(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230427BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
(21)【出願番号】P 2018164256
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 尚洋
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-233904(JP,A)
【文献】特開2018-122747(JP,A)
【文献】特開2013-095373(JP,A)
【文献】特開2002-326554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション、及び前記シートクッションの後部に設けられたシートバックを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションに設けられた
感圧センサユニットと、
前記シートバックに設けられた
非接触式の近接センサと、
前記感圧センサユニットからの信号と前記
近接センサからの信号とに基づいて、乗員が着座しているか否かを判定する判定装置とを備え
前記シートクッション及び前記シートバックはそれぞれパッド部材と、前記パッド部材の表面を覆う表皮材とを含み、
前記感圧センサユニットは、前記シートクッションの前記パッド部材の表面に沿って左右に延在するように配置されたシート状のサブユニットを少なくとも一つ備え、
前記サブユニットは、それぞれが所定以上の荷重が加わるとオンとなる2つの感圧スイッチからなる感圧スイッチ対を含み、
前記感圧スイッチ対は前記サブユニットの左右両端に位置し、
前記感圧スイッチ対に含まれる前記感圧スイッチは並列に接続されて、前記感圧スイッチ対は2つの前記感圧スイッチの少なくとも一方がオンとなったときにオンとなり、
前記サブユニットは前記感圧スイッチ対がともにオンとなったときにオンとなり、
前記感圧センサユニットは、前記サブユニットの少なくとも一つがオンとなったときにオンとなり、
前記近接センサは表面に検出面を備えたフィルムを有し、
前記フィルムは前記シートバックの前記パッド部材と前記表皮材との間に配置され、
前記近接センサは、比誘電率が所定値以上の物体が前記検出面から所定の検出距離以内に位置していることを検出したときにオンとなり、
前記判定装置は前記感圧センサユニットと前記近接センサとがともにオンとなったときに、乗員が着座していると判定することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記フィルムは、乗員の腰部に対応する箇所に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記感圧スイッチ対に含まれる2つの前記感圧スイッチはそれぞれ左右方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する
第1横吊り込み溝が設けられ、
前記感圧センサユニットは、前記第1横吊り込み溝の前側に設けられた前記サブユニットと、前記第1横吊り込み溝の後側に設けられた前記サブユニットとを含むことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1横吊り込み溝の前側に設けられた前記サブユニットの左端に位置する前記感圧スイッチ対、及び、前記第1横吊り込み溝の後側に設けられた前記サブユニットの左端に位置する前記感圧スイッチ対が並列に接続された左スイッチ群と、
前記第1横吊り込み溝の前側に設けられた前記サブユニットの右端に位置する前記感圧スイッチ対、及び、前記第1横吊り込み溝の前側に設けられた前記サブユニットの右端に位置する前記感圧スイッチ対が並列に接続された右スイッチ群と、が、
直列に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートクッションには表皮を吊り込むための第1縦吊り込み溝が左右一対設けられ、
前記第1縦吊り込み溝はそれぞれ前後に延在し、
前記サブユニットはそれぞれ左右の前記第1縦吊り込み溝の間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記シートバックには表皮を吊り込むための
第2縦吊り込み溝が左右一対設けられ、
前記第2縦吊り込み溝はそれぞれ上下に延在し、
前記フィルムは左右の前記
第2縦吊り込み溝の間に設けられていることを特徴とする
請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートバックには表皮を吊り込むための左右方向に延在する第2横吊り込み溝が設けられ、
前記フィルムは前記第2横吊り込み溝の下側に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の着座を検知可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートであって、着座者が着座したことを検知するためのセンサを備えたものが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1の乗物用シートは、センサとしてシートクッションの着座面に加わる圧力を検出する圧力センサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着座面に物品が載置されると、着座面に圧力が加わり、その圧力が圧力センサによって検出される。よって、圧力センサのみでは、乗員が着座面に着座したことと、物品が着座面に載置されたこととを判別することが難しい。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗員の着座を検知可能な乗物用シートにおいて、乗員がシートに着座したことと、物品が着座面に載置されたこととをより確実に判別することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、シートクッション(4)、及び前記シートクッションの後部に設けられたシートバック(5)を備えた乗物用シート(1、51、61、71)であって、前記シートクッションに設けられた圧力センサ(20)と、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた静電容量センサ(40、53,54)と、前記圧力センサからの信号と前記静電容量センサからの信号とに基づいて、乗員が着座しているか否かを判定する判定装置(46)とを備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、圧力センサからの信号と静電容量センサからの信号とに基づいて、乗員が着座しているか否かが判定されるため、乗員がシートに着座したことと、物品が着座面に載置されたこととをより確実に判別することができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記静電容量センサは、前記シートバックに設けられているとよい。
【0009】
この構成によれば、圧力センサがシートクッションに、静電容量センサがシートバックにそれぞれ設けられる。これにより、圧力センサ及び静電容量センサがともにシートクッションに設けられた場合に比べて、圧力センサ及び静電容量センサをそれぞれ互いに干渉しない位置に容易に配置することができるため、それぞれのセンサの動作が阻害され難い。また、圧力センサ及び静電容量センサがともにシートクッションに設けられた場合に比べて、圧力センサ及び静電容量センサに容易に配線することができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記静電容量センサは、乗員の腰部(H)に対応する箇所に設けられているとよい。
【0011】
この態様によれば、静電容量センサが着座した乗員に近接するように設けられるため、乗員の着座をより感度よく検知することができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝(15)が設けられ、前記圧力センサは前記横吊り込み溝の前後のそれぞれに設けられているとよい。
【0013】
この態様によれば、圧力センサの組付が容易である。また、圧力センサの変形や位置ずれを抑制することができる。また、圧力センサを横吊り込み溝の前後に配置することで、シートクッションの着座面に加わる圧力をより広い範囲で検知することができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記シートバックには表皮を吊り込むための縦吊り込み溝(36)が左右一対設けられ、前記静電容量センサは左右の前記縦吊り込み溝の間に設けられているとよい。
【0015】
この態様によれば、静電容量センサの組付が容易である。また、静電容量センサの変形や位置ずれを抑制することができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記圧力センサ及び静電容量センサ(53,54)はともに、前記シートクッションに設けられているとよい。
【0017】
この態様によれば、乗員が着座するシートクッションに静電容量センサが設けられる。これにより、着座時に乗員が接触する着座面に静電容量センサが近接して配置されるため、静電容量センサによって乗員の着座をより感度よく検知することができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記圧力センサと前記静電容量センサとは、上面視で少なくとも一部が重なるように配置されているとよい。
【0019】
この態様によれば、着座面における圧力センサ及び静電容量センサに配置される領域を小さくすることができる。これにより、感圧センサユニット及び静電容量センサを配置することによって乗員に与えうる異物感を抑えることができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記圧力センサは前記静電容量センサの上側に配置され、上面視で前記圧力センサは前記静電容量センサの外周縁の内側に位置しているとよい。
【0021】
この態様によれば、着座面における圧力センサ及び静電容量センサに配置される領域をより小さくすることができるため、感圧センサユニット及び静電容量センサを配置することによって乗員に与えうる異物感をより抑えることができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝(15)が設けられ、前記横吊り込み溝の前後にそれぞれ前記静電容量センサが設けられ、前記圧力センサが前記静電容量センサのそれぞれの上側に配置されているとよい。
【0023】
この態様によれば、横吊り込み溝の前後に圧力センサ及び静電容量センサが配置されるため、着座面のより広い範囲で乗員の着座を検知することができる。また、圧力センサ及び静電容量センサがそれぞれ吊り込み溝を避けた位置に配置されるため、圧力センサ及び静電容量センサのシートクッションへの組付が容易であり、着座時の両センサの変形や位置ずれを抑制することができる。
【0024】
また、上記の態様において、前記シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝(15)が設けられ、前記圧力センサは前記横吊り込み溝の後方に、前記静電容量センサは前記横吊り込み溝の前方に設けられているとよい。
【0025】
この態様によれば、圧力センサと静電容量センサとをともに着座面に近い位置に配置することができるため、乗員の着座をより感度よく検出することができる。また、吊り込み溝を避けて圧力センサ及び静電容量センサを配置することができるため、圧力センサ及び静電容量センサのシートクッションへの組付が容易である。着座時の両センサの変形や位置ずれを抑制することができる。
【0026】
また、上記の態様において、前記静電容量センサは上下に貫通する開口(63,64)を有すると共に、前記シートクッションに設けられ、前記圧力センサは前記開口の内部に配置されているとよい。
【0027】
この態様によれば、圧力センサが静電容量センサの開口の内部に配置されるため、着座面をより平坦にすることができる。これにより、着座感を向上させることができる。
【0028】
また、上記の態様において、前記圧力センサの上面と前記静電容量センサの上面とは面一をなすとよい。
【0029】
この態様によれば、着座面がより平坦になるため、着座感をより向上させることができる。
【0030】
また、上記の態様において、前記シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝(15)が設けられ、前記横吊り込み溝の前後にそれぞれ前記静電容量センサが設けられ、前記静電容量センサの前記開口の内部それぞれに前記圧力センサが配置されているとよい。
【0031】
この態様によれば、横吊り込み溝の前後に圧力センサ及び静電容量センサが配置されるため、着座面のより広い範囲で乗員の着座を検知することができる。また、圧力センサ及び静電容量センサがそれぞれ吊り込み溝を避けた位置に配置されるため、圧力センサ及び静電容量センサをシートクッションへの組付が容易である。また、圧力センサが静電容量センサの開口の内部に配置されるため、着座面をより平坦にすることができる。これにより、乗物用シートの着座感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、乗物用シートであって、シートクッションに設けられた圧力センサと、シートクッション及びシートバックの少なくとも一方に設けられた静電容量センサと、圧力センサからの信号と静電容量センサからの信号とに基づいて、乗員が着座しているか否かを判定する判定装置とを備えているため、乗員がシートに着座したことと、物品が着座面に載置されたこととをより確実に判別することができる。
【0033】
また、上記の態様において、静電容量センサは、シートバックに設けられている構成によれば、圧力センサ及び静電容量センサがともにシートクッションに設けられた場合に比べて、圧力センサ及び静電容量センサをそれぞれ互いに干渉しない位置に容易に配置することができる。また、圧力センサ及び静電容量センサがともにシートクッションに設けられた場合に比べて、圧力センサ及び静電容量センサに容易に配線することができる。
【0034】
また、上記の態様において、静電容量センサは、乗員の腰部に対応する箇所に設けられている構成によれば、静電容量センサが着座した乗員に近接するように設けられるため、乗員の着座をより感度よく検知することができる。
【0035】
また、上記の態様において、シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝が設けられ、圧力センサは横吊り込み溝の前後のそれぞれに設けられている構成によれば、圧力センサの組付が容易になる。また、圧力センサの変形や位置ずれを抑制することができる。また、圧力センサを吊り込み溝の前後に配置することで、シートクッションの着座面に加わる圧力をより広い範囲で検知することができる。
【0036】
また、上記の態様において、シートバックには表皮を吊り込むための縦吊り込み溝が左右一対設けられ、静電容量センサは左右の縦吊り込み溝の間に設けられている構成によれば、静電容量センサの組付が容易になる。また、静電容量センサの変形や位置ずれを抑制することができる。
【0037】
また、上記の態様において、圧力センサ及び静電容量センサはともに、シートクッションに設けられている構成によれば、着座時に乗員が接触する着座面に静電容量センサが近接して配置されるため、静電容量センサによって乗員の着座をより感度よく検知することができる。
【0038】
また、上記の態様において、圧力センサと静電容量センサとは、上面視で少なくとも一部が重なるように配置されている構成によれば、着座面における圧力センサ及び静電容量センサに配置される領域を小さくすることができる。これにより、感圧センサユニット及び静電容量センサを配置することによって乗員に与えうる異物感を抑えることができる。
【0039】
また、上記の態様において、圧力センサは静電容量センサの上側に配置され、上面視で圧力センサは静電容量センサの外周縁の内側に位置している構成によれば、着座面における圧力センサ及び静電容量センサに配置される領域をより小さくすることができるため、感圧センサユニット及び静電容量センサを配置することによって乗員に与えうる異物感をより抑えることができる。
【0040】
また、上記の態様において、シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝が設けられ、横吊り込み溝の前後にそれぞれ静電容量センサが設けられ、圧力センサが静電容量センサのそれぞれの上側に配置されている構成によれば、横吊り込み溝の前後に圧力センサ及び静電容量センサが配置されるため、着座面のより広い範囲で乗員の着座を検知することができる。また、圧力センサ及び静電容量センサがそれぞれ吊り込み溝を避けた位置に配置されるため、圧力センサ及び静電容量センサのシートクッションへの組付が容易であり、着座時の両センサの変形や位置ずれを抑制することができる。
【0041】
また、上記の態様において、シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する吊り込み溝が設けられ、圧力センサは吊り込み溝の後方に、静電容量センサは吊り込み溝の前方に設けられている構成によれば、圧力センサと静電容量センサとをともに着座面に近い位置に配置することができるため、乗員の着座をより感度よく検知することができる。また、吊り込み溝を避けて圧力センサ及び静電容量センサを配置することができるため、圧力センサ及び静電容量センサのシートクッションへの組付が容易であり、着座時の両センサの変形や位置ずれを抑制することができる。
【0042】
また、上記の態様において、静電容量センサは上下に貫通する開口を有すると共に、シートクッションに設けられ、圧力センサは開口の内部に配置されている構成によれば、圧力センサが静電容量センサの開口の内部に配置されるため、着座面をより平坦にすることができる。これにより、着座感を向上させることができる。
【0043】
また、上記の態様において、圧力センサの上面と静電容量センサの上面とは面一をなす構成によれば、着座面がより平坦になるため、着座感をより向上させることができる。
【0044】
また、上記の態様において、シートクッションには表皮を吊り込むための左右方向に延在する横吊り込み溝が設けられ、横吊り込み溝の前後にそれぞれ静電容量センサが設けられ、静電容量センサの開口の内部それぞれに圧力センサが配置されている構成によれば、横吊り込み溝の前後に圧力センサ及び静電容量センサが配置されるため、着座面のより広い範囲で乗員の着座を検知することができる。また、圧力センサ及び静電容量センサがそれぞれ吊り込み溝を避けた位置に配置されるため、圧力センサ及び静電容量センサをシートクッションへの組付が容易である。また、圧力センサが静電容量センサの開口の内部に配置されるため、着座面をより平坦にすることができる。これにより、乗物用シートの着座感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図2】第1実施形態に係る乗物用シートの側面図、及び第1横吊り込み溝近傍の断面拡大図
【
図6】着座面の(A)後部、(B)前部、及び(C)右側部分に乗員が着座したときと、(D)着座面に袋入りの米が載置されたときとの乗物用シートの上面図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して、本発明に係る着座センサを自動車等の車両のシートに配置した実施形態を説明する。
【0047】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、乗物用シート1は自動車の車室2の底部を画定するフロア3上に車幅方向、すなわち左右に2つ並んで配置されている。左右に並ぶ2つの乗物用シート1は概ね左右対称をなしている。乗物用シート1はそれぞれ車両の2列目以降の後部座席を構成している。乗物用シート1はそれぞれ、着座者の臀部を支持するシートクッション4と、シートクッション4の後部に設けられ、背凭れとして機能するシートバック5と、各シートバック5の上部に設けられたヘッドレスト6とを備えている。
【0048】
シートクッション4はそれぞれ略上下方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートクッション4の上面はそれぞれ乗員1人分の着座面7を構成している。着座面7は左右方向略中央において下方に凹み、前後方向において後方に向かってやや下方に傾斜している。これにより、着座面7は乗員の臀部及び大腿部に対応する形状をなしている。乗員が着座するときには、着座面7には乗員の臀部及び大腿部が配置される。
【0049】
シートバック5は上下に延び、略前後方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートバック5の前面はそれぞれ乗員の背中を支持する支持面8を構成している。支持面8は左右方向略中央において後方に凹み、上方に向かってやや後方に傾斜している。これにより、支持面8は乗員の背中に対応する形状をなし、支持面8に乗員の背中が支持される。
【0050】
シートバック5はその下端において、公知のリクライニング機構を介して、シートクッション4の後端に回動可能に枢支されている。すなわち、シートバック5はそれぞれ下端において、シートクッション4の後端に前倒可能且つ後倒可能に結合されている。
【0051】
図2に示すように、シートクッション4は骨格としてのシートクッションフレーム(図示せず)と、シートクッションフレームに支持されたパッド部材11と、パッド部材11の表面に設けられ、シートクッション4の外面を構成する表皮材12とを有している。
【0052】
図1に示すように、シートクッション4のパッド部材11の上面には、左右方向略中央において後方に向かって下方に傾斜する中間部13と、中間部13の左右側部においてそれぞれ上方に膨出した膨出部14とが形成されている。
図3に示すように、シートクッション4のパッド部材11の上面には更に、前後方向略中間部において左右に延在する1つの第1横吊り込み溝15と、パッド部材11の前縁から後縁まで延びる左右一対の第1縦吊り込み溝16とが設けられている。第1縦吊り込み溝16はそれぞれ概ね中間部13と膨出部14との境界に沿って形成されている。第1横吊り込み溝15は両端において第1縦吊り込み溝16に接続している。
【0053】
第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16はそれぞれパッド部材11の上面に形成された下方に凹む溝である(第1横吊り込み溝15については、
図2を参照)。パッド部材11を覆う表皮材12には、第1横吊り込み溝15、及び第1縦吊り込み溝16に対応する位置にそれぞれ複数の掛止部材17が設けられている。その掛止部材17は第1横吊り込み溝15又は第1縦吊り込み溝16にそれぞれ挿入されている。第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16の内部には固定部材18が設けられている。掛止部材17はそれぞれ対応する固定部材18に掛け止されている。これにより、表皮材12が第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16に吊り込まれている。よって、第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16はそれぞれシートクッション4の表皮材12を吊り込むために設けられた溝ということができる。
【0054】
図2に示すように、シートクッション4のパッド部材11の上面及びシートクッション4の表皮材12の裏面との間には、着座面7に加わる荷重を検知するための感圧センサユニット19が設けられている。感圧センサユニット19は感圧スイッチ20(
図1を参照)を複数備えた可撓性を有するシート状の部材であり、いわゆるメンブレンスイッチである。各感圧スイッチ20は感圧センサユニット19の表面に沿って設けられた電極を有している。各感圧スイッチは感圧センサユニット19の表面が押圧されることによって電極に所定以上の荷重が加わるとONとなる(すなわち導通する)。よって、感圧スイッチ20はそれぞれ電極に加わる圧力を検知する圧力センサとして機能する。感圧センサユニット19は第1サブユニット21及び第2サブユニット22を含む。第1サブユニット21及び第2サブユニット22はともにシート状の部材であり、それぞれ複数の感圧スイッチ20を含む。
図2に示すように、第1サブユニット21及び第2サブユニット22はそれぞれパッド部材の表面に沿って左右方向に延びるように配置されている。第1サブユニット21及び第2サブユニット22はそれぞれ裏面側において、シートクッション4のパッド部材11の表面に接している。第1サブユニット21及び第2サブユニット22は互いに配線23によって接続されている。
【0055】
図3に示すように、第1サブユニット21は第1横吊り込み溝15の前方であり、且つ、左右の第1縦吊り込み溝16の間に配置されている。第2サブユニット22は、第1横吊り込み溝15の後方であり、且つ、左右の第1縦吊り込み溝16の間に配置されている。すなわち、感圧スイッチ20は第1横吊り込み溝15の前後のそれぞれに設けられている。
【0056】
本実施形態では、第1サブユニット21及び第2サブユニット22には左右に並ぶ2つの感圧スイッチ20から成る感圧スイッチ対が2つずつ設けられている。感圧スイッチ対はそれぞれ第1サブユニット21及び第2サブユニット22の左右端部に位置している。すなわち、第1サブユニット21の左端には1つの感圧スイッチ対(以下、第1左感圧スイッチ対25L)が設けられ、第1サブユニット21の右端に1つの感圧スイッチ対(以下、第1右感圧スイッチ対25R)が設けられている。第2サブユニット22の左端には1つの感圧スイッチ対(以下、第2左感圧スイッチ対26L)が設けられ、第2サブユニット22の右端には1つの感圧スイッチ対(以下、第2右感圧スイッチ対26R)が設けられている。第1左感圧スイッチ対25Lと第1右感圧スイッチ対25Rとは前後方向に揃うように配置されている。第2左感圧スイッチ対26Lと第2右感圧スイッチ対26Rとは前後方向に揃うように配置されている。
【0057】
図4には感圧センサユニット19の回路図が示されている。
図4に示すように、各感圧スイッチ対
25L、25R、26L、26Rに含まれる感圧スイッチ20は並列に接続されている(
図4の2点鎖線)。すなわち、各感圧スイッチ対
25L、25R、26L、26Rは含まれる感圧スイッチ20のいずれかがONとなるとONとなる。更に、第1左感圧スイッチ対25L又は第2左感圧スイッチ対26LがONであり、且つ、第1右感圧スイッチ対25R又は第2右感圧スイッチ対26RがONになると、感圧センサユニット19はONになり導通する。
【0058】
図2に示すように、シートバック5は骨格としてのシートバックフレーム(図示せず)と、シートバックフレームに支持されたパッド部材31と、パッド部材31の表面に設けられ、シートバック5の外面を構成する表皮材32とを有している。
【0059】
図1に示すように、シートバック5のパッド部材31の前面には、左右方向略中央において後方に向かって上方に傾斜する中間部33と、中間部33の左右側部においてそれぞれ前方に膨出した膨出部34とが形成されている。パッド部材31の上面には更に、上下方向略中央部において左右に延在する1つの第2横吊り込み溝35と、パッド部材31の上縁から下縁まで延びる左右一対の第2縦吊り込み溝36とが設けられている。第2横吊り込み溝35はそれぞれ概ね中間部33と膨出部34との境界に沿って形成され、第2横吊り込み溝35は両端において第2縦吊り込み溝36に接続している。
【0060】
第2横吊り込み溝35及び第2縦吊り込み溝36はそれぞれシートバック5のパッド部材31の前面に形成された後方に凹む溝である。第2横吊り込み溝35及び第2縦吊り込み溝36は、第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16と同様に、シートバック5の表皮材32を吊り込むために設けられている。
【0061】
図2に示すように、シートバック5のパッド部材31の前面と表皮材32の裏面との間には、静電容量センサ40が設けられている。静電容量センサ40は可撓性を有するフィルム状をなしている。静電容量センサ40は非接触式の近接センサであり、物体が近接したときにONとなる。より詳細には、静電容量センサ40は比誘電率の大きい物体がその表面から所定の距離(検出距離)以内に位置しているときにONとなる。ここでいう比誘電率の大きい物体とは比誘電率が10以上、より好ましくは30以上の物体であり、水や人体等を含む。検出距離は10センチメートル以下であり、より好ましくは30センチメートル以下である。
【0062】
図2に示すように、静電容量センサ40はシートバック5のパッド部材31の前面に沿うように設けられている。
図1に示すように、静電容量センサ40は左右の第2縦吊り込み溝36の間に位置している。また、静電容量センサ40は第2横吊り込み溝35の下方であり、且つ、乗員の腰部Hに対応する箇所、すなわち乗員の腰部Hの後方に設けられている(
図2を参照)。ここでいう腰部Hとはより正確には乗員の背面において腰椎の後方の部分を意味し、腰部Hの場所はJIS D4607で規定された自動車室内寸法測定用三次元座位人体模型を用いて定めることが好ましい。
【0063】
図1及び
図2に示すように、乗物用シート1にはそれぞれ乗員の着座を判定するための判定装置46が設けられている。判定装置46は中央演算処理装置(CPU)や、メモリ等の記憶装置を備えたコンピュータであって、外部からの信号が入力される入力部と、外部に信号を出力する出力部とを備えている。判定装置46は入力部において、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40に接続されている。本実施形態では、判定装置46は乗物用シート1のシートクッション4の下面にそれぞれ結合されている。判定装置46は入力部から入力される感圧センサユニット19からの信号(より詳細には、感圧センサユニット19のON、OFF)と、入力部から入力される静電容量センサ40からの信号(より詳細には、静電容量センサ40のON、OFF)とに基づいて、乗員が着座しているか否かを判定する判定処理を行う。以下に、
図5に示すフローチャートを参照して、判定処理の詳細について説明を行う。
【0064】
図5に示すように、判定装置46は最初のステップST1において、感圧センサユニット19がONであるかOFFであるかを判定する。感圧センサユニット19がONであるときにはステップST2を実行し、感圧センサユニット19がOFFであるときには判定処理を終える。
【0065】
判定装置46は、ステップST2において、静電容量センサ40がONであるかOFFであるかを判定する。判定装置46は静電容量センサ40がONであるときにはステップST3を実行し、静電容量センサ40がOFFであるときには判定処理を終える。
【0066】
判定装置46は、ステップST3において、出力部から乗員が着座していることを示す信号を出力し、判定処理を終える。
【0067】
判定装置46の出力部は、車体に搭載された制御装置48(ECU)に接続されているとよい。制御装置48(ECU)は例えば、車体の制御を行うコンピュータであってよい。車両駆動時に制御装置48は判定装置46に判定処理を実行するように指示し、判定装置46から出力される信号を受信して、着座している乗員が使用すべきシートベルトが使用されているか否かを判定するように構成するとよい。制御装置48は着座している乗員が使用すべきシートベルトが使用されていないと判定したときには、乗員に警告を発するとよい。
【0068】
次に、乗物用シート1の効果について説明する。判定装置46は感圧センサユニット19がONであり、且つ静電容量センサ40がONであるときに、乗員が着座していることに対応する信号を出力する。すなわち、判定装置46は感圧センサユニット19に含まれる感圧スイッチ20の信号(ON、OFF)と、静電容量センサ40の信号(ON、OFF)とに基づいて、乗員の着座を判定している。
【0069】
例えば、乗員が乗物用シート1に着座したときには、着座面7の
図6(A)の着色で示された部分に荷重が加わる。これにより、第2左感圧スイッチ対26L及び第2右感圧スイッチ対26RがそれぞれONとなり、感圧センサユニット19はONとなる。
図6(B)に示すように、乗員が
図6(A)の場合よりも前方に着座したした場合には、第1左感圧スイッチ対25L及び第1右感圧スイッチ対25RがそれぞれONとなる。これにより、感圧センサユニット19はONとなる。
図6(C)に示すように乗員が
図6(A)の場合よりも右方にずれて着座した場合であっても、第2左感圧スイッチ対26Lの右側の感圧スイッチ20及び第2右感圧スイッチ対26Rの右側の感圧スイッチ20がそれぞれONとなる。これにより、感圧センサユニット19はONとなる。このように、感圧センサユニット19を用いることで、乗員が前方、及び左右方向にずれた場合であっても、感圧センサユニット19がONになる。
【0070】
しかし、
図6(D)に示すように、例えば、袋入りの米(約30kg)を着座面7に載置したときには、着色で示された部分に荷重が加わり、第2左感圧スイッチ対26L及び第2右感圧スイッチ対26RがそれぞれONとなることがある。この場合には、判定装置46が感圧センサユニット19からの信号のみに基づいて判定を行うと、誤った信号を出力することになる。
【0071】
一方、静電容量センサ40は比誘電率の大きい物体がその表面から検出距離以内に位置しているときにONとなる。より詳細には、静電容量センサ40は、水や人体等の比誘電率の大きい物体が支持面8の人体の腰部後方に対応する部分から概ね検出距離以内に位置しているときにONとなる。よって、乗員(比誘電率は40程度)が着座面7に着座したとき、すなわち
図6(A)~(C)のときには静電容量センサ40はONとなる。着座面7に袋入りの米(比誘電率は4程度)が載置されたとき、すなわち
図6(D)のときには静電容量センサ40はOFFとなる。このように、判定装置46が感圧スイッチ20からの信号と、静電容量センサ40からの信号とに基づいて、乗員が着座しているか否かを判定しているため、例えば袋入りの米のような、重量が大きく且つ比誘電率の低い物体を区別することができる。このように、判定装置46を感圧スイッチ20からの信号と、静電容量センサ40からの信号とに基づいて判定を行うように構成することで、乗員が乗物用シート1に着座したことと、物品が着座面7に載置されたこととをより確実に判別することができる。
【0072】
また、本実施形態では、
図1に示すように、感圧センサユニット19はシートクッション4に、静電容量センサ40はシートバック5にそれぞれ設けられている。これにより、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40がともにシートクッション4に設けられた場合に比べて、それぞれに容易に配線することができ、組付が容易である。また、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40が別箇の部材に設けられることで、両者が重なり合うことがない。これにより、それぞれが着座時に乗員の身体が接する着座面7に近い位置に配置されるため、それぞれの感度を向上させることができる。
【0073】
感圧センサユニット19の感圧スイッチ20の電極が静電容量センサ40の近傍に配置されると、静電容量が正確に測定することが難しくなり、静電容量センサ40の感度が低下することがある。また感圧センサユニット19の表面に静電容量センサ40が配置されると、静電容量センサ40の重量によって感圧センサユニット19がONとなることがある。本実施形態では、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40が別箇の部材に設けられることで、互いに干渉することがなく、感圧センサユニット19の動作及び静電容量センサ40の動作がともに阻害され難い。
【0074】
図2に示すように、静電容量センサ40は乗員の腰部Hに対応する箇所、より詳細には乗員の腰椎の後方に設けられている。乗員が着座したときに、乗員の腰部Hはシートバック5の支持面8に接触又は近接し易い。静電容量センサ40は着座した乗員の腰部Hに対応する箇所に設けることによって、静電容量センサ40を着座した乗員の身体により近接させることができる。これにより、静電容量センサ40によって着座した乗員の身体をより確実に検知することができる。
【0075】
図3に示すように、第1サブユニット21及び第2サブユニット22はそれぞれ第1横吊り込み溝15の前後、且つ左右の第1縦吊り込み溝16の間に配置されている。このように、第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16を避けて感圧センサユニット19を配置することによって、感圧センサユニット19を容易に配置することができるとともに、感圧センサユニット19の変形や位置ずれを抑制することができる。また、第1サブユニット21及び第2サブユニット22を第1横吊り込み溝15の前後に分けて配置することで、シートクッション4の着座面7に加わる圧力をより広い範囲で検知することができる。これにより、乗員が着座面7の前部に着座したときや、左右に偏って着座したときにも、乗員が着座していることをより確実に検知することができる。
【0076】
図1に示すように、静電容量センサ40は左右の第2縦吊り込み溝36の間に配置されている。このように、吊り込み溝を避けて静電容量センサ40を配置することによって、静電容量センサ40を容易に組み付けることができるとともに、静電容量センサ40の変形や位置ずれを抑制することができる。
【0077】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る乗物用シート51は静電容量センサ40の数及び配置と、感圧センサユニット19の配置と、判定処理とが第1実施形態の乗物用シート1とは異なり、他の部分については第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0078】
図7には乗物用シート51の上面図が図示されている。但し、左側の乗物用シート51については、表皮材12の一部が取り外された状態で示されている。
図7に示すように、第2実施形態に係る乗物用シート51には2つの静電容量センサ53、54が設けられている。2つの静電容量センサ53、54はともにシートクッション4に配置されている。すなわち、シートクッション4には、感圧センサユニット19と2つの静電容量センサ40とが設けられている。2つの静電容量センサ40はともに、シートクッション4を構成するパッド部材11の表面と表皮材12の裏面との間に配置されている。
【0079】
2つの静電容量センサ40のうち、一方の静電容量センサ53(以下、第1静電容量センサ53)は第1横吊り込み溝15の前方であり、且つ、左右に対をなす第1縦吊り込み溝16の間に位置している。他方の静電容量センサ54(以下、第2静電容量センサ54)は第1横吊り込み溝15の後方であり、且つ、左右に対をなす第1縦吊り込み溝16の間に位置している。これにより、左右に延在する第1横吊り込み溝15の前後にそれぞれ2つの静電容量センサ53、54が配置される。第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54はそれぞれシート状に形成され、左右に延在する略長方形状をなしている。第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54はそれぞれ裏面において、シートクッション4を構成するパッド部材11の上面に面接触するように配置されている。
【0080】
感圧センサユニット19の第1サブユニット21は第1静電容量センサ53に上面視で少なくとも一部が重なるように配置されている。本実施形態では、第1サブユニット21は第1静電容量センサ53の上側に配置され、上面視で第1サブユニット21は第1静電容量センサ53の外周縁の内側に位置している。第1サブユニット21は裏面において第1静電容量センサ53に面接触するように配置されている。
【0081】
感圧センサユニット19の第2サブユニット22は第2静電容量センサ54に上面視で少なくとも一部が重なるように配置されている。本実施形態では、第2サブユニット22は第2静電容量センサ54の上側に配置され、上面視で第2サブユニット22は第2静電容量センサ54の外周縁の内側に位置している。第2サブユニット22は裏面において第2静電容量センサ54に面接触するように配置されている。
【0082】
判定装置46は感圧センサユニット19のON、OFFと、入力部から入力される2つの静電容量センサ40のON、OFFとに基づいて、乗員が着座しているか否かを判定する判定処理を行う。第2実施形態に係る乗物用シート51の判定装置46が行う判定処理は、第1実施形態に比べて、ステップST2のみが異なるため、他の部分については説明を省略する。
【0083】
判定装置46はステップST2において、第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54の少なくとも一方がONとなっているかを判定する。少なくとも一方がONとなっているときには、ステップST3を実行する。第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54のどちらもがOFFとなっているときには、判定処理を終える。
【0084】
次に、このように構成した乗物用シート51の効果について説明する。2つの静電容量センサ40はともに乗員が着座するシートクッション4の着座面7に近接するように設けられている。着座面7には着座した乗員が着実に触れる部分であるため、2つの静電容量センサ40を着座した乗員により近接させることができる。これにより、静電容量センサ40によって乗員の着座をより精度よく検知することができる。
【0085】
また、第1サブユニット21及び第1静電容量センサ53と、第2サブユニット22及び第2静電容量センサ54とはそれぞれ、上面視で重なるように配置されている。これによって、シートクッション4のパッド部材11の表面において、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40が配置される領域の面積を小さくすることができる。これにより、これにより、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40を配置することによって乗員に与えうる異物感をより抑えることができる。
【0086】
本実施形態では更に、第1サブユニット21は第1静電容量センサ53の外周縁の内側に配置され、第2サブユニット22は第2静電容量センサ54の外周縁の内側に配置されている。このように配置することによって、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40が互いに重なり合う領域の面積をより広げることができる。これにより、シートクッション4のパッド部材11の表面において、感圧センサユニット19及び静電容量センサ40が配置される領域の面積をより小さくすることができ、乗員に与えうる異物感をより抑えることができる。
【0087】
また、第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54はそれぞれ、左右の第1縦吊り込み溝16の間において、第1横吊り込み溝15の前後に配置されている。これにより、第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16を避けて第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54を配置することができるため、感圧センサユニット19及び2つの静電容量センサ53、54の組付が容易になるとともに、感圧センサユニット19及び2つの静電容量センサ53、54の変形や位置ずれを抑制することができる。第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54が第1横吊り込み溝15の前後に配置されることによって、乗員が着座面7の前部に着座した場合には第1静電容量センサ53がONとなり、乗員が後部に着座した場合には第2静電容量センサ54がONとなる。これにより、前後方向により広い範囲で、乗員の着座を検知することができる。
【0088】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る乗物用シート61は、第2実施形態に係る乗物用シート1に比べて、第1静電容量センサ53の形状と、第2静電容量センサ54の形状と、第1センサユニットの配置と、第2センサユニットの配置とが異なり、他の部分については第2実施形態と同様であるため、他の部分については説明を省略する。
【0089】
図8には、乗物用シート61の上面図が図示されている。但し、左側の乗物用シート61については、表皮材12の一部が取り外された状態で示されている。
図8に示すように、第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54はそれぞれシート状をなし、左右に延びる略長方形状をなしている。第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54にはそれぞれ、上下に貫通する開口63、64が1つずつ設けられている。開口63、64はそれぞれ左右方向に延びる略長方形状をなしている。
【0090】
第1静電容量センサ53は第1横吊り込み溝15の前方であり、且つ、左右に対をなす第1縦吊り込み溝16の間に位置している。第2静電容量センサ54は第1横吊り込み溝15の後方であり、且つ、左右に対をなす第1縦吊り込み溝16の間に位置している。これにより、開口63、64を有する2つの静電容量センサ53、54が左右に延在する第1横吊り込み溝15の前後にそれぞれ配置される。第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54はそれぞれ裏面において、シートクッション4のパッド部材11の上面に面接触している。
【0091】
第1サブユニット21は第1静電容量センサ53の開口63の内部に配置されている。第1サブユニット21は裏面においてシートクッション4のパッド部材11に面接触している。本実施形態では、第1サブユニット21の厚みと第1静電容量センサ53の厚みとは概ね等しく、第1サブユニット21の上面と第1静電容量センサ53の上面とは面一となっている。
【0092】
第2サブユニット22は第2静電容量センサ54の開口64の内部に配置されている。第2サブユニット22は裏面においてシートクッション4のパッド部材11に面接触している。本実施形態では、第2サブユニット22の厚みと第2静電容量センサ54の厚みとは概ね等しく、第2サブユニット22の上面と第2静電容量センサ54の上面とは面一となっている。
【0093】
第1静電容量センサ53、第2静電容量センサ54、第1サブユニット21、及び第2サブユニット22はそれぞれ、シートクッション4のパッド部材11と表皮材12との間に配置されている。
【0094】
次に、このように構成した乗物用シート61の効果について説明する。第1サブユニット21は第1静電容量センサ53の開口63の内部に配置されている。これにより、第1サブユニット21の上面と第1静電容量センサ53の上面との間に段差が生じ難くなる。同様に、第2サブユニット22は第2静電容量センサ54の開口64の内部に配置されているため、第2サブユニット22の上面と第2静電容量センサ54の上面との間に段差が生じ難くなる。これにより、着座面7に段差が生じ難くなり、着座感を向上させることができる。また、本実施形態では、第1サブユニット21の上面と第1静電容量センサ53の上面とが面一であり、第2サブユニット22の上面と第2静電容量センサ54の上面とは面一であるため、着座面7がより平坦になっている。これにより、着座感を一層向上させることができる。
【0095】
また、第1静電容量センサ53及び第2静電容量センサ54は、左右の第1縦吊り込み溝16の間において、第1横吊り込み溝15の前後に配置されている。これにより、第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16を避けて2つの静電容量センサ53、54を配置することができるため、静電容量センサ53、54の組付が容易であり、感圧センサユニット19及び2つの静電容量センサ53、54の変形や位置ずれを抑制することができる。また2つの静電容量センサ53、54を第1横吊り込み溝15の前後に配置することで、前後方向により広い範囲で、乗員の着座を検知することができる。
【0096】
<<第4実施形態>>
第4実施形態に係る乗物用シート71は、第1実施形態に係る乗物用シート1に比べて、静電容量センサ40の配置と、感圧センサユニット19の構成及び配置とが異なり、他の部分については第1実施形態の乗物用シート1と同様であるため、他の部分については説明を省略する。
【0097】
図9には、乗物用シート71の上面図が図示されている。但し、左側の乗物用シート71については、表皮材12の一部が取り外された状態で示されている。
図9に示すように、静電容量センサ40はシートクッション4のパッド部材11の表面と、シートクッション4の表皮材12の裏面との間に設けられている。静電容量センサ40はパッド部材の表面において、第1横吊り込み溝15の前方、且つ左右の第1縦吊り込み溝16の間に配置されている。静電容量センサ40は裏面においてシートクッション4のパッド部材11の表面に面接触している。
【0098】
感圧センサユニット19は第1実施形態とは異なり、第2サブユニット22を備えておらず、第1サブユニット21のみを備える。第1左感圧スイッチ対25LがONであり、且つ第1右感圧スイッチ対25RがONであるときに、感圧センサユニット19はONになる。
【0099】
感圧センサユニット19(第1サブユニット21)もまた、シートクッション4のパッド部材11の表面と、シートクッション4の表皮材12の裏面との間に設けられている。感圧センサユニット19は第1横吊り込み溝15の後方、且つ左右の第1縦吊り込み溝16の間に配置されている。感圧センサユニット19は裏面においてシートクッション4のパッド部材の表面に面接触している。
【0100】
次に、このように構成した乗物用シート71の効果について説明する。感圧センサユニット19及び静電容量センサ40がともに、着座面7に近い位置に配置されるため、乗員の着座をより感度よく検知することができる。また、第1横吊り込み溝15及び第1縦吊り込み溝16を避けて感圧センサユニット19及び静電容量センサ40を配置されているため、シートクッション4への組付が容易である。また、乗員が着座したときの感圧センサユニット19及び静電容量センサ40の変形や位置ずれを抑制することができる。また、感圧センサユニット19を第1横吊り込み溝15の後方に配置することによって、第1横吊り込み溝15の前方に配置する場合に比べて、感圧センサユニット19に乗員の荷重が加わり易くなるため、乗員の着座の検知をより確実に検知することができる。
【0101】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記第2実施形態において、感圧センサユニット19と静電容量センサ40とは別箇に構成されていたが、1つのシート状部材に感圧スイッチ20と静電容量センサ40とが設けられる態様であってもよい。また、上記実施形態において、判定装置46はシートクッション4の下面に結合されていたが、この態様には限定されない。例えば、判定装置46はフロア3上の所定の場所に配置されていてもよく、制御装置48に内蔵されたソフトウエアによって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 :第1実施形態に係る乗物用シート
4 :シートクッション
5 :シートバック
6 :ヘッドレスト
15 :第1横吊り込み溝
20 :感圧スイッチ(圧力センサ)
36 :第2縦吊り込み溝
40 :静電容量センサ
46 :判定装置
51 :第2実施形態に係る乗物用シート
53 :第1静電容量センサ
54 :第2静電容量センサ
61 :第3実施形態に係る乗物用シート
63、64 :開口
71 :第4実施形態に係る乗物用シート
H :腰部