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特許7269484冷間タンデム圧延設備及び冷間タンデム圧延方法
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  • 特許-冷間タンデム圧延設備及び冷間タンデム圧延方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】冷間タンデム圧延設備及び冷間タンデム圧延方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 38/00 20060101AFI20230427BHJP
   B21B 1/24 20060101ALI20230427BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B21B38/00 G
B21B1/24
B21B38/00 F
B21C51/00 P
B21C51/00 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019149100
(22)【出願日】2019-08-15
(65)【公開番号】P2021030240
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】白石 利幸
(72)【発明者】
【氏名】明石 透
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
(72)【発明者】
【氏名】柴山 淳史
(72)【発明者】
【氏名】有田 吉宏
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0070181(KR,A)
【文献】特開平05-232045(JP,A)
【文献】特開平01-320455(JP,A)
【文献】特開2013-205381(JP,A)
【文献】特開2010-064122(JP,A)
【文献】特開2015-139810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 38/00
B21C 51/00
B21B 1/00-1/46
G01N 21/89、
21/892、21/894
G01N 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機における複数の圧延機スタンドのうち、少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側に、圧延すべきストリップの、破断に至っていない破れ部の発生を検出する破れ部検出装置が配設されており、かつその破れ部検出装置による検出結果に基づいて冷間タンデム圧延機による圧延を緊急停止させる非常停止装置を具備しており、
前記破れ部検出装置が、音響式の検出装置であることを特徴とする冷間タンデム圧延設備。
【請求項2】
請求項に記載の冷間タンデム圧延設備によってストリップを冷間圧延するにあたり、
前記破れ部検出装置によって破れ部が検出された時に、前記非常停止装置を作動させて圧延を停止させることを特徴とする冷間タンデム圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の製造工程において、熱間圧延上がりの鋼帯(熱延鋼帯)を、連続的に冷間圧延するための冷間タンデム圧延設備及び圧延方法に関し、とりわけ高合金鋼等、として板幅方向での変形抵抗の分布が、長手方向に不均一に生じた熱間圧延上がりのストリップを連続冷間圧延するに適した冷間タンデム圧延設備及び冷間タンデム圧延方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記、板幅方向での変形抵抗の分布が、長手方向に不均一に生じた熱間圧延上がりのストリップとして、具体的な例としては、高張力鋼板(ハイテン鋼板)、ステンレス鋼板、電磁鋼板等がある。また、熱間圧延上がりの鋼帯(熱延鋼帯)の製造プロセスとしては、鋼スラブを粗圧延機及び仕上げ圧延機により熱間圧延してコイルに巻き取り、さらにそのコイルを大気中で冷却する製造プロセスや、粗圧延を省略して仕上げ圧延に相当する熱間圧延を行ってコイルに巻き取り、そのコイルを大気中で冷却する製造プロセス等がある。また、薄板連続鋳造圧延法として知られる双ロール式連続鋳造法あるいはベルト式連続鋳造法等によって製造された薄肉鋳片(薄肉スラブ)については、粗圧延を施すことなく、直ちに仕上げ圧延機に相当するインラインミルで圧下してコイルに巻き取り、さらにそのコイルを大気中で冷却する製造プロセス、さらに、連続鋳造から熱間粗圧延を経て熱間仕上げ圧延までを、途切れることなく一連続で行う製造プロセスもある。
【0003】
以降、ここでは一例として、鋼スラブを粗圧延機及び仕上げ圧延機により熱間圧延してコイルに巻き取り、さらにそのコイルを大気中で冷却したストリップコイルを冷間圧延する工程を含む製造プロセスにより無方向性電磁鋼板を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0004】
例えば、特許文献1には、質量%でC≦0.008、2≦Si+Al≦3、0.02≦Mn≦1.0、S≦0.003、N≦0.002、Ti≦0.003、0.001≦REM≦0.02、更に、0.3≦Al/(Si+Al)≦0.5の関係を満足し、残部Fe及び不可避的な不純物を含む無方向性電磁鋼板スラブを、熱間仕上げ圧延温度が1050℃以上となるような温度範囲で熱間仕上げ圧延を行い、その後の無注水時間を1秒以上7秒以下とし、注水冷却により700℃以下で巻取りを行うことにより、熱間仕上げ圧延後の冷却過程により熱延版焼鈍工程を代替する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-242186号公報
【文献】特開昭60-46804号公報
【文献】特開2002-239617号公報
【文献】特開2003-340510号公報
【文献】特開平3-60810号公報
【文献】特開2014-8520号公報
【文献】特開平10-128421号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「図解わかる電磁鋼板」(新日本製鐵株式会社、1994)、p.67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1に示されるように、連続熱延後の冷却過程での自己焼鈍によりホットコイル焼鈍工程を省略してコイルに巻き取られた無方向性電磁鋼板用の自己焼鈍コイルを、酸洗して冷間タンデム圧延機にて連続冷間圧延する際には、以下のような問題があることが認識された。
【0008】
1)熱間圧延上がりの熱延鋼帯は、例えば700℃以下でコイル状に巻取られた後、そのコイルのままの状態で大気中において冷却されるのが通常である。このような冷却過程では、コイル内での材料位置によって、冷却速度にバラツキが生じる。具体的には、コイルの外周部分の冷却速度は内周部分の冷却速度より大きくなり、また板幅方向の端部(エッジ部)の冷却速度は板幅方向の中央部寄りの部分よりも冷却速度が大きくなる。
このようなコイル内での冷却速度のバラツキによって、コイル内で、板長手方向及び板幅方向に材質の不均一、特に強度の不均一が生じ、ひいては冷間での変形抵抗の不均一が生じる。ここでは、このようなコイルを自己焼鈍コイルと称する。この自己焼鈍コイルの材質(鋼種)は上記無方向性電磁板に限定されるものではなく、コイル内で、板長手方向及び板幅方向に材質の不均一、特に強度の不均一が生じ、ひいては冷間での変形抵抗の不均一が生じる鋼種を意味する。
【0009】
2)このように自己焼鈍コイルでは、コイル内の長手方向及び板幅方向の材質の不均一が、自己焼鈍コイルの外周近傍かつエッジ近傍(巻き取られている熱延鋼帯の幅方向端部近傍)に発生するが、その不均一は、自己焼鈍コイル外周側の2~3周分において、板幅方向の端部(エッジ部)から150mm~250mm内側までの領域が顕著であり、これらの領域では、ストリップの板幅方向端部の強度が板幅方向中央部分の強度よりも10%から20%程度高くなることがある。
【0010】
3)上記のような材質の不均一のある自己焼鈍コイルを溶接によって連続化してストリップとし、酸洗して冷間タンデム圧延した際には、冷間タンデム圧延機の第1スタンドにおいて、上記の材質不均一部分での変形抵抗の差、すなわち板幅方向の両端部の変形抵抗が板幅方向中央部分の変形抵抗よりも大きいことから、圧延された板の形状が中伸びとなり、そのため、いわゆる絞りが発生して、板破断が生じることがある。
【0011】
4)中伸びによる絞り起因の板破断が生じれば、冷間タンデム圧延機内の圧延スタンドにおけるワークロールの損傷が生じてしまうことが多い。その場合には、圧延を中止して、ワークロールの交換が必要となるため、生産性が大幅に低下してしまう。
【0012】
5)さらに、絞り起因の板破断が激しい場合(激しい中伸びに起因する板破断の場合)には、ワークロールのみならず、ワークロールと接触している中間ロールあるいはバックアップロールの交換も必要となる。
【0013】
6)特に高速圧延時においては、絞り起因の板破断は激しく、復旧に十時間程度の長時間を要する場合があり、生産性の著しい低下を招いてしまう。
【0014】
以上のように、自己焼鈍コイルについては、その後の冷間タンデム圧延において、絞り起因の板破断が生じやすく、生産性を阻害する恐れが強かったのが実情である。
そこで、自己焼鈍コイルの冷間タンデム圧延においては、板破断を防止できるようにした冷間タンデム圧延設備及び圧延方法が強く求められていた。
【0015】
一般に、圧延機で絞りが生じないようにするためには、圧延時に板形状の制御を行なうことが公知である。即ち、圧延機出側に形状検出器を設置して圧延された板形状を測定し、所望とする板形状に納まるように、例えば中伸び形状にならないように圧延機の形状制御端(例えばワークロールベンダー力)を制御することが知られている(例えば特許文献2)。一般的にはこのような形状制御は最終スタンドで行われている。
【0016】
また、冷間タンデム圧延機の第1スタンドにおいて圧延機出側に形状検出器を設置して圧延された板形状を測定し、形状制御を行う方法が特許文献3で提案されている。さらに、冷間タンデム圧延機の第1スタンドと第2スタンドにおいて圧延機出側に形状検出器を設置し、圧延された板形状を測定して形状制御を行う方法が、特許文献4で提案されている。また冷間タンデム圧延機の全スタンドにおいて圧延機出側に形状検出器を設置して、圧延された板形状を測定し形状制御を行う方法が、特許文献5で提案されている。
【0017】
一方、板幅方向に不均一な変形抵抗分布がある場合の形状制御方法が特許文献6に開示されている。すなわち特許文献6には、予め熱延鋼帯の長手方向の先端部、中央部、尾端部の位置における熱延鋼帯の幅方向の降伏応力を測定して変形抵抗分布パターンを調査し、その結果に基づいて圧延機の形状プリセットを行う(熱延鋼帯の長手方向の先端部、中央部、尾端部の位置でそれぞれ異なる形状プリセットを行う)方法が開示されている。
【0018】
上記特許文献2~特許文献5に開示された形状制御方法は、いずれか1以上の圧延機スタンドの出側に設置された形状検出器による板形状を測定して、測定された板形状が目標通りになるように、当該圧延機スタンドの形状制御端をフィードバック制御する方法である。この方法は、板形状が変化しても絞りが生じにくい熱延鋼帯や、サーマルクラウンのような比較的緩やかな変化に対しては有効であるものの、本発明で主に対象としている自己焼鈍コイルでは、必ずしも有効ではないことが認識されている。
【0019】
その理由は、ホットコイル焼鈍工程を省略した自己焼鈍コイルでは、変形抵抗分布の不均一が大きく、しかも長手方向で急激に変化するため、圧延後の形状も急激に大きく変化することにある。しかるに特許文献2~特許文献5に示されるようなフィードバック制御による形状制御方法では、熱延鋼帯が或る圧延機スタンドからその圧延機スタンド出側の形状検出器に至るまでの間に無駄時間がある。そのため、形状変化が大きくかつ急激な場合、時間的にフィードバック制御では間に合わない。
【0020】
本発明者等が、自己焼鈍コイルについての絞りによる第1スタンドの板破断のデータを調査したところ、第1スタンドでの圧延速度200m/minでは約2秒の間に急峻度1%の端伸びから急峻度2%の中伸びに変化し、その結果絞りが生じて板破断に至る場合があることが確認されている。この場合において、第1スタンドのロールバイト出口から3m離れた箇所に形状検出器を設置しているため(スペース上、3m未満にすることは不可能)、形状検出するまでに1秒程度を要し、その後に形状制御を開始したとしても、さらに1秒程度を要するため、実際に形状制御が行われるまでには、ロールバイトを出てから2秒程度の無駄時間を要することになる。そのため上記の急激な形状変化に間に合わず、板破断を防止することは困難とある。この際、第1スタンドでの圧延速度を100m/minまで下げれば、形状制御が開始される相対的な圧延長は1/2に短くなるが、形状が検出されるまでの無駄時間が2倍になるため、圧延速度を下げても板破断を防止することは困難である。
【0021】
一方、特許文献6に開示された、予め原板コイルの長手方向の先端部、中央部、尾端部の材料の幅方向の降伏応力を測定して変形抵抗分布パターンを調査し、その調査結果(予測結果)にもとづいて圧延機スタンドでの形状プリセット(フィードフォワード制御)を行う方法は、熱延鋼帯のコイル毎に再現性のある材料に関しては有効である。しかしながら、本発明で対象としている自己焼鈍コイルは、熱延仕上げの板形状やスケールや巻き取り後のコイル冷却条件(コイル配置位置、季節要因等)により、冷間圧延での板形状の変化の状況が大きく異なる。このため、予測結果に対するバラツキが大きく、実際上再現性があるとは言えない。すなわち、予測調査に基づいて変形抵抗分布をコイル全長にわたってパターン化することは困難である。ちなみに、不適切なパターンを入力してしまえば、中伸びを助長して、板破断を誘発してしまうおそれがある。
【0022】
そのほか、上記のような変形抵抗分布パターンを予測することなく、変形抵抗分布が変化しても中伸びにならないように端伸び形状に圧延機スタンドをプリセットすることも考えられる。この方法は、熱延鋼帯の変形抵抗分布の不均一がさほど大きくなく、かつ熱延鋼帯の長さ方向にさほど変形抵抗の変化がなく、熱延鋼帯のコイルごとにバラツキのない材料についてはある程度有効である。しかしながら、本発明で主として対象とする自己焼鈍コイルでは、熱延鋼帯の長さ方向に変形抵抗分布の板幅方向分布が大きくばらつく。そのため、中伸びを防止するために変形抵抗分布が不均一な(板端が硬い)箇所でも端伸びになるようにプリセットすれば、変形抵抗分布が均一な(板端が硬い)箇所で端伸びが大きくなりすぎ、逆に端伸び過大による絞りが発生して、板破断を誘発してしまうおそれがある。
【0023】
以上のように、従来は、自己焼鈍コイルの如く、熱延鋼帯の長手方向及び幅方向の変形抵抗分布の不均一が大きいコイルについて冷間タンデム圧延するにあたって、板破断の発生を確実に防止する制御手法は、未だ確立されていなかったのが実情である。
【0024】
ところで、冷間タンデム圧延において、各圧延機スタンドの間にテンションメータを設置しておき、各スタンド間での板張力を圧延中に常時監視して張力変化を検出し、無張力状態となった際に板破断と認識して圧延を緊急停止することが従来から行われている(例えば特許文献7参照)。
しかしながら、このように各スタンド間の張力によって板破断の発生を検出して圧延を緊急停止しても、板破断に伴って破断部分が急激に飛び跳ねたり、破断部の折れ曲がりによる2枚噛み等が発生し、破断が生じたスタンドやそれ以降の破断部分が通過した各スタンドで、ワークロールやバックアップロール、あるいは中間ロールに傷がついてしまうことが多い。そのため、既に述べたように、ワークロール等の交換に長時間を要し、さらには圧延機内で板破断個所の処理にもかなりの時間を要する。その結果、破断を検出して緊急停止してから、圧延を再開(再稼働)するまでに著しく長時間を要し、生産性の大幅な低下を招くことを避け得なかった。
【0025】
ところで、破断の発生を早期に予知して(すなわち破断の予兆を検出して)圧延の緊急停止を行うようにすれば、破断に伴う生産性の低下を最小限に抑えることが可能と考えられる。但し、既に述べたような(例えば特許文献7に示されているような)各スタンド間の張力を監視して張力がゼロとなったことにより破断を検出し、緊急停止する手法では、完全に破断が生じてからの緊急停止となり、破断の発生を早期に予知することはできず、前述のように生産性の大幅な低下を避け得なかったのである。
【0026】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、例えば自己焼鈍コイルの如く、熱延鋼帯の長手方向及び幅方向の変形抵抗分布の不均一が大きいコイルについて冷間タンデム圧延するにあたっても、板破断が発生する以前の段階で板破断発生の可能性を予知し、そのタイミングで圧延を緊急停止し得るようにし、これによって板破断―緊急停止に伴う生産性の低下を最小限に抑制し得る冷間タンデム圧延設備及び冷間タンデム圧延方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者等が、変形抵抗分布の不均一が大きい自己焼鈍コイルの冷間タンデム圧延における板破断状況について調査したところ、ストリップの破断はいきなり生じるのではなく、先ず比較的小さい穴状の破れ部分(破断には至っていない穴状の空所部分)が生じ、その後、圧延が進むに連れて破れ部付近からストリップの破断に至ることを認識した。そこで、破断以前の破れ部の発生を検出して、圧延を緊急停止させれば、破断による被害(ロールの傷付き)を最小限に抑え、生産性の大幅な低下を抑制し得ることを認識し、本発明をなすに至った。
【0028】
以下に本発明の冷間タンデム圧延設備、冷間タンデム圧延方法の具体的な態様について示す。
【0029】
本発明の基本的な態様(第1の態様)の冷間タンデム圧延設備は、
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機における複数の圧延機スタンドのうち、少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側に、圧延すべきストリップの、破断に至っていない破れ部の発生を検出する破れ部検出装置が配設されており、かつその破れ部検出装置による検出結果に基づいて冷間タンデム圧延機の圧延動作を停止させる非常停止装置を具備していることを特徴とするものである。
【0030】
また本発明の第2の態様の冷間タンデム圧延設備は、
前記第1の態様の冷間タンデム圧延設備において、
前記破れ部検出装置が、光学式の検出装置であることを特徴とするものである。
【0031】
さらに本発明の第3の態様の冷間タンデム圧延設備は、
前記第1の態様の冷間タンデム圧延設備において、
前記破れ部検出装置が、音響式の検出装置であることを特徴とするものである。
【0032】
また本発明の第4の態様の冷間タンデム圧延方法は、
前記第1~第3のいずれかの態様の冷間タンデム圧延設備によってストリップを冷間圧延するにあたり、
前記破れ部検出装置のよって破れ部が検出された時に、前記非常停止装置を作動させて圧延を停止させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の冷間タンデム圧延設備、冷間タンデム圧延方法によれば、例えば自己焼鈍コイルの如く、板幅方向の変形抵抗の分布が長手方向で不均一に生じている熱延鋼帯を冷間タンデム圧延機で圧延するにあたっても、板破断に至らない破れ部を少なくとも最上流側の第1圧延機スタンドの出側で検出して、圧延を早期に緊急停止させることにより、緊急停止後のロール交換作業を簡単化、短時間化するとともに圧延機内での破断部分の処理を不要とし、これにより生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係る冷間タンデム圧延設備を組み込んだ無方向性電磁鋼板の製造ラインの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<冷間タンデム圧延設備についての実施形態>
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る冷間タンデム圧延設備を組み込んだ電磁鋼板の製造ラインの一例を示す。
【0036】
図1において、コイルC1、C2は、例えば、連続熱延の冷却過程での自己焼鈍により、ホットコイル焼鈍工程を省略して得られた無方向性電磁鋼板用熱延板(自己焼鈍コイル)を巻き取ってなるものである。
【0037】
ここで、上記無方向性電磁鋼板用熱延板の成分組成、及び自己焼鈍のための熱間圧延後の冷却条件は基本的には限定されず、要は、熱延板焼鈍工程を省略して製造しても、最終的に無方向性電磁鋼板としての性能が担保されるような成分組成、冷却条件であればよく、例えば特許文献1に記載されている成分組成、冷却条件が好適である。
【0038】
すなわち、質量%でC≦0.008%、2%≦(Si+Al)≦3、0%.02%≦Mn≦1.0%、S≦0.003%、N≦0.002%、Ti≦0.003%、0.001%≦REM≦0.02%を含有し、更に、0.3%≦Al/(Si+Al)≦0.5%の関係を満足し、残部Fe及び不可避的な不純物を含む無方向性電磁鋼板用スラブを用い、熱間仕上げ圧延温度が1050℃以上となるような温度範囲で熱間仕上げ圧延を行い、その後の無注水時間を1秒以上7秒以下とし、注水冷却により700℃以下で巻取を行った、自己焼鈍コイルが好適である。
【0039】
図1において、上記のような自己焼鈍コイルC1,C2はコイル払い出し機1に供給される。コイル払い出し機1によって自己焼鈍コイルC1,C2から払い出された板は、溶接機2により先行コイルからの板の尾端と後行コイルからの板の先端とが溶接されて連続化されたストリップ(自己焼鈍ストリップ)Sとなり、ルーパー3に送られる。なお以下では。自己焼鈍コイルC1,C2から払い出されて連続化された自己焼鈍ストリップSを、単にストリップ、あるいは自己焼鈍板と称することがある。
ルーパー3は、溶接機2におけるコイル接合中の払出しが無い場合(すなわちストリップの走行が停止している場合)でも、下流工程でストリップの供給の停滞がないように制御される。なお、コイル払い出し機1に供給される自己焼鈍コイルC1,C2は、ホットバス等で温度60℃以上に予め加熱しても良い。
【0040】
ル-パー3を通過した自己焼鈍ストリップSは、酸洗設備4に供給される。この酸洗設備4で、自己焼鈍コイルの表面スケールが除去(溶削)される。なお、酸洗前に溶削効率を上げるために、自己焼鈍ストリップSの表面にクラックを入れる圧延機や、レベラーもしくはテンションレベラー、あるいはショットブラスト(乾式又は湿式)やグラインダーを設置しても良い。
【0041】
酸洗されて表面スケールが除去された自己焼鈍ストリップSは、冷間タンデム圧延機7に送られ、より薄い板厚に圧延される。
【0042】
冷間タンデム圧延機7は、本実施形態では直列状に配列された5スタンドの圧延機スタンド7a~7eによって構成されており、第1スタンド7aから第5スタンド7eは、それぞれ例えば4重圧延機(4Hiミル)で構成されている。
さらに、冷間タンデム圧延機7では、図示していないが、各スタンドの入側と出側にてクーラントと称される圧延潤滑油を水に混入してエマルションにした圧延潤滑油が供給される。供給されたクーラントは図示しないタンクに回収され、再び各スタンドに供給されるリサーシュレーション潤滑が行われる。
【0043】
上記冷間タンデム圧延機7においては、例えば板厚2.3mm、板幅1200mmの無方向性電磁鋼板用の自己焼鈍ストリップが、板厚0.3mmまで圧延される。また、クーラントとしては、例えば合成エステル(ヒンダードコンプレックスエステル)をベース油とした圧延潤滑油が濃度2%、温度60℃で、各スタンドに1~3m/min供給(入側と出側の合計)され、圧延潤滑とワークロール冷却を行っている。
【0044】
各圧延機スタンド7a~7eのワークロール径は、例えば500mm~700mm、バックアップロール径は、例えば1300mm~1600mm、胴長は例えば2000mmとされる。
【0045】
冷間タンデム圧延機7の第1圧延機スタンド7aの出側には、第1圧延機スタンド7aの圧延によって、絞り等に起因して生じた破れ部(穴状の空所)を検出する破れ部検出装置5が設置されている。
【0046】
ここで、破れ部とは、ストリップの板幅内において板の厚み方向に貫通する穴状の部分を意味する。言い換えれば、圧延中においてストリップの圧延進行方向前方の部分と圧延進行方向後方の部分とが完全に分断(破断)されてはいない状態(非破断状態)の個所において、ストリップの厚み方向に貫通する部分を意味する。破れ部の形状、大きさは種々であるが、絞りによる破れ部の平面的な形状は、通常は三日月形、半円形、円形、楕円形、あるいは亀裂状であって、その大きさは、初期状態で平均10mm×20mm程度である。
【0047】
破れ部検出装置5の具体的構成は特に限定されないが、光学式あるいは音響式の検出器を用いることができ、本実施形態では、光学式の検出器として、破れ部内を通過する光を検出する検出器としている。すなわち、本実施形態では、図1に示しているように、ストリップSの一方の板面の側から、板幅の全域にわたって板面に光を放射する光源5Aと板幅内での破れ部内を通過した光をストリップの他方の板面の側で受光する受光器5Bとによって、破れ部検出装置5を構成している。
【0048】
光学式の破れ部検出装置5としては、上記のように破れ部内を通過する光を検出する方式に限られず、例えば画像処理によって破れ部を検出する構成であってもよい。すなわち、ストリップの板面(板幅内)を連続的に撮像する動画撮像装置(ビデオカメラ)あるいは間欠的に撮影する静止画撮像装置(スチールカメラ)を用い、撮像した画像を直ちに画像処理(例えば2値化)して、その2値化画像から破れ部を検出する構成としてもよい。なお光源としては、可視光に限定されるものではなく、赤外線やX線や、γ線を用いても良い。
【0049】
また音響式の破れ部検出装置5としては、圧縮空気等の気体をストリップの板面にその板幅方向のほぼ全域にわたって吹き付けることによってストリップに微小振動を生じさせ、その際のストリップ表面からの放射音(振動音)を周波数分析することによって、破れ部を検出する構成のものを用いることができる。すなわち、上記のような圧縮空気等をストリップに吹き付けて振動音を周波数分析すれば、破れ部がある場合には、破れ部がない場合とは異なる周波数帯域にピークが現れることが、本発明者等によって確認されている。
【0050】
具体的には、破れ部がない場合には、中~高周波帯域の周波数での振動が生じて振動音として比較的高い音が発生する。これに対して破れ部が存在すれば、中~高周波帯域の周波数の振動に加えて、低周波の振動が加わり、比較的低い音も混じるようになる。したがって、例えばストリップの板面に向けて音響発生源(例えば圧縮空気発生器)を設置するとともに振動音を集音する集音器を設置しておき、集音された音を周波数分析装置によって分析して、所定のレベル(閾値)を越えて低周波域の音が含まれている場合に、破れ部有りと判定することができる。
【0051】
なお複数の自己焼鈍コイルを溶接により連続化した自己焼鈍ストリップでは、コイル単位のトラッキングのため、溶接部付近にパンチ穴を形成したり、あるいは溶接部付近の板幅方向端部に滑らかな円弧状の切込み部を形成しておいて、その状態で冷間タンデム圧延に供することがある。その場合、上記のパンチ穴や切込み部が破れ部検出装置を通過した際に、それらのパンチ穴や切込み部を破れ部と誤認してしまうことも予想される。これを避けるためには、連続圧延中に上記のパンチ穴や切込み部の位置をトラッキングして、それらの部位が破れ部検出装置を通過した際の検出信号を無視するように信号処理することが好ましい。
【0052】
さらに冷間タンデム圧延機7には、破れ部検出装置5が破れ部を検出した際に、その検出信号に基づいて冷間タンデム圧延機7を緊急停止させる非常停止装置6が設けられている。この非常停止装置6は、要は破れ部の検出信号が与えられた時に、冷間タンデム圧延機7によるストリップSの圧延を緊急停止させるように冷間タンデム圧延機7を制御する構成であればよく、例えば、破れ部の検出信号によって冷間タンデム圧延機7の各圧延機スタンド7a~7eのワークロールの回転駆動を停止させて、通板を停止させる制御(その後に各圧延機スタンド7a~7eの圧下を開放)を行なえばよい。この場合の緊急停止方法としては 例えば特許文献7に開示されているように、各圧延機スタンド間のストリップの張力が通板時における定常時の張力となるように調整しながらストリップの通板を停止することが好ましい。
【0053】
なお、場合によっては、非常停止装置6は、破れ部の検出信号によって直ちに各圧延機スタンド7a~7eのワークロールの圧下を開放させる制御を行ってもよい。
【0054】
冷間タンデム圧延機7の下流には、連続化されて圧延された自己焼鈍ストリップを切断する切断機8が配備され、その下流には連続化されて圧延された自己焼鈍ストリップを巻き取るカローゼルリール9が配備されている。図示しないがカローゼルリール9で巻き取られ切断されたコイルは、ロールから払い出され、コンベアーに載せられ、次工程の工場等に向けて搬出される。
【0055】
次に本発明の冷間タンデム圧延方法の実施形態を説明する。
【0056】
<冷間タンデム圧延方法の実施形態>
実施形態の冷間タンデム圧延方法は、基本的には、例えば図1に示したような冷間タンデム圧延設備を用いて、自己焼鈍コイルを溶接により連続化した自己焼鈍ストリップを連続的に冷間圧延するにあたり、前記破れ部検出装置によって破れ部が検出された時に、前記非常停止装置を作動させて圧延を停止させる方法である。
【0057】
図1に示した冷間タンデム圧延設備では、破れ部検出装置5は第1圧延機スタンド7aの出側(第2圧延機スタンド7bの上流)に設置されている。したがって第1圧延機スタンド7aでの圧延中に発生した絞りによる破れ部が第1圧延機スタンド7aの出側に至って、破れ部検出装置5に達して検出された時点(タイミング)で、圧延が緊急停止されることになる。
【0058】
ここで、上記のタイミングで圧延を緊急停止させることなく、第1圧延機スタンドで発生した破れ部が後段の(第2圧延機スタンド以降の)各圧延機スタンドを通過してしまえば、破れ部が急激に拡大、進展して板破断に至ってしまう。その結果、第2圧延機スタンド以降の各スタンドで、破断部分の急激な飛び跳ねや、破断部の折れ曲がりによる2枚噛み等によってワークロール等が激しく傷ついてしまう。しかしながら本実施形態の場合は、第1圧延機スタンド7aの出側(第2圧延機スタンド7bの入側)において破れ部が検出された時点で、直ちに圧延を緊急停止するため、第2圧延機スタンド7b以降の各スタンドのワークロールが板の破断部によって傷ついてしまうことが未然に防止される。
そのため、第2圧延機スタンド以降の各スタンドのワークロールの交換が不要となり、ロール交換に要する時間が不要となるか又は短縮される。また同時に、冷間タンデム圧延機内での板破断部分の処理も不要となる。したがって緊急停止後、再稼働するまでの時間(圧延停止時間も、トータル的に著しく短縮され、生産性を大幅に向上させることができる。
【0059】
なお本実施形態では、第1圧延機スタンドでの圧延中に発生した破れ部を第1圧延機スタンドの出側で検出して緊急停止させているため、その破れ部によって第1圧延機スタンドのワークロール(場合によっては第2圧延機スタンドのワークロールも)が傷ついてしまうことがある。しかしながらその場合でも、上記のように第1圧延機スタンド以降(あるいは第2圧延機スタンド以降)の各スタンドのワークロールは傷付いていないことが多いから、緊急停止後には第1圧延機スタンドのワークロール(もしくは第1、第2のスタンドのワークロール)だけを交換すれば済む。そのため、第1圧延機スタンドのロールに加えて第2圧延機スタンド以降(もしくは第3圧延機スタンド以降)の各スタンド(例えば全スタンド)のロールを交換する場合と比較すれば、緊急停止後のロール交換に要する作業時間が大幅に短縮される。また本実施形態の場合における第1圧延機スタンドでの破れ部発生による第1圧延機スタンドのロールの傷つきは、板破断による傷つきと比較すれば格段に軽いものとなる。そのため、第1圧延機スタンドのバックアップロールや中間ロールまで傷ついてしまう恐れは少なく、このことも緊急停止後のロール交換作業の短時間化に寄与することができるのである。
【実施例
【0060】
以下、本発明の各実施形態の冷間タンデム圧延方法に関する各実施例(実施例1、実施例2)及び比較例について説明する。
各実施例及び比較例は、いずれも図1に示した構成を備えた冷間タンデム圧延設備において実施した。すなわち冷間圧延機は第1~第4の圧延機スタンドからなり、各圧延機スタンドは4重式圧延機(4Hiミル)からなる構成とした。
【0061】
各実施例、比較例でタンデム冷間圧延に供したストリップは、板厚2.3mm、板幅1200mmの無方向性電磁鋼板用の自己焼鈍ストリップであり、質量%でC:0.007%、(Si+Al):2.5%、Mn:0.5%、S:0.001%、N:0.001%、Ti:0.001%、REM:0.01%を含有し、更に、Al/(Si+Al):0.4%の関係を満足し、残部Fe及び不可避的な不純物を含む無方向性電磁鋼板用スラブを用い、熱間仕上げ圧延温度が1090℃となるような熱間仕上げ圧延を行い、その後の無注水時間を6秒とし、注水冷却により680℃で巻取を行ったものである。
【0062】
このようなコイル(自己焼鈍コイル)から払い出されたストリップを溶接により連続化し、自己焼鈍ストリップとして上記の冷間タンデム圧延機により板厚0.3mmまで圧延した。なお圧延速度は、コイル切り替え時の最終スタンドの圧延速度を250m/min、最終スタンドの最高圧延速度を1100m/minとした。また、下記表1に示すように、各スタンド間における張力は50~250MPaとした。
【0063】
【表1】
【0064】
破れ部検出装置としては、実施例1では、図1に示したような破れ部での光の通過を検出する光学式の検出器を用い、実施例2では、音響信号の周波数分析により検出する音響式の検出器を用いた、そして実施例1、実施例2では、いずれも破れ部検出装置を第1圧延機スタンドの出側と第2圧延機スタンドの入側との間に設置しておいた。
【0065】
各実施例、比較例における、測定及び制御の態様は次のとおりである。
・比較例:従来の一般的な圧延方法に相当する例であり、板幅方向の変形抵抗分布があっても、破れ部の検出及びそれに伴う緊急停止は行わず、そのまま自己焼鈍ストリップを圧延した。
・実施例1:第1スタンド出側に光学式の破れ部検出装置を設置し、ストリップの破れ部を光学的に検出した場合に、圧延を緊急停止した。
・実施例2:第1スタンド出側に音響式の破れ部検出装置を設置し、周波数分析によりストリップの破れ部を検出した場合に、圧延を緊急停止した。
【0066】
以上のようにして、実施例、比較例により、自己焼鈍ストリップをそれぞれ500コイル分、圧延した。各例において、板破断の発生状況、及び緊急停止した時点から再稼働までの時間(圧延停止時間:主としてロール交換に要した時間であるが、板破断が生じた場合には破断部分の処理に要する時間が加えられる)を調査した。その結果は次の通りである。
【0067】
・比較例(従来技術):板破断が約3%の確率で発生した。また圧延停止時間は4時間~18時間であった。ここで高速圧延時での板破断では、バックアップロールの表面も損傷している場合があり、その場合、破断した板の処理(手作業)と、ワークロールの交換に加えて、バックアップロールの股間も必要となり、18時間程度の長時間を要した。
・実施例1及び実施例2:いずれも板破断は発生しなかった。その結果、上記の破断した部分の処理は必要とせず、圧延停止時間は最大でも30分以内に抑えられた。ここで、ワークロールの交換が必要となるケースは少なかったが、まれに第1スタンド、又は第1スタンド及び第2スタンドのワークロールを組替える必要があったが。その場合でも圧延停止時間は30分程度であった。なお、バックアップロールの表面が損傷しているケースは全く認められなかった。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、上記実施形態では、無方向性電磁鋼板の自己焼鈍材を対象としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、方向性電磁鋼板や、そのほか高張力鋼、ステンレス鋼板等を対象としてもよく、さらに自己焼鈍された熱延ストリップに限らず、ストリップの長さ方向、板幅方向に大きな変形抵抗の不均一がある場合に適用して、冷間タンデム圧延時の板破断を防止することができる。
【0070】
また前述の例では、各圧延機スタンドとして4重圧延機(4Hiミル)を用いているが、それに限らず、例えば6重圧延機(6Hiミル)を用いてもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、第1圧延機スタンドの出側だけに破れ部検出装置を設けているが、場合によっては第1圧延機スタンドの出側のみならず、第2圧延機スタンド以降の各スタンド(最終スタンドを除く)のうちのいずれか1以上のスタンドの出側にもそれぞれ破れ部検出装置を設置しておき、いずれかの破れ部検出装置が破れ部を検出した時に、その検出信号に基づいて圧延を緊急停止させることとしてもよい。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実験例について説明したが、これらの実施形態、実験例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0073】
C1,C2 自己焼鈍コイル
S 自己焼鈍ストリップ
1 コイル払い出し機
2 溶接機
3 ルーパー
4 酸洗設備
5 破れ部検出装置
5A 光源
5B 受光器
6 非常停止装置
7 冷間タンデム圧延機
7a,7b,7c,7d,7e 冷間タンデム圧延機の圧延機スタンド
8 切断機
9 カローゼルリール
図1