(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】誘導加熱器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20230427BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
H05B6/12 308
H05B6/12 319
A47J27/00 103A
(21)【出願番号】P 2019141317
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】藤田 將雄
(72)【発明者】
【氏名】津上 結
【審査官】八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-026470(JP,A)
【文献】特開2017-200541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体と、
前記被加熱体に対向するように配設される第1誘導加熱コイルと、
前記被加熱体に対向すると共に前記第1誘導加熱コイルと離間するように前記第1誘導加熱コイルの外側に配設される第2誘導加熱コイルと、
前記第1誘導加熱コイルの被加熱体側の反対側に配設される第1防磁部と、
前記第2誘導加熱コイルの被加熱体側の反対側に配設される第2防磁部と、
前記被加熱体の下側に配設される、排気口が形成された底壁部と、
を備え、
平面透視において少なくとも一部が前記第1誘導加熱コイルの外周と前記第2誘導加熱コイルの外周との間に配設される第3防磁部
と、
前記第1防磁部の下側に配設される第4防磁部と、をさらに備え
、
前記排気口の少なくとも一部は、平面透視において前記第3防磁部と前記第4防磁部との間に形成されている、
誘導加熱器。
【請求項2】
前記第3防磁部は、環状形を呈している
請求項1に記載の誘導加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に上面が開口した炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱自在に収納される内鍋と、前記炊飯器本体内の前記内鍋を収納する保護枠と、前記保護枠の底部に設置し前記内鍋の底面に沿う第1の加熱コイルおよび前記内鍋の側面下部に沿う第2の加熱コイルと、前記第1および第2の加熱コイルに高周波電力を供給して前記内鍋を誘導加熱するインバータと、前記インバータを制御して炊飯時や保温時等の誘導加熱を制御する制御手段と、誘導加熱時に前記第1および第2の加熱コイルからの漏れ磁界が外部に漏れるのを防ぐ非磁性体金属板とを備え、前記非磁性体金属板は、前記第1および第2の加熱コイルに対面するように前記炊飯器本体の底面部に設置し、端面を前記第2の加熱コイルに沿う形に全周にわたって折り曲げ部を有しリング状に形成した炊飯器が提案されている(例えば、特開2010-240051号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、誘導加熱式炊飯器等の誘導加熱器には、誘導加熱コイルから発生する磁界を外部に漏らさないようにするために誘導加熱コイルの外側周辺に防磁部材(例えば、特許文献1における非磁性体金属板)が設置される。このような防磁部材は、一般的に誘導加熱コイル全てを下から覆うために有底円筒状を呈しており、誘導加熱器本体の底壁部の上側に設置される。しかし、かかる場合、誘導加熱器本体の底壁部に排気口を形成したとしても効率的に排気(排熱)を行うことができないという不具合が生じる。
【0005】
本発明の課題は、誘導加熱コイルから発生する磁界に対して防磁を十分に行いつつも効率的に排気(排熱)を行うことができる誘導加熱器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る誘導加熱器は、
被加熱体と、
前記被加熱体に対向するように配設される第1誘導加熱コイルと、
前記被加熱体に対向すると共に前記第1誘導加熱コイルと離間するように前記第1誘導加熱コイルの外側に配設される第2誘導加熱コイルと、
前記第1誘導加熱コイルの被加熱体側の反対側に配設される第1防磁部と、
前記第2誘導加熱コイルの被加熱体側の反対側に配設される第2防磁部と、
前記被加熱体の下側に配設される、排気口が形成された底壁部と、
を備え、
平面透視において少なくとも一部が前記第1誘導加熱コイルの外周と前記第2誘導加熱コイルの外周との間に配設される第3防磁部と、
前記第1防磁部の下側に配設される第4防磁部と、をさらに備え、
前記排気口の少なくとも一部は、平面透視において前記第3防磁部と前記第4防磁部との間に形成されている。
【0007】
上記構成によれば、第1誘導加熱コイルの被加熱体側の反対側に第1防磁部が配設され、第2誘導加熱コイルの被加熱体側の反対側に第2防磁部が配設され、平面透視において前記第1誘導加熱コイルの外周と前記第2誘導加熱コイルの外周との間に第3防磁部の少なくとも一部が配設される。そして、この誘導加熱器では、第1誘導加熱コイルから発生する磁界が外部に漏れ出るのを第1防磁部が抑制し、第2誘導加熱コイルから発生する磁界が外部に漏れ出るのを第2防磁部が抑制し、さらに、第1防磁部および第2防磁部の間から漏れる磁界が外部に漏れ出るのを第3防磁部が抑制する。このため、この誘導加熱器では、誘導加熱コイルから発生する磁界に対して防磁を十分に行うことができると共に、第1防磁部、第2防磁部および第3防磁部の間に排気空間を確保することができる。したがって、この誘導加熱器では、誘導加熱コイルから発生する磁界に対して防磁を十分に行いつつも効率的に排気を行うことができる。
【0008】
また、この誘導加熱器では、第3防磁部が設けられることによって、第1防磁部と第2防磁部との距離を比較的自由に設定することができ、延いては第1誘導加熱コイルおよび第2誘導加熱コイルとの距離を比較的自由に設定することができる。このため、この誘導加熱器では、加熱効率を調節することができる。
【0009】
また、上記構成によれば、第3防磁部と第4防磁部との間の排気空間を短距離で排気口に連通させることができ、第3防磁部と第4防磁部との間に流れてくる排気を効率よく排気口に導くことができる。
【0010】
本発明では、
前記第3防磁部は、環状形を呈していると好適である。
【0011】
本願発明者の鋭意検討の結果、第3防磁部材を環状にした場合、非環状にした場合よりも防磁効果が向上することが明らかとなった。このため、この誘導加熱器では、誘導コイルから発生する磁界が外部に漏れ出ることをより一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る炊飯器の平面図である。
【
図4】
図2のII-II部分断面図である(本発明の実施の形態に係る炊飯器の本体をフェライトコア配設方向に沿って切断したものであり、肩部材等のいくつかの部材の描画が省略されている。)。
【
図5】
図2のIII-III部分断面図である(肩部材等のいくつかの部材の描画が省略されている。)。
【
図6】本発明の実施の形態に係る炊飯器から底壁を取り外した状態の底面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成する底壁、横遮蔽板および底遮蔽板を示す平面図である。
【
図8】横遮蔽板を配設していない場合における本発明の実施の形態に係る炊飯器の垂直方向の磁界強度測定結果である。
【
図9】横遮蔽板を配設した場合における本発明の実施の形態に係る炊飯器の垂直方向の磁界強度測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の構造>
本発明の実施の形態に係る炊飯器100は、誘導加熱式の圧力炊飯器であって、
図1~
図3に示されるように、主に、本体110、内鍋130、蓋体140およびヒンジ機構150から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0014】
1.本体
本体110は、
図1~
図3に示されるように、主に、筐体111、取っ手112、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体121、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、操作パネル117、電源回路基板118、制御回路基板119および自動巻取式電源コードユニット120から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0015】
(1)筐体
筐体111は、
図1、
図3および
図6に示されるように、主に、側壁111a、底壁111b、肩部材111cおよび保護枠111dから構成されており、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体121、横遮蔽板SP1、底遮蔽板SP2、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、電源回路基板118、制御回路基板119および自動巻取式電源コードユニット120等を収容している。また、肩部材111cの前側の上側には操作パネル117が配設されている。以下、筐体111の各構成要素について詳述する。
【0016】
側壁111aは、
図6に示されるように平面視において略長方形を呈する囲い壁であって、
図1および
図3に示されるように本体110の側面を覆っている。
【0017】
底壁111bは、略方形の板状体であって、
図1および
図3~5に示されるように側壁111aの下側に嵌め込まれており、側壁111aの下側の開口を覆っている。底壁111bには、
図7に示されるように、主に、カバー部材収容部127a、吸気口Osおよび排気口Oeが形成されている。カバー部材収容部127aは、サーミスタ114(後述)を支持するカバー部材127(後述)を収容するための部位であって、
図7に示されるように、底壁111bの中央部に形成されている。吸気口Osは、筐体111の外部の空気を内部に吸い込むための部位であって、
図3および
図7に示されるように、底壁111bの前方部に形成されている。排気口Oeは、筐体111の内部の空気を外部に排出するための部位であって、
図7に示されるように、底壁111bの後方部および左右両側部に形成されている。ここで、
図7に示されるように、底壁111bの後方部に形成される排気口Oeの一部は、平面透視において横遮蔽板SP1(後述)および底遮蔽板SP2(後述)の間に形成されている。また、底壁111bの左右両側部に形成される排気口Oeは、平面透視において横遮蔽板SP1(後述)および底遮蔽板SP2(後述)の間に形成されている。なお、
図3に示されるように、吸気口Osの直上には、送風ファン115が配設されている。この送風ファン115が駆動されると、吸気口Osを通って外部の空気が筐体111の内部に吸い込まれ、それによって生じる空気流れにより内部の加熱空気が排気口Oeから系外に排出される。また、底壁111bの上面の中央部には、底遮蔽板SP2(後述)が配設されている。
【0018】
また、
図4に示されるように、この底壁111bの内側(上側)には、フェライトコア組立体121から第2フェライトコアFC2が完全に脱落することを防止するための上方突起部ST1が設けられている。
【0019】
肩部材111cは、略方形状の枠体であって、
図1および
図3に示されるように側壁111aの上側に嵌合されており、側壁111aの上側の開口の縁部を覆っている。そして、
図3に示されるように、この肩部材111cの下側には、保護枠111dが取り付けられている。なお、
図3に示されるように、保護枠111dは保護枠フランジ部FP(後述)で肩部材111cに取り付けられている。
【0020】
保護枠111dは、内鍋130の外周を保護すると共に肩部材111cの形状を保つ役目を担う部材であって、
図3に示されるように、主に、内鍋収容部PAおよび保護枠フランジ部FPから形成されている。内鍋収容部PAは、内鍋130の外周を覆う椀状の部位である。保護枠フランジ部FPは、上述の通り、肩部材111cの下側に配設されており、肩部材111cを外側に向かって張ることにより肩部材111cの形状を維持している。
【0021】
(2)取っ手
取っ手112は、使用者が炊飯器100を手で持ち運ぶために設けられている部材であって、
図6に示されるように本体部112aおよび軸部112bから構成されている。本体部112aは、
図6に示されるようにコの字状を呈している。軸部112bは、
図6に示されるように本体部112aの両端から内側に向かって延びている。なお、この炊飯器100において、この軸部112bは、側壁111aの長手方向中央の上部に形成される孔(図示せず)を通って、保護枠111dに形成される嵌合部(図示せず)に嵌合されている。
【0022】
(3)断熱材
断熱材は、保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁および誘導加熱コイル113の外周に巻き付けられており、炊飯時において内鍋130から生じる熱が内鍋収容部PAの外側に流出するのを抑制する役割を担っている。
【0023】
(4)誘導加熱コイル
誘導加熱コイル113は、磁界を発生させて内鍋130を誘導加熱する誘導加熱源であって、
図3~6に示されるように、主に、第1誘導加熱コイル113aおよび第2誘導加熱コイル113bから構成されている。第1誘導加熱コイル113aは、
図4および
図5に示されるように、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部の下側に配設されている。第2誘導加熱コイル113bは、
図4および
図5に示されるように、第1誘導加熱コイル113aと離間するように保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁下端部の外側において、内鍋収容部PAの湾曲面に沿うように配設されている。
【0024】
(5)フェライトコア組立体
フェライトコア組立体121は、
図6に示されるように誘導加熱コイル113の周囲に4つ配設されている。このフェライトコア組立体121は、
図4に示されるように第1フェライトコアFC1、第2フェライトコアFC2およびフェライトコアホルダ122から構成されている。第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2は、同寸法の直方体状のフェライトコアである。第1フェライトコアFC1は、通電時に第1誘導加熱コイル113aから発生する磁界が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っており、
図4に示されるように、第1誘導加熱コイル113aと対向するように配設されている。第2フェライトコアFC2は、通電時に第2誘導加熱コイル113bから発生する磁界が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っており、
図4に示されるように、第2誘導加熱コイル113bと対向するように配設されている。そして、第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2は、
図4に示されるようにフェライトコアホルダ122に収容されると共に固定されている。また、第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2との間には、接着の役目および第1フェライトコアFC1の下方への抜けを防止する壁の役目を担う絶縁性接着剤(例えば、室温硬化型のシリコーンゴム等)が注入されている。
【0025】
フェライトコアホルダ122には、第1誘導加熱コイル支持部(図示せず)および第2誘導加熱コイル支持部(図示せず)が形成されている。第1誘導加熱コイル支持部は、第1誘導加熱コイル113aを支持する役目を担う突起部位である。第2誘導加熱コイル支持部は、第2誘導加熱コイル113bを支持する役目を担う凹状の湾曲部位である。
【0026】
(6)横遮蔽板
横遮蔽板SP1は、金属(例えば、アルミニウム等)から形成される環状部材であって、第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2の間から漏れる磁界が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っている。ここで、横遮蔽板SP1の前方側の中央部は、
図6に示されるように、底面視において第1誘導加熱コイル113aの内周と外周との間に位置するように配設されている。そして、横遮蔽板SP1の前方側の中央部以外は、
図6に示されるように、底面視において第1誘導加熱コイル113aの外周と第2誘導加熱コイル113bの外周との間に位置するように配設されている。さらに、横遮蔽板SP1は、
図4および
図5に示されるように、側面視において第2誘導加熱コイル113bより下方に位置するように配設されている。なお、横遮蔽板SP1は、
図6および
図7に示されるように、底壁111bおよびフェライトコアホルダ122により挟持されている。
【0027】
ここで、横遮蔽板SP1の防磁性能を確認するために、直径2メートルの3軸でのループアンテナにより炊飯器100に対して縦方向の磁界強度を測定した。横遮蔽板SP1を配設していない場合における測定結果を
図8に、横遮蔽板SP1を配設した場合における測定結果を
図9にそれぞれ示す。
図8および
図9において、横軸は周波数(MHz)であり、縦軸は磁界強度(dB(μA))であり、QPは電波法で規定されている垂直方向における磁界強度の限度値である。横遮蔽板SP1を配設していない場合、
図8に示されるように、電波法で規定されている垂直方向における磁界強度の限度値に対してわずか+2.1dBのマージンしか確保できなかった。しかし、横遮蔽板SP1を配設した場合、
図9に示されるように、電波法で規定されている垂直方向における磁界強度の限度値に対して+6.3dBものマージンを確保することができた。
【0028】
(7)底遮蔽板
底遮蔽板SP2は、第1誘導加熱コイル113aから発生する磁界が外部に漏れ出るのを抑制すると共に熱を遮蔽する役目を担っている。底遮蔽板SP2は、
図4~7に示されるように、略長方形状を呈しており中央部が円形に開口している板状部材であり、金属(例えば、アルミニウム等)から形成される。底遮蔽板SP2は、上述の通り、底壁111bの上面の中央部に配設されている。さらに、底遮蔽板SP2は、排気口Oeを塞がないように配設されている。
【0029】
(8)サーミスタ
サーミスタ114は、温度センサであって、
図3~5に示されるように、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部の中央部に形成された開口を通って、上方に向かって突出している。なお、このサーミスタ114は、コイルバネ等の付勢部材によって上方に付勢されている。すなわち、このサーミスタ114は、上下方向に沿って出没自在な状態とされている。また、このサーミスタ114は、内鍋検知センサ(図示せず)に組み込まれている。内鍋検知センサは、炊飯器100内に内鍋130が存在するか否かを判断するためのものであって、サーミスタ114が下端位置まで下がると、検知信号を制御回路基板119のマイクロコンピュータに送信する。マイクロコンピュータは、検知信号を受信すると、炊飯器内に内鍋130が存在すると判断する。なお、マイクロコンピュータが、炊飯器内に内鍋130が存在しないと判断した場合、炊飯運転が開始されない。ところで、このサーミスタ114は、
図3~6に示されるように略円盤状のカバー部材127によって支持されている。このカバー部材127は、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁にネジ止めされている。そして、カバー部材127は、
図6および
図7に示されるように、底遮蔽板SP2の開口部分を通ってカバー部材収容部127aに収容される。
【0030】
(9)送風ファン
送風ファン115は、上述の通り、筐体111の底壁111bに形成される吸気口Osの直上に、回転軸が略上下方向に沿うようにして配設されている(
図3参照)。すなわち、この送風ファン115が駆動されると、外部の空気が吸気口Osから吸い込まれて筐体内に流入し、そのまま上方に向かって送られる。上方に向かって送られた外部の空気は、ヒートシンク116を通って電源回路基板118および制御回路基板119などに供給されて、それらの部材等を冷却する。
【0031】
(10)ヒートシンク
ヒートシンク116は、外部の空気と効率よく熱交換を行わせる部品である。
【0032】
(11)操作パネル
操作パネル117は、炊飯器100の運転方法を決定して実行するためのものであって、
図1~3に示されるように、主に、パネル本体117aおよび押圧ボタンBT等から構成されており、上述の通り、肩部材111cの前側の上側に配設されている。
【0033】
(12)電源回路基板
電源回路基板118は、電源回路を構成する基板であって、いくつかの発熱部品を実装している。なお、この電源回路基板118は、
図3に示されるように後述する制御回路基板119と同様に筐体111の前側空間SPfに収容されている。
【0034】
(13)制御回路基板
制御回路基板119は、制御回路を構成する基板であって、マイクロコンピュータ等の電子部品を実装している。この制御回路基板119は、
図3に示されるように筐体111の前側空間SPfに収容されており、ヒートシンク116の上方、操作パネル117の下側に配設されている。
【0035】
(14)自動巻取式電源コードユニット
自動巻取式電源コードユニット120は、電源コードおよび自動巻取機構(図示せず)等から構成されており、
図3および
図6に示されるように筐体111の後側の空間に収容されている。電源コードは、差込プラグOPおよび電気線(図示せず)から構成されている。差込プラグOPは、電気線の先端に配設されている。電気線は、伸展自在に自動巻取機構に巻回されている。
【0036】
2.内鍋
内鍋130は、上方に開口する椀状の鍋であって、肩部材111cの開口に挿通されると共に、保護枠111dの内鍋収容部PAに所定の隙間をもって収容される。なお、ここで、内鍋130は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)であって、誘導加熱コイル113によって誘導加熱され得る。
【0037】
3.蓋体
蓋体140は、
図1~3に示されるように、主に、外装体141、開閉ボタン142、圧力調整機構143、補強部材(図示せず)、内蓋145およびレバー部材146から構成されている。ヒンジ機構150を介して本体110に回動自在に取り付けられている。
【0038】
外装体141は、
図1~3に示されるように、略直方体状の部材であって、開閉ボタン142、圧力調整機構143およびレバー部材146等を収容している。なお、ここで、開閉ボタン142は、
図1および
図2に示されるように、上面が外装体141の上側に露出するように外装体141に配設されている。また、ここで、この外装体141は、使用時の内圧に耐えることができるように補強部材によって補強されている。さらに、この外装体141の下面には、着脱自在に内蓋145が配設されている。
【0039】
開閉ボタン142は、蓋体140を開閉するための角丸長方形状のボタンであって、レバー部材146の上側に配設されている。なお、この開閉ボタン142は、コイルバネ(図示せず)によって上方に向かって付勢されている。
【0040】
レバー部材146は、当接板部(図示せず)と、当接板部の前側から下方に延びる左右一対の延設板部(図示せず)と、各延設板部の下部から後方に向かって延びる爪部(図示せず)とから形成される金属板部材であって、外装体141に軸支されていると共に、当接板部の後端でコイルバネ(図示せず)によって上方に向かって付勢されている。なお、ここで、使用者によって開閉ボタン142が押し下げられると、開閉ボタン142は、レバー部材146の当接板部のうち回動軸の後側の部位に当接する。
【0041】
そして、使用者が蓋体140を閉状態としようとするとき、使用者は開閉ボタン142を操作する必要がなく、そのまま蓋体140を本体110に向かって倒し込めばよい。このとき、レバー部材146の爪部が、肩部材111cに形成される傾斜面(図示せず)に接触しながら下方に移動していく。この間、レバー部材146は、コイルバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。そして、爪部が、肩部材111cに形成される爪受孔(図示せず)まで達すると、コイルバネの付勢力により爪部がその爪受孔に嵌り込む。このようにして蓋体140が閉状態となる。一方、蓋体140を開状態とするとき、使用者は、開閉ボタン142を押し下げる。すると、開閉ボタン142の下端部位がレバー部材146の当接部に当接し、レバー部材146がコイルバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。このとき、爪受孔に嵌り込んでいた爪部が爪受孔から引き出される。そして、ヒンジ機構150の付勢力により蓋体140が上方に持ち上げられ、蓋体140が開状態となる。
【0042】
圧力調整機構143は、蓋体140が閉状態とされ圧力炊飯運転されている状態において、内鍋130の内部の圧力を1.03~1.3気圧に調整する。また、この圧力調整機構143は、圧力炊飯運転中、蓋体140を開状態としないようにレバー部材146の回動を規制する。なお、本実施の形態において、この圧力調整機構としては、特に限定されず、従前のものが採用されてもかまわない。
【0043】
補強部材は、蓋体140の強度を高めるためのものである。なお、本実施の形態において、補強部材は、特に限定されず、金属板そのものであってもよいし、金属板を複雑形状にしたものであってもよい。
【0044】
内蓋145は、
図3に示されるように内鍋130の上部を覆って密閉するための部材である。
【0045】
4.ヒンジ機構
ヒンジ機構150は、上述の通り、蓋体140が本体110に対して回動自在となるように蓋体140を本体110に取り付けている。なお、上述の通り、このヒンジ機構150は、蓋体140を開方向に向かって付勢している。
【0046】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、第1誘導加熱コイル113aが保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部の下側に配設され、第2誘導加熱コイル113bが第1誘導加熱コイル113aと離間するように保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁下端部の外側に配設されている。そして、通電時に第1誘導加熱コイル113aから発生する磁界が外部に漏れ出るのを抑制する第1フェライトコアFC1が、第1誘導加熱コイル113aと対向するように配設されている。通電時に第2誘導加熱コイル113bから発生する磁界が外部に漏れ出るのを抑制する第2フェライトコアFC2が、第2誘導加熱コイル113bと対向するように配設されている。さらに、第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2の間から漏れる磁界が外部に漏れ出るのを抑制する横遮蔽板SP1の少なくとも一部が、第1誘導加熱コイル113aの外周と第2誘導加熱コイル113bの外周との間に位置するように配設されている。このため、この炊飯器100では、第1誘導加熱コイル113aおよび第2誘導加熱コイル113bから発生する磁界に対して防磁を十分に行うことができると共に、第1フェライトコアFC1、第2フェライトコアFC2および横遮蔽板SP1の間に排気空間を確保することができる。したがって、この炊飯器100では、誘導加熱コイル113a,113bから発生する磁界に対して防磁を十分に行いつつも効率的に排気を行うことができる。
【0047】
(2)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、横遮蔽板SP1として、金属製の環状部材が採用されている。そして、直径2メートルの3軸でのループアンテナによりこの炊飯器100の縦方向の磁界強度を測定したところ、電波法で規定されている垂直方向における磁界強度の限度値に対して+6.3dBものマージンを確保できることが明らかとなった。このため、この炊飯器100では、誘導加熱コイル113から発生する磁界に対して防磁を十分に行うことができる。
【0048】
(3)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、筐体111の底壁111bの後方部および左右両側部に排気口Oeが形成されているが、底壁111bの左右両側部に形成された排気口Oeは、第1フェライトコアFC1、第2フェライトコアFC2、横遮蔽板SP1および底遮蔽板SP2によって塞がれていない。また、底壁111bの後方部に形成された排気口Oeは、第1フェライトコアFC1、第2フェライトコアFC2および底遮蔽板SP2によって塞がれておらず、横遮蔽板SP1によってわずかに塞がれているだけである。このため、横遮蔽板SP1と底遮蔽板SP2との間の排気空間を短距離で排気口Oeに連通させることができ、横遮蔽板SP1と底遮蔽板SP2との間に流れてくる排気を効率よく排気口Oeに導くことができる。
【0049】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2の間から漏れる磁界が外部に漏れ出るのを抑制する部材として、金属(例えば、アルミニウム等)製の環状部材である横遮蔽板SP1が採用されていたが、横遮蔽板SP1に代えて、例えば、金属リード線が採用されてもよい。
【0050】
(B)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、横遮蔽板SP1の前方側の中央部は、底面視において第1誘導加熱コイル113aの内周と外周との間に位置するように配設されていた。しかし、横遮蔽板SP1の前方側の中央部は、底面視において第1誘導加熱コイル113aの外周と第2誘導加熱コイル113bの外周との間に位置できるように設計されてもよい。かかる場合、横遮蔽板SP1全体が、底面視において第1誘導加熱コイル113aの外周と第2誘導加熱コイル113bの外周との間に位置するように配設されることになる。
【0051】
(C)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、底遮蔽板SP2は略長方形状を呈していた。しかし、底遮蔽板SP2の形状は特に限定されない。
【0052】
(D)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、筐体111の底壁111bの後方部に形成される排気口Oeの少なくとも一部は、平面透視において横遮蔽板SP1および底遮蔽板SP2の間に形成されていた。また、底壁111bの左右両側部に形成される排気口Oeは、平面透視において横遮蔽板SP1および底遮蔽板SP2の間に形成されていた。しかし、排気口Oeは、平面透視において底遮蔽板SP2の外側に形成されていればよい。
【0053】
(E)
先の実施の形態に係る炊飯器では、横遮蔽板SP1として環状部材が採用されていたが、横遮蔽板SP1として部分環状部材が採用されてもよい。
【0054】
(F)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、第2誘導加熱コイル113bは、第1誘導加熱コイル113aと離間するように保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁下端部の外側において、内鍋収容部PAの湾曲面に沿うように配設されていた。しかし、第2誘導加熱コイル113bは、内鍋収容部PAの側壁の外周面に沿うように配設されてもよい。
【0055】
(G)
先の実施の形態では本発明が炊飯器100に適用されたが、本発明は他の誘導加熱式加熱器(誘導加熱式のホットプレート、電気ケトル、電気湯沸し器等)に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 :炊飯器(加熱調理器)
111b:底壁(底壁部)
113 :誘導加熱コイル
113a:第1誘導加熱コイル
113b:第2誘導加熱コイル
130 :内鍋(被加熱体)
FC1 :第1フェライトコア(第1防磁部)
FC2 :第2フェライトコア(第2防磁部)
Oe :排気口
SP1 :横遮蔽板(第3防磁部)
SP2 :底遮蔽板(第4防磁部)