(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】注射デバイス用線路及びロック機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230426BHJP
A61M 5/50 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61M5/32 502
A61M5/32 510K
A61M5/50 530
(21)【出願番号】P 2022515633
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 US2020049796
(87)【国際公開番号】W WO2021050448
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ホッパー・ケビン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508032(JP,A)
【文献】特表2016-511101(JP,A)
【文献】特表2016-503308(JP,A)
【文献】特表2017-513669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354791(US,A1)
【文献】国際公開第2015/022787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を投与するように構成されている注射デバイスであって、
薬剤を保持する針が付いた注射器を同軸に支持するように構成されており、内部に前記注射器が装着されると、遠位端から前記針を突出させる下部ハウジングと、
前記下部ハウジングと同軸に摺動可能に係合し、前記下部ハウジングに対して縦方向に第1の位置から近位側へ第2の位置まで移動可能である針ガードと、
前記下部ハウジングと同軸に摺動可能に係合し、前記下部ハウジングに対して縦方向に使用前の位置から遠位側へ投与後の位置まで移動可能である上部ハウジングと
を備え、
前記下部ハウジングは、
少なくとも一部が外周側へ伸びており、近位側を向いた表面を有する少なくとも1つの受け具
を含み、
前記針ガードの遠位端は、
前記針ガードが前記第1の位置にある状態では、前記下部ハウジングの遠位端よりも遠位側へ伸びており、前記注射器が前記下部ハウジングの内部に装着されている場合には前記針の遠位端を隠し、
前記針ガードが前記第2の位置にある状態では、前記装着されている場合には前記針の遠位端を露出させる
ように構成されており、
前記針ガードは、
遠位側を向いた針用開口部を有する遠位側保護部と、
前記遠位側保護部から近位側へ縦方向に伸びている少なくとも1本の脚部と
を含み、
前記少なくとも1本の脚部は、
前記脚部から外周側へ広がっているリムと、
前記脚部から外周側へ広がり、かつ前記リムよりも遠位側に位置するカム斜面と
を有し、
前記上部ハウジングは、
遠位側を向いた接触面を有する接触体を成す、少なくとも1本の縦方向に伸びているアーム
を含み、
前記上部ハウジングが前記使用前の位置にあり、かつ前記針ガードが前記第1の位置にある状態では、
前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームのうち前記接触体の前記遠位側を向いた接触面が、前記下部ハウジングの前記少なくとも1つの受け具の前記近位側を向いた表面に接触して、前記上部ハウジングを前記下部ハウジングに対して遠位側へ、投与後の位置へ向かっては移動させず、かつ、
前記針ガードの前記少なくとも1本の脚部のうち前記外周側へ広がっているカム斜面が、前記下部ハウジングの前記少なくとも1つの受け具の遠位側に位置し、
前記針ガードが、前記上部ハウジングに対して近位側へ前記第1の位置から前記第2の位置まで移動することにより、前記カム斜面を前記少なくとも1つの受け具と前記接触体とに対して近位側へ移動させて前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームと係合させ、前記接触体を外周側へ十分な距離だけ曲げるので、前記接触体が前記下部ハウジングの前記少なくとも1つの受け具の外周側を通過可能になり、前記上部ハウジングが前記下部ハウジングに対して遠位側へ前記投与後の位置まで移動可能になる
ことを特徴とする注射デバイス。
【請求項2】
前記上部ハウジングが前記使用前の位置にあり、かつ前記針ガードが前記第1の位置にある状態では、前記針ガードの前記少なくとも1本の脚部のうち前記リムの遠位側を向いた表面が、前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームのうち前記接触体の近位側を向いた表面に接触して、前記針ガードを前記下部ハウジングに対して遠位側へは移動させない、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1本の脚部が、
互いから周方向に間隔を開けて、縦方向に伸びている前記針ガードの中心軸の両側に位置する2本の脚部
を含む、請求項1又は請求項2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
前記下部ハウジングが、
前記注射器を収容して支持するように構成されている縦方向の穴
を含む、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
前記針ガードを前記上部ハウジングと前記下部ハウジングとに対して遠位方向の力を加えるばね
を更に備え、
前記上部ハウジングが前記投与後の位置にあり、かつ前記針ガードに対して前記ばねの力よりも大きい近位方向の力が加えられていない状態では、前記針ガードが前記第2の位置から遠位側へ第3の位置まで押されることにより、前記針ガードの前記少なくとも1本の脚部の前記リムが前記下部ハウジングの前記少なくとも1つの受け具に接触し、前記針ガードの遠位端が、前記装着されている場合には前記針の遠位端を再度隠すように構成されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
前記下部ハウジングが、前記注射器を収容して支持するように構成されている縦方向の穴を含み、前記縦方向の穴が、外周方向へ傾斜した遠位側の縁を有し、
前記針ガードの前記少なくとも1本の脚部が、内周方向へ偏った近位側の自由端を有する縦向きの屈曲可能な指部を備え、
前記針ガードが前記第3の位置にある状態では、前記屈曲可能な指部の前記内周方向へ偏った近位側の自由端が、前記下部ハウジングの前記穴のうち前記外周方向へ傾斜した遠位側の縁に接触して、その後は前記針ガードを前記下部ハウジングに対して近位側へは移動させない、
請求項5に記載の注射デバイス。
【請求項7】
前記針ガードの前記遠位側保護部が可視表示を含み、
前記可視表示は、
前記針ガードが前記第1の位置にある状態と前記第2の位置にある状態とでは前記下部ハウジングによって隠されて見えず、
前記針ガードが前記第3の位置にある状態では前記下部ハウジングから露出する、
請求項5に記載の注射デバイス。
【請求項8】
前記針ガードの遠位端が前記下部ハウジングの遠位端を越えて遠位側へ伸びている距離は、前記針ガードが前記第3の位置にある状態の方が、前記第1の位置にある状態よりも大きく、
前記可視表示が前記遠位側保護部の近位端の近くに、
前記遠位側保護部の残りの部分よりも径方向に厚いか、または、前記遠位側保護部の前記残りの部分とは色が異なるかの少なくともいずれかである環状のリング
を含む、請求項7に記載の注射デバイス。
【請求項9】
前記カム斜面が、縦方向に広がっている隆起部を少なくとも1つ含み、
前記隆起部が、
実質的に中央に位置する平坦部と、
前記平坦部から近位側と遠位側との両方へ広がっていると共に、内周方向へ傾いている傾斜部と、
を有する、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
前記針ガードが前記第2の位置にある状態では、前記カム斜面の平坦部が前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームの前記接触体と係合する、請求項9に記載の注射デバイス。
【請求項11】
前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームには、
互いから周方向に間隔を開けて、縦方向に伸びている前記上部ハウジングの中心軸の両側に位置する2本のアーム
が含まれる、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
前記下部ハウジングが、
周方向に間隔を開けて縦方向に伸びている1対の線路状の壁
を含み、
前記1対の線路状の壁が間に、
周方向に間隔を開けて縦方向に伸びている1対の線路であって、各々が内側に前記上部ハウジングの対応する縦方向に伸びているアームを1本ずつ収容して、回転方向には固定し、縦方向には移動可能にするように構成されている1対の線路
を挟み、
各線路が前記少なくとも1つの受け具のうち1つ以上を含む、
請求項11に記載の注射デバイス。
【請求項13】
前記リムが、前記少なくとも1本の脚部の近位端から遠位側へ突出している返し付きのリムである、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
前記縦方向に広がっている隆起部を2つ備えている、請求項9に記載の注射デバイス。
【請求項15】
前記接触体が前記縦方向に伸びているアームの遠位端の近くに、内周側へ広がっている棚を含む、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項16】
前記内周側へ広がっている棚が、前記棚の他の部分から内周側へ更に広がっている少なくとも1つのロックタブを含み、
前記遠位側を向いた接触面が、前記少なくとも1つのロックタブの遠位側を向いた表面を含む、
請求項15に記載の注射デバイス。
【請求項17】
前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームが、縦方向に広がっている片部を含み、
前記遠位側を向いた接触面が前記片部の遠位側の自由端の遠位側を向いた表面を含み、
前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームが、
前記縦方向に伸びているアームの遠位端の近くに位置し、前記片部の遠位側の自由端よりも外周側へ更に広がって下部ポケットを形成している橋梁部
を含み、
前記上部ハウジングが前記使用前の位置にあり、かつ前記針ガードが前記第1の位置にある状態では、前記片部の遠位側の自由端が前記下部ハウジングの前記少なくとも1つの外周側へ伸びている受け具に接触する、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項18】
前記下部ハウジングが、
縦方向に伸びて互いに対向しており、前記上部ハウジングの前記少なくとも1本の縦方向に伸びているアームの両側の縦方向に伸びている縁を内側に収容して、回転方向には固定し、縦方向には移動可能にするように構成されている1対のレール
を含み、
前記レールの間には、前記少なくとも1つの外周側へ伸びている受け具が配置されている、
請求項1から請求項11までと請求項17とのいずれか一項に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年9月9日に出願された、同様のタイトルの米国特許仮出願第62/897,550号からの優先権を主張するものであり、その全容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載される実施形態は、概して、注射デバイスのための線路及びロック機構に関し、より具体的には、注射プロセスを容易にするために互いに対して移動する針ガード及び複数のハウジング要素を有する手動式注射デバイスと共に利用される線路及びロック機構に関する。
【0003】
使い勝手が良いだけでなく、ユーザの積極的な関与がなくても注射の前後で針刺し事故を確実に防止する手動式注射デバイスの提供が望ましい。更に、ユーザの積極的な関与がなくても再利用を防止する手動式注射デバイスの提供が望ましい。
【発明の概要】
【0004】
簡単に述べると、本開示の一態様は、薬剤を投与するように構成された注射デバイスを対象とする。このデバイスは下部ハウジングを含む。下部ハウジングは、薬剤を保持する針が付いた注射器を同軸に支持するように構成されており、内部にその注射器が装着されると遠位端からその針を突出させる。下部ハウジングは少なくとも1つの受け具を含む。この受け具は、少なくとも一部が外周側へ伸びており、近位側を向いた表面を有する。下部ハウジングには針ガードが同軸に摺動可能に係合し、下部ハウジングに対して縦方向に第1の位置から近位側へ第2の位置まで移動可能である。針ガードの遠位端は、針ガードが第1の位置にある状態では、下部ハウジングの遠位端よりも遠位側へ伸びており、注射器が下部ハウジングの内部に装着されている場合にはその針の遠位端を隠すように構成されている。針ガードの遠位端は、針ガードが第2の位置にある状態では、注射器が下部ハウジングの内部に装着されている場合にはその針の遠位端を露出させるように構成されている。針ガードは、遠位側を向いた針用開口部を有する遠位側保護部と、遠位側保護部から近位側へ縦方向に伸びている少なくとも1本の脚部とを含む。この少なくとも1本の脚部は、その脚部から外周側へ広がっているリムと、その脚部から外周側へ広がり、かつリムよりも遠位側に位置するカム斜面とを有する。上部ハウジングは少なくとも1本の縦方向に伸びているアームを含み、このアームは、遠位側を向いた接触面を有する接触体を成す。上部ハウジングは下部ハウジングと同軸に摺動可能に係合し、下部ハウジングに対して縦方向に使用前の位置から遠位側へ投与後の位置まで移動可能である。上部ハウジングが使用前の位置にあり、かつ、針ガードが第1の位置にある状態では、上部ハウジングの少なくとも1本の縦方向に伸びているアームのうち接触体の遠位側を向いた接触面が、下部ハウジングの少なくとも1つの受け具のうち近位側を向いた表面に接触して、上部ハウジングを下部ハウジングに対して遠位側へ、投与後の位置へ向かっては移動させない。更に、針ガードの少なくとも1本の脚部のうち外周側へ広がっているカム斜面が下部ハウジングの少なくとも1つの受け具の遠位側に位置する。針ガードが上部ハウジングに対して近位側へ第1の位置から第2の位置まで移動することにより、カム斜面を少なくとも1つの受け具と接触体とに対して近位側へ移動させて少なくとも1本の縦方向に伸びているアームと係合させ、接触体を外周側へ十分な距離だけ曲げる。これにより、接触体が下部ハウジングの少なくとも1つの受け具の外周側を通過可能になり、上部ハウジングが下部ハウジングに対して遠位側へ投与後の位置まで移動可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
前述の概要、並びに以下の本開示の態様の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。しかし、本開示は、図示される配置及び手段に正確に一致するものには限定されず、その目的のために特許請求の範囲を参照することを理解されたい。
【0006】
【
図1】第1の好ましい実施形態による注射デバイスの正面側面図である。
【
図2】
図1の注射デバイスの左側面図であり、グリップキャップ、上部シェル、及び下部シェルが取り外された状態である。
【
図3】
図1の注射デバイスの上部ハウジングの正面左斜視図である。
【
図4】
図1の注射デバイスの下部ハウジングの正面左斜視図である。
【
図5】
図1の注射デバイスの針ガードの正面左斜視図である。
【
図6】初期位置にある、
図1の注射デバイスの上部ハウジング、下部ハウジング、及び針ガードの、大幅に拡大された部分断面左斜視図である。
【
図7】針ガードが格納位置にある、
図2の注射デバイスの左側面図である。
【
図8】注射後であり、針ガードが格納位置にある、
図2の注射デバイスの左側面図である。
【
図9】ロック位置にある、
図2の注射デバイスの左側面図である。
【
図10】
図9のロック位置にある、下部ハウジング及び針ガードの、大幅に拡大された部分左側斜視図である。
【
図11】ロック位置にある、
図2の注射デバイスの拡大された正面側面断面図である。
【
図12】第2の実施形態による下部ハウジングの大幅に拡大された部分左側斜視図である。
【
図13】第3の実施形態による、下部ハウジングの部分の拡大された部分左側斜視図である。
【
図14】第3の実施形態による上部ハウジングの拡大された部分左側斜視図である。
【
図15】第3の実施形態による針ガードの拡大された部分左側面図である。
【
図16】初期位置にある、
図13~
図15の下部ハウジング、上部ハウジング、及び針ガードの、大幅に拡大された部分断面左側斜視図である。
【
図17】針ガードが格納位置にある、
図13及び
図15の下部ハウジング及び針ガードの、拡大された部分左側斜視図である。
【
図18】針ガードがロック位置にある、
図13及び
図15の下部ハウジング及び針ガードの、拡大された部分左側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特定の専門用語は、便宜上、以下の説明において使用され、限定するものではない。「右」、「左」、「下」、及び「上」という用語は、参照される図面内の方向を示す。「内向きに」及び「外向きに」という単語は、それぞれ、デバイスの幾何学的中心、及びデバイスの指定された部分に向かう方向、並びにそれらから離れる方向を指す。用語は、上記の単語、その派生語、及び同様の意味の語を含む。更に、「a」及び「an」という単語は、特許請求の範囲、及び本明細書の対応する部分で使用されるときに、「少なくとも1つ」を意味する。
【0008】
要素の寸法又は特性に言及するときに本明細書で使用される「約」、「おおよそ」、「概ね」、「実質的に」という用語、及び同様の用語はまた、説明される寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同様である、それらからのわずかな変更例を排除するものではないことを示すことも理解されたい。最低限、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において認められている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の定誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変更例を含む。
【0009】
図1~
図2を参照すると、本明細書に記載される線路及びロック機構を利用可能な注射デバイス10の第1の好ましい実施形態が示されている。示されている実施形態では注射デバイス10が、手のひらで駆動される手動式注射器であり、薬剤充填済み注射器12と付属の針14(
図7)とを含む。注射デバイス10は上部ハウジング16と下部ハウジング18とを含む。これらは、後で更に詳細に説明されるように、注射の間、互いに対して縦方向に移動可能であるように構成されている。薬剤充填済み注射器12が下部ハウジング18の内部に同軸に保持されることにより、針14が下部ハウジング18の遠位端から突出可能である。上部ハウジング16には上部シェル20が一緒に移動するように取り付けられてもよい。同様に、下部ハウジング18には下部シェル22が一緒に移動するように取り付けられてもよい。上部シェル20及び下部シェル22は、対応する上部ハウジング16及び下部ハウジング18の特定の部品を囲んでユーザには触れさせないようにしてもよい。
【0010】
ユーザによる注射デバイス10の取り扱いと駆動とに便利であるように、上部ハウジング16にグリップキャップ24が設置されてもよい。グリップキャップ24は上部ハウジング16に固定され、それと一緒に移動可能である。グリップキャップ24がプランジャ(図示せず)を含んでもよい。プランジャは上部ハウジング16の中を縦方向に通って薬剤充填済み注射器12の開口端の中に入っている。これにより上部ハウジング16は、下部ハウジング18の遠位端へ向かって移動すると、薬剤充填済み注射器12から針14を通して薬剤(図示せず)を排出させる。その他に、グリップキャップ24及び/又はプランジャが上部ハウジング16と一体的に形成されてもよい。別の実施形態では、薬剤充填済み注射器12が自身のプランジャを含んでもよい。このプランジャは、グリップキャップ24及び/又は上部ハウジング16の対応する要素(図示せず)に従って駆動される。
【0011】
注射デバイス10には更に針ガード26が設置されている。針ガード26は少なくとも一部が下部ハウジング18と同軸に向けられ、それに対して縦方向に移動可能である。針ガード26は、好ましくは、コイルばね27(
図11)などによって押し出され、針ガード26の遠位端を下部ハウジング18の遠位端よりも遠位側へ、1つ以上の張り出し位置まで伸ばして、針14の先端に異物を接触させない。しかし、針ガード26は、例えば患者の皮膚に押し付けられるときには、注射を可能にする目的で近位側へ下部ハウジング18の遠位端へ向かって移動して、格納位置で針14を露出させてもよい。後で更に詳細に説明されるように、注射が開始されれば、たとえ完了前であっても、針ガード26が張り出し位置の1つに戻った直後に針ガード26を下部ハウジング18に対する所定の位置にロック可能にしてもよい。これにより、注射デバイス10の再使用が防止され、針14に対する異物の接触が防止される。
【0012】
下部ハウジング18の遠位端には針シールド引き具28(
図1参照)が取り外し可能に取り付けられてもよい。針シールド引き具28は、最初のうちは、薬剤充填済み注射器12の針14を覆っている硬質の針シールド(図示せず)などに連結されていてもよい。針シールド引き具28は、下部ハウジング18から取り外されることにより、薬剤充填済み注射器12から硬質の針シールドを取り外して針14を、使えるように注射デバイス10の内部に露出させる。
【0013】
図3を参照すると、上部ハウジング16の典型的な実施形態が示されている。この実施形態は近位端にヘッド部30を含んでもよい。注射デバイス10が組み立てられるとき、ヘッド部30にはグリップキャップ24(
図1)が取り付け可能である。図示されている実施形態では、ヘッド部30がプランジャ用開口部32を含む。プランジャ用開口部32は、その中にグリップキャップ24からプランジャが挿入可能であるように、そのサイズと形状とが設計されている。他の実施形態では、プランジャと、薬剤充填済み注射器12のプランジャを操作するように構成されている要素とのいずれかが、上部ハウジング16のヘッド部30に直付けされてもよい。更に、注射デバイス10の一部が組み立てられるときに薬剤充填済み注射器12が下部ハウジング18の中に挿入可能であるように、プランジャ用開口部32のサイズと形状とが設計されてもよい。
【0014】
上部ハウジング16が更に少なくとも1本のアーム34を含んでもよい。アーム34はヘッド部30に取り付けられ、ヘッド部30から遠位側へ縦方向に伸びている。
図3に示されている実施形態では、2本のアーム34が互いから周方向に間隔を開けて、縦方向に伸びている上部ハウジング16の中心軸の両側に設置されている。各アーム34は平面形状であってもよいが、
図3のアーム34は、縦方向に伸びている中心軸に対してわずかに湾曲している。この幾何学的形状は、好ましくは、下部ハウジング18と針ガード26とに嵌まることにより、上部ハウジング16、下部ハウジング18、及び針ガード26の3つの構成要素を縦方向において相対的に運動可能にするように構成されている。必要に応じ、各アーム34の遠位端が接触面を含んでもよい。この接触面は、内周側へ広がっている棚36の形をしている。棚36はアーム34の周方向の幅にわたって広がっていてもよく、両側の端の各々が1つのロックタブ38に位置する。ロックタブ38は少なくとも一部が、各棚36から更に内周側へ広がっている。実施形態の中には、棚36自体がロックタブ38の役割を果たすので、ロックタブ38が不要なものがあってもよい。他の実施形態では1つ以上のロックタブ38が、棚36の中間など、棚36の端以外に配置されていてもよい。また、各アーム34が、その一部に沿って縦方向に伸びている線路状の窓40も含んでもよい。それとは別に、線路状の窓40が、注射デバイス10の様々な部品のサイズと厚さとに応じて、対応するアーム34の内面上の溝(図示せず)として形成されてもよく、又は完全に省略されてもよい。
【0015】
図4を参照すると、下部ハウジング18の典型的な実施形態が示されている。下部ハウジング18は中央に、縦方向に伸びている穴42を含む。穴42は薬剤充填済み注射器12(
図4には示されていない)を収容して支持する。本例では、薬剤充填済み注射器12のフランジが、下部ハウジング18の近位側を向いた環状面44に接触した状態で静止していてもよい。例えばPCT出願公開、WO2019/068109号に記載されているような固定用アーム、スナップフィット部、又は摩擦接合部などの追加の部品を使い、薬剤充填済み注射器12を下部ハウジング18に対して遠位側へは運動させないようにしてもよい。
図4には示されていないが、好ましくは、薬剤充填済み注射器12が装着されると、針14が下部ハウジング18の遠位端から突出する。
【0016】
下部ハウジング18は更に、周方向に間隔を開けて縦方向に伸びている1対の線路状の壁46を含む。1対の線路状の壁46は間に少なくとも1本の縦方向に伸びている線路48を挟んでいる。線路48は、上部ハウジング16の対応する1本のアーム34を縦方向に移動可能に収容するように、そのサイズと形状とが設計されている。線路状の壁46はアーム34の縦方向に伸びている縁に接触し、又はその縁を収容することにより、上部ハウジング16と下部ハウジング18とを相対的には回転させなくてもよい。少なくとも1本の線路48が受け具50を含んでもよい。各受け具50は線路48の近位端と遠位端との間に配置されており、少なくとも一部が外周側へ伸びている。後で更に詳細に説明されるように、各受け具50の近位側を向いた表面は、初期姿勢の注射デバイス10では上部ハウジング16の対応するロックタブ38の遠位側を向いた表面に接触し、注射の準備が整うまで上部ハウジング16と下部ハウジング18とを相対的に縦方向には運動させないように構成されている。
【0017】
図5を参照すると、針ガード26の典型的な実施形態が示されている。針ガード26は遠位端に保護部52を含む。保護部52の遠位側を向いた表面は針用開口部54(
図11参照)を含む。注射が行われるとき、針用開口部54の中には針14が通過可能である。針用開口部54は、針ガード26が下部ハウジング18に対して張り出している第1の位置にあるときには内部に指部を挿入させないように、その概ねのサイズが設計されていてもよい。更に、この張り出している位置へ向かって針ガード26が、針ガード26と下部ハウジング18との間に連結されているコイルばね27又は他の種類の弾性器具によって押し出されてもよい。具体的には、針ガード26が、下部ハウジング18に対して縦方向に移動するように構成され、その結果、保護部52の少なくとも一部が下部ハウジング18の中に格納され、針用開口部54を通して針14を露出させてもよい。
【0018】
保護部52が更に可視表示56を含んでもよい。可視表示56は、注射がすでに完了していることと、注射デバイス10がロックされて再使用ができないこととをユーザに知らせるためのものである。示されている実施形態では可視表示56が、保護部52の残りの部分よりも径方向の厚さが大きい環状のリングの形をしていてもよく、色も異なっていてもよい。更に、後でより十分に説明されるように、可視表示56は注射の完了後まで、下部ハウジング18によって隠されて見えないままであることが好ましい。他の実施形態では、針ガード26と下部ハウジング18との2つの構成要素が相対的に縦方向に移動する間、保護部52が下部ハウジング18の遠位端を隠すように、そのサイズが設計されていてもよい。
【0019】
針ガード26は更に少なくとも1本の脚部58を含む。脚部58は保護部52に取り付けられており、保護部52から近位側へ縦方向に伸びている。
図5に示されている実施形態では、2本の脚部58が互いから周方向に間隔を開けて、縦方向に伸びている針ガード26の中心軸の両側に設置されている。各脚部58は平面形状であってもよいが、
図5の脚部58は、縦方向に伸びている中心軸に対してわずかに湾曲している。この幾何学的形状は、好ましくは、上部ハウジング16と下部ハウジング18とに嵌まることにより、上部ハウジング16、下部ハウジング18、及び針ガード26の3つの構成要素を縦方向に相対的に運動可能にするように構成されている。各脚部58の近位端が、外周側へ広がっているリム60、例えば返し付きのリム60を含んでもよい。返し付きのリム60は、脚部58の周方向の幅にわたって広がっていても、その幅よりも狭くても、又はその幅をわずかに超えていてもよい。
【0020】
各脚部58には、リム60からは遠位側に配置され、脚部58からは外周側へ広がっているカム/カム斜面62が設置されていてもよい。
図5の実施形態ではカム斜面62が、周方向に間隔を開けて縦方向に広がっている1対の隆起部64の形をしている。各隆起部64はほぼ中央に平坦部66を有し、そこから近位側と遠位側との両方へ徐々に傾斜している。後で更に詳細に説明されるように、カム斜面62は、上部ハウジング16の線路状の窓40の内側に嵌まってその内側を移動可能であるように、そのサイズと形状とが設計されていてもよい。
【0021】
各脚部58が少なくとも1本のロック用指部68も備えていてもよい。
図5に示されている実施形態では、ロック用指部68がヒンジ70で脚部58に取り付けられており、近位側へ縦方向に自由端72へ向かって伸びている。ヒンジ70はリビングヒンジであってもよい。又は、ロック用指部68が、脚部58に回転可能に取り付けられている脚部58とは別の部品であってもよい。他の実施形態ではロック用指部68の向きが、本発明の範囲を逸脱しない程度で変更されていてもよい。ロック用指部68は、好ましくは、内周側へ偏っている。その結果、ロック用指部68の自由端72が対応する脚部58の内面よりも、縦方向に伸びている針ガード26の中心軸の近くに位置する。ただし、ロック用指部68は、好ましくは、自由端72が径方向に移動可能であるように構成されている。後で更に詳細に説明されるように、ロック用指部68の柔軟性と自由端72の偏りの方向とにより、注射の完了後に針ガード26を所定の位置にロックすることが可能である。
【0022】
図1及び
図2は、初期姿勢すなわち使用前の姿勢の注射デバイス10、すなわち注射の開始前における注射デバイス10を示す。動作中、好ましくは、針ガード26の少なくとも一部が格納されるまで、及び/又は針14が露出するまで、上部ハウジング16は下部ハウジング18の遠位端の方への移動が阻止される。
図2及び
図6に見られるように、初期姿勢の注射デバイス10では、上部ハウジング16の各ロックタブ38の遠位側を向いた表面が下部ハウジング18の対応する受け具50の近位側を向いた表面に接触する。したがって、上部ハウジング16に遠位方向の圧力を加えても、上部ハウジング16を下部ハウジング18の遠位端へ向かって前進させることができない。その結果、注射の時点よりも前には、プランジャに薬剤充填済み注射器12の中を前進させることができない。図示されてはいないが、この初期姿勢の注射デバイス10では、上部ハウジング16が下部ハウジング18から近位側へ引っ張られることを防止するのに、上部シェル20と下部シェル22とが相互に及ぼす力が利用されてもよい。
【0023】
更に、好ましくは、注射デバイス10が初期姿勢であるとき、針ガード26の脚部58のリム60の遠位側を向いた表面が上部ハウジング18のアーム34のロックタブ38及び/又は棚36の近位側を向いた表面に接触する。これにより、注射の開始前に針ガード26が下部ハウジング18に対して遠位側へ更に移動することが防止され、後で更に詳細に説明されるように、針ガード26が想定よりも早くロックされることが防止される。
図2に見られるように、初期姿勢の注射デバイス10では、針ガード26のカム斜面62が下部ハウジング18の表面上のうち、受け具50よりも遠位側に位置する。
【0024】
ユーザは、注射デバイス10を用いて注射を開始する際、針ガード26の遠位端を注射部位(図示せず)に置き、注射デバイス10に対して遠位方向の圧力を、好ましくはグリップキャップ24を通して加える。この力は針ガード26を、最初は下部ハウジング18に対して近位側へ、例えば
図7に示されるような格納位置である第2の位置へ向かって押す。やがて針14の遠位端が針ガード26の針用開口部54を通して露出し、注射部位の中に向けられる。上部ハウジング16が最初は受け具50によって所定の位置にロックされているので、注射デバイス10が注射部位に当てられている間、針ガード26が上部ハウジング16に対して近位側へ移動する。したがって、カム斜面62が下部ハウジング18の表面上を、下部ハウジング18の受け具50と上部ハウジング16のアーム34の遠位端とに対して近位側へ移動する。カム斜面62が受け具50の近位側を向いた表面を通過すると、好ましくは、カム斜面62が上部ハウジング16のアーム34の棚36に接触して、棚36とアーム34の遠位端とを外周側へ押し退ける。
【0025】
針ガード26が格納位置に到達するときには、好ましくは、カム斜面62の平坦部66が上部ハウジング16のアーム34の棚36に接触している。好ましくは、この接触に伴う力が棚36を外周側へ、ロックタブ38が下部ハウジング18の受け具50から解放されるのには十分な距離だけ変位させる。このようにされた上でグリップキャップ24に対して遠位方向の圧力が更に加えられると、棚36がカム斜面62に乗り上げている状態でロックタブ38が受け具50の外周側を通過するので、上部ハウジング16が下部ハウジング18の遠位端へ向かって移動することになる。したがって、アーム34が下部ハウジング18に対して遠位側へ、妨げられることなく移動する。棚36がカム斜面62を遠位側まで通り抜けると、棚36とアーム34の遠位端とが元の位置に戻り、カム斜面62がアーム34の線路状の窓40の中に入るので(例えば
図8参照)、注射の間は、アーム34に対して径方向の力を更に加えることがない。その結果、グリップキャップ24のプランジャが薬剤充填済み注射器12の内部を遠位側へ移動し、針14を通して患者の中に薬剤を排出する。
【0026】
図8は、注射の完了後、針ガード26がまだ注射部位の上で格納位置にある状態の注射デバイス10の典型的な実施形態を示す。好ましくはプランジャが薬剤充填済み注射器12の内側の遠位端に接触するときに、上部ハウジング16が下部ハウジング18に対して縦方向に移動する距離が最大限に達する。なお、注射の過程を終えるのに注射デバイス10の他の部品(図示せず)が代わりに利用されてもよい。この時点で、上部ハウジング16が自動的に下部ハウジング18にロックされてもよい。これについては後で更に詳細に説明される。しかし、針ガード26は、上部ハウジング16と下部ハウジング18とに対して遠位側へ移動可能な状態のままである。したがって、注射デバイス10が注射部位から取り外され、針ガード26が押しばね27又は他の同様な器具から、針ガード26を張り出し位置に戻す力を受けると、そのように針ガード26が動く。
【0027】
図9は、注射部位から取り外された後でロックされた姿勢にある注射デバイス10の典型的な実施形態を示す。針ガード26は、下部ハウジング18に対して遠位側へ移動することにより、保護部52で針14を再度覆うことができる。上部ハウジング16の棚36とロックタブ38とが注射後は前とは異なる位置にあるので、好ましくは、針ガード26の脚部58のリム60が遠位側へ、以前よりも遠くまで移動可能であり、
図10に示されているように、リム60の遠位側を向いた表面が下部ハウジング18の受け具50の近位側を向いた表面に接触可能である。移動距離のこの追加により、保護部52の表面上の可視表示56が下部ハウジング18から露出し、保護用に確保される針ガード26の遠位端と針14の遠位端との間の距離が追加される。また、好ましくは、リム60と受け具50の近位側を向いた表面との押し合いにより、針ガード26を下部ハウジング18から遠位側へ取り外すことが防止される。
【0028】
針ガード26が下部ハウジング18に対して遠位側へ移動する距離が追加されることはまた、上述のロック用指部68を用いて針ガード26をロックし、以後、針14に異物が接触することを防止することも可能にする。好ましくは、注射の前と注射の間とではロック用指部68の自由端72が、下部ハウジング18の対応する線路48の外周側を向いた表面に乗り上げている。好ましくは、各線路48の表面が各ロック用指部68の自由端72を外周側へ曲げる。
図4に戻ると、下部ハウジング18には、内周側へ凹んだ凹部74もあってもよい。凹部74は線路48内に配置されており、注射中はその中をロック用指部68の自由端72が移動可能である。
図11を参照すると、下部ハウジング18、特に凹部74には、外周側へ傾斜したロック用縁部76があってもよい。針ガード26が注射部位から取り外され、下部ハウジング18に対して遠位側へ移動すると、遠位側への移動距離が追加されていることにより、ロック用指部68の自由端72がロック用縁部76を越えて遠位側へ移動する。このとき、自由端72の内周側への偏りにより、
図11に示されているように、ロック用指部68が静止位置に戻る。このとき、ロック用指部68の自由端72の近位側を向いた表面がロック用縁部76の遠位側を向いた表面に接触することにより、針ガード26が下部ハウジング18に対して近位側へは移動できず、注射後は針14を保護したままになる。
【0029】
実施形態の中には、注射後は上部ハウジング16を下部ハウジング18に対して元の位置には戻さないこと、すなわち、上部ハウジング16を
図9に示されている位置に留めることが望ましいものがあってもよい。
図12は、下部ハウジング18’のある実施形態を示す。この実施形態では1対のロック用斜面78’が受け具50’の遠位側に設けられ、線路48’の遠位側の部分に沿って縦方向に広がっている。ロック用斜面78’は、上部ハウジング16が下部ハウジング18’に対して遠位側へ移動する間に上部ハウジング16の各ロックタブ38と徐々に強く係合し、それらを実質上外周側へ移動させるように構成されている。ロックタブ38は、各ロック用斜面78’の遠位端を通過して遠位側へ移動すると捕捉される。すなわち、ロックタブ38の近位側を向いた表面がロック用斜面78’の遠位側を向いた表面に接触して、上部ハウジング16を下部ハウジング18’に対して近位側へは移動させない。なお、上部ハウジング16を下部ハウジング18、18’に対する所定の位置にロックするのに他の方法が、同様に使用されてもよい。
【0030】
図13~
図18には別の典型的な実施形態が示されている。
図13~
図18の実施形態は上述の典型的な実施形態と同様である。同様な数字は同様な要素に対して使用されている。ただし、100番台の連続数字は、
図13~
図18に示されている実施形態に対して使用されている。したがって、以下、この実施形態についての完全な説明は省略され、上述の実施形態との違いのみが説明される。
【0031】
図13には下部ハウジング118の一部が示されている。この一部の上には1対のレール/線路180が形成されている。レール180は縦方向に伸びており、互いに対向している。レール180は、上部ハウジング116のアーム134の縦方向に伸びている縁(
図14)を収容して、上部ハウジング116と下部ハウジング118とに相対的な摺動を容易に行わせるように、そのサイズと形状とが設計されている。受け具150は、少なくとも一部が下部ハウジング118から外周側へ伸びており、好ましくは、レール180の間に位置する。
【0032】
図14を参照すると、上部ハウジング116の一部が示され、具体的には、縦方向に伸びているアーム134の遠位端が示されている。示されている実施形態では、各アーム134が、縦方向に広がっている片部182を含む。片部182の遠位側には接触面が位置し、自由端184を形成している。片部182の自由端184は、アーム134の遠位端に形成されている橋梁部186の近くに配置されている。橋梁部186は片部182の自由端184よりも更に外周側へ広がっているので、自由端184との間にポケット188が残されている。片部182は更に線路状の窓140を含む。線路状の窓140は、片部182の中を縦方向に広がるように形成されている。
【0033】
図15は針ガード126の一部、具体的には脚部158の近位端を示す。脚部158の近位端が、外周側へ広がっているリム160を含んでもよい。好ましくは、先の実施形態とは異なり、
図15のリム160が脚部158の周方向の幅の全体には広がっていない。むしろリム160は、好ましくは、上部ハウジング116の線路状の窓140の内側に嵌まってその中を摺動するように、そのサイズが設計されている。好ましくは、脚部158がカム/カム斜面162も含む。カム斜面162はリム160よりも遠位側に配置されており、脚部158から外周側へ広がっている。
図15の実施形態では、カム斜面162が単一の、縦方向に広がっている隆起部164として形成されており、ほぼ中央には平坦部166があり、そこから近位側と遠位側との両方へ離れるにつれて隆起部164が徐々に傾斜している。カム斜面162は、上部ハウジング116の線路状の窓140の中に嵌まってその中を移動可能であるように、そのサイズと形状とが設計されてもよい。脚部158の中には縦方向の穴190も形成されていてもよい。組み立てられると、下部ハウジング18の受け具150が針ガード126の穴190を通して径方向に伸びていてもよい。ロック用指部168はまた
図15においても見えており、穴190の中を近位側の自由端172へ向かって縦方向に伸びていることが示されている。
【0034】
図16を参照すると、初期姿勢の注射デバイスでは上部ハウジング116の片部182の自由端184の遠位側を向いた表面が下部ハウジング118の受け具150の近位側を向いた表面に接触する。したがって、上部ハウジング116に対して遠位方向の圧力を加えても、上部ハウジング116を下部ハウジング118の遠位端へ向かって前進させることができない。その結果、注射の時点よりも前には、プランジャに薬剤充填済み注射器の中を前進させることができない。この初期姿勢の注射デバイスでは、好ましくは、下部ハウジング118の受け具150がアーム134の遠位端においてポケット188の中に、すなわち、橋梁部186の内周側に留まる。この初期姿勢の注射デバイスでは、好ましくは、針ガード126のリム160が線路状の窓140の内側に留まる。この初期位置の注射デバイスではまた、その構成要素の位置とサイズとによっては、カム斜面162の一部がアーム134のポケット188の内側に配置されてもよい。
【0035】
先の実施形態と同様に、針ガード126が注射部位に置かれた状態で注射デバイスに対して遠位方向の圧力が加えられると、針ガード126が下部ハウジング118の中に格納され、カム斜面162を受け具150と片部182の自由端184とに対して近位側へ移動させる。カム斜面162が受け具150の近位側を向いた表面を通過するとき、好ましくは、カム斜面162が片部182の自由端184に接触して外周側へ押し退ける。針ガード126が格納位置に到達するとき、好ましくは、カム斜面162の平坦部166が片部182の自由端184に接触している。好ましくは、この接触に伴う力が片部182の自由端184を外周側へ、下部ハウジング118の受け具150から解放されるのには十分な距離だけ変位させる。これにより、片部182の自由端184が受け具150の外周側を通過可能である。このようにされた上で上部ハウジング116に対して更に遠位方向の圧力が加えられると、上部ハウジング116が下部ハウジング118の遠位端へ向かって移動する結果、薬剤充填済み注射器から薬剤が注射される。片部182の自由端184がカム斜面162を遠位側まで通り抜けると、片部182の自由端184が元の位置に戻り、カム斜面162と受け具150との両方が線路状の窓140の中に入るので、注射の間は、アーム134に対して径方向の力を更に加えることがない。
図17には、上部ハウジング116は示されていないが、下部ハウジング118と針ガード126との一部は示されている。針ガード126は完全に格納されている。線路状の窓140は破線で示されている。
【0036】
図18は注射デバイス10の同様な図である(すなわち、上部ハウジング116は示されていないが、線路状の窓140が破線で示されている)。ただし、この図は注射後の状態であり、針ガード126が下部ハウジング118に対して完全に張り出している。
図18に示されている実施形態では、受け具150の近位側を向いた表面が針ガード126の穴190の遠位側を向いた縁に接触して、針ガード126を下部ハウジング118に対して遠位側へ更には移動させない。このような接触は初期姿勢の注射デバイスでは不可能である。何故なら、片部182の自由端184が針ガード126のリム160に接触するからである。片部182の自由端184が邪魔にならない位置にあれば、受け具150が穴190の中を近位側へ更に移動可能であるので、針ガード126が完全に張り出すことができる。更に、その後は、先の実施形態と同様、ロック用指部168の自由端172(
図15)の近位側を向いた表面が下部ハウジング118のロック用縁部(図示せず)に接触することにより、針ガード126の格納が阻止される。
【0037】
具体的で明確な実施形態が図面に示されてきたが、様々な実施形態からの様々な個々の要素、又は要素の組み合わせが、本発明の趣旨及び範囲を保ちながら、互いに組み合わせることができる。したがって、一実施形態のみに関して本明細書に記載される個々の特徴は、本明細書に記載されるか、あるいは本発明によって包含される他の実施形態と両立しないものと解釈されるべきではない。
【0038】
当業者は、その広範な発明概念から逸脱することなく、上記の実施形態に様々な修正及び変更を行うことができることが理解されるであろう。これらのいくつかは上で考察されており、他のものは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲で記載される本開示の趣旨及び範囲内の変更を網羅することが意図されることが理解される。