(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】跨座式シート
(51)【国際特許分類】
A47C 7/02 20060101AFI20230427BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20230427BHJP
B60N 2/24 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A47C7/02 Z
B62J1/12 A
B60N2/24
(21)【出願番号】P 2018071869
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】辻林 俊之
(72)【発明者】
【氏名】福原 浩二
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-225478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274230(US,A1)
【文献】特開2007-175482(JP,A)
【文献】特開2012-76552(JP,A)
【文献】特開2000-351391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/02
B60N 2/00-90
B62J 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、
シートフレームと、
該シートフレームに取り付けられた座面部材と、
前記座面部材に取り付けられたクッション部材と、を備え、
前記座面部材は、
前記シートフレームの上面と対向する下側基材と、
該下側基材の上側に設けられた上側基材と、
前記上側基材と前記下側基材との間に設けられた第1緩衝部材と、を有し、
前記下側基材が前記シートフレームの前記上面と接続部材によって着脱可能に接続されており、
前記下側基材が前記上側基材に向う方向に窪んだ凹部を有することを特徴とする跨座式シート。
【請求項2】
前記凹部は、前記跨座式シートの前後方向に延在していることを特徴とする請求項
1に記載の跨座式シート。
【請求項3】
前記下側基材と前記上側基材が、前記凹部において接合されていることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の跨座式シート。
【請求項4】
着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、
シートフレームと、
該シートフレームに取り付けられた座面部材と、
前記座面部材に取り付けられたクッション部材と、を備え、
前記座面部材は、
前記シートフレームの上面と対向する下側基材と、
該下側基材の上側に設けられた上側基材と、
前記上側基材と前記下側基材との間に設けられた第1緩衝部材と、を有し、
前記下側基材が前記シートフレームの前記上面と接続部材によって着脱可能に接続されており、
前記下側基材が前記跨座式シートの幅方向において波状に湾曲していることを特徴とする跨座式シート。
【請求項5】
前記接続部材は、前記シートフレームの前記上面と前記下側基材を所定の間隔を維持して接続する第2緩衝部材であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の跨座式シート。
【請求項6】
前記第2緩衝部材は、前記シートフレームの前記上面と前記下側基材にそれぞれ取り付けられた面ファスナーであることを特徴とする請求項
5に記載の跨座式シート。
【請求項7】
前記シートフレームは、前記上面を形成する上側フレーム部材と、
前記跨座式シートの上下方向において該上側フレーム部材に対して下側に設けられた下側フレーム部材と、を有し、
前記上側フレーム部材と前記下側フレーム部材との間には、空間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の跨座式シート。
【請求項8】
前記座面部材が備える前記上側基材の上側には、第3緩衝部材によって前記クッション部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の跨座式シート。
【請求項9】
前記跨座式シートの上下方向における前記上側基材及び前記下側基材の厚みは、それぞれ、前記跨座式シートの上下方向における前記第1緩衝部材の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項
1乃至8のいずれか一項に記載の跨座式シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跨座式シートに係り、特に座り心地を向上させた跨座式シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車に使用されるシートには、硬質の板状部材からなるボトムプレートの上にウレタンフォームからなるクッション体を配置し、それらをシート表皮で被覆して構成したものが知られている。上記のシートによれば、エンジンの振動や路面の凹凸により走行中の車体に発生する振動は、クッション体で吸収して、着座者に振動が伝わることが抑制される。
【0003】
例えば、特許文献1には、着座者に振動が伝達することを抑制するために、クッション本体において、臀部を支持する部分に衝撃吸収材を埋設する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動二輪車などの鞍乗り型車両では、コーナーで車体を大きくバンクさせる等のスポーツ走行を行う際に、着座者(ライダー)の臀部がシートから離れる、いわゆるハングオフ(ハングオン)の姿勢となる場合がある。そのような姿勢の変化を繰り返すことで、着座者の臀部に衝撃が加わり、臀部に痛みを感じることがあった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着座者の臀部に加わる振動や衝撃を軽減することが可能な跨座式シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のように構成された本発明の跨座式シートでは、上側基材と下側基材の間に第1緩衝部材を有する座面部材が、シートフレームの上面に接続部材によって着脱可能に接続されているため、座面部材の第1緩衝部材及び接続部材によって衝撃や振動が吸収される。したがって、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0010】
上記の跨座式シートにおいて、前記跨座式シートの上下方向における前記上側基材及び前記下側基材の厚みは、それぞれ、前記跨座式シートの上下方向における前記第1緩衝部材の厚みよりも薄いとよい。
上記の構成では、第1緩衝部材よりも上側基材や下側基材が薄く撓みやすくなり、上側基材や下側基材が撓むことで衝撃や振動が吸収されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0011】
前記課題は、本発明の跨座式シートによれば、着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、シートフレームと、該シートフレームに取り付けられた座面部材と、前記座面部材に取り付けられたクッション部材と、を備え、前記座面部材は、前記シートフレームの上面と対向する下側基材と、該下側基材の上側に設けられた上側基材と、前記上側基材と前記下側基材との間に設けられた第1緩衝部材と、を有し、前記下側基材が前記シートフレームの前記上面と接続部材によって着脱可能に接続されており、前記下側基材が前記上側基材に向う方向に窪んだ凹部を有すること、により解決される。
上記の構成では、下側基材に凹部を設けることで、下側基材の剛性が上側基材の剛性よりも向上するとともに、下側基材よりも上側基材が撓み易くなっているため、着座者の臀部に近い上側基材によって効果的に着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0012】
上記の跨座式シートにおいて、前記凹部は、前記跨座式シートの前後方向に延在しているとよい。
上記の構成では、下側基材の凹部が跨座式シートの前後方向に延在しており、跨座式シートの幅方向における座面部材の剛性が向上するため、座面部材に跨座式シートの幅方向から荷重が加わった場合にも適切に着座者を支持することが可能となる。
【0013】
上記の跨座式シートにおいて、前記下側基材と前記上側基材が、前記凹部において接合されているとよい。
上記の構成では、下側基材と上側基材が接合されている部分において、跨座式シートの上下方向の剛性が向上するため、座面部材の強度を向上させることが可能となる。
【0014】
前記課題は、本発明の跨座式シートによれば、着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、シートフレームと、該シートフレームに取り付けられた座面部材と、前記座面部材に取り付けられたクッション部材と、を備え、前記座面部材は、前記シートフレームの上面と対向する下側基材と、該下側基材の上側に設けられた上側基材と、前記上側基材と前記下側基材との間に設けられた第1緩衝部材と、を有し、前記下側基材が前記シートフレームの前記上面と接続部材によって着脱可能に接続されており、前記下側基材が前記跨座式シートの幅方向において波状に湾曲していること、により解決される。
上記の構成では、座面部材の下側基材が波状に湾曲しており、座面部材に加わった荷重が均一に分散されるため、荷重を適切に吸収することが可能となる。
【0015】
上記の跨座式シートにおいて、前記接続部材は、前記シートフレームの前記上面と前記下側基材を所定の間隔を維持して接続する第2緩衝部材であるとよい。
上記の構成では、座面部材の下側基材とシートフレームの上面が、第2の緩衝部材によって所定の間隔を維持して接続されており、着座者の臀部に加わる衝撃が軽減されるとともに、シートフレームから座面部材に伝わる振動が軽減されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0016】
上記の跨座式シートにおいて、前記第2緩衝部材は、前記シートフレームの前記上面と前記下側基材にそれぞれ取り付けられた面ファスナーであるとよい。
上記の構成では、第2の緩衝部材が、面ファスナーである場合、跨座式シートの幅方向や前後方向、上下方向から加わる衝撃を吸収することが可能となるため、あらゆる方向から着座者の臀部に加わる衝撃を軽減することが可能となる。
【0017】
上記の跨座式シートにおいて、前記シートフレームは、前記上面を形成する上側フレーム部材と、前記跨座式シートの上下方向において該上側フレーム部材に対して下側に設けられた下側フレーム部材と、を有し、前記上側フレーム部材と前記下側フレーム部材との間には、空間が形成されているとよい。
上記の構成では、シートフレームの上側フレーム部材と下側フレーム部材の間に空間が形成されているため、着座者からシートフレームに加わる衝撃や荷重を適切に吸収することが可能となる。
【0018】
上記の跨座式シートにおいて、前記座面部材が備える前記上側基材の上側には、第3緩衝部材によってクッション部材が取り付けられているとよい。
上記の構成では、座面部材の上側に第3緩衝部材によってクッション部材が取り付けられているため、着座者から座面部材やシートフレームに加わる衝撃や荷重を吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の跨座式シートによれば、上側基材と下側基材の間に第1緩衝部材を有する座面部材が、シートフレームの上面に接続部材によって着脱可能に接続されているため、座面部材の第1緩衝部材及び接続部材によって衝撃や振動が吸収される。したがって、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、第1緩衝部材よりも上側基材や下側基材が薄く撓みやすくなり、上側基材や下側基材が撓むことで衝撃や振動が吸収されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、下側基材に凹部を設けることで、下側基材の剛性が上側基材の剛性よりも向上するとともに、下側基材よりも上側基材が撓み易くなっているため、着座者の臀部に近い上側基材によって効果的に着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、下側基材の凹部が跨座式シートの前後方向に延在しており、跨座式シートの幅方向における座面部材の剛性が向上するため、座面部材に跨座式シートの幅方向から荷重が加わった場合にも適切に着座者を支持することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、下側基材と上側基材が接合されている部分において、跨座式シートの上下方向の剛性が向上するため、座面部材の強度を向上させることが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、座面部材の下側基材が波状に湾曲しており、座面部材に加わった荷重が均一に分散されるため、荷重を適切に吸収することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、座面部材の下側基材とシートフレームの上面が、第2の緩衝部材によって所定の間隔を維持して接続されており、着座者の臀部に加わる衝撃が軽減されるとともに、シートフレームから座面部材に伝わる振動が軽減されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、第2の緩衝部材が、面ファスナーである場合、跨座式シートの幅方向や前後方向、上下方向から加わる衝撃を吸収することが可能となるため、あらゆる方向から着座者の臀部に加わる衝撃を軽減することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、シートフレームの上側フレーム部材と下側フレーム部材の間に空間が形成されているため、着座者からシートフレームに加わる衝撃や荷重を適切に吸収することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、座面部材の上側に第3緩衝部材によってクッション部材が取り付けられているため、着座者から座面部材やシートフレームに加わる衝撃や荷重を吸収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの分解図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのシートフレームの外観図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのシートフレームを下側から見た外観図である。
【
図3C】
図3AのII-II断面図であって、本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのシートフレームの構造を示す説明図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの座面部材の外観図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの座面部材を裏側から見た外観図である。
【
図4C】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの座面部材の正面図である。
【
図4D】
図4AのIII-III断面図であって、本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの座面部材の構造を示す説明図である。
【
図5A】
図1のI-I断面図であって、本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの構造を示す説明図である。
【
図5B】
図5Aの部分拡大図であって、本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1乃至
図5Bを参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る跨座式シートとしての自動二輪車用シート1について説明する。
【0022】
自動二輪車用シート1は、着座者(乗員、運転者)が跨った状態で着座する鞍上型のシートである。自動二輪車用シート1は、自動二輪車に対して着脱可能に設けられるものであり、以下では自動二輪車から取り外した状態の自動二輪車用シート1について説明する。
【0023】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0024】
本明細書における方向を示す用語に関し、
図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの前後方向を意味する。「シート幅方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの上下方向と一致する。
【0025】
<自動二輪車用シート1の主要構成>
本実施形態に係る自動二輪車用シート1は、
図1に示すように、主な構成として、シート本体2及びバックレスト3を備えている。シート本体2は、着座者が跨った状態で着座する着座面を備えている。本実施形態では、シート本体2の前部が、着座者の着座面となる。バックレスト3は、シート本体2の後部に取り付けられ、着座者の腰部、背部を支持する部品である。
【0026】
自動二輪車用シート1のシート本体2は、
図2に示すように、シートの骨組み部分となるシートフレーム10と、シートフレーム10に取り付けられた座面部材20と、座面部材20に取り付けられたクッション部材30と、を備えている。また、シート本体2は、シートフレーム10の上に座面部材20及びクッション部材30を配置した状態で、表皮材により被覆して構成してもよい。
【0027】
(シートフレーム10)
以下、
図3A乃至
図3Cを参照して、シートフレーム10の構成について説明する。
シートフレーム10は、上面11及び側面12を有している。シートフレーム10の上面11は、着座者の臀部を座面部材20やクッション部材30を介して支持する面であり、主にシート幅方向及びシート前後方向に広がる面である。シートフレーム10の側面12は、着座者の大腿部を支持する面であり、主にシート前後方向及びシート上下方向に広がる面である。
【0028】
シートフレーム10を構成する材料としては、樹脂材料、金属材料等を用いることが可能であるが、特に限定されるものではない。シートフレームを構成する材料として、カーボン繊維強化プラスチックや繊維強化ポリプロピレン樹脂などの繊維強化プラスチックを用いると好適である。
【0029】
カーボン繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics)とは、カーボン繊維にマトリックス材料を含浸した後、硬化させて成形した複合材料のことである。カーボン繊維としては、ポリアクリロニトリルを焼成して得られるポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、石炭、石油、コールタールなどの副生成物であるピッチを溶融紡糸後に焼成して得られるピッチ系炭素繊維を用いることが可能である。また、マトリックス材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0030】
繊維強化ポリプロピレン樹脂(繊維強化PP樹脂)として、ガラス繊維強化PP樹脂やセルロース繊維強化PP樹脂を用いることが可能である。繊維強化PP樹脂として、ナノセルロースを含むものを用いると、シートフレーム10の剛性及び強度を向上させ、シートフレーム10を薄肉、軽量化することが可能となり好適である。また、シートフレーム10を構成する繊維強化PP樹脂がナノセルロースを含むことによって、リサイクル性が向上する。
【0031】
また、上記のナノセルロースを、脂環式炭化水素基を有するカルボン酸で変性することで、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の疎水性が高い熱可塑性樹脂中に均一に分散させることが可能となる。その結果、変性ナノセルロースと樹脂との界面密着性が向上し、強度、弾性率、耐熱性に優れ、線熱膨張係数がアルミ合金並みに極めて低いという特徴を備える変性ナノセルロース-樹脂複合材料及び成型体を得ることが可能となる。このように変性ナノセルロースは、特に、従来の化学修飾されたセルロース繊維では補強し難いPPに対して高い補強効果(引張強度)及び弾性率を付与することが可能である。
【0032】
また、上記のナノセルロースを含む樹脂組成物は、樹脂組成物中で、樹脂がラメラ層を形成し、該ラメラ層が変性ナノセルロースの繊維長の方向と異なる方向に積層してなるという規則的な構造を有するようにしてもよい。こうすることで、上記の樹脂組成物から成形される成形体の機械的強度が向上するため好適である。
【0033】
なお、シートフレーム10の全体を、繊維強化プラスチックにより構成してもよい。また、シートフレーム10の一部、特に強度が必要な着座部周辺を、繊維強化プラスチックにより構成してもよい。これにより、強度が必要な箇所について効果的に強度を確保することが可能となる。
【0034】
図3Aに示すように、シートフレーム10の上面11には、面ファスナーの一部を構成する3本の第1テープ13a,13b,13cが、シート幅方向において所定の間隔で取り付けられている。より詳細には、シートフレーム10の上面11において、中央の第1テープ13aと、シート幅方向右側の第1テープ13bと、シート幅方向左側の第1テープ13cと、が前後方向に延在するようにして取り付けられている。
【0035】
ここで、面ファスナーとは、所謂、マジックテープ(登録商標)であり、メカニカルファスナーとも呼ばれている。面ファスナーは、多数のループ状の係止部を一面に配置した布状の第1テープと、多数のループ形状のループ部に係止可能な多数の鉤状の突起であるフック部を一面に配置した布状の第2テープとで構成されている。なお、面ファスナーにおいて、ループ部とフック部が同一面に形成されてもよい。面ファスナーは、第1テープと第2テープを相互に押し付けると、ループ部とフック部が相互に外れにくいように係止される。また、第1テープと第2テープを引き剥がすと、ループ部とフック部の係止が外れることで、着脱自在となっている。
【0036】
第1テープ13a,13b,13cは、多数のループ状の係止部を一面に配置した布状の第1テープであり、後述する座面部材20の下側基材22が備える第2テープ26a,26b,26cと対応して設けられている。第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26cが、本発明における接続部材に相当する。接続部材である第1のテープをシートフレーム10の上面の略全面に配置してもよいが、
図3Aに示すように、シート幅方向において所定の間隔を置いて、前後方向に延在する線状に複数の接続部材を配置した場合、座面部材20の取り付け及び取り外しが容易なものとなる。
【0037】
図3Bは、シートフレーム10の上面11とは反対の裏面を示す図であり、
図3Cは、
図3AのII-II断面図である。
図3B及び
図3Cに示すように、シートフレーム10は、上面11及び側面12を形成する薄肉の上側フレーム部材15と、上下方向において上側フレーム部材15に対して下方に設けられた薄肉の下側フレーム部材16と、により構成されている。上側フレーム部材15及び下側フレーム部材16を、薄肉の繊維強化プラスチックで形成することで、シートフレーム10の重量が軽くなっている。
【0038】
図3B及び
図3Cに示すように、シートフレーム10の下側フレーム部材16は、下方に向けてX字形状に突出しており、上側フレーム部材15と下側フレーム部材16の間に複数の空間17が形成されている。シートフレーム10の上側フレーム部材15と下側フレーム部材16の間にビード形状の空間17が形成されていることで、シートフレーム10の強度が向上するとともに、着座者からシートフレーム10に加わる衝撃や荷重が適切に吸収される。
【0039】
図3A及び
図3Cに示すように、シートフレーム10の側面12には、取付穴14が形成されており、後述する座面部材20をシート幅方向から固定するために用いられる。
【0040】
(座面部材20)
以下、
図4A乃至
図4Dを参照して、座面部材20の構成について説明する。
図4Aは、座面部材の外観図であり、
図4Bは、座面部材を裏側から見た外観図であり、
図4Cは、座面部材の正面図であり、
図4Dは、
図4AのIII-III断面図である。
【0041】
図4A乃至
図4Dに示すように、座面部材20は、上側基材21と、下側基材22と、上側基材21及び下側基材22の間に設けられた第1緩衝部材23と、を有している。
【0042】
上側基材21及び下側基材22は、薄肉の基材であり、シートフレーム10と同様に、カーボン繊維強化プラスチックや繊維強化ポリプロピレン樹脂などの繊維強化プラスチックで形成されている。
【0043】
第1緩衝部材23は、緩衝性能、重量、耐久性、硬度などの観点から、ウレタンなどの熱硬化性樹脂、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂の発泡体であると好適であるが、特に限定されるものではなく、ゴムなどのエラストマー材料や、3次元繊維等の網目状構造体を用いることも可能である。
【0044】
第1緩衝部材23を構成する材料としては、上側基材21及び下側基材22を構成する材料よりも硬度の低い材料を用いることが好ましい。例えば、上側基材21及び下側基材22を、繊維強化プラスチックを用いて形成した場合、第1緩衝部材23を、繊維強化プラスチックよりも硬度の低い硬質ウレタン発泡体で形成すると好適である。
【0045】
図4B及び
図4Cに示すように、座面部材20においてシートフレーム10の上面11と対向する裏面を構成する下側基材22は、シート前後方向に延在する3つの凸部24a,24b,24cおよび、2つの凹部25a,25bを備えている。より詳細には、座面部材20の下側基材22には、中央の凸部24aと、シート幅方向右側の凸部24bと、シート幅方向左側の凸部24cと、が前後方向に延在して設けられている。また、座面部材20の下側基材22において、中央の凸部24aと右側の凸部24bの間には、前後方向に延在する凹部25aが設けられ、凸部24aと左側の凸部24cの間には、前後方向に延在する凹部25bが設けられている。
【0046】
座面部材20の下側基材22には、上側基材21に向う方向に窪んだ凹部25a,25bが設けられており、下側基材22の剛性が上側基材21の剛性よりも向上している。また、下側基材22よりも上側基材21が撓み易くなっているため、着座者の臀部に近い上側基材21によって効果的に着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となっている。
【0047】
座面部材20の下側基材22において、凹部25a,25bが前後方向に延在しており、シート幅方向における座面部材20の剛性が向上している。したがって、座面部材20にシート幅方向から荷重が加わった場合にも適切に着座者を支持することが可能となっている。
【0048】
また、
図4B及び
図4Cに示すように、座面部材20の下側基材22が波状に湾曲している。より詳細には、下側基材22の凹部25a,25bの底面に対して、凹部25a,25bの側面(側壁)がなす角度が、90°よりも大きくなだらかに傾斜し、波状に湾曲している。したがって、座面部材20に加わった荷重が均一に分散されるため、荷重を適切に吸収することが可能となっている。
【0049】
図4Dの断面図に示すように、上下方向における上側基材21及び下側基材22の厚みは、それぞれ、上下方向における第1緩衝部材23の厚みよりも薄くなるように形成されている。座面部材20において、第1緩衝部材23よりも上側基材21や下側基材22が薄く撓みやすくなっており、上側基材21や下側基材22が撓むことで衝撃や振動が吸収されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となっている。
【0050】
また、
図4Dに示すように、上側基材21と下側基材22が、凹部25a,25bにおいて接合されている。詳細には、上側基材21は下側基材22の凹部25a,25bの底面において、互いに当接している。このとき、上側基材21と下側基材22が当接した部分を、接着や溶接してもよい。上側基材21と下側基材22が当接した部分において、座面部材20の上下方向における剛性が向上するため、座面部材20の強度が向上している。
【0051】
図4B乃至
図4Dに示すように、座面部材20の下側基材22には、面ファスナーの一部を構成する3本の第2テープ26a,26b,26cがシート幅方向において所定の間隔で取り付けられている。より詳細には、座面部材20の下側基材22において、中央の第2テープ26aと、シート幅方向右側の第2テープ26bと、シート幅方向左側の第2テープ26cと、が前後方向に延在するようにして取り付けられている。
【0052】
第2テープ26a,26b,26cは、多数の鉤状の突起であるフック部を一面に配置した布状の第2テープである。第2テープ26a,26b,26cのフック部は、第1テープ13a,13b,13cのループ部に係止可能に構成されている。つまり、座面部材20の下側基材22は、シートフレーム10の上面11と、第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26cで構成される面ファスナー(接続部材)によって着脱可能に接続されている。接続部材である第2のテープを座面部材20の下側基材22の略全面に配置してもよいが、
図4B乃至
図4Dに示すように、シート幅方向において所定の間隔を置いて、前後方向に延在する線状に複数の接続部材を配置した場合、座面部材20の取り付け及び取り外しが容易なものとなる。
【0053】
また、
図4A及び
図4Dに示すように、座面部材20のシート幅方向には、開口27が設けられている。後述するように、座面部材20の開口27は、座面部材20をシートフレーム10に取り付けた際に、シートフレーム10の側面12に設けられた取付穴14と位置が合うように配置されている。
【0054】
(自動二輪車用シート1の詳細な構成)
図5A及び
図5Bに、
図1のI-I断面図を示すように、座面部材20の下側基材22が、シートフレーム10の上面11と、接続部材(面ファスナー)によって着脱可能に接続されている。また、シートフレーム10の側面12に設けられた取付穴14と、座面部材20に設けられた開口27の位置が合せられ、ボルト50が挿通され、ナット52によって固定されている。
【0055】
図5A及び
図5Bに示すように、上側基材21と下側基材22の間に第1緩衝部材23を有する座面部材20が、シートフレーム10の上面11に接続部材(第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26c)によって着脱可能に接続されている。したがって、第1緩衝部材23及び接続部材によって衝撃や振動が吸収されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動が軽減される。
【0056】
ここで、
図5A及び
図5Bに示すように、座面部材20の下側基材22の下面とシートフレーム10の上面11が、第2の緩衝部材、具体的には、多数のループ状の係止部を一面に配置した布状の第1テープ13a,13b,13c及び、多数のループ形状のループ部に係止可能な多数の鉤状の突起であるフック部を一面に配置した布状の第2テープ26a,26b,26cによって、所定の間隔を維持して接続されている。したがって、第2の緩衝部材によって着座者の臀部に加わる衝撃が軽減されるとともに、シートフレーム10から座面部材20に伝わる振動が軽減されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動が軽減される。
【0057】
また、第2の緩衝部材(第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26c)が、面ファスナーである場合、自動二輪車用シート1の幅方向や前後方向、上下方向から加わる衝撃が面ファスナーによって吸収される。したがって、あらゆる方向から着座者の臀部に加わる衝撃を軽減することが可能となる。
【0058】
図5A及び
図5Bに示すように、クッション部材30が、第3緩衝部材に相当する両面テープ40によって、座面部材20の上側基材21に取り付けられている。ここで、クッション部材30を構成する材料の例として、例えば、ウレタンフォーム、ゴム等の弾性体が挙げられるが、これらの材料に限定されるものではない。また、両面テープ40の代わりに、面ファスナーや接着剤を用いることも可能である。
【0059】
座面部材20の上側基材21に第3緩衝部材(両面テープ40)によってクッション部材30が取り付けられている。したがって、着座者から座面部材20やシートフレーム10に加わる衝撃や荷重を吸収することが可能となる。
【0060】
<自動二輪車用シート1が奏する効果の説明>
以上説明した自動二輪車用シート1(跨座式シート)によれば、上側基材21と下側基材22の間に第1緩衝部材23を有する座面部材20が、シートフレーム10の上面11に接続部材(第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26c)によって着脱可能に接続されているため、座面部材20の第1緩衝部材23及び接続部材によって衝撃や振動が吸収される。したがって、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0061】
また、自動二輪車用シート1によれば、上側基材21及び下側基材22の厚みが、それぞれ、自動二輪車用シート1の上下方向における第1緩衝部材23の厚みよりも薄く、第1緩衝部材23よりも上側基材21や下側基材22が薄く撓みやすくなっている。したがって、上側基材21や下側基材22が撓むことで衝撃や振動が吸収されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0062】
また、自動二輪車用シート1によれば、座面部材20の下側基材22に凹部25a,25bを設けることで、下側基材22の剛性が上側基材21の剛性よりも向上するとともに、下側基材22よりも上側基材21が撓み易くなっているため、着座者の臀部に近い上側基材21によって効果的に着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0063】
また、自動二輪車用シート1によれば、座面部材20の下側基材22に設けられた凹部25a,25bが前後方向に延在しており、シート幅方向における座面部材20の剛性が向上するため、座面部材20にシート幅方向から荷重が加わった場合にも適切に着座者を支持することが可能となる。
【0064】
また、自動二輪車用シート1によれば、座面部材20の下側基材22と上側基材21が接合されている部分において、上下方向の剛性が向上するため、座面部材20の強度を向上させることが可能となる。
【0065】
また、自動二輪車用シート1によれば、座面部材20の下側基材22が波状に湾曲しており、座面部材20に加わった荷重が均一に分散されるため、荷重を適切に吸収することが可能となる。
【0066】
また、自動二輪車用シート1によれば、座面部材20の下側基材22とシートフレーム10の上面11が、第2の緩衝部材(第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26c)によって所定の間隔を維持して接続されており、着座者の臀部に加わる衝撃が軽減されるとともに、シートフレーム10から座面部材20に伝わる振動が軽減されるため、着座者の臀部に加わる衝撃や振動を軽減することが可能となる。
【0067】
また、自動二輪車用シート1によれば、第2の緩衝部材(第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26c)が、面ファスナーである場合、自動二輪車用シート1の幅方向や前後方向、上下方向から加わる衝撃を吸収することが可能となるため、あらゆる方向から着座者の臀部に加わる衝撃を軽減することが可能となる。さらに、着座者の体形や着座感の好みに応じて、サイズや形状、上側基材21、下側基材22及び第1緩衝部材23の材質や硬度などが異なる着座部材を用意しておくことで、座面部材20を交換することが容易となる。
【0068】
また、自動二輪車用シート1によれば、シートフレーム10の上側フレーム部材15と下側フレーム部材16の間に空間17が形成されているため、着座者からシートフレーム10に加わる衝撃や荷重を適切に吸収することが可能となる。
【0069】
また、自動二輪車用シート1によれば、座面部材20の上側に第3緩衝部材(両面テープ40)によってクッション部材30が取り付けられているため、着座者から座面部材20やシートフレーム10に加わる衝撃や荷重を吸収することが可能となる。
【0070】
<変形例>
以上までに、本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シート1の構成について説明してきたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0071】
特に、自動二輪車用シート1を構成する各要素の構造、材質、形状及び寸法等については、上記の実施形態の中で説明した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて任意に設計することが可能である。
【0072】
例えば、
図3A及び
図4Bでは、接続部材としての第1テープ13a,13b,13c及び第2テープ26a,26b,26cを自動二輪車用シート1の前後方向に延在するように配置した例を示したが、接続部材を、シート幅方向に延在するように配置することも可能である。
【0073】
また、接続部材として、面ファスナーを用いた例を示したが、着脱機能と緩衝機能を併せ持つ接続部材であれば、ゴムなどのエラストマー材料を含む両面テープなどを用いることが可能である。さらに、接続部材として、面ファスナー、エラストマー材料を含む両面テープなどを組み合わせて用いることも可能である。
【0074】
さらに、
図5A及び
図5Bでは、座面部材20の上側基材21に両面テープ40(第3緩衝部材)によってクッション部材30を取り付けた例を示したが、両面テープの代わりに面ファスナーを用いることや、両面テープと面ファスナーを組み合わせて用いることも可能である。
【0075】
また、
図4Bでは、座面部材20の下側基材22が、シート前後方向に延在する3つの凸部24a,24b,24cおよび、2つの凹部25a,25bを備えた例を示したが、凸部及び凹部の数はこれに限定されるものではなく適宜変更することが可能である。例えば、凹部の数を1つにしたり、3つ以上とすることも可能である。換言すると、凸部の数を2つにしたり、5つ以上とすることも可能である。凸部の数を5つ以上とした場合に、全ての凸部に接続部材(第2テープ)を設けることなく、所定の凸部(例えば、中央と両端の凸部)にのみ、接続部材(第2テープ)を設けるようにしてもよい。
【0076】
以上、本実施形態に係る跨座式シートを、主として二輪車に用いられる車両用シートを例に説明した。本実施形態に係る跨座式シートは、二輪車用の車両用シートに限定されるものではなく、例えば、スノーモービル、水上バイク、三輪バギー車又は建機シートに適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 自動二輪車用シート(跨座式シート)
2 シート本体
3 バックレスト
10 シートフレーム
11 上面
12 側面
13a、13b、13c 第1テープ(接続部材、第2緩衝部材)
14 取付穴
15 上側フレーム部材
16 下側フレーム部材
17 空間
20 座面部材
21 上側基材
22 下側基材
23 第1緩衝部材
24a、24b、24c 凸部
25a、25b 凹部
26a、26b、26c 第2テープ(接続部材、第2緩衝部材)
27 開口
30 クッション部材
40 両面テープ(第3緩衝部材)
50 ボルト
52 ナット