(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】表示装置およびその駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3225 20160101AFI20230426BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G09G3/3225
G09G3/20 611A
G09G3/20 612E
G09G3/20 642C
(21)【出願番号】P 2022516503
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017143
(87)【国際公開番号】W WO2021214855
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】米林 諒
【審査官】道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-081336(JP,A)
【文献】特開2012-058443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0340977(US,A1)
【文献】国際公開第2019/058538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ電圧を伝達する複数のデータ信号線と、前記複数のデータ信号線に交差する複数の走査信号線と、前記複数のデータ信号線に交差する複数の発光制御線と、電流によって駆動される表示素子を含みハイレベル電源電圧とローレベル電源電圧とが与えられる複数の画素回路とを備えた表示装置の駆動方法であって、
各画素回路は、
第1端子と、前記ローレベル電源電圧が与えられる第2端子とを有する前記表示素子と、
制御端子と第1導通端子と第2導通端子とを有し、前記表示素子と直列に設けられた駆動トランジスタと、
一端が前記駆動トランジスタの制御端子に接続されたキャパシタと、
前記複数の発光制御線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第2導通端子とを有する発光制御トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第1導通端子と、初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第1初期化トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第1導通端子と、前記初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第2初期化トランジスタと
を含み、
前記駆動方法は、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが1フレーム期間毎に行われるよう前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する通常駆動ステップと、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われるデータ書き込み期間と各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われない休止期間とが交互に現れるよう前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する休止駆動ステップと、
前記通常駆動ステップが行われる通常駆動期間から前記休止駆動ステップが行われる休止駆動期間に切り替わる際に前記ローレベル電源電圧の電圧値を上昇させるローレベル電源電圧上昇ステップと、
前記休止駆動期間から前記通常駆動期間に切り替わる際に前記ローレベル電源電圧の電圧値を低下させるローレベル電源電圧低下ステップと
を含み、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われる際には、前記表示素子の第1端子の電圧を初期化するために前記第2初期化トランジスタをオン状態で維持する第1端子初期化期間が設けられ、
前記休止駆動期間における前記第1端子初期化期間は、前記通常駆動期間における前記第1端子初期化期間よりも長いことを特徴とする、駆動方法。
【請求項2】
前記休止駆動期間に各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みを行う際の書き込み周波数は、前記通常駆動期間に各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みを行う際の書き込み周波数よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の駆動方法。
【請求項3】
前記休止駆動期間における前記データ書き込み期間は、前記通常駆動期間における前記データ書き込み期間の2倍の長さであることを特徴とする、請求項2に記載の駆動方法。
【請求項4】
前記通常駆動期間に各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われる際の書き込み周波数と前記休止駆動期間に各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われる際の書き込み周波数とは同じであって、
前記休止駆動ステップでは、前記休止駆動期間における前記第1端子初期化期間と前記通常駆動期間における前記第1端子初期化期間との差である初期化延長期間を前記通常駆動期間における1フレーム期間に加えた長さの前記データ書き込み期間と、前記通常駆動期間における1フレーム期間から前記初期化延長期間を減じた長さの期間とNを整数として前記通常駆動期間におけるNフレーム期間に相当する長さの期間とからなる前記休止期間とが交互に現れることを特徴とする、請求項1に記載の駆動方法。
【請求項5】
前記初期化電圧の電圧値と前記ローレベル電源電圧の電圧値とは等しい値に設定されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項6】
前記表示装置は、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する画素駆動部を備え、
黒色に対応する前記データ電圧の電圧値は、白色に対応する前記データ電圧の電圧値よりも高い値に設定され、かつ、前記休止駆動期間には前記通常駆動期間よりも低い値に設定され、
前記画素駆動部の動作用の電源電圧として、前記画素駆動部にはハイレベルの第1電源電圧とローレベルの第2電源電圧とが与えられ、
前記第1電源電圧の電圧値は、前記休止駆動期間には前記通常駆動期間よりも低い値に設定されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項7】
前記第1端子初期化期間は、前記発光制御トランジスタをオフ状態で維持する消灯期間の一部の期間であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項8】
電流によって駆動される表示素子を含みハイレベル電源電圧とローレベル電源電圧とが与えられる複数の画素回路を備えた表示装置であって、
データ電圧を伝達する複数のデータ信号線と、
前記複数のデータ信号線に交差する複数の走査信号線と、
前記複数のデータ信号線に交差する複数の発光制御線と、
前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する画素駆動部と、
前記ローレベル電源電圧を出力するローレベル電源電圧出力部と
を備え、
各画素回路は、
第1端子と、前記ローレベル電源電圧が与えられる第2端子とを有する前記表示素子と、
制御端子と第1導通端子と第2導通端子とを有し、前記表示素子と直列に設けられた駆動トランジスタと、
一端が前記駆動トランジスタの制御端子に接続されたキャパシタと、
前記複数の発光制御線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第2導通端子とを有する発光制御トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第1導通端子と、初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第1初期化トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第1導通端子と、前記初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第2初期化トランジスタと
を含み、
前記画素駆動部は、
通常駆動期間には、各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが1フレーム期間毎に行われるよう、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動し、
休止駆動期間には、各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われるデータ書き込み期間と各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われない休止期間とが交互に現れるよう、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動し、
前記ローレベル電源電圧出力部は、前記休止駆動期間には前記通常駆動期間よりも高い電圧値の前記ローレベル電源電圧を出力し、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われる際には、前記表示素子の第1端子の電圧を初期化するために前記第2初期化トランジスタをオン状態で維持する第1端子初期化期間が設けられ、
前記休止駆動期間における前記第1端子初期化期間は、前記通常駆動期間における前記第1端子初期化期間よりも長いことを特徴とする、表示装置。
【請求項9】
各画素回路は、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記複数のデータ信号線の1つに接続された第1導通端子と、前記駆動トランジスタの第1導通端子に接続された第2導通端子とを有する書き込み制御トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第2導通端子とを有する閾値電圧補償トランジスタと、
前記複数の発光制御線の1つに接続された制御端子と、前記ハイレベル電源電圧が与えられる第1導通端子と、前記駆動トランジスタの第1導通端子に接続された第2導通端子とを有する電源供給制御トランジスタと
を更に含むことを特徴とする、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1初期化トランジスタと前記第2初期化トランジスタと前記閾値電圧補償トランジスタとは、酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタであって、
前記駆動トランジスタと前記発光制御トランジスタと前記書き込み制御トランジスタと前記電源供給制御トランジスタとは、低温ポリシリコンによりチャネル層が形成された薄膜トランジスタであって、
前記複数の走査信号線は、複数の第1走査信号線と複数の第2走査信号線とからなり、
前記閾値電圧補償トランジスタの制御端子は、前記複数の第1走査信号線の1つに接続され、
前記書き込み制御トランジスタの制御端子は、前記複数の第2走査信号線の1つに接続され、
前記第1初期化トランジスタの制御端子は、前記複数の第1走査信号線の1つに接続され、
前記第2初期化トランジスタの制御端子は、前記複数の第1走査信号線の1つに接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記初期化電圧の電圧値と前記ローレベル電源電圧の電圧値とは等しい値に設定され、
前記ローレベル電源電圧出力部から出力された前記ローレベル電源電圧が前記初期化電圧として前記第2初期化トランジスタの第2導通端子に与えられることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、表示装置およびその駆動方法に関し、特に、休止駆動を採用する表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を含む画素回路を備えた有機EL表示装置が実用化されている。有機EL素子は、OLED(Organic Light-Emitting Diode)とも呼ばれており、それに流れる電流に応じた輝度で発光する自発光型の表示素子である。このように有機EL素子は自発光型の表示素子であるので、有機EL表示装置は、バックライトおよびカラーフィルタなどを要する液晶表示装置に比べて、容易に薄型化・低消費電力化・高輝度化などを図ることができる。
【0003】
有機EL表示装置の画素回路に関し、有機EL素子への電流の供給を制御するための駆動トランジスタとして、典型的には薄膜トランジスタ(TFT)が採用される。しかしながら、薄膜トランジスタについては、その特性にばらつきが生じやすい。具体的には、閾値電圧にばらつきが生じやすい。表示部内に設けられている駆動トランジスタに閾値電圧のばらつきが生じると、輝度のばらつきが生じるので表示品位が低下する。そこで、従来より、閾値電圧のばらつきを補償する各種処理(補償処理)が提案されている。
【0004】
補償処理の方式としては、駆動トランジスタの閾値電圧の情報を保持するためのキャパシタを画素回路内に設けることによって補償処理を行う内部補償方式と、例えば所定条件下で駆動トランジスタに流れる電流の大きさを画素回路の外部に設けられた回路で測定してその測定結果に基づいて映像信号を補正することによって補償処理を行う外部補償方式とが知られている。
【0005】
補償処理に内部補償方式を採用した有機EL表示装置の画素回路として、例えば
図17に示すような、1個の有機EL素子91と7個の薄膜トランジスタT91~T97と1個の保持キャパシタC9とを含む画素回路90が知られている。この画素回路90には、動作用(有機EL素子91の駆動用)の電源電圧として、ハイレベル電源電圧ELVDDとローレベル電源電圧ELVSSとが与えられる。なお、以下において、ハイレベル電源電圧ELVDDとローレベル電源電圧ELVSSとの差を「EL電源電圧」という。この画素回路90にデータ電圧の書き込みが行われる際には、有機EL素子91のアノード電圧の初期化が行われる。詳しくは、薄膜トランジスタT97を介して、有機EL素子91のアノード端子に初期化電圧Viniが与えられる。典型的には、初期化電圧Viniの電圧値とローレベル電源電圧ELVSSの電圧値とは等しくなっている。すなわち、有機EL素子91のアノード電圧はローレベル電源電圧ELVSSに基づき初期化される。なお、以下において、
図17で符号N1,N2,およびN3を付した節点をそれぞれ「第1ノード」,「第2ノード」,および「第3ノード」という(
図4についても同様)。第3ノードN3は、有機EL素子91のアノード端子に直接に接続されている。
【0006】
ここで、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値の設定の仕方について説明する。
図18に、黒表示が行われる際の画素回路(第n行の画素回路)90に与えられる発光制御信号EM(n)の波形および第3ノードN3の電圧V(N3)の波形を示している。なお、
図18に示す例では駆動周波数を60Hzとする「60Hz駆動」が採用されているものと仮定する。有機EL表示装置の動作中、該当の画素回路90に関し、有機EL素子91が消灯状態となる消灯期間901と有機EL素子91が発光状態となる発光期間902とが繰り返される。
【0007】
消灯期間901には、第2ノードN2の電圧の初期化(駆動トランジスタとしての薄膜トランジスタT94のゲート電圧の初期化)、第3ノードN3の電圧V(N3)の初期化(有機EL素子91のアノード電圧の初期化)、および保持キャパシタC9へのデータ電圧の書き込みが行われる。
図18から把握されるように、消灯期間901には、第3ノードN3の電圧V(N3)は初期化電圧Vini(ローレベル電源電圧ELVSS)に等しい電圧にまで低下する。なお、厳密には消灯期間901のうち第3ノードN3の電圧V(N3)を初期化するために薄膜トランジスタT97がオン状態にされている期間に第3ノードN3の電圧V(N3)は低下するが、便宜上、
図18では消灯期間901を通して第3ノードN3の電圧V(N3)が低下するように波形を記している(
図12、
図16、
図19、
図20、および
図22も同様)。
【0008】
発光期間902には、薄膜トランジスタT96はオン状態となり、薄膜トランジスタT94の第1導通端子-第2導通端子間に目標表示階調に応じた電流が流れる。黒表示が行われる際には薄膜トランジスタT94の第1導通端子-第2導通端子間に流れる電流は0であるのが理想であるが、実際には薄膜トランジスタT94の第1導通端子-第2導通端子間にリーク電流が流れる。それ故、
図18に示すように、発光期間902中に第3ノードN3の電圧V(N3)は徐々に上昇する。仮に第3ノードN3の電圧V(N3)が有機EL素子91の発光閾値電圧Veよりも高くなると、黒表示が行われるべきであるにも関わらず有機EL素子91が発光する「黒浮き」と呼ばれる現象が発生する。
【0009】
そこで、黒表示が行われる際に第3ノードN3の電圧V(N3)が有機EL素子91の発光閾値電圧Veよりも高くならないよう(換言すれば、
図18で符号93を付した部分に示すように、発光期間902の終了時点に第3ノードN3の電圧V(N3)が有機EL素子91の発光閾値電圧Ve以下となるよう)、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が設定される。
【0010】
図18に示した例では「60Hz駆動」が採用されているものと仮定していたが、例えば動画の表示品位を高めるために、駆動周波数を120Hzとする「120Hz駆動」が採用されることもある。この場合、消灯期間901および発光期間902の長さは、60Hz駆動が採用されている場合に比べて2分の1となる。消灯期間901が短くなると、
図19で符号94を付した部分に示すように、当該消灯期間901中に第3ノードN3の電圧V(N3)が初期化電圧Vini(ローレベル電源電圧ELVSS)に等しい電圧にまで低下しないことがある。その結果、
図19で符号95を付した部分に示すように、発光期間902中に第3ノードN3の電圧V(N3)が有機EL素子91の発光閾値電圧Veよりも高くなる。そこで、120Hz駆動を採用する場合には、60Hz駆動が採用されている場合に比べて、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値は低い値に設定される。例えば、60Hz駆動が採用されている場合にローレベル電源電圧ELVSSが
図20で符号97を付したラインに相当する電圧に設定されていると仮定する。このとき、120Hz駆動を採用する場合のローレベル電源電圧ELVSSは、例えば
図20で符号98を付したラインに相当する電圧に設定される。このようにローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を低い値に設定することによって、
図20で符号96を付した部分に示すように、発光期間902の終了時点における第3ノードN3の電圧V(N3)は有機EL素子91の発光閾値電圧Ve以下となる。
【0011】
ところで、近年、表示装置に関し、低消費電力化の要求が高まっている。低消費電力化を実現する技術として、画素回路へのデータ電圧の書き込み動作を停止する休止期間を設ける「休止駆動」と呼ばれる技術が知られている。休止駆動によれば、連続する複数フレーム期間のうちの1フレーム期間のみにデータ電圧の書き込みが行われ、残りの期間にはデータ電圧の書き込みは行われない。例えば、連続する4フレーム期間のうちの1フレーム期間のみにデータ電圧の書き込みが行われる。
【0012】
このような休止駆動を採用する近年の表示装置では、通常駆動(1フレーム期間毎に画素回路へのデータ電圧の書き込みを行う駆動)と休止駆動との切り替えが行われる。例えば、所定期間を通じて表示画面に変化がなかったときに通常駆動から休止駆動への切り替えが行われ、ユーザーが何らかの操作を行ったときや外部からデータが送られてきたときに休止駆動から通常駆動への切り替えが行われる。従って、例えば
図21に示すように、通常駆動が行われる通常駆動期間と休止駆動が行われる休止駆動期間とが交互に現れる。
【0013】
なお、以下においては、通常駆動期間であるか休止駆動期間であるかに関わらず各画素回路へのデータ電圧の書き込みが行われている期間を「データ書き込み期間」といい、休止駆動期間のうち各画素回路へのデータ電圧の書き込みが行われていない期間を「休止期間」という。また、休止駆動期間を通常駆動中の1フレーム期間の長さに相当する期間毎に分割したとき、データ電圧の書き込みが行われている期間を「リフレッシュフレーム」といい、データ電圧の書き込みが行われていない期間を「休止フレーム」という。
【0014】
有機EL表示装置において休止駆動を採用した場合に仮にローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を
図20に示した例と同じ値に設定すると、
図22で符号99を付した部分に示すように発光期間902中に第3ノードN3の電圧V(N3)が有機EL素子91の発光閾値電圧Veよりも高くなるおそれがある。そこで、休止駆動を採用する場合には、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値は、休止駆動が採用されていない場合に比べて低い値に設定される。なお、
図22では、データ書き込み期間に符号TWを付し、休止期間に符号TPを付し、リフレッシュフレームに符号RFを付し、休止フレームに符号PFを付している。
【0015】
本件に関連して、日本の特開2012-58443号公報には、電源線に印加する電源電圧を2つのモード(高電圧出力モード、低電圧出力モード)で異ならせることが記載されている。低電圧出力モードの際には、例えばフレーム周波数が高電圧出力モードの際の10分の1とされる。高電圧出力モードの際には電界効果トランジスタは飽和領域で駆動され、低電圧出力モードの際には電界効果トランジスタは非飽和領域で駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した休止駆動によれば、休止期間を通じてゲートドライバやソースドライバなどの駆動回路の動作が停止する。従って、駆動回路の動作に起因する消費電力は低減される。しかしながら、有機EL素子91の発光に直接的に関わる電力(以下、便宜上「EL電力」という。)については、休止駆動が採用されてもほとんど低減されない。これに関し、有機EL表示装置においては、EL電力が装置全体で消費される電力の大部分を占めている。従って、EL電力を低減することが装置全体での消費電力の効果的な低減につながると考えられる。
【0018】
そこで、EL電力を低減するために、休止駆動期間にEL電源電圧を通常駆動期間よりも小さくすることが検討されている。より具体的には、休止駆動期間中のローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を通常駆動期間中のローレベル電源電圧ELVSSの電圧値よりも高い値に設定することが検討されている。ところが、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を高くすると、黒表示が行われる画素において、上述したように消灯期間901中に第3ノードN3の電圧V(N3)が充分に低下しなくなる。その結果、黒浮きが発生する。
【0019】
そこで、以下の開示は、黒浮きの発生を防止しつつ従来よりも消費電力を低減することのできる表示装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示のいくつかの実施形態に係る(表示装置の)駆動方法は、データ電圧を伝達する複数のデータ信号線と、前記複数のデータ信号線に交差する複数の走査信号線と、前記複数のデータ信号線に交差する複数の発光制御線と、電流によって駆動される表示素子を含みハイレベル電源電圧とローレベル電源電圧とが与えられる複数の画素回路とを備えた表示装置の駆動方法であって、
各画素回路は、
第1端子と、前記ローレベル電源電圧が与えられる第2端子とを有する前記表示素子と、
制御端子と第1導通端子と第2導通端子とを有し、前記表示素子と直列に設けられた駆動トランジスタと、
一端が前記駆動トランジスタの制御端子に接続されたキャパシタと、
前記複数の発光制御線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第2導通端子とを有する発光制御トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第1導通端子と、初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第1初期化トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第1導通端子と、前記初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第2初期化トランジスタと
を含み、
前記駆動方法は、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが1フレーム期間毎に行われるよう前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する通常駆動ステップと、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われるデータ書き込み期間と各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われない休止期間とが交互に現れるよう前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する休止駆動ステップと、
前記通常駆動ステップが行われる通常駆動期間から前記休止駆動ステップが行われる休止駆動期間に切り替わる際に前記ローレベル電源電圧の電圧値を上昇させるローレベル電源電圧上昇ステップと、
前記休止駆動期間から前記通常駆動期間に切り替わる際に前記ローレベル電源電圧の電圧値を低下させるローレベル電源電圧低下ステップと
を含み、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われる際には、前記表示素子の第1端子の電圧を初期化するために前記第2初期化トランジスタをオン状態で維持する第1端子初期化期間が設けられ、
前記休止駆動期間における前記第1端子初期化期間は、前記通常駆動期間における前記第1端子初期化期間よりも長い。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態に係る表示装置は、電流によって駆動される表示素子を含みハイレベル電源電圧とローレベル電源電圧とが与えられる複数の画素回路を備えた表示装置であって、
データ電圧を伝達する複数のデータ信号線と、
前記複数のデータ信号線に交差する複数の走査信号線と、
前記複数のデータ信号線に交差する複数の発光制御線と、
前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動する画素駆動部と、
前記ローレベル電源電圧を出力するローレベル電源電圧出力部と
を備え、
各画素回路は、
第1端子と、前記ローレベル電源電圧が与えられる第2端子とを有する前記表示素子と、
制御端子と第1導通端子と第2導通端子とを有し、前記表示素子と直列に設けられた駆動トランジスタと、
一端が前記駆動トランジスタの制御端子に接続されたキャパシタと、
前記複数の発光制御線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第2導通端子とを有する発光制御トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第1導通端子と、初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第1初期化トランジスタと、
前記複数の走査信号線の1つに接続された制御端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第1導通端子と、前記初期化電圧が与えられる第2導通端子とを有する第2初期化トランジスタと
を含み、
前記画素駆動部は、
通常駆動期間には、各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが1フレーム期間毎に行われるよう、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動し、
休止駆動期間には、各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われるデータ書き込み期間と各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われない休止期間とが交互に現れるよう、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線と前記複数の発光制御線とを駆動し、
前記ローレベル電源電圧出力部は、前記休止駆動期間には前記通常駆動期間よりも高い電圧値の前記ローレベル電源電圧を出力し、
各画素回路に含まれる前記キャパシタへの前記データ電圧の書き込みが行われる際には、前記表示素子の第1端子の電圧を初期化するために前記第2初期化トランジスタをオン状態で維持する第1端子初期化期間が設けられ、
前記休止駆動期間における前記第1端子初期化期間は、前記通常駆動期間における前記第1端子初期化期間よりも長い。
【発明の効果】
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、休止駆動期間にはローレベル電源電圧の電圧値が通常駆動期間よりも高い値に設定される。そのローレベル電源電圧は、表示素子の第2端子(例えば、有機EL素子のカノード端子)に与えられる。また、休止駆動中には、表示素子の第1端子(例えば、有機EL素子のアノード端子)に初期化電圧を与える第1端子初期化期間が通常駆動中よりも長くなる。すなわち、休止駆動期間における第1端子初期化期間が従来よりも長くなる。その結果、休止駆動期間には、ローレベル電源電圧の電圧値が通常駆動期間よりも高い値に設定されていても、黒表示が行われる画素において第1端子初期化期間に表示素子の第1端子の電圧が充分に低下する。それ故、黒表示が行われる画素では、休止駆動が行われている期間を通じて、表示素子の第1端子の電圧は当該表示素子の発光閾値電圧以下で維持される。従って、黒浮きは発生しない。また、休止駆動期間におけるローレベル電源電圧の電圧値を通常駆動期間におけるローレベル電源電圧の電圧値よりも高い値に設定することにより、消費されるEL電力が低減される。以上より、黒浮きの発生を防止しつつ従来よりも消費電力を低減することのできる表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態において、通常駆動と休止駆動との切り替えが行われる際の動作について説明するための図である。
【
図2】上記実施形態に係る有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】上記実施形態において、動作用(有機EL素子の駆動用)の電源電圧を生成する電源回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】上記実施形態において、第n行第m列の画素回路の一構成例を示す回路図である。
【
図5】上記実施形態において、画素回路の動作について説明するための信号波形図である。
【
図6】上記実施形態において、通常駆動について説明するための図である。
【
図7】従来の休止駆動について説明するための図である。
【
図8】上記実施形態における休止駆動について説明するための図である。
【
図9】従来の有機EL表示装置に関し、通常駆動と休止駆動との切り替えが行われる際の動作について説明するための図である。
【
図10】上記実施形態において、通常駆動と休止駆動との切り替えに伴うローレベル電源電圧の電圧値の変化について説明するための図である。
【
図11】上記実施形態における駆動方法について説明するためのフローチャートである。
【
図12】上記実施形態における効果について説明するための信号波形図である。
【
図13】上記実施形態において、書き込み周波数とローレベル電源電圧の電圧値(設定可能な上限値)との関係を示すグラフである。
【
図14】上記実施形態において、書き込み周波数とEL電力との関係を示すグラフである。
【
図15】上記実施形態において、消費電力低減の効果について説明するための図である。
【
図16】上記実施形態の第2の変形例における駆動方法について説明するための信号波形図である。
【
図17】従来例における第n行第m列の画素回路の一構成例を示す回路図である。
【
図18】従来例に関し、60Hz駆動を採用する場合のローレベル電源電圧の電圧値の設定の仕方について説明するための信号波形図である。
【
図19】従来例に関し、120Hz駆動を採用する場合のローレベル電源電圧の電圧値の設定の仕方について説明するための信号波形図である。
【
図20】従来例に関し、120Hz駆動を採用する場合のローレベル電源電圧の電圧値の設定の仕方について説明するための信号波形図である。
【
図21】従来例に関し、休止駆動について説明するための図である。
【
図22】従来例に関し、休止駆動を採用する場合のローレベル電源電圧の電圧値の設定の仕方について説明するための信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、実施形態について説明する。なお、以下において、iおよびjは2以上の整数であると仮定し、nは1以上i以下の整数であると仮定し、mは1以上j以下の整数であると仮定する。また、画素回路へのデータ電圧の書き込みが行われる期間(データ書き込み期間TW)のみに着目したときの当該期間中における各画素回路への1秒当たりのデータ電圧の書き込み回数を「書き込み周波数」といい、通常駆動期間全体または休止駆動期間全体での各画素回路への1秒当たりのデータ電圧の書き込み回数を「更新周波数」という。
【0025】
<1.全体構成>
図2は、本実施形態に係る有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。この有機EL表示装置は、休止駆動を採用する表示装置である。
図2に示すように、この有機EL表示装置は、表示制御回路100と表示部200とゲートドライバ(走査信号線駆動回路)300とエミッションドライバ(発光制御線駆動回路)400とソースドライバ(データ信号線駆動回路)500とを備えている。表示部200を有する有機EL表示パネル6内にゲートドライバ300とエミッションドライバ400とソースドライバ500とが含まれている。典型的には、ゲートドライバ300とエミッションドライバ400とはモノリシック化されている。ソースドライバ500については、モノリシック化されていても良いし、モノリシック化されていなくても良い。なお、ゲートドライバ300とエミッションドライバ400とソースドライバ500とによって画素駆動部が実現される。
【0026】
後述するように、本実施形態においては、表示部200内の各画素回路20にはN型トランジスタとP型トランジスタとが混在している。以下、N型トランジスタを制御する信号を「N型用制御信号」といい、P型トランジスタを制御する信号を「P型用制御信号」という。
【0027】
表示部200には、i本の第1走査信号線NS(1)~NS(i)、i本の第2走査信号線PS(1)~PS(i)、i本の発光制御線EM(1)~EM(i)、およびj本のデータ信号線D(1)~D(j)が配設されている。なお、
図2の表示部200内については、それらの図示を省略している。第1走査信号線NS(1)~NS(i)は、上述したN型用制御信号である第1走査信号を伝達するための信号線であり、第2走査信号線PS(1)~PS(i)は、上述したP型用制御信号である第2走査信号を伝達するための信号線である。なお、画素回路20の構成については後述する。第1走査信号線NS(1)~NS(i)と第2走査信号線PS(1)~PS(i)と発光制御線EM(1)~EM(i)とは典型的には互いに平行になっている。第1走査信号線NS(1)~NS(i)とデータ信号線D(1)~D(j)とは直交している。以下、必要に応じて、第1走査信号線NS(1)~NS(i)にそれぞれ与えられる第1走査信号にも符号NS(1)~NS(i)を付し、第2走査信号線PS(1)~PS(i)にそれぞれ与えられる第2走査信号にも符号PS(1)~PS(i)を付し、発光制御線EM(1)~EM(i)にそれぞれ与えられる発光制御信号にも符号EM(1)~EM(i)を付す。
【0028】
また、表示部200には、i本の第1走査信号線NS(1)~NS(i)とj本のデータ信号線D(1)~D(j)との交差部に対応して、i×j個の画素回路20が設けられている。このようにi×j個の画素回路20が設けられることによって、i行×j列の画素マトリクスが表示部200に形成されている。さらに、表示部200には、各画素回路20に共通の図示しない電源線が配設されている。より詳細には、有機EL素子を駆動するためのローレベル電源電圧ELVSSを供給する電源線(以下、「ローレベル電源線」という。)、有機EL素子を駆動するためのハイレベル電源電圧ELVDDを供給する電源線(以下、「ハイレベル電源線」という。)、および初期化電圧Viniを供給する電源線(以下、「初期化電源線」という。)が配設されている。
【0029】
以下、
図2に示す各構成要素の動作について説明する。表示制御回路100は、外部から送られる入力画像信号DINとタイミング信号群(水平同期信号、垂直同期信号など)TGとを受け取り、デジタル映像信号DVと、ゲートドライバ300の動作を制御するゲート制御信号GCTLと、エミッションドライバ400の動作を制御するエミッションドライバ制御信号EMCTLと、ソースドライバ500の動作を制御するソース制御信号SCTLとを出力する。ゲート制御信号GCTLには、ゲートスタートパルス信号、ゲートクロック信号などが含まれている。エミッションドライバ制御信号EMCTLには、エミッションスタートパルス信号、エミッションクロック信号などが含まれている。ソース制御信号SCTLには、ソーススタートパルス信号、ソースクロック信号、ラッチストローブ信号などが含まれている。
【0030】
ゲートドライバ300は、第1走査信号線NS(1)~NS(i)および第2走査信号線PS(1)~PS(i)に接続されている。ゲートドライバ300は、表示制御回路100から出力されたゲート制御信号GCTLに基づいて、第1走査信号線NS(1)~NS(i)に第1走査信号を印加し、第2走査信号線PS(1)~PS(i)に第2走査信号を印加する。第1走査信号線NS(1)~NS(i)に印加されるハイレベル電位と第2走査信号線PS(1)~PS(i)に印加されるハイレベル電位とは等しく、第1走査信号線NS(1)~NS(i)に印加されるローレベル電位と第2走査信号線PS(1)~PS(i)に印加されるローレベル電位とは等しい。
【0031】
エミッションドライバ400は、発光制御線EM(1)~EM(i)に接続されている。エミッションドライバ400は、表示制御回路100から出力されたエミッションドライバ制御信号EMCTLに基づいて、発光制御線EM(1)~EM(i)に発光制御信号を印加する。
【0032】
ソースドライバ500は、図示しないjビットのシフトレジスタ、サンプリング回路、ラッチ回路、およびj個のD/Aコンバータなどを含んでいる。シフトレジスタは、縦続接続されたj個のレジスタを有している。シフトレジスタは、ソースクロック信号に基づき、初段のレジスタに供給されるソーススタートパルス信号のパルスを入力端から出力端へと順次に転送する。このパルスの転送に応じて、シフトレジスタの各段からサンプリングパルスが出力される。そのサンプリングパルスに基づいて、サンプリング回路はデジタル映像信号DVを記憶する。ラッチ回路は、サンプリング回路に記憶された1行分のデジタル映像信号DVをラッチストローブ信号に従って取り込んで保持する。D/Aコンバータは、各データ信号線D(1)~D(j)に対応するように設けられている。D/Aコンバータは、ラッチ回路に保持されたデジタル映像信号DVをアナログ電圧に変換する。その変換されたアナログ電圧は、データ信号として全てのデータ信号線D(1)~D(j)に一斉に印加される。
【0033】
以上のようにして、データ信号線D(1)~D(j)にデータ信号が印加され、第1走査信号線NS(1)~NS(i)に第1走査信号が印加され、第2走査信号線PS(1)~PS(i)に第2走査信号が印加され、発光制御線EM(1)~EM(i)に発光制御信号が印加されることによって、入力画像信号DINに基づく画像が表示部200に表示される。
【0034】
ところで、ローレベル電源電圧ELVSS、ハイレベル電源電圧ELVDD、および初期化電圧Viniは、
図3に示すような電源回路700から供給される。電源回路700は、ハイレベル電源電圧出力部71とローレベル電源電圧出力部72とを含んでいる。ハイレベル電源電圧出力部71は、ハイレベル電源電圧ELVDDを出力する。ローレベル電源電圧出力部72は、ローレベル電源電圧ELVSSを出力する。その際、ローレベル電源電圧出力部72は、制御信号Sに基づき、ローレベル電源電圧ELVSSの値を変化させる。具体的には、ローレベル電源電圧出力部72は、休止駆動期間には通常駆動期間よりも高い電圧値のローレベル電源電圧ELVSSを出力する。例えば、通常駆動期間には-5.5Vの電圧がローレベル電源電圧ELVSSとしてローレベル電源電圧出力部72から出力され、休止駆動期間には-4.4Vの電圧がローレベル電源電圧ELVSSとしてローレベル電源電圧出力部72から出力される。
【0035】
<2.画素回路>
<2.1 画素回路の構成>
表示部200内の画素回路20の構成について説明する。なお、ここで示す画素回路20の構成は一例であって、これには限定されない。
図4は、第n行第m列の画素回路20の構成を示す回路図である。
図4に示す画素回路20は、表示素子としての1個の有機EL素子(有機発光ダイオード)21と、7個のトランジスタ(典型的には薄膜トランジスタ)T1~T7(第1初期化トランジスタT1、閾値電圧補償トランジスタT2、書き込み制御トランジスタT3、駆動トランジスタT4、電源供給制御トランジスタT5、発光制御トランジスタT6、第2初期化トランジスタT7)と、1個の保持キャパシタCaとを含んでいる。トランジスタT1,T2,およびT7は、N型トランジスタである。トランジスタT3~T6は、P型トランジスタである。このように、この画素回路20にはN型トランジスタとP型トランジスタとが混在している。チャネル層の材料の観点では、トランジスタT1,T2,およびT7は例えばIGZO-TFTであって、トランジスタT3~T6は例えばLTPS-TFTである。但し、これには限定されない。保持キャパシタCaは、2つの電極(第1電極および第2電極)からなる容量素子である。
【0036】
第1初期化トランジスタT1については、制御端子は(n-2)行目の第1走査信号線NS(n-2)に接続され、第1導通端子は第2ノードN2に接続され、第2導通端子は初期化電源線に接続されている。閾値電圧補償トランジスタT2については、制御端子はn行目の第1走査信号線NS(n)に接続され、第1導通端子は駆動トランジスタT4の第2導通端子と発光制御トランジスタT6の第1導通端子とに接続され、第2導通端子は第2ノードN2に接続されている。書き込み制御トランジスタT3については、制御端子はn行目の第2走査信号線PS(n)に接続され、第1導通端子はm列目のデータ信号線D(m)に接続され、第2導通端子は第1ノードN1に接続されている。駆動トランジスタT4については、制御端子は第2ノードN2に接続され、第1導通端子は第1ノードN1に接続され、第2導通端子は閾値電圧補償トランジスタT2の第1導通端子と発光制御トランジスタT6の第1導通端子とに接続されている。
【0037】
電源供給制御トランジスタT5については、制御端子はn行目の発光制御線EM(n)に接続され、第1導通端子はハイレベル電源線と保持キャパシタCaの第1電極とに接続され、第2導通端子は第1ノードN1に接続されている。発光制御トランジスタT6については、制御端子はn行目の発光制御線EM(n)に接続され、第1導通端子は閾値電圧補償トランジスタT2の第1導通端子と駆動トランジスタT4の第2導通端子とに接続され、第2導通端子は第3ノードN3に接続されている。第2初期化トランジスタT7については、制御端子は(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続され、第1導通端子は第3ノードN3に接続され、第2導通端子は初期化電源線に接続されている。保持キャパシタCaについては、第1電極はハイレベル電源線と電源供給制御トランジスタT5の第1導通端子とに接続され、第2電極は第2ノードN2に接続されている。有機EL素子21については、アノード端子は第3ノードN3に接続され、カソード端子はローレベル電源線に接続されている。
【0038】
<2.2 画素回路の動作>
次に、画素回路20の動作について説明する。
図5は、n行目の画素回路20(
図4に示す画素回路20)の動作について説明するためのタイミングチャートである。
図5に関し、時刻t1以前の期間および時刻t8以降の期間が発光期間83であり、時刻t1~t8の期間が消灯期間82である。
【0039】
時刻t1以前の期間には、第2走査信号PS(n)はハイレベルとなっており、第1走査信号NS(n-2)、第1走査信号NS(n-1)、第1走査信号NS(n)、および発光制御信号EM(n)はローレベルとなっている。このとき、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6はオン状態となっていて、有機EL素子21は駆動電流の大きさに応じて発光している。
【0040】
時刻t1になると、発光制御信号EM(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6がオフ状態となる。その結果、有機EL素子21への電流の供給が遮断され、有機EL素子21は消灯状態となる。
【0041】
時刻t2になると、第1走査信号NS(n-2)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、第1初期化トランジスタT1がオン状態となる。その結果、第2ノードN2の電圧(駆動トランジスタT4のゲート電圧)が初期化される。すなわち、第2ノードN2の電圧が初期化電圧Viniに等しくなる。
【0042】
時刻t3になると、第1走査信号NS(n-1)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、第2初期化トランジスタT7がオン状態となる。その結果、第3ノードN3の電圧(有機EL素子21のアノード電圧)が初期化される。
【0043】
時刻t4になると、第1走査信号NS(n-2)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第1初期化トランジスタT1がオフ状態となる。また、時刻t4には、第1走査信号NS(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態となる。
【0044】
時刻t5になると、第1走査信号NS(n-1)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第2初期化トランジスタT7がオフ状態となる。また、時刻t5には、第2走査信号PS(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT3がオン状態となる。閾値電圧補償トランジスタT2が時刻t4にオン状態となっているので、時刻t5に書き込み制御トランジスタT3がオン状態となることにより、書き込み制御トランジスタT3、駆動トランジスタT4、および閾値電圧補償トランジスタT2を介して、データ信号D(m)が第2ノードN2に与えられる。すなわち、保持キャパシタCaへのデータ電圧の書き込み(保持キャパシタCaの充電)が行われる。
【0045】
時刻t6になると、第2走査信号PS(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT3がオフ状態となる。時刻t7になると、第1走査信号NS(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態となる。
【0046】
時刻t8になると、発光制御信号EM(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6がオン状態となり、保持キャパシタCaの充電電圧に応じた駆動電流が有機EL素子21に供給される。その結果、当該駆動電流の大きさに応じて有機EL素子21が発光する。その後、次に発光制御信号EM(n)がローレベルからハイレベルに変化するまでの期間を通じて、有機EL素子21は発光する。
【0047】
図5に示した期間に関し、時刻t2~t4の期間には第2ノードN2の電圧の初期化が行われ、時刻t3~t5の期間には第3ノードN3の電圧の初期化が行われ、時刻t5~t6の期間にはデータ電圧の書き込みが行われる。すなわち、消灯期間82には、第2ノードN2の電圧を初期化する期間と、第3ノードN3の電圧を初期化する期間と、保持キャパシタCaを充電する期間とが含まれている。なお、以下においては、第3ノードN3の電圧(有機EL素子21のアノード電圧)の初期化が行われる期間(時刻t3~t5の期間)を「アノード初期化期間」という。本実施形態においては、このアノード初期化期間によって第1端子初期化期間が実現される。
【0048】
<3.駆動方法>
以下、本実施形態における駆動方法について説明する。上述したように、本実施形態に係る有機EL表示装置は、休止駆動を採用する表示装置である。従って、有機EL表示装置の動作中、
図21に示したように、通常駆動が行われる通常駆動期間と休止駆動が行われる休止駆動期間とが交互に現れる
【0049】
<3.1 通常駆動期間>
図6に示すように、通常駆動期間には、1行目からi行目までの画素回路20に対して順次にデータ電圧の書き込みを行うためのデータ書き込み期間TWが1フレーム期間毎に現れる。なお、
図6では、各行の画素回路20に含まれる保持キャパシタCaに対して実際にデータ電圧の書き込みが行われる期間を符号81を付した網掛けで表している(
図1および
図7~
図9も同様)。本実施形態においては、1フレーム期間は120分の1秒である。すなわち、120分の1秒毎にデータ書き込み期間TWが現れる。換言すれば、通常駆動期間には、書き込み周波数も更新周波数も120Hzとなる。
【0050】
<3.2 休止駆動期間>
休止駆動を採用する従来の有機EL表示装置では、休止駆動期間には、例えば
図7に示すように、通常駆動中の1フレーム期間(120分の1秒)に相当する長さのデータ書き込み期間TWと通常駆動中の3フレーム期間(40分の1秒)に相当する長さの休止期間TPとが交互に繰り返されていた。換言すれば、1回のリフレッシュフレームRFと3回の休止フレームPFとが繰り返されていた。
図7に示す例では、データ書き込み期間TWにおける書き込み周波数は120Hzとなっている。このようなデータ書き込み期間TWの後に3フレーム期間に相当する長さの休止期間TPを設けることによって、更新周波数は30Hzとなっている。
【0051】
これに対して、本実施形態においては、休止駆動期間には、
図8に示すように、通常駆動中の2フレーム期間(60分の1秒)に相当する長さのデータ書き込み期間TWと通常駆動中の2フレーム期間(60分の1秒)に相当する長さの休止期間TPとが交互に繰り返される。なお、1回のデータ書き込み期間TWに含まれる2回のリフレッシュフレームRFで画面全体の1回の書き換えが行われる。すなわち、
図7に示す例とは異なり、データ書き込み期間TWにおける書き込み周波数は60Hzとなっている。上述したように、通常駆動期間には、書き込み周波数は120Hzとなっている。従って、本実施形態においては、通常駆動期間よりも休止駆動期間の方がデータ書き込み期間TWに低い速度で画素回路20へのデータ電圧の書き込みが行われる。また、画素回路20の駆動時間(
図5に示す各期間)を休止駆動期間には通常駆動期間よりも2倍の長さにすることができる。
【0052】
なお、ここでは通常駆動中の2フレーム期間に相当する長さのデータ書き込み期間TWと通常駆動中の2フレーム期間に相当する長さの休止期間TPとが交互に繰り返されるケース(
図8参照)を例に挙げて説明したが、データ書き込み期間TWの長さや休止期間TPの長さはこれには限定されない。
【0053】
<3.3 通常駆動と休止駆動との切り替え>
次に、通常駆動と休止駆動との切り替えが行われる際の動作について説明する。休止駆動を採用する従来の有機EL表示装置においては、
図9に示すように、通常駆動期間から休止駆動期間に切り替わってもハイレベル電源電圧ELVDDの電圧値およびローレベル電源電圧ELVSSの電圧値に変化はない。休止駆動期間から通常駆動期間に切り替わる際も同様である。以上のように、休止駆動を採用する従来の有機EL表示装置においては、休止駆動期間と通常駆動期間とでEL電源電圧の大きさは同じである。
【0054】
これに対して、本実施形態においては、上述したように、ローレベル電源電圧出力部72は、休止駆動期間には通常駆動期間よりも高い電圧値のローレベル電源電圧ELVSSを出力する。従って、通常駆動期間から休止駆動期間に切り替わる際には、
図1に示すようにローレベル電源電圧ELVSSの電圧値は上昇する。逆に、休止駆動期間から通常駆動期間に切り替わる際には、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値は低下する。以上より、この有機EL表示装置が動作している期間を通じて、
図10に示すように、通常駆動期間にはローレベル電源電圧ELVSSの電圧値は比較的低い値となり、休止駆動期間にはローレベル電源電圧ELVSSの電圧値は比較的高い値となる。これにより、休止駆動期間にはEL電源電圧の大きさが通常駆動期間に比べて小さくなる。EL電力はEL電源電圧の大きさに比例するので、休止駆動中のEL電源電圧が小さくなることによってEL電力が低減される。また、通常駆動期間における書き込み周波数が120Hzであるのに対して、休止駆動期間における書き込み周波数は60Hzである。このように、休止駆動期間には、通常駆動期間に比べて書き込み周波数が低くなる。これに伴い、休止駆動期間におけるアノード初期化期間が、通常駆動期間におけるアノード初期化期間よりも長くなる。
【0055】
以上より、本実施形態においては、
図11に示すように、通常駆動を行うステップS10と、通常駆動から休止駆動への切り替えを行うステップS20と、休止駆動を行うステップS30と、休止駆動から通常駆動への切り替えを行うステップS40とからなる一連の動作が繰り返されると考えることができる。これに関し、ステップS10では各画素回路20に含まれる保持キャパシタCaへのデータ電圧の書き込みが1フレーム期間毎に行われるようデータ信号線D(1)~D(j)と第1走査信号線NS(1)~NS(i)と第2走査信号線PS(1)~PS(i)と発光制御線EM(1)~EM(i)とが駆動され、ステップS20ではローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が高められ、ステップS30では各画素回路20に含まれる保持キャパシタCaへのデータ電圧の書き込みが行われるデータ書き込み期間TWと各画素回路20に含まれる保持キャパシタCaへのデータ電圧の書き込みが行われない休止期間TPとが交互に現れるようデータ信号線D(1)~D(j)と第1走査信号線NS(1)~NS(i)と第2走査信号線PS(1)~PS(i)と発光制御線EM(1)~EM(i)とが駆動され、ステップS40ではローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が低くされる。
【0056】
なお、上記ステップS10によって通常駆動ステップが実現され、上記ステップS20によってローレベル電源電圧上昇ステップが実現され、上記ステップS30によって休止駆動ステップが実現され、上記ステップS40によってローレベル電源電圧低下ステップが実現される。
【0057】
<4.EL電力低減の具体例>
EL電力低減の具体例について説明する。
【0058】
通常駆動期間には、ハイレベル電源電圧ELVDD、ローレベル電源電圧ELVSS、および初期化電圧Viniが次のように設定される。
ELVDD=4.6V
ELVSS=-5.5V
Vini=-5.5V
【0059】
休止駆動期間には、ハイレベル電源電圧ELVDD、ローレベル電源電圧ELVSS、および初期化電圧Viniが次のように設定される。
ELVDD=4.6V
ELVSS=-4.4V
Vini=-4.4V
【0060】
一定期間に消費されるEL電力Pは、EL電源電圧(ハイレベル電源電圧ELVDDとローレベル電源電圧ELVSSとの差)に比例する。より詳しくは、一定期間に流れる駆動電流をIとすると、当該一定期間に消費されるEL電力Pは次式(1)で表される。
P=(ELVDD-ELVSS)×I ・・・(1)
【0061】
上式(1)に基づき、通常駆動期間における一定期間のEL電力は“10.1×I”となり、休止駆動期間における一定期間のEL電力は“9.0×I”となる。従って、次式(2)から把握されるように、本実施形態の駆動方法を採用することによって、休止駆動期間中のEL電力は従来と比較して約11%低減される。
((10.1-9.0)/10.1)×100=10.89 ・・・(2)
【0062】
<5.効果>
本実施形態によれば、休止駆動期間にはローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が通常駆動期間よりも高い値に設定される。また、通常駆動期間には書き込み周波数が120Hzとなるのに対して、休止駆動期間には書き込み周波数は60Hzとなる。従って、休止駆動中のデータ書き込み期間TWの長さは、通常駆動中の2フレーム期間に相当する長さとなる。それ故、休止駆動中の消灯期間は、通常駆動中の消灯期間よりも長くなる。すなわち、休止駆動中には、アノード初期化期間が通常駆動中よりも長くなる。換言すれば、休止駆動期間におけるアノード初期化期間が従来よりも長くなる。その結果、休止駆動期間には、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が通常駆動期間よりも高い値に設定されていても、黒表示が行われる画素において
図12で符号84を付した部分に示すように消灯期間82中に第3ノードN3の電圧V(N3)が充分に低下する。それ故、
図12で符号85を付した部分に示すように、発光期間83の終了時点においても第3ノードN3の電圧V(N3)は有機EL素子21の発光閾値電圧Ve以下で維持される。従って、黒浮きは発生しない。
【0063】
ところで、書き込み周波数を低くするほどアノード初期化期間が長くなるので、
図13に示すように、書き込み周波数を低くするほどローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を高くすることができる。また、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を高くするほどEL電力は低減される。従って、
図14に示すように、書き込み周波数を低くするほどEL電力は低減される。本実施形態においては休止駆動期間における書き込み周波数が従来よりも低くされるので、従来と比較してEL電力が低減される。
【0064】
図15は、通常駆動と従来の休止駆動と本実施形態の休止駆動とで消費電力を比較した図である。従来の休止駆動によれば、通常駆動に比べてアナログ電力およびロジック電力は低減される。しかしながら、EL電力については、ほとんど低減されない。これに対して、本実施形態の休止駆動によれば、アナログ電力およびロジック電力に加えてEL電力についても通常駆動に比べて低減される。このように、本実施形態によれば、装置全体で消費される電力の大部分を占めているEL電力を低減することが可能となる。
【0065】
以上より、本実施形態によれば、黒浮きの発生を防止しつつ従来よりも消費電力を低減することのできる有機EL表示装置が実現される。
【0066】
<6.変形例>
以下、上記実施形態の変形例を説明する。
【0067】
<6.1 第1の変形例>
上記実施形態によれば、データ書き込み期間TWが通常駆動中よりも休止駆動中の方が長くなる。
図4に示す構成の画素回路20が採用されている場合(駆動トランジスタT4がP型トランジスタである場合)には黒色に対応するデータ電圧は比較的高い電圧とされ白色に対応するデータ電圧は比較的低い電圧とされるところ、データ電圧の書き込みを行う期間が長くなると、黒色に対応するデータ電圧を本来よりも低い電圧に設定することが可能となる。黒色に対応するデータ電圧を本来よりも低い電圧に設定した場合、データ電圧の書き込み時に閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子に印加するハイレベル電圧(第1走査信号のハイレベル電圧)を本来よりも低い電圧に設定することができる。
【0068】
そこで、本変形例においては、休止駆動期間には、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が通常駆動期間よりも高い値に設定されるのに加えて、ドライバ(ゲートドライバ300、エミッションドライバ400)のハイレベル電源電圧DVDDの電圧値が通常駆動期間よりも低い値に設定される。これにより、休止駆動期間には、ドライバの動作に起因する電力(アナログ電力)の消費量が従来よりも低減され、上記実施形態よりも更に消費電力低減の効果が得られる。
【0069】
以下、本変形例によるアナログ電力低減の具体例について説明する。
【0070】
通常駆動期間には、ドライバのハイレベル電源電圧DVDDおよびドライバのローレベル電源電圧DVSSが次のように設定される。
DVDD=6.5V
DVSS=-8.0V
【0071】
休止駆動期間には、ドライバのハイレベル電源電圧DVDDおよびドライバのローレベル電源電圧DVSSが次のように設定される。
DVDD=6.0V
DVSS=-8.0V
【0072】
ドライバで消費されるアナログ電力は、ハイレベル電源電圧DVDDとローレベル電源電圧DVSSとの差の2乗に比例する。Kを比例係数とすると、通常駆動期間における一定期間のアナログ電力は“(6.5+8.0)2×K”となり、休止駆動期間における一定期間のアナログ電力は“(6.0+8.0)2×K”となる。従って、次式(3)から把握されるように、本変形例の手法を採用することによって、休止駆動期間中のアナログ電力は従来と比較して約7%低減される。
((14.52-14.02)/14.52)×100=6.78 ・・・(3)
【0073】
なお、ドライバのハイレベル電源電圧DVDDが第1電源電圧に相当し、ドライバのローレベル電源電圧DVSSが第2電源電圧に相当する。
【0074】
<6.2 第2の変形例>
上記実施形態においては、黒浮きの発生を防止するために、書き込み周波数が休止駆動期間には通常駆動期間よりも低くされていた。しかしながら、通常駆動期間と休止駆動期間とで書き込み周波数を同じにすることもできる。これについて、以下に説明する。
【0075】
図16は、本変形例における駆動方法について説明するための信号波形図である。本変形例においても、休止駆動期間におけるアノード初期化期間を通常駆動期間におけるアノード初期化期間よりも長くする。そして、その延長分に相当する期間だけデータ書き込み期間TWを本来よりも長くするとともに休止期間TPを本来よりも短くする。より詳しくは、休止駆動期間におけるアノード初期化期間と通常駆動期間におけるアノード初期化期間との差を「初期化延長期間」と定義すると、通常駆動期間における1フレーム期間に初期化延長期間ΔTを加えた長さのデータ書き込み期間TWと、通常駆動期間における1フレーム期間から初期化延長期間ΔTを減じた長さの期間と通常駆動期間におけるNフレーム期間(Nは整数である)(
図16では、Nは2である)に相当する長さの期間とからなる休止期間TPとが交互に現れるように、休止駆動が行われる。
【0076】
本変形例においても、休止駆動期間におけるアノード初期化期間が従来よりも長くなる。その結果、休止駆動中のローレベル電源電圧ELVSSの電圧値が通常駆動中のローレベル電源電圧ELVSSの電圧値よりも高い値に設定されていても、黒表示が行われる画素において休止駆動期間の消灯期間82中に第3ノードN3の電圧V(N3)が充分に低下する。それ故、休止駆動期間の発光期間83の終了時点においても第3ノードN3の電圧V(N3)は有機EL素子21の発光閾値電圧Ve以下で維持される。従って、黒浮きは発生しない。このように、通常駆動期間と休止駆動期間とでデータ電圧の書き込み周波数を同じにしても、黒浮きの発生を防止しつつ従来よりも消費電力を低減することが可能となる。
【0077】
<7.その他>
上記実施形態(変形例を含む)では有機EL表示装置を例に挙げて説明したが、これには限定されず、無機EL表示装置、QLED表示装置などにも本発明を適用することができる。
【0078】
また、上記実施形態(変形例を含む)ではローレベル電源電圧ELVSSの電圧値と初期化電圧Viniの電圧値とが同じ値となっている例を挙げて説明したが、ローレベル電源電圧ELVSSの電圧値と初期化電圧Viniの電圧値とは異なる値であっても良い。この場合にも、休止駆動期間の発光期間83(
図12参照)の終了時点に第3ノードN3の電圧V(N3)が有機EL素子21の発光閾値電圧Veを超えないように初期化電圧Viniの電圧値が設定されていれば、休止駆動中のローレベル電源電圧ELVSSの電圧値を通常駆動中のローレベル電源電圧ELVSSの電圧値よりも高い値に設定することによって、上述したようにEL電力低減の効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
6…有機EL表示パネル
20…画素回路
21…有機EL素子
72…ローレベル電源電圧出力部
200…表示部
N1~N3…第1~第3ノード
T1…第1初期化トランジスタ
T2…閾値電圧補償トランジスタ
T3…書き込み制御トランジスタ
T4…駆動トランジスタ
T5…電源供給制御トランジスタ
T6…発光制御トランジスタ
T7…第2初期化トランジスタ
ELVDD…ハイレベル電源電圧
ELVSS…ローレベル電源電圧
Vini…初期化電圧
TP…休止期間
TW…データ書き込み期間
RF…リフレッシュフレーム
PF…休止フレーム