(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】シリコーン官能化粘度指数向上剤
(51)【国際特許分類】
C10M 155/02 20060101AFI20230426BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20230426BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20230426BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20230426BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230426BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20230426BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20230426BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230426BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230426BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230426BHJP
C10N 40/26 20060101ALN20230426BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20230426BHJP
【FI】
C10M155/02
C08F8/42
C08F8/46
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:25
C10N40:26
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2022540691
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 US2020067250
(87)【国際公開番号】W WO2021138285
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】カランサ、アルトゥーロ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、コンション
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、アシュ
(72)【発明者】
【氏名】チアン、ション
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189919(JP,A)
【文献】特開2019-077864(JP,A)
【文献】特開昭59-184272(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043333(WO,A1)
【文献】特表2015-503662(JP,A)
【文献】特表2009-532513(JP,A)
【文献】米国特許第04882384(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノシランまたはアミノシロキサンペンダント基を有するアシル化オレフィンコポリマーを含む、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤であって、前記アシル化オレフィンコポリマーが
、グラフト化アシル化部分を有するオレフィンコポリマー骨格を含
み、前記アミノシランまたはアミノシロキサンペンダント基が前記グラフト化アシル化部分を介して前記オレフィンコポリマー骨格に連結している、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤。
【請求項2】
前記アミノシランまたはアミノシロキサンペンダント基が、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせに由来するか、または前記多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤が、前記アシル化オレフィンコポリマーと、アミノアルキルシラン、アミノアルキル
シロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択される前記アミノシランまたはアミノシロキサンとの反応生成物である、請求項1に記載の多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤。
【請求項3】
前記反応生成物が、アルキルアミン、アルキルポリアミン、またはそれらの組み合わせから選択されるアミンとさらに反応する、請求項2に記載の多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤。
【請求項4】
前記グラフト化アシル化部分が、グラフト化ジカルボン酸部分であるか、または前記オレフィンコポリマー骨格が、
10,000~
200,000の数平均分子量を有するか、または前記オレフィンコポリマー骨格が、エチレンおよび1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマーに由来するか、または前記アシル化オレフィンコポリマーが、前記アシル化オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1,000当たり
0.1~
0.8のカルボキシル基を有する、請求項1に記載の多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤。
【請求項5】
前記アシル化オレフィンコポリマーが、エチレンと、1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマー、ならびに少なくとも1つのエチレン結合と、少なくとも1つのカルボン酸基もしくはその無水物基、また
はカルボキシル基に変換可能な極性基とを有する、グラフト化エチレン性不飽和アシル化剤に由来し、前記アシル化オレフィンコポリマーが、
15~
80モル%のエチレンおよび
85~
20モル%のC3~C18 α-オレフィンを含む、請求項4に記載の多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和アシル化剤が、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはそれらの無水物誘導体から選択される、請求項5に記載の多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤。
【請求項7】
大量の基油と、アミノシランまたはアミノシロキサンペンダント基を有する少量のアシル化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤と、を含む、潤滑油組成物であって、前記アシル化オレフィンコポリマーが
、グラフト化アシル部分を有するオレフィンコポリマー骨格を有し、
前記アミノシランまたはアミノシロキサンペンダント基が前記グラフト化アシル部分を介して前記オレフィンコポリマー骨格に連結しており、前記アシル化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤が、前記潤滑油組成物に対して
5~
200ppmのシリコーンを提供する量である、潤滑油組成物。
【請求項8】
前記アミノシランまたはアミノシロキサンペンダント基が、アミノアルキルシラン、アミノアルキル
シロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせに由来する、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前
記オレフィンコポリマー粘度指数向上剤が、前記アシル化オレフィンコポリマーと、アミノアルキルシラン、アミノアルキル
シロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択される前記アミノシランまたはアミノシロキサンとの反応生成物である、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記反応生成物が、アルキルアミン、アルキルポリアミン、またはそれらの組み合わせから選択されるアミンとさらに反応される、請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記グラフト化アシル部分が、グラフト化ジカルボン酸部分であるか、または前記オレフィンコポリマー骨格が、
10,000~
200,000の数平均分子量を有する、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記オレフィンコポリマー骨格が、エチレンと、1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマーに由来する、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記アシル化オレフィンコポリマーが、前記アシル化オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1,000当たり
0.1~
0.8のカルボキシル基を有する、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記アシル化オレフィンコポリマーが、エチレンと、1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマー、ならびに少なくとも1つのエチレン結合と、少なくとも1つのカルボン酸基もしくはその無水物基、また
はカルボキシル基に変換可能な極性基とを有する、グラフト化エチレン性不飽和アシル化剤材料に由来する、請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記エチレン性不飽和アシル化剤材料が、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはそれらの無水物誘導体から選択される、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤、およびかかる粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物、特に、シリコーン官能化多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤、ならびに1つ以上の向上した粘度測定パラメータおよび低速のプレイグニッション(pre-ignition)事象の向上を提供するためのシリコーン官能化多機能性オレフィンコポリマーを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘度指数向上剤は、完成油がSAEマルチグレード粘度基準を満たすのに役立つ潤滑油組成物の1つの成分である。例えば、ドライブラインフルード、エンジンオイル、またはオートマチックトランスミッションフルードなどの鉱物または合成油潤滑剤は、広い温度変動にわたって必ずしも同じように機能するとは限らない。そのような潤滑剤は、熱がそれらの粘度およびフィルム形成能を低減するので、高温では効果が低くなる場合がある。あるいは、潤滑剤の粘度が増加するにつれて、潤滑剤は、低温でも効果が低くなり得る。この問題は、多くの油潤滑剤に共通しており、温度の変動に伴う潤滑油の粘度の変化についての任意の尺度である、「粘度指数」(VI)に関して特徴付けることができる。VIが低いほど、温度変化に伴う油の粘度の変化が大きくなり、逆もまた同様である。潤滑剤の粘度は、その摩擦を低減する能力と密接に関連する。一般に、2つの移動表面を依然として強制的に分ける最も粘性の低い潤滑剤が望ましい。潤滑剤の粘性が高すぎる場合、表面を動かすのに大量のエネルギーが必要となり、粘性が低すぎる場合、表面が接触して摩擦が増加するであろう。エンジンオイル、ドライブラインフルード、またはオートマチックトランスミッションフルードの潤滑のような、多くの潤滑剤用途は、潤滑剤が広範囲の温度にわたって一貫して性能を発揮することが必要である。しかしながら、多くの潤滑剤は、自動車が要求する広範囲の温度にわたる一貫性を保持するのに十分に高いVIを本質的に有さない。
【0003】
この欠点に取り組む試みにおいて、粘度指数向上剤(「VII」)を潤滑剤に添加することができる。粘度指数向上剤は、一般的にはポリマーであり、高温および低温での潤滑剤粘度変化を低減するために添加される。粘度指数向上剤が低粘度油に添加されると、それは温度が上昇するにつれて油を効果的に増粘させる。これは、鉱物油の潤滑効果をより広い温度範囲にわたって拡張することができることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、潤滑油に含まれる様々な添加剤も、性能に意図しない影響を与え得る。場合によっては、例えば、潤滑油に含まれる様々な添加剤は、通常は低速のプレイグニッション(またはLSPI)として特徴付けられる望ましくない現象に寄与し得、これは、所望の点火の前の燃焼室内の空気燃料混合物の点火の結果生じる燃焼形態であると考えられている。多くの場合、ターボチャージャー付きまたはスーパーチャージャー付きのエンジンは、高圧スパイク、早期燃焼、および/またはノックを含み得るプレイグニッション事象であるLSPIが発生しやすい可能性がある。これらはすべて、個々におよび組み合わせて、望ましくない。しかしながら、LSPI事象は、散発的かつ無制御の様式でのみ生じるため、この現象の原因を特定すること、およびそれを抑制する解決策を策定することは困難である。例えば、少なくとも10バールの正味平均有効圧力(BMEP)による、負荷下での、3000rpm以下におけるエンジンの作動中に、低速および中~高負荷時でのこの異常燃焼は、多くのLSPI事象が頻繁に観察される場合である。LSPI事象は、望ましくなく、先行する解決策は満足のいくものではなかった。
【0005】
1つのアプローチまたは実施形態では、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、本開示において記載されている。1つのアプローチでは、コポリマーは、アミノシランペンダント基を有するアシル化オレフィンコポリマーを含み、アシル化オレフィンコポリマーは、アミノシランペンダント基をオレフィンコポリマー骨格に連結するその上にグラフト化アシル化部分を有するオレフィンコポリマー骨格を含む。
【0006】
他のアプローチまたは実施形態では、前の段落のコポリマーは、それらの任意の組み合わせにおいて任意の特徴と組み合わせることができる。これらの任意の特徴には、アミノシランペンダント基が、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせに由来し、および/または多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤が、アシル化オレフィンコポリマーと、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシリキソン(aminoalkyl silixone)、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択されるアミノシランとの反応生成物であり、および/または反応生成物が、アルキルアミン、アルキルポリアミン、またはそれらの組み合わせから選択されるアミンとさらに反応させ、および/またはグラフト化アシル化部分が、グラフト化ジカルボン酸部分であり、および/またはオレフィンコポリマー骨格が、約10,000~約200,000の数平均分子量を有し、および/またはオレフィンコポリマー骨格が、エチレンと1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマーに由来し、および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、アシル化オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1,000当たり約0.1~約0.8のカルボキシル基を有し、および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、エチレンと1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマー、ならびに少なくとも1つのエチレン結合と、少なくとも1つのカルボン酸基もしくはその無水物基、またはオレフィンコポリマーと反応したカルボキシル基に変換可能な極性基とを有する、グラフト化エチレン性不飽和アシル化剤に由来し、アシル化オレフィンコポリマーが、約15~約80モル%のエチレンおよび約85~約20モル%のC3~C18 α-オレフィンを含み、および/またはエチレン性不飽和アシル化剤が、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはそれらの無水物誘導体から選択される、のうちの1つ以上が含まれる。
【0007】
さらに他のアプローチまたは実施形態では、アミノシランペンダント基を有する大量の基油と、少量のアシル化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤と、を含む、潤滑油組成物が、本明細書に記載されている。アプローチでは、アシル化オレフィンコポリマーは、アミノシランペンダント基をオレフィンコポリマー骨格に連結するその上にグラフト化アシル部分を有するオレフィンコポリマー骨格を有し、アシル化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、潤滑油組成物に対して約5~約200ppmの量のシリコーンを提供する量で提供される。
【0008】
他のアプローチまたは実施形態では、前の段落の潤滑剤は、それらの任意の組み合わせで任意の特徴と組み合わせることができる。これらの任意の特徴には、アミノシランペンダント基が、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシリキソン(aminoalkyl silixone)、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせに由来し、および/または多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤が、アシル化オレフィンコポリマーと、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシリキソン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択されるアミノシランとの反応生成物であり、および/または反応生成物が、アルキルアミン、アルキルポリアミン、またはそれらの組み合わせから選択されるアミンとさらに反応させ、および/またはグラフト化アシル化部分が、グラフト化ジカルボン酸部分であり、および/またはオレフィンコポリマー骨格が、約10,000~約200,000の数平均分子量を有し、および/またはオレフィンコポリマー骨格が、エチレンと1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマーに由来し、および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、アシル化オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1,000当たり約0.1~約0.8のカルボキシル基を有し、および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、エチレンと1つ以上のC3~C18 α-オレフィンとのコポリマー、ならびに少なくとも1つのエチレン結合と、少なくとも1つのカルボン酸基もしくはその無水物基、またはオレフィンコポリマーと反応したカルボキシル基に変換可能な極性基とを有する、グラフトされたエチレン性不飽和アシル化剤に由来し、および/またはエチレン性不飽和アシル化剤材料が、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはそれらの無水物誘導体から選択される、のうちの1つ以上が含まれる。
【0009】
さらに別のアプローチまたは実施形態では、前の段落のうちのいずれかのコポリマーが、本開示に記載されるように、低速のプレイグニッション(pre-ignition)事象を低減させ、向上した粘度測定特性を提供するための潤滑組成物の使用について、本明細書に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様では、本開示は、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤、および向上した粘度測定特性を提供するだけでなく、同時に低速のプレイグニッション事象を低減させるのに役立つような潤滑剤添加剤を含む、潤滑油組成物を記載している。1つのアプローチでは、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、シリコーン官能化されており、アミノシランもしくはアミノシロキソンペンダント基または側基を有するアシル化オレフィンコポリマーを含む。アシル化オレフィンコポリマーは、アミノシランペンダント基をオレフィンコポリマー骨格に連結するその上にグラフト化アシル化部分を有するオレフィンコポリマー骨格を有するコポリマーである。いくつかのアプローチでは、アミノシランもしくはアミノシロキソンペンダント基は、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシランなど、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせに由来し得る。本明細書で使用される場合、シランは、概して、その上に4つの置換基を有するシリコーン原子を指す。さらに他のアプローチでは、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、アシル化オレフィンコポリマーと選択されたアミノシラン化合物との反応生成物である。いくつかの任意のアプローチでは、多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、シリコーンで官能化されることに加えて、アルキルアミン、アルキルポリアミン、またはそれらの組み合わせから選択されるアミンまたはポリアミンでさらに官能化または後処理され得る。
【0011】
アシル化オレフィンコポリマー
アシル化オレフィンコポリマーは、多機能性粘度指数向上剤のコポリマー骨格を形成する。1つのアプローチでは、アシル化オレフィンコポリマーは、1つ以上のオレフィンコポリマーと1つ以上のグラフト化アシル化剤との反応生成物である。アシル化部分をオレフィンコポリマーにグラフトすることは、当該技術分野において既知の任意の技術を使用して実施され得る。以下のスキーム1は、ポリマー中の例示的なモノマーとしてエチレンおよびプロピレンを使用し、アシル化部分として無水マレイン酸を使用するこのグラフト反応の例示的な反応を提供する(しかしながら、本明細書の反応物のうちのいずれも同様の反応スキームで使用することができる)。
【化1】
【0012】
いくつかの態様では、オレフィンコポリマー骨格は、エチレンと3~18個の炭素原子の、例えば3~5個の、3~10個の、3~15個の、5~10個の、8~12個の、10~15個の、または10~18個の、炭素原子を有するアルキレンとのコポリマー骨格を有し得る。いくつかのアプローチでは、アルキレンは、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、およびそれらの任意の混合物であり得る。
【0013】
他のアプローチでは、ポリマーは、エチレンと1つ以上のC3~C18のα-オレフィンとのコポリマーである。いくつかの態様では、エチレンとプロピレンとのコポリマーが、オレフィンコポリマーとして使用される。エチレンおよび/またはプロピレンの代わりに使用して、オレフィンコポリマーを形成し得る、またはエチレンおよびプロピレンと組み合わせて、ターポリマーを形成することができる追加のα-オレフィンには、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、スチレン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0014】
さらに他のアプローチでは、しばしばインターポリマーと呼ばれる、より複雑なオレフィンコポリマーを、第3のまたは多機能性成分/モノマーを使用して調製され得る。この第3の成分は、非共役ジエンおよびトリエンから選択されるポリエンモノマーを使用して、インターポリマー基材を調製するために一般的に使用され得る。いくつかの態様では、α,ω-ジオレフィンは、代替のポリマー形態を提供するためにオレフィンコポリマーに組み込まれ得、α,ω-ジオレフィンは、例えば、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、4-メチルブテン-1,5-メチルペンテン-1および6-メチルベプテン-1などの分岐鎖α-オレフィン、およびそれらの任意の混合物を含み得る。いくつかの態様では、非共役ジエン成分は、鎖中に5~14個の炭素原子を有し得る。いくつかの態様では、ジエンモノマーは、その構造内のビニル基の存在を特徴とし、環状およびビシクロ化合物を含むことができる。代表的なジエンには、1,4-ヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、1,5-ヘプタジエン、および1,6-オクタジエンが含まれる。インターポリマーの調製には、2つ以上のジエンの混合物を使用することができる。いくつかの態様では、ターポリマーまたはインターポリマー基材を調製するための好ましい非共役ジエンは、1,4-ヘキサジエンである。トリエン成分は、少なくとも2つの非共役二重結合を有し、鎖中に約30個までの炭素原子を有する。本開示のインターポリマーを調製するのに有用な典型的なトリエンは、1-イソプロピリデン-3a、4,7,7a-テトラヒドロインデン、1-イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドローイソジシクロペンタジエン、および2-(2-メチレン-4-メチル-3-ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ-5-ヘプテンである。
【0015】
オレフィンコポリマーは、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)またはポリ(エチレン-コ-高級α-オレフィン)コポリマーを含み得る。これらのエチレン-コ-α-オレフィンコポリマーは、約15~80モルパーセントのエチレンおよび約85~20モルパーセントのC3~C18 α-オレフィン、約35~75モルパーセントのエチレンおよび約65~25モルパーセントのC3~C18 α-オレフィン、50~70モルパーセントのエチレンおよび50~30モルパーセントのC3~C18 α-オレフィン、ならびに55~65モルパーセントのエチレンおよび45~35モルパーセントのC3~C18 α-オレフィンを含み得る。
【0016】
前述のポリマーのターポリマーの変形は、約0.1~10モルパーセントの非共役ジエンまたはトリエンを含有することができる。ポリマー、コポリマー、およびターポリマーという用語は、エチレンコポリマー、ターポリマー、またはインターポリマーを包含するために一般的に使用される。いくつかの態様では、これらの材料は、エチレンコポリマー類の基本特性が実質的に変化しない限り、少量の他のオレフィンモノマー類を含有し得る。
【0017】
エチレン-オレフィンコポリマー基材を形成するために使用される重合反応は、概して、従来のZiegler-Nattaまたは単一サイト配位重合触媒システム、例えばメタロセン触媒システムの存在下で行われ得る。重合媒体は特有のものではなく、当業者に知られているように、溶液、スラリー、または気相プロセスを含むことができる。溶液重合が使用される場合、溶媒は、α-オレフィンの重合のための反応条件下で液体である任意の好適な不活性炭化水素溶媒であってもよく、満足のいく炭化水素溶媒の例には、5~8個の炭素原子を有する直鎖パラフィンが含まれ、いくつかの態様で使用されるヘキサンを有する。芳香族炭化水素、いくつかの態様では、単一のベンゼン核を有する芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンなど、および上記の直鎖パラフィン系炭化水素および芳香族炭化水素の沸点範囲に近い沸点範囲を有する飽和環状炭化水素が、特に好適である。選択される溶媒は、上記炭化水素の1つ以上の混合物であり得る。スラリー重合が使用される場合、重合の液相は、液体プロピレンであることが好ましい。重合媒体は、触媒成分を妨害する物質を含まないことが望ましい。
【0018】
いくつかの実施形態では、アシル化オレフィンコポリマー骨格は、約5,000~約200,000、または約5,000~約150,000、約5,000~約100,000、約5,000~約50,000、約20,000~約150,000、約20,000~約100,000、約50,000~約150,000、または約50,000~約100,000の数平均分子量を有する油溶性直鎖または分岐鎖ポリマーである。
【0019】
本明細書の任意の実施形態の数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器などの機器、およびWaters Empower Softwareなどのソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器は、Waters Separations ModuleおよびWaters屈折率検出器(または同様の任意選択的な機器)を装備してもよい。GPCの運転条件には、カラム温度が約40℃のガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、孔径100~10000Å)を含み得る。安定化されていないHPLCグレードのテトラヒドロフラン(THF)を、1.0mL/分の流速で溶媒として使用してもよい。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(PS)基準物質を用いて較正してもよい。500g/モル未満の質量を有する試料の較正曲線を、外挿してもよい。試料およびPS基準物質を、THFに溶解し、0.1~0.5重量パーセントの濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれるUS5,266,223にも記載されている。GPC方法は、追加的に、分子量分布情報を提供し、例えば、W.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”,John Wiley and Sons,New York,1979(参照により本明細書にも組み込まれる)を参照されたい。
【0020】
いくつかの態様では、側鎖としてオレフィンコポリマーにグラフトされたアシル化部分またはアシル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、少なくとも1つのカルボン酸および/またはジカルボン酸無水物基をさらに含むエチレン性不飽和カルボン酸または無水物反応物から得られる。いくつかのアプローチでは、オレフィンコポリマー骨格にグラフトされたアシル基を形成する反応物には、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、フェルラ酸、オルトクマル酸、メタクマル酸、パラクマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および無水イタコン酸、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。別のアプローチでは、オレフィンコポリマー骨格にグラフトされたアシル基を形成する反応物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。なお他のアプローチでは、オレフィンコポリマー骨格にグラフトされたアシル基を形成する反応物は、無水マレイン酸部分を含む。
【0021】
いくつかの態様では、オレフィンコポリマー骨格は、オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1000当たり約0.1~約0.8のマレイン酸基(または他のアシル化基)をその上にグラフトしており、例えば、オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1000当たり約0.2~約0.75、約0.5~約0.75、約0.4~約0.5、または約0.4~約0.8、または約0.1~約0.4のアシル基をグラフトしている。他の態様では、オレフィンコポリマーは、オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1000当たり約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、または約0.75の無水マレイン酸基をその上にグラフトしている。本明細書の実施例は、グラフト値がどのように計算されるかに関するさらなる考察を提供する。
【0022】
他の態様では、オレフィンコポリマー骨格にグラフトされたアシル化基は、グラフトされたジカルボン酸部分を含むことができるグラフト化アシル化部分である。グラフトされたジカルボン酸部分は、潜在的な無水物官能基、反応性エステル、酸ハロゲン化物、またはカルボン酸として存在し得る。オレフィンコポリマー骨格にグラフトされたカルボン酸部分は、ポリマー骨格の数平均分子量単位1000当たり約0.1~約0.8のカルボキシル基、数平均分子量単位1000当たり約0.3~約0.75のカルボキシル基を提供する量で存在し得る。例えば、いくつかのアプローチでは、20,000のMnを有するオレフィンコポリマー骨格は、ポリマー鎖当たり6~15のカルボキシル基またはポリマー1モル当たり3~7.5モルの無水マレイン酸でグラフトされている。100,000のMnを有するコポリマーは、ポリマー鎖当たり30~75のカルボキシル基またはポリマー鎖当たり15~37.5モルの無水マレイン酸でグラフトされている。
【0023】
アシル化オレフィンコポリマー骨格を形成するためのグラフト反応は、一般に、溶液またはバルクのいずれか内のフリーラジカル開始剤の助けを借りて、押出機または強力混合装置のように実施される。重合がヘキサン溶液中で行われる場合、US4,340,689、US4,670,515、およびUS4,948,842に記載されているようにヘキサン中でグラフト反応を行うことが経済的に便利であり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。得られるポリマー中間体は、その構造内にランダムにカルボン酸アシル化官能基を有することを特徴とする。
【0024】
アシル化オレフィンコポリマー骨格を形成するための例示的なバルクプロセスでは、150℃~400℃の温度に加熱された押出機、強力ミキサ、またはマスチケータのようなゴムまたはプラスチック処理機器にオレフィンコポリマー骨格が供給され、エチレン性不飽和カルボン酸試薬およびフリーラジカル開始剤を、別々に溶融ポリマーに同時供給してグラフト化をもたらす。この反応は、任意に、US5,075,383(参照により本明細書に組み込まれる)に従ってエチレンコポリマーの剪断およびグラフト化を達成する混合条件で行われる。処理機器は、一般に、ポリマーの酸化を防止し、未反応の試薬およびグラフト反応の副生成物を排気するのを助けるために、窒素でパージされる。処理機器における滞留時間は、所望の程度のアシル化を提供し、排気によるアシル化コポリマーの精製を可能にするのに十分である。鉱化性または合成の潤滑油を、任意選択的に通気段階の後に処理機器に添加してアシル化コポリマーを溶解することができる。
【0025】
エチレン性不飽和カルボン酸材料をポリマー主鎖にグラフトするのに用いることができるフリーラジカル開始剤としては、過酸化物、ヒドロペルオキシド、ペルエステル、およびアゾ化合物、好ましくは約100℃より高い沸点を有しかつフリーラジカルを供給するためのグラフト化温度範囲内で熱分解するものが挙げられる。これらのフリーラジカル開始剤の代表は、アゾブチロニトリル、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ビス-tertブチルペルオキシドおよび2,5-ジメチルヘキサ-3-イン-2,5-ビス-tert-ブチルペルオキシドである。フリーラジカル開始剤は、反応混合物の重量に基づいて約0.005重量%~約1重量%の間の量で使用される。
【0026】
遊離基グラフト化法の代わりに、エチレン-オレフィンコポリマーとエチレン性不飽和カルボン酸試薬との反応を行うための当該技術分野において既知の他の方法、例えばハロゲン化反応、熱もしくは「エン(ene)」反応またはそれらの混合物を使用することができる。このような反応は、フリーラジカルおよび酸化副生成物の発生を回避するために不活性雰囲気下で約250℃~約400℃の温度で反応物を加熱することにより鉱油またはバルク中で都合よく行われる。エチレン-オレフィンコポリマーが不飽和を含む場合、「エン」反応が好ましいグラフト方法である。本開示によって望まれる、1000Mn当たり0.3~0.5のカルボキシル基の高グラフトレベルを達成するために、フリーラジカルグラフト反応による「エン」または熱グラフト反応を続けるまたは進行させることが必要であり得る。
【0027】
アミノシランの官能化
上記の段落のうちのいずれかで論じられているアシル化オレフィンコポリマーは、シリコーン含有化合物で官能化されて、アミノシランもしくはアミノシロキサンペンダント基または側基を提供する。これらのペンダント基または側基は、グラフト化アシル化部分を介してオレフィンコポリマー骨格に連結し、潤滑剤に有効量のシリコーンを提供するため、添加剤は、所望の粘度測定性能を提供するだけでなく、同時に低速のプレイグニッション事象を最小限に抑えるのに役立つ。一態様では、シリコーンは、コポリマー上のアミノシランペンダント基を介して提供され、アミノシランペンダント基は、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシロキサン、アミノアルキルポリシロキサン、アミノアリールシラン、アミノアリールシロキサン、アミノアリールオキシシラン、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせに由来し得る。他の態様では、主コポリマーまたはOCP骨格は、シリコーン原子を含まなくてもよい。
【0028】
1つのアプローチでは、シリコーン官能化多機能性オレフィンコポリマーは、上で論じられるアシル化オレフィンコポリマーと、アミノアルキルシラン、アミノアルキルシリキソン、アミノアルキルポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから選択されるアミノシランとの反応生成物である。別のアプローチでは、アミノシランは、以下の式I:
【化2】
(式中、Rは、C1~C6のアルキル基などのアルキル基であり、いくつかのアプローチでは、メチル基であり、R
1は、C1~C10のヒドロカルビル基などのアルキレンまたはヒドロカルビルリンカーであり、R
2は、C1~C10基などのアルキルまたはヒドロカルビル基であり、nは、ポリマーが約500~約2000g/モル、他のアプローチでは、約600~約1800、約800~約1400、または約800~約1200g/モルの数平均分子量を有するのに十分な整数である。)のアミノポリジアルキルシロキサンポリマーなどの任意のポリシロキサンに由来し得る。
【0029】
他のアプローチでは、シリコーン官能化は、ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-、またはポリアリールオキシル-シリコーン化合物などの他のアミノシラン化合物、例えば、3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、1-アミノ-2-(ジメチルエトキシシリル)プロパン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、1-[3-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチル]-1,1,3,3,3-ペンタエトキシ-1,3-ジシラプロパン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-2,2,4-トリメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルペンタメチルジシロキサン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせを介して提供され得る。
【0030】
例示的なアミノシラン官能化は、以下に示す反応スキームに従うことができる。
【化3】
本明細書で論じられるシリコーン化合物のうちのいずれも、この反応スキームを使用して適用することができる。
【0031】
多機能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、そのような添加剤を含む潤滑剤が約5~約200ppmのシリコーン、または他のアプローチでは、約10~約180ppmのシリコーンを有するように十分なシリコーンを含む。さらに他のアプローチでは、コポリマーは、潤滑剤に対して、少なくとも約5ppm、少なくとも約10ppm、少なくとも約20ppm、少なくとも約50ppm、または少なくとも約80ppmから約200ppm未満、約180ppm未満、約150ppm未満、約120ppm未満、または約100ppm未満のシリコーンの範囲の潤滑剤中のシリコーンの範囲を提供する。前述のように、シリコンは、オレフィンコポリマーの側鎖またはペンダント鎖で提供され、コポリマー骨格は、シリコンを含まない。この目的を達成するために、多機能性添加剤は、約0.028~約0.52重量パーセントのシリコーンを有し得、約3.3~約32.7の窒素に対するシリコーンの重量比を有し得、以下にさらに論じられるように任意に後処理する場合、約1.00~約27.55の窒素に対するシリコーンの重量比を有し得る。
【0032】
後処理
本明細書のシリコーン官能化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤はまた、当該技術分野において既知の様々な薬剤のうちのいずれかとの反応を介して、従来の方法によって任意に後処理され得る。これらの中には、アミノ化合物、ホウ素化合物、尿素、チオ尿素、チアジアゾールおよびその誘導体、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、無水物、ニトリル、エポキシド、環状カーボネート、亜鉛化合物、モリブデン化合物、およびリン化合物がある。例えば、米国特許第5,241,003号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる。ホウ素含有および/または亜鉛含有潤滑剤添加剤を調製するための方法を説明する追加の参考文献は、米国特許第3,163,603号および同第3,087,936号に記載されている。
【0033】
1つのアプローチでは、シリコーン官能化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、直鎖または分岐鎖のアルキルアミンまたはポリアミンなどの1つ以上のアミノ化合物で後処理される。いくつかのアプローチでは、アルキルアミンは、C1~C20の直鎖または分岐鎖のアミノまたはポリアミノ化合物であり得る。例としては、2-エチル-1-ヘキシルアミン、ビス-2-エチル-1-ヘキシルアミン、(3-メチルペンチル)アミン、6-メチル-1-ヘプチルアミン、1-エチル-N-ペンチルアミン、2-エチル-N-ブチルアミン、ジオクチルアミン、ジドデシルアミン、ジデシルアミン、tert-オクチルアミン、および1-エチルプロピルアミン、オクタデシルアミン、およびエイコシルアミン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。アミノ化合物で後処理した場合、オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、上で論じられるように、アミノ化合物の約0~約0.8重量パーセント、およびアミンに対するシリコーンの比を有し得る。後処理の例示的な反応スキームを以下に示す(本明細書で論じられるシリコーン化合物および/またはアミン化合物のうちのいずれかは、この反応スキームに従い得る)。
【化4】
【0034】
他のアプローチでは、およびホウ素で後処理された場合、後処理試薬として使用されるホウ素化合物は、窒素組成物の各モルに対して約0.1の原子割合のホウ素から使用される窒素の各原子割合に対して約20の原子割合のホウ素を提供する量の、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、およびホウ酸のエステルからなる群から選択することができる。ホウ素で後処理された添加剤は、ホウ酸塩分散剤の総重量に基づいて、約0.05~約2.0重量パーセント、または他のアプローチでは、約0.05~約0.7重量パーセントのホウ素を含有し得る。一実施形態では、添加剤を後処理するプロセスは、上記のようにアミン後処理を介してスクシンイミド生成物を形成し、次いで、スクシンイミド生成物をホウ酸などのホウ素化合物とさらに反応させることを含む。
【0035】
後処理試薬として使用されるカルボン酸は、飽和または不飽和のモノ-、ジ-、またはポリ-カルボン酸であり得る。カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびナフタル二酸(例えば、1,8-ナフタル二酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
後処理試薬として使用される無水物は、モノ-不飽和無水物(例えば、無水マレイン酸)、アルキルまたはアルキレン置換環状無水物(例えば、無水コハク酸または無水グルタミン酸)、および芳香族無水カルボン酸(無水ナフタル酸、例えば1,8-無水ナフタル酸を含む)からなる群から選択することができる。
【0037】
場合によっては、本明細書のオレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、1つを超える後処理剤で後処理され得る。例えば、コポリマーは、アミン、次いでホウ酸などのホウ素化合物、および無水マレイン酸および/または1,8-ナフタル酸無水物などの無水物で後処理され得る。コポリマーはまた、アミン、ホウ素化合物、次いで無水マレイン酸などの無水物で後処理され得る。さらに他の場合には、コポリマーはまた、エチレンカーボネート、ジメルカプトチアジアゾール、または三酸化モリブデンなどの他の従来の後処理試薬で後処理され得る。
【0038】
潤滑油組成物
本明細書に記載のシリコーン官能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤は、1つ以上のさらなる添加剤と組み合わせて大量の基油にブレンドされて、粘度測定性能の向上および低速のプレイグニッション事象の低減を実証する潤滑油組成物を生成し得る。本明細書の潤滑油組成物は、潤滑剤組成物の重量に基づいて、シリコーンおよび任意にアミン官能化オレフィンコポリマー粘度指数向上剤の約0.1重量パーセント~約15重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約10重量パーセント、または約3重量パーセント~約10重量パーセント、または約1重量パーセント~約6重量パーセント、または約7重量パーセント~約12重量パーセントを含み得る。
【0039】
基油:基油、または本明細書の潤滑油組成物に使用される潤滑粘度の基油は、任意の好適な基油または基油のブレンドから選択され得る。例として、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))Base Oil Interchangeability Guidelinesに指定される、グループI~Vの基油が挙げられる。これらの5つの基油のグループは、以下の通りである。
【表1】
【0040】
グループI、グループII、およびグループIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのグループV基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油のような天然に存在する油でもあり得る。グループIIIの基油は鉱油に由来するが、これらの流体が受ける酷烈な加工はそれらの物理的特性をPAOなどの一部の真の合成物と非常に類似したものにすることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油に由来する油は、業界では合成流体と呼ばれることがある。
【0041】
開示される潤滑油組成物に使用される基油は、鉱物油、動物油、植物油、合成油、またはそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製および再精製油、ならびにこれらの混合物に由来し得る。
【0042】
未精製油は、さらなる精製処理がほとんどなし、もしくはなしで、天然源、鉱物源、または合成源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る、1つ以上の精製ステップで処理されていることを除き、未精製油と類似である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などである。食用品質に精製された油は、有用である場合または有用でない場合がある。食用油は、ホワイトオイルとも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油またはホワイトオイルを含まない。
【0043】
再精製油はまた、再生油または再処理油としても知られている。これらの油は、同一のまたは類似のプロセスを使用する清製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を対象とする技術によってさらに処理される。
【0044】
鉱油は、掘削によってまたは植物および動物もしくはそれらの混合物から得られた油を含み得る。例えば、そのような油には、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、大豆油、および亜麻仁油、ならびに液体石油、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン-ナフテン混合系の種類の溶媒処理または酸処理鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油が含まれてもよいが、これらに限定されない。そのような油は、必要に応じて部分的または完全に水素化されてもよい。石炭または頁岩に由来する油も有用であり得る。
【0045】
有用な合成潤滑油としては、重合、オリゴマー化、もしくは内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマーもしくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(かかる材料は多くの場合アルファ-オレフィンと称される)、およびそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および相同体、またはそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化材料である。
【0046】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマーテトラヒドロフランが含まれる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成されてもよく、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってもよい。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュガス対液体合成手順だけでなく他のガス対液体油によって調製してもよい。
【0047】
潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよく、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。別の実施形態では、潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよく、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。
【0048】
本明細書の組成物における潤滑粘度の油の量は、性能添加剤の量の合計を100重量パーセントから差し引いた後に残る残量であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量パーセント超、約60重量パーセント超、約70重量パーセント超、約80重量パーセント超、約85重量パーセント超、約90重量パーセント超、または95重量パーセント超であり得る。
【0049】
いくつかのアプローチでは、好ましい基油または潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120を超える粘度指数、および約2~約8cStの約100℃における動粘度を有する。他のアプローチでは、潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120を超える粘度指数、および約4cStの約100℃における動粘度を有する。基油は、40%超、45%超、50%超、55%超、または90%超のCP(パラフィン系炭素含有量)を有し得る。基油は、5%未満、3%未満、または1%未満のCA(芳香族炭素含有量)を有し得る。基油は、60%未満、55%未満、50%未満、または50%未満、および30%超のCN(ナフテン系炭素含有量)を有し得る。基油は、2未満または1.5未満または1未満の、1環ナフテン対2~6環ナフテンの割合を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物はまた、以下で論じられるように、1つ以上のさらなる任意の添加剤を含み得る。
【0051】
リン含有化合物:本明細書の潤滑剤組成物は、流体に耐摩耗性の利点を付与し得る1つ以上のリン含有化合物を含み得る。1つ以上のリン含有化合物は、潤滑油組成物の約0重量パーセント~約15重量パーセント、または約0.01重量パーセント~約10重量パーセント、または約0.05重量パーセント~約5重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約3重量パーセントの範囲の量で、潤滑油組成物中に存在し得る。リン含有化合物は、最大5000ppmのリン、または約50~約5000ppmのリン、または約300~約1500ppmのリン、または最大600ppmのリン、または最大900ppmのリンを潤滑剤組成物に提供し得る。
【0052】
1つ以上のリン含有化合物としては、金属含有リン含有化合物および/または無灰リン含有化合物が挙げられる。好適なリン含有化合物の例としては、チオホスフェート、ジチオホスフェート、金属ホスフェート、金属チオホスフェート、金属ジチオホスフェート、ホスフェート、リン酸エステル、ホスフェートエステル、ホスファイト、ホスホネート、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはそれらのアミド塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第0612839号により完全に記載されている。
【0053】
ホスホネートおよびホスファイトという用語は、潤滑剤業界ではしばしば互換的に使用されることに注意すべきである。例えば、ジブチル水素ホスホネートは、ジブチル水素ホスファイトと称されることがある。本発明の潤滑剤組成物が、ホスファイトまたはホスホネートのいずれかと称されることがあるリン含有化合物を含むことは、本発明の範囲内である。
【0054】
上記のリン含有化合物のいずれかにおいて、化合物は、約5~約20重量パーセントのリン、または約5~約15重量パーセントのリン、または約8~約16重量パーセントのリン、または約6~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0055】
上記の分散剤と組み合わせてリン含有化合物を潤滑剤組成物に含めると、予想外に、低い摩擦係数などの正の摩擦特性が潤滑剤組成物に付与される。本発明の効果は、リン含有化合物が単独で流体に負の摩擦特性を付与するいくつかの場合においてよりさらに顕著である。これらの摩擦低減が比較的不良なリン含有化合物を本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせられると、潤滑剤組成物は、改善された、すなわち、より低い摩擦係数を有する。すなわち、本明細書の分散剤は、比較的不良な摩擦係数を有するリン含有化合物を含有する流体を、改善された摩擦特性を有する流体に変換する傾向がある。
【0056】
リン含有化合物と、本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と、を含む潤滑組成物の摩擦特性のこの改善は、驚くべきことである。なぜならば、流体の摩擦特性が、リン含有化合物と、上記のコポリマーの指定の特性を有していない、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤およびオレフィンコポリマースクシンイミド分散剤を含む他のタイプの分散剤と、の組み合わせよりも改善されているからである。
【0057】
本明細書の分散剤と組み合わせると潤滑組成物に改善された摩擦特性を付与するリン含有化合物の1つのタイプは、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物、例えば亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物(ZDDP)であるがこれに限定されない。リン含有化合物が、金属チオホスフェートまたは金属ジチオホスフェート、例えばZDDPであるとき、それは、5~約10重量パーセントの金属、約6~約9重量パーセントの金属、約8~18重量パーセントの硫黄、約12~約18重量パーセントの硫黄、または約8~約15重量パーセントの硫黄を含み得る。好適な金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含むことができ、その金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0058】
リン含有化合物がZDDPであるとき、ZDDP上のアルキル基は、一級アルコール、二級アルコール、フェノール、および/またはそれらの混合物に由来し得る。例えば、ZDDPのすべてのアルキル基は、メチルイソブチルカルビノールなどの二級アルコールから、またはメチルイソブチルカルビノールとイソプロピルアルコールなどの二級アルコールの混合物に由来し得る。場合によっては、ZDDPのアルキル基は、2-エチルヘキサノール、イソブタノール、およびイソプロパノールなどの一級アルコールと二級アルコールとの混合物に由来し得る。例えば、一実施形態では、アルキル基の約20%は、2-エチルヘキサノールに由来し、アルキル基の約40%は、イソブタノールに由来し、アルキル基の約40%は、イソプロパノールに由来する。他の実施形態では、ZDDP上のすべてのアルキル基は、2-エチルヘキサノールなどの一級アルコールに由来し得る。ZDDPは、約6~約10重量パーセントのリン、約6~約9重量パーセントの亜鉛、および約12~約18重量パーセントの硫黄を含み得る。
【0059】
かかるZDDPの例としては、亜鉛O,O-ジ(C1-14-アルキル)ジチオホスフェート;亜鉛(混合O,O-ビス(sec-ブチルおよびイソオクチル))ジチオホスフェート;亜鉛-O,O-ビス(分岐鎖および直鎖C3-8-アルキル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(2-エチルヘキシル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(混合イソブチルおよびペンチル)ジチオホスフェート;亜鉛混合O,O-ビス(1,3-ジメチルブチルおよびイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジブチルジチオホスフェート;亜鉛混合O,O-ビス(2-エチルヘキシルおよびイソブチルおよびイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソデシルジチオホスフェート;亜鉛O-(6-メチルヘプチル)-O-(1-メチルプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O-(2-エチルヘキシル)-O-(イソブチル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソプロピルジチオホスフェート;亜鉛(混合ヘキシルおよびイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛(混合O-(2-エチルヘキシル)とO-イソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジペンチルジチオホスフェート;亜鉛O-(2-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェート;および亜鉛O-(3-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
リン含有化合物は、式:
【化5】
(式中、式XIIIのRは、独立して、1~18個の炭素原子、または2~12個の炭素原子、または約3~8個の炭素原子を含有する。)を有し得る。例えば、Rは、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであり得る。上記式における各R基の炭素原子の数は、一般に、約3以上、約4以上、約6以上、または約8以上である。各R基は、3~8個の炭素が平均値となり得る。R基の炭素原子の総数は、5~約72、または12~約32であり得る。式XIIIにおいて、Aは、金属、例えば、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、またはそれらの組み合わせである。リン含有化合物が式XIIIに示した構造を有するとき、化合物は、約6~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明のリン含有化合物は、式XIIIの構造を有し、式中、Aは、亜鉛であり、化合物は、70~800ppmのリンを潤滑剤組成物に付与する。
【0062】
当該技術分野において、硫黄-亜鉛配位配列のより正確な表現は、以下に示した対称配列によって表すことができ、本明細書で使用される式XIIIの化学構造は、以下に示した式XIII’と交換可能であることが理解される。式XIIIおよびXIII’に示した構造は、モノマー、ダイマー、トライマー、またはオリゴマー(例えば、テトラマー)として存在し得ることも理解される。
【化6】
【0063】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、通常は、1つ以上のアルコールまたはフェノールとP2S5とを反応させて、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を最初に形成し、次いで形成されたDDPAを酸化亜鉛などの金属化合物で中和することによって、既知の技術に従って調製することができる。例えば、DDPAは、一級アルコールと二級アルコールとの混合物を、P2S5と反応させることによって作製することができる。この場合、DDPAは、一級アルコールおよび二級アルコールの両方に由来するアルキル基を含む。代替的に、1つのDDPA上のアルキル基は、二級アルコールに完全に由来し、別のDDPA上のアルキル基は、一級アルコールに完全に由来する、複数のDDPAを調製することができる。次いで、DDPAを一緒にブレンドして、一級アルコールおよび二級アルコールの両方に由来するアルキル基を有するDDPAの混合物を形成する。
【0064】
金属塩を作製するために、任意の塩基性または中性金属化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応において過剰の塩基性金属化合物を使用するためにしばしば過剰の金属を含有する。
【0065】
本明細書のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせたときに、改善された摩擦特性を潤滑組成物に対して付与する別のタイプのリン含有化合物は、無灰(金属を含まない)リン含有化合物である。
【0066】
いくつかの実施形態では、無灰リン含有化合物は、ジアルキルジチオホスフェートエステル、アミル酸ホスフェート、ジアミル酸ホスフェート、ジブチル水素ホスフェート、ジメチルオクタデシルホスフェート、それらの塩、およびそれらの混合物であり得る。
【0067】
無灰リン含有化合物は、式:
【化7】
(式中、R1は、SまたはOであり、R2は、-OR”、-OH、または-R”であり、R3は、-OR”、-OH、またはSR’’’C(O)OHであり、R4は、-OR”であり、R’’’は、C1~C3の分岐鎖または直鎖アルキル鎖であり、R”は、C1~C18のヒドロカルビル鎖である。)を有し得る。リン含有化合物が式XIVに示した構造を有するとき、化合物は、約8~約16重量パーセントのリンを有し得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Sであり、R2は、-OR”であり、R3は、S R’’’COOHであり、R4は、-OR”であり、R’’’は、C3分岐アルキル鎖であり、R”は、C4であり、リン含有化合物は、80~900ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0069】
別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-OHであり、R3は、-OR”または-OHであり、R4は、-OR”であり、R”は、C5であり、リン含有化合物は、80~1500ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0070】
さらに別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、OR”であり、R3は、Hであり、R4は、-OR”であり、R”は、C4であり、1つ以上のリン含有化合物は、80~1550ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0071】
他の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-R”であり、R3は、-OCH3または-OHであり、R4は、-OCH3であり、R”は、C18であり、1つ以上のリン含有化合物は、80~850ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0072】
いくつかの実施形態では、リン含有化合物は、式XIVに示した構造を有し、約80~約4500ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する。他の実施形態では、リン含有化合物は、約150~約1500ppmのリン、または約300~約900ppmのリン、または約800~1600ppmのリン、または約900~約1800ppmのリンを、潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0073】
潤滑剤組成物は、リン不含化合物である追加の耐摩耗剤も含み得る。かかる耐摩耗剤の例としては、ホウ酸エステル、ホウ酸エポキシド、チオカルバメート化合物(例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、およびそれらの混合物)、硫化オレフィン、アジピン酸トリデシル、チタン化合物、およびヒドロキシルカルボン酸の長鎖誘導体、例えばタルトレート誘導体、タルトラミド、タルトリミド、シトレート、およびそれらの混合物が挙げられる。好適なチオカルバメート化合物は、モリブデンジチオカルバメートである。好適なタルトレート誘導体またはタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得るアルキル-エステル基を含有し得る。タルトレート誘導体またはタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得るアルキル-エステル基を含有し得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトラートを含み得る。追加の耐摩耗剤は、潤滑油組成の約0重量パーセント~約15重量パーセント、または約0.01重量パーセント~約10重量パーセント、または約0.05重量パーセント~約5重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約3重量パーセントを含む範囲で存在し得る。
【0074】
洗浄剤:潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の中性、低塩基性、または過塩基性洗浄剤、およびそれらの混合物をさらに含み得る。好適な洗浄剤基材としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリクサレート、サリキサレート、サリシレート、カルボン酸、リン酸、モノおよび/もしくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な洗浄剤およびその調製方法は、米国特許第7,732,390号およびそこに引用されている参考文献を含む多数の特許公報に、より詳細に記載されている。洗浄剤基材は、限定するものではないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、亜鉛、またはそれらの混合物などのアルカリまたはアルカリ土類金属によって塩化され得る。
【0075】
好適な洗浄剤は、石油スルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩またはマグネシウム塩、および長鎖モノまたはジアルキルアリールスルホン酸を含むことができ、そのアリール基はベンジル、トリル、およびキシリルである。他の好適な洗浄剤の例としては、洗浄剤:すなわち、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、カルシウムスルホネート、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリシレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、マグネシウムサリシレート、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、ナトリウムスルホネート、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、ナトリウムサリシレート、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールの低塩基性/中性および過塩基性のバリエーションが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
洗浄剤は、約0重量パーセント~約10重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約8重量パーセント、または約1重量パーセント~約4重量パーセント、または約4重量パーセント超~約8重量パーセントで存在し得る。他のアプローチでは、洗浄剤は、約450~約2200ppmの金属を潤滑剤組成物に提供し、かつ、約0.4~約1.5重量パーセントの石鹸含有量を潤滑剤組成物に送達する量で、潤滑油組成物において提供することができる。他のアプローチでは、洗浄剤は、約450~約2200ppmの金属を潤滑剤組成物に提供し、かつ、潤滑剤組成物に約0.4~約0.7重量パーセントの石鹸含有量を送達する量である。
【0077】
過塩基性洗浄剤添加剤は、当該技術分野において既知であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属過塩基性洗浄剤添加剤であり得る。かかる洗浄剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0078】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超えている、金属塩、例えば、スルホネート、カルボキシレート、サリシレート、および/またはフェネートの金属塩に関する。かかる塩は、100%超の変換レベルを有し得る(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含み得る)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。標準塩または中性塩では、MRは1であり、過塩基性塩では、MRは1より大きい。それらは一般に、過塩基性塩、過剰塩基性塩、または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であり得る。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される単位mg KOH/gの全アルカリ価を表すために使用される。潤滑油組成物の過塩基性洗浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、または約250mgKOH/グラム以上、または約350mgKOH/グラム以上、または約375mgKOH/グラム以上、または約400mgKOH/グラム以上の全アルカリ価(TBN)を有し得る。過塩基性洗浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属対基質比を有し得る。
【0080】
好適な過塩基性洗浄剤の例としては、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性マグネシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性マグネシウムサリチレート、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、または過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
過塩基性洗浄剤は、潤滑油組成物中の総洗浄剤の少なくとも97.5重量パーセントを含み得る。いくつかの実施形態では、潤滑油中の総洗浄剤の少なくとも96重量パーセント、または少なくとも94重量パーセント、または少なくとも92重量パーセント、または少なくとも90重量パーセント、または少なくとも88重量パーセント、または少なくとも80重量パーセントは、過塩基性洗浄剤である。
【0082】
低塩基性/中性洗浄剤は、最大で175mgKOH/g、または最大で150mgKOH/gのTBNを有する。低塩基性/中性洗浄剤は、カルシウムまたはマグネシウム含有洗浄剤を含み得る。好適な低塩基性/中性洗浄剤の例としては、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、およびマグネシウムサリシレートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、低塩基性/中性洗浄剤は、カルシウム含有洗浄剤および/またはカルシウム含有洗浄剤の混合物である。
【0083】
低塩基性/中性洗浄剤は、潤滑油組成物中に、少なくとも2.5重量パーセントの総洗浄剤を含み得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物中の総洗浄剤の少なくとも4重量パーセント、または少なくとも6重量パーセント、または少なくとも8重量パーセント、または少なくとも10重量パーセント、または少なくとも12重量パーセント、または少なくとも20重量パーセントが、低塩基性/中性洗浄剤であり、これは、任意に、低塩基性/中性カルシウム含有洗浄剤であり得る。
【0084】
ある特定の実施形態では、1つ以上の低塩基性/中性洗浄剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約50~約1000重量ppmのカルシウムまたはマグネシウムを潤滑油組成物に提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の低塩基性/中性カルシウム含有洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、75~800重量ppm未満、または100~600重量ppm、または125~500重量ppmのカルシウムまたはマグネシウムを潤滑剤組成物に提供する。
【0085】
極圧剤:本開示の潤滑剤組成物はまた、少なくとも1つの極圧剤も含有し得る。極圧剤は、硫黄を含有し得、少なくとも12重量パーセントの硫黄を含有し得る。いくつかの実施形態では、潤滑油に添加される極圧剤は、少なくとも350ppmの硫黄、500ppmの硫黄、760ppmの硫黄、約350~約2,000ppmの硫黄、約2,000~約30,000ppmの硫黄、または約2,000~約4,800ppmの硫黄、または約4,000~約25,000ppmの硫黄を、潤滑剤組成物に対して提供するのに十分である。
【0086】
多種多様な硫黄含有極圧剤が、好適であり、硫化動物または植物の脂肪または油、硫化動物または植物の脂肪酸エステル、リンの三価または五価酸の完全または部分的にエステル化されたエステル(例えば、米国特許番第2,995,569号、同第3,673,090号、同第3,703,504号、同第3,703,505号、同第3,796,661号、同第3,873,454号、同第4,119,549号、同第4,119,550号、同第4,147,640号、同第4,191,659号、同第4,240,958号、同第4,344,854号、同第4,472,306号、および同第4,711,736号を参照されたい)、ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第2,237,625号、同第2,237,627号、同第2,527,948号、同第2,695,316号、同第3,022,351号、同第3,308,166号、同第3,392,201号、同第4,564,709号、および英国特許第1,162,334号を参照されたい)、官能基置換されたジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第4,218,332号を参照されたい)、およびポリスルフィドオレフィン生成物(例えば、米国特許第4,795,576号を参照されたい)。他の好適な例としては、硫化オレフィン、硫黄含有アミノ複素環化合物、5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、S3およびS4スルフィドの大部分を有するポリスルフィド、硫化脂肪酸、硫化分岐鎖オレフィン、有機ポリスルフィド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、極圧剤は、潤滑組成物において、最大約3.0重量パーセントまたは最大約5.0重量パーセントの量で存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.05重量パーセント~約0.5重量パーセント存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.1重量パーセント~約3.0重量パーセント存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.6重量パーセント~約1重量パーセントの量で存在する。さらに他の実施形態では、洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約1.0重量パーセントの量で存在する。
【0088】
極圧剤の1つの好適なクラスは、式Ra-Sx-Rbによって表される1つ以上の化合物で構成されるポリスルフィドであり、式中、RaおよびRbは、ヒドロカルビル基であり、その各々は、1~18個の炭素原子を含有してもよく、他のアプローチでは、3~18個の炭素原子を含有してもよく、xは、2~8の範囲であってもよく、典型的には2~5の範囲であってもよく、特に3であってもよい。いくつかのアプローチでは、xは、3~5の整数であり、xの約30~約60パーセントは、3または4の整数である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキルなどの多種多様なタイプであり得る。ジ-tert-ブチルトリスルフィドなどの三級アルキルポリスルフィド、およびジ-tert-ブチルトリスルフィドを含む混合物(例えば、主にまたは完全にトリ-、テトラ-、およびペンタスルフィドから構成された混合物)を使用することができる。他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例としては、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、およびジベンジルポリスルフィドが挙げられる。
【0089】
極圧剤の別の好適なクラスは、イソブテンなどのオレフィンを硫黄と反応させることによって作製された硫化イソブテンである。硫化イソブテン(SIB)、特に硫化されたポリイソブチレンは、典型的には、約10~約55重量%、望ましくは約30~約50重量%の硫黄含有量を有する。多種多様な他のオレフィンまたは不飽和炭化水素、例えばイソブテンダイマーまたはトライマーを使用して、硫化オレフィン極圧剤を形成することができる。硫化オレフィンを調製するための様々な方法が先行技術において開示されてきた。例えば、Myersに与えられた米国特許第3,471,404号、Papayらに与えられた米国特許第4,204,969号、Zaweskiらに与えられた米国特許第4,954,274号、DeGoniaらに与えられた米国特許第4,966,720号、Horodyskyらに与えられた米国特許第3,703,504号を参照されたい。これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
前述の特許に開示されている方法を含む硫化オレフィンの調製するための方法は、「付加物」と典型的には称される材料の形成を含み、オレフィンをハロゲン化硫黄と、例えば一塩化硫黄と、反応させる。次いで、その付加物を硫黄源と反応させて、硫化オレフィンを提供する。硫化オレフィンの品質は、一般に、例えば、粘度、硫黄含有量、ハロゲン含有量、銅腐食試験重量損失などの様々な物理的特性によって測定される。米国特許第4,966,720号は、潤滑油における極圧添加剤として有用な硫化オレフィンと、それらの調製のための2段階反応と、に関する。
【0091】
摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上の摩擦調整剤、例えば、有機無灰窒素フリー摩擦調整剤、有機無灰アミン系摩擦調整剤、無機摩擦調整剤、およびそれらの混合物から選択される摩擦調整剤を含有し得る。好適な摩擦調整剤としては、金属含有摩擦調整剤および金属フリー摩擦調整剤も挙げることができ、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル、グリセロールの部分エステル、例えば、グリセロールモノオレエート、脂肪ホスファイト、脂肪エポキシド、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に存在する植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールのエステルまたは部分エステル、1つ以上の脂肪族または芳香族カルボン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。摩擦調整剤は、任意に、約0重量パーセント~約10重量パーセント、または約0.01重量パーセント~約8重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約4重量パーセントの範囲で本明細書の潤滑油組成物に含まれ得る。
【0092】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得、飽和または不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルはモノエステル、またはジエステル、または(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪アミン、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであり得る。
【0093】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属を含まない)、窒素を含まない有機摩擦調整剤が含まれ得る。そのような摩擦調整剤には、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含んでもよく、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素を含まない摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、およびトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0094】
アミン性摩擦調整剤は、アミンまたはポリアミンを含み得る。そのような化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖、飽和、不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有し得る。それらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0095】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸またはモノ-、ジ-、もしくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用し得る。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
好適な摩擦調整剤としては、グリセリド、脂肪酸、グリセロールモノオレエート、脂肪アルキルタルトレート誘導体、イミダゾリン、アルコキシアミン、アルキル脂肪アミン、アシルグリシン、セリウムナノ粒子、チタン含有化合物、モリブデン含有化合物、およびそれらの混合物が挙げられる。チタン含有化合物は、チタンアルコキシドとネオデカン酸との反応生成物であり得る。セリウムナノ粒子は、約150℃~約250℃の温度で、水および有機溶媒の実質的な不在下における、有機セリウム塩、脂肪酸、およびアミンの反応生成物から得ることができる。セリウムナノ粒子は、約10ナノメートル未満の粒径を有し得る。好適な脂肪酸は、C10~C30飽和、一価不飽和、または多価不飽和カルボン酸を含む脂肪酸であり得るが、アミンは、C8~C30飽和または不飽和アミンから選択される脂肪族アミンである。
【0097】
いくつかのアプローチでは、摩擦調整剤は、式
【化8】
(式中、各R20は、独立して、Hおよび-C(O)R”’からなる群から選択され、式中、R”’は、3~23個の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキル基であり得る。)を有するグリセリドであり得る。
【0098】
摩擦調整剤はまた、式
【化9】
(式中、R21は、約10~約30個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基であり、R22は、約2~約4個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキル基である。)を有するイミダゾリンであり得る。
【0099】
摩擦調整剤はまた、N-脂肪族ヒドロカルビル置換ジエタノールアミンを含むアルコキシアミンであってもよく、N-脂肪族ヒドロカルビル置換基は、アセチレン性不飽和を含まず、かつ14~20個の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0100】
摩擦調整剤は、さらに、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、およびそれらの混合物から選択される脂肪族一級脂肪族アミンを含むアルキル脂肪族アミンであり得る。
【0101】
摩擦調整剤は、アシルグリシンであり、かつ式
【化10】
(式中、R23は、約8~約22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和もしくは部分飽和ヒドロカルビルであり、R24は、水素、1~8個の炭素原子を有するヒドロカルビル、または1個以上のヘテロ原子を含有するC1~C8ヒドロカルビル基である)を有し得る。
【0102】
酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物は、任意に、1つ以上の酸化防止剤も含有し得る。酸化防止剤化合物は、既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの混合物が含まれる。酸化防止剤化合物は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0103】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基および/または三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135または2,6-ジ-tert-ブチルフェノールおよびアルキルアクリレートに由来する付加生成物を含み得、アルキル基は、約1~約18個、または約2~約12個、または約2~約8個、または約2~約6個、または約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(登録商標)4716を含み得る。
【0104】
有用な酸化防止剤としては、ジアリールアミンおよびフェノールが挙げられ得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、最大約5重量パーセントを提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、潤滑剤組成物に基づいて、約0.3~約1.5重量パーセントのジアリールアミンと約0.4~約2.5重量パーセントのフェノールとの混合物であり得る。
【0105】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物、ならびにそれらのダイマー、トライマー、およびテトラマーは特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物およびブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0106】
別のクラスの硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油または動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸およびそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはそれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合し得る。
【0107】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量パーセント~約20重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約10重量パーセント、または約1重量パーセント~約5重量パーセントの範囲で存在し得る。
【0108】
ホウ素含有化合物:本明細書の潤滑油組成物は、任意に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有し得る。ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ボレートエステル、ホウ酸化脂肪アミン、ホウ酸化エポキシド、ホウ酸化洗浄剤、およびホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑剤組成物に、最大約3000ppm、約5ppm~約2000ppm、約15ppm~約600ppm、約20ppm~約400ppm、約70ppm~約300ppmのホウ素レベルを提供するのに十分な量で使用することができる。
【0109】
分散剤:潤滑剤組成物中に含有される追加の分散剤としては、分散させる粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖が挙げられ得るが、これに限定されない。典型的には、分散剤は、多くの場合架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミド、またはエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,634,515号、同第3,697,574号、および同第3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載の無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載のアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、および同第5,627,259号に記載のコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載のポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、追加の分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸、オレフィン無水マレイン酸コポリマーに由来し得る。一例として、追加の分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。別の実施形態において、追加の分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフトされる無水物に由来し得る。別の追加の分散剤は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであり得る。
【0111】
存在する場合、追加の分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約10重量パーセントを提供するのに十分な量で使用することができる。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量パーセント~約10重量パーセント、または約0.1重量パーセント~約10重量パーセント、または約3重量パーセント~約8重量パーセント、または約1重量パーセント~約6重量パーセントであり得る。
【0112】
モリブデン含有化合物:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有し得る。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、またはそれらの混合物の機能的性能を有し得る。
【0113】
モリブデン含有成分の例としては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはそれらの混合物が挙げられる。代替的に、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントンモリブデン、モリブデン硫化物、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはこれらの混合物を含み得る。モリブデン硫化物は二硫化モリブデンを含む。モリブデンジスルフィドは、安定な分散剤の形態であり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデン化合物のアミン塩、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0114】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、およびMolyvan(登録商標)855など、ならびにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、およびS-710などの商標名で販売されている市販の材料、およびそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,650,381号、米国特許第RE37,363E1号、米国特許第RE38,929E1号、および米国特許第RE40,595E1号に記載されている。
【0115】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブレート、ナトリウムモリブレート、カリウムモリブレート、および他のアルカリ金属モリブレートおよび他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブレート、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデンまたは類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物には、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897に記載されている塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によるモリブデンが提供され得る。
【0116】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物およびそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、有機基が化合物を油中に可溶性または分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲にあり、非化学量論値を含む。すべての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子などの、少なくとも合計21個の炭素原子が存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、米国特許第6,723,685号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0117】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、または約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0118】
遷移金属含有化合物:本明細書の潤滑剤組成物はまた、任意に、遷移金属含有化合物またはメタロイドを含有し得る。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
一実施形態では、遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、堆積制御添加剤として機能することができるか、または複数の機能を有することができる。一実施形態では、遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。開示される技術において、油溶性物質に使用され得るまたは油溶性物質の調製に使用され得るチタンを含む化合物は、酸化チタン(IV)、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシドなどのチタン(IV)アルコキシド、およびチタンフェネートを含むがこれに限定されない他のチタン化合物または錯体、チタン(IV)2-エチル-1-3-ヘキサンジオエートまたはクエン酸チタンまたはオレイン酸チタンなどのチタンカルボン酸塩、およびチタン(IV)(トリエタノールアミナート)イソプロポキシドである。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)およびチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、または一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコールおよびグリコールに由来し得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有するダイマーまたはオリゴマー形態で存在し得る。かかるチタン材料は、市販されているか、または当業者には明らかな適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に応じて固体または液体として室温で存在し得る。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供され得る。
【0120】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。かかる材料は、チタンアルコキシドと例えばアルケニル-(またはアルキル)無水コハク酸のようなヒドロカルビル置換無水コハク酸、との間にチタン混合無水物を形成することによって調製することができる。得られたチタン酸スクシネート中間体は、直接使用してもよいか、または、(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわちアルケニル-(またはアルキル-)無水コハク酸およびポリアミン、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミンとの反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤、またはそれらの混合物などの、多くの材料のいずれかと反応させてもよい。代替的に、チタン酸コハク酸塩中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコールもしくはポリオール、または脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用されてもよいか、または上記のようにコハク酸分散剤とさらに反応させてもよい。一例として、テトライソプロピルチタネートを、140~150℃において5~6時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸と反応して、チタン変性分散剤または中間物を提供することができる。その得られた材料を、ポリイソブテン置換無水コハク酸およびポリエチレンポリアミン由来のコハク酸イミド分散剤とさらに反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成させることができる。
【0121】
他のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドおよびC6~C25カルボン酸の反応生成物であり得る。反応生成物は、以下の式:
【化11】
(式中、p+q=4であり、qは、1~3の範囲であり、R19は、1~8個の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、R16は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R17およびR18は、同じかもしくは異なっていて、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)によって表され得るか、または以下の式:
【化12】
(式XXIV中、xは、0~3の範囲であり、R16は、約6~約25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される。R17およびR18は、同じかもしくは異なっていて、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、ならびに/またはR19は、H、もしくはC6~C25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される。)によって表され得る。好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0122】
ある実施形態では、油溶性チタン化合物は、0~約3000重量ppmのチタン、または25~約1500重量ppmのチタン、または約35重量ppm~500重量ppmのチタン、または約50ppm~約300ppmを提供する量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0123】
粘度指数向上剤:上で論じられるシリコーン官能化粘度指数向上剤に加えて、本明細書の潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の追加の粘度指数向上剤も含み得る。好適な粘度指数向上剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数向上剤は、星型ポリマーを含み得、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017A1号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
本明細書の潤滑油組成物は、任意に、粘度指数向上剤に加えて、または粘度指数向上剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数向上剤も含有し得る。好適な粘度指数向上剤には、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが含まれ得る。
【0125】
粘度指数向上剤および/またはシリコーン官能性粘度指数向上剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量パーセント~約20重量パーセント、約0.1重量パーセント~約15重量パーセント、約0.1重量パーセント~約12重量パーセント、または約0.5重量パーセント~約10重量パーセント、約3重量パーセント~約20重量パーセント、約3重量パーセント~約15重量パーセント、約5重量パーセント~約15重量パーセント、または約5重量パーセント~約10重量パーセントであり得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、粘度指数向上剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、または約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリオレフィンまたはオレフィンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数向上剤は、約40,000~約500,000、約50,000~約200,000、または約50,000~約150,000の数平均分子量を有する水素化スチレン/ブタジエンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数向上剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、または約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリメタクリレートである。
【0127】
他の任意の添加剤:他の添加材は、潤滑剤組成物に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択され得る。さらに、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多機能性であり得、本明細書に記載される機能に加えて、またはそれ以外の機能を提供し得る。他の添加剤は、本開示の特定の添加剤に加えてもよく、かつ/または、金属不活性剤、粘度指数向上剤、洗浄剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、錆抑制剤、分散剤、分散剤粘度指数向上剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0128】
好適な金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール誘導体(典型的にトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズイミダゾール、または2-アルキルジチオベンゾチアゾール;エチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートならびに任意選択的に酢酸ビニルのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤が含まれ得る。
【0129】
好適な泡抑制剤には、シロキサンなどのケイ素系化合物が含まれる。
【0130】
好適な流動点降下剤には、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物が含まれ得る。注入点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量パーセント~約1重量パーセント、約0.01重量パーセント~約0.5重量パーセント、または約0.02重量パーセント~約0.04重量パーセントを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0131】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、または化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、ならびにトール油脂肪酸、オレイン酸、およびリノール酸から生成されたものなどのダイマーおよびトライマー酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食防止剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、およびテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。他の有用な種類の酸性腐食防止剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、防錆剤を含まない。
【0132】
さび防止剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量パーセント~約5重量パーセント、約0.01重量パーセント~約3重量パーセント、約0.1重量パーセント~約2重量パーセントを提供するのに十分な量で使用することができる。
【0133】
潤滑剤組成物は、腐食防止剤も含み得る(他の言及した成分のいくつかは銅腐食防止特性も有し得ることに留意すべきである)。好適な銅腐食防止剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミンおよびエトキシル化アルコール、イミダゾリン、モノアルキル、およびジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0134】
チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、および2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。一実施形態では、潤滑剤組成物は、1,3,4-チアジアゾール、例えば、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールを含む。
【0135】
発泡防止剤/界面活性剤もまた、本発明による流体に含まれ得る。そのような用途のための様々な薬剤が知られている。エチルアクリレートとヘキシルエチルアクリレートとのコポリマー、例えば、Solutiaから入手可能なPC-1244を使用することができる。他の実施形態では、4%DCFなどのシリコーン流体が含まれ得る。発泡防止剤の混合物もまた、潤滑剤組成物に存在し得る。
【0136】
好適な完成した潤滑剤組成物は、以下の表1に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。
【表2】
【0137】
本明細書のコポリマーを含む完成油組成物に使用される好適なDIパッケージは、以下の表1Bの成分を含み得る。
【表3】
【0138】
上記の各成分の百分率は、潤滑油組成物の合計最終重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載された組成物を配合する際に使用される添加剤は、個別にまたは様々な副次的な組み合わせで基油にブレンドされてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時にブレンドすることが好適であってもよい。
【0139】
完全に配合された潤滑剤は、その配合物において必要とされるある性能および/または特性を一般に供給する分散剤/抑制剤パッケージまたはDIパッケージと本明細書で称されることがある添加剤パッケージを慣用的に含有する。好適なDIパッケージは、例えば、米国特許第5,204,012号および同第6,034,040号に例えば記載されている。添加剤パッケージに含まれる添加剤のタイプの中には、分散剤、シール膨潤剤、酸化防止剤、泡抑制剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化剤、粘度指数向上剤などがあり得る。これらの成分のいくつかは、当業者によく知られており、一般に、本明細書に記載の添加剤および組成物と共に従来の量で使用される。
【0140】
本説明の潤滑剤、成分の組み合わせ、または個々の成分は、様々なタイプの内燃エンジンにおいて潤滑剤としての使用に好適であり得る。好適なエンジンのタイプとしては、ヘビーデューティディーゼル、乗用車、ライトデューティディーゼル、中速ディーゼル、または船舶用エンジンが挙げられ得るが、これらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジン、またはこれらの混合物であり得る。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであり得る。ガソリンエンジンは、スパーク点火エンジンであり得る。内燃エンジンはまた、電気またはバッテリ電源と組み合わせて使用し得る。このように構成されたエンジンは、一般的にハイブリッドエンジンとして知られている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、またはロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンには、船舶用ディーゼルエンジン(例えば内陸船舶)、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、ならびにオートバイ、自動車、機関車、およびトラックエンジンが含まれる。
【0141】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、または硫酸灰分(ASTM D-874)含有量にかかわらず、いずれのエンジン潤滑剤にも好適であってもよい。いくつかのアプローチでは、本明細書のエンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.3重量%以下、または約0.2重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量パーセント~約0.5重量パーセント、または約0.01重量パーセント~約0.3重量パーセントの範囲であり得る。本明細書のエンジン油潤滑剤のリン含有量は、約0.2重量パーセント以下、または約0.1重量パーセント以下、または約0.085重量パーセント以下、または約0.08重量パーセント以下、またはさらには約0.06重量パーセント以下、約0.055重量パーセント以下、または約0.05重量パーセント以下であり得る。一実施形態では、リン含有量は、約50ppm~約1000ppm、または約325ppm~約850ppm、または最大600ppmであり得る。本明細書のエンジン油潤滑剤の総硫酸灰分は、約2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.1重量%以下、または約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下であり得る。一実施形態では、硫酸灰分は、約0.05重量パーセント~約0.9重量パーセント、または約0.1重量パーセント、または約0.2重量パーセント~約0.45重量パーセントであり得る。
【0142】
さらに、本説明の潤滑剤は、1つ以上の業界仕様要件、例えば、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4 Plus、CI-4、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6、JASO DL-1、低SAPS、中SAPS、または従来の装置製造仕様、例えば、DexosTM 1、DexosTM 2、MB-Approval 229.51/229.31、VW 502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、BMW Longlife-04、Porsche C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、または本明細書に言及されていない任意の過去もしくは将来の乗用車用モーターオイル仕様またはヘビーデューティディーゼルオイル仕様を満たすのに好適であり得る。乗用車用モーターオイル用途のためのいくつかの実施形態では、完成した流体中のリンの量は、1000ppm以下、または900ppm以下、または800ppm以下、または600ppm以下である。ヘビーデューティディーゼル用途のためのいくつかの実施形態では、完成した流体中のリンの量は、1200ppm以下、または1000ppm以下、または900ppm以下、または800ppm以下である。
【0143】
特定の用途では、本開示の潤滑剤はまた、自動変速機用流体、無段変速機用流体、手動変速機用流体、ギアオイル、パワートレイン部品に関連する他の流体、オフロード用流体、パワーステアリング用流体、風力タービンで使用される流体、コンプレッサー、作動流体、スライドウェイ流体(slideway fluid)、および他の工業用流体にも好適であり得る。特定の用途では、これらの潤滑用途は、ギアボックス、パワーテイクオフおよびクラッチ、リアアクスル、リダクションギア、湿式ブレーキ、および油圧アクセサリーの潤滑を含み得る。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を示す。これらの実施例、および本出願の他の場所では、すべての比率、部、およびパーセンテージは、別途示されない限り重量による。これらの実施例が説明の目的のためのみに提示されていることを意図しており、本明細書に開示される本発明の範囲を限定することを意図しない。シリコン処理および任意選択のアミン後処理は、以下に示す例示的な反応スキームに従うことができる(反応物は、単なる例示であり、本開示を通して記載されるもののうちのいずれかであり得る)。
【化13】
【0145】
比較例1
HiTEC(登録商標)5754Aは、以下のさらなる実施例で使用されるAfton Chemical Corporationから市販されているオレフィンコポリマー粘度指数向上剤であった。この比較ポリマーは、アシル化されておらず、シリコーンで官能化されていなかった。それは、約233,000の数平均分子量を有した。
【0146】
実施例1
無水マレイン酸をエチレン-プロピレンコポリマーにグラフトすることにより、約56,000g/モルの数平均分子量を有するアシル化エチレン-プロピレンコポリマーを得た。反応化学量論および反応条件は、11.4分子の無水マレイン酸をオレフィンコポリマー骨格に、またはポリマー骨格1,000Mn当たり約0.41カルボキシル基でグラフトさせることができるようにした(すなわち、2x11.4=22.8カルボキシル基/56,000Mn=0.41カルボキシル)基/1000Mn)。このポリマーはアシル化されていたが、シリコーンで官能化されていなかった。
【0147】
実施例2
無水マレイン酸をエチレン-プロピレンコポリマーにグラフトすることにより、約83,000g/モルの数平均分子量を有する別のアシル化エチレン-プロピレンコポリマーを得た。反応化学量論および反応条件は、11.85分子の無水マレイン酸をオレフィンコポリマー骨格に、またはポリマー骨格1,000Mn当たり約0.29カルボキシル基でグラフトさせることができるようにした(すなわち2x11.85=23.7カルボキシル基/83,000Mn=0.29カルボキシル)基/1000Mn)。このポリマーもアシル化されていたが、シリコーンで官能化されていなかった。
【0148】
実施例3
シリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例1のポリマーを使用して調製した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル298.8グラムおよび実施例1からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(5.7g、7.1mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。
【0149】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。この実施例の得られたポリマーは、27.55の窒素に対するシリコーンの重量比を有した。
【0150】
実施例4
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例1からのポリマーを使用して調製した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302グラムおよび実施例1からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(2.5g、7.1mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。この実施例の得られたポリマーは、1.00の窒素に対するシリコーンの重量比を有した。
【0151】
実施例5
シリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル300.5グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有する実施例3のモノプロピルアミン末端PDMS(4.0g、5.0mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。
【0152】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。得られたポリマーは、27.55の窒素に対するシリコーンの重量比を有した。
【0153】
実施例6
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302.2グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(0.8g、1.0mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、2-エチル-1-ヘキシルアミン(0.5g、4.0mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。この得られたポリマーは、4.65の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0154】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0155】
実施例7
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302.7グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(0.8g、1.0mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、ビス-2-エチル-1-ヘキシルアミン(1.3g、6.8mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。このポリマーは、4.08の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0156】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0157】
実施例8
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302.2グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(1.6g、2.0mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、ビス-2-エチル-1-ヘキシルアミン(0.7g、3.9mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。このポリマーは、8.66の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0158】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0159】
実施例9
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302.5グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(1.6g、2.0mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、2-エチル-1-ヘキシルアミン(0.4g、3.0mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。このポリマーは、8.64の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0160】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0161】
実施例10
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(2.1g、2.7mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、2-エチル-1-ヘキシルアミン(0.3g、2.4mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。このポリマーは、12.23の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0162】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0163】
実施例11
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル302グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(2.23g、2.79mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、2-エチル-1-ヘキシルアミン(0.3g、2.2mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。このポリマーは、12.64の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0164】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0165】
実施例12
別のシリコーン官能化アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、実施例2からのポリマーを使用して調製し、次いでアミノ化合物で後処理した。加熱マントル、ピッチ3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、および凝縮器を備えた4つ首の500mL樹脂ケトルに、110Nオイル301.3グラムおよび実施例2からのアシル化ポリマー35gを加えた。反応温度を約165℃に上げ、一定の窒素流下に維持した。混合物に、800~1200の数平均分子量を有するモノプロピルアミン末端PDMS(3.0g、2.8mmol)を加え、反応物を4時間保持した。4時間後、2-エチル-1-ヘキシルアミン(0.2g、1.2mmol)を反応混合物に加え、反応物を165℃でさらに3時間保持した。3時間後、Surfonic(登録商標)L24-2(10.5g)を反応混合物に加え、反応混合物を165℃でさらに2時間保持した。最終生成物を100メッシュ(140μm)フィルターを通して濾過した。生成物を室温まで冷却させ、粘度測定性能について試験した。このポリマーは、18.37の窒素に対するシリコーンの重量比を有する。
【0166】
得られたポリマーを、1当量のヘプタンを1回添加し、続いて10当量のアセトンで沈殿させることを含む、2回の溶解反復を行った。ポリマーをアセトンで完全に乾燥させ、真空中で仕上げ乾燥した。グラフト効率は、IRスペクトルの変化、およびポリマーのGPCによる分子量によって特徴付けられた。
【0167】
実施例13
比較例1からの非シリコーン官能化粘度指数向上剤および実施例3~12からのシリコーン官能化粘度指数向上剤を、完成した油配合物に添加し、粘度測定性能について試験した。粘度指数コポリマーを表3Aに要約し、評価した潤滑剤組成物を表3Bに示す。各潤滑剤には、約4.5%の分散剤、約0.5%の希釈油、約0.006の消泡剤、約1.55%の洗浄剤、約1.2%の酸化防止剤、約1.1%の耐摩耗剤、約0.5%の摩擦調整剤、約0.2%の流動点降下剤を有するDI添加剤パッケージが含まれた。各流体には、SAE300 5W-30粘度グレードを満たすために、4および6cStのグループIIの基油混合物の基油も含まれた。
【表4】
【表5】
【0168】
完成した油配合物を、本発明の組成物の粘度測定の寄与を評価するために比例基油比を使用して調製した。
【0169】
表3A~3Bの各配合物は、-30℃でのASTM D5293の方法に従って、寒冷時の性能(CCS)、100℃および40℃での動粘度、35℃での低温ポンピング粘度(MRV-35)、150℃での高温高せん断粘度(TBS)、および100℃で実行される低温高せん断粘度(MRVおよび低温/高温TBSはすべてASTM-D6616に準拠)について試験した。粘度指数を、ASTM D2270に従って測定した。増粘力は、ポリマーを1重量パーセントの濃度で5cStの参照油に溶解し、100℃で測定されたポリマーの動粘性率の寄与を計算することにより計算した。結果を、以下の表4に示す。
【表6】
【0170】
一般に、比較例1で使用された非シリコーン官能化ポリマーと比較した場合、コールドクランキング温度性能(CCS)は、改善された。コールドクランキング温度性能の改善は、約8~約10パーセントの範囲だった。特に、実施例3は、良好な全体的なパフォーマンス、つまり、SAE J300基準を満たす低CCSおよび良好なTBSを示した。本発明のポリマーを使用することが、粘度指数向上剤を変更するだけで、不合格だった5W30配合物を改善した5W30配合物に効果的に作ることができることを示す。このポリマーの追加の特徴は、場合によっては、増粘効率を高める能力であり、以下のさらなる実施例に示されるように、他の例では、LSPIを改善するのを助ける能力を提供する能力である。
【0171】
実施例14
表3A~3Bの配合物は、薄膜潤滑方式の摩擦係数を評価するミニトラクションマシン(PCS機器からのMTM)を使用して、薄膜摩擦(TFF)についてさらに評価された。これらの摩擦係数は、油が500mm/sのエントレインメント速度で接触領域を通して引っ張られているときに、ANSI 52100鋼ディスクとANSI 52100鋼球との間の50Nの適用荷重を用いて130℃で測定した。測定中、ボールとディスクとの間のスライド対ロール比は50%に維持した。結果を、表5に示す。
【表7】
【0172】
比較例2
非シリコーン官能化粘度指数向上剤(35ssi OCP)を、比較例1に記載されているように、当該技術分野において既知の方法によって調製した。それは、7.5重量パーセントの固形分で4cStのグループIIベースストックに溶解された。
【0173】
実施例15
比較例2のポリマーおよび実施例11の2つの異なる量のシリコーン官能化ポリマーを、以下に記載され、表6に示されるように、潤滑剤に配合した。潤滑剤は、実施例13に記載される試験に基づいて粘度測定性能について評価され、当該技術分野において既知の配列IX試験に従って低速のプレイグニッション性能についてさらに評価された。
【0174】
これらの評価では、各潤滑剤に、表6の組成物が含まれた。最終流体のDI添加剤パッケージには、約3.6%の分散剤、約1.9%の洗浄剤、約1.1%の耐摩耗添加剤、約1.6%の酸化防止剤、約0.5%の消泡剤と希釈剤の添加剤、0.14%の摩擦調整剤、および約0.2%の流動点分散剤が含まれた。
【表8】
【0175】
低速のプレイグニッション配列IX試験は、表6の完成した潤滑油で実行され、LSPI事象の平均数(合計4回の反復)に基づく合格/不合格パラメータは、5つの事象であり、反復ごとの事象の最大数に基づく合格/不合格パラメータは、API SN PlusまたはILSAC GF-6の制限を満たすために、8であった。以下の表7および8に示すように、比較ポリマーは、LSPI試験に失敗した潤滑剤をもたらしたが、完成した潤滑剤に10~181ppmを提供する量での実施例11のポリマーは、LSP1の制限を超え、同時に粘度測定も改善された。
【表9】
【表10】
【0176】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語およびその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換または追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0177】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、別途指定のない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、パーセンテージまたは割合、および他の数値を表すすべての数字は、すべての事例において「約」という用語によって修飾されると理解される。したがって、別途指定のない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示によって得られることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点からおよび通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0178】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0179】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0180】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、もしくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって誘導されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまたさらに理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0181】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲の任意の他の下限もしくは上限または特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。
【0182】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人らまたは他の当業者にとって現在予想されていない、または現在予想することができない代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、および修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物を包含することを意図している。
【0183】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物を例示するものであって、限定するものではない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、当該分野において通常用いられる様々な条件およびパラメータの他の好適な修正および調整は、当業者にとって既知である。本明細書で引用したすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。実施例1~6は、マクロモノマーアルコールに反応する、エチレン単位およびプロピレン単位を含む粘度指数向上剤を含む異なる潤滑組成物およびそれらを製造するためのプロセスを例示する。