%~1.0重量%である。
【0042】
前記ステップ(3)において、前記抽出材料液の粒度は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(3)において、前記抽出材料液の粒度が100メッシュ~500メッシュとされるべきである。
【0043】
前記ステップ(3)において、前記抽出の時間は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(3)において、前記抽出の時間が1時間~6時間である。
【0044】
前記ステップ(4)において、前記保温による酵素失活の温度及び時間は、必要に応じて決定可能であるが、好ましくは、前記ステップ(4)において、前記保温による酵素失活の温度が75℃~90℃であり、前記保温による酵素失活の時間が15分間~30分間である。
【0045】
前記ステップ(5)において、前記粗濾過は、任意の適切な方法を用いてもよいが、好ましくは、前記ステップ(5)において、前記粗濾過が400メッシュ~1000メッシュの濾布及び中速濾紙を使用した加圧濾過である。
【0046】
前記ステップ(6)において、前記精濾過は、任意の適切な方法を用いてもよいが、好ましくは、前記ステップ(6)において、前記精濾過が、0.2μm~0.45μmのフィルタエレメントに通過させることである。
【0047】
手掌参多糖及び手掌参抽出液を得られるために、好ましくは、前記手掌参抽出方法は、前記ステップ(6)の後に、
前記精濾液を濃縮して、濃縮液を得るステップ(71)と、
前記濃縮液にエタノールを加えて沈殿させ、沈殿物及び上澄液を得るステップ(72)と、
前記エタノールで前記沈殿物を洗浄して洗浄液を得て、前記沈殿物を乾燥させて手掌参多糖を得るステップ(73)と、
前記上澄液と前記洗浄液とを混合した後、減圧下で回収して脱アルコールし、ブタンジオールを添加して透明な手掌参抽出液を得るステップ(74)と、をさらに含む。
【0048】
前記ステップ(71)において、前記濃縮液のリットル単位での体積は、必要に応じて決定可能であるが、より好ましくは、前記ステップ(71)において、前記濃縮液のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍~40倍である。
【0049】
前記ステップ(72)において、前記エタノールの濃度は、必要に応じて決定可能であるが、より好ましくは、前記ステップ(72)において、前記エタノールの濃度が70%(v/v)以上である。
【0050】
前記ステップ(73)において、前記乾燥は、任意の適切な乾燥方式を用いてもよいが、より好ましくは、前記ステップ(73)において、前記乾燥が凍結乾燥、真空乾燥又は熱風循環乾燥である。
【0051】
前記ステップ(74)において、前記ブタンジオールの添加量は、必要に応じて決定可能であるが、より好ましくは、前記ステップ(74)において、前記ブタンジオールの添加量が5重量%~50重量%である。
【0052】
手掌参多糖複合体抽出液を得られるために、好ましくは、前記手掌参抽出方法は、前記ステップ(6)の後に、
前記精濾液を濃縮して、濃縮液を得るステップ(81)と、
前記濃縮液を保温滅菌してから、2回目の精濾過を行い、二次精濾液を得るステップ(82)と、
前記二次精濾液に有機酸及び/又はグリコール類物質を添加して、防腐剤を含まない手掌参多糖複合体抽出液を得るステップ(83)と、をさらに含む。
【0053】
前記ステップ(81)において、前記濃縮液のリットル単位での体積は、必要に応じて決定可能であるが、より好ましくは、前記ステップ(81)において、前記濃縮液のリットル単位での体積が、前記手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍~40倍である。
【0054】
前記ステップ(82)において、前記保温滅菌の温度及び時間は、必要に応じて決定可能であるが、より好ましくは、前記ステップ(82)において、前記保温滅菌の温度が80℃~100℃であり、前記保温滅菌の時間が15分間~30分間である。
【0055】
前記ステップ(82)において、前記2回目の精濾過は、任意の適切な方法を用いてもよいが、より好ましくは、前記ステップ(82)において、前記2回目の精濾過が、0.2μm~0.45μmのフィルタエレメントに通過させることである。
【0056】
前記ステップ(83)において、前記有機酸の具体的な物質及び添加量、前記グリコール類物質の具体的な物質及び添加量は、必要に応じて決定可能であるが、より好ましくは、前記ステップ(83)において、前記有機酸がp-アニス酸であり、前記有機酸の添加量が0.05重量%~0.4重量%であり、前記グリコール類物質がプロピレングリコールであり、前記グリコール類物質の添加量が5重量%~30重量%である。
【0057】
本発明は、前記手掌参抽出方法によって調製された手掌参抽出物をさらに提供している。
【0058】
本発明の技術内容をより明確に理解できるように、以下の実施例を挙げて詳しく説明する。本発明において、関わる構成要素又は原材料は、すべて通常の市販製品、あるいは、当分野の慣用技術手段によって入手できるものである。
【実施例】
【0059】
実施例1
(1)洗浄:
手掌参の塊茎を10キログラム取り、1000リットルの抽出タンクに入れて、手掌参の塊茎が浸没されるように適量の純水を添加し、緩速(10rpm)で5分間攪拌してから、攪拌を停止させ、洗浄水を廃棄する。洗浄水がほぼ澄明になるまで、上記のように洗浄を繰り返す。洗浄が終了する。
【0060】
(2)浸潤:
前記洗浄された手掌参の塊茎に純水を添加して、純水のリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍とされ、ここでは400Lであり、攪拌を開始し、加熱して40℃に昇温させてから、攪拌を停止させ、一晩保温して浸漬し、手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に白い芯がなくなるまで十分に浸潤させる。
【0061】
(3)研磨:
前記浸潤に合格した手掌参の塊茎を漢方薬湿式粉砕機で粉砕して分散スラリーを得るようにし、分散スラリーの粒度が60メッシュである。
【0062】
(4)抽出:
前記研磨に合格した塊茎粒子が分散された分散液に適量の純水を追加して、希釈分散液を得るようにし、希釈分散液における総水量のリットル単位での体積が手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍、ここでは400Lであることを確保する。
【0063】
希釈分散液を加熱して40℃に昇温させてから、手掌参の塊茎の重量に対して0.01重量%となる中性プロテアーゼを添加し、均質化ポンプで循環均質化して抽出を1時間行い、抽出材料液を得るようにし、抽出材料液の粒度が100メッシュである。
【0064】
(5)酵素失活:
抽出終了後、抽出材料液を加熱して75℃に昇温させて、保温による酵素失活を30分間する。
【0065】
(6)粗濾過:
抽出材料液を、400メッシュの濾布及び中速濾紙で加圧濾過し、濾液がほぼ澄明になるようにして、粗濾液を得る。
【0066】
(7)精濾過:
粗濾液を0.45μmのフィルタエレメントに通過させて、透明な溶液である精濾液を得る。
【0067】
手掌参多糖、手掌参抽出液、手掌参多糖複合体抽出液は、それぞれ以下のように調製される。
【0068】
1)手掌参多糖、手掌参多糖抽出液:
--濃縮:前記精濾液を、そのリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍、ここで100Lになるように減圧下で濃縮してから、濃縮を停止させ、濃縮液を得る。
--沈殿:濃縮液に70%(v/v)濃度のエタノールを添加し、沈殿物が完全に析出するまで攪拌して沈殿物を析出させる。
--乾燥:沈殿物を取り出し、上澄液を残し、沈殿物を加圧濾過して乾かし、再び70%(v/v)濃度のエタノールを利用して沈殿物を濯ぎ、洗浄液を残し、沈殿物を加圧濾過して乾かし、このように操作を2~3回繰り返し、沈殿物におけるアルコール可溶性不純物を除去した後にプレス乾燥して、手掌参多糖湿固体を得て、湿固体を熱風循環オーブン(又は、真空乾燥箱、凍結乾燥機)に入れて乾燥を行い、一定の重量になるまで乾燥させて、白色に近い固体物、即ち手掌参多糖(製品1)を得る。
--上澄液と洗浄液とを混合した後に減圧下で回収して脱アルコールし、エタノールを含まない液体濃縮物を得て、当該液体濃縮物には、小分子の手掌参多糖、手掌参サポニン及び他のグリコシド類物質、ガストロジン、微量元素等の機能性物質が豊富に含まれる。それに50重量%のブタンジオールを添加して、手掌参抽出液(製品2)を得る。
【0069】
2)手掌参多糖複合体抽出液:
--前記精濾液を減圧下で濃縮させ、そのリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の10倍、ここで100Lになるように濃縮してから、濃縮を停止させ、特定の粘度と多糖含有量を有する全成分の手掌参多糖複合体抽出液を得る。
--前記全成分の手掌参多糖複合体抽出液を加熱して80℃に昇温させ、30分間保温滅菌してから、0.3μmのフィルタエレメントに通過させて2回目の精濾過を行い、透明な溶液である二次精濾液を得る。
--有機酸として0.4重量%のp-アニス酸を前記二次精濾液に添加して、防腐剤を含まない手掌参多糖複合体抽出液(製品3)を調製した。
【0070】
手掌参多糖(製品1)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0071】
【0072】
手掌参抽出液(製品2)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0073】
【0074】
手掌参多糖複合体抽出液(製品3)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0075】
【0076】
実施例2
(1)洗浄:
手掌参の塊茎を10キログラム取り、1000リットルの抽出タンクに入れて、手掌参の塊茎が浸没されるように適量の純水を添加し、緩速(50rpm)で5分間攪拌してから、攪拌を停止させ、洗浄水を廃棄する。洗浄水がほぼ澄明になるまで、上記のように洗浄を繰り返す。洗浄が終了する。
【0077】
(2)浸潤:
前記洗浄された手掌参の塊茎に純水を添加して、純水のリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の50倍とされ、ここでは500Lであり、攪拌を開始し、加熱して50℃に昇温させてから、攪拌を停止させ、少なくとも8時間以上保温して浸漬し、手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に白い芯がなくなるまで十分に浸潤させる。
【0078】
(3)研磨:
前記浸潤に合格した手掌参の塊茎を漢方薬湿式超微粉砕機で超微粉砕して分散スラリーを得るようにし、分散スラリーの粒度が80メッシュである。
【0079】
(4)抽出:
前記研磨に合格した分散スラリーに適量の純水を追加して、希釈分散液を得て、希釈分散液における総水量のリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の60倍、ここで600Lであることを確保する。
【0080】
希釈分散液を加熱して50℃に昇温させてから、手掌参の塊茎の重量に対して0.5重量%となる中性プロテアーゼを添加し、均質化ポンプで循環均質化して抽出を3時間行い、抽出材料液を得るようにし、抽出材料液の粒度が300メッシュである。
【0081】
(5)酵素失活:
抽出終了後、抽出材料液を加熱して80℃に昇温させて、保温による酵素失活を20分間する。
【0082】
(6)粗濾過:
抽出材料液を、600メッシュの濾布及び中速濾紙で加圧濾過し、濾液がほぼ澄明になるようにして、粗濾液を得る。
【0083】
(7)精濾過:
粗濾液を0.3μmのフィルタエレメントに通過させて、透明な溶液である精濾液を得る。
【0084】
手掌参多糖、手掌参抽出液、手掌参多糖複合体抽出液は、それぞれ以下のように調製される。
【0085】
1)手掌参多糖、手掌参抽出液:
--濃縮:前記精濾液を、そのリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の20倍、ここで200Lになるように減圧下で濃縮してから、濃縮を停止させ、濃縮液を得る。
--沈殿:濃縮液に80%(v/v)濃度のエタノールを添加し、沈殿物が完全に析出するまで攪拌して沈殿物を析出させる。
--乾燥:沈殿物を取り出し、上澄液を残し、沈殿物を加圧濾過して乾かし、再び80%(v/v)濃度のエタノールを利用して沈殿物を濯ぎ、洗浄液を残し、沈殿物を加圧濾過して乾かし、このように操作を2~3回繰り返し、沈殿物におけるアルコール可溶性不純物を除去した後にプレス乾燥して、手掌参多糖湿固体を得て、湿固体を熱風循環オーブン(又は、真空乾燥箱、凍結乾燥機)に入れて乾燥を行い、一定の重量になるまで乾燥させて、白色に近い固体物、即ち手掌参多糖(製品4)を得る。
--上澄液と洗浄液とを混合した後に減圧下で回収して脱アルコールし、エタノールを含まない液体濃縮物を得て、当該液体濃縮物には、小分子の手掌参多糖、手掌参サポニン及び他のグリコシド類物質、ガストロジン、微量元素等の機能性物質が豊富に含まれる。それに30重量%のブタンジオールを添加して、透明な手掌参抽出液(製品5)を得る。
【0086】
2)手掌参多糖複合体抽出液:
--前記精濾液を減圧下で濃縮させ、そのリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の20倍、ここで200Lになるように濃縮してから、濃縮を停止させ、特定の粘度と多糖含有量を有する全成分の手掌参多糖複合体抽出液を得る。
--前記全成分の手掌参多糖複合体抽出液を加熱して90℃に昇温させ、20分間保温滅菌してから、0.45μmのフィルタエレメントに通過させて2回目の精濾過を行い、透明な溶液である二次精濾液を得る。
--有機酸として0.2重量%のp-アニス酸を前記二次精濾液に添加して、防腐剤を含まない手掌参多糖複合体抽出液(製品6)を調製した。
【0087】
手掌参多糖(製品4)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0088】
【0089】
手掌参抽出液(製品5)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0090】
【0091】
手掌参多糖複合体抽出液(製品6)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0092】
【0093】
実施例3
(1)洗浄:
手掌参の塊茎を10キログラム取り、1000リットルの抽出タンクに入れて、手掌参の塊茎が浸没されるように適量の純水を添加して、緩速(20rpm)で5分間攪拌してから、攪拌を停止させ、洗浄水を廃棄する。洗浄水がほぼ澄明になるまで、上記のように洗浄を繰り返す。洗浄が終了する。
【0094】
(2)浸潤:
前記洗浄された手掌参の塊茎に純水を添加して、純水のリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の60倍とされ、ここでは600Lであり、攪拌を開始し、加熱して60℃に昇温させてから、攪拌を停止させ、一晩保温して浸漬し、手掌参の塊茎を、サンプリングして観察する時に白い芯がなくなるまで十分に浸潤させる。
【0095】
(3)研磨:
前記浸潤に合格した手掌参の塊茎を漢方薬湿式粉砕機で粉砕して分散スラリーを得るようにし、分散スラリーの粒度が100メッシュである。
【0096】
(4)抽出:
前記研磨に合格した塊茎粒子が分散された分散液に適量の純水を追加して、希釈分散液を得るようにし、希釈分散液における総水量のリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の100倍、ここで1000Lであることを確保する。
【0097】
希釈分散液を加熱して60℃に昇温させてから、手掌参の塊茎の重量に対して1.0重量%となる中性プロテアーゼを添加し、均質化ポンプで循環均質化して6時間の抽出を行い、抽出材料液を得るようにし、抽出材料液の粒度が500メッシュである。
【0098】
(5)酵素失活:
抽出終了後、抽出材料液を加熱して90℃に昇温させて、保温による酵素失活を15分間する。
【0099】
(6)粗濾過:
抽出材料液を、1000メッシュの濾布及び中速濾紙で加圧濾過し、濾液がほぼ澄明になるようにして、粗濾液を得る。
【0100】
(7)精濾過:
粗濾液を0.2μmのフィルタエレメントに通過させて、透明な溶液である精濾液を得る。
【0101】
手掌参多糖、手掌参抽出液、手掌参多糖複合体抽出液は、それぞれ以下のように調製される。
【0102】
1)手掌参多糖、手掌参抽出液:
--濃縮:前記精濾液を、そのリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍、ここで400Lになるように減圧下で濃縮してから、濃縮を停止させ、濃縮液を得る。
--沈殿:濃縮液に95%(v/v)濃度のエタノールを添加し、沈殿物が完全に析出するまで攪拌して沈殿物を析出させる。
--乾燥:沈殿物を取り出し、上澄液を残し、沈殿物を加圧濾過して乾かし、再び95%(v/v)濃度のエタノールを利用して沈殿物を濯ぎ、洗浄液を残し、沈殿物を加圧濾過して乾かし、このように操作を2~3回繰り返し、沈殿物におけるアルコール可溶性不純物を除去した後にプレス乾燥して、手掌参多糖湿固体を得て、湿固体を熱風循環オーブン(又は、真空乾燥箱、凍結乾燥機)に入れて乾燥を行い、一定の重量になるまで乾燥させて、白色に近い固体物、即ち手掌参多糖(製品7)を得る。
--上澄液と洗浄液とを混合した後に減圧下で回収して脱アルコールし、エタノールを含まない液体濃縮物を得て、当該液体濃縮物には、小分子の手掌参多糖、手掌参サポニン及び他のグリコシド類物質、ガストロジン、微量元素等の機能性物質が豊富に含まれる。それに5重量%のブタンジオールを添加して、透明な手掌参抽出液(製品8)を得る。
【0103】
2)手掌参多糖複合体抽出液:
--前記精濾液を減圧下で濃縮させ、そのリットル単位での体積が、手掌参の塊茎のキログラム単位での重量の40倍、ここで400Lになるように濃縮してから、濃縮を停止させ、特定の粘度と多糖含有量を有する全成分の手掌参多糖複合体抽出液を得る。
--前記全成分の手掌参多糖複合体抽出液を加熱して100℃に昇温させ、15分間保温滅菌してから、0.2μmのフィルタエレメントに通過させて2回目の精濾過を行い、透明な溶液である二次精濾液を得る。
--有機酸として0.05重量%のp-アニス酸を前記二次精濾液に添加して、防腐剤を含まない手掌参多糖複合体抽出液(製品9)を調製した。
【0104】
手掌参多糖(製品7)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0105】
【0106】
手掌参抽出液(製品8)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0107】
【0108】
手掌参多糖複合体抽出液(製品9)の特徴的な指標は、次のとおりである。
【0109】
【0110】
実施例4
実験製品:
前記の製品1、製品4、製品7をそれぞれ、5%(v/v)のグリセリン及び水と混合し、通常の防腐剤として0.6%(v/v)のフェノキシエタノール及び0.1%(v/v)のカプリリルグリコールを添加して、0.3重量%のエッセンス液(つまり、製品1、製品4、製品7の含有量はいずれも0.3重量%である)に調製した。
【0111】
実験対象:
24~56歳のボランティアが合計33人であり、主な肌の問題は、痘痕、肌の外部の軽微な損傷、乾燥かゆみ、はがれ、小じわ、しわ、たるみ等と表れる。
【0112】
実験過程:
上記のボランティアは3つのグループに平均に分けられ、グループごとに11人ずつであり、各グループは、それぞれ製品1、製品4、製品7のエッセンス液を毎日の朝晩に1回ずつ使用し、毎回約0.5mlの量を取って顔の肌に均一に塗り、28日間連続して使用する。肌の改善状況を観察し、質問票に記入してスコアを付ける。
【0113】
【0114】
実験結果:
3つのグループのスコアリング結果が同じであり、スコアリング統計結果については、
図1を参照されたい。試験結果により、手掌参多糖は、優れた肌触りを製品に与え、製品の保湿度が83.4%に達すると同時に、良好な修復効果及び抗しわ効果を有し、修復率が75.6%に、抗しわ効果が68.5%に達することが証明された。
【0115】
実施例5
実験製品:
前記の製品2、製品5、製品8をそれぞれ、5%(v/v)のグリセリン、水及び0.4%(v/v)のキサンタンガムと混合し、通常の防腐剤として0.6%(v/v)のフェノキシエタノール及び0.1%(v/v)のカプリリルグリコールを添加して、2.0重量%のエッセンス液(つまり、製品2、製品5、製品8の含有量はいずれも2.0重量%である)に調製した。
【0116】
実験対象:
27~43歳のボランティアが合計18人であり、主な肌の問題は、炎症、にきび、赤い血の筋、肝斑、発赤や腫れ等と表れる。
【0117】
実験過程:
上記のボランティアは3つのグループに平均に分けられ、グループごとに6人ずつであり、各グループは、それぞれ製品2、製品5、製品8のエッセンス液を毎日の朝晩に1回ずつ使用し、毎回約0.5mlの量を取って顔の肌に均一に塗り、28日間連続して使用する。肌の改善状況を観察し、質問票に記入してスコアを付ける。
【0118】
【0119】
実験結果:
3つのグループのスコアリング結果が同じであり、スコアリング統計結果については、
図2を参照されたい。試験結果により、手掌参抽出液製品は、良好な美白、抗炎、抗アレルギーの役割を果たし、美白効果が63.9%に、抗炎効果が74.3%に、抗アレルギー効果が69.7%に達することが証明された。
【0120】
実施例6
実験製品:
前記の製品3、製品6、製品9をそれぞれ、5%(v/v)のグリセリン及び水と混合し、通常の防腐剤として0.6%(v/v)のフェノキシエタノール及び0.1%(v/v)のカプリリルグリコールを添加して、2.0重量%のエッセンス液(つまり、製品3、製品6、製品9の含有量はいずれも2.0重量%である)に調製した。
【0121】
実験対象:
21~64歳のボランティアが合計72人であり、主な肌の問題は、痘痕、肌の外部の軽微な損傷、乾燥かゆみ、はがれ、小じわ、しわ、たるみ等と表れる。
【0122】
実験過程:
上記のボランティアは3つのグループに平均に分けられ、グループごとに24人ずつであり、各グループは、それぞれ製品3、製品6、製品9のエッセンス液を毎日の朝晩に1回ずつ使用し、毎回約0.5mlの量を取って顔の肌に均一に塗り、28日間連続して使用する。肌の改善状況を観察し、質問票に記入してスコアを付ける。
【0123】
【0124】
実験結果:
3つのグループのスコアリング結果が同じであり、スコアリング統計結果については、
図3を参照されたい。試験結果により、手掌参多糖複合体抽出液は、優れた肌触りを化粧品に与えると同時に、包括的なスキンケア効果を持っていることが証明された。
【0125】
そのため、前記製品1~製品9をスキンケア製品に添加すると、なめらかな肌触りを与えると同時に、抗アレルギー、抗炎、美白、保湿、修復、抗しわの役割を果たす。主な適用可能な剤形は、フェイシャルマスク、水性剤、クリーム、ローションなどである。また、実施例1~実施例3の最後の段落のステップにおいて、前記二次精濾液に、プロピレングリコールをそれぞれ、30重量%、20重量%、5重量%を添加して、防腐剤を含まない3つの種類の手掌参多糖複合体抽出液に調製した場合であっても、その効果は、実施例6の効果に類似する。
【0126】
これにより、本発明は、危険な有機溶剤を使用することなく、工業的な生産に適した、化粧品分野に適用可能な手掌参多糖、手掌参多糖抽出液、手掌参多糖複合体抽出液の調製方法を提供している。
【0127】
本発明の手掌参抽出方法は、独特で斬新であり、物理的な壁破壊及び粉砕の方法を使用して組織細胞を破壊しており、有効物質の溶出に有利し、製品の収率を大幅に改善していると同時に、プロテアーゼを使用して組織タンパク質を小分子活性ペプチドやアミノ酸類物質に分解しており、アレルゲンを除去し、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて、その安全性と独自の応用価値を確保している。この生産プロセスによって得られた手掌参抽出物は、化粧品分野で良好な応用の見通しがある。
【0128】
本発明は、生産プロセスの考案が巧妙で、操作手順が簡単かつ便利で、生産プロセスが合理的であり、得られた製品の収率及び純度が高く、生産高を最大化するという目的を達成し、手掌参の社会経済的価値を最大化することができる。
【0129】
本発明によって得られた手掌参多糖、手掌参多糖抽出液、手掌参多糖複合体抽出液は、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて独自の応用価値を有し、化粧品分野で良好な応用の見通しがある。現在、化粧品への手掌参の応用に関する報告はめったない。
【0130】
以上をまとめて、本発明の手掌参抽出方法は、独特で斬新であり、抽出された手掌参抽出物は、スキンケア、創傷修復、抗しわ、日焼け止め、抗酸化、抗アレルギー、肌の保湿などにおいて独自の応用価値を有し、化粧品分野で良好な応用の見通しがあり、考案が巧妙で、操作が簡単かつ便利であり、コストが低く、大規模な普及び応用に適する。
【0131】
これにより、本発明の目的が完全かつ効果的に達成されたことが分かる。本発明の機能及び構造原理は、実施例において示され、説明されており、実施形態は、前記原理から逸脱することなく任意に修正することが可能である。したがって、本発明は、特許請求の範囲の精神及び範囲に基づくすべての変形実施形態を含む。