(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】高圧水素容器
(51)【国際特許分類】
F16J 12/00 20060101AFI20230426BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F16J12/00 D
F17C13/00 301Z
(21)【出願番号】P 2022011354
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021016001
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391018019
【氏名又は名称】JFEコンテイナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 拓史
(72)【発明者】
【氏名】松原 和輝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 周作
(72)【発明者】
【氏名】石川 信行
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊夫
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138662(WO,A1)
【文献】特開2020-063778(JP,A)
【文献】国際公開第2019/083047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水素の貯蔵用の金属製の筒体と、
前記筒体の端部を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記筒体は、
当該筒体の中心軸方向において端部に前記蓋部材を固定するための接合部と、
高圧水素を貯蔵する貯蔵部の外郭となる筒部と、
前記中心軸方向において前記接合部と前記筒部との間に配置され、当該筒体の内面に形成されたシール面と、を備え、
前記蓋部材は、
前記筒体の前記シール面と当接するシール部と、
前記筒体の前記接合部に固定される固定部と、を備え、
前記シール面のうち前記シール部が当接している領域を当接領域とし、
前記当接領域から前記筒体の外面までの肉厚を肉厚Hとし、
前記接合部を含む前記接合部から前記当接領域までの前記筒体の一部分であって
、応力σ以上の応力が発生している部分を応力発生部とし、
前記当接領域と前記応力発生部との距離を距離Lとしたときに、
前記肉厚Hと前記距離Lとの関係は、
少なくともH<Lを満たし、
前記応力σは、
前記貯蔵部に高圧水素が充填された使用状態において、前記筒体を構成する金属材料の引張強度の1/3である、高圧水素容器。
【請求項2】
高圧水素の貯蔵用の金属製の筒体と、
前記筒体の端部を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記筒体は、
当該筒体の中心軸方向において端部に前記蓋部材を固定するための接合部と、
高圧水素を貯蔵する貯蔵部の外郭となる筒部と、
前記中心軸方向において前記接合部と前記筒部との間に配置され、当該筒体の内面に形成されたシール面と、を備え、
前記蓋部材は、
前記筒体の前記シール面と当接するシール部と、
前記筒体の前記接合部に固定される固定部と、を備え、
前記シール面のうち前記シール部が当接している領域を当接領域とし、
前記当接領域から前記筒体の外面までの肉厚を肉厚Hとし、
前記接合部を含む前記接合部から前記当接領域までの前記筒体の一部分であって
、応力σ以上の応力が発生している部分を応力発生部とし、
前記当接領域と前記応力発生部との距離を距離Lとしたときに、
前記肉厚Hと前記距離Lとの関係は、
少なくともH<Lを満たし、
前記応力σは、
前記貯蔵部に高圧水素が充填された使用状態において、前記筒体を構成する金属材料の疲労限応力である、高圧水素容器。
【請求項3】
前記蓋部材は、
前記シール部を備え前記筒部側に位置する第1部材と、
前記固定部を備える第2部材と、を備え、
前記第1部材の外径寸法は、
前記シール面の内径寸法よりも小さい、請求項1
又は請求項2に記載の高圧水素容器。
【請求項4】
前記蓋部材は、
前記シール部を備え前記筒部側に位置する第1部材と、
前記固定部を備える第2部材と、を備え、
前記第1部材は、
オーステナイト系ステンレス鋼で形成されている、請求項1
~請求項3の何れか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項5】
前記接合部は、
前記筒体の端部の内周面に形成された雌ねじ部であり、
前記固定部は、
前記蓋部材に形成された雄ねじ部であり、
前記接合部と前記固定部とは、
互いに螺合する、請求項1~請求項
4の何れか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項6】
前記シール部は、
前記蓋部材に取り付けられたOリングである、請求項1~請求項
5の何れか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項7】
前記応力σは、
静水圧応力である、請求項1~請求項
6の何れか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項8】
前記筒体は、
低合金鋼にて構成されている、請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項9】
前記応力発生部は、
複数の応力発生部を含み、
前記距離Lは、
前記当接領域と前記複数の応力発生部のうち前記当接領域に最も近い前記応力発生部との距離である、請求項1~請求項
8の何れか1項に記載の高圧水素容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水素を貯蔵する高圧水素容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水素ステーションにおいて使用される高圧水素を貯蔵する高圧水素容器は、シリンダ(円筒胴)の開口端に蓋をねじ止めする構造が採用されている。このような水素貯蔵用の容器は、シリンダの内部に充填された水素ガスが、シリンダの内周面と蓋の外周面との間に設けられたOリングなどの樹脂製シール部材によりシールされている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されているところによれば、樹脂製シール部材は、微量ながら水素が透過する。そのため、シリンダの開口端部に形成されている雌ねじ部に水素が到達し、応力が集中するねじ底を起点とし、水素により誘起された破壊が生じる。これを解決するために、特許文献1に開示されている高圧水素容器は、雌ねじ部と樹脂製シール部材との間に位置する隙間部に貫通孔を設け、隙間部内のガスを排出する構造とするとともに、酸素を含むガスを隙間部に導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている高圧水素容器は、樹脂製シール部材を透過して隙間部に滞留する水素を貫通孔から排出している。そのため、隙間部に隣接して高い応力が発生している雌ねじ部が配置されているが、高圧水素容器は、樹脂製シール部材を透過して隙間部に滞留する水素を起因とする割れが抑制されている。しかし、高圧の水素を金属製の容器内に貯蔵する場合、容器内に所定の濃度で存在する水素分子は、金属製の容器を構成する金属組織内に侵入し、金属組織内に拡散していく。つまり、特許文献1の高圧水素容器においては、シリンダ内の水素がシリンダを構成する金属組織の内部に侵入し、金属組織内を水素が拡散して雌ねじ部に到達する。雌ねじ部は、シリンダの開口端に締結固定されている蓋との螺合により、応力が集中するため、容器のその他の部分と比較して高い応力が発生している。また、特許文献1におけるシリンダは、内周面に設けられた中心軸に垂直な突き当て面を有する。そして、突き当て面には蓋が当接されて、蓋に軸力が生じ、蓋が雌ねじ部に締結固定される。これにより、高圧水素容器は、雌ねじ部だけでなく突き当て面周辺にも応力が集中する。そのため、雌ねじ部及び突き当て面周辺の応力が発生している部分は、金属組織内を拡散した水素の影響を受けて、割れなどの破損の起点となるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、金属組織内への水素の拡散を起因とする破損を抑制する高圧水素容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る高圧水素容器は、高圧水素の貯蔵用の金属製の筒体と、前記筒体の端部を塞ぐ蓋部材と、を備え、前記筒体は、当該筒体の中心軸方向において端部に前記蓋部材を固定するための接合部と、高圧水素を貯蔵する貯蔵部の外郭となる筒部と、前記中心軸方向において前記接合部と前記筒部との間に配置され、当該筒体の内面に形成されたシール面と、を備え、前記蓋部材は、前記筒体の前記シール面と当接するシール部と、前記筒体の前記接合部に固定される固定部と、を備え、前記シール面のうち前記シール部が当接している領域を当接領域とし、前記当接領域から前記筒体の外面までの肉厚を肉厚Hとし、前記接合部を含む前記接合部から前記当接領域までの前記筒体の一部分であって、所定の応力σ以上の応力が発生している部分を応力発生部とし、前記当接領域と前記応力発生部との距離を距離Lとしたときに、前記肉厚Hと前記距離Lとの関係は、少なくともH<Lを満たす。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高圧水素容器によれば、筒体に蓋部材が固定されることにより所定の応力が発生している応力発生部と当接領域との距離Lが、H<Lの関係を満たすため、筒体を構成する金属材料は、水素の拡散の影響を受けない。したがって、高圧水素容器の金属組織内への水素の拡散による強度への影響を抑えることができ、高い負荷が掛かっても信頼性の高い高圧水素容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る高圧水素容器100を示す断面図である。
【
図2】
図1の雌ねじ部15及びシール面16の周辺の拡大図である。
【
図3】実施の形態1に係る高圧水素容器100のシール部23の近傍の金属組織内の水素の拡散状態を示す図である。
【
図4】水素ガスの圧力と金属組織内に侵入する初期の水素量との相関関係を示した図である。
【
図5】水素拡散係数Dと拡散流量Jとの相関関係を示した図である。
【
図6】実施の形態1に係る高圧水素容器100の雌ねじ部15の周辺の応力発生状態の一例を示す図である。
【
図7】金属材料に加わる応力と応力が加わるサイクル数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の高圧水素容器の好ましい実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0011】
実施の形態1.
<高圧水素容器100>
図1は、実施の形態1に係る高圧水素容器100を示す断面図である。
図1に示す高圧水素容器100は、構造を模式的に表したものである。高圧水素容器100は、例えば車両などに水素を供給する水素ステーションに設置されるものであり、内部に高圧の水素を貯蔵するものである。燃料電池式の車両は、例えば75MPa程度の高圧で水素を貯蔵するタンクを備えている。そのような車両のタンクに水素を充填するには、内部の圧力を車両のタンクよりもさらに高圧に維持できる高圧水素容器100が必要となる。高圧水素容器100は、燃料電池式の車両に水素を供給するごとに、内部の圧力が下がるものの、内部の圧力が高い状態で維持される。つまり、高圧水素容器100は、高圧力の領域で周期的な圧力変動を受ける。さらに、車両に水素を供給する頻度を考慮すると、高圧水素容器100は、高圧力かつ高サイクルの圧力変動を受けつつ、長期間に亘って耐久性を維持できることが必要となるものである。
【0012】
<高圧水素容器100の構成>
図1に示されるように、実施の形態1に係る高圧水素容器100は、金属製の筒体10と、筒体10の開口端に締結固定された蓋体20とを備える。金属製の筒体10は、円筒形状であり、両端が開口されている。開口端には雌ねじ部15が形成されている。雌ねじ部15は、筒体10の内面に形成されたねじである。また、筒体10の中心軸方向(
図1の中心軸Cに沿った方向)において、中央部には水素を貯蔵する貯蔵部12の外郭を形成する筒部13が配置されている。筒部13は、円筒形状の部分である。実施の形態1において筒部13のうち貯蔵部12が配置されている部分の肉厚は、例えばt=50mmに設定されている。蓋体20及び蓋体20を筒体10の端部に固定する部材を蓋部材と称する場合がある。
【0013】
筒体10の中心軸方向において筒部13と雌ねじ部15との間には、シール面16が形成されている。シール面16は、筒体10の内面に形成されている面であり、蓋体20のシール部23と当接し、高圧水素容器100の内部の水素が漏れないようにする部分である。シール面16は、シール性を保つために、シール部23が当接する部分が滑らかな面で構成されていると良い。
【0014】
実施の形態1において、蓋体20は、シール部23を備える第1部材21と、雄ねじ部25を備える第2部材22と、を備える。第1部材21は、水素が貯蔵される貯蔵部12の中心軸方向の端部を塞ぐ部材である。第1部材21は、略円柱に形成されており、実施の形態1においては筒体10のシール面16よりも外径寸法が小さく形成されている。第1部材21の外周面には、溝21a(
図2参照)が形成されており、ここにシール部材24がはめ込まれている。シール部材24は、例えばOリングであるが、その他の構造のシール部材を採用しても良い。
【0015】
図2は、
図1の雌ねじ部15及びシール面16の周辺の拡大図である。雌ねじ部15は、筒体10の開口端19から所定の区間に形成されている。雌ねじ部15の隣には逃がし部17が配置されている。逃がし部17は、雌ねじ部15とシール面16との間にある筒体10の内面に形成された段差形状、つまり雌ねじ部15よりも内径寸法が大きくなっている部分であり、雌ねじ部15を加工する際の工具の逃がしになる。実施の形態1において逃がし部17の両端が傾斜面となっており、雌ねじ部15及びシール面16のそれぞれに接続している。筒体10は、内径の変化を緩やかにすることにより、貯蔵部12の圧力及び雌ねじ部15の締結により発生する応力を緩和している。
【0016】
中心軸方向において逃がし部17の隣にはシール面16が形成されている。実施の形態1においてシール面16は、逃がし部17よりも内径寸法が小さく、筒部13の内径寸法と同じに形成されているが、蓋体20のシール部23に合わせて内径寸法は適宜設定することができる。シール面16は、シール部材24が当接することにより、貯蔵部12から水素が漏れないようにシールする。なお、シール面16が配置されている部分の筒体10の肉厚を、肉厚Hとする。この肉厚Hと上述した貯蔵部12における筒体10の肉厚tとは、異なる値に設定されても良い。つまり、筒体10のシール面16と貯蔵部12の内面との間に段差が形成されていても良い。実施の形態1においては一例としてH=tとなっている構成を示している。
【0017】
(筒体10)
筒体10は、例えば、低合金鋼で構成されている。すなわち、筒体10は、例えば、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、マンガンクロム鋼、マンガン鋼、又はボロン添加鋼等の鋼材により構成されている。また、筒体10は、両端が開口された円筒形状であり、両端部の内周面に雌ねじ部15、ねじ加工の際の工具の逃がし部17、及びシール面16が形成されている。また、筒体10の中央部は、内側が貯蔵部12となる筒部13である。なお、実施の形態1において筒体10は、両端が開口されている円筒形状であるが、一端が開口されている有底筒形状であっても良い。また、筒体10は、円筒形状に限定されるものでは無く、楕円筒などその他の形状とすることができる。
【0018】
筒体10の内周面は、加工により脱炭層が除去されている。また、筒体10の内周面は、脱炭層の除去の後、質量の大きいショット玉を照射することによって残留圧縮応力が付与されている。残留圧縮応力は、筒部13、シール面16、逃がし部17、及び雌ねじ部15に付与されていても良い。
【0019】
逃がし部17及び雌ねじ部15は、シール部23から漏れた水素ガスが滞留する場合がある。逃がし部17及び雌ねじ部15の応力発生部Mは、漏れた水素ガスにより強度が低下する場合がある。そのため、滞留した水素ガスを排出すべく、外部と逃がし部17により形成された空間とを連通する排出孔(図示無し)を設けても良い。また、外部と逃がし部17とを連通する孔を複数設け、逃がし部17の気体と外部の空気とを循環するように構成されても良い。
【0020】
(蓋体20)
蓋体20は、筒体10の端部に接合されている。蓋体20は、貯蔵部12の中心軸方向に配置されており、筒体10の端部を閉塞している。蓋体20は、貯蔵部12に面して配置されている第1部材21と、筒体10の雌ねじ部15に固定される第2部材22と、を備える。第1部材21は、プラグと呼ばれ、貯蔵部12を閉塞する部品である。第2部材22は、グランドナットと呼ばれ、プラグを軸方向に固定する部品である。
【0021】
(第1部材21)
第1部材21は、貯蔵部12に水素ガスを充填する際に高圧水素ガスに接触するため、低温である水素ガスに対する強度が高い材料により構成されている。つまり、第1部材21は、低温であっても強度が確保できる材料で構成され、例えばオーステナイト系ステンレス鋼で構成されている。第1部材21は、略円柱形状に形成されており、少なくともシール面16の内径寸法よりも外径寸法が小さく形成されている。第1部材21の端面は、貯蔵部12の軸方向の面を構成する。
【0022】
第1部材21の外周面は、シール部23を備える。実施の形態1において、シール部23は、溝21aとシール部材24とを備える。溝21aには、シール部材24として例えばOリングが配置されている。シール部材24は、外周面が筒体10のシール面16に当接している。筒体10のシール面16のうち、シール部材24が当接している領域を当接領域18と称する。シール部材24の外径寸法は、シール面16の内径寸法よりも大きく設定されている。これにより、第1部材21は、シール部材24により筒体10の内側に圧入するように挿入される。シール部材24であるOリングは、シール面16に圧迫されて溝21aの内部に充填され、溝21aの底面とシール面16との間の隙間を閉塞する。これらのシール部23及びシール面16で構成される構造により、貯蔵部12から高圧水素ガスが漏れないように封入される。
【0023】
(第2部材22)
第2部材22は、筒体10の雌ねじ部15に螺合する雄ねじ部25と、第1部材21の端面28と当接する端面29と、を備える。第2部材22は、第1部材21が貯蔵部12の高圧水素ガスから受ける軸方向の力を押さえ、蓋体20を筒体10の端部に固定するものである。第2部材22が備える雄ねじ部25は、筒体10の雌ねじ部15と螺合し、蓋体20の軸方向の位置が固定される。実施の形態1においては、筒体10と蓋体20とは、軸方向において互いに突き当たる面を有していない。よって、筒体10の雌ねじ部15と第2部材22の雄ねじ部25との螺合部には、第1部材21のシール部23と筒体10のシール面16との摩擦力及び貯蔵部12の高圧水素ガスによる力が軸力となって掛かる。この軸力により雌ねじ部15と雄ねじ部25との締結力が生じ、蓋体20は、筒体10の端部に固定される。なお、第1部材21と筒体10とは、軸方向に当接するように構成されても良い。また、第2部材22と筒体10とが軸方向に当接するように構成されても良い。この場合は、雌ねじ部15と雄ねじ部25との締結力は軸方向に当接することにより生じる軸力により生ずる。
【0024】
実施の形態1において第1部材21は、円柱形状又は円盤形状に形成されているが、中央部に配管が接合されていても良い。配管は、液体水素又は水素ガスを外部から貯蔵部12に供給するものである。又は、配管は、貯蔵部12に貯蔵された水素ガスを外部へ排出するものである。高圧水素容器100は、水素ガスを高圧の状態で貯蔵し、例えば車両などに搭載された水素タンクに水素ガスを充填するものである。蓋体20の第1部材21は、配管が設置されることにより液体水素又は水素ガスの供給時に低温にさらされる場合があるため、オーステナイト系ステンレス鋼などの低温においても強度を確保できる材質であることが望ましい。また、蓋体20の第2部材22は、水素ガスに接触するものでは無く、直接低温にさらされることが無い。そのため、第2部材22は、固定部である雄ねじ部25の強度が確保できれば良く、筒体10と同様な低合金鋼を採用しても良い。
【0025】
実施の形態1において第1部材21と第2部材22とは、分割されているため、それぞれ異なる材料で構成することができ、耐久性を確保しつつ、コストを下げることができる。実施の形態1においては、第1部材21だけをオーステナイト系ステンレス鋼とし、第2部材22はその他の材質を採用することにより、コストを低減しつつ蓋体20の固定強度及び蓋体20の耐久性も確保できる。なお、第1部材21と第2部材22とは、一体となっていても良い。一体にすることにより、高圧水素容器100を構成する部品点数を削減できるという利点がある。
【0026】
(接合部周辺の応力発生部Mとシール部23との位置関係)
実施の形態1においては、筒体10は、第2部材22が雌ねじ部15に螺合し、貯蔵部12からは高圧水素により圧力が掛かるため、各部分に所定の応力σが発生している。筒体10は、応力集中が発生しやすい部位として、逃がし部17及び雌ねじ部15の谷底15aがある。ここで、
図1及び2に示す高圧水素容器100のシール部23とシール面16とが当接している当接領域18から、応力集中が生じている逃がし部17又は雌ねじ部15の谷底15aまでの距離のうち短い方を距離Lとし、当接領域18から筒体10の外面までの距離を肉厚Hとする。実施の形態1に係る高圧水素容器100においては、距離Lと肉厚Hとの関係は、H<Lを満たす。このように設定されることにより、応力集中が発生し易い逃がし部17及び雌ねじ部15は、貯蔵部12の水素の影響を受けて水素脆化による割れ等の破損が生じるのを抑制できる。
【0027】
(高圧水素容器100を構成する金属への水素拡散の例)
図3は、実施の形態1に係る高圧水素容器100のシール部23の近傍の金属組織内の水素の拡散状態を示す図である。
図3は、所定の条件下において貯蔵部12内の水素ガスの高圧水素容器の金属組織内への拡散を解析により図示したものである。実施の形態1に係る高圧水素容器100は、筒体10が低合金鋼で構成されているため、貯蔵部12に充填された水素ガスが接している面から金属組織に水素が侵入し、拡散していく。実施の形態1に係る高圧水素容器100においては、シール部23とシール面16とが当接している当接領域18からシール面16の近傍の領域まで水素が拡散している。また、筒部13においては、内面から筒部13の外面に至るまで水素が拡散している。ただし、筒体10の径方向と比較して軸方向には水素の拡散は大きくない。従って、金属組織内に拡散した水素は、筒体10の逃がし部17及び雌ねじ部15には至っていない。金属組織内に侵入した水素は、所定の条件で金属組織内を拡散するが、比較的肉厚の薄い筒体10の径方向に拡散し易いため、当接領域18から軸方向に離れて位置している逃がし部17及び雌ねじ部15には水素が拡散しない。なお、蓋体20においては、第1部材21の中心軸C近傍の領域においては肉厚方向に透過するように水素が拡散している。
【0028】
図3の高圧水素容器100は、特にクロムモリブデン鋼(SCM435)を用いて、貯蔵部12に95MPaの水素ガスを充填した場合の、各部の金属組織内への水素の拡散状態を示している。また、
図3は、水素が高圧水素容器100の各部の金属組織内へ拡散し定常状態となったときの図である。高圧水素容器100の貯蔵部12の水素は、時間の経過とともに金属組織内へ侵入し、やがて筒体10を透過する。
図3においては、水素が筒体10の筒部13を透過し、高圧水素容器100が設置されている大気圧下の環境に筒部13を透過した水素が流出している状態である。この状態においては、筒体10の金属組織内を拡散する水素量は、筒体10の肉厚方向に拡散しているが、軸方向への拡散は少ない。また、
図3において、貯蔵部12内の初期水素濃度は0.181[重量ppm]であり、水素拡散係数Dは、2.3×10
-10[m
2/s]である。
【0029】
図3の高圧水素容器100における水素の拡散状態を示す図は、以下に示す金属組織内の水素の拡散流量Jを基にして求められる。
【0030】
【0031】
ここで、
J:拡散流量[ppm・mm/s]
D:拡散係数[mm2/s]
φ:正規化濃度φ=c/s
c:水素濃度[ppm]
s:溶解度[ppm・mm/N1/2]
p:静水圧応力(σx+σY+σZ)/3[MPa]
κp:濃度に依存する静水圧応力(係数)効果係数
である。
【0032】
図4は、水素ガスの圧力と金属組織内に侵入する初期の水素量との相関関係を示した図である。
図4は、高圧水素透過試験により求められた図であり、水素の圧力Pとクロムモリブデン鋼(SCM435)に侵入する水素量C
0との関係を示している。
図4によれば、クロムモリブデン鋼に侵入する水素量C
0は、圧力Pの増加に伴い増大する。
図4に示される様に、C
0=0.523P
(1/2) exp(-1000/T)の関係になっている。ここで、Tは、温度である。
図3に示される高圧水素容器100は、貯蔵部12の内部の圧力が95MPaに設定されているため、
図3より、初期の水素量C
0は、0.181重量ppmである。
【0033】
図5は、水素拡散係数Dと拡散流量Jとの相関関係を示した図である。
図5は、
図4と同じ高圧水素透過試験より求められた図である。クロムモリブデン鋼(SCM435)の容器内に水素ガスを導入し、導入開始から水素が容器を透過して定常状態になるまでの挙動から水素拡散係数Dが求められた。また、高圧水素容器100と外気との接触面においては、水素濃度を0[重量ppm]としている。なお、
図5において、tは時間[s]であり、xは金属と水素ガスとが接している表面からの距離[m]を示している。
図3は、
図5より水素拡散係数D=2.3×10
-10[m
2/s]として高圧水素容器100の水素拡散状態を示したものである。
【0034】
なお、
図3に示す高圧水素容器100への水素の拡散状態を求めるにあたり、溶解度sは、クロムモリブデン鋼(SCM435)と強度及び組織が類似した材料の値を用い、0.076033[ppm・mm/N
1/2]とした(参考文献:Fujii T.,Hazama T., Nakajima H.,and Horita R.:Current Solutions to Hydrogen Problems in Steels,(1982),361, ASM International Materials, Park,Ohio.)。また、静水圧応力効果係数κ
pについては下記の各濃度における係数を線形補完して求めたものを使用した。
0.00ppm:0.00000[N
1/2/mm]
1.00ppm:0.10803[N
1/2/mm]
3.00ppm:0.54014[N
1/2/mm]
【0035】
(高圧水素容器100に発生する応力)
図6は、実施の形態1に係る高圧水素容器100の雌ねじ部15の周辺の応力発生状態の一例を示す図である。
図6においては、高圧水素容器100の貯蔵部12に95MPaの水素ガスを充填した状態での筒体10と蓋体20とを接合した部分の周辺の静水圧応力分布を示したものである。
図6においては、筒体10及び蓋体20は、貯蔵部12の高圧水素の圧力により、全体的にある程度の応力が発生するが、筒体10及び蓋体20を構成する材料の引張強度と比較して、十分に低い。ただし、筒体10においては、逃がし部17の底部17a及び雌ねじ部15の貯蔵部12側に位置する谷底15aは、高い応力σが発生している。応力σは、XYZの3方向の応力の平均である静水圧応力であり、σ=(σ
X+σ
Y+σ
Z)/3で求められる。静水圧応力が高い程、金属組織は水素の影響を受けやすい。
【0036】
実施の形態1において、高圧水素容器100の応力発生部Mは、雌ねじ部15、シール面16の近傍、逃がし部17を含む領域であって、所定の応力σ以上の応力が発生している箇所を意味する。所定の応力σは、例えば金属材料の引張強度の1/3である。実施の形態1においては、
図6に示す、逃がし部17の底部17a及び雌ねじ部15の貯蔵部12側の部分の谷底15aが応力発生部Mに該当する。
図6に示すように、実施の形態1に係る高圧水素容器100においては、当接領域18から最も近い逃がし部17の底部17aを応力発生部Mとし、当接領域18から応力発生部Mまでの距離Lは、当接領域18から筒体10の外面までの肉厚Hよりも大きく設定されている。従来においては、金属組織内の水素の拡散は考慮されておらず、距離Lと肉厚Hとの関係は、貯蔵部12内の圧力に耐えられる程度に設定されていた。つまり、高圧水素容器は、圧力に耐えられれば、距離Lがなるべく小さくなる様に設定されていた。しかし、実施の形態1においては、
図3に示されているように、水素が金属組織内を拡散して応力発生部Mに到達する前に、水素は筒体10を透過して筒体10の外部に流出するように形成されているため、応力発生部Mは水素の影響を受けることがない。
【0037】
上述したように、距離Lと肉厚Hとの関係は、H<Lである。詳しくは、係数をKとすると、H=K・Lであり、係数Kは1より小さい値をとる。係数Kは、筒体10の材質、筒体10に発生する応力分布、及び貯蔵部12の水素の濃度により変動するが、実施の形態1における高圧水素容器100においてはK<1である。なお、実施の形態1に係る高圧水素容器100は、貯蔵部12内の圧力が使用状態である100MPa以下の圧力に設定され、筒体10を構成するクロムモリブデン鋼の引張強さ930MPaの1/3である310MPa以上の部位を応力発生部Mとしている。
図6に示す高圧水素容器100は、逃がし部17の底部17aの応力発生部Mで350MPa程度の応力が発生しており、雌ねじ部15の谷底15aの応力発生部Mで490MPa程度の応力が発生している。
【0038】
図7は、金属材料に加わる応力と応力が加わるサイクル数との関係を示す図である。金属材料は、繰り返しの応力を加えた時に破壊に至るが、応力を下げていくと10
6~10
7サイクル以上の繰り返し応力が加わっても破壊しない。この時の応力を疲労限度と呼ぶ。金属材料が水素の影響下にある場合は、繰返し応力の回数が少ない低サイクル領域では、水素の影響がない場合と比較して金属材料が破壊に至る応力が低くなる。ただし、繰り返し応力が疲労限応力以下であれば、水素の影響を無視できる。そのため、応力発生部Mの基準を金属材料の疲労限応力以上の応力が発生している部位とすることにより、距離Lをより小さく設定することができる。距離Lは、なるべく小さく設定することにより、水素の影響を受ける環境下においても十分な強度を確保しつつ、高圧水素容器100の貯蔵部12以外の部分の大きさを小さくすることができる。
【0039】
また、高圧水素容器100は、75MPa~100MPaの高圧の水素が充填され、例えば車両の水素タンクに供給するものであるため、高い頻度で圧力の変動が生ずる。例えば車両の水素タンクは75MPaで水素を貯蔵するため、高圧水素容器100の貯蔵部12は、少なくとも75MPaより高い圧力に維持される必要がある。従って、高圧水素容器100は、水素タンクなどに水素を供給し貯蔵部12の圧力が低下した後に、液体水素又は水素ガスが貯蔵部12に供給され、再度高圧にされる。そのため、高圧水素容器100の筒体10は、例えば75MPa~100MPaなどの高圧の領域で圧力の変動を頻繁に受ける。この圧力変動により筒体10は、常時応力が発生している状態にあり、特に応力集中が発生し易い、筒体10と蓋体20との接合部においては高い応力が発生し、かつ応力振幅を繰り返し受けることになる。高圧水素容器100は、このような高い応力の振幅を繰り返し受けても破壊しないように高い強度が必要となる。
【0040】
実施の形態1に係る高圧水素容器100は、上述のように高い強度が必要であるため、高い引張強度を有し、疲労強度も高い低合金鋼が用いられる。しかし、低合金鋼は、引張強度も高く、靭性にも優れるため疲労強度も高いが、金属組織内に水素が侵入すると靭性が低下し、破損につながる。従来は水素が接している面に対する水素の影響のみを考慮していたが、実施の形態1に係る高圧水素容器100は、水素が接している部材の金属組織内を拡散する水素の影響による部材の強度低下を抑制している。高圧水素容器100は、応力発生部Mからシール部23とシール面16との当接領域18までの距離Lを適正に設定することにより、強度低下を抑制しつつ、貯蔵部12を最大限に確保し、容積効率を高くすることができる。
【0041】
筒体10の雌ねじ部15は、接合部と称する場合がある。また、蓋体20の雄ねじ部25は、固定部と称する場合がある。なお、実施の形態1における雌ねじ部15及び雄ねじ部25は、他の形態の接合構造を取っても良い。筒体10と蓋体20との接合は、例えば嵌合、溶接、又はボルトによる固定等、その他の接合手段により接合されていても良い。筒体10と蓋体20との接合を変更した場合、実施の形態1に係る高圧水素容器100に対し応力発生部Mの位置が変更されるが、その場合であっても、距離Lが肉厚Hよりも大きくなるという条件を満たすことにより、高圧水素容器100の強度を確保することができる。つまり、
図6に示す様に、高圧水素容器100の内部の圧力を所定の条件にし、筒体10に発生する応力を把握し、応力発生部Mを特定する。そのとき、シール部23が当接する当接領域18と応力発生部Mとの距離Lが肉厚Hよりも大きくなっているため、高圧水素容器100は、貯蔵している水素の影響を受けることなく強度を確保することができる。
【0042】
なお、実施の形態1においては、応力発生部Mは、「金属材料の引張応力の1/3」以上の応力が発生している部位と設定したが、「金属材料の疲労限応力」が発生している部位と設定しても良い。
【0043】
図6に示す高圧水素容器100は、
図3に示されているものと同じものであり、例えば以下の様な寸法になっている。
当接領域18から筒体10の外周までの肉厚H:50mm
逃がし部17の底部17aの肉厚H2:36mm
雌ねじ部15の軸方向長さS:217mm
第1部材21の肉厚E:110mm
筒体10の外径:φ406mm
第2部材22の肉厚:42mm
【0044】
また、
図6に示す高圧水素容器100の応力分布は、貯蔵部12内の圧力が95MPaであり、筒体10と蓋体20とが雌ねじ部15及び雄ねじ部での状態を示している。上記の様な高圧水素容器100において、当接領域18から応力発生部Mまでの距離Lは、65.5mmである。この距離Lは、応力発生部Mが「金属材料の引張応力の1/3」の応力である310MPa以上の応力が発生している部位としたときの、当接領域18から最も近い応力発生部Mとの距離Lであり、
図6に示されている距離L1に相当する。なお、応力発生部Mが「金属材料の疲労限応力」である465MPa以上の応力が発生している部位としたときは、距離Lは、
図6に示されている距離L2となり、86mmである。
図6に示すようなH<Lを満たす高圧水素容器100は、応力発生部Mが筒体10に貯蔵された水素による影響を無視することができ、内部の高圧水素による応力振幅を受けても破壊に至るのを防ぐことができる。
【0045】
なお、
図6に示されている肉厚Hは、実施の形態1においては筒体10の肉厚tと同じであるが、例えば
図6において筒体10の外周面に段差13a(
図2の点線で示されるような形状)がある場合、当接領域18から段差13aまでの最短距離hを肉厚Hとする。
【0046】
上記のように、高圧水素容器100は、貯蔵部12の圧力を加えた状態での応力の発生状態が求められ、応力発生部Mの位置が特定されている。応力発生部Mは、上述したように応力σが金属材料の引張応力の1/3以上、又は金属材料の疲労限応力以上の部分である。高圧水素容器100の形状により、応力発生部Mは、複数箇所が該当する場合があるが、その場合は、シール部材24が当接する当接領域18からの距離が最も近い応力発生部Mである。このとき、当接領域18から応力発生部Mまでの距離Lと肉厚Hとの関係は、H<Lを満たすように高圧水素容器100は構成されている。距離Lが肉厚Hよりも大きいが極力小さく設計されることにより、応力発生部Mは、水素の影響を受けることがなく強度が低下しない。なお、応力発生部Mが複数箇所存在する場合には、当接領域18と応力発生部Mとの最短距離を距離Lとし、高圧水素容器100は、H<Lの条件を満たすように構成されている。
【0047】
また、実施の形態1に係る高圧水素容器100は、第1部材21又は第2部材22と筒体10とが軸方向に当接する構造になっていないため、
図6に示されるように応力発生部Mが逃がし部17又は雌ねじ部15の谷底15aに位置している。このように構成されることにより、高圧水素容器100は、H<Lを満たすため、応力発生部Mに水素の影響が及ばず、高圧の水素を貯蔵した状態で強度を確保することが可能となる。なお、例えば第1部材21と筒体10とを軸方向に当接させるように高圧水素容器を構成した場合は、その軸方向当接部の周辺に応力発生部Mが位置するため、当接領域18とその軸方向当接部との距離がLとなり、高圧水素容器はH<Lを満たすように構成すると良い。
【0048】
(実施例)
表1は、当接領域18から筒体10の外周までの肉厚Hに対し当接領域18から応力発生部Mまでの距離Lを変化させたときの水素拡散解析を実施し、応力発生部Mに集積した最大水素濃度[ppm]の結果を示したものである。
【0049】
【0050】
表1に示すように、実施例の場合には応力発生部Mに水素の影響が及ばず、高圧の水素を貯蔵した状態で強度を確保することが可能となる。一方、比較例の様にH<Lを満足しない場合には応力発生部Mに水素が集積するため、貯蔵部12に高圧の水素を貯蔵した状態で高圧水素容器100の疲労強度が低下する結果となった。
【0051】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 筒体、12 貯蔵部、13 筒部、15 雌ねじ部、15a 谷底、16 シール面、17 逃がし部、17a 底部、18 当接領域、19 開口端、20 蓋体、21 第1部材、21a 溝、22 第2部材、23 シール部、24 シール部材、25 雄ねじ部、26 シール部、27 端面、100 高圧水素容器、C 中心軸、C0 水素量、D 水素拡散係数、H 肉厚、J 拡散流量、K 係数、L 距離、M 応力発生部、P 圧力、s 溶解度、t 肉厚、κp 静水圧応力効果係数、σ 応力、φ 正規化濃度。