IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7269518改質フッ素樹脂材料、回路基板用材料、回路基板用積層体、回路基板、及び、改質フッ素樹脂材料の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】改質フッ素樹脂材料、回路基板用材料、回路基板用積層体、回路基板、及び、改質フッ素樹脂材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20230427BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20230427BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20230427BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20230427BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230427BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230427BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230427BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230427BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C08J7/00 302
C08L27/18
C08F8/00
C08F214/26
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/34
C08J3/20 B CEW
H05K1/03 610L
H05K1/03 610N
H05K1/03 610R
H05K1/03 630H
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022017203
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2022123855
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021020785
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】澤木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】上田 有希
(72)【発明者】
【氏名】岡西 謙
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 俊行
(72)【発明者】
【氏名】今村 均
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147924(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187725(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/145133(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、7/00-7/02、
7/12-7/18、99/00
B29C 71/04
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00、301/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位、及び、第三級炭素を含む改質フッ素樹脂を含み、前記第三級炭素がテトラフルオロエチレン単位及び前記変性モノマー単位の合計に対して0.008~0.030モル%である改質フッ素樹脂材料であり、
テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含み第三級炭素を含まない非改質フッ素樹脂材料と比較して、20~200℃における線膨張率が10%以上低下している改質フッ素樹脂材料。
【請求項2】
前記非改質フッ素樹脂材料と比較して、20~200℃における線膨張率が10%以上低下している請求項1に記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項3】
前記第三級炭素は、前記改質フッ素樹脂が有する-CFCF(-CF-)CF-で示される構造中のFが結合する炭素原子である請求項1又は2に記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項4】
前記変性モノマーは、パーフルオロビニル基を有するモノマーである請求項1~3のいずれかに記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項5】
前記パーフルオロビニル基を有するモノマーは、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、及び、パーフルオロアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項6】
更に、無機フィラーを含む請求項1~5のいずれかに記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項7】
前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、酸化チタン、及び、タルクからなる群より選択される少なくとも1種である請求項6に記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項8】
更に、樹脂(但し、前記改質フッ素樹脂を除く)を含む請求項1~7のいずれかに記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項9】
前記樹脂(但し、前記改質フッ素樹脂を除く)は、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、エポキシ樹脂、及び、ポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項8に記載の改質フッ素樹脂材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の改質フッ素樹脂材料を含む回路基板用材料。
【請求項11】
シートである請求項10に記載の回路基板用材料。
【請求項12】
厚みが5~3000μmのシートである請求項10又は11に記載の回路基板用材料。
【請求項13】
金属層(A1)と、請求項10~12のいずれかに記載の回路基板用材料を含む層(B)とを備える回路基板用積層体。
【請求項14】
金属層(A1)を構成する金属が銅である請求項13に記載の回路基板用積層体。
【請求項15】
厚みが10~3500μmのシートである請求項13又は14に記載の回路基板用積層体。
【請求項16】
回路を構成する金属層(A2)と、請求項10~12のいずれかに記載の回路基板用材料を含む層(B)とを備える回路基板。
【請求項17】
金属層(A2)を構成する金属が銅である請求項16に記載の回路基板。
【請求項18】
厚みが10~3500μmのシートである請求項16又は17に記載の回路基板。
【請求項19】
プリント配線基板である請求項16~18のいずれかに記載の回路基板。
【請求項20】
請求項1~9のいずれかに記載の改質フッ素樹脂材料を製造する方法であって、
テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む共重合体であるフッ素樹脂に、前記フッ素樹脂の融点より5℃以上低い照射温度で放射線を照射する工程(1)を含む製造方法。
【請求項21】
前記工程(1)は、前記フッ素樹脂と、無機フィラー及び樹脂(但し、前記フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種との混合物に、前記放射線を照射する工程である請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記放射線の照射線量が10kGy~250kGyである請求項20又は21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記放射線は、電子線である請求項20~22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1~9のいずれかに記載の改質フッ素樹脂材料を製造する方法であって、
前記改質フッ素樹脂と、無機フィラー及び樹脂(但し、前記改質フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種とを混合する工程(2)を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改質フッ素樹脂材料、回路基板用材料、回路基板用積層体、回路基板、及び、改質フッ素樹脂材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の高速化に伴い、電気機器、電子機器、通信機器等に用いられる回路基板には、低誘電、低損失の材料が求められている。
【0003】
特許文献1には、フッ素樹脂(FEP)と銅膜とを積層し、密着性を高めるために、フッ素樹脂が溶融した状態で電離放射線を照射して得られた高周波用プリント配線板が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ガラスクロスからなる中間層の両面にフッ素樹脂(FEP)からなる樹脂層を設けた誘電体層を備える高周波用プリント配線板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-8260号公報
【文献】特開2015-8286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、線膨張率が低い新規な改質フッ素樹脂材料、回路基板用材料、回路基板用積層体、回路基板、及び、改質フッ素樹脂材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、テトラフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位、及び、第三級炭素を含む改質フッ素樹脂を含み、上記第三級炭素がテトラフルオロエチレン単位及び上記変性モノマー単位の合計に対して0.001~0.100モル%である改質フッ素樹脂材料であり、
テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含み第三級炭素を含まない非改質フッ素樹脂材料と比較して、20~200℃における線膨張率が5%以上低下している改質フッ素樹脂材料に関する。
【0008】
上記改質フッ素樹脂材料は、上記非改質フッ素樹脂材料と比較して、20~200℃における線膨張率が10%以上低下していることが好ましい。
【0009】
上記第三級炭素は、上記改質フッ素樹脂が有する-CFCF(-CF-)CF-で示される構造中のFが結合する炭素原子であることが好ましい。
【0010】
上記変性モノマーは、パーフルオロビニル基を有するモノマーであることが好ましい。
【0011】
上記パーフルオロビニル基を有するモノマーは、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、及び、パーフルオロアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
上記改質フッ素樹脂材料は、更に、無機フィラーを含むことが好ましい。
【0013】
上記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、酸化チタン、及び、タルクからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
上記改質フッ素樹脂材料は、更に、樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)を含むことも好ましい。
【0015】
上記樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)は、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、エポキシ樹脂、及び、ポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
本開示は、上記改質フッ素樹脂材料を含む回路基板用材料にも関する。
【0017】
上記回路基板用材料は、シートであることが好ましい。
【0018】
上記回路基板用材料は、厚みが5~3000μmのシートであることが好ましい。
【0019】
本開示は、金属層(A1)と、上記回路基板用材料を含む層(B)とを備える回路基板用積層体にも関する。
【0020】
金属層(A1)を構成する金属が銅であることが好ましい。
【0021】
上記回路基板用積層体は、厚みが10~3500μmのシートであることが好ましい。
【0022】
本開示は、金属層(A2)と、上記回路基板用材料を含む層(B)とを備える回路基板にも関する。
【0023】
金属層(A2)を構成する金属が銅であることが好ましい。
【0024】
上記回路基板は、厚みが10~3500μmのシートであることが好ましい。
【0025】
上記回路基板は、プリント配線基板であることが好ましい。
【0026】
本開示は、上記改質フッ素樹脂材料を製造する方法であって、
テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む共重合体であるフッ素樹脂に、上記フッ素樹脂の融点より5℃以上低い照射温度で放射線を照射する工程(1)を含む製造方法にも関する。
【0027】
上記工程(1)は、上記フッ素樹脂と、無機フィラー及び樹脂(但し、上記フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種との混合物に、上記放射線を照射する工程であることが好ましい。
【0028】
上記放射線の照射線量が10kGy~250kGyであることが好ましい。
【0029】
上記放射線は、電子線であることが好ましい。
【0030】
本開示は、上記改質フッ素樹脂材料を製造する方法であって、
上記改質フッ素樹脂と、無機フィラー及び樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種とを混合する工程(2)を含む製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、線膨張率が低い新規な改質フッ素樹脂材料、回路基板用材料、回路基板用積層体、回路基板、及び、改質フッ素樹脂材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、及び、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0033】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0034】
本開示の改質フッ素樹脂材料は、テトラフルオロエチレン[TFE]単位、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位、及び、第三級炭素を含む改質フッ素樹脂を含み、上記第三級炭素がTFE単位及び上記変性モノマー単位の合計に対して0.001~0.100モル%である。本開示の改質フッ素樹脂材料は、TFE単位及び上記変性モノマー単位とともに特定量の第三級炭素を含む改質フッ素樹脂を含むことから、変形が少なく、線膨張率が低い特性を有する。
線膨張率はその物質の有する結合の種類によって変わり、共有結合を有する物質の線膨張率は分子間力などの弱い結合を有する物質に比べると小さくなる。本開示の改質フッ素樹脂は、第三級炭素を含む。第三級炭素の存在は、改質フッ素樹脂が架橋構造を有することを意味する。架橋構造は分子鎖同士が強固な共有結合で結びつく3次元ネットワーク構造であり、この共有結合のネットワークの存在により線膨張率が抑制されると考えられる。
【0035】
上記第三級炭素の含有量は、TFE単位及び上記変性モノマー単位の合計に対して0.005モル%以上であることが好ましく、0.008モル%以上であることがより好ましく、また、0.080モル%以下であることが好ましく、0.060モル%以下であることがより好ましく、0.030モル%以下であることが更に好ましい。
【0036】
上記第三級炭素は、上記改質フッ素樹脂が有する-CFCF(-CF-)CF-で示される構造中のFが結合する炭素原子であることが好ましい。
【0037】
上記第三級炭素の含有量は、上記改質フッ素樹脂について、19F-NMR測定を行い、次のA~Cのピーク強度(ピークの積分値)を求め、次の計算式に従い算出できる。
【0038】
19F-NMR測定条件
測定装置:固体19F-NMR測定装置、BRUKER社製
測定条件:282MHz(改質フッ素樹脂のCFを-120ppmとする)
回転数30kHz
【0039】
ピーク強度A
ケミカルシフト-80(-74~-85)ppmに観測されるピークであって、変性モノマーであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]の-O-CF -と-CF のC-F5個に由来するピークの強度
【0040】
ピーク強度B
ケミカルシフト-120(-84~-150)ppmに観測されるピークであって、PAVEのC-F5個とTFE由来のC-F4個が重なっているピークの強度
【0041】
ピーク強度C
ケミカルシフト-183(-178~-191)ppmに観測されるピークであって、第三級炭素-CFCF(-CF-)CF-に由来するFのピークの強度
【0042】
計算式
第三級炭素の含有量(モル%)=100×(ピーク強度C)÷{(ピーク強度A÷5)+[ピーク強度B-ピーク強度A]÷4+(ピーク強度C)}
変性モノマーがPAVE以外のモノマーである場合も、19F-NMR測定により、第三級炭素の含有量を求めることができる。
【0043】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルエチレン、一般式(100):CH=CFRf101(式中、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、フルオロアルキルアリルエーテル等が挙げられる。
【0044】
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(110):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(120):CF=CF-OCH-Rf121
(式中、Rf121は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(130):CF=CFOCFORf131
(式中、Rf131は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(140):CF=CFO(CFCF(Y141)O)(CF
(式中、Y141はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0046】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf111が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0047】
一般式(110)におけるパーフルオロ有機基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、上記一般式(110)において、Rf111が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf111が下記式:
【0048】
【化1】
【0049】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf111が下記式:
【0050】
【化2】
【0051】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0052】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]が好ましく、
一般式(160):CF=CF-ORf161
(式中、Rf161は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーがより好ましい。Rf161は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0053】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)、(130)及び(140)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0054】
一般式(160)で表されるフルオロモノマー(PAVE)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[PMVE]、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[PEVE]、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0055】
一般式(130)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0056】
一般式(140)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0057】
一般式(150)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CFCFSOF)OCFCFSOF及びCF=CFOCFCF(SOF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0058】
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf101が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf101が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf101の炭素数は1~6であることが好ましい。一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFH、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)等が挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0059】
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(170):CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH=CH-C、及び、CH=CH-C13からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0060】
上記フルオロアルキルアリルエーテルとしては、例えば、
一般式(180):CF=CF-CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0061】
一般式(180)のRf111は、一般式(110)のRf111と同じである。Rf111としては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。一般式(180)で表されるフルオロアルキルアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0062】
上記変性モノマーとしては、改質フッ素樹脂材料の変形を一層少なくでき、線膨張率を一層低くできる点で、パーフルオロビニル基を有するモノマーが好ましく、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及び、パーフルオロアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PAVE、及び、HFPからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、改質フッ素樹脂材料の半田加工時の変形を抑制できる点で、PAVEが特に好ましい。
【0063】
上記改質フッ素樹脂は、上記変性モノマー単位を合計で、全単量体単位の0.1質量%以上含むことが好ましく、1.0質量%以上含むことがより好ましく、1.1質量%以上含むことが更に好ましい。上記変性モノマー単位の合計量は、また、全単量体単位の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
上記変性モノマー単位の量は、19F-NMR法により測定する。
【0064】
上記改質フッ素樹脂がTFE単位及びPAVE単位を含む改質PFAである場合、PAVE単位を全重合単位に対して0.1~12質量%含むことが好ましい。PAVE単位の量は、全重合単位に対して0.3質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが更により好ましく、1.1質量%以上であることが特に好ましく、また、8.0質量%以下であることがより好ましく、6.5質量%以下であることが更に好ましく、6.0質量%以下であることが特に好ましい。
なお、上記PAVE単位の量は、19F-NMR法により測定する。
【0065】
上記改質フッ素樹脂がTFE単位及びHFP単位を含む改質FEPである場合、TFE単位とHFP単位との質量比(TFE/HFP)が70~99/1~30(質量%)であることが好ましい。上記質量比(TFE/HFP)は、85~95/5~15(質量%)がより好ましい。
上記改質FEPは、HFP単位を全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0066】
上記改質FEPは、TFE単位及びHFP単位とともに、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]単位を含むことが好ましい。
上記改質FEPに含まれるPAVE単位としては、上述した改質PFAを構成するPAVE単位と同様のものを挙げることができる。なかでも、PPVEが好ましい。
上述した改質PFAは、HFP単位を含まないので、その点で、PAVE単位を含む改質FEPとは異なる。
【0067】
上記改質FEPが、TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位を含む場合、質量比(TFE/HFP/PAVE)が70~99.8/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。上記範囲内であると、耐熱性、耐薬品性に優れている。
上記質量比(TFE/HFP/PAVE)は、75~98/1.0~15/1.0~10(質量%)であることがより好ましい。
上記改質FEPは、HFP単位及びPAVE単位を合計で全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0068】
上記TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位を含む改質FEPは、HFP単位が全単量体単位の25質量%以下であることが好ましい。
HFP単位の含有量が上述の範囲内であると、耐熱性に優れた改質フッ素樹脂材料を得ることができる。
HFP単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは15質量%以下である。また、HFP単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。特に好ましくは、2質量%以上である。
なお、HFP単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0069】
PAVE単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは3質量%以下である。また、PAVE単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。なお、PAVE単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0070】
上記改質FEPは、更に、他のエチレン性単量体(α)単位を含んでいてもよい。
他のエチレン性単量体(α)単位としては、TFE、HFP及びPAVEと共重合可能な単量体単位であれば特に限定されず、例えば、フッ化ビニル[VF]、フッ化ビニリデン[VdF]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、エチレン[Et]等の含フッ素エチレン性単量体や、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化エチレン性単量体等が挙げられる。
【0071】
上記改質FEPがTFE単位、HFP単位、PAVE単位、及び、他のエチレン性単量体(α)単位を含む場合、質量比(TFE/HFP/PAVE/他のエチレン性単量体(α))は、70~98/0.1~25/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。
上記改質FEPは、TFE単位以外の単量体単位を合計で全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0072】
上記改質フッ素樹脂は、上記改質PFA及び上記改質FEPであることも好ましい。言い換えると、上記改質PFAと上記改質FEPとを混合して使用することも可能である。上記改質PFAと上記改質FEPとの質量比(改質PFA/改質FEP)は、9/1~3/7であることが好ましく、9/1~5/5であることがより好ましい。
【0073】
本開示の改質フッ素樹脂材料は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含み第三級炭素を含まない非改質フッ素樹脂材料と比較して、20~200℃における線膨張率が5%以上低下している。これにより、上記改質フッ素樹脂材料の反りが低減される。上記改質フッ素樹脂材料は、上記非改質フッ素樹脂材料と比較して20~200℃における線膨張率が10%以上低下していることが好ましく、13%以上低下していることがより好ましく、15%以上低下していることが更に好ましく、20%以上低下していることが特に好ましい。
上記線膨張率は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0074】
上記非改質フッ素樹脂材料は、第三級炭素を含まない点以外は、上記改質フッ素樹脂材料と同じ構成を有することが好ましい。上記非改質フッ素樹脂材料は、後述する製造方法における放射線を照射する前のフッ素樹脂材料であってもよい。
【0075】
本開示の改質フッ素樹脂材料は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、充填剤、架橋剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、発泡剤、発泡核剤、酸化防止剤、界面活性剤、光重合開始剤、摩耗防止剤、表面改質剤、樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)、液晶ポリマー等の添加剤等を挙げることができる。
【0076】
本開示の改質フッ素樹脂材料は、上記他の成分として、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーを含むことで、電気特性、強度、耐熱性等を向上させることができる。本開示の改質フッ素樹脂材料は、上記改質フッ素樹脂及び無機フィラーを含む複合材料であってもよい。
【0077】
上記無機フィラーとしては特に限定されず、例えば、シリカ(より具体的には結晶性シリカ、溶融シリカ、球状溶融シリカ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、アルミナ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の無機化合物が挙げられる。また、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノライト、バーキュライト、セリサイト等の鉱物が挙げられる。その他の無機フィラーとしては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン等の各種ガラス等を挙げることができる。
上記無機フィラーとしては、一種又は二種以上の無機フィラーを使用することができる。
また、無機フィラーは粉体をそのまま使用してもよく、樹脂中に分散させたものを用いてもよい。
【0078】
上記無機フィラーとしては、電気特性、強度、耐熱性等を一層向上させることができる点で、シリカ、アルミナ、酸化チタン、及び、タルクからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、シリカ、アルミナ、及び、酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、低比重で低誘電率のシリカが特に好ましい。シリカを含有することで、フッ素樹脂材料の熱膨張係数を低く抑えることができる。また、この作用により、基板の反りを抑制することができるため好ましい。更に、被覆層のピール強度を高めることもできる。
【0079】
上記無機フィラーの形状としては、特に限定されず、例えば、粒状、球状、鱗片状、針状、柱状、錘状、錘台状、多面体状、中空状等を用いることが出来る。特に球状、立方体、鉢状、円盤状、八面体状、鱗片状、棒状、板状、ロッド状、テトラポッド状、中空状であることが好ましく、球状、立方状、八面体状、板状、中空状であることがより好ましい。鱗片状又は針状の形状とすることで、異方性を有するフィラーを配列させることにより、より高い密着性を得ることができる。球状のフィラーは、表面積が小さいため、フッ素樹脂の特性への影響を小さくすることができ、また、液状物に配合した場合に増粘の程度が小さい点で好ましい。
【0080】
上記無機フィラーは、平均粒子径が0.1~20μmであることが好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、凝集が少なく、良好な表面粗度を得ることができる。上記平均粒子径の下限は、0.2μmであることがより好ましく、0.3μmであることが更に好ましい。上記平均粒子径の上限は、5μmであることがより好ましく、2μmであることが更に好ましい。
上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定した値である。
【0081】
上記無機フィラーは、最大粒子径が10μm以下であることが好ましい。最大粒子径が10μm以下であると、凝集が少なく、分散状態が良好である。更に、得られたフッ素樹脂材料の表面疎度を小さいものとすることができる。上記最大粒子径は、5μm以下であることがより好ましい。最大粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、SEM用画像解析ソフトウェアを用いて、無作為に選択した粒子200個の画像データより求めた。
【0082】
上記無機フィラーは、表面処理されたものであってもよく、例えば、シリコーン化合物で表面処理されたものであってもよい。上記シリコーン化合物で表面処理することにより、無機フィラーの誘電率を低下させることができる。
上記シリコーン化合物としては特に限定されず、従来公知のシリコーン化合物を使用することができる。例えば、シランカップリング剤及びオルガノシラザンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
上記シリコーン化合物の表面処理量は、無機フィラー表面への表面処理剤の反応量が単位表面積(nm)あたり0.1~10個であることが好ましく、0.3~7個であることがより好ましい。
【0083】
上記無機フィラーは、例えば、BET法による比表面積が、1.0~25.0m/gであることが好ましく、1.0~10.0m/gであるのがより好ましく、2.0~6.4m/gであるのが更に好ましい。比表面積が上記範囲内であることにより、フッ素樹脂材料中の無機フィラーの凝集が少なく表面が平滑であるため好ましい。
【0084】
本開示の改質フッ素樹脂材料は、また、上記他の成分として、樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)を含んでもよい。上記樹脂を含むことで、強度の向上や線膨張係数低減といった効果が期待できる。本開示の改質フッ素樹脂材料は、上記改質フッ素樹脂及び樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)を含む複合材料であってもよい。
【0085】
上記樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミドや熱硬化性ポリイミド等のポリイミド、それらの前駆体であるポリアミック酸、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルケトン樹脂が挙げられる。
ポリアミック酸を形成するジアミンや多価カルボン酸二無水物としては、例えば、特許第5766125号の段落[0020]、特許第5766125号の段落[0019]、特開2012-145676号公報の段落[0055]、[0057]等に記載のものが挙げられる。なかでも、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸二無水物との組合せが好ましい。ジアミン及び多価カルボン酸二無水物又はその誘導体は、それぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
熱溶融性の樹脂や硬化して熱溶融性の樹脂となる樹脂の場合、その熱溶融性樹脂としては、融点が280℃以上であるものが好ましい。これにより、フッ素樹脂材料により形成したフィルム等において、はんだリフローに相当する雰囲気に曝されたときの熱による膨れ(発泡)が抑制されやすい。
【0087】
上記樹脂は、また、熱溶融性ではない重合体からなる樹脂であってもよい。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の非溶融性樹脂や、熱硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂等の熱溶融性ではない樹脂は、上記無機質フィラーと同様に、フッ素樹脂中に分散される。
【0088】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、反応性基を有するフッ素樹脂(ただし、上記改質フッ素樹脂を除く。)が挙げられる。なかでも、プリント基板用途に有用な点から、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が特に好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
上記エポキシ樹脂としては、プリント基板用の各種基板材料を形成するために用いられるエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
また、上記列挙した以外にも、各種のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、酸化型エポキシ樹脂を使用してもよいし、その他、リン変性エポキシ樹脂等も使用することができる。エポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、硬化性に優れるという点では、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0090】
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、100~1000000が好ましく、1000~100000がより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であれば、上記改質フッ素樹脂材料により形成したフィルム等と他材料(金属等)との層間密着性が優れる。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
【0091】
上記ビスマレイミド樹脂としては、特開平7-70315号公報に記載されるような、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)や、国際公開第2013/008667号に記載の発明やその背景技術に記載のものが挙げられる。
【0092】
上記樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合、本開示の改質フッ素樹脂材料は硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、熱硬化剤(メラミン樹脂、ウレタン樹脂等)、エポキシ硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0093】
上記樹脂としては、強度の向上や線膨張係数低減といった効果が一層優れる点で、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、エポキシ樹脂、及び、ポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0094】
上記他の成分の含有量は、上記改質フッ素樹脂材料に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。上記他の成分の含有量が多すぎると、電気特性が悪化するおそれがある。また、上記他の成分の含有量は、上記改質フッ素樹脂材料に対し、15質量%以上であることが好ましい。
上記改質フッ素樹脂材料は、上記改質フッ素樹脂のみからなるものであることも好ましい。
【0095】
本開示の改質フッ素樹脂材料は、TFE単位、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む共重合体であるフッ素樹脂に、上記フッ素樹脂の融点より5℃以上低い照射温度で放射線を照射する工程(1)を含む製造方法により、好適に製造することができる。本開示は、上記製造方法も提供する。
【0096】
上記照射温度は、上記フッ素樹脂の融点よりも20℃超低い温度であることが好ましく、25℃以上低い温度であることがより好ましく、35℃以上低い温度であることが更に好ましい。また、0℃以上が好ましく、室温以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが更により好ましく、150℃以上であることが特に好ましく、200℃以上であることが最も好ましい。
【0097】
上記放射線としては、電子線、紫外線、ガンマ線、X線、中性子線、高エネルギーイオン等が挙げられる。なかでも、透過力が優れており、線量率が高く、工業的生産に好適である点で電子線が好ましい。
放射線を照射する方法としては、特に限定されず、従来公知の放射線照射装置を用いて行う方法等が挙げられる。
【0098】
放射線の照射線量は、10kGy~250kGyであることが好ましい。照射線量が低すぎると、架橋反応に関与するラジカルの発生量が不十分となり、架橋効果が十分に発現しないおそれがある。照射線量が高すぎると、主鎖切断による低分子化が起こり、機械強度が大きく低下するおそれがある。
放射線の照射線量は、20kGy以上であることがより好ましく、30kGy以上であることが更に好ましく、100kGy以下であることがより好ましく、90kGy以下であることが更に好ましく、80kGy以下であることが特に好ましい。
【0099】
放射線の照射環境としては、特に制限されないが、酸素濃度が1000ppm以下であることが好ましく、酸素不存在下であることがより好ましく、真空中、又は、窒素、ヘリウム若しくはアルゴン等の不活性ガス雰囲気中であることが更に好ましい。
【0100】
上記フッ素樹脂におけるTFEと共重合可能な変性モノマーとしては、上述した本開示の改質フッ素樹脂材料における変性モノマーと同様のものが挙げられる。
【0101】
上記フッ素樹脂としては、溶融加工可能なフッ素樹脂が好ましい。本明細書において、溶融加工可能であるとは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0102】
上記フッ素樹脂としては、改質フッ素樹脂材料の変形を一層少なくでき、線膨張率を一層低くできる点で、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロビニル基を有するモノマー共重合体が好ましく、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体「PFA」、TFE/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]、及び、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、融点が高く、半田加工時の変形がないことからPFAが特に好ましい。
【0103】
上記PFAは、TFE単位及びPAVE単位を含む共重合体であり、TFE単位及びPAVE単位のみからなる共重合体であってもよい。上記PFAを構成する単量体単位及びその量は、上述した改質PFAと同様である。
【0104】
上記PFAは、融点が280~322℃であることが好ましい。上記融点は、290℃以上であることがより好ましく、315℃以下であることがより好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0105】
上記PFAは、ガラス転移温度(Tg)が70~110℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度は、80℃以上がより好ましく、100℃以下がより好ましい。
上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定して得られる値である。
【0106】
上記PFAは、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0107】
上記FEPは、TFE単位及びHFP単位を含む共重合体である。上記FEPを構成する単量体単位及びその量は、上述した改質FEPと同様である。
【0108】
上記FEPは、融点が200~322℃であることが好ましい。融点が低すぎると、放射線を照射することによる効果が十分に現れないおそれがある。高すぎると、主鎖切断による低分子化が起こり、機械強度が大きく低下するおそれがある。上記融点は、200℃超であることがより好ましく、220℃以上であることが更に好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0109】
上記FEPは、ガラス転移温度(Tg)が60~110℃であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることがより好ましい。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定して得られる値である。
【0110】
上記FEPは、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、溶液重合や懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0111】
上記フッ素樹脂は、上記PFA及び上記FEPであることも好ましい。言い換えると、上記PFAと上記FEPとを混合して使用することも可能である。上記PFAと上記FEPとの質量比(PFA/HFP)は、9/1~3/7であることが好ましく、9/1~5/5であることがより好ましい。
【0112】
上記混合物は、融点の異なる上記フッ素樹脂を2種以上混合して溶融混合(溶融混練)したり、乳化重合後の樹脂分散液を混合し、硝酸等の酸で凝析して樹脂を回収したりする等の公知の方法により調製するとよい。溶融混合は、融点が相違する2種以上のフッ素樹脂のうち、融点が最も高いフッ素樹脂の融点以上の温度で行うことができる。
【0113】
上記フッ素樹脂は、372℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましい。MFRが上述の範囲であると、放射線を照射することによる効果が顕著である。上記MFRは、0.5g/10分以上がより好ましく、80g/10分以下がより好ましく、40g/10分以下が更に好ましい。上記MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0114】
上述した他の成分を更に含む改質フッ素樹脂材料を製造する場合、上記フッ素樹脂と上記他の成分との混合物に上記放射線を照射してもよく、上記改質フッ素樹脂と上記他の成分とを混合してもよい。
【0115】
上記他の成分として、無機フィラー及び樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種を含む改質フッ素樹脂材料は、例えば、工程(1)が、上記フッ素樹脂と、無機フィラー及び樹脂(但し、上記フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種との混合物に、上記放射線を照射する工程である製造方法によって、好適に製造することができる。
【0116】
上記他の成分として、無機フィラー及び樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種を含む改質フッ素樹脂材料は、また、上記改質フッ素樹脂と、無機フィラー及び樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも1種とを混合する工程(2)を含む製造方法によっても、好適に製造することができる。本開示は、上記製造方法も提供する。
上記改質フッ素樹脂は、上述した工程(1)で得られたものであってもよい。
【0117】
上記各製造方法は、更に、上記フッ素樹脂又は上記改質フッ素樹脂材料を成形する工程を含むこともできる。成形後に、上記放射線の照射を行ってもよい。
【0118】
成形方法としては、特に限定されず、押出成形、射出成形、トランスファー成形、インフレーション法、圧縮成形等の公知の方法が挙げられる。これらの成形方法は、目的の改質フッ素樹脂材料の形状に応じて適宜選択すればよい。
【0119】
本開示は、上述した本開示の改質フッ素樹脂材料を含む回路基板用材料も提供する。
【0120】
上記回路基板用材料は、上記改質フッ素樹脂材料のみからなるものであってよい。
【0121】
上記回路基板用材料の形状は、特に限定されないが、シートであることが好ましい。
上記シートの厚みは、5~3000μmであることが好ましく、5~2000μmであることがより好ましい。
【0122】
上記回路基板用材料は、片面又は両面が表面改質されたものであってもよい。表面改質を施すことで、銅箔等の金属層との密着性が改善されることとなる点で好ましい。
上記表面改質の具体的な方法は特に限定されるものではなく、公知の任意の方法によって行うことができる。具体的には、コロナ放電処理やグロー放電処理、プラズマ放電処理、スパッタリング処理等による放電処理が採用できる。例えば、放電雰囲気中に酸素ガス、窒素ガス、水素ガス等を導入することで表面自由エネルギーをコントロールできる他、有機化合物が含まれている不活性ガス(例えば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)雰囲気に改質すべき表面を曝し、電極間に高周波電圧をかけることにより放電を起こさせ、これにより表面に活性種を生成し、次いで有機化合物の官能基を導入又は重合性有機化合物をグラフト重合することによって表面改質を行うことができる。
上記表面改質は、上記回路基板用材料がシートである場合に特に好適である。
【0123】
本開示の回路基板用材料は、回路基板に用いられるものであり、特に、回路基板の絶縁層に用いられることが好ましい。
上記回路基板としては、プリント配線基板が好ましい。上記プリント配線基板は、リジッド基板であってもよく、フレキシブル基板であってもよく、リジッドフレキシブル基板であってもよい。
【0124】
上記回路基板は、高周波回路基板であることが好ましい。高周波回路基板は、高周波帯域でも動作させることが可能な回路基板である。上記高周波帯域とは、1GHz以上の帯域であってよく、3GHz以上の帯域であることが好ましく、5GHz以上の帯域であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、100GHz以下の帯域であってもよい。
【0125】
本開示の回路基板用材料は、第5世代移動通信システム用の回路基板にも好適に利用できる。
【0126】
本開示は、金属層(A1)と、上述した本開示の回路基板用材料を含む層(B)とを備える回路基板用積層体にも関する。
【0127】
金属層(A1)を構成する金属は、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、及び、それらの合金からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、銅、ステンレス及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、銅であることが更に好ましい。
上記ステンレスとしては、例えば、オーステナイト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス等が挙げられる。
【0128】
金属層(A1)は、スパッタリング、真空蒸着、電気めっき、無電解めっき等により形成された層であってもよいし、金属箔により形成されたものであってもよい。
金属層(A1)が金属箔により形成されたものである場合、上記金属箔を熱プレスにより層(B)に接着して金属層(A1)を形成してもよい。
【0129】
金属層(A1)の厚みは、例えば、2~200μmであってよく、5~50μmであることが好ましい。
【0130】
金属層(A1)は、層(B)の片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。
【0131】
層(B)は、本開示の回路基板用材料を含む。層(B)は、本開示の回路基板用材料を含むシートであることが好ましい。層(B)は、金属層(A1)とは別に予め作製してもよく、上記フッ素樹脂と金属層(A1)とを積層した後、当該フッ素樹脂に放射線を照射することにより形成してもよい。
層(B)の片面又は両面に、上述した表面改質を施してもよい。
【0132】
層(B)の膜厚は、例えば、1μm~1mmであってよく、1~500μmであることが好ましい。より好ましくは、150μm以下であり、更に好ましくは、100μm以下である。
【0133】
本開示の積層体は、金属層(A1)及び層(B)以外の他の層を更に備えてもよい。電気特性及び薄膜化の観点からは、層(B)の、金属層(A1)と反対側の面には上記他の層を設けないことが好ましい。
【0134】
本開示の積層体は、シートであることが好ましい。本開示の積層体の厚みは、10~3500μmであることが好ましく、20~3000μmであることがより好ましい。
【0135】
本開示の積層体は、例えば、回路基板を形成するための金属張積層体として好適に利用できる。
【0136】
本開示は、金属層(A2)と、上述した本開示の回路基板用材料を含む層(B)とを備える回路基板にも関する。
【0137】
金属層(A2)を構成する金属としては、金属層(A1)を構成する金属と同様のものが挙げられ、厚みも同様である。
層(B)は、本開示の積層体における層(B)と同様である。
【0138】
金属層(A2)は、回路を構成することが好ましい。回路パターンの形成方法は、特に限定されず、層(B)上にパターニングされていない金属層を形成した後、エッチング処理等によりパターニングを行う方法、層(B)上の回路パターンに必要な箇所に直接金属層を形成する方法、両者を組み合わせた方法等が挙げられる。いずれの場合も、従来公知の方法を採用してよい。
本開示の回路基板は、本開示の積層体において、金属層(A1)をパターニングしたものであってもよい。
【0139】
金属層(A2)は、層(B)の片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。また、層(B)の片面又は両面に、上述した表面改質を施してもよい。
【0140】
また、本開示の回路基板は、金属層(A2)及び層(B)以外の他の層を更に備えてもよい。電気特性及び薄膜化の観点からは、層(B)の、金属層(A2)と反対側の面には上記他の層を設けないことが好ましい。
【0141】
本開示の回路基板は、シートであることが好ましい。本開示の回路基板の厚みは、10~3500μmであることが好ましく、20~3000μmであることがより好ましい。
【0142】
本開示の回路基板は、プリント配線基板であることが好ましい。プリント配線基板については上述したとおりである。
本開示の回路基板は、高周波回路基板であることも好ましい。高周波回路基板については上述したとおりである。
本開示の回路基板は、第5世代移動通信システム用回路基板であることも好ましい。
【実施例
【0143】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0144】
各種物性は下記方法にて測定した。
【0145】
(単量体単位の含有量)
各単量体単位の含有量は、19F-NMR法により測定した。
【0146】
(MFR)
ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
【0147】
(ガラス転移温度)
DVA-220(アイティー計測制御株式会社製)を用いた動的粘弾性測定を行い求めた。
サンプル試験片として、長さ25mm、幅5mm、厚み0.2mmの圧縮成形シートを用いて、昇温速度2℃/分、周波数10Hzで測定し、tanδ値のピークにおける温度をガラス転移温度とした。
【0148】
(融点)
示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度を融点とした。
【0149】
(線膨張率)
TMA―7100(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて以下の圧縮モードによるTMA測定を行い求めた。
[圧縮モード測定]
サンプル片として、長さ6mm、幅6mm、厚み2mmに切出した圧縮成形シートを用いて、49mNの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で20~200℃でのサンプルの変位量から線膨張率を求めた。
【0150】
(第三級炭素の含有量)
19F-NMR測定を行うことにより求めた。算出方法は上述のとおりである。
【0151】
実施例1
テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)共重合体[TFE/PPVE=94.5/5.5(質量%)、MFR30g/10分、融点302℃](PFA1)をヒートプレス成型器で2mm厚のシート状に加工した後、幅20mm、長さ20mmに切り取り、試験片を得た。
得られた試験片を、電子線照射装置(NHVコーポレーション社製)の電子線照射容器に収容し、その後窒素ガスを加えて容器内を窒素雰囲気下にした。容器内の温度を255℃にし温度が安定した後に、電子線加速電圧が3000kV、照射線量の強度が20kGy/5minの条件で、試験片に照射線量40kGyの電子線を照射し、改質フッ素樹脂材料を得た。この改質フッ素樹脂材料を厚み2mmのまま、幅6mm、長さ6mmに切り取った試料の線膨張率は165ppmとなり電子線未照射の試料(比較例1)に対する線膨張率の低下は14%であり、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.010モル%であった。
上記で得られた改質フッ素樹脂材料を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0152】
実施例2
電子線の照射温度を245℃としたこと以外は実施例1と同様にして、改質フッ素樹脂材料を得た。この改質フッ素樹脂材料の線膨張率は178ppmとなり電子線未照射の試料(比較例1)に対する線膨張率の低下は7%であり、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.007モル%であった。
上記で得られた改質フッ素樹脂材料を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0153】
実施例3
電子線の照射温度を270℃としたこと以外は実施例1と同様にして、改質フッ素樹脂材料を得た。この改質フッ素樹脂材料の線膨張率は183ppmとなり電子線未照射の試料(比較例1)に対する線膨張率の低下は6%であり、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.046モル%であった。
上記で得られた改質フッ素樹脂材料を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0154】
実施例4
PFA1の代わりに、80質量%のテトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)共重合体[TFE/PPVE=98.5/1.5(質量%)、MFR14g/10分、融点306℃]、20質量%のシリカ(アドマテックス社製アドマファインSC2500-SQ,平均粒子径0.5μm,比表面積6.1m/g)を配合したPFA2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、改質フッ素樹脂材料を得た。この改質フッ素樹脂材料の線膨張率は103ppmとなり電子線未照射の試料(比較例2)に対する線膨張率の低下は24%であり、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.011モル%であった。
上記で得られた改質フッ素樹脂材料を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0155】
実施例5
テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)共重合体[TFE/PPVE=98.5/1.5(質量%)、MFR15g/10分、融点306℃](PFA3)を溶融押出成形で0.056mm厚のフィルム状に加工した後、幅280mm、長さ370mmに切り取り、試験片を得た。
得られた試験片をアルミ製の枠(幅270mm×奥行330mm×高さ25mm)に乗せ、フィルムの周囲4辺にアルミ製の錘(幅方向:20mm×270mm×6mm、88g、長さ方向:20mm×330mm×6mm、106g)をクリップで固定し、テンションを掛けた状態で電子線照射装置(NHVコーポレーション社製)の電子線照射容器に収容し、その後窒素ガスを加えて容器内を窒素雰囲気下にした。容器内の温度を255℃にし温度が安定した後に、電子線加速電圧が3000kV、照射線量の強度が20kGy/5minの条件で、試験片に照射線量56kGyの電子線を照射し、改質フッ素樹脂材料を得た。この改質フッ素樹脂材料を厚み0.056mmのまま、幅2mm、長さ18mmの短冊状に切り取った試料の線膨張率は188ppmとなり電子線未照射の試料(比較例3)に対する線膨張率の低下は12%であり、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.013モル%であった。
上記で得られた改質フッ素樹脂材料を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0156】
実施例6
PFA1をヒートプレス成型器で0.215mm厚のシート状に加工した後、幅12.5mm、長さ130mmの短冊状に切り取り、試験片を得た。この試験片を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させた。
得られた銅箔付きPFAシートに実施例1と同様に電子線を照射し、回路基板用積層体を得た。
【0157】
比較例1
PFA1をヒートプレス成型器で2mm厚のシート状に加工した後、幅6mm、長さ6mmの短冊状に切り取り、試験片を得た。この試験片の線膨張率は191ppm、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.000モル%であった。
上記試験片を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0158】
比較例2
PFA2をヒートプレス成型器で2mm厚のシート状に加工した後、幅6mm、長さ6mmの短冊状に切り取り、試験片を得た。この試験片の線膨張率は135ppm、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.000モル%であった。
上記試験片を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0159】
比較例3
PFA3を溶融押出成形機で0.056mm厚のフィルム状に加工した後、幅2mm、長さ18mmの短冊状に切り取り、試験片を得た。この試験片の線膨張率は213ppm、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.000モル%であった。
上記試験片を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0160】
比較例4
電子線の照射温度を320℃、照射線量を40kGyとしたこと以外は実施例1と同様にして、改質フッ素樹脂材料を得た。この改質フッ素樹脂材料の線膨張率は193ppmとなり電子線未照射の試料(比較例1)に対する線膨張率の低下は1%であり、第三級炭素の含有量はTFE単位及びPPVE単位の合計に対して0.115モル%であった。
上記で得られた改質フッ素樹脂材料を、100mm角の銅箔と真空プレス(真空ポンプで減圧下、シートを320℃に加熱、15kNで加圧し5分間保持した)により接着させて、回路基板用積層体を得た。
【0161】
上記の結果から、電子線照射することで改質フッ素樹脂材料の線膨張率を低減でき、良好な回路基板用積層体が得られることは明らかである。